「アースラの航路のトレースは？」
「ムリですね……
完全にこちらの追跡に対する処置を施されてますね」
メガデストロイヤーのブリッジで、尋ねるメガザラックの問いにガイルダートが答える。
「ふむ……なんとかセイバートロン星へのルートを割り出せればと思ったが……」
「どうするの？ メガザラック」
つぶやくメガザラックにリニスが尋ねると、
「………………ん？」
コンソールとにらめっこしていたオンスロートがそれに気づいた。
「メガザラック様。
前方の時空間に魔力反応！
転送魔法です！」
「何…………？」
オンスロートの言葉にメガザラックが眉をひそめると、メガデストロイヤーのすぐ前に光の塊が現れた。
そして、その中から現れたのは――
「――あぁーっ！ アイツはこの間の！」
思わずセイバーバックが声を上げるが――現れたキラーパンチは悠然とその場に佇んでいた。
「さて、これからどうしたものか……」
人の立ち入ることのできない、ミッドチルダの険しい山岳地帯――部下達を前にスカイクェイクは腕組みして考え込んだ。
「そもそも、オレ達がこのミッドチルダに来た時は、サイバトロンどものスペースブリッジに割り込んだワケで……」
「けど、そのサイバトロンは今回スペースブリッジ使ってねぇしなぁ……」
「わかっている。
だから、なんとかしてセイバートロン星に向かう方法を考えているんだ」
レーザークローとタートラーの言葉にスカイクェイクが答えると、
「セイバートロン星に行きたいのか？」
「何者だ!?」
突然かけられた言葉に声を上げ、スカイクェイクは声の下方向へと振り向き――
「案内してやろう――セイバートロン星にな」
そんなスカイクェイクの前で、仮面の戦士は彼らに向けてそう告げた。
「くっそぉっ！ キリがねぇ！」
もはや脅威どころか『ザコ』と認定してもよくなってきた感のあるランブル襲撃だが、こうも毎回数に任せた攻めを繰り出されては苛立ちもつのるというものだ――両肩のランチャーでランブルを蹴散らしながら、エクシゲイザーは忌々しげに愚痴をこぼした。
「まったく、こいつら、どこからこれだけ沸いて来るんだ!?」
「おそらく、この星のお仲間からだろうな」
舌打ちするバックギルドに答えるのはシックスナイト。その後を引き継ぎ、ライブコンボイがジャイロソーサーを振り回しながら続ける。
「同じようにグランドブラックホールに取り込まれた他の星から、まるで渡り鳥のように移動しているんだろう。
それぞれの惑星のエネルギー資源（エネルゴン）を食料にするために、ね」
「だが……そうなると厄介だな。
ヤツらの出現元を特定できない」
「結局、出てくるそばから叩いていくしかないってことか！」
ファストガンナーの言葉に答え、ハイブラストもまたブラストランチャーでランブルを蹴散らしていく。
と、エクシゲイザーのライドスペースに座るすずかがエクシゲイザーに尋ねた。
「やっぱり、晶さん達が抜けちゃったのはマズいかな……？」
「これだけ数の差があっちゃ、アイツらがいたって変わらないさ！」
答え、エクシゲイザーはバトルダガーでランブルを両断し、
「それに、あの時はアイツらに地球へ戻ってもらわないと、もうどうにもならない、って状況だったからなぁ……」
「ったく、なんでオレが地球までお前らの食料を取りに行かなくちゃなんねぇんだよ？」
グランドブラックホールの超重力によって歪められた宇宙を飛翔しつつ、ため息まじりにボヤくブリッツクラッカーだったが――
「お前が考えなしにオレ達の分まで食いまくったからだろうが！」
ライドスペースで言い返し、晶は思い切りコンソールを蹴りつける。
と、彼の後を追従するブレインストームもまた告げる。
「だいたい、この湾曲エリアを通過できるのは、空間の歪みに惑わされないお前だけなんだ。
誰が行くにしろ、先導役としてお前が必要なのは変わらないさ」
「へっ、情けねぇな！
オレがいなくちゃセイバートロン星から出られねぇってか！」
「調子に乗るなぁっ！」
「いてっ、いててっ！
こら、晶！ コンソールをゴスゴス殴るな！」
「あいつらはあいつらで、自分達の仕事をしているんだ」
「私達だって、負けてられないってことだね！」
告げるガーディオンの言葉にシェリーが同意した、その時――突然、大爆発と共にランブルの群れが吹き飛ばされる！
「何だ!?」
思わず驚きの声を上げ、ライブコンボイが振り向くと、そこにいたのは――
「この程度のザコに手間取るとはな。
やはり、ギャラクシーコンボイやあの小娘のいないサイバトロンなどザコばかりか」
そうつぶやき、ランブルの群れに対して雷撃をお見舞いしたマスターメガトロンはゆっくりとセイバートロン星に降り立った。
第53話
「鋼の星の大決戦なの！」
「セイバートロン星はまだか……!?」
「転送可能宙域まで、まだ少しかかります」
マスターメガトロンを追い、セイバートロン星へと向かうアースラの格納庫で、パーセプターは焦るギャラクシーコンボイにそう答える。
「セイバートロン星ってどんなところなの？」
「うーん、どんなところなんだろ……
実は、わたしも行ったことないからよくわからないんだよね」
ジャックプライムの問いになのはが答え――
「………………あー、そこの二人。
なんで絶妙なシンクロ具合でこっちに視線を向けてくるのかな？」
「あ、えっと……」
尋ねるソニックボンバーに、なのはは思わず視線をそらし――そのとなりでジャックプライムが答えた。
「ミもフタもない言い回しのソニックボンバーだったら、忌憚のない意見を聞かせてくれるかなー、と」
「ほほー、ンなコト言いやがっておいてどの口がほざくかこのガキ」
自分と対して変わらない、遠慮のない物言いをするジャックプライムの言葉にうめき――それでもソニックボンバーは答えた。
「ぶっちゃけちまえば、メカばっかりの星だな。
自然もねぇし、アウトドア派なヤツらにゃつまんねーとこだぞ」
「ふーん……それは確かにつまらなさそうだね」
「つくづく言いたい。
人のこと言えた義理かテメェ」
自分の説明に対してサラッと切り捨てるジャックプライムにソニックボンバーがうめくと、
「……フェイト？」
ジャックプライムがなのはと話しているのに何の反応も示さない――どこか沈んでいるフェイトの様子が気になり、恭也は彼女に声をかけた。
「やはり……気になるのか？ ウィザートロンのことが」
「………………うん……」
恭也の問いに、フェイトは力なくうなずく。
アリシアの事はジャックプライムから報告されている――そんなフェイトの想いを計りきれず、恭也は息をつき――
〈少しいいかしら〉
艦内回線で、リンディが格納庫にいる面々に呼びかけた。
〈今、ユーノくん達から調査の中間報告が来たの。
ちょうどいいから、みんなにも聞いてもらいたいんだけど〉
「わかった。
では、回線をこちらにも回してくれ」
ギャラクシーコンボイの答えにモニター上のリンディがうなずき――画面が切り替わり、そこにユーノの姿が映し出された。
「ユーノくん、久しぶり！」
〈久しぶり、なのは。
それにみなさんも〉
真っ先に声を上げたなのはに応え――ユーノはすぐに表情を引き締めた。
そんな彼に話し出すきっかけを与えるべく、ギャラクシーコンボイは彼に告げた。
「ではユーノ。報告を始めてくれ」
〈はい。
では、今までの調査でわかったことをいくつか〉
そう前置きすると、ユーノは報告を始めた。
〈まず、“闇の書”というのは本当の名前じゃありません。
本来の名前は“夜天の魔導書”。様々な世界の優れた魔導師の技術を記録し、研究するための、主と共に旅をする蒐集ツール――〉
「そんな調査目的の魔導書が、どうして“闇の書”なんかに？」
尋ねる知佳に、ユーノはため息をつき、
〈それは、何代目かの主が、システムを書き換えてしまったからです……
やったことはただひとつ。もっと蒐集の幅を広げようとして、対象設定を変えるために行動基準のリミッターを外したことだけ。
けど――それが最悪の事態を引き起こした……〉
「最悪の事態……？」
聞き返す恭也だったが――気づいた者がいた。
「リミッターを外したとたん――暴走したのね？」
〈正解♪〉
そう答えたのはモニターに割り込んできたリーゼロッテである。
そんなリーゼロッテを押しのけて説明を引き継いだのは――
「ホップ!?」
「あ…………
そういえば、ミッドに行ってしばらくしてから、姿を見なくなってたような……」
「ユーノくんを手伝いに行ってたんだ……」
〈いいですよいいですよ。どうせボク達なんて……
防御結界の使えるユーノ様と違って完全に戦闘要員じゃないから影も薄いですし、ブリッドとバンパーなんてしゃべれませんし……〉
「おーい……いじけてないで帰ってこぉーい……」
本気で驚きの声を上げる美緒、アルクェイド、忍の言葉にいじけ始めたホップに、耕介は思わずなぐさめの声をかける。
ともかく、耕介のその言葉で立ち直ったホップは一同に対し説明を始めた。
〈えっと……暴走についてのことですけど、その当時の主は調整のために一時的にリミッターを外そうとしただけだったらしいんです。
ただ……その際、一緒に調整する対象である行動基準のリミッターまで外れてしまったらしくて……
結果、“夜天の魔導書”は暴走。旅をする機能と破損データの修復機能が変質し、“闇の書”となってしまった……〉
「なるほど……
転生と無限再生はその暴走の結果か……」
そのホップの言葉に、クロノは腕組みして考え込む。
と、そんな彼らの会話にジャックプライムが割って入った。
「“闇の書”は未完成でも強大な力を振るえるって聞いてたけど……その話が本当だとすると、少しニュアンスが違ってくるね。
『強大な力を振るえる』んじゃない――『強大な力しか振るえない』んだ」
「リミッターが外れてるせいで、力の加減が効かなくなってるってことかい？」
聞き返す薫にジャックプライムがうなずくと、
「だとしたら……マズいですよ、若……」
そうジャックプライムに告げたのはブラッカーだ。
「どうマズいの？」
「我々の身体が全力を出せないようになっているのと同じ理屈だ」
尋ねるみなみに、ブラッカーはそう答えた。
「人間の身体は自身の持つポテンシャルのすべてを発揮できるようにはできていないし、我々トランスフォーマーにもリミッターがついている。
なぜか――？ これはアスリートであるみなみには、今さら答えるまでもないだろう？」
「うん。
全力を出すと、自分の身体が持たないからだよね？」
「そう。
それと同じことが“闇の書”の主の身体に起きていることになる――行使する魔力の加減が効かず、消耗と反動、両面から身体に大きな負担がかけられているはずだ」
告げるブラッカーにモニター上でうなずき、ユーノがホップから説明を引き継ぐ。
〈今ブラッカーが指摘した点も含めて、主に対する性質の変化がもっともひどく改変されています。
一定期間蒐集しないと、自らの存在を維持しようと主の魔力資質を侵食し始めるし、完成したらしたで、持ち主の魔力を際限なく使って力の行使を繰り返す……〉
「完成させなくても、完成させても、形が違うだけで主を食いつぶすのは変わらない、か……
停止や、封印の方法については何かわかったのか？」
〈それは今調べています〉
尋ねるニトロコンボイにユーノが答えると、
〈ただ……完成前の停止は難しいかと……〉
そう口をはさむのはホップだ。
「どういうことだ？」
尋ねるギャラクシーコンボイだったが――答えたのはホップでもユーノでもなかった。
「管理者権限……だね？」
〈そのとおりです〉
つぶやくように尋ねるジャックプライムに、ホップはそううなずいてみせた。
〈“闇の書”の主にしか管理者権限は与えられませんし、そもそもその行使も“闇の書”が完成しないと行えない――ほとんどのリミッターが外された中、唯一残った安全弁によって、未完成の“闇の書”に対するシステム干渉が禁止されているのです〉
〈だから、“闇の書”を完成させた主にしかシステムの停止はできない――
その上、ムリに外部から停止させようとすると、主すらも取り込んで強制転生してしまうシステムまで組み込まれています〉
「タチが悪いことこの上ねぇな……」
「完成した状態で、管理者にしか止められない上に、その管理者は完成したとたんに暴走に巻き込まれてアウト……
いったいどうしろってのよ……」
ホップとユーノの言葉にライガージャックとアルクェイドがうめくと、
「しかし……それでも止めなければならない」
二人にそう告げるのはドレッドバスターだ。かたわらで志貴もうなずき、
「そうだな。
どうするにせよ、まずは“闇の書”の完成による暴走を阻止しないと始まらない。
世界を守るためにも……」
（はやてちゃんを守るためにも……）
最後の部分は口には出さず、志貴は決意を新たにし――
〈――――――っ！
みんな、ちょっと聞いて！
コードレッド、緊急事態！〉
突然、エイミィが声を上げた。
「どうしたんですか？ エイミィさん」
尋ねるなのはに、エイミィは答えた。
〈もうすぐセイバートロン星への転送可能宙域に到達するから、状況のスキャニングをしてたんだけど……〉
〈マスターメガトロンが、ライブコンボイ達と交戦中！〉
『ぅおぉぉぉぉぉっ！』
咆哮と共に一斉攻撃。バンガードチームの蹴りが、拳が、同時にマスターメガトロンへと叩き込まれるが――
「パワーはなかなかだが――ウェイト不足だ！」
言い放ち、マスターメガトロンは彼らを力任せに薙ぎ払う！
「エクシゲイザー、みんな！
ガーディオン！」
「おぅ！」
「ダイリュウジン！」
「心得た！」
蹴散らされるバンガードチームを救うため、シェリーと都古の指示で突撃するガーディオン、ダイリュウジンだったが――
「そっちはそっちで――小回りが効かん！」
マスターメガトロンはそんな彼らをかいくぐり、挟撃するように突っ込んできていたガーディオン達は互いに激突してしまう。
「貴様らなど、不意をつかねばオレに傷ひとつ負わせることなどできんわ！」
言い放ち、マスターメガトロンは雷撃を放とうと右手をかざし――
「させるか！」
「キミの相手はボク達だ！」
真一郎とライブコンボイがそれを阻んだ。棍棒形態のジャイロソーサーでマスターメガトロンを牽制、後退させ、
『フォースチップ、イグニッション！
フォース、ミサイル！』
そこへエリスとオートボルトがフォースミサイルで一撃。さらに――
『フォースチップ、イグニッション！
サウンド、ボンバー！』
アイリーンとブロードキャストが、衝撃波で追撃をかける！
「ぐぅ…………っ！
ザコどもがぁっ！」
食い下がるライブコンボイ達の抵抗に、苛立ちを募らせたマスターメガトロンは上空で雷撃を生み出し――突如、そんな彼を熱線が直撃する！
「ぐわぁっ!?
貴様ら、よくも！」
不意打ちを受け、怒りの視線を向けるマスターメガトロンだったが――ライブコンボイ達はそろって手をパタパタと振ってみせる。
「貴様らではないのか……!?
では――」
うめいて、マスターメガトロンは振り向き――
「がぁーっはっはっはっ！
ギガちゃんと愉快な仲間達、ここに見参！」
「なんで貴様が仕切るんだ！」
近くのビルの上で仁王立ちし、高らかに名乗りを上げるギガストームにオーバーロードがツッコミを入れる。
さらに彼らの後方にはメナゾール、ウィアードウルフ、スカル、ワイプ――スタントロン・バンディットロン連合軍の勢ぞろいだ。
ダイナザウラーがいないのは先のスーパースタースクリーム戦でのダメージが原因だろうか。
「フンッ、誰かと思えば貴様らか……
またジャマしに来たということか」
「こちらにも都合というものがあるのでな」
告げるマスターメガトロンにオーバーロードが答え――
「そうだそうだ！
ここんトコ負け続けで、『実はアイツら弱いんじゃないか？』みたいな風評が立ってるらしいからな！
ここはズバッと人並み以上に強いところを見せつけておかねば！」
「えーっと……気楽でいいよな、お前は……」
となりで拳を握りしめ、宣言するギガストームの言葉にオーバーロードは思わず肩を落とす。
だが、そんな彼らにマスターメガトロンは余裕の笑みを浮かべ、
「いいだろう。
そこまで言うなら相手をしてやる――来い！」
「そうこなくっちゃな！」
言い返し、ギガストームがマスターメガトロンに向けて地を蹴り――
「ブルァァァァァッ！」
突然、真横からタックルを受けて弾き飛ばされた。
「なんでこぉなるのぉぉぉぉぉっ!?」
まともにくらい、吹っ飛ぶギガストーム――そんな彼の前に立ちはだかったのは――
「フー……やっと追いついたな……」
「貴様――フレイムコンボイ！」
人をブッ飛ばしておいて平然と告げるフレイムコンボイの姿に、ギガストームの目の色が変わった。すぐさま飛び起き、フレイムコンボイをにらみつける。
「フンッ、誰かと思えば……
………………
…………
……」
「って、ちょっと待て！ 何だ、その間は!?
まさかとは思うが忘れてんじゃないだろうな！」
「そんなことはないぞ。
えーっと……元スカージ！」
「なんでそんな思い出し方なんだ！」
フレイムコンボイに言い返し、ギガストームはその場で地団太を踏む。
「いいだろう……だったら思い出させてやる！
ギガストーム、ビーストモード！」
咆哮し、ギガストームはビーストモードのドラゴン形態へとトランスフォームし、
「ならば、こちらも！
フレイムコンボイ、トランスフォーム！」
対してフレイムコンボイもまたビーストモードにトランスフォーム。2体のドラゴンが対峙する。
「やれやれ、一番乗り気だったクセに、何を寄り道しているのやら……」
完全に当初の標的だったマスターメガトロンを無視しているギガストームに、オーバーロードは思わずため息をつき――
「では、オレの相手は貴様か？」
「いや、やめとこう。
別に、プラネットフォースを持っていない貴様を倒す理由などないからな」
尋ねるマスターメガトロンだが、オーバーロードはあっさりとそう答える。
「そう――オレ達が今倒すべきは――」
「…………なるほど」
そのオーバーロードの言葉の意味に気づき、マスターメガトロンはニヤリと笑みを浮かべた。オーバーロードと共にそちらへと向き直り――
「まずはサイバトロンを始末し……」
「その後で、ゆっくりとプラネットフォースを奪い合えばいい」
告げると同時、二人は同時にライブコンボイ達へと攻撃を仕掛ける！
さらに、それにガスケット達やメナゾール達も呼応。デストロン各勢力の攻撃が、一斉にライブコンボイへと降り注ぐ。
「くそっ！ 都合のいい時だけ結託しやがって！」
「敵の敵は味方――単純でうらやましいわね、まったく！」
うめくオートボルトにエリスが答えた、その時――
《『フォースチップ、イグニッション！』》
突然の咆哮が上空から響き――
「ギャラクシーキャノン――フルバースト！」
《「パニッシャー、スコール！」》
放たれた無数のビームが、真上からマスターメガトロンやオーバーロード達に降り注ぐ！
「今のは――」
確認するまでもない。心強い援軍の到着に、アリサはバックギルドのライドスペースで空を見上げ――
「なのは！」
「総司令官！」
そこに佇むなのはとギャラクシーコンボイの姿を見とめ、バックギルドと共にその名を叫ぶ。
「くそっ、サイバトロンの援軍か！」
うめいて、メナゾールがなのはに向けて照準を合わせ――
「はい、そこまでだ」
そんな彼の後頭部に銃口を突きつけたのは、すでにリンクアップを済ませたロディマスコンボイだ。
さらに、ガードシェルやスペリオン、ベクタープライム達も次々に降り立ち、ガスケット達も瞬く間に包囲する。
「もう追いついてきたのか、ギャラクシーコンボイ。
ミッドチルダのプラネットフォースはあきらめたのか？ ならばオレ様がいただいてやろう」
だが、突然の援軍を前にしてもマスターメガトロンは余裕だった。悠々とギャラクシーコンボイに告げるが――
「フンだ！ そもそもミッドチルダのプラネットフォースがどこにあるのかも知らないくせに！」
「なんだと……？」
バカにするように告げるジャックプライムの言葉に、さすがのマスターメガトロンも気に障ったようだ。その口調に怒りが宿った。
「言ってくれるな、小童が……！」
「あー、何ナニ？ やる気？
こないだブッ飛ばしてあげたのに、こりてないワケ!?」
うめくように告げるマスターメガトロンに言い返すジャックプライムだが――
「はい、ストップ」
そんなジャックプライムを後ろから抱え上げたのはライブコンボイだ。
「誰だか知らないけど、キミのような子供がこんな戦場に来るものじゃないよ、なのは達ならともかく。
安全なところに下がっているんだ」
「――って、ナニ!? その子ども扱い！」
初対面なのだからムリはないが――完全にこちらを非戦闘員扱いしてくるライブコンボイに、ジャックプライムはムッとして言い返す。
「これでもボクはミッドの次期リーダー！ キングコンボイことジャックプライム様なんだから！」
「な………………っ!?」
「キミが、コンボイ……!?」
ジャックプライムの言葉にライブコンボイが、そしてそのライドスペースの真一郎が思わず声を上げ――
「えーっと……ライブコンボイ？」
「『わたし達なら』って、どういうことなんでしょうか……」
「あ、いや……」
フェイトとなのはにもにらまれ、ライブコンボイは思わず視線をそらす。
と――そんな彼らにマスターメガトロンが声をかけた。
「フンッ、漫才はそれで終わりか？」
「まっ、漫才!? 言うに事欠いて漫才!?
ボクはいたってマジメにやってるのに！」
「漫才だよなぁ……どう見ても」
マスターメガトロンに言い返すジャックプライムの言葉に、オーバーロードが傍らで思わずつぶやきをもらす。
「あー、もういいから。
少なくともお前が話に混じると余計な方向に脱線する」
そう言ってムキになるジャックプライムをなだめ、ギャラクシーコンボイはマスターメガトロンへと向き直り、
「いずれにせよ、もう貴様らは包囲されている！
覚悟しろ、マスターメガトロン！」
「おいおい、オレは無視か!?」
ギャラクシーコンボイの言葉に声を上げるオーバーロードだが、
「それはこっちのセリフだ！
いい加減、貴様らの相手にも飽きたわ――もはや手段は選ばん！ ここらで決着をつけてくれる！」
「って、そっちも！」
こちらも徹底的に無視してくれたマスターメガトロンに対しても抗議の声を上げる。
だが――両者は互いのみに意識を集中、あっさりとオーバーロードは無視される。
と――
「総司令官！」
そんな彼らの元に降り立ったのはクロノを連れたソニックボンバーだ。
「リンクアップだ！
ソニックコンボイで、マスターメガトロンを一気に叩きつぶしてやろうじゃないっスか！」
「よし！
フェイト！」
「はい！」
こちらにはちゃんと反応した――ソニックボンバーの言葉に同意し、告げるギャラクシーコンボイに答えてフェイトはバルディッシュをかまえ、
〈Link up Navigator, Get set！〉
リンクアップナビゲータが起動した。
「いくよ――みんな！」
言って、フェイトがバルディッシュをかざし――その中枢部から光が放たれる。
その中で、ギャラクシーコンボイとソニックボンバー、二人のスパークがさらなる輝きを放つ。
『ソニックボンバー！』
クロノとソニックボンバーの叫びが響き、クロノをライドスペースに乗せたソニックボンバーはビークルモードへとトランスフォーム。そこから機首を後方にたたみ、主翼のバルカンシステムも展開。機体下部の装甲を展開して合体ジョイントを露出させる。
『ギャラクシー、コンボイ！』
次いでなのはとギャラクシーコンボイが叫び、なのはをライドスペースに乗せたギャラクシーコンボイがギャラクシーキャノンを分離。その両足にソニックボンバーの翼から分離した火器が合体する。
そして、両者が交錯し――
『リンク、アップ！』
4人の叫びと共に、バックユニットとなったソニックボンバーがギャラクシーコンボイに合体する！
最後にソニックボンバーの胸部装甲がギャラクシーコンボイの胸部に装着され、4人が高らかに名乗りを上げる。
『ソニック、コンボイ！』
「フォースチップ、イグニッション！
デス、クロー！」
だが、リンクアップしたソニックコンボイを前にしても、マスターメガトロンは余裕の態度を崩さなかった。フォースチップをイグニッションし、左腕にデスクローを装備する。
「いくぞ――ソニックコンボイ！」
咆哮し、ソニックコンボイへと殴りかかるマスターメガトロンだが、ギャラクシーコンボイも身を沈めてそれをかわし、
「そら、よっと！」
ソニックボンバーの咆哮と共にブースターを全開。全身のバネで繰り出したアッパーが、とっさにかわしたマスターメガトロンの胸を掠める。
さらに――
「レイジングハート！」
〈Baster ray！〉
「バルディッシュ！」
〈Falcon lancer, shoot！〉
なのはとフェイトが援護射撃。放たれる閃光、光弾をガードを固めて耐えるマスターメガトロンだが――
「動きを止めるのは――命取りだ！」
〈Blaze Cannon！〉
背後に回りこんだクロノが、至近距離からブレイズキャノンを叩き込む！
「くそっ、こしゃくな……！
トランスフォーム！」
見事な連携でこちらを追い込んでくるソニックコンボイやなのは達に、マスターメガトロンはたまらずジェット機形態にトランスフォーム。その場を離れようと上空に飛び立つ。
「逃がすか！」
すかさずその後を追うソニックコンボイだが――その眼前に突然デストロンのワープゲートが出現。勢いよく加速していたギャラクシーコンボイはそれをかわすことができず、ゲートの中に飛び込んでしまう。
マスターメガトロンによるワナだ。
「ソニックコンボイさん！」
とっさにソニックコンボイの元へと向かおうとするなのはだが――それよりも早くマスターメガトロンがゲートの中に飛び込み、なのはの到着を待たずにゲートは閉じられてしまった。
「そんな……！」
「ギャラクシーコンボイ、ソニックボンバー……！」
引き離されてしまったソニックコンボイの身を案じ、なのはとフェイトがうめくが――
「まさか、お前らもオレを忘れてないだろうな!?」
そんな彼女達に、オーバーロードが両肩のキャノン砲で攻撃を仕掛けてくる！
「くっ、こんな時に……！」
《ソニックコンボイを追わなくちゃいけないのに……！
ジャマするんじゃないよ、この影薄大帝！》
これではソニックコンボイの援護に向かえない。うめくなのはとプリムラだったが――
「心配ないよ」
そんな二人に告げたのはクロノだった。
「すかさず助けに行った、抜け目のないヤツがいたみたいだからね」
「我らが拠点、ファイヤースペースへようこそ、ソニックコンボイ」
燃え盛る炎の中、マスターメガトロンは対峙するソニックコンボイにそう告げる。
「ここが貴様の墓場となるのだ。
いくぞ！」
言うと同時、マスターメガトロンは一直線にソニックコンボイへと突っ込み――
「カリバーン、Set Up！」
〈Ready.〉
「――――――っ！」
突然の声にとっさに後退。頭上から斬りかかってきたキングコンボイの斬撃をかわす。
「キングコンボイ!?」
「助太刀するよ、ギャラク――じゃない、ソニックコンボイ！」
驚きの声を上げるソニックコンボイに答え、キングコンボイはカリバーンをかまえ直す。
「いいだろう――二人まとめて、片付けてやる！」
そんな彼らに言い放ち、再び突撃したマスターメガトロンはデスクローで一撃。それをソニックコンボイは真正面から受け止め――
「キングコンボイ！」
「おっ任せぇ！」
ソニックコンボイの合図で、キングコンボイがマスターメガトロンの顔面に強烈な蹴りをお見舞いする！
これにはたまらずマスターメガトロンも左拳の力を緩め――
「ぅおぉぉぉぉぉっ！」
そのタイミングを逃さずソニックボンバーが気合一発。バーニアを全開に吹かしてソニックコンボイの身体を押し出し、マスターメガトロンを岩壁に叩きつける！
「ソニックコンボイ！
剣でいくよ――あわせて！」
「あぁ！
フラップソード！」
一気に押し切る――キングコンボイに同意し、ソニックコンボイは両手にフラップソードをかまえ、
「なめるなぁっ！」
そんな二人に、マスターメガトロンが再び殴りかかる！
だが――怒りに任せた一撃が通じるほど彼らは甘くはない。左右に跳んで一撃をかわし、逆にそれぞれの刃でカウンターを見舞う。
「キングコンボイ！
ストームカリバーブレイカーだ！」
「え？
いいけど……あんなダメージなくてピンピンされてたら、動きを止めるくらいしかできないよ？」
「かまわない！ 早く！」
「了解！」
ソニックコンボイには何か意図があるのだろう――そう判断し、キングコンボイはうなずいてカリバーンをかまえた。
「カリバーン、カートリッジ、ロード！」
〈Roger！〉
告げるキングコンボイの言葉に、カリバーンはカートリッジを2発連続でロード。巻き起こったエネルギーがあふれ、刀身の周りで渦を巻く。
その渦は周囲の空気を巻き込んで竜巻を作り出した。荒れ狂う嵐の中でキングコンボイはカリバーンをかまえ、
「旋風、粉砕！
ストーム、カリバー、ブレイカー！」
振り下ろしたカリバーンから放たれた竜巻が、マスターメガトロンへと一直線に襲いかかり、その身を大地に縫いとめる！
「くっ、こんなもので……！」
そう何度も吹き飛ばされるワケにはいかない。必死に踏ん張るマスターメガトロンだったが――
「もらったぞ、マスターメガトロン！」
そんなマスターメガトロンに、ソニックコンボイが突撃する！
両手の刃を握り締め、脳裏に描くのはかつてその身に受けたことすらある師の得意技――
「おのれぇっ！」
そんなソニックコンボイに対し、カウンター狙いのデスクローを放つマスターメガトロンだが、ソニックコンボイはその一撃を左のフラップソードで弾き、
「ソニック、ダブルインパクト！」
右のフラップソードを起点に連撃。至近距離からの衝撃がマスターメガトロンに叩きつけられる！
そのままマスターメガトロンは岩壁に激突し――それが思わぬ副産物を生んだ。崩れた岩壁の隙間から炎が吹き出し、追い討ちとばかりにマスターメガトロンの身体を吹き飛ばす！
「やった！」
「これで終わってくれればいいが……」
思わずガッツポーズを決めるキングコンボイのとなりでつぶやくソニックコンボイだが――
「お、おのれ……これしきのことで……！」
「――って、あれだけのダメージをくらってまだ立つの!?」
「やはり、まだ立ち上がるか……！」
再び立ち上がるマスターメガトロンを前にキングコンボイが驚き、ソニックコンボイがうめく。
だが――それがマスターメガトロンの限界だった。その場に崩れ落ち、その全身に火花が散る。
「もうやめろ、マスターメガトロン。
一番の副官だったスタースクリームにも裏切られた時点で、お前の命運は決まっていたのかもしれん――それなのに、なぜそうまでして戦う？」
「貴様には……わかるまい……！」
投降を促すソニックコンボイに答え、マスターメガトロンは再び立ち上がり、
「宇宙の支配者にもっとも相応しいのは、オレ様なのだ！
宇宙を支配するまで――オレはあきらめんぞぉっ！」
咆哮し――マスターメガトロンの全身に“力”がみなぎり、
「フォースチップ、イグニッション！
デス、マシンガン！」
咆哮してフォースチップをイグニッション。右手にデスマシンガンを装備する。
「ぅわわわわっ！
飛び道具とは卑怯だぞ！」
「竜巻を撃つ、貴様が言うなぁっ！」
あわてるキングコンボイに言い返し、マスターメガトロンの放ったデスマシンガンの銃弾がキングコンボイへと襲いかかる！
「下がっていろ、キングコンボイ！
ギャラクシーキャノン！」
そんなキングコンボイを下がらせ、咆哮したソニックコンボイの言葉に、リンクアップの際分離していたギャラクシーキャノンが飛来。キャノンモードとなってソニックコンボイの前に降下する。
そして、ソニックコンボイはそのトリガーに両手をかけ、
「フォースチップ、イグニッション！」
背中のギャラクシーキャリバーとギャラクシーキャノン、双方に同時にフォースチップをイグニッションする。
そして、ソニックコンボイは全ての火器を展開し、
「ギャラクシーキャリバー、フルバースト！」
「デスマシンガン――フルバースト！」
互いに放った多数の閃光がひとつにまとまり、巨大な閃光となって激突し――！
「ジンジャー！」
《はい！》
フェイトの指示を受け、ジンジャーはフェイトから分離するとサイズシフトで大型化し、
《ジンジャー、ビークルモード！》
咆哮し、翼をカウルに、その下部に設置されたエネルギープールをタイヤとしたバイク形態へと変形、フェイトを乗せてオーバーロードと対峙する。
そして――
《「フォースチップ、イグニッション！」》
二人の叫びが交錯。ジンジャーの背中から車体後部に移ったチップスロットへと黄色のフォースチップが飛び込み、一気に加速したフェイトとジンジャーは雷光に包まれ、オーバーロードへと突っ込む。
「させるか！」
迎撃すべく、右腕のエネルゴンクレイモアを振るうオーバーロードだが――
《「ライトニング、ラム！」》
ビークルモードのジンジャー、その先端のラムに雷光を収束したフェイト達の一撃が、オーバーロードのエネルゴンクレイモアを叩き折る！
さらに――
「フェイトちゃん、下がって！
プリムラ！」
《はいはいはいっと！
スケイルフェザー、いっきまーす！》
なのはの指示でプリムラが背中の翼からスケイルフェザーを射出、一斉にオーバーロードへと襲いかからせる！
「く………………っ！」
さすがに無数に襲いかかるスケイルフェザーの前には後退を余儀なくされ、飛びのいたオーバーロードは距離を取ってエネルゴンクレイモアを再生させ――
「あ、ありゃなんだ!?」
突然、ベクタープライムと対峙していたメナゾールが声を上げた。
彼の視線の先――セイバートロン星の上空に、空間の裂け目が発生しているのだ。
「あれは――？」
「デストロンのワープゲートに似てるね……？」
つぶやくフェイトになのはが答えると、
「なのは、ただいま！」
「なのは、フェイト！
それにみんなも無事か!?」
声を上げ、キングコンボイとソニックコンボイがその空間の裂け目から飛び出してきた。
「ソニックコンボイさん！
あれは!?」
「ギャラクシーキャリバーとデスマシンガン――二つのフルバーストの激突の影響で、つい先ほどまでつながっていたこの場に向けて空間が裂けたんだ」
尋ねるなのはにソニックコンボイが答えると、キングコンボイはベクタープライムへと駆け寄り――対峙していたメナゾールを蹴飛ばすと彼に告げた。
「ベクタープライム！
確かその剣で、空間を操れたよね!?」
「あ、あぁ……」
「だったら、すぐにあの空間を閉じて！
あのムカツク中田譲治ボイスのオッサンを、ファイヤースペースごと封印しちゃうの！」
「わかった！」
キングコンボイの言葉に、ベクタープライムは空間の裂け目に向けて剣を一閃。新たに作り出された空間の裂け目が、ファイヤースペースへと続く空間の裂け目を飲み込んでいく。
「やった！」
「マスターメガトロンの最期だ！」
これでマスターメガトロンはもうこちらの宇宙には戻ってこれない――勝利を確信する志貴とドレッドバスターだったが――
「……ぬおぁあぁぁぁぁぁっ！」
マスターメガトロンの咆哮と共に、閉じかけた空間の裂け目が再びこじ開けられる！
「ち、ちょっと待ってよ！
アレをこじ開けるっていうの!?」
この土壇場で見せるマスターメガトロンのすさまじい底力に、思わずアルクェイドが声を上げると、
「ま、マズいですよ、アレ！」
そう声を上げたのはロードシーザーだ。そのとなりでレールレーサーもうなずき、
「修復しかけていた空間の裂け目を、あんな強引にこじ開けたりしたら……！」
「どうなるって言うんですか？」
尋ねるシエルにはキングコンボイが答えた。
「あの裂け目からファイヤースペースの次元エネルギーが逆流して、こっちの宇宙をファイヤースペースに塗り替えちゃう……！」
「そんなこと……！
なんとかして止めないと！」
キングコンボイの言葉に恭也がうめくと、
「プラネットフォースを使うしかあるまい」
そう告げたのはベクタープライムだった。
「惑星をも初期化するといわれるプラネットフォースの“力”ならば、ファイヤースペースごとマスターメガトロンを初期化できるはずだ」
「準備はいいな？ ベクタープライム」
「あぁ」
アースラの甲板上――チップスクェアを手にして尋ねるソニックコンボイに、ベクタープライムは剣をかまえてうなずく。
そして、二人はチップスクェアと剣を重ね、
「プラネットフォースよ、その力を示したまえ！」
そのベクタープライムの言葉を合図に剣とチップスクェアが共鳴、その力を引き出し――
「これで終わりだ――マスターメガトロン！」
チップスクエアから放たれた光の奔流が、マスターメガトロンの身体を撃ち抜く！
その“力”の渦はマスターメガトロンの体内を駆け巡り、全身のあちこちからあふれ出していく。
同時、ファイヤースペースもプラネットフォースの“力”によって分解されていき、緑色に輝く光の渦に変わっていく。
そして、マスターメガトロンも――
「こ、これで終わったと思うなよ……！
オレは必ず戻ってくるぞ――」
「ソニックコンボイぃぃぃぃぃっ！」
断末魔の咆哮が響き渡り――マスターメガトロンを分解しながら、空間の裂け目はその姿を消していった。
「ま、マスターメガトロンが!?」
その光景は離れたところで戦うフレイムコンボイとギガストームも目撃していた。マスターメガトロンの余りにも早すぎる退場という予想外の展開に、ギガストームが思わず声を上げる。
（くそっ、サイバトロンをマスターメガトロンに、プラネットフォース奪取をオーバーロードに任せようと思っていたのに、とんだ誤算だ……！）
すでに冷えていた頭で思考を巡らせ――
「どうやら、場を仕切り直す必要がありそうだな！」
言うと同時、ギガストームは尾の一振りでフレイムコンボイを後退させ、
「オーバーロード、引き上げるぞ！
全員、ダイナザウラーまで撤退だ！」
「ギガストーム!?」
「ここに残って、今の一発をくらいたいか!?」
「お、おぅ！」
ギガストームの言葉にオーバーロードは思わずうなずき、メナゾールやウィアードウルフ達と共に離脱していく。
「チッ、マスターメガトロンのヤツ……とうとう死んじまったか……
……死んじまったら、もう戦いも楽しめないだろうが……」
一方、取り残されたフレイムコンボイはマスターメガトロンの消えていったセイバートロン星の空を見上げてそうつぶやき、
「野郎ども、引き上げるぞ！」
「って、なんでアンタが仕切るんだよ!?」
すかさず反論したガスケットにはゲンコツを一発お見舞いする。
「今は従え。
さぁ、帰るぞ！」
「って、どこにっスか？」
「知らん！」
「ンな無責任な！」
「やかましい！ とにかく帰るんだよ！」
聞き返すランドバレットとインチプレッシャーに答え、フレイムコンボイはガスケットを抱えて引き上げていった。
「この……バカヤローが……」
小さく、消えていったマスターメガトロンにそう言い残して――
『やったぁぁぁぁぁっ！』
一方、サイバトロン一同はマスターメガトロンの撃退という快挙に大喜び。地上で、アースラで、グランダスで――みんなが一斉に喜びの声を上げる。
だが――
「…………ソニックコンボイさん？」
ただひとり、静かに佇むソニックコンボイに、なのはは首をかしげながら声をかけた。
「どうかしたんですか？」
「気になることでも？」
「あ、いや……」
なのはと、彼らの様子に気づいたキングコンボイの問いに、ソニックコンボイは空を見上げ、
「あのマスターメガトロンが……終わってみればなんとあっけない……
……いや……あっけなさすぎる」
その視線には不安の心がありありと浮かんでいた。
「本当に……これで終わったと、思っていいのだろうか……？」
その問いに――なのは達は答えることができなかった。
（初版：2006/12/31）