「ムラマサ!」
咆哮し、ライオカイザーはその手の中に起動したムラマサを出現させ、ベクタープライムへと斬りかかるが――
『ロディマスライフル、ランサーモード!』
ロディマスコンボイ、そして耕介や美緒がそれに対抗した。かまえたロディマスライフルの光刃でムラマサの斬撃を弾き飛ばす。
と――
「レイジングハート! プリムラ!」
《お任せ!》
〈Divine Buster!〉
「ぅどわぁっ!?」
“背後から”“問答無用で”放たれたディバインバスターの一撃が、回避すら許さずライオカイザーを吹き飛ばす!
「な、なのはちゃん……?」
「なんか、怖いのだ……」
いつものなのはとは明らかに違う――気迫に満ちたその勇姿に、耕介と美緒が恐る恐る声を上げると、
「そりゃ、気合も入りますよ……」
凄みすら感じられる笑みと共に、なのははレイジングハートを握りしめた。
「この状況でフェイトちゃんが見つからないってことは、何かあったに決まってる――このタイミングで出てきたんだもの。きっと、レオザックさん達が何か知ってる!
とりあえず……お話聞かせてもらわなきゃ!」
「ちょっと待て!
お前にとっては『お話』=『砲撃』か!?」
「いや、なのはは昔からこうだから」
復活し、思わずツッコむライオカイザーに、クロノは割と冷静にそう答えた。
「え、ち、ちょっと待って!?」
ワケがわからない――混乱する頭を抱え、ジャックプライムはフェイトに尋ねた。
「何で!? どうして!?
フェイト、ボクのコト忘れちゃったの!?」
「………………フェイト?」
告げるジャックプライムの言葉に、フェイトは首をかしげ、
「わたしは、フェイトなんて名前じゃないよ」
そう言って、フェイトは――いや、フェイトにそっくりなその少女はその名を名乗った。
「わたしは――」
「アリシア・テスタロッサ」
第52話
「新たなる絆
セイバーコンボイくん爆誕なの!」
「…………ん……!」
意識が闇の底から帰還し、フェイトはゆっくりと目を開けた。
周囲を見渡すと、自分は見たことのない部屋の中、魔法によって作り出されたエネルギー球の中に閉じ込められているのがわかった。
この魔法は――
「リニスの……“スフィアケージ”……」
かつて師が得意としていた捕獲魔法――思わずフェイトがつぶやくと、
「目が醒めたみたいですね」
言って、リニスがその場に姿を現した。
「リニス!」
思わずバルディッシュを取り出し、かまえるフェイトだが――
「――――――え?」
バルディッシュは何の反応も示さない。
「無駄ですよ。
そのスフィアケージの中には、デバイスの起動信号の発生を阻害するフィールドを展開してありますから」
言って、リニスは囚われたフェイトへと歩み寄り、
「手荒なマネをした事は謝ります。
メガデストロイヤーに連れて行くとなれば、ウィザートロンと敵対しているあなたが素直に来てくれるとは思えなかったもので……」
「そ、それは――」
思わず口を開くが――言われてみれば確かにそうだ。リニスが生きていたと知っただけでもあれだけ衝撃的だったのだ。その上メガザラックのパートナーだということまで事前に知らされては、まともな思考など不可能に近かっただろう。混乱のままに抵抗していたことも十分に考えられた。
「け、けど……どうしてリニスが?
あの時、母さんは確かに……」
「えぇ……私も知っています」
気を取り直し、尋ねるフェイトの言葉に、リニスは視線を落として答える。
「その辺りは、再生された時に“記憶を分けてもらいました”から」
「え………………?」
「端的過ぎましたね。
私は確かにリニス本人――ですが、かつてあなたに魔法を教えた私と同一の存在ではないの」
そう言うと、リニスは記憶の糸をたどるかのように彼方へと視線を向けた。
「今の私は、“あの時のリニス”の記憶を受け継ぎ、プレシアによって再生させられた“新たなリニス”――
メガザラックのサポートのためにとプレシアが生み出し、あの人の死後もメガザラックの魔力を与えられることで生き永らえている、人とも使い魔とも言えない存在……」
「じゃあ……やっぱり母さんは……」
フェイトの言葉に、リニスは無言でうなずいて続けた。
「プレシアがどういう経緯でメガザラックと出会ったのか――それは後で追々説明します。
今は、ここにあなたを連れてきた理由を話さなければならないから……」
そう告げるリニスの視線に真剣なものを感じ、フェイトは思わず息を呑む。
フェイトが自分の言葉を聞く用意ができるのを待ち――リニスは告げた。
「実は……アリシアはすでに蘇生しています」
「――――――っ!?
アリシアが……!?」
リニスの言葉に、フェイトは思わず目を見張った。
母プレシアの真の娘であり、その死が自分の誕生のきっかけとなった少女、アリシア・テスタロッサ――その蘇生こそがプレシアの目的だった。
そのアリシアが、蘇生している――にわかには信じがたいが、もし事実だとしたら――
「…………いえ、少し違うわね」
だが、そんなフェイトの思考を断ち切り、リニスは首を左右に振って自分の言葉を訂正した。
「あの子は蘇生“した”んじゃない――」
「蘇生“してしまった”の」
金属同士のぶつかり合う、甲高い音と同時に二人は間合いを取って着地する。
すぐに獲物をかまえなおし、メガザラックはスターセイバーに向けて鋭い刺突を繰り出し――
「紫電、一閃!」
「――――――っ!」
それをシグナムが阻んだ。眼前に飛び込んできたシグナムの斬撃に対し、突きの最中では回避もままならない――メガザラックはとっさに防壁を展開してそれを防ぎ、その反動を活かして制動、そのまま後退する。
「どうした? メガザラック。
動きに精彩がないな」
「やはり、自分の艦の中では思い切った攻撃ができないようだな」
「まぁ、確かにな。
加えて、こんな通路の中ではオレのブリューナクも満足に振るえない――この状況ではむしろこちらが不利か」
スターセイバーとシグナムの言葉に苦笑し、メガザラックはブリューナクをかまえ直し、
「だが――それならば、こちらも戦い方を変えるだけのこと」
その言葉と同時にブリューナクがカートリッジをロード。次の瞬間、ブリューナクは中ほどで二つに分割され、石突にも刃が現れる。
「2本の小槍か……」
「いかにも。
ブリューナク――ツヴァイランサーフォルムだ」
メガザラックがスターセイバーに答え――
『――――――っ!?』
シグナムとスターセイバーはとっさにその場から離脱。今までとは段違いの速度で眼前に迫った刃をかわす。
「短く分割され、さらに2本に増えた槍先から――そう簡単に逃れられると思うな!」
そんな二人を追ってメガザラックが吼え――さらなる刺突が襲いかかる!
「じゃあ、アリシアちゃんが生き返ったのは単なる偶然?」
「うーん……生き返っておいて『単なる偶然』で済ますのはどうかと思うけどね」
尋ねるジャックプライムに、アリシアは可愛らしく小首をかしげて答える。
「それに、わたしはその時の記憶がないから、あんまり実感わかないんだ。
リニスやメガザラックの話を聞いて、『そうなんだ』ってわかってるだけで……」
「まぁ……その辺りの記憶がハッキリ残ってたらそれはそれで怖いけど……」
アリシアの言葉に苦笑し――ジャックプライムは再びアリシアに尋ねた。
「じゃあ、生き返っちゃった原因は? 何か聞いてないの?」
「聞いてるよ」
答えはあっさりと返ってきた。
「一言で言っちゃうなら、ものすごくおっきな魔力を取り込んじゃったから、だね。
リニスの話だと、母様は“きょすうくうかん”に落ちちゃう直前、“じゅえるしーど”っていう“ろすとろぎあ”を発動させて、オマケに住んでた“いどうていえん”の“どうりょくろ”まで暴走させちゃったらしいの。
メガザラックは、その時の魔力に巻き込まれちゃったせいで、わたしの身体の“せいめいかつどう”が再開されて、生き返ったんだろう、って……」
「えっと……いろいろ聞き返したいことはあるけど……
とりあえず、あちこちうまく言えてないのは、二人の話をそのまま受け売りにしてるからだと思っていいのかな?」
ジャックプライムが尋ね――無言でそらしたアリシアの視線が答えを物語っていた。
「うーん……それじゃああまりツッコんだことは聞けないか……」
この様子ではアリシア自身が理解している部分は少なそうだ。慎重に質問を選ぶ必要がありそうだと考え、ジャックプライムは思考を巡らせながら部屋を見渡し――
「……ひとつ、関係ない質問いいかな?」
場を和ませる、などという効果を狙ったワケではない。
だが――ふと気になったそれを見ながら、ジャックプライムはアリシアに尋ねた。
「このテレビでやってるのは?」
「“きょすうくうかん”から出てから、レオザックが集めてきてくれたの。
『テレビの子供向け番組は子供の教育にいいらしいから』って……
ミッドチルダだけじゃなくて、地球とかからも持ってきてるみたいだよ」
「ふーん……」
アリシアの答えに、ジャックプライムはテレビ画面へと視線を戻した。
子供向け番組に限らず、比較的対象年齢の低い映像作品には、たとえそれ用に作られていなくても子供の情操教育に良い作品は数多い。
それは認めるが――
(これは絶対に違うと思うよ、レオザック……)
女の子であるアリシアの教育という目的から見れば、某魔法戦隊というチョイスははるかに斜め上を突っ走っている気がするのは、決して気のせいではないはずだ。
だが、そんなジャックプライムの困惑の視線を、アリシアは興味と受け取ったらしく、目を輝かせて尋ねてきた。
「あ、何? 見たいの?」
「え?」
「ちょっと待ってね! 今1話のデータを呼び出すから!」
「いや、ちょっと待って!」
言うなりデータを取り出そうとするアリシアを、ジャックプライムはあわてて制止した。
「あのね、ボク、ここにはあまり長居できないから……」
そう言いかけたジャックプライムだったが――
「………………ダメ?」
「………………
…………おつき合いさせていただきます」
まるで怯える子犬のようにシュンとして尋ねるアリシアに、ジャックプライムは抵抗むなしく白旗を揚げていた。
「おーおー、始まってるみたいっスね」
サイバトロンシティを巡る、サイバトロンとウィザートロンの攻防戦――戦いの様子を見物し、ガスケットがマスターメガトロンに告げる。
だが、マスターメガトロンは動かない。じっと戦場を見据えて何かを考えている。
「どうした? 乱入しないのか?」
フレイムコンボイが尋ねるが、やはりマスターメガトロンは答えない。
そのまましばし戦場を観察し――
(やはり、あのバンガードチームとかいう小僧どもがいないな……)
かつて自分に手傷を負わせたこともある転生TFチームがいない――自分の気づきが正しかったことを確信し、胸中でつぶやく。
(あの仲良し軍団が待機組など用意するだろうか……?
分析担当を後方に置くことはあっても、戦いは戦闘要員全員で出て行くアイツらが……)
それなのに欠員がいるという事は、その人物は現在その場にいないということだ。
考えられる理由は、負傷して手当てを受けているか――
(別の任務でその場を離れているか……)
その仮説に思考がいたり――マスターメガトロンは笑みを浮かべた。
「フレイムコンボイ。あちらは任せよう」
「譲ってくれるのか?」
「オレ様の叩きつぶしたい相手は、ここ以外にもいるようなのでな」
聞き返すフレイムコンボイに、マスターメガトロンは笑みを浮かべてそう答える。
「ここ以外に?
どこっスか?」
尋ねるインチプレッシャーに、マスターメガトロンは答えた。
「今の情勢でヤツらの行きそうなところといったら――“あそこ”しかないだろう?」
「レヴァンティン、カートリッジ、ロード!」
咆哮し、シグナムはレヴァンティンのカートリッジをロードし、
「フォースチップ、イグニッション!」
さらにフォースチップをイグニッション。刀身を包み込んだ炎がさらにその勢いを増す。
一方でスターセイバーもスターブレードをかまえ、二人は左右からメガザラックをはさみ込み、
「紅蓮、一閃!」
「飛燕、煉獄斬!」
二人の斬撃がメガザラックに迫る。だが――
「直接受けずとも――返す手はある!」
メガザラックは迷わず両手のブリューナクを投げつけた。刃が届くよりも早く襲いかかった槍を、二人はとっさに横に跳んで回避する。
「どうした?
今度は貴様らの動きに精彩がなくなってきたぞ」
「く………………っ!」
魔力の鎖によってブリューナクを引き戻し、余裕で告げるメガザラックの言葉に、シグナムはうめきながら再びレヴァンティンをかまえる。
悔しいが、メガザラックの言葉は事実だ。先ほどメガザラックがブリューナクの取り回しに難儀していたように、自分達の連携もまた、この通路という限られた空間の中ではその真価を発揮する事はできない。
対して、メガザラックは泣き所のひとつであった『武器の取り回し』という問題をブリューナクのフォルムチェンジで解消。戦局はメガザラック有利に一気に傾いていた。
「スターセイバー」
「あぁ……一度、仕切りなおす必要がありそうだな」
声をかけるシグナムに答え、スターセイバーは脱出口を探る。
通路の広さはトランスフォーマー二人分。周囲の壁は容易に壊せそうだが――
だが、メガザラックは彼らの思考を待つつもりなどなかった。
「打つ手は品切れか?
ならば――こちらから行くぞ!」
二人に告げ――ブリューナクを手に再び襲いかかる!
気づけば夢中で画面に見入っていた――アリシアによって上映された某魔法戦隊の1話目が終わった時には、ジャックプライムの目はキラキラと輝いていた。
「おもしろいね、コレ!」
「でしょでしょ!?
レオザックが持ってきてくれた中じゃ、一番のアタリだと思わない!?」
興奮気味のジャックプライムの言葉に、賛同者を得られたアリシアもまた目を輝かせて答える。
「何だったらディスク持って帰る?」
「え? いいの?」
「バックアップ用の予備ならいいよ。
マスターはちゃんと大事にキープしてるし!」
思わず聞き返すジャックプライムに、アリシアは満面の笑みでそう答える。
「じゃあ、今度ボクらのところにも見に来る?
地球から来てた人の荷物にあったよ――なんでも、セイバートロン星に行ってる人の中にこういうのが好きな人がいて、その人のものらしいんだけど」
「いいの?」
「いいんじゃないかな?
敵対してるって聞くけど、今じゃ何だかんだでオトモダチ状態の守護騎士さん達もいるし」
「うん! 行く行く!」
ジャックプライムの言葉に、思わず身を乗り出して告げるアリシアだが――
「…………ぁ……」
ふと何かに気づき、その表情が一気に沈んだ。
「………………?
どうしたの?」
首をかしげ、尋ねるジャックプライムに、アリシアはうつむいたそのままで答えた。
「わたし……」
「ここから、出られないの……」
「ジュエルシードの魔力を偶然にも取り込んでしまったことで、アリシアは確かによみがえりました。
まぁ、ジュエルシードは強力な魔力蓄積体――精神、ひいては魂のエネルギーである魔力が膨大なレベルで解放されたのですから、それ自体はありえない話じゃありません」
呆然とするフェイトにそう説明すると、リニスはふと視線を落とし、
「ですが――問題はありました。
いかにジュエルシード9つ分の魔力といっても、ただ巻き込まれた中で偶発的に取り込んだだけでは、人ひとりの生命エネルギーを完全に回復させるのには足りませんでした。
結果、蘇生したといってもあの子のそれは不完全――魔力を込めた自室から長時間出る事はできず、さらに定期的に培養層に入って魔力の供給を行わなければならない……
しかも、それでもあの子の魂は安定しない――だからフェイト、あなたをこの艦に連れてきたんです」
「わたしを……?」
「あの子から生み出されたフェイトは、言わばあの子と魂を同じくする存在――
あなたが近くにいれば、あの子の魂も安定するかもと思ったのだけど……」
「して……ないの……?」
「結論には早い、ということです。
何しろ連れてきたばかりなんですから――効果が現れるにしても、もう少し先の話です」
尋ねるフェイトに答え、リニスは小さく息をつく。
「いずれにしても、私達はアリシアを救うこと、そのために動いています。
私はもちろん――メガザラック達も」
「それじゃあ、ウィザートロンがプラネットフォースを狙っているのは――」
「えぇ」
フェイトの言葉にうなずき、リニスは告げた。
「プラネットフォースの力で……あの子の生を完全なものにするためです」
「そんな……!
じゃあ、メガザラックは、アリシアを助けるために……」
「うん……」
こちらでも事情は聞かされていた。呆然として聞き返すジャックプライムに、アリシアは小さくうなずいた。
「そうだったんだ……
メガザラックがプラネットフォースを欲しがってたのは、自分のためじゃなかったんだ……」
つぶやき、ジャックプライムは天井を見上げた。
何の考えもなく『プラネットフォースを狙っているから』というだけで悪だと決め付けていた――自分の浅慮を恥じたくなる。
だが、それよりも――
(ボクらがプラネットフォースを手に入れちゃったら……アリシアはどうなるの?)
プラネットフォースをそろえ、グランドブラックホールを消して、それからウィザートロンに貸し与えればいいのでは――とも考えるが、プラネットフォースをそろえた先のことを、自分達は何ひとつとして知らないのだ。
もしかしたら、元通りのプライマスのスパークとなってもう利用できなくなってしまうのかもしれない。だとすれば――
(もう、ただプラネットフォースを集めればいいって問題じゃ、ない……!)
迂闊にプラネットフォースをそろえてしまうと、アリシアを救う道を閉ざしてしまうかもしれない。かと言って、プラネットフォースをそろえなければグランドブラックホールによってなのは達の宇宙が滅び、さらには周辺の次元世界にも被害が及ぶだろう。いずれはこのミッドチルダも――
(どうすればいいんだよ、これ……!)
わからない。だが――
(少なくとも――メガザラックを倒せばいいってワケでもない!)
〈Blitz shooter!〉
レイジングハートが告げ、放たれた無数の光球が一斉にライオカイザーへと襲いかかるが――
「フォースチップ、イグニッション!
バトル、エクスプロージョン!」
ライオカイザーはフォースチップをイグニッション。バトルエクスプロージョンを発動させてブリッツシューターをやりすごす。
そのまま、分離したレオザックとカイザーフォースは一斉になのはへと襲いかかり――
「危ない、なのは!」
それを見たギャラクシーコンボイが動いた。対峙していたガイルダートへとつかみかかり――そのまま投げ飛ばす!
激しく回転し、ガイルダートはなのはの眼前へと飛び込み――
「なんでぇっ!?」
結果としてなのはの盾となり、レオザックにブッ飛ばされて虚空へと消えた。
「貴様、よくもガイルダートを!」
「ブッ飛ばしたのはあなたでしょ!」
「盾にしておいてよくも言う!」
反論するなのはに言い返し、レオザックは再びライオカイザーへと合体し――
「――――――っ!?」
突然後退し、頭上から放たれた“炎を”かわす。
「炎!?」
「まさか……!」
突然の攻撃だが、自分達の放ったものではない――驚きの声を上げ、なのはとギャラクシーコンボイが頭上を見上げ――
「ブルァァァァァッ!」
咆哮し、飛び込んできたフレイムコンボイがフレイムアックスでライオカイザーに斬りかかる!
「フレイムコンボイさん!?」
「フンッ、混ぜてもらうぞ、この戦い!」
驚くなのはに答えるフレイムコンボイだが――そんな彼にギャラクシーコンボイが尋ねる。
「だが――マスターメガトロンは!?」
肝心のマスターメガトロンの姿がない――いや、彼だけでなく、ガスケット以下他のデストロンメンバーも現れていない。どういうことか――
そんなギャラクシーコンボイの問いに、フレイムコンボイは笑みを浮かべて答えた。
「フンッ、アイツらなら一足先にセイバートロン星に向かったわ」
《えぇっ!?》
「何だと!?」
「貴様らの中に欠員がいるのに気づいてな。
以前のような陽動かとも考えたが――貴様らもバカではないからな。二度も同じ手を使うとも思えん。
だから、今度こそセイバートロン星に向かったと考えたんだ。
そんなワケで、貴様らと戦いたいオレを残して、ヤツらはセイバートロン星に向かった、ということだ」
驚くプリムラとギャラクシーコンボイに答え、フレイムコンボイはフレイムアックスを彼らに向ける。
「そういうことだから、存分に相手をしてもらうぞ!」
「そんなヒマなんてないよ!」
フレイムコンボイに言い返し、なのははレイジングハートをかまえた。
(セイバートロン星にチップスクエアは持ち込んでないけど……マスターメガトロンさんが行ったとなると、ライブコンボイさん達やバンガードチームのみんなや……アリサちゃん達が危ない!)
「早くあなた達をやっつけて、フェイトちゃんを見つけて――セイバートロン星のみんなを助けに行かなきゃ!」
「『フェイトを見つける』……?」
その言葉に、フレイムコンボイは思わず眉をひそめた。
フェイトとはアニマトロスでの経緯によって敵味方、という以上に面識がある。彼女がいないとはどういうことか――子細を尋ねようとフレイムコンボイは口を開き――
「おやおや、乱戦模様だな」
『――――――っ!?』
突然の言葉になのは達やフレイムコンボイ、さらにはライオカイザーも――その場にいた全員が戦慄した。
この声は――
「楽しそうなので、参加させてもらえるとうれしいんだが」
なのは達の頭上でそう告げて、合体を遂げた部下達を従えて空中に佇むスカイクェイクは悠然と笑みを浮かべる。
それを見て――なのははふと気づいた。フレイムコンボイへと尋ねる。
「フレイムコンボイさん」
「ん?」
「確か飛べませんでしたよね?」
「あぁ」
「さっき……どうやって上から降ってきたんですか?
山岳地帯って言っても、ここけっこう広いんですけど」
「………………
大ジャンプで?」
「なんで回答が疑問系なんですか」
「フォースチップ、イグニッション!」
咆哮と同時、メガザラックの尾に備えられたチップスロットに白いフォースチップが飛び込み、先端の巨大な針が収納。代わりに砲門が姿を現す。
「貴様――! 自分の艦の中で!」
「オレが甘かった、ということだ。
敵に侵入を許しておきながら、無傷で済まそうなど!」
うめくシグナムにメガザラックが答え、その砲門の中に光が生まれ、
「フォトン、スマッシャー!」
放たれた閃光が、シグナムとスターセイバーに襲いかかり――
「ダメぇっ!」
それを阻んだのは、飛び込んできたジャックプライムだった。カリバーンをかまえ、ラウンドシールドを展開してフォトンスマッシャーを防ぐ。
「ジャックプライム!?」
「貴様、今までどこに!?」
「あー、いや、えっと……」
まさか『戦隊シリーズを1話丸々見てました』と答えるワケにもいかず、尋ねる二人にジャックプライムは思わず視線をそらす。
が――すぐに自分がここに来た目的を思い出した。
あの後、別れをしぶるアリシアをなだめるのに散々苦労してまでこの場に駆けつけたのだ。その目的を果たさねば――
「とにかく! こっちヘ!」
「おい、ジャックプライム!?」
突然自分の手をつかみ、引っ張るジャックプライムにスターセイバーが思わず声を上げるが、
「逃がすと思っているのか!?」
それを阻もうと、メガザラックが両手にブリューナクをかまえ――
「もう、ジャマしないで!」
そんなメガザラックに向けてジャックプライムが光球を放ち――それはメガザラックの眼前で突然閃光へと変わる!
「目くらましか――!?」
不意をつかれ、メガザラックは思わず視線をそらし、そのスキにジャックプライム達はその場を離脱する。
「チッ、逃がしたか……」
ごていねいにセンサーまでかく乱された。相変わらずこういうところにはソツがないジャックプライムの技量に内心舌を巻き、メガザラックは息をついた。
「まぁいい。
どうせヤツらの目的はハッキリしているんだからな」
「どういうつもりだ!?」
追撃がないのを確認するなり、スターセイバーはジャックプライムへと詰め寄った。
「だいたい、貴様はテスタロッサを探していたはずだ。
彼女は見つかったのか?」
「それどころじゃないんだよ!
アイツらの目的がわかったんだ!」
尋ねるシグナムに答え、ジャックプライムはアリシアから聞かされた一連の事情を説明した。
「なるほど、な……
メガザラックの目的は、そのアリシア・テスタロッサの完全な蘇生、ということか……」
ジャックプライムの話が終わり、スターセイバーは息をついてつぶやいた。
自分達もまた、主であるはやての命を救うためにこうして戦っているが――まさか相手も似たような事情を抱えているとは思ってもみなかった。
だが、それでも――
「だからと言って、退く理由にはならない」
確固たる決意と共に、シグナムはそう断言した。
「私達にも救わねばならない人がいる――そのために、我々もプラネットフォースを求めているんだ。
こちらとしても、それを譲るワケにはいかない」
「え………………?
『私達にも』って……どういうこと?」
そういえば、自分達はシグナム達がプラネットフォースを求める理由も知らないままだ。リンカーコアの代わりにすることで“闇の書”を完成させるためだろうとは聞いていたが――それと『救わなければならない人がいる』ということとどんな関係が――?
だが、ジャックプライムが尋ねるのを阻むかのように、シグナムは彼をにらみ返した。
「お前達だって、宇宙を救うためにプラネットフォースを集めているんだろう? 事情は同じだ」
「同じだから問題なんじゃないか!」
告げるシグナムに、ジャックプライムは思わず声を荒らげた。
「ボク達がプラネットフォースを手に入れても、キミ達がプラネットフォースを手に入れても、メガザラックの手には渡らない!
そうなったら、アリシアを助ける方法がなくなっちゃうんだよ!」
「なら、貴様は代わりに宇宙が滅んでもいいというのか!? 我々の救いたい人が死んでもいいのか!?」
「そうは言ってない!
言ってないけど……!」
反論するシグナムに言い返すが、ジャックプライムはその先を告げられず――
「ジャックプライム」
静かに告げ、スターセイバーはジャックプライムの頭に手を置き――
「いだだだだっ!?」
その手に思い切り力を込めた。思わずジャックプライムが声を上げるが、彼の頭を握りしめたままスターセイバーは告げる。
「お前のパートナーは、誰だ?」
「ふぇ、フェイトです……」
「よし。それだけわかっていれば十分だ。そのお子様ぶり丸出しの頭でもわかるように説明してやる」
そう言うと、スターセイバーはジャックプライムを放し――
「逃がしたみたいね」
「まぁな」
呼び出され、囚われたフェイトを連れて格納庫に現れたリニスの言葉に、メガザラックはあっさりと答えた。
「我らの目的はフェイト・テスタロッサのみ。
このまま帰ってくれれば万々歳だが――そうはいかないだろう」
「彼らの目的、この子の救出だものね……」
つぶやくメガザラックとリニスの言葉に、フェイトは小さく息を呑んだ。
自分がここに連れてこられた目的に気づいたからだ。
(わたしを助けに来るジャックプライム達を……迎え撃つつもりなんだ)
だが、今の自分は何もできない――悔しさが胸を締めつける。
今の自分にできるのは――
(あの子達を――信じることだけ)
そう胸中で告げるフェイトの視線の先には、転送魔法によって現れたジャックプライム達の姿があった。
「手はずはわかってるな?」
「うん」
小声で尋ねるスターセイバーに、ジャックプライムは小さくうなずく。
「今回はお前達二人が鍵だ。
あのリニスというパートナーがフェイトの知人だとすれば、おそらく事情を聞かされたはず――彼女を再起させられるのはパートナーのお前だけだ」
シグナムの言葉にうなずき、ジャックプライムはキングフォースを呼び出す。
「逃げるのは終わりか?
それとも、あきらめたのか?」
「残念ながら……どちらもまっぴらだ!」
ランサーフォルムのブリューナクをかまえ、告げるメガザラックにスターセイバーが答え――
それが戦闘再開の合図となった。
「ブルァァァァァッ!」
「なめるな!」
咆哮と共に刃が交錯――フレイムコンボイとスカイクェイクの一撃がぶつかり合い、周囲に衝撃をまき散らす。
「くっ、なんてパワーなの……!」
《あれじゃ近づけないよ!》
「つぶし合ってくれるのはいいが……あれではどうしようもない!」
そのパワーは相当なものだった。なのはやプリムラはもちろん、ギャラクシーコンボイも手出しをできずにうめくしかない。
しかも、彼らとて余裕があるワケではない。襲いかかるライオカイザーの斬撃をかわし、逆にカウンターの砲撃を放つが、ライオカイザーも素早い機動でそれをかわす。
一方で、他のホラートロン達も大暴れだ。
「オォォォォォッ!」
「大したパワーだな……!
まったく、厄介なものだ!」
力任せに襲いかかるオボミナスはさすがのダイノキングにも手に余る相手だった。真っ向から力比べに応じるものの、次第に組み伏せられ――
「ダイノキング!」
そんなダイノキングをバトルガイヤーが救った。手にしたビームランチャーの一撃でオボミナスを吹き飛ばすが、
「余所見をしているヒマなんかあるのかよ!?」
そんなバトルガイヤーを、グレートポントスが体当たりで弾き飛ばす。
「くらえぇっ!」
咆哮し、カートリッジをロードさせたタスラムを投げつけるレーザーウェーブだが、
「その程度で!」
カートリッジをロードしようと、投擲武器であるタスラムのパワーでは彼に対して力不足だった。プレダキングはあっさりと弾き飛ばし、逆にレーザーウェーブを殴り倒す。
合体戦士と武装戦士、それぞれの勢力の主力が激しくぶつかり合う――ということは――
「さぁて、追い詰めたよ」
「観念しろ!」
「くっそぉっ! 多勢に無勢じゃないかぁっ!」
「くそっ、まったくもって美しくないっ!」
結果、残されたガイルダート達は残りのサイバトロン達によって袋叩きの憂き目にあっていた。追い詰め、一同を代表して告げるアルフとファングウルフの言葉にデッドエンドとセイバーバックがうめく。
「あきらめて投降しろ」
「く…………っ!」
告げるベクタープライムの言葉にガイルダートがうめき――
「Stinger Snipe」
『――――――っ!?』
突然の攻撃は敵味方関係なく降り注いだ。降り注ぐ光弾の雨をかわし、一同はその場から散開する。
「何だ!?」
思わず声を上げ、ドレッドバスターのライドスペースで志貴は頭上を見上げるが、そこには影ひとつなく――
「ぐわぁっ!?」
衝撃は真横から襲いかかった。突然の蹴りを受け、ドレッドバスターが弾き飛ばされ、
「久しいな――地球の火山島以来か」
淡々とそう告げて――仮面の戦士を伴ったキラーパンチは蹴り足を納めた。
「ちょこまかと!」
「あいにく、素早さが一番の取り柄だからね!」
うめくメガザラックに答え、キングフォースとの合体を果たしたキングコンボイは彼の周りを跳び回りながらそう言い返し、
「そして打撃は――こちらの役目だ!」
告げて、スターセイバーの繰り出したスターブレードの一撃を、メガザラックはブリューナクで受け止める。
そして――
「覚悟!」
「お断りします!」
斬りかかるシグナムの斬撃を、リニスは後方に跳躍してかわす。
「Photon Lancer!」
今度はリニスの反撃――的確な時間差で次々に放たれる光の矢を、シグナムは高速で飛翔してかわしていく。
それぞれがそれぞれの場所で戦う構図が出来上がり――それこそがスターセイバーとシグナムの狙いだった。
「キングコンボイ! テスタロッサを!」
「うん!」
スターセイバーの言葉にうなずき、キングコンボイはすぐさま反転。メガザラックを無視してその場を離れる。
狙いはもちろん――
「しまった!
狙いはフェイトの救出か!」
キングコンボイの目的に気づき、阻もうとするメガザラックだが、
「そうはいかん!」
スターセイバーがその前に立ちふさがった。繰り出した斬撃がメガザラックの足を止める。
「フェイト、大丈夫!?」
「う、うん……」
スフィアケージごとフェイトを抱え、尋ねるキングコンボイの問いにフェイトは力なく答える。
「やっぱり……聞いた? アリシアのこと」
問いに対して返ってくるのは力のない首肯。
「どうすればいいの……?
わたし達が宇宙を救おうとすれば、アリシアは……!」
「………………」
つぶやくように告げるフェイトの問いに、キングコンボイは無言でスフィアケージを解除し、告げた。
「…………ボクも同じように考えた。
けど――だからって、このままにしておくのはもっとダメだよ」
そう言って――キングコンボイは先ほどのスターセイバーとのやり取りを思い出した。
「お前のパートナーは、誰だ?」
「ふぇ、フェイトです……」
「よし。それだけわかっていれば十分だ。そのお子様ぶり丸出しの頭でもわかるように説明してやる」
そう言うと、スターセイバーはジャックプライムを放し、カリバーンを握る彼の右手を指さした。
「今お前が剣を持っている方の手――そちらにはお前の望み。お前の未来。
そして逆の手には、パートナーの未来――テスタロッサの未来を握っているんだ」
「フェイトの、未来を……!?」
スターセイバーの言葉に、ジャックプライムは思わず自分の左手に視線を落とす。
「そして、私も両手に抱えている。
自分の未来、パートナーであるシグナムの未来――
我らの手は2本しかない――二つ以上は持てないんだ。
同じように、リニスの分は彼女とメガザラックが持っている。お前が持つべきではない」
そして、スターセイバーは改めてジャックプライムに告げた。
「我々は神ではない。すべてを守ることなどできはしない――今抱えているものだけでも守れれば上出来なんだ。
それとも、それすら守れない負け犬になるつもりか? お前は」
「………………」
その言葉に、ジャックプライムはしばしうつむき――告げた。
「だけど……ボクはアリシアを放っておけない。
かわいそうじゃないか。自分の部屋から出られない……家族はリニスとホラートロンだけ……
確かにひとりじゃないかもしれないけど、確かにもっと不幸な人はいっぱいいるけど……それでもやっぱり助けてあげたいよ!」
「お前、まだそんなことを……!」
「だって、それが『ボクの抱える望み』だから!」
言いかけたスターセイバーに、ジャックプライムはハッキリと言い放った。
「『コンボイ』っていうのは、『守る者』なんでしょ!?
だったら、その称号を受け継いだボクは――」
正面からスターセイバーを見据え、告げる。
「悪いヤツじゃないなら――敵の命だって守りたい!」
迷いなど一切存在しない、決意に満ちた瞳――そこから放たれる視線を受け、スターセイバーは息をついた。
「…………だが――その想いも、相手に届かなければ意味はない」
そう告げると、スターセイバーはジャックプライムと正面から向き合い、
「いいだろう。今回は貴様に合わせてやる。
その想いがどこまで本気か――行動で示してみろ」
「うん!」
「ボクは、大好きななのはを守りたい。
パートナーのフェイトも守りたい。
そして――アリシアや宇宙も守りたい。
どれかひとつなんて選べない。だから……」
しゃがみ込んでフェイトの顔をのぞき込み、キングコンボイは彼女に告げた。
「お願い、フェイト。
みんなを守るために……力を貸して」
「キングコンボイ……」
その言葉に、フェイトはしばし彼の顔を見返し――
「………………うん」
小さく、だがハッキリとうなずいた。
「よぅし、それじゃあ反撃開始だ!」
そうと決まれば話は早い。キングコンボイは立ち上がるとメガザラックやリニスと戦うスターセイバーとシグナムへと視線を向け、
「フェイト――」
ハッキリと、告げた。
「リンクアップナビゲータをお願い」
「え………………?」
その言葉に、フェイトは思わず声を上げた。
「け、けど、誰と誰がリンクアップを……!?」
「もちろん、ボクとスターセイバーが」
あっさりとそう答える。
「いくらスターセイバーが元総司令官だって言っても、大帝クラスのメガザラックを止めようとすると、リンクアップくらいはやらないと。
で、今ここにいるこっち側のトランスフォーマーはボクらだけ……だからボクたちがやらないと」
「けど、二人がリンクアップなんてできるの?」
思わず尋ねるフェイトだったが――
「ソニックボンバーとギャラクシーコンボイだって、できるような機構は持ってなかったんでしょう?」
「あ………………」
キングコンボイの言葉に、フェイトはその事実に思い至った。
言われてみれば確かにそうだ。転生によってリンクアップ能力を得たライガージャックやロディマスブラーはともかく、ソニックボンバーは特にそういった機構を備えていないにもかかわらずギャラクシーコンボイとのリンクアップを遂げたのだ。
つまり、リンクアップナビゲータの正確な効果とは――
「リンクアップナビゲータの目的はその名の通りリンクアップのナビゲート。
トランスフォーマーの中にコンビネーション・スパークを作って、合体の座標軸をサポートして……そういう魔法なんだ。
だからきっと、ボクらだって!」
「……そうだね。
まずはやってみなくちゃわからない――ソニックコンボイだって、そうやって合体したんだもん!」
奮起したフェイトの言葉にうなずき、キングコンボイはスターセイバーに向けて跳躍、呼びかける。
「スターセイバー! こっちは準備完了!」
「了解だ!
シグナム!」
「あぁ!」
キングコンボイの呼びかけに答え、スターセイバーとシグナムも飛翔。キングコンボイと交錯し――
〈Link up Navigator, Get set!〉
スフィアケージから解放されたことでその力を取り戻し、起動したバルディッシュがリンクアップナビゲータを起動させた。
「いくよ――みんな!」
言って、フェイトがバルディッシュをかざし――その中枢部から光が放たれる。
その中で、キングコンボイとスターセイバー、二人のスパークがさらなる輝きを放つ。
『キングコンボイ!』
フェイトとキングコンボイが叫び、キングコンボイが四肢のパワードデバイスを分離させ、
『スターセイバー!』
次いでシグナムとスターセイバーの叫びが響き、スターセイバーがVスターを分離させ、合体形態のままのVスターが上半身と下半身に、さらにそれがそれぞれ左右に分割される。
そして、両者が交錯し――
『リンク、アップ!』
4人の叫びと共に、分離したジャックプライムの両足に分離したVスターの下半身が、両腕に同様にVスターの上半身が合体する!
最後に、ビークルモードのスターセイバーが背中に合体、フライトユニットとなり、4人が高らかに名乗りを上げる。
『セイバァァァァァ、コンボイ!』
「ほぉ、合体したか……
ギャラクシーコンボイと同じ、リンクアップ、とか言うヤツか」
「そういうこと!」
メガザラックに答え、リンクアップを遂げたセイバーコンボイは起動させたカリバーンをかまえる。
「メガザラック――素直に投降してください!」
「敵陣の真っ只中で言うセリフか? それが」
告げるフェイトにそう答え、メガザラックはブリューナクをかまえる。
「そんな付け焼刃の合体が――このオレに通用するものか!」
言い放ち、カートリッジをロードしたブリューナクから雷光を放つが――
「カリバーン!」
〈Roger!〉
セイバーコンボイもカリバーンのカートリッジをロード。生み出された炎が渦を巻き、雷光と激突する!
「何!?」
「二人分のスパークの力を使ったボクらの魔法――そう簡単に押し負けてたまるか!」
驚くメガザラックにセイバーコンボイが答え――両者の魔法は爆発を起こし、相殺される。
「休むな、攻め続けろ!」
「もちろん!」
シグナムに答え、セイバーコンボイはカリバーンをかまえ直し、
「スターセイバーが力を貸してくれてるんだ――このまま、終われないよ!」
そこから放たれた再度の炎が、メガザラックに襲いかかる!
「く………………っ!」
とっさにそれをパンツァーシルトで受けるメガザラックだが――
「我らを忘れてもらっては困るな!
紅蓮一閃!」
そこにシグナムが襲いかかった。レヴァンティンの一撃でメガザラックの体勢を崩し、
《「ライトニング、ラム!」》
足払い、どころか足弾き、くらいの勢いで、フェイトとジンジャーがライトニングラムでメガザラックの足を弾き、転倒させる。
「セイバーコンボイ!」
「今だよ!」
「うん!」
一気に決める――スターセイバーとフェイトの言葉に、セイバーコンボイはカリバーンをかまえた。
「カリバーン――カートリッジロード!」
〈Roger!〉
告げるセイバーコンボイの言葉に、カリバーンはカートリッジをロードし、
『フォースチップ、イグニッション!』
『フルドライブモード、スタンバイ!』
セイバーコンボイとフェイト、スターセイバーとシグナムが告げ――その刀身が音を立てて弾け飛んだ。
その中から光があふれ出し――それは収束、物質化し、より強大な大刀となる。
「いくよ――エクスカリバー!」
告げて、セイバーコンボイはカリバーン改めエクスカリバーを頭上に掲げ――巻き起こったエネルギーが炎と風を巻き起こした。炎の渦となって荒れ狂い、エクスカリバーの刃にまとわりつく。
そして、セイバーコンボイは一気にメガザラックへと突っ込み、咆哮する。
『フレイム、カリバー、ブレイカー!』
「く………………っ!」
放たれた斬撃を、メガザラックはパンツァーシルト、そしてブリューナク自身で受け止める――が、そんなものは何の役にも立たなかった。刃にまとわりついていた炎が至近距離から解放され、メガザラックを吹き飛ばす!
そして、その炎の渦はさらに格納庫内で暴れ回った。床を抉りながら突き進み、外へと続くハッチを吹き飛ばす!
「やったぞ――出られる!」
「脱出しよう!」
これで脱出口ができた。勢い込んで告げるシグナムとフェイトだが――
「……メガザラック」
セイバーコンボイは、倒れたメガザラックに呼びかけた。
「殺せ」
「殺さないよ」
告げるメガザラックにあっさりと答え――セイバーコンボイは告げた。
「多分、信じてもらえないだろうけど……ボクは宇宙だけじゃない、アリシアも助けようと思う。
きっと、そうできる方法があると思うから……」
「そんな方法があるなら、とうにその方法をとっているさ」
答えるメガザラックだったが――
「本当にそう?」
逆にセイバーコンボイは聞き返した。
「メガザラックは、アリシアのために、ってことを強調してるけど……そのために一番ストレートな方法しか選んでない。
もっと悩んで、もっと考えれば……きっと見つかるよ。宇宙も、アリシアも、みんなを助ける方法が」
「………………」
その言葉に、メガザラックはしばし沈黙し――告げた。
「……悪いが、オレはそこまで待つつもりはない。
みんなまとめて救える方法があるというのなら、勝手に探すがいい。オレはオレの最善の道を行く。
とどめを刺さないというのなら勝手にすればいいが――その時は、オレは今後もお前達の敵として立ちふさがる。
全か、一か――違いはあれど、想いは同じで、譲れないのだから……」
「…………うん。覚悟しとく」
「何っ!?
メガザラック様が!?」
メガザラック敗北の報せは、すぐにリニスによってライオカイザー達にもたらされた。代表して通信を受けたライオカイザーが、無差別に放たれるキラーパンチの魔力弾をかわしながら思わず声を上げる。
「わかった。すぐに戻る!
総員、撤収だ!」
「お、おぅっ!」
通信を終え、告げるライオカイザーにレーザーウェーブが答え、彼らウィザートロンは一斉に転送魔法で離脱していく。
「どうやら、テスタロッサ達は脱出したようだな……」
その動きに対し、次に動いたのはキラーパンチだった。攻撃をやめ、魔法陣を展開する。
「逃げるつもりか!?」
「当然だ。
今回はただ単に場をにごすために現れたに過ぎない――まだどの勢力にも、倒れてもらうワケにはいかないのでね」
声を上げるロディマスコンボイに答え、キラーパンチもまた姿を消した。
「…………だ、そうだ。
貴様はどうする?」
「そうだな……漁夫の利を期待して乱入したが、このままではサイバトロンをまとめて相手にするハメになりそうだ」
尋ねるフレイムコンボイに答え、スカイクェイクは意外とあっさり刃を納めた。
「フレイムコンボイ……だったか。なかなかのものよ。
決着はいずれつけよう――その時まで、お互い生きていられたら、な」
言って、スカイクェイクもまた部下達と共に撤退。フレイムコンボイもマスターメガトロン達の後を追おうと戦場に背を向け――
「フレイムコンボイよ」
そんな彼の背中に、ブレイズリンクスが声をかけた。
「これは我が兄。
そういえば転生の祝いをまだ述べていなかったな」
「元世捨て人の兄など放っておいてもらってかまわんぞ」
苦笑まじりにフレイムコンボイに答え――ブレイズリンクスは本題を切り出した。
「デストロンにいて、お前に一体何の得がある?
我らと共に来い、フレイムコンボイ」
「すぐに話し合いだ何だと、戦わずに済ませようとする、お前達とか?
冗談じゃない」
だが、ブレイズリンクスの提案をフレイムコンボイは一蹴した。
「オレがデストロンについた理由などただひとつ……
戦いながらプラネットフォースを集められるからだ。
戦う力、戦う気概こそが宇宙を救うために今必要とされるもの――たとえ野望を抱いていようと、マスターメガトロンにはそれがある。お前達と違ってな」
言って、跳び去っていくフレイムコンボイを見送り――ブレイズリンクスはつぶやいた。
「しかし……マスターメガトロンに宇宙を支配されては、グランドブラックホールを消滅させても無意味であろうに……
それがわからぬお前ではあるまい――何を考える? フレイムコンボイ……」
「任せてくれた……と思っていいのかな?」
「『みんなを救う方法を探すこと』を?」
飛び去っていくメガデストロイヤーを見送り、聞き返すフェイトにジャックプライムはうなずいた。
「だって、『好きにすればいい』って言ってたし。
それに、そうでなきゃ素直にフェイトを返してくれないよ」
「あまり当てにされてないようにも見えたけど……」
ジャックプライムの言葉にフェイトがやや冷ためな答えを返すと、
〈フェイトちゃん、ジャックプライム!
よかった――やっと通じた!〉
そこへ、エイミィから通信が入った――すぐに割り込みがかかり、ゆうひが代わりに告げる。
〈大変や!
マスターメガトロン達が、セイバートロン星に向かったって!〉
『えぇっ!?』
〈アースラはすぐにセイバートロン星に向かうことになったんよ!
座標を教えて! エイミィに転送回収してもらうから〉
「う、うん!」
答え、フェイトがゆうひに現在位置を教えている間、ジャックプライムはふと傍らのスターセイバーやシグナムに視線を向けた。
「……我々にかまうな。行け」
「セイバートロン星の座標ならわかっている。いずれ我々も赴こう」
「うん……
じゃあ、またね!」
シグナムとスターセイバーの言葉にうなずくと、ジャックプライムはフェイトの元に駆け寄り――転送魔法でその場から消えていった。
「……『もっと悩んで、もっと考えれば、みんなを助ける方法がきっと見つかる』か……」
「ヤツの言葉か?」
「あぁ」
シグナムの言葉に、スターセイバーはうなずいた。
「我々も……メガザラックと同じなのかもしれないな……」
「あぁ……
だが、それでも、私達にはこの方法しかない」
「わかっている。
マキシマスに戻り、セイバートロン星に向かうぞ」
告げるシグナムにそう答え、スターセイバーはビークルモードへとトランスフォーム。高速でその場から飛び去っていった。
「ジャックプライムは、メガザラックに勝利したか……」
ギャラクシーコンボイやなのは達の去ったミッドチルダ・サイバトロンシティ――その一角で、エルダーコンボイは静かにつぶやいた。
「メガザラック……お前も、セイバートロン星に向かうのだろうな……」
ジュエルシードはウィザートロンの手から守るためにアースラに託した。メガザラック達がその後を追うのは必定だろう。
だが――
「メガザラック……
お前は、ジャックプライムと戦ってはならない……」
そうつぶやき、窓の外へと視線を向ける――
「お前とあの子の戦いなど……茶番にしかならないのだから……」
そのつぶやきを聞いた者は、誰もいなかった。
(初版:2006/12/24)