「おい、ラナバウト」
火山島の最深部、そこに作られた横穴――そのまた奥に作られた巨大な空洞にラナバウトはいた。戦闘にも参加せずにずっと作業に没頭していた彼に、スタースクリームの命でやってきたノイズメイズが声をかけた。
「作業の具合はどうだ?」
「プラネットフォースからのエネルギー充填は完了。
今は起動処理の完了待ちだ――それが終わったら火器管制の安全装置の解除と、スタースクリームのマスター権限の登録だな」
「そうか……」
ラナバウトの答えに、ノイズメイズは“それ”を見上げた。
「けどさぁ……
なんか、コレ使う前に決着ついちまいそうなんだけど」
「ま、命令なんだ。さっさと起動させちまおう」
そんな会話を交わす彼らの前で、とてつもなく巨大な――今のスーパースタースクリームにも引けを取らないほどの大きさの“それ”は、地下空洞の暗闇の中で静かに目覚めの時を待っていた。
その一方で――
「よし、到着!」
ワープゲートを抜け、ギガストームやオーバーロードらスタントロン・バンディットロン連合軍は火山島に降り立った――ようやくの到着に、オーバーロードが声を上げる。
「なら、後はサイバトロンやデストロンどもを片付けて、プラネットフォースをいただくとするか」
「おぅ。
野郎ども、大暴れして――」
ギガストームの言葉にうなずき、一同に指示を下――そうとしたオーバーロードだが、メナゾールを始め部下達が呆然としているのに気づいた。
不思議に思い、二人は彼らの視線の先へと振り返り――
『何じゃありゃぁぁぁぁぁっ!?』
火口に姿を現したスーパースタークリームを前に絶叫した。
第39話
「重なる心
ソニックコンボイさん参上なの!」
「ど、どうなってるの……!?」
今彼はちゃんと大地に足をつけて立っているはずだ。だが、正面に映る彼の視界は異様に高い――スーパースタースクリームのライドスペースの中、フィアッセは状況が呑み込めず思わず声を上げた。
だが、返ってきた答えはそっけないものだった。
「貴様がそれを知る必要はない。
ただ黙って座っていればいいんだ」
「そうはいかないわ!
これからなのは達と戦うつもりなんでしょう!?」
反論するフィアッセだが、セーフティーバーによって固定された身体はビクともしない。フィンを展開しようにも、何らかのジャミングが行われているのか“力”を発現させることができない。
「心配するな。命までは取らん。
だが――抵抗が無意味だということは、思い知ってもらうがな」
そんなフィアッセに告げ、スーパースタースクリームはゆっくりと踏み出すとその巨体を火口の中から出していった。
「ふざけんな!」
「デカくなったからって、調子に乗りやがって!」
一方、スーパースタースクリームの大帝宣言に真っ先にキレたのがランドバレットとガスケットだった。岩を踏み台にして跳躍し、スーパースタースクリームへと飛びかかるが、
「ふんっ!」
スーパースタースクリームにとっては何の脅威でもなかった。一息で二人を吹き飛ばす!
「な、なんてパワーなの……!?」
「アイツらだって弱くないのに……!」
サイバトロン基地で戦いを見守り、琥珀と舞はスーパースタースクリームのパワーを前に思わずうめく。
〈私のセンサーなどでは、とても計測しきれないパワーです……!
その気になれば、おそらくこの星の大陸すら破壊することが可能と思われます……!〉
「そんな……!」
アースラのホップの言葉に愛が息を呑む傍らで、秋葉はモニターのスーパースタースクリームをにらみつけた。
「あんなものを……どうやって倒せって言うんですか……!」
「フン、どんな抵抗ももはや無意味だ。
これからはこの私がデストロンの王となる」
ランドバレット達をいとも簡単に吹き飛ばし、悠然と告げるスーパースタースクリームだが、
「ククク……バカめが」
マスターメガトロンの口元に浮かんだのは、むしろ余裕の笑みだった。そのままスーパースタースクリームの眼前まで上昇、真っ向から対峙する。
「何がおかしい?」
「お前の王の器か?
オレの目を盗んでコソコソと反逆の機会をうかがい、役にも立たぬ連中と、徒党を組むようなお前が?」
「何を……!?」
マスターメガトロンの言葉に、スーパースタースクリームは口元を歪めた。
「お前はただの卑怯者だ――違うか?」
「……負け惜しみにしか、聞こえんな」
静かに答え、スーパースタースクリームはマスターメガトロンをにらみ返す――だが、先程のマスターメガトロンの言葉によって灯った怒りの火は、未だ彼の瞳の中で燃え盛っている。
「プライマスのスパークの“力”を手に入れた私にとって、お前などはもはや虫けら同然」
「ムリをするな。
身体はデカくなっても性根は昔のまま――小心者のクセしおって」
「――――――っ!」
その言葉に、思わずマスターメガトロンに向けて手を伸ばすスーパースタースクリームだったが、
「フンッ」
マスターメガトロンは自らの“力”を解放。全身にまとったエネルギーでその手を押しのける。
「ならば……!」
対して、スーパースタースクリームもまた“力”を高め――二人の巻き起こしたエネルギーが衝突し、大地を揺るがす!
「アイツら……!」
対峙するマスターメガトロンとスーパースタースクリーム、両者のにらみ合いを前に、ギガストームは思わずうめいた。
ただし、それは二人のパワーに気圧されたのではなく――
「オレ様達を完全に無視して話を進めるか……!?
ただでさえさっきまで出番がなかったのに!」
「仕方ないだろ。
全員が全員、ヤツの巨大化に意識が向いてるんだから」
自分がシカトされていることに怒っていた。そんなギガストームの言葉に、オーバーロードは彼の肩をポンと叩いて慰めの言葉を告げる。
しかし、そんなオーバーロードも、現状を前に黙っているつもりなどなかった。
「だがな――ギガストーム。
それならそれで、無視されている現状を最大限に利用すべきだとは、思わないか?」
「何………………?」
思わず怪訝な顔をするギガストームだが――オーバーロードの視線の先を見て「あぁ」と納得した。
「なるほど……そういうことか」
「あぁ」
ギガストームに答えるオーバーロードの見つめる先は――
スーパースタースクリームが姿を現した、火山の火口だった。
「な、なんてパワーだよ……!」
「けっこう離れてるのに、ここまでパワーが伝わってきやがる……!」
火山島での超パワーの激突は離れたところで戦っている――すなわち真っ先に足止めに取りかかり主要チームから別れていたゴッドジンライとヴィータにも感じられた。グラーフアイゼンでランページを張り倒しながらうめくヴィータの言葉に、ゴッドジンライはグレートポントスと力比べしながら答える。
「こりゃ、急いだ方がいいな……!
ヴィータ!」
「おぅっ!」
ゴッドジンライに答え、ヴィータはグラーフアイゼンをかまえ、
「グラーフアイゼン!」
〈Explosion!〉
ヴィータの言葉に、グラーフアイゼンはカートリッジをロードした。
それも――2発。
とたん、グラーフアイゼンが巨大化した。すさまじい質量を有する巨大なハンマーとなる。
魔力によって浮力を得たそれを掲げ、ヴィータは仕上げとばかりにさらに1発カートリッジをロードし、
「ジンライ!」
「おぅよ!」
ヴィータに答え、ゴッドジンライはグレートポントスの重心を崩すとヴィータに向けて投げ飛ばし、
「どわぁぁぁぁぁっ!?」
さらに吹っ飛ぶグレートポントスはワイルダーとキャンサー、さらに彼らと戦うランページをも巻き込んだ。彼らはまとめてヴィータの方へとブッ飛ばされて――
「ギガント、シュラーク!」
ヴィータは渾身の力でグラーフアイゼンを振るった。重量と遠心力、そして魔力の多分に込められた一撃がグレートポントス達をブッ飛ばす!
「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!?」
「まとめてブッ飛びまぁす!」
「何か余裕じゃねぇかキャンサー!?」
「なんでワシまでぇぇぇぇぇっ!?」
「よっしゃ――いくぞ、ジンライ!」
「おぅっ!」
天高くブッ飛ばされ、豪快に水しぶきを上げて海中に没する彼らなどすでに眼中になかった。ヴィータの言葉にゴッドジンライがうなずき、彼らもまた火山島へと急いだ。
「むんっ!」
まさに野獣のごとき勢いで襲い来るオボミナスの突撃を、ダイリュウジンはまるで闘牛士のように受け流し、
「今だよ、ダイリュウジン!」
「あぁ!」
都古に答え、そのままオボミナスの背中に蹴りを入れる。
「猪武者なところは昔と変わらないな、オボミナス」
それでも立ち上がり、こちらへと向き直るオボミナスに告げるダイリュウジンだが、
「グォオォォォォォッ!」
オボミナスはかまわない。再びダイリュウジンへと突っ込んでいくが、
「愚かな……」
ダイリュウジンはオボミナスの突撃をかわすとその肩に、その腕に手をかけて――
「少しは技も磨け。
力ばかりでは、技の前に屈することとなる」
ダイリュウジンが告げると同時、投げ飛ばされたオボミナスの身体が宙を舞っていた。
「真の王の力――見せてやる!」
言って、マスターメガトロンは自身の“力”を解き放ち――
「よせぇいっ!」
それに待ったをかけたのはフレイムコンボイだった。
「マスターメガトロン――お前達が本気でやりあったら、地球は木っ端微塵だ!」
「――って、本当か!?」
「無論だ!」
頭上で思わず尋ねるクロノに答えるフレイムコンボイだが――その言葉にウソはないことはこの場の誰もが感じていた。
すでに火山島はあちこちで大地が裂け、マグマが噴き出している――二人の高めたエネルギーのぶつかり合いだけでもこの有様なのだ。実際にフルパワーでぶつかったらどれだけの被害になるか想像もつかない。
「ここはオレ達に任せろ!」
それは彼も感じていたのだろう――フレイムコンボイの言葉に、しばし考えたマスターメガトロンは、やがて静かにうなずいた。
「……よかろう」
「よし!
デスフレイム!」
うなずくと同時、フレイムコンボイはデスフレイムを発射、それを推進力にして一気にスーパースタースクリームの頭上まで飛び上がり、
「もう一発――デスフレイム!」
真下のスーパースタースクリームへとさらなるデスフレイムで攻撃をしかけるが、当のスーパースタースクリームは平然としている。
「何だ、そんなものか?」
余裕で告げるスーパースタースクリームだったが――
「かまわん!」
真下に放つデスフレイムで推進力も同時に維持しながら、フレイムコンボイは告げた。
「これで終わりでは――ないからな!」
その言葉と同時――
「ダブルヘッド、ハンマー!」
インチプレッシャーの投げつけたダブルヘッドハンマーがスーパースタースクリームの鼻っ柱をとらえ、
「エグゾーストショット!」
「ランドバズーカ!」
再び跳躍したガスケットとランドバレットの同時攻撃が、両横からスーパースタースクリームの頭部をとらえる。
そして、彼ら4名は大地に降り立つとスーパースタースクリームの正面に集結し、
『くらえ!
デストロン、スーパーファイナルアタック!』
彼らの放った同時斉射がスーパースタースクリームを直撃するが――
「そんなものか!」
スーパースタースクリームの全身のエネルギーがそれを阻んだ。傷ひとつ負っていないスーパースタースクリームは右足を無造作に振るい、そのままフレイムコンボイ達を文字通り蹴散らしてしまう。
「……チッ。
やはりオレが……」
そんな彼らの様子に、マスターメガトロンが再び力を高め――
「そうはさせるかぁっ!」
咆哮と同時――上空からハイブラストが突っ込んできた。不意に体当たりを受け、マスターメガトロンは勢いよく大地に叩きつけられる!
「おのれ……ジャマをするな!」
うめいて、ハイブラストを跳ね飛ばすマスターメガトロンだったが――
「悪いが、まだまだジャマさせてもらうぜ!」
エクシゲイザーが吼え、バンガードチームが一斉にマスターメガトロンに飛びかかる!
「なんてヤツだ……!
フレイムコンボイも含めた一斉射撃でも、ビクともしないなんて……!」
いともたやすくフレイムコンボイ達を蹴散らしたスーパースタースクリームの姿に、恭也は思わず声を上げる。
「あのフレイムコンボイとかいうヤツ、強いのか?」
「とんでもなく、な。
我輩の弟だが、アニマトロスのリーダーを務めるほどの豪傑だ」
尋ねるブロードキャストにスカイリンクスが答えると、
「サンダークラッカー」
気まずそうにしているサンダークラッカーに、士郎が声をかけた。
「お前がこの状況で複雑な立場にいることはなんとなくわかる。
だが――今はそんなことを言っている場合じゃない」
「あ、あぁ……」
士郎の言いたいことはなんとなくわかった。まだためらいはあるものの、サンダークラッカーはうなずき、恭也に告げた。
「オレ達デストロンにとってもスーパースタースクリームは敵なんだ。
力……貸してやるよ」
「すまない。
だが――ひとつだけ約束してくれ」
そんなサンダークラッカーの言葉に、恭也は真剣な表情で告げた。
「晶を……守ってやってくれ」
「それは、言われるまでもねぇ!」
恭也に答え――サンダークラッカーは上空へと飛び立ち――そんな彼に流れ弾が直撃する!
「ぅわぁっ!? やられた!?」
『早いよ!』
一同のツッコミが炸裂した。
「よっしゃ、いくぜ、クロ公!」
「その呼び方は何なんだよ!? 了解だけど!」
告げ、ビークルモードとなったソニックボンバーの言葉に苦情込みで同意し、クロノは彼の上に降り立ち、
『フォースチップ、イグニッション!』
咆哮し、セイバートロン星のフォースチップをイグニッション。ソニックボンバーの機首が展開され、中からより巨大な砲門が姿を現す。
「それならこっちも!」
「あぁ!」
『フォースチップ、イグニッション!』
さらに、ライブコンボイと真一郎も負けじとフォースチップをイグニッションし、背中にジェットブースターを展開し、
『ギャラクシー、キャリバー!』
『ジェットミサイル!』
放たれた二組の攻撃がスーパースタースクリームを襲うが、やはりその眼前のエネルギーの壁に阻まれてしまう。
「やはりあの防壁をなんとかしなければ、どうしようもないか……!」
「だったら!」
うめくライガーコンボイの言葉に、なのははレイジングハートをかまえ、
「レイジングハート、カートリッジ、ロード!」
〈Load cartridge!〉
なのはの指示に従い、レイジングハートがマガジン内のカートリッジを1発、シリンダーに送り込んで炸裂させる。
さらに――
「フォースチップ、イグニッション!」
〈Force-tip, Ignition!〉
告げると同時、黄色いフォースチップがレイジングハートのコアへとまるで溶け込むように飛び込み、なのはの周囲で魔力の光が渦を巻く。
そして――
「イグニッション――パニッシャー!」
放たれた閃光が渦を巻き、スーパースタースクリームの防壁に叩きつけられる!
さらに――
『ツインサーチミサイル!』
『ダブル、エクスショット!』
なのはを援護すべく、マスターメガトロンを抑えていたアリサとバックパックもツインサーチミサイルを発射。すずかとエクシゲイザーもダブルエクスショットで続く。
「なのはちゃん!」
「一気に決めちゃいなさい!」
「うん!」
すずかとアリサ、友人二人の激励に答え、なのははさらに光の奔流を強め――ついにスーパースタースクリームの全身のエネルギーを吹き飛ばす!
「す、すごい……!」
その戦いは、上空のグランダスでもモニターしていた。すさまじいエネルギーの激突を医務室のモニターで目の当たりにし、さつきが思わずつぶやくと、
「い、行かなくちゃ……!」
「って、その身体じゃムリだよ!」
《そうです!
私の防壁でも緩和し切れなかったほどの衝撃を受けたんです――もうしばらくは、安静にしていないと!》
ベッドの上で身を起こしたフェイトの言葉に、さつきとジンジャーはあわてて彼女を押し留める。
「けど……!」
だが、そんな二人の制止の声に、フェイトはモニターの中で戦うなのはの姿に視線を向けた。
「なのはが戦ってるのに……! 何もできないなんて……!」
「とりあえず、防壁はなんとかなったけど……!」
「肝心のスーパースタースクリームはまったくの無傷……戦いはこれからが本番ね」
アースラで戦いを見守り、つぶやく知佳にリンディが告げる。
「せめて、あたしもブロードキャストと合流できれば一緒に戦えるのに……!」
ここからではどうすることもできない――悔しさに歯噛みするアイリーンだが、
「………………あれ?」
レーダーを見ていたエイミィが気づいた。
(ベクタープライムの姿が……ない……!?)
「ベクタープライム、どこにいるの!? 応答して!」
まさか、気づかないうちに攻撃に巻き込まれたのでは――あわててエイミィが呼びかけると、
〈う……っ、く…………っ!
エイミィ、か……!〉
答えるベクタープライムの声には苦悶の色が感じられた。
〈私は今、火口の底にいる……!〉
「何かあったの!? なんか苦しそうだけど!」
〈岩の下敷きになって……身動きが取れない……!〉
「えぇっ!?」
「そうか……さっきのスタースクリームとマスターメガトロンのにらみ合いの時に……!」
声を上げるエイミィのとなりでつぶやき――知佳はすぐに通信回線を借りて呼びかけた。
「ライブコンボイ! ベクタープライムを助けてあげて!」
「わかった!」
知佳の言葉に答え、火口に向かおうとするライブコンボイだったが、
「いや――オレが行く!」
そんな彼の脇を駆け抜けたのはビークルモードのソニックボンバーだ。
「火口の底となりゃ急降下&急上昇だろ!?
だったらヘリのアンタよりジェットのオレだ!」
「それはいいけど首根っこをつかむなぁっ!」
またもやフックに引っ掛けられて連れ去られたクロノの抗議が聞こえるがそんなものは一切シカトだ。ソニックボンバーはスーパースタースクリームの脇を駆け抜けて火口へと飛び込んでいく。
「行かせるか!」
それに気づき、火口へと向き直るスーパースタースクリームだったが――その背中で爆発が巻き起こった。
ギャラクシーコンボイやなのは達と合流したゴッドジンライの一斉射撃だ。
「あなたの相手は――」
「あたし達だ!」
なのはとヴィータが言い放ち――二人はスーパースタースクリームへと攻撃魔法を解き放った。
「大丈夫か!?」
すぐに底までたどりついた。声を上げ、ソニックボンバーはベクタープライムの上に崩れ落ちたガレキを撤去する。
「すまない……
チップスクェアを回収しようとして……」
言いながら、ベクタープライムは地下空洞の中央へと向かい、そこに鎮座しているチップスクェアを回収する。
「スタースクリームのヤツ、こんな大事なモノを置いてくなんてな。
オレ達がまたコイツを取りに地下に戻ってくるとは、思ってなかったんだろうが……まったく、なめられたもんだぜ」
「だからって、ひとりじゃムチャですよ」
そんなベクタープライムにソニックボンバーとクロノが告げた、その時――突然、彼らの周囲にエネルギーミサイルが降り注ぐ!
そして――
「そうはさせないわよ!」
彼らに告げ、ビークルモードでマグマの海を駆けていたクロミアがロボットモードへとトランスフォーム、攻撃をしかけてくる。
「おいおい、熱くねぇのかよ!?」
「美人には関係ないの!」
「その理屈はよくわからないが――これは渡せん!」
ソニックボンバーに言い返すクロミアに告げ、ベクタープライムは彼女の放ったミサイルを斬り払う。
「美人の贈り物を袖にするなんて失礼ね!」
「自分で言うな!」
クロミアに言い返し、スティンガースナイプで攻撃するクロノだが、
「フォースチップ、イグニッション!
ファントムウェーブ!」
クロミアもイグニッションでこれに対抗。互いに放った閃光がちょうど中間で激突する。
「ったく、相手にしてられないぜ!」
「地上が気になる。早く片付けて戻ろう!」
うめくソニックボンバーにベクタープライムが告げると、
「そうはいかんぞ!」
「チップスクェアは――渡してもらう!」
声と共に、頭上からも攻撃が降り注いできた。
ギガストームとオーバーロードである。
「アイツら……!」
「漁夫の利を狙うつもりか!」
うめき、ソニックボンバーとベクタープライムは降り注ぐ攻撃をかわし、新たな乱入者と対峙する。
「ソニックボンバー、ベクタープライム!
クロミアはボクがなんとかする! 二人はオーバーロード達を!」
「任せろ!」
クロノに答え、ソニックボンバーはオーバーロードの拳をかわし、
「フラップソード!」
逆に右手に装着したフラップソードで斬りかかるが、それはオーバーロードのエネルゴンクレイモアに止められる。
が――
「それなら――二刀流でどうだ!」
今度は左手にもフラップソードを装着した。さすがに後退したオーバーロードの胸をその斬撃がかすめる。
「なるほど……二刀流できたか。
ならばこちらも!
フォースチップ、イグニッション!」
しかし、それに対してオーバーロードはまたしてもフォースチップをイグニッション。右腕のチップスロットに藍色のフォースチップが飛び込み、右腕にもエネルゴンクレイモアが作り出される。
「エネルゴンクレイモア二刀流!
そのナマクラ刀もろとも叩き斬ってくれる!」
「やれるもんなら、やってみやがれ!」
言い返し――ソニックボンバーはオーバーロードに向けて突撃した。
『スカイクェイク――ビーストモード!』
三方から同じ声が響き――空中の一点に集結した3体のドラゴンが合体、より巨大なドラゴンが翼を広げてスターセイバー、そしてシグナムと対峙する。
「分離の次は合体か!」
「まったく、ムダに多芸だな!」
「おほめに預かり、光栄だな!」
スターセイバーとシグナムに答え、スカイクェイクは彼らに突撃。ガードを固めたスターセイバーを体当たりで押し戻していく。
「く………………っ!
なんというパワーだ……!」
「貴様ら単機のトランスフォーマーとは、馬力が違うんだよ!」
スターセイバーに言い返し――スカイクェイクは尻尾となった海竜の首を差し向け、頭上から迫るシグナムを追い払う。
「くっ、奇襲に対する備えも万全か……!」
「せっかく頭部が三つもあるんだ。有効活用しない手はないだろう?」
スカイクェイクがスターセイバーに答えた、その時――
「ならば――オレと真っ向から力比べといくか!?」
『――――――っ!?』
突然の声に二人は頭上を見上げ――その周囲にビームの雨が降り注ぐ!
「何だ…………!?」
明らかに牽制だとわかる攻撃――それに紛れて後退し、スターセイバーが声を上げると、
「久しぶりだな、スターセイバー」
言って、その眼前に彼は降り立った。
その正体は――
「び、ビッグコンボイ!?」
「なぜお前がここに!?」
まったく予想だにしなかった援軍の登場に、シグナムとスターセイバーは思わず疑問の声を上げる。
だが、そんなものは意にも介さず、ビッグコンボイは二人に背を向けたまま答えた。
「オレは傭兵だ。
依頼さえ受ければ、たとえ昨日の味方だって敵に回すし、昨日の敵にだって味方をする――そういう立場だ」
「依頼、だと……!?
一体誰の――」
聞き返しかけ――シグナムは気づいた。
「まさか、主はやてが!?」
「部下想いの主に会えた幸運、神にでも適当に感謝しておけ」
平然とそう答え、ビッグコンボイは火口付近で暴れまわるスーパースタースクリームを見上げた。
「どうやら、こいつにばかりかまってもいられないようだ――
さっさと片付けて、向こうのデカブツを始末するぞ」
「ほぉ……このオレを『さっさと片付ける』とほざくか」
ビッグコンボイの言葉にうめき、スカイクェイクは一旦分離、ロボットモードに再合体し、
「やれるものなら――やってみろ!
フォースチップ、イグニッション――デス、シザース!」
咆哮と同時にフォースチップをイグニッション。デスシザースをかまえ、ビッグコンボイへと襲いかかる!
「ぅおぉぉぉぉぉっ!」
「むんっ!」
咆哮し、襲い来るプレダキングの突進を、ダイアトラスは真っ向から受け止める。
「貴様――大したパワーだな。
我らホラートロンでも強力無双で通る、この私の突進を受け止めるとは」
「貴殿の力も敬意に相当」
答え、ダイアトラスはプレダキングの両腕をガッチリととらえ、
「はぁぁぁぁぁっ!」
拳の一点に魔力を集中させたザフィーラの一撃が、プレダキングのこめかみを的確に打ち抜く!
センサーの詰まった頭脳回路をまともに揺さぶられ、さすがのプレダキングも思わずたたらを踏み――
「今だ、ダイアトラス!」
「おぅっ!」
ザフィーラに答え、ダイアトラスは重心の崩れたプレダキングを豪快に投げ飛ばす!
轟音と共に大地に突っ込み――しかし、それでもKOには至らなかった。まだクラクラする頭を振りながら、プレダキングはゆっくりと身を起こす。
「まったく、タフなヤツだ……」
「しかし有効。
引き続きかく乱と援護を希望」
うめくザフィーラにダイアトラスが告げると、
「なら、あたしらもかく乱を手伝うとしようか」
「だな」
言って、彼らの元へと駆けつけたのはアルフとファングウルフだ。
「よし、頼もう。
油断するな――パワーが違いすぎる。一撃でももらえばそれで終わりだ!」
「はいよ!」
ザフィーラの忠告にうなずき――アルフはプレダキングに向けて飛翔した。
「フォースチップ、イグニッション」
その言葉と共に、黄色のフォースチップがキラーパンチの背中のチップスロットに飛び込み、右手にドリル、そして左手にスクレーパーがそれぞれ装着され、その双方に“力”が宿る。
そして――
「ペネトレイトクラッシュ!」
「なんの!」
繰り出された一撃を、ガーディオンは巨体に見合わぬ軽快なステップでかわすとキラーパンチに背中を向け、
「ラダー、クラッシュ!」
そこに配されたホットスポットのはしごを勢いよく射出。攻撃をかわされ体勢の崩れたキラーパンチを突き飛ばす。
「くそっ! やってくれる!」
「確かに。
援護しよう」
うめくキラーパンチに答えると、仮面の戦士はライドスペースから外へと転移。足元に魔法陣を展開する。
と――ガーディオンの動きが止まった。
見ると、その四肢に魔法陣が展開され、ガーディオンの動きを拘束している――仮面の戦士の拘束魔法だ。
「今だ」
「おぅ!」
仮面の戦士に答え、キラーパンチは右手に装備したままのドリルをかまえ――
「させない!」
声が響くと同時、飛来した光弾によって魔法陣が撃ち砕かれた。
魔力とは異質の精神エネルギー弾だ。これは――
「……HGSの念動系雷撃弾か」
「そういうこと!」
つぶやく仮面の戦士に答え、シェリーはその眼前に飛び出す。
「ガーディオンのジャマをするっていうなら――私が相手よ!」
「貴様ごときが私にかなうとは思えんが……」
シェリーの言葉に、仮面の戦士は静かにかまえ――
「確かに、シェリーじゃ勝ち目はないだろうね」
「――――――っ!?」
いきなりの新たな声に仮面の戦士が振り向き――
「サンダー、ブレーク!」
オートボルトと共に駆けつけたリスティが、サンダーブレークで仮面の戦士の防壁を粉砕する!
「戦闘経験の少ないシェリーより、ボクが相手してあげるよ!」
「……別にどちらでもかまわん。
もちろん、二人がかりでもな」
リスティに答え、仮面の戦士は新たな魔法陣を展開する。
(そう……二人がかりでもかまわん。
今のままでは力が足りない――そのことを自覚してもらわなければならないからな)
『フォースチップ、イグニッション!』
その声はまったくの同時――ビークルモードとなったギガストームとベクタープライムは同時にそれぞれのフォースチップをイグニッションし、
「ギガ、スパイラル!」
「なんの!
タキオンフィールド!」
ギガストームのギガスパイラルを、ベクタープライムはタキオンフィールドで受け止める。
その一方で、ソニックボンバーとオーバーロードは頭上で激しく斬り結んでいる。
だが――
「しまった!?」
高機動性がウリのソニックボンバーにとって、火口内の狭い空間はリスクが大きすぎた。翼を岩壁に引っ掛けてしまい、その動きにスキが生じてしまう。
「もらったぁっ!」
そんなソニックボンバーに、オーバーロードが突っ込み――
「させるか!」
それをクロノが援護した。放たれたブレイズキャノンが背後からオーバーロードを吹き飛ばす!
「あらあら、余所見してていいのかしら!?」
その結果自分に背を向けたクロノに向け、クロミアはミサイルを放つが――
「そんなのはお見通しさ!」
クロノは余裕で回避した。狙いを外したミサイルはそのまま上昇し――今しがたクロノの一撃をもらったばかりのオーバーロードを直撃する!
「やってくれたな!」
「あ、あたしじゃないわよ!?
そこの坊やがかわすのが悪いんだから!」
怒りの視線を向けるオーバーロードにあわてて弁明するクロミアだったが、
「そんなの知ったことか!
フォースチップ、イグニッション!」
オーバーロードはかまわずフォースチップをイグニッション。両肩のキャノンをクロミアに向け、
「オーバー、ブラスト!」
「きゃあぁぁぁぁぁっ!?」
放たれた閃光がマグマの海を直撃。クロミアを吹き飛ばす!
「オレのジャマをするからだ!」
クロミアを排除し、告げるオーバーロードだが――
「だからって、スキを作るのはどうかと思うな、ボクは!」
そんなオーバーロードに告げ、クロノはその頭上でS2Uをかまえ――咆哮した。
「フォースチップ、イグニッション!」
クロノのその叫びに応え、黄色のフォースチップが火口に飛び込み、クロノの元へと飛来する。
そして、フォースチップはS2Uのコアにまるで溶け込むように飛び込み、その先端に輝く翼が展開される。
そのまま、クロノによってオーバーロードに向けられたS2Uの先端に巨大な光球が生み出され――
「これでもくらえ!
ブレイズキャノン改め――ヴァニッシャーキャノン!」
放たれた閃光は巨大な熱エネルギーの奔流となってオーバーロードを包み込み、大爆発と共に吹き飛ばす!
さらに――
「続けていくぜ、クロノ!」
「あぁ!」
『フォースチップ、イグニッション!』
その爆発に紛れ、クロノとソニックボンバーが続けて動いた。ソニックボンバーがフォースチップをイグニッション、背中の機首を展開し、
『ギャラクシー、キャリバー!』
放たれた一撃が、ベクタープライムと激突するギガストームの足元を直撃、吹き飛ばす!
「よし、いくぞ!」
「あぁ!」
「うむ!」
吹き飛ばされたギガストームがマグマの中に没するのを尻目に、ソニックボンバーの先導で彼らは火口の底を後にし、
「あなた達! 今度会ったら覚えてなさいよぉっ!」
そんな彼らに向けた、クロミアの負け惜しみの叫びが、地下空洞にむなしく響くのだった。
「フォースチップ、イグニッション!」
咆哮し、ビッグコンボイはアニマトロスのフォースチップをイグニッションし、
「ビッグキャノン――GO!」
かまえたビッグキャノンから放たれた閃光が、一直線にスカイクェイクへと襲いかかる。
だが――
「そんなもの!」
スカイクェイクはデスシザースをシールドモードに変形、さらにその上からエネルギーシールドを展開してビッグキャノンの一撃を防ぐ。
「ならば――
フォースチップ、イグニッション――ビッグキャノン、GO!」
対して、ビッグコンボイはセイバートロン星のフォースチップをイグニッション、バリア破壊効果を付加したビッグキャノンを放つが、
「――おっと!」
その一撃を、スカイクェイクは防御せずに回避する。
「危ない危ない。
今の一撃――バリアを破壊する効果が付加されていたな?」
「ほぉ、一目で見抜くか……」
スカイクェイクの言葉に、ビッグコンボイは驚きもせずに感嘆の声を上げ、
「だが――それならそれで、コイツを試させてもらおうか!」
すぐに次の行動に移った。再びビッグキャノンをかまえ、
「フォースチップ、イグニッション!」
咆哮し、イグニッションしたのは“地球の”フォースチップ――そして、
「ビッグキャノン、GO!」
三度ビッグキャノンから放たれた閃光は一直線に飛翔し――弾け、無数の光弾となってスカイクェイクに襲いかかる!
「ぐぅ…………っ!
やってくれるな!」
「これでもプロなのでな」
スカイクェイクに答えると、ビッグコンボイはビッグキャノンをしまうとマンモスハーケンを取り出し、
「スターセイバー、シグナム。
ここはオレに任せて、スーパースタースクリームを」
「わかった!」
「ここは任せよう」
ビッグコンボイの言葉に、スターセイバーとシグナムはうなずき、その場を離脱する。
「逃がすものか!」
その後を追おうとするスカイクェイクだが――
「そうはいかん!」
その眼前にビッグコンボイがすべり込んだ。とっさに繰り出したスカイクェイクの斬撃をかわし――
「ハーケン、ダブルインパクト!」
放たれたビッグコンボイの連撃が、スカイクェイクを弾き飛ばす!
「ギガストーム様!」
「オーバーロード様!」
ウィアードウルフとメナゾールが声を上げ、彼らはワイプやスカルと共に火口の底へと駆けつけた。
そんな彼らの目の前で、名を呼ばれたギガストームはビーストモードとなってゆっくりとその姿をマグマの上に浮上させた。
「むぅ……! ひどい目にあった……
オーバーロード、無事か?」
「なんとかな」
マグマの海から踏み出し、尋ねるギガストームにオーバーロードはぶつけた頭を左右に振りながらそう答える。
すでにこの場を離れたのか、クロミアの姿はない。
「さて……これからどうする?」
「決まっている。
ヤツらが持ち去ったチップスクェア――今度こそ横取りしてやる!」
尋ねるオーバーロードにギガストームが答え――
「………………ありゃりゃ?」
ふと脇を見たスカルがそれに気づいた。
「ギガストーム様、オーバーロードの旦那。
アレ……」
言って、スカルが指さした先には、さらに奥へと続く横穴が見える。
明らかに人為的に作られた、トランスフォーマーがちょうど通れそうな横穴――
「怪しいっスよね? ね?」
「むぅ……」
スカルの言葉に、ギガストームはしばし考え――
「……よし、調べてみるか」
「チップスクェアとかいうヤツ、取り返したぜ!」
地上では、スーパースタースクリームに対するなのは達の懸命の攻撃が続いていた――そんな中に合流し、ソニックボンバーが一同に告げる。
「これを、早く安全なところへ!」
「わかった!」
答えて、ベクタープライムからプラネットフォースを受け取ったライガーコンボイはそのままなのはへと向き直り、
「ユーノ、チップスクェアを持ってアースラに」
「はい!」
ライガーコンボイの言葉にうなずき、なのはの肩の上のユーノは展開したフローターフィールドにチップスクェアを乗せてもらうと転送魔法の魔法陣を展開し――
「そうはさせるかぁっ!」
そんな彼女に向け、スーパースタースクリームが突撃する!
「危ない!」
巨体に見合わぬスピードで迫るスーパースタースクリームからなのはとユーノを守るべく、その眼前に立ちふさがるライガーコンボイだが――
「ジャマを、するなぁっ!」
スーパースタースクリームは、なのは達もろとも腕の一振りで薙ぎ払う!
幸いなのは達は上空に飛ばされたが、彼は受身すらとれなかった――ライガーコンボイは強烈な勢いで大地に叩きつけられ、その衝撃でリンクアップも解けてしまう。
「ギャラクシーコンボイさん!」
思わずなのはが声を上げると、
《なの姉!》
「――――――っ!」
「チップスクェアを、渡せぇっ!」
プリムラの呼びかけでなのはがこちらに気づくのにもかまわず、スーパースタースクリームが彼女に攻撃をしかける!
「アイツ――なんてパワーだ!
普通に考えりゃ、蒐集のエサとして極上の相手なのに!」
「こうもケタが違うと、蒐集どころの騒ぎじゃないぜ!」
ライガーコンボイを一撃で叩き伏せるパワーを前に、ヴィータとゴッドジンライは舌打ちしながらその砲火をかいくぐる。
「くそっ、やっぱまずはアイツをなんとかしないと、どうにもならねぇか!」
うめき、全身の火器を撃ちまくるソニックボンバーだが、スーパースタースクリームはビクともしない。逆に、全身の火器からビームや銃弾をばらまき、さらに弾幕を濃くしていく。
「かと言って、セイバートロン星を――チップスクェアを運べというあのメッセージを、放っておくワケにもいかない!」
「どうするんだよ、総司令官!?」
上空でうめくドレッドロックやとなりで告げるライガージャックの言葉に、ギャラクシーコンボイはしばし考え、
「……ロディマスブラー、ニトロコンボイ――そしてライガージャック。
チップスクェアを持って、セイバートロン星に急行してくれ!
セイバートロン星からのメッセージを、無視するワケにはいかない!」
「任せろ!」
「お任せなのだ!」
ギャラクシーコンボイの言葉にうなずくニトロコンボイと美緒だが、
「しかし総司令官!」
「あたし達が抜けたら、ライガーコンボイにリンクアップできないじゃない!」
「たとえお前達が残っても、フェイトが離脱している現状でリンクアップは不可能だ」
反論するライガージャックとアルクェイドに、ギャラクシーコンボイが答える。
「それよりも、我らの故郷を頼む……!」
「……わかった!」
真剣な表情で告げるギャラクシーコンボイの言葉に、決意を固めたライガージャックがうなずき――
「『わかった!』じゃなぁぁぁぁぁいっ!」
声を上げ――ゴッドジンライがそんな二人をドロップキックでまとめて薙ぎ払った。
「ご、ゴッドジンライ!?」
「バカかお前らは!
ヤツのことを忘れてないか!?」
声を上げる耕介に答え、ゴッドジンライは自分達同様スーパースタースクリームの弾幕から避難しているマスターメガトロンを指さす。
「今チップスクェアを持ち込めば、当然マスターメガトロンもそれを追う――お前はセイバートロン星を戦場にするつもりか!?」
「しかし……セイバートロン星が求めている以上、一刻も早くセイバートロン星にチップスクェアを!」
ゴッドジンライの言葉にギャラクシーコンボイが反論すると、
「待つでござるよ、お二方」
そんな二人に割って入ったのはメビウスショットだった。
「いずれチップスクェアはセイバートロン星に運ばねばならぬでござるが、まだ肝心のプラネットフォースがそろっていないのが問題でござる。
残るプラネットフォースはあと二つ。総司令官殿のマトリクスで補えるのはせいぜいひとつ分――せめてあとひとつ、プラネットフォースかそれに代わるものを手に入れなければ、チップスクェアを持ち込んだところで意味はないでござるよ」
「だが、残る二つのプラネットフォースは、まだ所在すら判明していないんだぞ」
会話に割り込み、告げるスターセイバーだが、
「そうでもないでござるよ」
メビウスショットはそんな彼らにそう答えた。
「各々方、拙者達がどこの出身のトランスフォーマーか、お忘れでござるか?」
『――――――っ!』
その言葉に一同が気づいた――代表し、避難してきたなのはが声を上げる。
「そうか――ミッドチルダ!」
「では、ミッドチルダにプラネットフォースが!?」
聞き返すギャラクシーコンボイに、メビウスショットは満足げにうなずく。
「まずはチップスクェアをミッドチルダへ。土地勘のある拙者達で追ってくるマスターメガトロンの追跡をまき、改めてミッドチルダのプラネットフォースを獲得してセイバートロン星に戻る――
これが拙者の提案する策でござる」
「だが、ミッドチルダのプラネットフォースの在り処はわかっているのか?」
「拙者達は知らされてはおらぬでござるが、代々のリーダーには伝承されているはずでござる」
ゴッドジンライの問いにメビウスショットが答え――ギャラクシーコンボイは決断した。
「では、先程指名した3名とシックスナイト――そしてメビウスショットを含むバンガードチームの6名。
以上10名のメンバーはそれぞれのパートナーと共に、先遣隊としてミッドチルダに向かってくれ。
メビウスショット、シックスナイト――案内を頼む」
「心得たでござる」
「任せろ」
ギャラクシーコンボイの言葉に、メビウスショットとシックスナイトはそれぞれにうなずき――
「――っと、その前に」
ふと思い直し、シックスナイトはギャラクシーコンボイに声をかけた。
「ひとつ、聞き忘れたことがあったのだが」
「何だ?」
その問いに、シックスナイトは余裕の笑みと共に尋ねた。
「追ってくるマスターメガトロンは、倒してしまってもかまわないのか?」
「……それができればとっくにこの戦いも決着がついているとは思わないのか?」
思わずため息をつき、ゴッドジンライがツッコんだ。
ともかく、気を取り直して先遣隊に選ばれたメンバーは一路ミッドチルダを目指すこととなった――スペースロードを展開し、その向こうに展開したミッドチルダへのスペースブリッジへと急ぐ。
「マスターメガトロン、あれを見ろ!」
「む………………?」
その動きには、すぐにフレイムコンボイが気づいた。彼の言葉にマスターメガトロンはスペースロードを駆けるニトロコンボイ達――その頭上を飛ぶグリフォンモードのメビウスショットが抱えるチップスクェアに気づいた。
「チップスクェアを持ち去るつもりか?
行き先はさしずめセイバートロン星といったところか……」
つぶやき、マスターメガトロンは思考をめぐらせる。
(ギャラクシーコンボイや魔導師の小娘達がいなければ、ヤツらからチップスクェアを奪うのは容易なはず……
その上、我らが抜けてもこの戦場は四つ巴――互いにつぶし合ってくれればこちらとしても都合がいい)
そう考えると、マスターメガトロンの行動は早かった。
「ヤツらを追うぞ!
全員続け!」
言うと同時、マスターメガトロンがメガジェット形態にトランスフォーム。フレイムコンボイ達と共にニトロコンボイ達を追う。
「お、行きやがったな。
行き先がミッドチルダとも知らないで、ご苦労なこった」
そんなマスターメガトロン達の動きにヴィータがつぶやくと、
「フォースチップ、イグニッション!」
半ばイモヅル式にスーパースタースクリームが一連の動きに反応した。左肩に新設されたチップスロットに巨大なフォースチップをイグニッションし、以前の戦いでバーテックスブレードを折られた左腕に新たな武器として大型のビームキャノンを展開する。
「バーテックス、キャノン!」
咆哮し、展開したバーテックスキャノンをマスターメガトロン達に向ける。
「まとめて、消え失せるがいい!」
言って、スーパースタースクリームがビームを放――とうとした瞬間、その背中で爆発が起きる。
「どこ見てやがる!?
お前の相手はオレ達だ!」
言って、さらにスーパースタースクリームへと攻撃をしかけるソニックボンバーだが、
「危ない、ソニックボンバー!」
「――――――っ!?」
クロノの言葉に反応するが――間に合わなかった。スーパースタースクリームの拳を受け、弾き飛ばされる!
「ヤロー……っ!」
それでも、ソニックボンバーはミサイルを斉射。吹っ飛ばされながらもカウンターを決めることに成功する。
「どうだ……!?」
爆煙の向こうを探り、つぶやくクロノだが――
「それで攻撃しているつもりか!?」
平然と姿を現したスーパースタースクリームが、ソニックボンバーへとビームの雨を降らせる!
「ソニックボンバー!
このぉっ!」
攻撃を受けるソニックボンバーを救うべく、クロノがスーパースタースクリームへとブレイズキャノンを放つが、
「フォースチップ、イグニッション!
バーテックス、ブレード!」
右肩のチップスロットにフォースチップをイグニッションし、スーパースタースクリームは右腕のバーテックスブレードを展開し、
「バーテックス、ストーム!」
放った衝撃波で、クロノとソニックボンバーを吹き飛ばす!
「なんてこった……!」
「こんなバケモノ、どうしろってんだ!」
うめいて、それでも懸命にスーパースタースクリームへの攻撃を続けるガードシェルと真雪だったが――
「ならば、私達が戦おう」
意外にも、それに答える声があった。
「私なら、あの巨体にも対抗できる」
上空に現れたマキシマス――その甲板上に姿を現した、フォートレスである。
「そうか! マキシマスの砲撃で!」
思わず声を上げるなのはだが、
「いや、違う」
それを否定したのはスターセイバーだった。
「見ているがいい。
フォートレスが戦うと決めたからには――モノスゴイものが見られるぞ」
「モノスゴイもの……?」
思わず聞き返すギャラクシーコンボイだが――それに答えるよりも早く、上空でフォートレスが動きを見せた。
「フォートレス、スーパーモード!
トランスフォーム!」
フォートレスが咆哮すると同時――マキシマスが変形を始めた。
双頭の艦首の先端が起き上がりつま先となり両足が完成、次いで推進部が基部から回転し前面へと向き、収納された推進バーニアに代わり拳が現れる。
最後に変形するのはマキシマスのメインブロック――艦橋部が真っ二つに別れ、艦底側に折りたたまれてボディとなる。
そして――
「ヘッド、オン!」
四肢を折りたたんだフォートレスが頭部にトランスフォーム、変形を完了したマキシマスのボディに合体する。
すべてのシステムが起動し、シャマルのいるメインブリッジが明るさを取り戻し、フォートレス自身の瞳にも輝きが生まれる。
力の通った拳を握りしめ、新たな姿となったフォートレスは高らかに名乗りを上げた。
「フォートレス、マキシマス!」
その頃――
「よし、起動プロセス完了!」
「後はマスター権限の登録だけだな」
火口の底、隠し地下空洞での作業は順調に進んでいた。“それ”のシステムの起動を確認し、ラナバウトとノイズメイズが声を上げる。
だが――
「フォースチップ、イグニッション!」
『――――――っ!?』
背後からの突然の声に、二人はとっさに振り向き――
「エネルゴン――クレイモア!」
そんな二人を、オーバーロードはエネルゴンクレイモアで無造作に斬り捨てる!
「な………………っ!?」
「どうして、ここに……!?」
「そんなの、入り口に気づいたからに決まってるだろうが」
うめき、倒れ伏す二人に言い放つオーバーロードのとなりで、ギガストームは彼らの操作していた端末に向かう。
「何かわかるか?」
「……いや、サッパリだ。
アニマトロスなんかにいると、自分達の身体以外のメカにはとんと疎くなっていかん」
「どれ、代わってみろ」
ギガストームに告げ、オーバーロードは端末を操作し、
「……なるほど。
戦艦/要塞形態への変形機能に巨体ならではの火力とパワー、おまけに次元間航行機能まで備えている、か……
どうやら、スタースクリームはこいつを自分のパワーアップと並ぶ切り札にしていたみたいだが――おかげでとんだ拾い物だな」
「ほぉ……
で? 使えるのか?」
「問題ない」
ギガストームに答えると、オーバーロードは右手に自分のスパークの“力”を集中させ、端末の照合システムに触れる。
〈――マスター登録、完了。
オーバーロードを、システム管理権限者と認定〉
「文句は言うなよ。
貴様がマスターになったところで、手入れはできまい?」
自分をマスターとして登録したことに対して抗議の視線を向けるギガストームにそう答えると、オーバーロードは“それ”に向けて告げた。
「さぁ……最高の茶番劇の始まりだ。
貴様を使ってやろうとしていたスタースクリームのヤツに――逆に牙をむいてやれ!」
その言葉と同時――“それ”は地上に出るべくその身を奮わせ始めた。
「す、すごい……!」
「あの大きさ――スーパースタースクリームにも負けてない!
あれなら、きっといけるよ!」
合体し、スーパースタースクリームの目の前に降り立ったフォートレスマキシマス――その巨体を目の当たりにして、ユーノとなのはが思わず声を上げる。
「フンッ、何をするかと思えば……ただ大きなボディを用意しただけではないか。
同じ巨体でも、貴様とオレとではレベルが違う――プライマスのスパークの力でより強大に進化した私に、よそから身体を持ってきただけの貴様がかなうものか」
「ならば……試してみるか?」
余裕で告げるスーパースタースクリームにそう答え、フォートレスマキシマスは全身の火器を起動。スーパースタースクリームへと照準を合わせる。
「くらうがいい!」
そして咆哮と共に斉射――放たれた無数の閃光がスーパースタースクリームへと降り注ぎ――大爆発を巻き起こす!
「やったか!?」
全弾直撃だ。これは効いただろうと声を上げるドレッドロックだが――
「………………ぬるいな」
確かに効いている。しかし――それは微々たるものでしかなかった。装甲を少し焦がされたものの、ほぼ無傷のスーパースタースクリームが爆煙の中から平然と告げる。
そして――
「今度は、こっちの番だ!
バーテックス、キャノン!」
スーパースタースクリームの放ったバーテックスキャノンの一撃が、フォートレスマキシマスを直撃する!
が――
「そちらこそ、それで本気なのか?」
フォートレスマキシマスにとってもあまり効いた攻撃ではなかった。巻き起こる爆煙の中から姿を現し、スーパースタースクリームとガッチリと組み合う。
「よし! いけるぞ!
オレ達も後に続くぜ!」
「総員、フォートレスマキシマスを援護しろ!」
スーパースタースクリームと対等に渡り合うフォートレスマキシマスの姿に、ゴッドジンライとギャラクシーコンボイは彼を援護すべく一同に指示を下す。
だが――そんな中、突如大地が鳴動を始めた。
火口を中心に大地が割れ、マグマが次々に噴き出していく。
スカイクェイクと対峙するビッグコンボイ、メナゾールと戦う士郎や恭也達、プレダキングVSダイアトラスチーム――火山の中腹で戦っていた面々はたまらず戦闘を中止し、各々にその場を離れていく。
「いかん!
飛べないパートナーを持つ者は、すぐに彼らをライドスペースに保護するんだ!」
「了解!
真雪!」
「あぁ!」
とっさに指示を下すギャラクシーコンボイの言葉にガードシェルが真雪を保護。他の面々もそれにならう。
「くそっ、一体何が起きてるんだよ!?
なんか気づいたらマスターメガトロン様達もいないし!」
上空でサンダークラッカーがうめくと、晶がそれに気づいた。
「おい、アレ!」
「何――――――っ!?」
見ると、ひび割れ、口を広げた火口から巨大な何かが姿を現そうとしている。
スーパースタースクリームや、フォートレスマキシマスにも負けない巨体を震わせ、火口からゆっくりとその身を引きずり出し――
「グァオォォォォォォォォォォンッ!」
姿を現した、巨大な恐竜型トランスフォーマーの咆哮が大地を震わせた。
「な、何だよ!?」
突然の事態の急変――ガーディアンやオートボルト、シェリーと共に仮面の戦士やキラーパンチと対峙していたリスティが、火口に出現した巨大トランスフォーマーを見て思わず声を上げる。
一方、仮面の戦士もその威容をしばし眺めていたが、
「……退くぞ、キラーパンチ」
「おい?」
「もう我らの出番はない。
今回の目的は――あのデカブツが果たしてくれる」
疑問の声を上げるキラーパンチに、仮面の戦士は静かに答える。
「“闇の書”を完成させてもらうには、今はまだ時期尚早だ。
敵にアレだけ巨大戦力がそろえば――守護騎士達も蒐集どころではあるまい」
「………………そうだな。
じゃ、帰るか」
「おやおや――逃がすと思ってるのかい!?」
仮面の戦士とキラーパンチに答え、サンダーブレークを放つリスティだが――それが届くよりも一瞬早く、彼らは転送魔法で離脱していった。
「アイツら……何者なんだ……!?」
つぶやくリスティだったが――その疑問に答える者はいなかった。
「な、何!? アレ!?」
その存在は彼女にとっても未知のものだった――巨大な恐竜型トランスフォーマーの出現に、フィアッセはスーパースタースクリームのライドスペースで思わず声を上げる。
だが――その言葉に答えた者がいた。
「アレはラナバウトに作らせていた、我らの母艦となるべき巨大人造トランスフォーマー“ダイナザウラー”だ」
スーパースタースクリーム本人である。
「もっとも、私の身体がこうも巨大になってしまった今となっては、部下達の専用艦となりそうだがな」
「あんなものまで用意していたなんて……!」
「どうした? 貴様の知り合いがアレに叩きつぶされると知って、恐ろしくなったか?」
思わずうめくフィアッセに告げるスーパースタースクリームだったが――
「――そんなことない」
しかし、フィアッセはあっさりと断言した。
「なのはや、恭也はあなた達なんかに負けない――絶対あなた達をやっつけて、私を助けてくれる!」
「フンッ、好きにほざくがいい」
フィアッセにそう答えると、スーパースタースクリームはダイナザウラーに告げた。
「ダイナザウラー!
身体慣らしに、サイバトロンやスタントロンども、ホラートロンもまとめて片付けてやれ!」
「グァオォォォォォンッ!」
スーパースタースクリームに答え、ダイナザウラーは大きく咆哮。その口腔内にエネルギーを集め――
放たれた熱線は、スーパースタースクリームを直撃していた。
「な………………っ!?」
まったくの不意打ちだった――熱線の直撃を受け、スーパースタースクリームは思わずたたらを踏んだ。
「ど、どうした!? ダイナザウラー!
なぜ私を攻撃する!? 敵はサイバトロンだ!」
自分を攻撃したダイナザウラーに向け、声を上げるスーパースタースクリームだったが、
「いーや! 敵には貴様も含まれているね!」
ダイナザウラーの頭上に、彼は姿を現した。
「貴様……オーバーロード!」
「ごきげんよう、スーパースタースクリーム――だっけか?」
「デカくなった図体に喜び勇んで、足元がおろそかになっていたようだな!」
うめくスーパースタースクリームに、オーバーロードやそのとなりのギガストームは余裕の笑みと共に告げる。
「く………………っ!
ラナバウト! ノイズメイズ! 応答しろ!」
〈す、すみません……!〉
〈ダイナザウラー……奪われちまいました……!〉
うめき、通信するスーパースタースクリームにノイズメイズが、そしてラナバウトが力なく答える。
「どうします!?」
レンとブレインストームを振り切って駆けつけたサイクロナスの問いに、スーパースタースクリームはしばし考え、
「……サイクロナス、貴様は二人を回収に向かえ。何ならクロミア達地球デストロンの生き残りどもを使ってもかまわん。
私はダイナザウラーを取り返し、サイバトロンを蹴散らす」
「ほぉ、言ってくれるな。
コイツは貴様の自信作だろう? その力、身を持って味わうがいい!」
スーパースタースクリームの言葉に答え、オーバーロードはダイナザウラーに攻撃を命令する。
「もはやコイツはオレ達の忠実なしもべだ!
取り返そうなどとは考えないことだ!」
自信タップリに告げるオーバーロードだったが――
「グァオォォォォォンッ!」
『ぅわぁっ!?』
ダイナザウラーはオーバーロード達を振り落とし、スーパースタースクリームを無視して今度はフォートレスマキシマスへと襲いかかる!
「あ、あれ…………?」
「ぜんぜん懐いてないじゃないっスか!」
疑問の声を上げるオーバーロードにワイプが声を上げるが、ダイナザウラーはフォートレスマキシマスと激しい肉弾戦を展開。幸いとばかりにスーパースタースクリームが攻撃をしかけるが、今度はそれに反応してスーパースタースクリームへと熱線を吐き放つ。まさに見境なしである。
「くそっ、もうムチャクチャじゃないか……!」
「あれじゃあフォートレスさんもまともに戦えないし、もし2体とも相手にする状況になったら……!」
ダイナザウラーによって混乱の極みに達した戦場を前に、ギャラクシーコンボイとなのはが声を上げると、
「おい、ギャラクシーコンボイ総司令官様よぉ……!」
突然、ソニックボンバーが声をかけてきた。
「オレとしちゃ不本意だけど、そんなワガママ言ってられる状況じゃねぇ……」
「………………?」
その言葉に訝るギャラクシーコンボイだが、ソニックボンバーはかまわずに告げた。
「オレと……リンクアップっていうのをやれ!」
「えぇっ!?」
ソニックボンバーのその言葉に、なのはは思わず声を上げた。
だが、それも当然だ。ライガーコンボイもロディマスコンボイも、リンクアップはプラネットフォースによるトランスフォーマーの転生、ひとつの身体に二つの精神を持つフェイトの存在――そして彼女とそれぞれのイグニッションパートナーの意思の統一と、様々な要素が合わさって初めて可能になった、奇跡にも等しい事象なのだ。『やろう』と言い出してできるものではない。
「ま、待て、ソニックボンバー!」
「そうだ。リンクアップとはそんな簡単にできるものではないんだぞ!」
当然、ギャラクシーコンボイやベクタープライムもソニックボンバーを諌めようとするが、
「いくぞ!
ぅおぉぉぉぉぉっ!」
ソニックボンバーは聞く耳を持たない。かまわずギャラクシーコンボイへと突っ込んでいき――当然合体できるはずもなく、二人は正面から衝突した。
「いてて……」
「だから言ったのに……」
大地に倒れるソニックボンバーを前に、ベクタープライムが思わずつぶやくが、
「ま、まだまだぁっ!」
ソニックボンバーはあきらめない。立ち上がると再びギャラクシーコンボイへと突っ込み――またしても激突し、弾かれる!
その光景は、スーパースタースクリームの目にも入っていた。
ダイナザウラーはフォートレスマキシマスに襲いかかっている――二人がつぶし合っている間にサイバトロンを片付けようと周囲を見回していた時、ちょうど彼らの姿が目に入ったのだ。
(仲間割れか……?)
一瞬そうも考えるが――すぐに別に可能性に気づいた。
(いや、あれは――)
「くっそぉ……何がいけねぇんだ!」
「落ち着け、ソニックボンバー!」
「まずは冷静になれ!」
何度やっても合体できない――うめくソニックボンバーにクロノとギャラクシーコンボイは制止の声を上げる。
「そうだよ!
仮に合体ができるとしても、リンクアップナビゲータを使えるフェイトちゃんがいないと……!」
さらになのはがソニックボンバーに告げるが、
「うるせぇっ!
あれを見ろ!」
そんななのは達に言い返し、ソニックボンバーは懸命にスーパースタースクリームと戦う一同を見渡した。
ダイナザウラーにかかりきりでフォートレスマキシマスは援護に回れない。戦況は完全に不利に傾いている。
「考えてるヒマはねぇ!
オレ達がリンクアップしねぇと……アイツも、ダイナザウラーとかいう恐竜野郎も倒せねぇだろうが!」
「………………っ!」
その言葉に、ギャラクシーコンボイは思わず息を呑んだ。
確かにそうだ――なまじ仕組みを理解していたがために、自分達はその条件を満たしていない現状ではリンクアップは不可能だと考えた――だが、今はできる、できないを論じている場合ではない。やらなければならないのだ。
ならば――どうすればできるか、それを考えなければならない。ギャラクシーコンボイはなのは達に尋ねる。
「……なのは、それにクロノ。
フェイトの代わりにリンクアップナビゲータを使える条件を満たしている者に心当たりはないか?」
「い、いきなりそんなことを言われても……」
「そもそも『ひとつの身体に二つの精神』なんて状態にいる人間なんてそう簡単に見つかるはずが……」
ギャラクシーコンボイの問いになのはとクロノが答えると、
〈……ちょっと待ってください!〉
突然彼らの元に通信が入った。
サイバトロン基地からだ。この声は――
「秋葉、さん……?」
「条件にピッタリ、というワケではありませんけど……ひとり心当たりがあります!」
サイバトロン基地でコンソールに向かい、秋葉は戦場の一同に呼びかけた。
〈誰なんだ、秋葉!?〉
彼女の言葉が正しいなら、確かにまだ希望はある――尋ねる志貴だったが、秋葉は答えた。
「あなたです」
〈………………はい?〉
「だから、兄さん、あなたがその『心当たり』ですよ」
状況も忘れ、思わず間の抜けた声を上げた志貴に、秋葉はあっさりと答えた。
「兄さん……あなたも持っているはずです。
本来の自分の“血”が持つ、“もうひとりの自分”を」
その言葉に――志貴の動きが止まった。
〈……“七夜”の血のことを、言っているのか?〉
その言葉に、秋葉は苦々しげな表情でうなずいた。
志貴の本来の血続“七夜”――遺伝として超能力を受け継ぐ退魔の一族であり、その力は当時の遠野家当主にして秋葉の実父、槙久が危機感を抱き、滅ぼそうとするほどのものだったという。
その異質の力は志貴の身体にも根づき、彼が極限状態に達した時、殺人鬼“七夜志貴”として発現する――
かつてシオンと出会ったきっかけになった死徒の事件の時、何人かの関係者が具現化した“七夜志貴”と対峙している。その姿はまさに志貴とは一線を画す『別人格』と呼んで差し支えのないものだった。
だとすれば、志貴はフェイトと同じ『ひとつの身体に二つの精神』という条件を満たしていることにならないだろうか――秋葉はそう考えたのだ。
「けど、“七夜”の人格が本当にオレの『もうひとつの精神』かどうかわからないんだ。
それに、もしそうだとしても、七夜が出ている間は完全に主導権を持っていかれるんだ――もし七夜が暴走したら……」
〈そんなことを言っている場合じゃないでしょう!〉
反論しかけた志貴だが、そんな彼の言葉を秋葉は一言で両断した。
〈ソニックボンバーの言うとおり、合体しなければこの状況は打開できないんですよ!
フェイトさんが復帰できない以上、今は兄さんしかいないんです!〉
「……そうだな。
今は、オレがなんとかするしかない、か……!」
秋葉の言葉に、志貴は覚悟を決めた。ドレッドロックに向け、告げる。
「ドレッドロック!
デバイスを受け取りに行く――アースラに向かうぞ!」
「あぁ!」
「頼む。
その間、我々はなんとか我々だけで合体できないか試してみる!」
志貴とドレッドロックの言葉に答えるギャラクシーコンボイだったが、
「そうは……させるか!」
咆哮し、スーパースタースクリームが“力”を解き放ち――その影響で大地が割れた。
そして――砕け散った大地の破片が、無数の岩石となって浮かび上がる!
「バカな……!?」
「岩が、浮いただと!?」
プライマスのスパークの力はこんなことも可能なのか――思わずブロードキャストと士郎が声を上げ、そんな彼らの目の前で岩石群はスーパースタースクリームの周りにまるで布陣するかのように集まっていき、
「いけぇっ!」
それらを操るスーパースタースクリームの指示に従い、岩石群は一斉にギャラクシーコンボイ達へと襲いかかる!
「危ない、なのは!」
「クロノ、下がれ!」
とっさにそれぞれのパートナーをかばって盾となるギャラクシーコンボイとソニックボンバーだが――止め切れない。岩石群の直撃を受け、なのは達もろとも弾き飛ばされる!
「高町!
くそっ、ジンライ!」
「あぁ!」
ヴィータに答え、ゴッドジンライは全身の火器を岩石に向け――スーパースタースクリームはそんな彼らに向けて再び岩石群を飛翔させる。
「たかが石ころ! 片っ端からブッ壊せばいいだけだ!」
言って、ゴッドジンライが全身から砲火を放つが――迫り来る岩石群に当たったとたん、ビームが一方的に吹き散らされる!
「何――――――っ!?」
驚きながらもすぐに身体が動いた。ゴッドジンライは襲い来る岩石群をかわし、後退する。
「どういうことだ!?
いきなりビームが弾かれたぞ!?」
うめいて、ゴッドジンライが着地し――
「へっ! 所詮てめぇのビームなんかその程度だってことだろ!」
「よーし。いい度胸だ。
今スグお前で確かめてやる」
「って、二人ともンなバカやってる場合じゃないだろ!」
一度敗北していることを棚に上げておちょくるサンダークラッカーとムキになるゴッドジンライ、二人のにらみ合いにヴィータが警告の声を上げると、
「余所見などする余裕があるのか!?」
そんな彼らに向け、スーパースタースクリームが再び岩石群を放つ!
「くそっ!
ゴッドボンバー!」
〈鉄壁〉
ゴッドジンライの言葉に、ゴッドボンバーはすぐさま防壁を展開。岩石群を防ごうとするが――迫り来る岩石群は突如として向きを変え、ゴッドジンライの防壁を回避する!
「なんだと!?」
「バカめ……
その岩を、私がコントロールしているのを忘れたか!」
驚くゴッドジンライにスーパースタースクリームが告げ、一箇所に固まった岩石群が一斉に飛翔、反応する間も与えずゴッドジンライを吹き飛ばす!
「フォートレスマキシマス!」
「うむ!」
ここは自分達が盾になるしか――シャマルに答え、ダイナザウラーの突撃をさばいてスーパースタースクリームの前へと進み出るフォートレスマキシマスだったが、
「なんだ……!?」
突如、その動きが止まった。
その四肢にはスーパースタースクリームに操られた岩石がまとわりついている。ひとつひとつは大したことのない岩石だが、それらが大量に、しかも高速で渦を巻くことで彼らの動きを封じているのだ。
「バカな……この程度の岩で!?」
うめき、なんとか脱出しようとするフォートレスマキシマスだが、動こうとしても高速で回転する渦に弾かれ、身動きひとつできない。
そして――
「愚かな……
『たかが岩だ』とナメてかかるからそういう目にあうのだ!」
咆哮し、スーパースタースクリームがフォートレスマキシマスにバーテックスブレードを叩きつける!
「これらの岩はその総てが我が意志によって緻密にコントロールされ、飛翔する。
これぞ我が必殺の“星屑の領域”!
抜けられるものなら、抜けてみろ!」
「なめるな……!」
「この程度の妨害で、我らを止められるとでも思っているのか!?」
スーパースタースクリームに言い返し、身を起こすシグナムとスターセイバーだったが――
「ならば――試してみるがいい!」
そんな彼らに向けてスーパースタースクリームが岩石群を放ち――スターセイバーの防御をかいくぐり、シグナムもろとも弾き飛ばす!
「うっわー、やりたい放題っスね……」
スーパースタースクリームの岩石攻撃を前に圧倒されるなのは達――その光景を眺め、スカイクェイクの傍らでグレートポントスがつぶやく。
「しかし……なぜ彼らはたかが岩石にあそこまで苦戦を?
対峙してみたところ彼らの戦闘力は相当のもの――『スーパースタースクリームに制御されている』という点以外に、あの程度の岩石に遅れを取る要素があるとは思えませんが」
「よく見てみろ」
疑問の声を上げるプレダキングの問いに、スカイクェイクはスーパースタースクリームを守るように漂う岩石を指さした。
「まずはあの数が問題だ――いかに火力があろうと、あれだけの数の岩石をまとめて薙ぎ払うのは不可能に近い。その上スーパースタースクリームは周囲の地面からいくらでも岩石を補充できる。
さらにあの岩石のコントロール能力も厄介だ。貴様の言ったとおりあの岩石はスーパースタースクリームが制御しているが――ただ漠然と操っているワケではなかろう。
ゴッドジンライやスターセイバーの防御をかいくぐったこと、さらにフォートレスマキシマスの動きを封じた拘束形態から考えて――おそらくはあの岩石ひとつひとつに至るまで精密にコントロールされているはずだ」
「なるほど……」
「しかも、あの岩石はおそらくビームでは撃墜できない」
納得するプレダキングに、スカイクェイクはさらにそう付け加えた。
「あの岩石ひとつひとつが、スーパースタースクリームの“力”によってコントロールされているからだ。
コントロールのために岩石にまとわりついている“力”がバリアの役目を果たし、並みの威力のビームでは弾かれてしまう。
あれを破壊しようと思ったらフルパワーでの攻撃が必要だろうが――そもそもスーパースタースクリームがそんなチャージ時間を与えるワケがない」
「それで、ヤツらがあそこまで苦戦してるワケっスか……」
「あの攻撃に対抗する手段があるとすればフォートレスマキシマスが盾となり、他の面々でカウンターを狙う、ぐらいだろうが――肝心のフォートレスマキシマスはダイナザウラーを抑えるためにも長時間スーパースタースクリームの相手をしているワケにはいかない」
グレートポントスに答え――スカイクェイクはサイバトロンの布陣の一角へと視線を向けた。
先のダイナザウラー出現の際自分と別れ、サイバトロンと合流したビッグコンボイへと。
「さて……どう出る? ビッグコンボイ……」
「エイミィさん!」
「皆まで言いなさんな!」
アースラに戻り、声を上げる志貴に答え、エイミィは彼に起動済みのストレージデバイスを投げ渡す。
「魔法の中継準備は完了!
ここからでも十分いけるよ――やっちゃって!」
「あぁ!」
エイミィの言葉に、志貴は答えてストレージデバイスをかまえ、目を閉じて集中する。
魔法など使ったことがない――だが、なんとなくやり方がわかる。七夜の“血”のせいだろうか。
かつてはその殺人衝動に振り回されていたものだが――そのおかげでアルクェイドと出会い、なのは達と会うことができた。
そしてまた、今再び仲間達を助ける力になってくれようとしている。運命の皮肉に思わず苦笑するが、今は感慨にふけっている場合ではない。
むしろ警戒しなくてはならないのはこれからだ。ゆっくりとかつて覚醒した時の状態へと思いを馳せ――とたん、その鼓動が跳ね上がった。
「く………………っ!」
強烈な殺人衝動が湧き上がる。エイミィや、リンディや、知佳や――その場にいる者達を今すぐにでも八つ裂きにしたくなる。
(ダメだ――!
その人達は、殺してはいけない!)(殺せ――誰も彼も、殺してしまえ!)
『正しい人間』であろうとする遠野志貴と『殺人鬼』である七夜志貴――二つの意識が志貴の中でせめぎ合う。
“魔眼殺し”の眼鏡をかけているのに、目を閉じているのに――周囲に“死線”がハッキリと感じられる。
強烈な頭痛が脳を襲い、自分の意識も七夜の意識も飛びそうになる。
(殺したりなんかさせない……!
お前が――オレが、この“力”でしなければならないのは――!)
だが、だんだんと“死線”の気配が消えていき、頭痛もおさまって――
(みんなを、守ることだ!)
とたん、彼の中の“力”が解き放たれ――ストレージデバイスの声が響いた。
〈Link up Navigator, Get set!〉
「ぐわぁっ!」
「きゃあっ!」
またも岩石に弾かれ、なのはとギャラクシーコンボイが大地に叩きつけられる――
彼らだけではない。スカイリンクスやスターセイバー、ダイアトラス――なのは達を守る盾となり、叩き伏せられた面々はすでに立ち上がることも困難な状態だ。
「大丈夫か? シグナム」
「あ、あぁ……」
駆け寄る恭也に答え、シグナムは彼に肩を借りて立ち上がり、
「しかし……!」
うめいて、シグナムは傷つき、倒れる仲間達を見回した。
「くそっ、合体を試すどころか、合体の体勢すら取らせてもらえない……!」
「オレのビッグキャノンも、かわされてしまっては意味がない……!
まったく、厄介なことこの上ないな」
さすがは伝説の“一人軍隊”――無傷とはいかずとも未だ健在のビッグコンボイですらこの攻撃には舌を巻き、うめくゴッドジンライに答えるしかない。
「これじゃ、志貴が戻るまで耐えるどころじゃないぞ……!」
「ここまでか……!」
真雪のつぶやきにガードシェルがうめくと、
「いや……まだだ。
あきらめるには、まだ早い!」
仲間達を――そして自分自身をも鼓舞するように告げ、ベクタープライムが立ち上がる。
「少なくとも……ボク達が盾になれば、なんとか動きを鈍らせるぐらいのことはできるみたいだしな……!」
「あの岩はオレ達が防ぐ!
その間に、リンクアップを完了するんだ!」
同様に立ち上がり、ギャラクシーコンボイ達に告げるのはライブコンボイとブロードキャストだ。
「ビームが効かんというのは厄介だが……我輩達が勝つにはそれしかなさそうだしのぉ」
「頼みますよ、総司令官!」
スカイリンクスとファングウルフも立ち上がり――ギャラクシーコンボイとなのは、ソニックボンバーとクロノを守るように布陣する。
「みんな……!」
「どうやら、次で決めるしかなさそうだね。
精神的にはともかく、みんな肉体的には限界に近い」
つぶやくなのはのとなりで、クロノはS2Uをかまえて気合を入れ直す。
「ギャラクシーコンボイ、準備はいいか!?」
「あぁ!」
となりでギャラクシーコンボイがうなずくのを聞き――ソニックボンバーは一同を見渡し、
「いくぜ――野郎ども!」
「野郎じゃないけど了解です!」
ソニックボンバーの言葉になのはが応え――それを合図に4人は上空へと飛び立つ。
「うるさいハエどもめ……!
これでとどめを刺してくれるわ!」
そんななのは達に向け、再び岩石群を飛翔させるスーパースタースクリームだが――
「いっけぇっ!
ギガント、シュラーク!」
彼らに気を取られて他の面々を失念していた――なのはを襲おうとした岩石を、ヴィータがギガントフォルムのグラーフアイゼンで薙ぎ払う!
そして――
「スターブレード――奥義!
飛燕、煉獄斬!」
スターブレードの刀身に炎をまとい、スターセイバーが別の岩石を両断する!
「紅蓮、一閃!」
同様に、カートリッジロードとイグニッションを経たレヴァンティンで岩石を叩き斬るシグナムだが、そんな彼女の背後に別の岩が迫り――
「危ない!」
回避の遅れた彼女を恭也が救った。襲い来る岩を逆に足場にして跳躍。シグナムを抱えて退避し、スカイリンクスが二人を守って岩石をスカイアックスで蹴散らす。
「す、すまない!」
「礼なら後だ!
なのは達には――この岩、一撃たりとも届かせない!」
「無論だ!」
「よぅし、いける、いけるよ!」
グランダスの医務室で、フェイトと共になのは達の様子をモニターで見守るさつきは、興奮の余り拳を握りしめて声を上げる。
そして、フェイトもまたモニターに映るなのはに静かに声援を送る。
「いけるよ……!
がんばれ、なのは、クロノ……!」
「貴様らの考えていることぐらい――お見通しだ!」
だが、そんななのは達の動きはスーパースタースクリームには予想の範囲内だった。腕の一振りで新たな岩石を誘導。頭上からなのは達を狙って襲いかかるが――
「並みのビームでは防げない――ならば、並みのビームでなければいいんだろう!?
フォースチップ、イグニッション!」
咆哮し、ビッグコンボイがビッグキャノンに地球のフォースチップをイグニッションし、
「ビッグキャノン――GO!」
放たれた閃光が弾け、散弾となったそれが岩石群に降り注ぐ。
さすがにスーパースタースクリームの“力”で守られた岩石を撃ち砕くほどの威力は出せなかったが――巻き起こった爆発は岩石群の布陣を乱すには十分すぎた。動きの乱れた岩石群の間を、なのはやギャラクシーコンボイ達はぬうように駆け抜けていく。
そして、
「ビームがダメなら――!」
「直接ブッ叩くまでだ!」
ガーディオンとダイリュウジンが彼らの援護に加わった。ダイリュウジンの拳が、ガーディオンのラダークラッシュが、次々に岩石を弾き飛ばしていく。
「ジャマするだけでいいなら――オレ達だって!
サンダークラッカー!」
「おぅともよ!
フォースチップ、イグニッション!」
さらに、晶の指示でサンダークラッカーもフォースチップをイグニッション。周囲にまき散らされたスーパースタースクリームの“力”の残滓を収束し、
「スターダスト、スマッシャー!」
放たれたエネルギーの渦が、岩石群を巻き込み、なのは達の前から吹き飛ばしていく。
「おのれぇっ!」
順調に岩石群を突破していくなのは達の姿に、スーパースタースクリームはさらに岩石を放とうと腕を振り上げ――
「そうは、させない!」
それを阻んだのはダイナザウラーと組み合っていたフォートレスマキシマスだった。地響きを立てて仰向けに倒れると、ダイナザウラーを巴投げの要領でスーパースタースクリームへと投げ飛ばす!
そして――
『いっけぇぇぇぇぇっ!』
咆哮と共に――なのは達は岩石群を突破、その上空へと飛び出した。
「やったぁ!」
ついにスーパースタースクリームの妨害を潜り抜けた――なのはが歓喜の声を上げると、
〈みんな、聞こえる!?〉
そこにエイミィから通信が入った。
〈志貴くんがリンクアップナビゲータの起動に成功!
遠慮はいらない――やっちゃってちょーだいっ!〉
『了解!』
『ソニックボンバー!』
クロノとソニックボンバーの叫びが響き、クロノをライドスペースに乗せたソニックボンバーはビークルモードへとトランスフォーム。そこから機首を後方にたたみ、主翼のバルカンシステムも展開。機体下部の装甲を展開して合体ジョイントを露出させる。
『ギャラクシー、コンボイ!』
次いでなのはとギャラクシーコンボイが叫び、なのはをライドスペースに乗せたギャラクシーコンボイがギャラクシーキャノンを分離。その両足にソニックボンバーの翼から分離した火器が合体する。
そして、両者が交錯し――
『リンク、アップ!』
4人の叫びと共に、バックユニットとなったソニックボンバーがギャラクシーコンボイに合体する!
最後にソニックボンバーの胸部装甲がギャラクシーコンボイの胸部に装着され、4人が高らかに名乗りを上げる。
その名も――
『ソニック、コンボイ!』
「やったぜ!」
「まったく、ムチャをする……!」
ついにリンクアップを成功させたなのは達――合体したソニックコンボイの勇姿に、ヴィータと恭也が安堵の声をもらす。
「合体、されちゃったね。
もう降参した方がよくない?」
「何をバカなことを……
たかがザコが2匹合体したところで!」
フィアッセの言葉に言い返し、スーパースタースクリームはソニックコンボイへとバーテックスキャノンをかまえ――その視界からソニックコンボイの姿がかき消える!
「何――――――っ!?」
(速い――!?)
それでもとっさにその動きを追うスーパースタースクリームだが――目やセンサーで追いかけるのが精一杯。今の自分の巨大では反応まではとてもじゃないが追いつけない。
「ならば!」
それならとソニックコンボイに向けて岩石群を飛ばすが――ソニックコンボイはその攻撃をも視野に入れていた。あっさりと回避すると岩石群はそのまま飛翔し――身を起こしたダイナザウラーに降り注ぐ!
「しまった!」
思わず声を上げるがもう遅い――瞳に怒りの炎を燃やしたダイナザウラーはスーパースタースクリームへと向き直り、熱線の一撃をお見舞いする!
「バカな……!
たかが合体したぐらいで……!」
「スーパースタースクリームさんにはわからないの!?」
うめくスーパースタースクリームに、なのはが告げる。
「守ってくれたみんなの想い!
信じてくれた、アースラやサイバトロン基地のみんな、フェイトちゃんの願い!」
「そして、宇宙の平和のために、すべてを背負い、共に戦う!
それが、我らサイバトロンの強さだ!」
「ふざけるな!
力こそがすべてなのだ。力こそが……!」
なのはやソニックコンボイの言葉に言い返し、全身の火器で反撃するスーパースタースクリームだったが、
「力、ねぇ……」
そんなスーパースタースクリームに、ビッグコンボイが告げた。
「その力……今の貴様に、どれだけ残っているんだ?」
「何………………っ!?」
ビッグコンボイの言葉に声を上げ――スーパースタースクリームは気づいた。
自分の火器の出力が低下している。これは――
「パワー不足だと……!?
バカな!? 私はプライマスのスパークで――」
言いかけ――スーパースタースクリームは気づいた。
「しまった……!
チップスクェアは、貴様らに……!」
「そういうことだ!」
スーパースタースクリームに答え、ソニックコンボイはダイナザウラーの周囲を高速で飛翔、標的を見失ったダイナザウラーがバランスを崩し、転倒する。
「貴様のその力は、所詮プラネットフォースから借り受けたもの!」
「当然、使い切っちゃっても自分の“力”じゃないから回復できない――
プラネットフォースを奪い返されたスタースクリームさんは、もうガス欠を待つだけなんだから!」
そう――最初こそ圧倒的な力を誇っていたスーパースタースクリームだったが、今はそのパワーにも衰えが見えてきていた。プラネットフォースを奪い返され、エネルギーの供給源を断たれたことで、その力の絶対量に限界が生まれたのだ。
そして、ダイナザウラーの妨害を排除したソニックコンボイはスーパースタースクリームの前に躍り出る。
「これで終わりだよ――スーパースタースクリームさん!」
「ギャラクシーキャノン!」
ソニックコンボイの言葉に、リンクアップの際分離していたギャラクシーキャノンが飛来。キャノンモードとなってソニックコンボイの前に降下する。
そして、ソニックコンボイはそのトリガーに両手をかけ、
『フォースチップ、イグニッション!』
なのは、ソニックボンバー、そしてクロノ――彼らと共に咆哮、背中のギャラクシーキャリバーとギャラクシーキャノン、双方に同時にフォースチップをイグニッションする。
そして、ソニックコンボイは全ての火器を展開し、
『ギャラクシーキャリバー、フルバースト!』
放たれた多数の閃光がひとつにまとまり、巨大な閃光となってスーパースタースクリームに迫る!
「おのれ――そんなもので!」
防御するまでもない――もはや蛮勇でしかないその自信と共に、スーパースタースクリームは迫る閃光と対峙し――
「――――――っ!?」
その瞬間、それに気づいた。
このまま閃光を受ければ、直撃するのは胸部。すなわち――
「――いかん!」
とっさにスーパースタースクリームは胸部を――その奥にあるものをかばうように身を沈め――結果、体勢の低くなったスーパースタースクリームの顔面に、なのは達の放った閃光が直撃した。
「ぐ……ぁ…………!」
もはやプライマスのスパークの加護など何の意味もなさなかった――顔面に強烈な一撃を受け、スーパースタースクリームの巨体はゆっくりと後方に重心を移し――
数秒をかけ、その巨体は地響きを立てて大地に倒れていった。
『……ぃやったぁぁぁぁぁっ!』
アースラで、サイバトロン基地で、グランダスの医務室で――そして戦場で。
スーパースタースクリームを撃破し、一同が歓声を上げる。
「やった、やった!
すごいですよ、ソニックコンボイさん!」
「はい……!」
大はしゃぎの琥珀の言葉に答え、翡翠は目じりにあふれてきた安堵の涙をぬぐう。
「わ、私は、最初から心配してませんでしたけど」
「そうなんですか?」
平静を装って告げる秋葉の言葉に愛が聞き返すが――秋葉の顔も興奮の余り真っ赤だ。説得力がないにもほどがある。
が――
「待って!」
そんな彼女達の喜びに、舞が水を差した。
「まだダイナザウラーがいるんだよ!」
しかし――
「その心配はないみたいですよ」
答え、琥珀が指さしたモニターの中では、ダイナザウラーは火口のギガストーム達の元へとゆっくりと後退していた。
「やれやれ、スーパースタースクリームがやられたとはな……」
「あのスピードでは、ダイナザウラーも対応できまい。
作戦を練り直す必要があるな……」
ため息をつくギガストームに答え、ダイナザウラーを呼び戻したオーバーロードは肩をすくめて見せる。
そして、ダイナザウラーは戦艦形態にトランスフォーム、ギガストーム達を乗せて上空に飛び立つ。
「よし、チップスクェアを持って離脱した面々を追うぞ!」
「合点承知!」
ギガストームの言葉にメナゾールが答え、ダイナザウラーはワープゲートを展開、その向こうへと消えていった。
「スーパースタースクリームの敗北。
マスターメガトロンは消え、ギガストーム達も撤退、か……」
「どうしますか?」
「無論、我らも撤退するさ」
尋ねるグレートポントスに、スカイクェイクはあっさりと答えた。
だが――その表情には焦りも敗北の悔しさもなく――むしろ余裕の笑みがあった。
「これから忙しくなるぞ。
この星だけでなく、他の星や次元世界にも知的生命体がいることがわかった――これが何を意味するか、わからぬお前達ではあるまい?」
「……我らの支配すべき地がさらに広がった、ということですね?」
「そうだ」
プレダキングの言葉にうなずくと、スカイクェイクは彼らに背を向け、
「オボミナスを探せ。
あの暴れん坊がおとなしくしているはずがない――きっとどこかの地割れに呑まれて動けなくなっているはずだ。
ヤツを回収次第この場を離れて善後策を検討する!」
『ははっ!』
答えて、その場を離れる部下達から視線を外し――スカイクェイクは歓喜するサイバトロン一同へと視線を戻した。
「……ビッグコンボイ。
今回の勝負……預けておくぞ」
「……だから言ったのに……」
スーパースタースクリームのライドスペースで、フィアッセはため息をついて告げた。
もはやスーパースタースクリームも立ち上がることはできまい。後は救出されるのを待つばかりだ。
しかし――
(けど……さっき、この人……)
思い出されるのは先程の最後の攻防――スーパースタースクリームは、とっさに胸部をかばい、その結果顔面に決定打を受けることになった。
そう、胸部を――その奥にある、“自分のいるライドスペースをかばって”。
(もしかして……私を、かばった……!?)
「さて、後はヤツの処遇か……」
大地に倒れたスーパースタースクリームの巨体を見上げ、そう口を開いたのはシグナムだ。
「ついでだし、蒐集しちまうか?」
「あれだけのパワーだ。かなりの収穫のはずだが……」
さすがに蒐集の話題となると大っぴらに話すワケにはいかず、ヴィータとザフィーラが小声で話していると、
「その前に、フィアッセの救出だ」
「そうだな」
しっかり聞こえていた恭也に答えるのはシグナムだ。二人はスーパースタースクリームの様子を観察し、動きがないことを確認するとゆっくりと近づき――
「おっと、そうはいかないな」
『――――――っ!?』
そんな彼らの前に、クロミアやサイロナス達を従えたノイズメイズが姿を現した。
「な、何!?」
やっと助けてもらえると思っていた矢先のノイズメイズ達の出現――フィアッセはライドスペースで思わず声を上げた。
だが――外のノイズメイズはかまいはしない。スーパースタースクリームに触れ、恭也達に告げる。
「まだスーパースタースクリームにいなくなってもらっては困るからな。これで失礼させてもらうぜ」
「待て! ノイズメイズ!」
「フィアッセさんを返せ!」
そんなノイズメイズに言い返し、恭也とシグナムが地を蹴り――次の瞬間ノイズメイズがワープを決行。外の光景はフィアッセの視界から消えていった。
「……逃がしたか……!」
「すまない。
もっと早く対応していれば……!」
ようやく事態に気づき、ソニックコンボイ達もやってきた。外に出て、うめくクロノの言葉にシグナムは肩を落として謝罪した。
「だが、連中もフィアッセに危害を加えるつもりはあるまい。
きっとまた、救出のチャンスは訪れる」
「そうだな……」
ソニックコンボイの言葉に恭也がうなずくと、
「ならば、我々も引き上げるとするか」
大きく背伸びして、ヴォルケンリッターの一同に告げるのはビッグコンボイだ。
「……なんでお前が仕切るんだよ?」
「全員、帰るの忘れてはしゃいでただろうが」
半眼で告げるヴィータに答えると、ビッグコンボイはソニックコンボイへと向き直り、
「そんなワケで、オレはコイツらの主に雇われた。
今日からはヴォルケンリッターの協力者――お前達の敵というワケだ」
「“闇の書”の主に……!?」
思わずなのはが声を上げると、ビッグコンボイはソニックコンボイの前に堂々と立ちはだかる。
スターセイバー達が離脱準備を整えるまで、なのは達の壁となるつもりなのだ。
「ヴィータちゃん!」
「……あたしらの共闘は、スタースクリームのヤツをブッ飛ばすまで、だったはずだぜ」
思わず声を上げるなのはに答え、ヴィータはゴッドジンライと共に上昇。上空で戦艦形態にトランスフォームしたマキシマスへと離脱していく。
スターセイバーとシグナム、ダイアトラスとザフィーラもそれに続き――ソニックコンボイは最後にビッグコンボイに尋ねた。
「教えてください、ビッグコンボイ。
“闇の書”の主とは、一体何者なんですか!?」
「プロの傭兵が依頼主を売ると思うか?」
あっさりとそう答えると、ビッグコンボイもまたマキシマスへと跳躍。彼が着艦したのを確認すると、マキシマスは転移魔法陣の向こうに消えていった。
「……追わないのか?」
「さっきまで同盟を結んでいだ相手だ――同盟が解消されたからといきなり襲うようなマネはできない」
尋ねるベクタープライムに答え、ソニックコンボイはなのはへと向き直った。
「……辛いか? また彼女達と敵同士になるのは」
「はい…………」
隠しもせず、素直にうなずくなのはの言葉に、ソニックコンボイは指先で優しく彼女の頭を撫でてやり、
「その優しさがあれば……いつかきっと、彼女達とも分かり合えるさ」
「そう……ですね。
その時まで、がんばらなきゃ、ですね!」
ソニックコンボイの言葉に、なのははようやく笑顔を取り戻してうなずき――
〈みんな、聞こえる!?〉
そんな一同の元に、エイミィから通信が入った。
〈ミッドチルダに向かったニトロコンボイ達から連絡!
『無事ミッドチルダに到着! マスターメガトロン達の追跡も振り切った』って!〉
「そうか。
では、我らもミッドチルダに向かうための準備を整えなければな」
「はい!」
ソニックコンボイの言葉に、なのはは力強くうなずいてみせるのだった。
一方、少し離れたところではもうひとつの別れが待っていた。
「サンダークラッカー?」
「じゃ、オレも帰るわ」
劇的な逆転勝利に沸き返る一同――そこから離れたところに晶を下ろし、サンダークラッカーが疑問の声を上げる晶に答える。
「行っちまうのか?」
「マスターメガトロンに置いてかれたんやろ?」
「ま、そりゃそーなんだけどさ……」
尋ねるブレインストームとレンに、サンダークラッカーは自嘲気味に肩をすくめ、
「それでも……オレ、あの人をほっとけそうにねぇや」
そう言うと、サンダークラッカーは晶に向き直り、
「そんなワケだ、晶。
オレはデストロン、お前はサイバトロン側――怨みつらみはねぇけど、次会う時は敵同士だ」
「そんな……!」
声を上げる晶だが――サンダークラッカーはそのまま晶に背を向け、飛び去っていく。
「サンダークラッカー!」
「待ちぃや、晶!」
思わず後を追いかけた晶だが、そんな晶をレンは肩をつかんで制止した。
「放せよ、カメ!」
「落ち着きぃや!
サンダークラッカーは自分の意志でデストロンに戻ったんや! ウチらがどうこう言っていい問題やあらへん!」
晶にそう言い放つと、レンは晶の肩を放し、
「そんなにサンダークラッカーに戻ってきてもらいたいんやったら……次会った時、力ずくで連れ戻せばえぇ。
マスターメガトロンのところに戻ったんやったら……また会うチャンスはあるやろ」
「……そうだな……」
レンの言葉にうなずき、晶はサンダークラッカーの飛び去っていった青空を見上げた。
「待ってろよ……サンダークラッカー……!
絶対、心変わりさせてやるからな……!」
(初版:2006/09/24)