「じゃあ、こっちもこれからバックアップで忙しくなるワケだけど……
 その前に、まずは状況を分析しましょうか」
 エクシゲイザー達バンガードチームを無事送り出し、ブリッジに戻ったリンディがブリッジクルー一同に告げる。
「とりあえず、現時点での作戦目標は『グランドブラックホールの中にあるセイバートロン星にチップスクェアとプラネットフォースを運ぶこと』ですね」
「けど、プラネットフォースもチップスクェアも、現状ではスタースクリームの手に奪われている……」
「しかも、マスターメガトロンやギガストーム、オーバーライド……スカイクェイクは微妙ですけど、それぞれの惑星の大帝達もプラネットフォースを狙っています」
 エイミィに付け加えるアレックス、ランディの言葉にうなずき、リンディはメインモニターに映る飛騨山中の戦場へと視線を向けた。
「となると……まず第一は大帝達をカモフラージュシールドの外に出さないこと、ね……」
 言うと、リンディはエイミィに告げた。
「エイミィ、フォートレスには火山島に向かった班のバックアップをお願いして。
 わたし達は飛騨の戦場のサポートよ」
「了解しました♪」

 

 


 

第38話
「今解き放たれる野望なの」

 


 

 

 一方、南太平洋へとワープしたギャラクシーコンボイやなのは達は、スタースクリーム達の潜伏する火山島へと向かっていた。
「ギャラクシーコンボイさん、あれ!」
「む………………?」
 なのはの声にフライトモードのギャラクシーコンボイが前方へと視線を向けると、前方に噴煙を噴き上げる火山島が見える。
「あれがスタースクリーム達の基地か……
 総員、油断するな!」
『了解!』

「あらら……バレちゃったみたいね」
 こちらへと向かってくるなのは達の姿を見つけ、ロードストームやキャンサーと並び立つクロミアがつぶやく。
「それじゃ、やりますか♪」
「もちろん♪」
 となりのキャンサーにうなずくと、クロミアは眼下の海へと飛び込み、
「トランスフォーム!」
 ビークルモードにトランスフォーム。カニモンスターへとトランスフォームしたキャンサーと共に迎撃に向かった。

「………………む?」
 飛べないがために、水上スキーの要領でライブコンボイに引っ張ってもらっていたニトロコンボイは、それに気づいて声を上げた。
 前方から何かが近づいてくる。あれは――
「はぁい♪ いらっしゃぁい♪」
 クロミアだった。上機嫌で告げ、こちらに向けてミサイルで攻撃を仕掛けてくる。
「く………………っ!
 耕介!」
「あぁ!」
 不慣れな水上戦だが、だからと言って反撃しないワケにもいかない。ニトロコンボイの言葉に耕介がうなずき、
『フォースチップ、イグニッション!
 マッハショット!』

 スピーディアのフォースチップをイグニッション。展開したマッハショットでクロミアを狙う。
 しかし、クロミアはそれをあっさりかわし――マッハショットのビームはキャンサーを直撃する。
「なんでオレだけぇっ!?」
「そんなの、当たるもんですか!」
 吹っ飛ぶキャンサーにかまわず、再びニトロコンボイを狙うクロミアだが――
『フォースチップ、イグニッション!』
「………………?」
 上空から聞こえた声に、クロミアはカメラを上に向け――
『ゴッド、マックスバーニング!』
「きゃあぁぁぁぁぁっ!?」
 上空からヴィータとゴッドジンライの放ったエネルギー弾の絨毯(じゅうたん)爆撃に、クロミアはあわてて逃げまどう。
 しかし――
「――――――っ!?
 かわせ、ゴッドジンライ!」
「何っ!?」
 突然声を上げたヴィータの声に、ゴッドジンライはとっさにその場から離脱し――突然海中から飛び出してきた多数のミサイルがゴッドジンライを狙う!
「ゴッドボンバー!」
〈鉄壁〉
 すかさず合体しているゴッドボンバーに指示――展開した防壁でミサイルを防ぐと、ゴッドジンライは海中から姿を見せた襲撃者達へと視線を向けた。
 カメ、サメ、エイ、エビ、シーラカンス、イカ――海洋生物をモチーフにしたモンスタートランスフォーマーの一団だ。
「お前ら……!」
「へっ、残念だが、この場はこのタートラー様とその仲間達“シーコンズ”が相手だぜ!」
 うめくヴィータに答え、カメ型――タートラーが海上へと飛び上がった。

「シーコンズ、スーパーモード!
 スクランブル、クロス!」
 タートラーの言葉と同時、シーコンズ達は一斉に飛び立ち、合体体勢に入る。
 ビーストモードにトランスフォームし、四方に散る仲間達の中央に飛び込んだのはタートラーだ――四肢が収納されるとボディ全体が二つ折りにたたまれ、甲羅の一部が展開。大腿部を含んだより巨大な胴体部となる。
 続いてエイ型“クラーケン”とエビ型“ロブクロウ”がタートラーの両側に合体、先端に拳が現れ両腕となる。
 シーラカンス型“ガルフ”とイカ型“テンタキル”はロボットモードから両足をあわせて折りたたみ、頭部の代わりに露出したジョイント部で連結するようにタートラーの大腿部に合体、両脚となる。
 本体内部から新たな頭部が迫り出し、サメ型“オーバーバイト”が変形した銃を手にし、新たな姿となったシーコンズが咆哮する。
「合体海王――グレートポントス!」

「コイツ……!?」
「合体しやがった!?」
 彼らにとっては初めて対面する合体戦士――グレートポントスを前に、ゴッドジンライとヴィータがうめく。
 だが――だからと言って退くワケにはいかない。
「高町! ここはあたしらで引き受けてやる!」
「お前達は先を急げ!」
「ヴィータちゃん! ゴッドジンライさん!」
「急ごう、なのは!
 ここは二人に任せて!」
 声を上げるなのはにフェイトが告げ、彼らは先を急ぐ。
「オレが相手だって、言ってんだろうが!」
 そんな彼らに向け、グレートポントスが銃を向け――
「させないっての!」
 ヴィータがシュワルベフリーゲンを放った。グレートポントスの顔面で爆発が巻き起こり、その視界を奪う。
「てめぇら……!
 上等だ! やぁってやるぜぇっ!」
 咆哮し、グレートポントスはゴッドジンライとヴィータに襲いかかり――!

「よし、上陸するぞ!」
 一方、なのは達はヴィータ達の援護のおかげで無事火山島へとたどり着いた。告げると同時ビークルモードへとトランスフォームし、ギャラクシーコンボイが火山島に降り立つ。
「いくぞ、ニトロコンボイ!」
「OK!」
 そして、ライブコンボイに答えたニトロコンボイもビークルモードで火山島に降り立ち、なのはやフェイト、シグナム達もそれに続く。
「さて、ボクも……!」
 その後に続こうとしたライブコンボイだったが――突然、彼の周囲で爆発が巻き起こる。
 海上のクロミアからの攻撃だ。
「ライブコンボイ!」
「わかってる!
 みんなは先に行っててくれ――ボクと真一郎はこっちを済ませてから行く!」
 真一郎に答え、ライブコンボイは一同にそう告げてクロミアへと転進する。
「ミサイルはお好き?」
「好きなワケないだろう!」
 クロミアに言い返し、機銃の照準を向けるライブコンボイだったが――
「だったら、とっておきのヤツをア・ゲ・ル♪
 フォースチップ、イグニッション!」
 答えて、クロミアは地球のフォースチップをイグニッション。船体上部のミサイルランチャーの中から新たな銃口を展開し、
「ファントムウェーブ!」
 放たれたレーザーが、ライブコンボイを直撃する!

 

 その頃、なのは達の前にも新たな敵が立ちふさがっていた。

「グワァオォッ!」
「おっと!」
 咆哮と共に、襲いかかってきたライオン型トランスフォーマーの牙を、スターセイバーはスターブレードで弾き返す。
 彼らの前に立ちふさがるのはライオン型の他サイ型、ワシ型、バッファロー型、トラ型――いずれも野獣をモチーフとしたトランスフォーマー達である。
 名はそれぞれレーザークロー、ヘッドストロング、ダイムボム、タントラム、グロテスという。
「ここでも待ち伏せか……!」
「だが、突破するのみ!」
 うめくギャラクシーコンボイにシグナムが告げるが、
「そうはいかない事情があるのだよ」
 そんな彼女にレーザークローが告げた。
「リーダーのスカイクェイク様が不在で、我ら“アニマトロン”を始めホラートロンもあのスタースクリームとかいう者のところに間借りしてる身だからな。
 心から平伏しているワケでなくとも、身を寄せている以上スタースクリームは我らが主――スカイクェイク様が戻られるまでのことであろうと、我らには主を守護する責任がある」
「お前達……スカイクェイクの部下だったのか!?
 だったら、もうスタースクリームに従う理由はない!
 スカイクェイクはすでに復活している!」
 レーザークローの言葉に、ギャラクシーコンボイは彼にそう告げる。
 彼が心からスタースクリームに従っているのでないのなら、スカイクェイクの存在を知らせれば彼の元に向かうだろう――そう考えてのことだったが、
「しかし……あのお方はここにはいない」
 あっさりとレーザークローはそう答えた。
「言ったはずだ……『“あのお方が戻るまで”、我らはスタースクリームの臣下だ』と!
 スカイクェイク様ご本人が現れるまで、我らはスタースクリームの配下としてここを死守するまで!」

「アニマトロン、スーパーモード!
 スクランブル、クロス!」
 レーザークローの言葉と同時、アニマトロンの面々は一斉に飛び立ち、合体体勢に入る。
 ロボットモードのまま、四方に散る仲間達の中央に飛び込んだのはレーザークローだ――両足が折りたたまれると両腕がボディ内部に収納。たたまれた両足を大腿部としてより巨大な胴体部となる。
 続いてダイムボムとグロテスがレーザークローの両側に合体、先端に拳が現れ両腕となる。
 タントラムとヘッドストロングはビーストモードへとトランスフォーム。四肢を折りたたみ頭部を胸部へと移動。露出したジョイント部で連結するようにタートラーの大腿部に合体、両脚となる。
 本体内部から新たな頭部が迫り出し、新たな姿となったアニマトロンが咆哮する。
「合体獣王――プレダキング!」

「こいつも合体戦士か……!」
 合体し、自分達の前に立ちふさがったプレダキングの巨体を前に、シグナムはレヴァンティンをかまえてうめく。
 その巨体はグレートポントス以上。間違いなく今まで対峙してきたどのトランスフォーマーよりも圧倒的な威容をプレダキングは有していた。
 間違いなく、楽には勝たせてもらえない相手だ。レヴァンティンを握る手にも力が入り――
「しかし、ここを抜けねばスタースクリームの元へは向かえない。
 説得が通じなかった今――倒すしかあるまい」
 そんな彼女に告げ、スターセイバーもまたスターブレードをかまえると、
「先に向かうが最上」
 そう告げ、前に進み出たのはダイアトラスだ。
「ここは、私とダイアトラスで食い止める」
 さらに、ザフィーラもまたダイアトラスと共にプレダキングの前に出る。
「シグナムさん……ザフィーラさん達、大丈夫なんですか?」
 先程のグレートポントス以上の巨体を誇る相手だ。彼らだけで大丈夫なのだろうか――なのはがシグナムに尋ねると、
「なら――わたしが残る」
「フェイトちゃん!?」
 名乗りを上げたフェイトに、なのはは思わず声を上げる。
「今は一刻も早く、スタースクリームのところにたどり着くことが先決だよ」
「けど……」
 フェイトの言葉になおも言いよどむなのはだったが、
「……わかった。
 フェイト、この場はキミとダイアトラス、ザフィーラに任せよう」
 そんな彼女を制し、ギャラクシーコンボイがフェイトに告げる。
「ダイアトラス、ザフィーラ。フェイトを頼む」
「任せろ。
 我が役目は主の、そして仲間の盾――彼女は必ず守りきってみせよう」
「フェイト嬢の無事は保障」
 ギャラクシーコンボイの言葉にザフィーラとダイアトラスがうなずくのを前に、ようやくなのはも折れた。フェイトへと向き直り、告げる。
「フェイトちゃん……気をつけてね」
「うん。
 なのはも、気をつけて」
 フェイトが答えると、スターセイバーが残る突入班を見渡して告げた。
「今後も妨害は予測される。
 その度にこうして足止めされていてはラチがあかない――散開して突入することを提案する」
「けど、それだと戦力が分散されてしまいませんか?」
「最終的な目的地は最深部――共通している。
 結果的に最深部に近づけば近づくほど戦力は集結することになる。問題はない」
 聞き返すユーノに答えると、スターセイバーはギャラクシーコンボイへと向き直り、
「それで……どうする? 総司令官」
「……わかった。あなたの提案でいこう」
 うなずき、ギャラクシーコンボイはなのはを見下ろし、
「我々も分かれて進もう。
 分かれる人数が多ければ多いほど敵の分散の効果は上がる」
「はい!」
 なのはもまたギャラクシーコンボイにうなずき、そしてフェイトに告げた。
「フェイトちゃん!
 スタースクリームさんのところで待ってるから!」
「うん。
 わたし達も、すぐにコイツをやっつけて追いかける」
「……競争、だね」
 なのはの言葉に笑顔でうなずき――フェイトはすぐに表情を引きしめた。
「みんな――行って!」
 告げると同時、フェイトがプレダキングへと跳び――なのは達もまた散開した。

「……お、来やがったな」
 ギャラクシーコンボイ達と分かれ、斜面を駆け上っていくニトロコンボイと耕介だったが――その行く手にはロードストームがいた。ようやく現れた自分の相手を見据え、座っていた岩から立ち上がる。
「ヘイヘイヘイ! 相手してもらうぜ!」
 そして、ビークルモードのバイク形態となってニトロコンボイに向けて斜面を駆け下り――
「フォースチップ、イグニッション!
 サイドマシンガン!」

 地球のフォースチップをイグニッション。車体後部に展開されたサイドマシンガンで攻撃をお見舞いするが、
「そんなもの!」
 ニトロコンボイはそれをかわして跳躍するとロボットモードにトランスフォームし、
「運転は――もっと安全にな!」
 ロードストームへと、カウンターの飛び蹴りをお見舞いする!

「ヤツらが来たか……」
 火山島の最深部では、ノイズメイズがギャラクシーコンボイ達の様子をモニターでうかがっていた。
 振り向き、そこにいたスナップドラゴン達に尋ねる。
「お前達――回復したか?」
「おかげさんでな」
「さすが、アンタ達の再生カプセルは効果抜群だね」
 尋ねるノイズメイズに、スナップドラゴンとワイルダーが肩をコキコキと慣らしながら答える。
「よし……なら、出撃しろ。
 他のヤツらも全員だ! ギャラクシーコンボイ達を始末しろ!」

 ノイズメイズのその言葉に、スナップドラゴン達は一斉に火山の火口から出撃。散開したギャラクシーコンボイやなのは達に一斉に襲いかかる!
〈来たぞ、なのは!〉
「こっちもいっぱいです!」
 通信し、急を知らせるギャラクシーコンボイに答え、なのははレイジングハートをかまえつつ背中のプリムラの翼を広げる。
「レイジングハート、プリムラ……
 ちょっと数が多いけど、いけるよね?」
〈No problem.〉
《問題なしナシ!》
 戦友達の答えにうなずき――なのはは告げた。
「それじゃあ――いくよ!」

「ギャラクシーキャノン、フルバースト!」
 スーパーモードへとトランスフォームすると同時にイグニッション――放たれたギャラクシーキャノン・フルバーストが迫り来る地球デストロンを薙ぎ払う。
 だが――まだ攻勢は終わらない。地球デストロン達は次々に現れ、ギャラクシーコンボイへと襲いかかる。
「く……っ! キリがない!」
 うめいて、ギャラクシーコンボイは再度の攻撃に備えて後退し――
「総司令官!」
 かけられた声に振り向くと、そこにはオートボルトの姿があった。
「オートボルト!?
 どうやってここに!?」
「ボクだよ」
 驚くギャラクシーコンボイに答えたのは、彼のライドスペースから現れたリスティだ。
「そうか……キミの瞬間移動テレポートか」
「ここはデストロンハンターのオレと彼女に任せろ!」
「頼む!」
 オートボルトの言葉にうなずき、ギャラクシーコンボイは再び火口を目指して飛翔した。

 

 その頃、飛騨山中の戦場では――

「フォースチップ、イグニッション!
 ゾール、ファイヤー!」

 スピーディアの藍色のフォースチップをイグニッション――放たれたメナゾールの一斉射撃を、バンガードチームの面々は散開してかわし、
『フォースチップ、イグニッション!』
 美由希と共に咆哮し、メビウスショットはロボットモードでフォースチップをイグニッション。両腕にシックスブレイドと同じデザインの刃を展開する。
『メビウス、ブレイド!』
 そのまま一気に間合いを詰めるが、サイクロナスも素早く後退し、メビウスショットの斬撃をかわす。
「デスフレイム!」
 フレイムコンボイがデスフレイムを放ってスカイクェイクを狙うが、
「デス、ブリザード!」
 スカイリンクスもまたデスブリザードで対抗。炎と凍気が激突する。
「こん、のぉっ!」
 ダブルヘッドハンマーを振り上げ、インチプレッシャーが殴りかかるが、
「なんの!」
 それをかわし、オーバーロードはすぐさま反撃。右腕のエネルゴンクレイモアがダブルヘッドハンマーと激突する。
 そして――
「ギガ、スパイラル!」
「なんの!」
 ビークルモードのギガストームが突撃するが、スカイクェイクも負けてはいない。ブレードモードのデスシザースでその攻撃をさばく。
 戦いは全軍入り乱れての混戦状態。そんな中――動きを見せた者がいた。
「今だ!」
 戦いの間隙をつき、マスターメガトロンがワープゲートの展開に成功したのだ。
 そのまま、マスターメガトロンはワープゲートをくぐっていき、
「野郎ども、続け!」
 フレイムコンボイの音頭で、他のデストロン達もそれに続く。
 が――
「貴様らだけ、行かせるか!」
 そのワープゲートにスカイクェイクもまた飛び込んだ。マスターメガトロン達に便乗して火山島に向かう。
「逃がすか!」
「というか――オレ様達も連れてけぇっ!」
 咆哮し、その後を追おうとするオーバーロードとギガストームだったが、一瞬遅くゲートは閉じられてしまった。
「くそっ、逃げられた!」
「我々も急ごう!」
 こうしてはいられない――うめくエクシゲイザーの言葉にドレッドロックがうめき、彼らもまたベクタープライムの展開したゲートをくぐっていく。
「オレ達も引き上げだ!」
「了解よ!」
 そんな彼らを追ってサイクロナス達もまたゲートをくぐっていき――
「おぉーいっ!」
「オレ様達はドコ行きゃいいんだよぉっ!」
 結局、そこにはギガストーム達スピーディア・アニマトロス連合軍だけが取り残されていた。
「……地道に追っかけるしか、ないんじゃないっスか?」
「ったく、めんどくせぇな」
 ウィアードウルフの言葉にメナゾールがうめくと、
「………………ん?
 ギガストーム様、アニマトロスのボンブシェル達から緊急通信が」
「緊急通信だと?」
 ワイプの報告に眉をひそめ、ギガストームはとにかく回線をつなぎ、
「どうした? ボンブシェル」
〈た、大変です、スカー……じゃなかった、ギガストーム様!〉
 尋ねるギガストームに、展開されたウィンドウに現れたボンブシェルはあわてた様子でそう答える。
〈ランページのヤツが脱走して、地球そっちへ!〉

 だが――彼らはまだ気づいてはいなかった。
 地球に向かっていたのはランページだけではなく――宇宙からもまた、高速で迫り来る存在があったことに。

「くそっ、ジャマをするな!」
 大半をオートボルトが引き受けてくれたが、それでもかなりの数の地球デストロンが行く手を阻んだ。次々に組み付いてくる地球デストロン達をギャラクシーコンボイが投げ飛ばすと、
「よっしゃあっ! 一番乗り!」
「二番乗り!」
 上空に展開されたワープゲートからインチプレッシャーとランドバレットが姿を見せる。
 が――着地地点はちょうどギャラクシーコンボイと地球デストロン達のもみ合いの現場だった。人ごみの中まともに着地することなどできるはずもなく、彼らは着地の際に転倒し、
「あぁ〜れ〜〜〜〜〜っ!」
「回りまぁ〜〜〜〜すっ!」
 そのまま斜面を転がり落ちていく。
「おぉい、待ってくれよ!」
 続けてガスケットがワープゲートから飛び出し、彼ら同様ギャラクシーコンボイ達へと降下し――
「どけぇっ!」
「どわっ!?」
 気づかず、ギャラクシーコンボイが地球デストロン達を振り払った拳が直撃した。そのまま外野フライのように天高く打ち上げられ、海面へと落下する。
「うー、下が海で助かったぜ……」
 浮上し、ガスケットが安堵の息をもらすと、
「ごめんあそばせぇっ!」
「助かってなかったぁっ!」
 そんな彼をクロミアがいた。勢いよくぶつけられ、ガスケットは再び宙を舞い――
「逃がすか!」
「いででででっ!」
 さらに、クロミアを狙ったライブコンボイの機銃の流れ弾が降り注ぐ!
「こんな生活、もうイヤぁっ!」
 仕上げとばかりにホーミングミサイルまで直撃し、ガスケットは絶叫しながら海中へと没していった。

「このぉっ!」
 地球デストロン達の攻撃をかわし、オートボルトはウィングボウガンで逆にカウンターを決めていく。
 その射撃は正確無比。瞬く間に彼の周囲の地球デストロン達は叩き伏せられてしまった。
「……よし。
 これでこの辺りのヤツらはOKだな」
 言って、オートボルトが彼らを封印すると、
「なら、次はオレ達の相手をしてもらおうか」
「今度は負けないぜ!」
 そんな彼の元にエイプフェイスとワイルダーが立ちふさがる。
「いいだろう! 相手をしてやる!」
 そんな彼らに向け、オートボルトはウィングボウガンをかまえ――
「ちょっと待ったぁっ!」
 声を上げ、上空のワープゲートからデモリッシャーが姿を見せる。
「悪いが混ぜてもらうぞ!
 マスターメガトロン様が到着するまでの露払いだ!」
 言うと同時、デモリッシャーはクレーンアームをかまえ、オートボルトへと襲いかかり――!

「こん、のぉぉぉぉぉっ!」
「ぅおぉぉぉぉぉっ!」
 気合一発、ゴッドジンライは火山島近くの小島でグレートポントスとガッチリと組み合い、
「動きが止まってるぜ、デカブツ!」
 ヴィータがシュワルベフリーゲンで援護。グレートポントスの背中で爆発が巻き起こる。
「く………………っ!
 オーバーバイト!」
「合点でさぁ!」
 グレートポントスの言葉に、銃形態のまま放り出されていたオーバーバイトが反応した。四肢を有するサメ型のモンスター形態にトランスフォームし、ヴィータへと襲いかかる!
「こいつ! ジャマすんじゃねぇよ!」
 すかさずグラーフアイゼンを振るってオーバーバイトを牽制し、ヴィータがうめいた、その時――突如、彼女の真下でワープゲートが展開された。
 そして――
「お久しぶりの――チョッキンなぁっ!」
 咆哮が響き――飛び出してきたランページがヴィータとオーバーバイトを弾き飛ばす!
「お、お前!?」
「ふー、ようやくギガストームんトコから逃げられたわい」
 驚くヴィータの前で、ランページはロボットモードにトランスフォームして肩を慣らし、
「そんじゃ、まだ状況はわかっとらんが……とりあえず敵なのが確定しとる貴様から始末したらぁっ!」
 咆哮し、ランページはヴィータに向けてミサイルランチャーを発射する!

「デスフレイム!」
 ワープ完了と同時にデスフレイム――フレイムコンボイの放った紅蓮の炎が、スターセイバーに襲いかかる。
「く……っ! この程度で!」
 その炎に耐え、スターセイバーは反撃すべくスターブレードをかまえるが、
「くらえぇっ!」
 そんなスターセイバーに、上空からマスターメガトロンが機銃で攻撃を仕掛ける。
 しかし――その戦いの様子は、火口の底に残っていたノイズメイズにとらえられていた。
「……マスターメガトロンが来ました」
「ち………………っ!」
 ノイズメイズの報告に、スタースクリームは思わず舌打ちした。
(時間はあまり残されていないか……
 早く、プライマスのスパークを少しでも多く吸収しなくては……)

「総司令官!」
「ギャラクシーコンボイ!」
 サイバトロン勢のワープゲートが開いたのは、ギャラクシーコンボイのすぐそばだった――ゲートを抜け、ドレッドロックと志貴がギャラクシーコンボイに声をかける。
「すみません……マスターメガトロンを逃がしてしまって……」
「気にするな。
 キミ達はよくやってくれた」
 シュンとして謝るすずかに答え、ギャラクシーコンボイは一同に指示を下す。
「それより、散開している他のメンバーを援護。可能であればお前達も最深部を直接目指してもらってもかまわない」
『了解!』
 ギャラクシーコンボイに答え、一同はそれぞれビークル、ビーストモードにトランスフォーム。散開していく。
「なら、私はチップスクェアを!」
 言って、ベクタープライムもまたビークルモードにトランスフォームして火口へと飛び立つが、
「そうはいくか!」
 スターセイバーを抑えていたマスターメガトロンがそれに気づいた。ベクタープライムを追って火口へと飛ぶ!

「グオォォォォォッ!」
「ぅわぁっ!?」
 咆哮し、振り下ろされたオボミナスの拳を、なのははあわてて回避し、
「プリムラ!」
《お任せ!》
 答えると同時にカートリッジがロードされた。プリムラは解放されたなのはの魔力を制御し、
〈Blitz shooter!〉
 レイジングハートが放った魔力弾が、すべてオボミナスに直撃する!
「どう!?」
 爆煙の向こうのオボミナスの気配を探り、効果のほどを確かめようとするなのはだったが――
「グァオォォォォォッ!」
 現れたオボミナスはまったくのノーダメージ。それどころかなのはの反撃にさらに怒りを強めたようだ。
「やっぱり、バスターレイ以上の魔法じゃないと効かないみたいだね……」
《ま、あの図体だしね》
 つぶやくなのはにプリムラが答えると、
〈なのは、聞こえるか!?〉
 そんななのはへと、ギャラクシーコンボイが通信してきた。
〈ベクタープライムが火口に向かったが――その後をマスターメガトロンが追っている!
 私も向かう! なのはも急いでくれ!〉
「は、はい!
 けど……!」
 火口に向かうためには、まずはオボミナスを何とかしなくては――焦る気持ちをなんとか抑え、なのははレイジングハートをかまえ直し――
「ぬぉおぉぉぉぉぉっ!」
「グォッ!?」
 突然の体当たりがオボミナスを襲った――スカイリンクスの体当たりを受け、オボミナスは思わずたたらを踏む。
 そして――
「はぁっ!」
 その顔面に恭也が襲いかかった。カメラアイを狙った小太刀の一撃を受け、片目の視界を奪われたオボミナスは思わず転倒する。
「スカイリンクスさん――お兄ちゃん!?」
「ここは我輩達が抑える!」
「なのは達はギャラクシーコンボイと一緒にベクタープライムの援護を!」
「うん!」
 二人の言葉にうなずき、なのはは火口へと向き直り――
「なのは」
 そんななのはに、恭也が声をかけた。
「フィアッセを、頼む」
「……うん!
 いくよ、プリムラ! レイジングハート!」
〈Yes!〉
《合点承知!》
 なのはの言葉にレイジングハートとプリムラが答え、なのは達は火口へと飛んだ。

 一方、一足先に火口へと突入したベクタープライムやマスターメガトロン、ギャラクシーコンボイだったが――その様子はノイズメイズにとらえられていた。
「ふむ……
 囚われの姫を救いに、ナイト様のご登場か……ま、ちょっと目的が違うのも混じってるみたいだけど」
 つぶやきながら、一瞬フィアッセへと視線を向け――ノイズメイズは肩をすくめ、
「やれやれ……
 ワナくらい、仕掛けてあるんだけどねぇ……」
 つぶやき、手元のスイッチを入れた。

 突然、下方で爆発が起きた。底の方でマグマが荒れ狂い、放たれた火山弾がベクタープライムを先頭とした一行に襲いかかる!
『――――――っ!?』
 とっさに近くの横穴に退避し、ギャラクシーコンボイ達はその攻撃をやりすごす。
「フンッ、ワナに頼るところがいかにも小心者らしい」
「おのれ……マスターメガトロン!」
 ワナを回避し、悠々と先に進もうとするマスターメガトロンへと剣をかまえるベクタープライムだが、
「ぐ………………っ!」
 痛みにうめき、ヒザをつく――わずかではあったが、火山弾の直撃を受けていたのだ。
「しっかりしろ、ベクタープライム!
 スタースクリームの基地には私が向かう!」
 そんなベクタープライムを支え、ギャラクシーコンボイが告げるが、
「何を言っている!?
 スタースクリームはこのオレが倒す! 誰にもジャマはさせない!」
 そんな彼らの会話に割り込み、マスターメガトロンが告げる。
「フォースチップ、イグニッション!
 デス、マシンガン!」

 そして、フォースチップをイグニッションし、デスマシンガンをかまえるが、
「待って!」
 告げると同時にディバインバスターを一発――ギャラクシーコンボイ達に向けられた銃口をそらし、なのはがその前に立ちふさがった。
「今はそんなことにこだわってる場合じゃないでしょ!?
 スタースクリームさんをなんとかしなきゃいけないっていうのは、わたし達もマスターメガトロンさんも同じでしょう!?」
「知ったことか!
 ジャマをするというのなら、まずは貴様からだ!」
 なのはに言い返し、マスターメガトロンはなのはへと銃口を向け――

「デモリッシャー、考え直せ!」
「うるさい!」
 その一方で、呼びかけるガードシェルに言い返し、デモリッシャーはメガクレーンブレードで斬りかかるが――そんなデモリッシャーに、上空からビームの雨が降り注ぐ!
「友情ごっこは、そこまでよ!」
「マックス、ラジャー!」
 ヘルスクリームとマックスビーだ。
「くそっ、アイツら……!」
 ガードシェルはもちろん、デモリッシャーも空は飛べない。相手が空中ではどうしても不利だ――うめいて、真雪は上空のヘルスクリーム達をにらみつけ――
「………………ん?」
 気づいた。
 上空から――宇宙から飛来した光の塊のようなものが猛スピードで火口へと飛び込んでいく。
「何だ? ありゃ……
 ガードシェル! 追っかけるぞ!」
「だが、ヘルスクリーム達は……!?」
「そんなのデモリッシャーに押しつけとけ!
 それよりアイツだ!」
「わ、わかった!」

「この間の借りを返してやる!」
「あら、また痛い思いをしに来たの!?」
 ドレッドロックに言い返し、クロミアは彼に向けてミサイルを乱射する。
「デスフレイム!」
 フレイムコンボイがデスフレイムを放つが、バンガードチームの面々はそれをかわし、
「目標、フレイムコンボイ!」
「照準データ、送ります」
 ハイブラストの指示で、一同はノエルの送ってくれたデータに従い照準を合わせる。
 そして――彼らの放った一斉攻撃が、フレイムコンボイに降り注ぐ!

「くらえぇっ!」
 別の一角で戦っているのはニトロコンボイ達――ランドバレットがランドバズーカを放つが、ニトロコンボイと耕介、そしてライガージャックとアルクェイドは素早くかわし、
「てぇいっ!」
「このぉっ!」
 ライガージャックとアルクェイドの同時攻撃がランドバレットにヒット。さらに――
「マッハショット!」
「真威・楓陣刃ぁっ!」
 ニトロコンボイと耕介の攻撃が、ランドバレットを吹き飛ばす。
 まともに連撃をくらい、ランドバレットは大地に倒れ――
「どいたどいたぁっ!」
 まるで運転するかのようにファングウルフに飛び乗られたロードストームにきつぶされるが――
「ま、また……ペッタンコ……」
 いつかのようにペラペラに踏み潰されても――やっぱり彼は生きていた。

「これで終わりだ――小娘!」
 なのはに告げ、マスターメガトロンは彼女に向けたデスマシンガンの引き金に指をかけ――突然上空から声が響いた。
「待て待て待てぇっ!」
「――――――っ!?」
 その声にマスターメガトロンが見上げると、先程真雪達が目撃した光の塊が急降下してきて――マスターメガトロンへとビームの雨を降らせる!
「何っ!?」
 たまらずマスターメガトロンは防御を固めるが――光の塊はマスターメガトロンの正面でいきなり角度を変えて突撃。体当たりでマスターメガトロンを火口のガケ下まで叩き落す!
「な、何…………!?」
 突然のことに思考がついていかない。呆然となのはが声を上げると、光の塊はその輝きを弱めていき――
「大丈夫かい? お嬢さん――と、ついでに総司令官♪」
 そう告げたのは、ひとりのトランスフォーマーだった。
 白銀に染め抜かれたボディは頑強に作られているが、スマートで背中には翼も備えており、力強さと素早さが同居しているかのような印象を受ける。
 そして――そんな彼を見て、ギャラクシーコンボイは思わず声を上げた。
「お、お前は……!?」
 無論知っている顔だ。だが――なぜここにいるのか?
 なのはと同様にワケがわからず、ギャラクシーコンボイは困惑し――
「総司令官!」
 声を上げ、志貴を肩に乗せたドレッドロックが降下してきた。ライブコンボイと真一郎、そしてエクシゲイザーとすずかやガードシェル、真雪――さらにはクロノも一緒だ。
「ご無事ですか!?」
 あわててギャラクシーコンボイに駆け寄り――ドレッドロックは白銀のトランスフォーマーに気づいた。
「お前は!?」
「よっ、おヒサ♪」
 気軽にあいさつするトランスフォーマーだが――そんなものでごまかせるほど、ドレッドロックの困惑は軽くはなかった。
「そ、ソニックボンバー!?」

「だ、誰? 知り合い?」
 アースラのブリッジで、ソニックボンバーの映像を前に知佳が疑問の声を上げる。
〈オレだって知らねぇよ!
 誰か教えてくれ!〉
〈えぇっ!? エクシゲイザーも知らないの!?〉
 新たに展開されたウィンドウでエクシゲイザーとすずかが話すのを聞き、リンディはドレッドロックやガードシェルに尋ねた。
「ドレッドロック、ガードシェル。二人はサイバトロン軍でも古参でしたよね?
 よかったら、彼のことを説明してもらえますか?」
〈まだ若いエクシゲイザーが知らないのはムリもありません。
 ヤツがサイバトロン軍にいたのは、ずいぶん前――ビッグコンボイ前司令官の頃のことでしたから〉
〈だが、相次ぐ命令違反で当時すでに副司令の地位にあったギャラクシーコンボイ総司令官から謹慎処分を受け――本人もイヤになったのだろう、自分から辞めていった〉
 ガードシェルとドレッドロックの言葉に、リンディは少し考え、
「昔のメンバーなら……記録が残ってるはずですね。
 ホップさん、サイバトロン基地にアクセスして、データを読み出してもらえますか?」
「お任せを。
 エイミィさん、そちらに転送します」
「はいはい♪」
 ホップの言葉に、エイミィは届いたデータに目を通し――
「………………は?
 …………えぇぇぇぇぇっ!?」
 そのあまりの内容に目を丸くした。
「な、何ですか、コレ!?
 すごい命令違反の数です――中には、ギャラクシーコンボイさんに殴りかかったこともあるって!」
「えぇっ!?」
〈そんなこともあったっけ?〉
 エイミィの言葉に、となりでアレックスが驚きの声を上げるが――当のソニックボンバーはあっけらかんとそう答えた。

「このぉぉぉぉぉっ!」
 咆哮し、襲いかかるスナップドラゴンだが――
「加速が強すぎる。
 体当たりといえど、速ければいいというものではない――相手の回避に備え、ある程度の機動性は残すべきだな」
 あっさりとそれをさばき、シックスナイトは背後の岩に突っ込んだスナップドラゴンにそう告げる。
 そして――
「つぶれろぉぉぉぉぉっ!」
 こちらを踏みつぶそうと上空から飛び降りてきたエイプフェイスを、ガケの縁ギリギリに立っていた美沙斗は素早くかわし――狙いを外し、エイプフェイスの着地した衝撃でガケが崩れ落ちる!
「でぇぇぇぇぇっ!?」
「相手を踏みつぶそうというのなら、もう少し着地地点は選ぶといい」
 盛大に自爆し、転落していくエイプフェイスに告げると、美沙斗はシックスナイトと合流し、
「さて……次はお前か?」
「そう簡単に、いくと思うなよ!」
 尋ねるシックスナイトに、ワイルダーはそう答えて地を蹴った。

「けど、そのソニックボンバーさんがどうして地球に?」
 彼が何者なのかはわかった。だが、彼が地球に現れた理由は依然としてわからないままだ。すずかが尋ねると、ソニックボンバーはあっさりと答えた。
「メッセージみたいなモンが届いたんでね」
「メッセージ……?」
「ひょっとして、スピーディアのプラネットフォースが発動した時の……?」
「よくは知らねぇが、助けが欲しいだろうと思って、とりあえず来たワケよ」
 顔を見合わせ、つぶやくベクタープライムとクロノに答えると、ソニックボンバーは一同を見渡して尋ねた。
「ところで、誰かこの星のビークルデータ、余ってねぇのか?」
「希望は?」
 その言葉に聞き返したのは、彼らの地球移住の際にビークルデータをかき集めたドレッドロックだ――彼の問いに、ソニックボンバーはしばし考え、
「うーん……翼が生えてて、タフなヤツ」
「なら、これでどうだ?」
 言って、ドレッドロックが投影したのは、重爆撃機のビークルデータだ。
「いいじゃねぇか! いただくぜ!」
 その重厚なデザインが気に入ったらしく、ソニックボンバーは上機嫌でそのデータをスキャニングし、
「ソニックボンバー、トランスフォーム!」
 さっそく試しにトランスフォーム。データにそっくりな爆撃機へと姿を変える。
「OK! なかなか良さそうだ!」
 彼のボディとの相性も悪くなかったようだ。ソニックボンバーは上機嫌で機体を揺らし――不意にギャラクシーコンボイへと振り向いた。
「それにしても総司令官。相変わらずなってないねぇ――戦力を分散させてどうするつもりだったんですか。
 ここは全員一丸となって突撃でしょ!」
「ぅわぁ……歴戦の元総司令官の作戦にダメ出しだ……」
 発案者はギャラクシーコンボイではなくスターセイバーだ――それを平然とこき下ろすソニックボンバーの言葉に、なのはの肩の上でユーノが思わず声を上げる。
 だが、ソニックボンバーはかまいはしない。先頭に立って火口へと機首を向け、
「さぁ、オレに続け!」
「――って、突然現れて仕切るんじゃねぇよ!」
 完全にリーダー風を吹かせるソニックボンバーにエクシゲイザーが反論するが――
「あぁ!? 何だ!? 文句でもあるのか!?」
「わっ!? わわっ!? 何すんだ!?」
 言うなり、ソニックボンバーはエクシゲイザーの足元に向けて銃撃をお見舞いする!
「う、うそぉ……」
「味方を攻撃した……!?」
「アレがヤツの流儀なんだ」
 思わずつぶやくすずかとなのはに、ドレッドロックがため息まじりに答える。
「ま、本人はあいさつのつもりなんだろうがな」
「ムチャクチャだ……」
「そうか? あたしは気に入ったぜ」
 呆然とつぶやく志貴に真雪が答えると、
「……クロノ」
 同じく呆然としているクロノに、ギャラクシーコンボイが声をかけた。
「すまないが……イグニッションパートナーとして彼と組んではくれないか?」
「ぼ、ボクがですか!?」
「私からも頼む」
 何てヤツと組ませようというのか――思わず声を上げるクロノだが、そんな彼にドレッドロックもまた告げる。
「彼の暴走を止めるためにも、実力と常識性を兼ね備えたキミにお願いするしかない」
「そんなぁ……」
 ドレッドロックの言葉に肩を落とし――クロノはふとある可能性に気づいた。
「――って、二人ともさりげなく問題児の面倒をボクに押し付けようとしてませんか!?」
 その問いに、ギャラクシーコンボイとドレッドロックは――
『………………さぁ?』
 思いっきり視線を逸らしてくれた。
「図星ですね!? そうなんですね!?
 二人とも最近リンディ提督に似てきてません!?」
〈待ちなさい、クロノ執務官!
 『私に似て』って、どういう意味ですか!?〉
 クロノの反論にリンディまで乱入。彼らは状況も忘れてギャイギャイと言い争いを始め――
「貴様ら……!」
 そんな彼らの前に、ガケを上ってきたマスターメガトロンが立ちはだかる。
「このオレ様を無視するとは、いい度胸だ!
 トランスフォーム!」
 咆哮と同時、マスターメガトロンはメガジェット形態へとトランスフォームし、自分を突き落とした張本人であるソニックボンバーへと襲いかかる!
「おっと!
 そんじゃ、さっそくコンビプレーといくか!」
「って、ちょっと!?」
 だが、ソニックボンバーはすぐに反応した。空母着艦用のフックでクロノの襟首をつかまえ、そのままマスターメガトロンを誘導して火口を飛び出し、上空におびき出す。
「ま、待ってくれ!
 ボクはまだ、キミと組むと決めたワケじゃ――」
「やかましい!」
 なんとか反論するクロノの言葉を、ソニックボンバーはピシャリとさえぎった。
「オレが気に入らないならケンカ上等!
 けどな――それは任務の外でやりやがれ!」
「――――――っ!」
 その言葉に、クロノは思わず息を呑んだ。
 乱暴ではあったが、ソニックボンバーの言っていることは間違いではなかったからだ。
「オレだってたいがい好き勝手やるがな――任務のジャマになるような命令違反はしたことないぞ!
 任務が達成できなきゃ元も子もないんだ。任務中は任務のことだけ考えろ! 気に入らないヤツとでも最善を尽くせ!」
「……まったく、キミみたいな問題児に諭されるなんて、ボクもヤキが回ったかな!?」
 うめいて、クロノはソニックボンバーのフックを振りほどき、
「それじゃ――今は協力して、マスターメガトロンを叩き落そうか!」
「その意気だ!」
 クロノに答え、ソニックボンバーはマスターメガトロンへと突撃。体当たりをお見舞いする!
 そして、両者は同時にロボットモードへとトランスフォームし、
「フォースチップ、イグニッション!
 デス、クロー!」

「フラップソード!」
 同時にお互いの獲物を展開した。マスターメガトロンが左腕にデスクローを装着し、ソニックボンバーもまた翼から分離した刃を両腕に装着する。
 そして――両者の斬撃が激突。衝撃で再びその距離が開き――
「このぉっ!」
 クロノが射撃魔法“スティンガースナイプ”で援護。威力はないが正確無比な射撃は推進部を的確に叩き、マスターメガトロンをふらつかせる。
「ほらほら、総司令官、ボサッとしてないで!
 突撃のチャンスでしょうが!」

「よし、我々も火口に向かおう」
「はい!」
 ともかくこれでマスターメガトロンの妨害は排除できた。ソニックボンバーに同意するギャラクシーコンボイの言葉になのはがうなずき、
「ライブコンボイ、エクシゲイザー、ガードシェル、ドレッドロック――以上4名とそのパートナーの諸君は一度外に戻り、苦戦しているメンバーと合流。彼らを助けた上でこちらに向かってくれ」
『了解!』
 指名された4組がギャラクシーコンボイに答え、ビークルモードにトランスフォームしたドレッドロックとライブコンボイにエクシゲイザーとガードシェルがつかまる形で火口の外へと戻っていく。
「よし、いくぞ、なのは、ベクタープライム!」
「はい!」
「うむ!」
 告げるギャラクシーコンボイになのはとベクタープライムが答え、彼らは火口の底へと降下していった。

 その頃、火口の底では――
「ノイズメイズ。
 これが終わるまで、ヤツらの足を止めろ」
「わかりました」
 スタースクリームに答え、ノイズメイズは火口の上の階層へと向かうべくきびすを返す。
「フン…………」
 その後ろ姿を見送り――スタースクリームは振り向き、フィアッセに告げた。
「せっかく助けの手が来たのに……残念だったな。
 ギャラクシーコンボイ達も高町なのはも、この火山島が墓場となる」
「そんなことない!」
 しかし、フィアッセは強気に反論した。
「スタースクリーム、あなたみたいな人じゃ、どれだけ強い力を得たって――」
 言いかけ――気づく。
「ちょっと待って……
 今……“高町なのは”って言った!?」
「あぁ」
 答えるスタースクリームの言葉に、フィアッセの顔から血の気が引いた。
(そんな……!
 どうして、なのはがここに……!?)

 一方、火口の入り口でも状況は動いていた。
「ここか……
 待っていろよ、スタースクリーム!」
「待ちやがれ、フレイムコンボイ!」
「なのは達のジャマはさせないってば!」
 火口の中へと突入していくフレイムコンボイを追って、ライガージャックとアルクェイドもまた火口の中へと飛び込んでいく。
「我々も行くぞ!」
「あぁ!」
 スタースクリームの言葉に応え、シグナムもまた火口に向かおうとするが、
「ここか……我が部下を連れ去ってくれた者の隠れ家は」
『――――――っ!?』
 突然の頭上からの声に振り向き――
「グレートポントス、プレダキング、オボミナス……どうやら、皆健在のようだな」
 3人の合体戦士――自分の信頼する部下の姿を確認し、スカイクェイクは満足げにうなずいた。

「スカイクェイク様!」
 突然のスカイクェイクの出現にも真っ先に反応したのはプレダキングだった。フェイト達との戦闘中であることも忘れ、火口の縁に降り立った彼に向かってひざまずく。
 そんなプレダキングを見下ろし、スカイクェイクは告げた。
「プレダキング――そいつらは我らホラートロンにとっても敵だ。引き続きそこで足止めを行え」
「はっ!」
「頼むぞ。
 私は貴様らを連れ去った者にオトシマエをつけに行く」
 言って、火口に向かおうとするスカイクェイクだったが――
「そうはいかない!」
 そんな彼の前に、スターセイバーがシグナムと共に立ちふさがった。
「貴様達がこの星のデストロンなのだと言うのなら――いずれ我らが主に災いをもたらそう」
「そうなる前に――貴様を斬る!」
「上等だ。やれるものならやってみろ!」
 シグナムとスターセイバーの言葉に言い返すと、スカイクェイクは二人に向けてかまえ、
「スカイクェイク――セパレーション!」
 高らかに咆哮すると同時――スカイクェイクの身体が分かれた。
 両足とボディ前部がT-REX型、両腕が東洋の龍型、バックユニットとデスシザース、頭部が飛竜型――3体のドラゴン形態となったそれは一斉にスターセイバーやシグナムへと襲いかかる!
「こいつら……!」
「まさか、合体戦士だったのか!?」
 驚きながらも攻撃をかわし、スターセイバーとシグナムがうめくと、スカイクェイクの分離したドラゴン達が口々に答えた。
「合体戦士ではない!」
「我々は分離しながらも同一の意識を保つ――」
「言ってみれば、『分離戦士』とでも言おうか!?」
 確かに、彼らの動きには一寸の乱れもない。意志の疎通が完全に保たれている証拠だ。
『我らは3体にして1体!
 この波状攻撃、止められるか!?』
 咆哮し、彼らの牙が次々にシグナムやスターセイバーに襲いかかり――!

「トランス、フォーム!」
 咆哮し、ソニックボンバーはビークルモードへとトランスフォーム。マスターメガトロンに機銃で攻撃を仕掛けたかと思うと素早く離脱する。
「捕まえられるものなら捕まえてみろよ、マスターメガトロン!」
「フンッ、そうさせてもらおうか。
 トランスフォーム!」
 対して、マスターメガトロンもまたメガジェットモードにトランスフォーム、ソニックボンバーの後を追う。
「どうした、どうした!?
 デカいのは口だけか!?」
 背後からソニックボンバーに銃撃を仕掛け、マスターメガトロンが余裕で告げるが、
「そっちこそ――誰か忘れてないか!?」
「――――――っ!?」
 ソニックボンバーの言葉に気づくが、もう遅い――マスターメガトロンが反応するよりも早くソニックボンバーは機動を変え、
「油断大敵!」
 前方で待ちかまえていたクロノが、マスターメガトロンにブレイズキャノンをお見舞いする!
「く………………っ!」
「逃がすかよ!」
 たまらず離脱しようとするマスターメガトロンを逃がすまいと、背後にピッタリとくっついて追いかけるソニックボンバーだったが、
「そこだぁっ!」
 今度はこちらが待ち伏せされた。デモリッシャーの放ったクレーンアームがソニックボンバーを弾き飛ばし、
「もらったぁっ!」
 その背後にマスターメガトロンが回り込んだ。デスクローをかまえ、ソニックボンバーに襲いかかり――
「危ない!」
 放たれたアンカーがマスターメガトロンを弾き飛ばす。
 そして――
「まったく……」
「ムチャなヤツだな、キミは……」
「それがオレの美点でね♪」
 ため息まじりに告げるライブコンボイと真一郎に、ソニックボンバーは笑って答えてすぐにマスターメガトロンを追う。
「くそっ、やってくれたな……!」
 一方、大地に叩きつけられたマスターメガトロンが立ち上がると、
「マスターメガトロン、覚悟!」
「マックス、ラジャー!」
 そんなマスターメガトロンにヘルスクリームとマックスビーが襲いかかり――
「人の獲物、取んじゃねぇよ!」
 ソニックボンバーのドロップキックが、二人をまとめてブッ飛ばす!
 そして――
「じゃ今度は――」
「ボク達の相手をしてもらおうか!」
「なんの、それしき!」
 真一郎とライブコンボイが告げ、繰り出したジャイロソーサーとデモリッシャーのクレーンアームが激突する!

「これならどうだ!」
 海上のクロミアに向け、ドレッドロックがエネルギーミサイルを放つが、クロミアは小回りを効かせてその攻撃をかわし、
「今度は、こっちの番よ!」
「させるか!」
 クロミアの放った反撃のミサイルを、ドレッドロックもジェットストリームで叩き落す。
 その眼下では、ゴッドジンライ、ヴィータとグレートポントスが激突していた。
「くらえぇっ!」
「いっけぇっ!」
 ゴッドジンライとヴィータが一斉砲火で攻撃を仕掛けるが、
「なんの!
 スクランブル、チェンジ!」
 グレートポントスは左足のテンタキルを分離させると代わりに脚部に変形したオーバーバイトを合体。分離したテンタキルはオーバーバイト同様多連装の銃に変形、グレートポントスの手に収まり、一斉射撃でゴッドジンライ達の攻撃を叩き落とす。
「こいつ……!」
「手足や武器を入れ替えられるのか!?」
「オレ達合体戦士は全員そうさ!」
 うめくゴッドジンライとヴィータにグレートポントスが答え、再び両者の砲火が激突する!
「ちょっと待てぇ!
 このオレ様を無視すんなぁっ!」
 そんな両者の激突に怒りの声を上げ、ランページが突撃しようとするが、
「お前の相手は――」
「オレ達だ!」
 そんなランページに、ワイルダーとキャンサーが襲いかかる!

「待てぇっ!」
「待つのだぁっ!」
「誰が待つかぁっ!」
 声を上げるロディマスブラーと美緒に答え、ガスケットは二人の前を疾走する。
 と――
「逃がすものか!」
「逃げ場はないぜ!」
 その眼前にニトロコンボイと耕介が立ちふさがった。ロディマスブラーと挟撃する形でガスケットへと突っ込み――
「へへんっ♪」
 ガスケットは余裕で笑いをもらした。
「グレートレースで、オレが何使ったか、忘れたか!?」
 言うと同時――ガスケットの姿が彼らの視界から消えた。
 いや――車体下部のバネで跳躍、上方に脱出したのだ。
 グレートレースの時に使っていた、ウルトラスーパースペシャルチューンナップのひとつである。
「あれは――!?」
「まだ着けてたの!?」
 驚くロディマスブラーと美緒だが――そんな場合ではない。スピードが乗っているため、ニトロコンボイをかわせない!
 そして、両者の距離が瞬く間に0になり――!

「……あ、あれ?」
 しかし、激突の衝撃はなかった。不思議に思って美緒は顔を上げ――
「まったく、危ないったらないね」
 そんな彼女に告げるのは、上空に跳んでロディマスブラーを抱えたオートボルト――そのライドスペースにいるリスティだ。
 彼女が瞬間移動テレポートで二人を救出、ニトロコンボイとの激突を回避したのだ。
「すまない、リスティ!」
「耕介も、もっと注意しなよ!」
 礼を言う耕介にリスティが答え、オートボルトはロディマスブラーを地上に放り出して着地した。

 そして、彼らの挟撃を回避したガスケットはというと――
「………………ん?」
 次の獲物を探して走り回っていたところ、手ごろな岩に腰掛けているロードストームに気づいた。
「お前、スタースクリームんトコの新顔じゃねぇか」
「あぁ。
 だが、今は休憩中だ」
「休憩中……?」
 その言葉に、ガスケットはしばし考え、
「……じゃ、オレも♪」
 言って、ロボットモードとなってロードストームのとなりに腰かけ――
『サボるなぁぁぁぁぁっ!』
 インチプレッシャーのダブルヘッドハンマーとブルホーンの体当たりが二人をブッ飛ばした。

 一方、その頃なのは達は火口の底を目指して降下を続けていた。
 しかも、その後をライガージャックやアルクェイド、フレイムコンボイも追ってきている。
「くそっ、しつこいヤツらだ……!」
 そんな彼女達の姿に、ノイズメイズは再びスイッチを入れ――今度は電撃がなのは達に襲いかかる!
 しかし――
「先程は不意をつかれたが、今度はそうはいかない!」
 それに反応したのはベクタープライムだ。剣でワープゲートを作り出し、その中に電撃を誘導し――
「あばびぶべばぁっ!?」
 展開されたゲートの出口はフレイムコンボイの目の前だった。解き放たれた電撃がフレイムコンボイを直撃する!
 そして、ワナを潜り抜けたなのは達は火口の中腹に到着。そこで待ち伏せしていたノイズメイズと対峙する。
「またお前か!」
「今度はサイバトロンかデストロンか、どっちなのよ!?」
「どっちでもないさ」
 ライガージャックとアルクェイドの言葉に、ノイズメイズはひょうひょうと答える。
「今は、スタースクリームの陣営さ」
「つまり、スタースクリームと会うには、お前を倒さなくてはならないということか」
「そういうこと!
 フォースチップ、イグニッション!」
 ギャラクシーコンボイに答え、ノイズメイズはフォースチップをイグニッションし、ブラインドアローをかまえる。
 そして、真っ向からギャラクシーコンボイに襲いかかり――その姿がかき消える!
「え――――――っ!?」
 突然の異変になのはが声を上げ――
《危ない、なの姉!》
 プリムラが反応した。とっさに飛翔してその場を離れ、ノイズメイズの刃をかわす。
「何!? 今の!」
《ワープだよ!
 あいつ、ワープでなの姉の後ろに回り込んだんだよ!》
 声を上げるなのはにプリムラが答えるが、ノイズメイズは今度はライガージャックの背後に出現。殴り飛ばしてギャラクシーコンボイに叩きつける。
「――ならば!」
 そんなノイズメイズに、ベクタープライムが襲いかかった。ノイズメイズに斬りかかるが、それはノイズメイズにかわされてしまう。
「ダメ……当たらない!」
 思わずアルクェイドがうめくと、ベクタープライムは彼らに告げた。
「リンクアップだ!」
「え………………?
 けど、リンクアップしたらスピードが落ちちゃうよ。あのワープに対抗できない!」
 思わずベクタープライムに反論するなのはだが、
《なの姉、ベクタープライムの言うとおりにして!》
 そう告げるのはプリムラだ。
《説明してるヒマはないけど、ベクタープライムの策なら大丈夫!》
「しかし、リンクアップのためにはフェイトがいなければ……!」
 プリムラの言葉にギャラクシーコンボイが言うと、
《それなら大丈夫!
 ジンジャー! こちらプリムラ! 応答して!》
〈こちらジンジャー!〉
 告げるプリムラの呼びかけに、フェイトに装着されているはずのジンジャーの声が無線から返ってくる。
 時折爆音が聞こえる――向こうも戦闘中のようだ。
《フェイトちゃんにリンクアップ・ナビゲータを使ってもらって!
 あたし達で中継するの!》
〈了解です。
 いいですか? フェイト〉
〈うん!〉
 ジンジャーの声にうなずくフェイトの声が聞こえ――ギャラクシーコンボイとライガージャックのスパークが活性化した。
 フェイトがリンクアップ・ナビゲータを使ったのだ。それがジンジャー、プリムラを介してこの場で効果を発揮し、二人のスパークの中にコンビネーションスパークが作り出されたのである。
《準備完了!
 ギャラクシーコンボイ!》
「うむ!」
 プリムラの言葉にうなずき、ギャラクシーコンボイはなのはへと向き直った。
「なのは――合体するぞ!」
「はい!」

『ギャラクシー、コンボイ!』
 なのはとギャラクシーコンボイが叫び、ギャラクシーキャノンを分離させたギャラクシーコンボイが右腕を後方にたたむ。
『ライガー、ジャック!』
 次いでアルクェイドとライガージャックの叫びが響き、ライガージャックは両腕を分離、両足を折りたたむとそこに分離していた両腕が合体し、巨大な右腕に変形する。
 そして、両者が交錯し――
『リンク、アップ!』
 4人の叫びと共に、右腕となったライガージャックがギャラクシーコンボイに合体する!
 背中に分離していたギャラクシーキャノンが合体。最後にライガージャックの変形した右腕に拳が作り出され、4人が高らかに名乗りを上げる。
『ライガァァァァァ、コンボイ!』

「フンッ! 合体したところで、むだムダ無駄ぁっ!」
 合体したライガーコンボイを前に、ノイズメイズは余裕でワープを繰り返すが、
「――そこだ!」
「わかった!」
 ベクタープライムの指示でライガーコンボイが攻撃。出現したノイズメイズをビームが直撃する!
「次はそっちだ!」
「お任せ!」
 今度はなのはだ。放ったディバインバスターがノイズメイズをとらえる。
「ばっ、バカな……!?」
 うめいて、再度ワープするノイズメイズだが――
「目の前だ!」
「うむ!」
 ベクタープライムに従い――ライガーコンボイがノイズメイズを殴り倒す!
「すごい……!
 どうしてわかるの!?」
 おもしろいように攻撃が当たる――なのはが声を上げると、プリムラが答えた。
《ベクタープライムの左手、何か気づかない?》
「え………………?」
 その言葉に、なのははベクタープライムを見て――気づいた。
「ルーツくんがいない!
 じゃあ、ルーツくんが!?」
 そのとおりだった。ベクタープライムがノイズメイズに斬りかかったあの時――あの斬撃はただのフェイクだったのだ。あの時、ベクタープライムは斬撃を仕掛けると見せかけ、ノイズメイズにルーツをはりつかせていたのだ。
 そのルーツが位置を知らせることで、ベクタープライムはノイズメイズのワープ先を特定していたのだ。
「くっ、くそぉ……!」
 うめいて、ノイズメイズは殴られた頭を抱えて立ち上がり――
「ぬぉおぉりゃあぁぁぁぁぁっ!」
 咆哮と同時――落下してきたフレイムコンボイがノイズメイズを踏みつぶした。

 そして、火山の中腹では――
「ダイアトラス、ザフィーラ……まだ大丈夫?」
「問題ない」
「未だ健在」
 頭上から尋ねるフェイトの言葉に、地上のザフィーラとダイアトラスが答える。
 そんな彼らに対し、対峙するプレダキングは静かにかまえ――
『――――――っ!?』
 気づいたフェイト達がとっさに防壁を展開した。彼女の防壁を、そしてプレダキングの周囲を降り注いできたビームが激しく叩く。
 とっさにフェイトが上空を見上げると、そこにはアニマトロスでスカイリンクスと戦ったトランスフォーマーの姿。
 スカイリンクスから聞いている。その名は――
「アイツは……キラーパンチ!?」
 驚くフェイトにかまわず、キラーパンチは一直線に彼女に突っ込み――展開したディフェンサーの防壁に、体当たりの要領で右肩のドリルを叩きつける!
「く………………っ!」
 高速で回転するドリルが、防壁にぶつかって火花を散らす。勢いやパワーよりも重量差に押され、フェイトは思わずうめき――続けて、キラーパンチの左肩に装備したブルドーザーのスクレーパーが叩きつけられる!
 完全にフェイトは吹き飛ばされ――キラーパンチのライドスペースで、仮面の戦士が告げた。
「フォースチップ、イグニッション」
 その言葉と共に、黄色のフォースチップがキラーパンチの背中のチップスロットに飛び込み、右手にドリル、そして左手にスクレーパーがそれぞれ装着され、その双方に“力”が宿る。
 そして――
「ペネトレイトクラッシュ!」
 繰り出したドリルでディフェンサーを粉砕、スクレーパーの一撃でフェイトを大地に叩き落す!
「くぁ………………っ!」
 大地に叩きつけられ、うめくフェイトに対し、キラーパンチは静かにドリルをかまえ――その先端が回転を始める。
「殺す必要はあるまい?」
「ここで情けをかけてたら、デストロンに見えないだろう?」
 告げる仮面の戦士に答え、キラーパンチはフェイトに向けて急降下し、
「とどめだ――小娘!」
 ドリルが繰り出された。

 しかし――
「――――――っ!?」
 必殺のはずの一撃はフェイトに届かなかった。
 突然割って入ったトランスフォーマーが、キラーパンチのドリルを受け止めたのだ。
 そして、そいつはドリルを押し返すとフェイトを守ってキラーパンチと対峙。そのパートナーが意識を失ったフェイトに駆け寄る。
「貴様……何者だ!?」
 うめくキラーパンチに、乱入者達は高らかに名乗りを上げた。
「モンスターハンター、プロテクトボット――合体勇者ガーディオンとそのパートナー、セルフィ・アルバレッド!」
「ここからは、私達が相手です!」

「グランダスさん!」
「わかっている!
 対空システム起動! 全基オートモード!」
 ブリッジのさつきの呼びかけに答え、戦艦モードのグランダスは全身の対空火器を全自動モードで撃ちまくり、襲いかかる地球デストロン達を寄せつけない。
「他のみんなは!?」
「もうすでに交戦に入っている。
 我々はここで各自の援護だ」
「はい!」
 答えるグランダスにさつきがうなずくと、
〈こちらシェリー!〉
 突然シェリーから通信が入った。
〈敵と交戦していた少女と合流したんだけど、私達が駆けつける直前にいいのをもらっちゃったみたいで……!
 とにかくそっちに連れて戻るから、医務室の用意をお願い!〉
「は、はい!」

「これでもくらえ!」
「お断りだ!」
 サイクロナスに言い返し、ブレインストームは放たれたエネルギーミサイルをかわしてロボットモードへとトランスフォームする。
 そして――
「いくぞ、レン!」
「おぅっ!」
『フォースチップ、イグニッション!』
 地球のフォースチップをイグニッション。背中のチップスロットにフォースチップが飛び込むと、背中にマウントされていたビークルモード時の機首が分離。右肩にキャノン砲となって再合体し、
『ストーム、ブラスター!』
 放たれたビームをかろうじてかわすが、閃光の周囲に巻き起こった衝撃波をまともにくらい、サイクロナスは大きく吹き飛ばされる。
「とどめだ!」
 そんなサイクロナスへと、ブレインストームは再びストームブラスターを向け――
「させるかよ!」
 ビークルモードのスナップドラゴンが、ブレインストームへと機銃で攻撃をしかける!

「オォォォォォッ!」
 咆哮し、オボミナスは力任せにスカイリンクスを組み伏せ、押しつぶそうとする。
「なんの!
 デスブリザード!」
 対し、スカイリンクスも両肩の獣の口から凍気を放ち、オボミナスの顔面を凍結。戸惑うそのスキをついて脱出する。
「大丈夫か!?」
「なんとかな!」
 尋ねる恭也に答え、スカイリンクスはスカイアックスをかまえる。
「しかし……いくら攻撃を叩き込んでもビクともせん。
 こんなタフなヤツは久しぶりだな」
「おいおい、弱音か?」
「冗談。
 ただ面倒くさいだけだ」
 恭也の言葉にスカイリンクスが肩をすくめて答えると、そんな二人にオボミナスが襲いかかり――
「たぁぁぁぁぁっ!」
 咆哮と共に、その巨体が飛び込んできた新たな影に蹴り飛ばされた。
 オボミナスと同等の体躯。全身の各所に配された恐竜の意匠。彼は――
「合体武神ダイリュウジン――ここに見参!」
「悪いことは――もうさせないんだから!」
 名乗りを上げるダイリュウジンと共に、彼のパートナーである都古もそのライドスペースで宣言する。
「アイツも、合体戦士か……?」
「しかし、オボミナスの仲間ではなさそうだ。
 もしや、ライブコンボイの仲間ではないか?」
 つぶやく恭也にスカイリンクスがつぶやくと、
「ライブコンボイを知っているのか?」
「――――――っ!?」
 聞こえた声は背後から――だが、その声には聞き覚えがあった。恭也はあわてて振り向き――目を丸くした。
「気が緩んだか? あっさりと背後を許すな」
「それじゃあ先が思いやられるね」
 そこに降り立ったブロードキャストの足元で恭也に告げるのは――
「と、父さん!?
 それにエリスも!?」
 高町士郎とエリス・マクガーレン――二人を前に、恭也は思わず驚きの声を上げていた。
「どうして、二人がここに!?」
「まぁ、いろいろとあってな……」
 尋ねる恭也に士郎が答えようとすると、
「お、お前ら!?」
 またもや頭上から驚きの声――見上げると、そこにはサンダークラッカーが驚きもあらわに佇んでいる。
「サンダークラッカー!?」
「貴様も復帰したのか!」
 とっさにかまえ、叫ぶ恭也とスカイリンクスだが――
「まっ、待ってください、師匠!」
「な――――――っ!?」
 着地したサンダークラッカーから出てきた晶を前に、恭也は完全に言葉を失っていた。
「サンダークラッカーは敵じゃありません!
 オレ達を助けて、ここまで案内してくれたんです!」
「どういうことだ……!?」
 サンダークラッカーが晶を助けた?――事情が呑み込めず、視線を向ける恭也に対し、サンダークラッカーは気まずそうに視線をそらした。

「いくぜ――ライブコンボイ!」
「OK!」
 告げる真一郎にライブコンボイが答え、
『フォースチップ、イグニッション!
 ホーミング、ミサイル!』

 放たれたエネルギーミサイルが、マスターメガトロンに襲いかかる!
 同時、反対側から迫るのはソニックボンバー。さらには上空からはクロノが狙いを定めた。ソニックボンバーがミサイルを、クロノがスティンガーブレイドを放つが、
「なんの!」
 マスターメガトロンは周囲に雷撃をまき散らし、彼らの攻撃を薙ぎ払う。
 そのまま、マスターメガトロンの雷撃は彼らを捕まえるが――
『フォースチップ、イグニッション!』
 眼下で新たな咆哮。そして――
『フォース、ミサイル!』
 オートボルトとリスティが放ったフォースミサイルがマスターメガトロンを直撃する!

「デスフレイム!」
 咆哮し、ビーストモードのフレイムコンボイが放ったデスフレイムがノイズメイズとベクタープライムに迫るが――
『フォースチップ!』
『イグニッション!』

 ライガーコンボイとなのは、ライガージャックとアルクェイド――2組の声が響き、飛来したアニマトロスのフォースチップがライガーコンボイの右腕のチップスロットに飛び込む。
 そして、右腕のプラティナムクローを展開したライガーコンボイはそれを天高く掲げ――その全身がフォースチップの“力”の輝きに包まれる!
 渦巻くエネルギーに導かれ、浮き上がったライガーコンボイは一気にフレイムコンボイへと突っ込み、
『ライガー、グランド、ブレェイク!』
 叩きつけた一撃が、フレイムコンボイを吹き飛ばす!
 しかし――
「――――――っ!?」
 その“力”を感じ取り、なのはは顔を上げた。
 となりでも気づいたようだ――同様に顔を上げ、アルクェイドがつぶやいた。
「……マスターメガトロンが来る!」

「よく考えれば、貴様らの相手などしてる場合ではないではないか!」
 ようやく自分の最初の目的を思い出した。再び火口を目指し、マスターメガトロンが高速で降下していくが、
「逃がしはしない!」
 それを阻むべく、ライブコンボイもその後を追う。
 そして、マスターメガトロンへと照準を合わせ――
「させるかぁっ!」
 妨害が入った。大きく跳躍したデモリッシャーが、クレーンアームでライブコンボイを叩き落とす!

「マスターメガトロンが来たぞ!」
 フレイムコンボイとライガーコンボイやなのは達との戦いから抜け出し、逃げ帰ってきたノイズメイズがスタースクリームに告げる。
「何よ、威勢良く出て行ってソレ?」
「う、うるさい!」
「なのはにも勝てないなんて、大したことないんじゃない?」
「お前なぁ……あの娘の戦闘力知らないヤツのセリフだぞ、ソレ」
 フィアッセの言葉にノイズメイズが答えると、
「漫才はそのくらいにしておけ」
 そんな二人をスタースクリームがたしなめた。
「どうする?」
「来るなら来い。
 貴様はその間に“アレ”の起動準備を進めておけ」
 尋ねるノイズメイズに、スタースクリームは答えた。
「だが――誰にもオレの、ジャマはさせない!」
 その言葉と同時――スタースクリームに変化が起きた。

「ここから先へは――」
「行かせないんだから!」
 火口へと降下し、フレイムコンボイと合流したマスターメガトロン――その前に立ちふさがり、ライガーコンボイとなのはが告げる。
「えぇい、ジャマをするな!」
 そんな二人にマスターメガトロンが言い放ち――大地が揺れた。

「な、何だ……!?」
「何――――――?」
 地上でも、異変は感知されていた。突然火山島が鳴動を始めたのを見て、スカイクェイクとクロミアがそれぞれの戦場で声を上げる。
 次の瞬間、火口の中からエネルギーの渦があふれ――突然火山が噴火する!
「火山が!?」
「ギャラクシーコンボイ――なのは!」
「ライガージャック! アルクェイド!」
 シグナムやフェイト、志貴が思わず声を上げ――
「我々ならここだ!」
「なんとか無事です!」
 その声に、サイバトロン全員が声のした方へと注目し――そこには、ベクタープライムのワープで難を逃れたライガーコンボイやなのは、アルクェイドの姿があった。
「何が起きたのよ……?」
「チップスクェアの影響かもしれない」
 つぶやくアルクェイドにライガーコンボイが答えると、
「だとすれば……急がねば!」
 言って、ベクタープライムは再びワープゲートを展開。火山のマグマの及んでないポイントを選んでワープしていく――

 その様子を、ソニックボンバーもまた上空から見ていた。特に、ライガーコンボイの姿を見て声を上げる。
「な、何だ? あの姿は」
「ライガージャックとギャラクシーコンボイがリンクアップした、ライガーコンボイだ」
 つぶやくソニックボンバーにクロノが答え――とたんにソニックボンバーの目が輝いた。
「リンクアップか!
 やるな、総司令官!」

 一方、マスターメガトロンやフレイムコンボイも脱出に成功していた。火口の外まで登りきり、フレイムコンボイはひとまず息をつき――突然、その背中に影が落ちた。
 何事かと振り向き――フレイムコンボイは目を丸くした。
 天高く吹き上がるマグマの中に――巨大な影が現れたのだ。
 そのシルエットは――

「スタースクリーム!?」
 アースラからもその様子はモニターしていた。マグマの中に見えるスタースクリームの影に、エイミィは思わず声を上げた。
 しかし――
「何、あの大きさ……?
 100メートルは軽く超えてない!?」
 知佳のつぶやくとおり、その影はあまりにも巨大なものだった。
 だが――リンディは気づいていた。あの影の正体に。
「……プライマスのスパークを吸収して――その膨大なエネルギーを入れるための器として、自らの身体を巨大化させたのね……!」
 そのつぶやきと同時――以前とは比べ物にならないほどに巨大な身体を手に入れたスタースクリームが、マグマの中からその姿を現した。

「な、何だよ、あの大きさ……!」
「冗談キツいにも、ほどがあるわよ……!」
 姿を現した、巨大化したスタースクリームのあまりの大きさに、バックギルドとアリサは思わず声を上げる。
 と――スタースクリームの足元からそれは浮上してきた。
 彼のサイズに合わせた王冠だ。
 そして――王冠をその頭に戴き、スタースクリームは高らかに宣言した。
「マスターメガトロン……貴様の時代は終わった。
 これからはこの私――」

 

「超星大帝、スーパースタースクリームの時代だ!」


 

(初版:2006/09/17)