「……やはり、何も残っていませんね……
無事だった区画の研究施設にあったものも、すべて持ち去られています」
「そうか……」
ウィザートロンが去り、無事サルベージの完了した“時の庭園”――その内部の探索から戻ったパーセプターの報告に、エルダーコンボイは渋い顔でうなずいた。
「やはり、ウィザートロンでしょうか……?」
「戦艦を停泊させていたことから考えれば、おそらくそうだろう」
尋ねるドレッドロックにギャラクシーコンボイが答えると、なのはがエルダーコンボイに尋ねた。
「エルダーコンボイさん。
メガザラックさん達は、プラネットフォースのことやジュエルシードが解放の鍵だってことを知ってるんですか?」
「あぁ、知っている」
彼らにしても特に隠す必要もなかったらしい――そう答え、エルダーコンボイは続けた。
「我らとウィザートロンは最初から対立していたワケではない。当初は二つの勢力に分かれることもなく、共に生きていた。
プラネットフォースの封印はその頃の出来事だったからな――当然彼らも知っている」
「エイミィによれば、メガデストロイヤーからジュエルシードの反応が確認されています。
巧妙に偽装され、すぐにはそうとわからなかったようですが……」
「となると、虚数空間のジュエルシードはウィザートロンが持ち去ったということだから……」
リンディの言葉にニトロコンボイが考え込み――そのとなりで耕介がつぶやいた。
「ウィザートロンも、プラネットフォースを狙っている、ってことか……
けど、封印を解かれたばかりのアイツらに、プラネットフォースを狙う理由なんかあるのか……?」
「しかし……そこまでする必要があるんでしょうかね?」
「ん?」
時空間の一角――綿密なジャミングでその姿を隠しているメガデストロイヤーのブリッジで、メガザラックはレオザックのつぶやきに振り向いた。
「いや、だってそうでしょう?
目的を果たせるだけの魔力エネルギーが必要だっつーなら、他にいろいろ手はあるじゃないですか。ぶっちゃけてしまえば、ジュエルシードだけで魔力は十分に足りるでしょうし。
何も、ジュエルシードをそろえて、プラネットフォースを手に入れて――なんて手順を踏む必要は……」
「あるんだよ」
しかし、メガザラックはあっさりとそう答えた。
「プラネットフォースは我らトランスフォーマーの創造主プライマスのスパーク――すなわち“命”でできている」
「そりゃ、知ってますけど……」
「だから最適なのだ。
あれは生命力そのものの結晶体なのだからな」
レオザックの答えにうなずき、メガザラックは続ける。
「我らが必要としているのはただの魔力エネルギーではない。より生命力に近い形の魔力が必要なのだ。
そういう意味ではジュエルシードでも問題はないのだが……アレは成り立ちが成り立ちである分、不確定要素が大きい。すべてをそろえない限り、正直あてにはできない」
「はぁ……」
わかっているのかいないのか、気の入っていない返事を返すレオザックの前で、メガザラックは立ち上がり、
「それより、戦闘要員を全員作戦室に集めろ。次の作戦を説明する」
「了解しました」
自分がうなずくのを確認し、メガザラックは退出していき――レオザックはつぶやいた。
「……ま、いいですけどね。
用が済んだら、ウィザートロンの覇権のために使わせてもらうだけですし」
第43話
「鋼の騎士の最期なの!?」
アースラの格納庫の一角――
そこには、ファストガンナーやシオン、すずかによって設置された、トランスフォーマー用の医務室があった。
そして今、その中では――
「大丈夫? ブラッカー」
「あ、あぁ、心配ない。
キミ達の所のドクターは実に腕がいい」
自分を気遣うみなみの言葉に、ブラッカーは少し照れながらそう答える。
「私の腕をほめてくれたことには正直感謝するが……だからと言ってまたムチャされてはかなわない。
次は簡単に被弾しないでくれよ」
「あぁ、わかっている」
肩をすくめる『ドクター』ことファストガンナーに答え、ブラッカーはみなみと共にメンテナンススペースを後にする。
「けど……本当に心配したんですよ」
「すまない。
だが、これが我らの仕事だ。常に危険ととなり合わせの、ね」
みなみの言葉に申し訳なさそうに肩をすくめるブラッカーだったが――
「……よし!」
そんな態度は逆にみなみの決意を固めてしまったようだ。力強くうなずき、ブラッカーに告げた。
「それなら……私がブラッカーを助けてあげる!」
「え………………?
みなみ、それはまさか……」
「そう!
私が、ブラッカーのパートナーになってあげます!」
「ちっ、ちょっと待ってくれ!」
宣言するみなみに対し、あわててブラッカーは声を上げた。
「みなみ……キミが、私のパートナーになると言うのか!?」
「そうですよ」
あっさりとみなみはうなずく。
「だ、だが、キミは特に戦う力があるワケでは……」
「イグニッションパートナーならできるんでしょ?」
ブラッカーの反撃はあっけなく費えた。
「はっはっはっ、お前の負けだな、ブラッカー」
「他人事だと思ってるでしょ、団長……」
笑いながら告げるシルバーボルトにブラッカーは思わずうめき、肩を落とす。
だが、そんなブラッカーに対し、シルバーボルトは告げた。
「そう気を落とすな。
我らは王室騎士団の一員――守り、戦うことこそが本分。
今までパートナーを持たなかったお前が戸惑うのもわかるが――ならば、彼女も守ってやればいいではないか」
「む………………」
シルバーボルトの言葉にうめき――ブラッカーは困ったような視線をみなみに向ける。
対するみなみは「もう答えは出ているでしょう?」とでも言いたげに笑顔を向けてくる――抵抗はもはや無意味なようだ。
「……わかった。
キミの安全は私が保証する。だから……イグニッションパートナーとして、キミの“力”を貸してほしい」
「もちろん♪」
ため息をつき、改めて協力を請うブラッカーの言葉に、みなみは満面の笑みでうなずくのだった。
「えっと……ここは?」
「あぁ、そこはね……」
その頃、ブリッジではゆうひがエイミィからコンソールの扱い方を教わっていた。
意外なことに、ゆうひはなかなかに筋が良かった。エイミィが軽く教えるだけで、教わった範囲内の操作はほぼ完璧に覚えてしまっている。
「さすが……って言うべきなのかな?
やっぱりさざなみ寮の人達は只者じゃないわね」
「あはは……そんな大したもんでもないよ。
知佳ちゃんにパソコン教わってた下地があったからやし」
「でもないさ。
オレなんか今の説明でもさっぱりだよ」
感心するエイミィに照れるゆうひに耕介が答えると、
「あら、ゆうひさん」
そこへリンディが姿を見せた。
「ゆうひさん、オペレータ研修は順調?」
「はい、なんとか……」
「ゆうひなら心配ないですよ。
さざなみ寮にいた頃から、何でもできるマルチプレイヤーでしたからね」
「もう、耕介くん、そんなにほめても何も出ぇへんよ」
耕介の賛辞にゆうひが答えると、今度はエイミィがリンディに尋ねた。
「艦長……本局との協議の結果は?」
「こちらの予想通りね」
答えて、リンディは艦長席につき、
「我々はチームを分け、“時の庭園”を警護すると共に引き続きウィザートロンの行方を追うことになったわ」
「やっぱりそうなっちゃいましたか。
私達が現時点で一番現場に近い――どころか今現在現場にいちゃったりしますからね」
思わず肩をすくめるエイミィに苦笑を返すと、リンディは格納庫のトランスフォーマー達へと通信をつなぐ。
「ギャラクシーコンボイ」
〈わかっている。
こちらも今、グレアム提督やエルダーコンボイから聞いたところだ〉
「では、こちらで残留メンバーの選出を始める」
〈お願いします〉
さっそく準備に取り掛かろうとするギャラクシーコンボイにリンディが答えると、
「えっと……ギャラクシーコンボイ」
突然、ユーノが口をはさんだ。
「それなら、ボクは一度、本局に戻らせてもらおうと思うんですけど……」
「あ、そっか……
ユーノくん、地球でのゴタゴタのせいで、無限書庫の検索を放り出して来ちゃってたんだよね」
ユーノの言葉に、ようやくそのことを思い出したなのはが納得してうなずく。
「では……私もお手伝いしましょうか?」
と、そんな二人の会話に気づき、首を突っ込んできたのはシエルだった。
「これでも調べごとは得意なんですよ。昔遠野くんがからんでた事件の時もがんばったんですから♪」
「そうですか?
すみません、お願いします」
「お礼はいいですよ」
礼を言うユーノに答え、シエルは肩をすくめ、
「どうせ私はパートナーもいませんから、こちらにいても出番は限られますし」
「ぅわぁ……切実な理由だ……」
苦笑するシエルの言葉に、となりで聞いていたフェイトも思わずもまた苦笑してつぶやく。
「そうか……ユーノは無限書庫の検索を依頼されていたんだったな……」
一方、そんなやり取りを前にしたエルダーコンボイはそうつぶやいてしばし考え、
「では、そちらについてもこちらから人員を補充しよう。
“闇の書”については、もはや我らにとっても他人事ではないからな」
言って、エルダーコンボイは端末を操作し――それから少しして、ひとりのトランスフォーマーが姿を見せた。
「紹介しよう。情報士官の、トゥラインだ」
「トゥラインです。よろしく」
「あ、こちらこそ」
エルダーコンボイに紹介され、名乗るトゥラインに答え、ユーノは彼と握手(と言ってもトゥラインは人さし指だったが)を交わす。
「彼はシティのデータ管理を任されている、情報分析のエキスパートだ。
“闇の書”の情報検索についても、きっと力になってくれるだろう」
「すみません、エルダーコンボイ」
「かまわない。
先ほども言ったが、“闇の書”については我らとて他人事ではない。
グレアムも本局に戻るようだ――同行するといい」
ユーノに答え、エルダーコンボイはギャラクシーコンボイと打ち合わせを再開すべくきびすを返し――小声で告げた言葉は、誰にも聞かれることはなかった。
「……我らとしても、“闇の書”の情報は欲しいからな……」
「まずは確認だ。
我らが狙うのはプラネットフォースだ。
そして、そのプラネットフォースの所在は現在2ヶ所で確認されている。
ガイルダート」
「はい」
メガザラックに呼ばれて姿を見せたのは、先の戦闘で出撃しなかったメンバーのひとり、ガイルダートである。
「アルカディスの調べでは、時空管理局所属の巡航L級8番艦アースラ――エルダーコンボイ達が現在乗艦している艦ですが……その艦に、すでに3つのプラネットフォースが回収されています。
しかも、その台座たるチップスクェア付きで」
「……ということだ。
そして、もうひとつは言わずと知れたミッドチルダのプラネットフォース――この封印は解かれていないのは諸君も知っての通りだ。何しろ我らもヤツらもジュエルシードをそろえていないんだからな」
「つまり……我らはそのどちらかを手に入れればいい、と……
さて、どちらを狙うべきか……」
ガイルダートとメガザラックの言葉にうなずき、オンスロートはしばし思考を巡らせ――
「めんどくせぇなぁ。
両方奪うってワケにはいかねぇのかよ?」
「難しいのは性に合わん」
そんな戦略的思考を全身全霊を持ってシカトしてくれたのはショックウェーブとゴウリュウだ。
「簡単に言うが、連中とて弱小ではない。
前回は奇襲が功を奏したが、今回もそうだとは限らない」
「どうってコトぁねぇよ。
オレ達だって、あの戦いじゃ本気じゃなかったんだしな」
釘を刺すレオザックにショックウェーブが答えると、
「そうだな」
二人の言葉にメガザラックがうなずいた。
「ですよね?
やはりどちらかに絞って攻めるべきです」
そんなメガザラックに提言するレオザックだったが――
「両方狙うぞ」
「………………へ?」
メガザラックの言葉に、レオザックの目はテンになっていた。
「……で? ミッドチルダに来たのはいいが、これからどうするんだ?」
ミッドチルダの山中――人目を避けて停泊しているマキシマスのブリッジで、ジンライは一同に尋ねた。
「高町のヤツらも見当たらないしなぁ……
ま、こんな人里離れたところにいちゃ、むしろ当然かもしれないけどさ」
肩をすくめてヴィータが言うと、
「だったら、探しに行けばいいだろう」
突然口を開いたのはビッグコンボイだった。
「探す……と言っても、連中がどこにいるかがわからなくては……」
反論の声を上げるザフィーラだったが――
「……意図、理解」
ビッグコンボイの言いたい事に気づいたのはアトラスだった。
「彼らの行方……知る者の居場所は確定」
「アイツらの居場所を……?」
「そんなものを知ってる者達が、一体どこに……」
アトラスの言葉につぶやき――シグナムとスターセイバーは気づいた。「あっ」とでも言いたげな顔で顔を見合わせる。
「なるほど……そういうことですか」
一方、シャマルも気づいたようで、納得しながらフォートレスに告げた。
「フォートレス、マキシマス発進。
目的地は――時空管理局・本局周辺宙域」
「了解だ」
「じゃあ、行ってくるね」
「うん!」
出発の準備が整い、告げるユーノになのはは満面の笑みでうなずく。
その表情に心配の色はない――やはり魔法少女になった日からのパートナー関係ともなればその信頼関係は何よりも深いものがあるのだろう。
そんなユーノをジャックプライムやクロノ、フェイトが今にも射抜けそうな勢いでにらみつけているのはどうかと思うが。ユーノのとなりにいるシエルが明らかに半歩離れたのを確認し、志貴は思わず内心でため息をつく。
「では、行こうか、みんな」
「ついて行けなくてすまないな、グレアム。
代わりの人員は手配した――本局に着いて少ししたくらいの時間には着くはずだ」
一方、こちらはさすがと言うべきか、ものすごいテンションで殺気立っている面々に動じることもなかった。戻るメンバーを引率するグレアムとエルダーコンボイは平然とそんな会話を交わしている。
「忍、みんなのことは頼むぞ。
間違っても改造手術はしないように」
「あら、ごあいさつね。
そう言う恭也も気をつけてね。護衛って言っても、恭也だってパートナーいないんだから」
護衛として同行することになった恭也の言葉に忍が告げ、本局に向かう面々の周りを転送魔法の光が包んでいく。
「じゃあ、なのは。
こっちは任せたぞ」
「うん!」
告げる恭也になのはが答え――ユーノ達はその姿を消していった。
「大丈夫だよね、ユーノくん……」
「心配ない。
彼の探索能力は一流だ――でなければ私情を排してまで協力を仰いだりしない」
それに無限書庫に放り込んでおけばなのはとの接点も断たれるし――などという黒い考えはもちろん口に出すことはなく、なのはに答えたクロノはきびすを返し――
衝撃がアースラの停泊する“時の庭園”を揺らした。
「なっ、何!?
地震!?」
「時空間で地震はない。
強いて言うなら時空震だが……これは明らかに違う」
突然の衝撃に戸惑う薫に答え、シルバーボルトは告げた。
「攻撃だ」
「きゃあっ!」
衝撃はもちろんブリッジにも届いた。ちょうどゆうひのオペレータ研修を見物監督するために立ち歩いていたリンディはバランスを崩し――
「危ない!」
それに気づいた耕介が、とっさに倒れかけたリンディの身体を支える。
「大丈夫ですか?」
「え、えぇ……」
尋ねる耕介にリンディが答えると、
「えーっと……艦長も耕介さんも、くっついてる場合じゃありませんよ」
そんな二人に、エイミィが告げた。
「攻撃してきたのは――ウィザートロンです!」
「ウィザートロンが!?
何で!? 逃げたんじゃなかったの!?」
「そんなの関係ないさ!
こっちが探す手間が省けたってもんだぜ!」
突然のウィザートロンの襲撃――予想外の事態に驚くアルクェイドに答え、ライガージャックはウィザートロンを迎撃すべくアースラから“時の庭園”へと飛び降りる。
「へっ! いい度胸してるぜ!
いくぜ、クロ坊!」
「『クロ公』の次は『クロ坊』!?」
「気を引き締めろ、二人とも。
向こうだってそれなりの準備を整えて仕掛けてきてるはずだ」
一方、上空で迎撃態勢を整えながら言い合うソニックボンバーとクロノをたしなめるのは志貴と共に出撃してきたドレッドロックである。
そして――
「来るぞ!」
シックスナイトが告げると同時――レオザックやショックウェーブがゴウリュウ、オンスロートを背中に乗せて飛来した。
「よっしゃ! 暴れるぜ!」
「あぁ。
メガザラック様の許可は出ている――好きに暴れるといい」
「おぅともよ!」
レオザックの言葉に元気よく答え、ゴウリュウは“時の庭園”へと飛び降り、
「ゴウリュウ、トランスフォーム!」
咆哮し、スピノサウルス型のビーストモードとなるとそのままライガージャック達に襲いかかる。
「やれやれ、ゴウリュウめ……」
そんなゴウリュウの姿に、上空でオンスロートはため息をつき――
「オンスロート、てめぇもさっさと降りろ!」
ビークルモードのショックウェーブはそんなオンスロートを“時の庭園”へと振り落とし、
「んじゃま、いくぜぇっ!」
「かかってこいやぁっ!」
一気に加速し、迫り来るショックウェーブに対し、ソニックボンバーもまた迎撃するべく飛翔する。
そして――
「貴様の相手は、私のようだな」
言って、レオザックはギャラクシーコンボイとなのは、そしてフェイトと対峙する。
「たったひとりで我々の相手を使用とは、ずいぶんな自信だな」
「自信満々なところを悪いんですけど……帰ってもらいます!」
対して、ギャラクシーコンボイとなのははそれぞれにかまえるが――
「自信があるからには、それなりの根拠というものがあるんだよ」
言って、ロボットモードにトランスフォームしたレオザックはそれを取り出した。
デバイスカードである。
「出ろ! カイザーフォース!」
デバイスカードをかざしてレオザックが咆哮、光の塊となったデバイスカードが分裂、4機のジェット戦闘機型パワードデバイスとなる。
「パワードデバイス!?」
「それがお前の切り札か!」
「そういうことさ」
声を上げるフェイトとギャラクシーコンボイに答え、レオザックは咆哮した。
「見せてやる。
ウィザートロンのナンバー2――レオザック様の本領をな!」
「レオザック、パワードクロス!」
力強く咆哮し、急上昇するレオザックの後を追い、4機のカイザーフォースは彼の回りを飛翔する。
そして、レオザックは両腕をたたみ脚部を展開。大腿部をそなえたより大きなボディへと変形。その四肢にカイザーフォースが合体する。
新たな両腕に拳が、両足につま先がエネルギー形成され、ボディから新たな頭部がせり出す。
ボディからの指令が四肢に行き渡り、新たな姿となったレオザックは名乗りを上げた。
「武装剣将――ライオカイザー!」
「オンスロート、トランスフォーム!」
咆哮し、ミサイルトレーラーとなったオンスロートは“時の庭園”を疾走、エクシゲイザーやバックギルドらバンガードチームに対し攻撃を開始する。
「くそっ、なめやがって!」
「ボクが行く!
ハイブラスト、トランスフォーム!」
うめくエクシゲイザーに答え、ハイブラストはビークルモードにトランスフォームして上空へと飛び立ち、
「いくよ――ノエル!」
「はい!」
『フォースチップ、イグニッション!
ブラストランチャー!』
ノエルと共にイグニッション。上空からオンスロートに攻撃を加え、
「オレ達もいくぜ!」
「うん!」
『フォースチップ、イグニッション!
ダブル、エクスショット!』
エクシゲイザーとすずかが追撃のダブルエクスショットを放つ。
「くそっ、やってくれるな!」
降り注ぐ攻撃に舌打ちし、オンスロートはロボットモードへとトランスフォームし、
「調子に乗るなよ――貴様ら!」
彼もまた、デバイスカードを取り出した。
「バトルフォース、召集!」
オンスロートの言葉に、デバイスカードはその姿を変えた。
バギー、戦車、ジェット機、戦闘ヘリ――軍用機で構成されたパワードデバイスである。
「――いくぞ!」
「オンスロート、パワードクロス!」
力強く咆哮し、大きく跳躍するオンスロートの後を追い、4機のバトルフォースは彼の回りを飛翔する。
そして、オンスロートは両腕をたたみ脚部を展開。大腿部をそなえたより大きなボディへと変形。その四肢にバトルフォースが集結する。
ジェット機が右腕、戦闘ヘリが左腕に合体し、両足にはバギーと戦車が合体する。
新たな両腕に拳が、両足につま先がエネルギー形成され、ボディから新たな頭部がせり出す。
ボディからの指令が四肢に行き渡り、新たな姿となったオンスロートは名乗りを上げた。
「武装軍将――バトルガイヤー!」
「こいつもパワードデバイスを!?」
「油断するなよ、エクシゲイザー!」
合体を遂げ、対峙するバトルガイヤーを前に、ファストガンナーはエクシゲイザーに警戒をうながすが、
「そうはいかないって。
敵の能力がわからないことには、どうしようもないだろ!」
答えて、エクシゲイザーはバトルガイヤーに向けて地を蹴る。
「エクシゲイザー!」
「オレがヤツと戦って様子を見る!
分析は任せるぜ、ファストガンナー!」
声を上げるファストガンナーに答え、エクシゲイザーは一気に間合いを詰め、拳を放つが――
「その程度!」
バトルガイヤーはあっさりと受け止め、逆にエクシゲイザーを投げ飛ばす!
そして――
「ゴウリュウ!
ショックウェーブ!」
「おぅともよ!」
「いいんだな!? 使っても!」
レオザック改めライオカイザーの言葉に歓喜の声を上げ、ゴウリュウやショックウェーブもまたデバイスカードを取り出し――!
「えぇっ!?
“時の庭園”が!?」
「そ。キミ達や父様と入れ違いに、敵が現れたって」
「しかも、こないだ逃げてったウィザートロンとかいうヤツ」
報せを受け、声を上げるユーノにアリアとロッテが答える。
「大変だ……ボクらも行かなきゃ!」
あわててきびすを返そうとするユーノだったが、
「待つんだ、ユーノ」
それを止めたのはトゥラインだった。
「ボクらは戦闘要員じゃないんだ。行ったって、ボクらの力じゃ本当にみんなの力になれやしないよ」
「けど……」
反論しようとするユーノだったが――トゥラインはさとすように告げた。
「ボクらの仕事は戻って戦うことじゃない。みんなが力を最大限に発揮できるように、必要な情報を集めることだ」
「………………」
トゥラインの言葉に、ユーノはしばし黙考し――
「……わかった。
なのは達のためにも、ボクはここでがんばらなきゃ」
その瞳に決意を宿しユーノはトゥラインに告げた。
「行こう、トゥライン。
無限書庫へ――“闇の書”だけじゃない。ウィザートロンについてもまだわかってないことがあるはずだ。
それを解き明かすことができれば、きっとなのは達の助けになる!」
「あぁ!」
ユーノの言葉にトゥラインがうなずいた、その時――突然、本局を衝撃が揺るがした。
「な、何だ!?」
「待って! 今調べるから!」
声を上げるトゥラインに答え、ロッテは端末で状況を確認し――その顔から血の気が引いた。
「そんな……ウソでしょ!?」
「どうしたんですか!?」
尋ねるユーノへと振り向き――ロッテは告げた。
「本局上層部――外壁上に、メガザラックが!」
「フンッ、呆れたな……
ベルカ式の転送魔法に対する備えに不備がありすぎる――いくらミッドチルダ式が主流とはいえ、平和ボケがすぎるというものだな」
本局の外壁に降り立ち、メガザラックはため息まじりにそうつぶやいた。
だが、今は呆れるよりも目的を果たす方が先だ。メガザラックは気を取り直して振り向き、そこに控えるガイルダート達に告げた。
「ガイルダート、デッドエンド、セイバーバック――そしてアルカディス。
お前達はこのまま外で暴れてろ」
『了解!』
「せいぜい派手に立ち回れ。
私は――」
ガイルダート達に答え、メガザラックは改めて本局の中心へと視線を向けた。
「目的の物を探させてもらう」
メガザラックの命によって攻撃が始まった。ガイルダート達は散開し、本局の防衛システムと交戦を開始する。
戦闘による光が瞬き、消える本局――そこに現在、人知れず接近する艦船があった。
マキシマスである。
「……あれは!?」
本局で戦闘の始まっているのを確認し、シグナムは思わず声を上げた。
「攻撃を受けている……!?」
状況に気づき、シャマルがつぶやくと、
「ならば、混ぜてもらおうじゃないか」
そう言い出したのはシグナムである。
「サイバトロンがあそこにいようといまいと、アースラがからんでいる以上、本局が襲われていると知れば姿を見せるはずだ。
すでに彼らはミッドチルダのサイバトロンと接触したと思っていい――となれば、プラネットフォースの情報を得られるかもしれない」
「なるほど……」
シグナムの言葉にスターセイバーが納得すると、
「……待つんだ」
そんな彼らを、フォートレスが制止した。
「襲撃者のひとりが局内に突入したのを確認した」
「狙いは局の中にあるというのか……?」
ザフィーラが腕組みしてつぶやくと、
「なら、そいつからも事情が聞けそうだな」
言って、ジンライはブリッジから出て行くべくきびすを返した。
「オレとヴィータは内部に突入する。
他の面々で外の連中を任せる」
「待て、ジンライ!」
制止の声を上げるスターセイバーだったが、ジンライはヴィータと共に転送魔法で姿を消していった。
「まったく、アイツは……」
「だが、理に適っている」
スターセイバーに答え、ビッグコンボイもまた立ち上がり、
「オレ達も出撃だ。
ジンライ達を敵の集中砲火にさらすつもりか?」
「あ、あぁ……」
ビッグコンボイの言葉に、スターセイバーはシグナムへと視線を向け――その視線にうなずき返し、シグナムは告げた。
「ジンライを援護し、外で暴れている連中を片付ける。
シャマルとフォートレスはここでフォローを頼む。
プラネットフォースの手がかり――ここで何としてもつかむんだ!」
「出てこい! ダイノレックス!」
ゴウリュウの言葉に、デバイスカードは光を放ち、漆黒の恐竜型パワードデバイスへとその姿を変える。
「いくぜ――ゴウリュウ、パワードクロス!」
力強くゴウリュウが咆哮し、パワードデバイス、ダイノレックスは合体形態への変形を開始する。
まず、両足がまっすぐに伸び、股の感覚が狭まりカカトが前後逆に回転、かかとだった部分がつま先となり、脚部が完成する。
次に、尻尾が二つに割れ、支えているフレームを基準に回転、両肩に合体するとその尻尾がさらに展開。内部から拳が現れて両腕になる。
その一方で、ビーストモードとなったゴウリュウは背中の背びれと尻尾を分離、四肢を折りたたむとコアユニット形態にトランスフォームする。
そして、ダイノレックスの胸部装甲が開き、コアユニット形態への変形を遂げたゴウリュウが収納される。
最後にダイノレックスの首が縮まり、口が開いて内部から顔が現れる。
ボディからの指令が四肢に行き渡り、新たな姿となったゴウリュウは名乗りを上げた。
「武装竜将――ダイノキング!」
「レーザーフリート! レーザークラフト!」
咆哮し、ショックウェーブが呼び出したパワードデバイスは戦艦と揚陸艇の形をした戦闘艦船タイプだった。
「ショックウェーブ、パワードクロス!」
咆哮し、ショックウェーブは右手の巨大ビーム砲を分離させ、四肢をたたんでコアユニットへと変形。それをはさみ込むようにレーザークラフトが下部に、レーザーフリートが上部に合体。ショックウェーブを収納する。
そして、レーザークラフトが左右に分割され、スライド式に伸ばされ両足となり、続いてレーザーフリートも同様に分割され、内部から拳を展開して両腕に。さらにレーザーフリートが分割された際に新たな頭部がその姿を現す。
右肩にレーザーウェーブの右手から分離していた大型ビーム砲が合体。ボディからの指令が四肢に行き渡り、新たな姿となったショックウェーブは名乗りを上げた。
「武装砲将――レーザーウェーブ!」
パワードデバイスとの合体を完了し、ウィザートロンの戦士4名は改めてサイバトロンの面々と対峙する。
「こいつら……全員がパワードデバイス持ちかよ!?」
「そのようだな」
うめくロディマスブラーにガードシェルがうなずくと、
「油断するなよ、みんな」
彼らに告げ、こちらもパワードデバイスの装着を完了したエルダーコンボイが、そして彼に続いてスペリオン、ロードシーザーが降り立つ。
「パワードデバイスの合体によるパワーアップは、決して油断できるものではない」
「あぁ、わかってるさ。
こっちも、パワードデバイス持ちを敵に回したことがあるからな」
スペリオンの言葉にライガージャックが答えると、
〈みんな、大変や!〉
突如、アースラからゆうひが通信してきた。
そして、エイミィが彼女に代わって一同に告げる。
それは――
〈今連絡が入って……本局が、メガザラックに襲われてるって!〉
「えぇっ!?」
「くそっ、こいつらはオトリか……!」
思わず声を上げるなのはのとなりでギャラクシーコンボイがうめくと、
「ギャラクシーコンボイ、それになのはも!
キミ達は本局に向かうんだ!」
そう告げたのはベクタープライムだ。
「そうだな。
こちらはオレ達で何とかする。早く!」
「し、しかし……」
同意するニトロコンボイの言葉に、ギャラクシーコンボイは思わずためらい――
「考えてるヒマはねぇだろ!」
彼の思考を待たず、ソニックボンバーが口をはさむ。
「今向こうには、エルダーコンボイのトコのトゥラインしかトランスフォーマーはいないんだぞ!
エルダーコンボイが手配してくれたっつー人員も到着してるかどうかわからねぇんだ! オレ達が行かなきゃ!」
「……そうだな。
我々は本局に向かおう」
「フェイトちゃん、わたし達も!」
「うん!」
ギャラクシーコンボイが決意し、告げるなのはにフェイトもうなずき――
「総司令官!」
「わたしとエクシゲイザーも行きます!」
「私とシオンも」
「負傷した時の衛生スタッフは必要です」
「わかった。
お前達も来てくれ」
立候補したエクシゲイザーとすずか、そしてファストガンナーとシオンの言葉に、ギャラクシーコンボイは同意し、
「では、ゲートを開くぞ!」
ベクタープライムが剣を振るい、本局の座標に続くワープゲートを展開する。
「アイツら……メガザラック様のところに!?」
「行かせるか!」
そんな彼らの動きを見逃すはずもなく、バトルガイヤーとライオカイザーが攻撃を仕掛けるが、
「させん!」
対してエルダーコンボイが防御魔法を発動。展開された巨大なラウンドシールドが二人の放ったビームを弾き飛ばす。
そして、その間にギャラクシーコンボイ達はゲートの向こう側へと消えていった。
「さて……これでこちらの準備も整った。
お前達の相手は我々だ!」
「ふざけるな……!
オレ達をなめていると、痛い目を見るぜ!」
告げるドレッドロックに言い返し、レーザーウェーブが右肩のビーム砲を放ち――戦闘が再開された。
爆発が巻き起こり、隔壁が吹き飛ぶ――
元々トランスフォーマーが活動できるようにできていない本局――小柄なトゥラインと違って大型トランスフォーマーであるメガザラックがその中を進むには、行く手を片っ端から破壊して進むしかなかった。
「ケガをしたくないものは退避しろ!
こっちもムダな死傷者は出したくない!」
それでも警告を発するのは彼の流儀か――告げながら目の前を薙ぎ払い、メガザラックは本局内を突き進んでいく。
そして――最後の隔壁を吹き飛ばし、メガザラックはそこに足を踏み入れた。
メガザラックでさえ悠々と行動できそうなほどに広大な倉庫――ロストロギアの保管庫である。
「ここにジュエルシードが……」
床に降り立って周囲を見回し、メガザラックがつぶやくと、
「へぇ。
アンタの狙いはジュエルシードだったのか」
「――――――っ!?」
突然駆けられた声に振り向くと、そこにはすでにゴッドボンバーと合体したゴッドジンライ、そしてヴィータの姿があった。
「もうちょっとスマートにできないのか?
ここが目的地なら、最初から転送魔法で飛んでくればよかっただろ」
「どうせ帰る頃にはベルカ式の転送魔法に対しても防壁が張られるはず――脱出路の確保も兼ねていたのだよ」
「なるほどね」
答えるメガザラックの言葉に、ゴッドジンライは拳を握りしめ、
「それじゃあ、その脱出路はオレ達が使わせてもらうとしようか」
「ミッドチルダのプラネットフォースの在り処――吐いてもらうぜ!」
咆哮し、ゴッドジンライとヴィータはメガザラックに向けて突進した。
本局外壁部での戦闘は激しさを増していた。
当然管理局側も武装局員を迎撃に出したが、トランスフォーマーが相手では並の武装局員では相手にならない。
そんな彼らに代わり、迎撃に出たシエル達だが――
「ガイルダート、トランスフォーム!」
咆哮し、ガイルダートはビーストモードに――トリケラトプス形態にトランスフォームし、
「くらえぇっ!」
「なんの!」
突っ込んできたその角の一撃を、シエルは真横に跳躍して回避する。
「相変わらず死ににくいですが――先日不死じゃなくなってしまいましたからね。
あなた達には悪いんですが、ここで倒れるワケにはいきません!」
言い返すと同時、投擲用の剣――“黒鍵”を投げつけるが、
「デッドエンド、トランスフォーム!」
アンモナイト形態にトランスフォームしたデッドエンドが、その殻で黒鍵を弾いてしまう。そして――
「セイバーバック、トランスフォーム!」
「アルカディス、トランスフォーム!」
セイバーバックがステゴサウルスに、アルカディスが始祖鳥にトランスフォームしてシエルを狙い――
「させない!」
そんな二人を体当たりで弾き飛ばしたのはトゥラインだ。
「ユーノ、ボクは大丈夫だから、シエルさんを援護して!」
「うん!」
うなずき、ユーノがシエルの元に向かうのを確認し、トゥラインはガイルダート達と対峙する。
「フンッ、見たところヒヨッコじゃないか」
「お前ごときが、オレ様達の相手が務まるものか!」
対して、余裕のアルカディスとガイルダートが告げるが、
「確かにボクは戦闘要員じゃないけど……ボクだってサイバトロンなんだ!
戦闘要員じゃないからって、引っ込んでなんかいられない!」
「ほざけ!」
それでも退かないトゥラインに言い返し、セイバーバックが襲いかかり――
「ふぎゃっ!?」
その悲鳴はトゥラインではなく、襲いかかった側であるセイバーバックのものだった。
突然真横から蹴りを受けてブッ飛ばされたのだ。そして――
「心意気は買うが……それは結果を伴ってから言うものだ」
告げて、着地したのはシグナムを肩に乗せたスターセイバーだ。
「シグナムさん?」
「スクライアか……お前達も来ていたのか」
声を上げるユーノにシグナムがつぶやくと、
「ゴッドジンライやヴィータは、もう中にいるようだな……」
「内部で交戦を確認」
そのとなりに着地し、ザフィーラとダイアトラスが告げる。
「ならば我らのやることは簡単だ。
こいつらをここで足止めする」
「ついでに、蒐集もしてしまうか?」
ガイルダート達をにらみつけ、告げるシグナムにスターセイバーが答えるが――彼らを前にしたガイルダートの言葉に、彼らは眉をひそめることになる。
「お前達……まさか、“守護騎士プログラム”か?」
「何…………!?
お前達、我々を知っているのか!?」
思わず聞き返すシグナムだが――ガイルダートはそれに答えることもなく、笑みを浮かべて告げた。
「だとすれば……お前達はメガザラック様には絶対に勝てない。
いや――お前らだけではない。
“ベルカ式魔法を使う者は、誰ひとりとして勝てない”んだよ、あの人には」
「ぐわぁっ!」
メガザラックに弾き飛ばされ、ゴッドジンライは壁に叩きつけられた。
「ジンライ!
くっそぉっ!」
うめいて、シュワルベフリーゲンで援護するヴィータだったが――
「ムダだ」
メガザラックが告げると同時――放たれた鉄球ヴィータの制御から離れた。突然軌道を変え、逆にヴィータへと襲いかかる!
「くそっ、どうなってんだよ!?」
襲いかかる自分の魔法をパンツァーシルトで受け止め、ヴィータがうめくと――
「単純な話さ」
メガザラックはあっさりと答えた。
「元々ベルカ式魔法は近接戦闘に特化した魔法大系だ――当然射撃系は不慣れで術式にもシークエンスにも穴が多い。
乗っ取ることは、そう難しいことじゃない」
「何だと……!?
そんなことできるもんか! 飛んでくる魔力弾、全部乗っ取ったっていうのかよ!?」
「言ったろう? 『難しくない』と」
ヴィータに答え――メガザラックは告げた。
「“自分の作品なんだ”――誰よりもその仕組みは理解しているのが当然だろう?」
「何………………っ!?」
「まさか、貴様は……!」
うめくヴィータとゴッドジンライの言葉に、メガザラックは告げた。
「そうさ。
オレが作ったのさ――ベルカ式魔法をな」
言って、両手のハサミの装備を解除。両肘に戻すとメガザラックはそれを取り出した。
針のような金属の棒。それは――
「起きろ、ブリューナク」
メガザラックの言葉に、彼のアームドデバイス“ブリューナク”は小型の針型のウェイトモードから巨大化。一振りの槍へとその姿を変えた。
「……よかった。本局はまだ無事だよ!」
「うん。
急ごう、なのは!」
本局のすぐそばの宙域に出現、戦闘の続く本局へと急ぎながらなのはとフェイトが言うと、
「確かに、急いだ方がよさそうだな」
ソニックボンバーの背の上で本局と通信し、状況を確認していたクロノが二人に告げた。
「メガザラックとゴッドジンライ達が――ロストロギア保管庫で交戦しているらしい。
しかも――」
続けて放たれた一言は、なのは達を驚愕させるには十分な衝撃を伴っていた。
「ゴッドジンライ達、殺されかけてるって」
「このぉっ!」
射撃魔法は役に立たない――咆哮し、全身からビームを放つゴッドジンライだったが、
「そんなもので!」
メガザラックには通じない。手にしたブリューナクの一振りでゴッドジンライのビームを薙ぎ払い、素早く間合いを詰めるとゴッドジンライを弾き飛ばす。
「いい加減にあきらめろ。
魔法が通じない時点で、貴様らの戦力は大きく削られた――そうとわかった時点で、すぐに撤退すべきだったんだ」
「ざけんな!
オレ達は騎士なんだ――そう簡単に退けるかよ!」
言い返し、ラケーテンハンマーを放つヴィータだが――
「くらわなければ、どうということはない!」
間合いに捉えるよりも早く、メガザラックはブリューナクの先端でグラーフアイゼンを弾き、石突でヴィータを弾き飛ばす!
「曲がりなりにも創始者だ。後進の者達にレクチャーしてやるのも悪くないが……あまり長居もしていられない」
倒れ伏すゴッドジンライとヴィータに告げ、メガザラックはブリューナクをかまえ――
「カートリッジ、ロード」
〈Explosion!〉
静かに告げたメガザラックの言葉に、ブリューナクがカートリッジをロード。内部から使用済みのカートリッジが排莢される。
「すまないが……これで幕引きだ」
「そうは……いくか……っ!」
なんとか立ち上がり、告げるゴッドジンライだが――先の一撃で決定的なダメージを受けたようだ。装着しているゴッドボンバーの動きが悪く、満足に動くこともままならない。
対して、メガザラックのかまえるブリューナクは先端にすさまじい魔力を収束していく。
「逃げろ……ジンライ……!」
このままでは、ゴッドジンライは――さすがに撤退を促すヴィータだったが、
「おいおい……ヤキが回ったか?」
そんなヴィータに、ゴッドジンライは告げた。
「オレのパートナーは……たとえどんな危機を前にしても、『退く』なんて選択はしなかったはずだぞ」
「バカ……! そんなこと言ってる場合か……!」
ゴッドジンライの言葉に言い返すヴィータだったが――
「大した覚悟だ――気に入ったぞ」
そんなゴッドジンライに、メガザラックはむしろ笑みを浮かべていた。
「その覚悟に敬意を払い――最高の一撃を手向けとしよう」
「逃げろ、ジンライ!」
渾身の力でヴィータが絶叫し――
「打ち貫け、ブリューナク」
無数の雷光が、ゴッドジンライの全身を貫いた。
(初版:2006/10/22)