〈ユーノ達からの報告は以上だ。
詳細データを送っておく。今の記録映像と共に、そちらでも改めて目を通しておいてくれ〉
「ありがとうございます♪」
サイバトロン地球基地――モニターの向こうで告げるギャラクシーコンボイの言葉に、小鳥は笑顔でうなずく。
〈そちらの様子は?〉
「特に大きな混乱は、もう一通り収まってますね」
「私達も、ここの施設には四苦八苦してたけど、琥珀さん達やアーシー達が手伝ってくれてるし」
尋ねるバックギルドに瞳が、そして唯子が答えると、
「にしても、そっちはライブコンボイ達と合流したんですか……」
小鳥達の後ろでつぶやくのはレン達と共に地球に到着していた晶である。
「それじゃあオレ達、無駄足になっちゃいましたね……」
〈そうでもない。
キミ達の食料は、いくらあってもありすぎるという事はあるまい。予定通り補給を済ませて戻ってくれ〉
つぶやく晶に答えると、ギャラクシーコンボイは息をつき――尋ねた。
〈ところで晶。
サン――ブリッツクラッカーはそこにいるか?〉
「え?
いや……気まずいからって席を外してますけど。
一応、お目付け役にレンとブレインストームがついて行ってます」
〈それはちょうどよかった〉
晶の答えにつぶやき――ギャラクシーコンボイは告げた。
〈晶。これは彼にはオフレコにしてくれ。
実は……〉
「はやてちゃんは?」
「まだ寝てるよ」
尋ねるシャマルに、起きてきたヴィータは肩をすくめて答える。
ミッドチルダの情勢がこう着状態に陥り、サイバトロンはマスターメガトロンを追ってセイバートロン星へ。状況に区切りがついたこともあり、一度はセイバートロン星に向かおうとしたシグナム達だったが、報告も兼ねて地球へ――主であるはやてのもとへ無事な姿を見せに戻ることにした。
久々に帰ってきた家族にはやては大いに喜び、ヴィータが身振り手振りも交えて語る火山島やミッドチルダでの武勇伝を肴に大いに盛り上がったのだが――
「やはり、昨夜は夜更かしが過ぎたか……
まぁ、主はやてには我々が不在の間心配をかけただろうし、今日くらいはゆっくり休んでいただくことにしよう」
「それがいいな」
シグナムの言葉にザフィーラが同意すると、
「だったら、朝食は私が――」
『ストォォォォォップ!』
言いながら台所に向かおうとしたシャマルを、その他の全員があわてて制止した。
「やめろシャマル! それだけは!」
「そ、そうだぞ、シャマル。
早まるな。少し落ち着け」
「というか、まずは二人が落ち着きましょうね」
必死の形相で訴えるヴィータとシグナムの言葉に、毒気を抜かれたシャマルはため息まじりに告げる。
「まったく……二人そろって、また私に台所に立つな、って言いたいんですか?」
「いや……だって、なぁ……」
シャマルの言葉にヴィータがうめき、彼女に代わってシグナムが懸念を口にした。
「お前の作る料理は、たまに暴発する、というか、ハズレが出来上がる、というか……」
「失礼ね。
大丈夫なヤツは本当に大丈夫でしょ?――前にシグナムだって『おいしい』って言ってくれたじゃない」
「『ハズレ』で真祖のねーちゃん撃沈しておいてよく言うぜ……」
シャマルの反論にヴィータがうめいた、その時――
2階で――
はやての部屋で――
何かが倒れる音がした。
第54話
「星を揺るがす変貌なの!」
セイバートロン星に到着するなりマスターメガトロンとの激闘を繰り広げることになったなのは達だったが、そのマスターメガトロンが倒れたことでギガストームら混成デストロンも撤退。一時の平穏を取り戻した彼女達はサイバトロン軍の拠点、スカイドームへと招かれていた。
「ようこそ、セイバートロン星へ」
「ここが我々の家であり、基地でもあるスカイドームだ」
ギャラクシーコンボイ達は先行して指令室に向かった――遅れてスカイドームへとやってきたなのは達を案内し、エクシゲイザーとガードシェルが告げる。
「ぅわぁ……どっちを向いてもメカばっかりだね……」
「もしかして、星ごとトランスフォームしちゃったりしてね」
「ハハハ、かもしれないぞ」
フェイトとジャックプライムの言葉にガードシェルが笑いながら答えると、なのはは前を歩くすずかに尋ねた。
「すずかちゃん、住んでみたくなっちゃったんじゃない?」
「そ、そんなことないよ……」
パタパタと手を振って答えるすずかだったが、少しばかり頬が赤い。図星だった部分があるのも確かだったようだ。
と――
「ま、それもそうよね……」
そうつぶやいたのはアリサだ。彼女の視線の先をなのは達は見て――
「えっと……ラボは向こうに用意するとして、居住スペースは……
琥珀さんも呼んで、本格的に相談する必要があるわね……」
「あぁも住む気マンマンの人がいるんじゃ、見てるこっちは少しは気も削がれるってもんよねぇ……」
目を輝かせて居住計画を立てる忍を見て告げるアリサの言葉に、その場にいる全員が苦笑した。
「せやから、ちょっとつっただけやて。
みんな大げさなんやから」
海鳴大付属病院――通称『海鳴中央病院』の病室で、ベッドの上で身を起こしたはやてはシグナム達や主治医である石田医師にそう告げた。
「本当に大丈夫ですか?」
「もう、シャマルは心配性やなぁ。
本当に大丈夫やて」
尋ねるシャマルにはやてが答えると、
「シグナムさん、シャマルさん。
ちょっと」
そう告げて、石田医師はシグナムとシャマルを病室の外へと連れ出した。
「なんやて?
マスターメガトロンが?」
「あぁ。
とうとうブッ倒されて、次元の狭間に消えちまったんだと」
同じく海鳴中央病院の一角――聞き返すレンに晶が答える。
晶はレンの付き添いだ――「せっかく日本に戻ったのだから」とレンが心臓の病に伏せっていた頃の主治医にあいさつに行きたがったのだ。
「そっか……
ギャラクシーコンボイ達にしてみれば、長い戦いやったんやろうなぁ……」
自分達は途中参戦だったが、マスターメガトロンのすさまじいパワーやギャラクシーコンボイ達との永きに渡る因縁は聞き及んでいる。そんなことを考えながらレンはつぶやき――
「……っと、じゃ、ちょっと待っとってなぁ」
「早くしろよ。
桃子さんがみんなの差し入れ用にお菓子を大量に用意してくれてるんだから、早く受け取りに行かねぇと」
「わかっとるって」
晶に答え、レンは危うく通り過ぎかけた医局の方に消えていく。
「やれやれ……」
ひとり残された晶は、なんとなく周りを見回し――
「………………ん?」
廊下の向こうに見知った顔を見つけた。
「本人が言うように『ただつっただけ』ということは、ないと思います……」
「えぇ」
「あの時、かなりの痛がりようでしたから……」
はやての病室の前で、シグナムとシャマルは石田医師の言葉にそう答えた。
「念のため、検査入院をお願いしたいんですけど……」
「はい……お願いします」
うなずくシグナムの言葉に、石田医師は手続きのためにその場を離れ――シグナムはシャマルに尋ねた。
「…………どう思う?」
「……進行が次の段階に移った、ということでしょうね……」
誰がどこで聞いているかわからない――慎重に言葉を選び、シャマルはシグナムにそう答えた。
「はやてちゃんを助けるためには……」
「あぁ。わかっている」
シャマルに答え、シグナムは告げた。
「主はやてが入院ということになったのは、ある意味好都合かもしれないな……
今夜にでも発つぞ」
「えぇ」
(何の話だ…………?)
シグナム達がはやての病室に戻り――晶は眉をひそめた。行き交う患者達の気配に紛れて盗み聞いた今のやり取りを反芻する。
(今シグナムさんの言ってた『主はやて』ってのは、アイツらの主人ってことだよな……『主』ってつけてんだし。
その主人が、ここに入院してるってのか……?
けど、『発つ』ってのは――やっぱりプラネットフォース探しだよな……?
主人が入院してるってのに、なんでそこまでして……)
推理を巡らせ――ふと、先ほど目を通したユーノの調査報告を思い出した。
《一定期間蒐集しないと、自らの存在を維持しようと主の魔力資質を侵食し始めるし――》
(――――――っ!)
その事実に思考が至ったところで、晶の思考は停止した。
(ちょっと待て……
ってことは、シグナムさん達が“闇の書”を完成させたがってるのって……)
(主人の命を、助けるため…………!?)
「この星がオレ達の共通の故郷か……」
「確かに、どこか懐かしい感じがする……」
一方、他の面々はスカイドーム屋上の展望台にいた。セイバートロン星の光景を見渡し、シルバーボルトとニトロコンボイがつぶやく。
「住み慣れたこの星が、まさかプラネットフォースに関わる重要な星だったとは……」
つぶやき、ファストガンナーは空を見上げ――同様に空を見上げたファングウルフがつぶやいた。
「あとは……アレさえなくなれば……」
そして、全員の集合と体制の立て直しを終えたなのは達は、セイバートロン星からのメッセージに示されていた、プラネットフォースを収めるべき地――セイバートロン星の極点へと向かった。
「ここが、プライマスの示した場所?」
「何もないじゃないの」
訪れたドームの中を見回し、アルフとアルクェイドがつぶやく――確かに、一同がいるドームは壁や天井に一面に文様が描かれている他、特に不思議な点は見られない。
だが――ここがプライマスの示した場所であることも確かだ。となれば、ここにプラネットフォースをセットすれば何かが起きるはずだ。
もしかしたら――グランドブラックホールを消滅させる有力な何かが姿を現す可能性も高い。一同の中に緊張が走る。
「準備、完了しました――ギャラクシーコンボイ総司令官」
「わかった」
パーセプターと共にデータの分析準備を完了し、告げるファストガンナーの言葉にうなずくと、ギャラクシーコンボイはベクタープライムへと向き直り、
「ベクタープライム、プラネットフォースを」
だが、ベクタープライムはその言葉に笑みを浮かべ、彼に向けてチップスクェアを差し出す。
「ギャラクシーコンボイ――そしてジャックプライム。
キミ達二人がセットするんだ」
「私達が……?」
「ボクらがセットしちゃって……いいの?」
「この役目にもっとも相応しいのは、マトリクスを受け継いだキミ達だ」
困惑するギャラクシーコンボイとジャックプライムにベクタープライムが答えると、
「そうですよ、ギャラクシーコンボイさん!」
「がんばれ、ジャックプライム!」
彼らに声援を送るのはパートナーであるなのはとフェイトだ。
そんな二人の言葉に、ギャラクシーコンボイとジャックプライムは顔を見合わせ――ギャラクシーコンボイがチップスクェアを受け取り、ドームの中央に向かう。
と――突如チップスクェアが、そこに収められたプラネットフォースが輝きを放ち、ドーム中央の床が開いて祭壇が姿を現した。やはりここがプライマスの示した場所だったのだ。
そして、ギャラクシーコンボイとジャックプライムはチップスクェアをかざし、祭壇の中央に納め――チップスクェアが輝きを放った。さらにチップスクェアの残り二つのスロットから光のラインが伸び、ギャラクシーコンボイの、そしてジャックプライムの胸を指し示す。
その光が意味するものは――
「マトリクスを指してる……?」
「おそらく、プライマスのメッセージだ」
「プライマスの……?」
美由希に答えるベクタープライムの言葉につぶやき――ギャラクシーコンボイは胸部装甲を開いてマトリクスを取り出し、ジャックプライムもそれにならう。
とたん、チップスクェアからの光に二人のマトリクスが反応した。逆にチップスクェアへと光を放ち、空きスロットへと流し込んでいく。
「さぁ、答えてくれ! 創造主プライマスよ!」
マトリクスを収納し、ギャラクシーコンボイが呼びかけ――
その時、突如としてドーム全体が鳴動を始めた。
続き、祭壇から床をはうように光のラインが走り、ドームの壁面を駆け上がっていく。
それに呼応するように壁一面の紋様も輝きを放ち始め、ドームの中は状況を視認することも困難なほどの光に包まれる。
「ベクタープライム、これは……!?」
思わず振り向き、ギャラクシーコンボイが尋ねると、
「ぎ、ギャラクシーコンボイさん!」
気づいたなのはが声を上げると同時、祭壇は突如急上昇。そのまま天井へと突き刺さると、その一点を中心にまるで分解されるかのようにドームの天井が、外壁が消滅していく。
そして気づく――異変はドームだけではなく、周囲一帯――いや、セイバートロン星全体に及んでいた。ドームのあった地を中心に光が大地を駆け抜けていき、その軌跡に沿って大地が分かれていく。
「バックギルド、状況は!?」
尋ねるギャラクシーコンボイに、バックギルドはモニターを見つめて答えた。
「セイバートロン星が――割れていきます!」
「な、何なんだ、コイツは!?」
セイバートロン星全体を襲う異変――当然、その影響は潜伏しているギガストームら混成デストロンにも及んでいた。要塞モードのダイナザウラーのブリッジで、ギガストームが振動によろめきながら声を上げる。
「くっ、ダイナザウラー! 浮上だ!」
とっさに指示を下すのはオーバーロードだ。彼の指示でダイナザウラーは上空へと飛び立ち、地上の異変をやり過ごす。
「一体、何が起きている……!?」
「結局、阻止はできなかったようだな……」
「あぁ」
セイバートロン星の上空――声をかけるエルファオルファに、ドランクロンは静かにうなずいた。
「どうする?
このままでは、ヤツらに我らの主のことが知られることになるぞ」
「案ずる事はない」
ラートラータにそう答え、ドランクロンは鳴動を続けるセイバートロン星を見渡した。
「知ったところで……ヤツらは何もできぬさ。
スピーディア、アニマトロスの“鍵”はすでに我らの手中――いずれ地球のそれも手に入る」
その口調に迷いなどなかった。
「最後に笑うのは、我らが主だと決まっている」
「……………………」
アジトの外で、スーパースタースクリームはひとり虚空を見つめていた。
「…………ついに目覚めるか……」
そうつぶやく彼が見つめる先は、漆黒の宇宙に浮かぶ空間の歪み――
「となれば……こちらも動かねばなるまいな……」
つぶやき、スーパースタースクリームはきびすを返し、アジトの中に入ると設備の修理を続けていたノイズメイズに声をかけた。
「ノイズメイズ」
「何スか?」
「貴様の仲間にランページとかいうヤツがいただろう」
「………………」
その言葉に、ノイズメイズは思わず動きを止めた。
クルリと振り向き――尋ねる。
「……ヤツがどうかしたんスか?」
「いつでも連絡をつけられるようにしておけ。
状況次第では仲間に引き入れたい」
ノイズメイズに答え――スーパースタースクリームは胸中で付け加えた。
(これからのために、余計なイレギュラーは監視下に置いておかなければ、な……)
「そんな!?」
セイバートロン星が割れている――バックギルドの言葉に思わず声を上げる耕介だったが、異変は止まらない。あちこちで大地が割け、隆起し、その姿を変貌させていく。
「どうなってるんだ……!?」
志貴が周囲を見回してうめくと、ドレッドバスターがギャラクシーコンボイに詰め寄った。
「ギャラクシーコンボイ総司令官!
我々のしてきた事は、間違っていたんですか!?
セイバートロン星が割れていくなど、そんな……!」
「そうだ……! そうに違いねぇ……!」
ドレッドバスターの言葉は恐慌となって仲間達の間に広がった。その場に崩れ落ち、ライガージャックがうめく。
「……きっと間違ってたんだ……!
オレ達は……! オレ達は、故郷をぶっ壊しちまったんだ!」
「バカ野郎! 何言ってやがる!」
「だって、そうじゃねぇか!
間違ってなかったら、なんでセイバートロン星が割れちまうんだよ!?」
「ケンカはやめてよ、二人とも!」
エクシゲイザーに反論するライガージャック――口論に入ろうとした二人を止めたのは知佳だ。
「ギャラクシーコンボイ、どうすんだよ!?」
混乱を収拾できるのは彼しかいない――呼びかけるソニックボンバーだが、ギャラクシーコンボイもまた呆然としているのみで動かない。
「おい、ギャラクシーコンボイ!」
「ソニックボンバーさん、どいて!」
さらに詰め寄ろうとしたソニックボンバーを制止し、なのははレイジングハートをかまえ、
「気付け薬、いきます!」
〈Divine Buster!〉
「がはっ!?」
放たれた光の奔流が、ギャラクシーコンボイの顔面を叩く。
だが、結果としてギャラクシーコンボイは我に返った。気を取り直し、状況を認識するとドレッドバスターへと向き直り、
「ドレッドバスター、しっかりしろ! バックギルドも!
全サイバトロンに通達! 飛べる者は月へ、飛べない者はスペースブリッジへと避難だ!
私は上空で各員を誘導する――なのは、プリムラ。エリアサーチでサポートを頼む」
「はい!」
《合点承知、了解です!》
告げるギャラクシーコンボイの言葉になのはとプリムラが応え――
「総司令官……」
突如、ライガージャックが口を開いた。スーパーモードにトランスフォームしようとしたギャラクシーコンボイを呼び止める。
「オレ達は……間違っていたんですか……!?」
「そんなはずはない」
そう答えたのはファングウルフだった。うつむいたままのライガージャックの両肩をつかみ、自分と正対させる。
「だが今はそんなことを言っている場合じゃない。一刻も早く退避するんだ。
地上のメンバーはお前が先導するんだ――セイバートロン星出身のトランスフォーマーの中じゃ、スピードならエクシゲイザーだが、この悪路でもっとも問題なく先行できるのはお前だ」
「あ、あぁ……!
アルクェイド!」
「えぇ!」
ファングウルフの言葉に、ようやくライガージャックの顔に生気が戻った。ビーストモードにトランスフォームすると、アルクェイドを乗せて走り出す。
「みんな、急げ! こっちだ!」
「おぅ!」
ファングウルフが応えて追走、ニトロコンボイやオートボルト、ダイノボット、プロテクトボット――最後にバンガードチームが殿を務める形で地上メンバーはスペースブリッジを目指す。
だが――周囲では大地が次々に割け、隆起し、沈下している。留まるのは危険だが、かと言ってむやみに駆け抜けるのも危険な状態だ。
そんな中――
「ぅわぁっ!?」
「きゃあっ!?」
オートボルトが大地の裂け目に捕まった。ライドスペースに座るエリスと共に地割れに飲み込まれ――
「危ない!」
それを救ったのは上空にいたメビウスショットだった。ビーストモードやジェットモードでは引き上げられないと瞬時に判断。ロボットモードで落下するオートボルトの下に回り込むと、オートボルトを受け止めて地上に向けて飛び上がる。
そのまま大地に降り立――とうとするが、メビウスショットの着地点もまた音を立てて裂けていく!
「メビウスショット!」
「く――――っ!」
このままでは地割れの底に真っ逆さまだ。美由希の言葉にメビウスショットが舌打ちし――突然、その身の落下が止まった。
自分の背中にウィンチを引っ掛け、落下を食い止めてくれたのは――
「ライブコンボイ! 真一郎さん!」
「すまぬでござる――助かり申した!」
「お礼ならいいよ」
「救助はボク達の仕事だからね」
声を上げる美由希とメビウスショットの言葉に、真一郎とビークルモードのライブコンボイは笑いながらそう答えた。
一方、飛行可能メンバーはそのまま上空へ。すでに上空に退避していたグランダス、アースラの甲板の上に降り立つ。
「グランダス! 地上のみんなを拾いに行けないの!?」
「ムリだ。こうも激しく大地が姿を変えていては……!」
尋ねるさつきにグランダスが答えると、
「ち、ちょっと待って!」
グランダスの甲板上で、飛行するために合体を遂げていたキングコンボイが声を上げた。
割れていくセイバートロン星の姿をしばし観察し――
「…………これって……まさか……!?
グランダス、上昇して! セイバートロン星全体を見通せるまで!」
「あ、あぁ!」
キングコンボイの指示で、グランダスはそのまま上昇していき――全員が気づいた。
地上から見ると多大な変化だった大地の変動だったが、この高度から見ると変化自体はシンプルなものだった。北半球が極点周辺と東西の三つに分かれ、左右の区画が内部のアームに導かれてやや上方にスライドしている――
「これって……まさか……!?」
「うん……!」
気づき、つぶやくフェイトに、キングコンボイはうなずく――
と、今度は南半球が動き始めた。大きく展開されると展開したアームを起点に180度回転。左右二つに分割される。
「……そんな……!?」
アースラのブリッジでも、異変の正体を察していた。リンディが呆然とつぶやき、エイミィもまたコンソールに視線を落とし、
「これは……セイバートロン星が……!」
最後に動くのは各部の移動の起点となった赤道周辺――中心部から分かれ、展開されたのは紛れもない、人型の両腕――
「まさか……!」
うめくギャラクシーコンボイの傍らで――なのははつぶやいた。
「セイバートロン星が……!」
「トランスフォームしてる……!?」
最後に頭部が現れ――セイバートロン星は変化を終えた。
そう――プラネットモードから、ロボットモードへのトランスフォームを。
「あ、あれは……!?」
未だに自分の目が信じられない――驚愕の変形を遂げたセイバートロン星を前にギャラクシーコンボイがつぶやき――そのつぶやきにはベクタープライムが答えた。
「間違いない。
あれは――いや、“あの御方”は――」
「創造神――プライマスだ」
(初版:2007/01/07)