「間もなく、セイバートロン星の座標への転送可能距離に入る。
通常空間に復帰する――衝撃に備えるんだ」
「おぅ!」
艦長席に座るフォートレスの言葉に、ヴィータは元気よくうなずいて自分の席に着く。
「早いトコはやてを助けなきゃいけないんだ――高町達が相手だろうと、今度はもう容赦しねぇ!」
「………………」
宣言するヴィータだが――シグナムは反応を示さない。じっと正面を見据えたまま黙り込んでいる。
「…………シグナム?」
「……ん?
あぁ――どうした?」
シャマルの呼びかけにようやく反応したシグナムに、ヴィータとザフィーラは思わず顔を見合わせる。
「どうしたんだよ?
ボンヤリするなんて珍しい」
「いや……別に、何でもない」
ヴィータに答えるシグナムの言葉に、ザフィーラはうなずき、告げた。
「やはり……やり辛いのはシグナムも同じか」
「まぁ……成り行きとはいえ、何度も共闘した仲だものね……」
「そうだな……」
ザフィーラの、そして同意するシャマルの言葉にうなずき、シグナムは改めて前方へと視線を向けた。
「だが――それでも退けないのだ。我々は……!」
「……あぁ。
なんとしてもプラネットフォースを手に入れ――はやてを救わなければな……」
シグナムの言葉にスターセイバーが同意し、彼らを乗せたマキシマスは通常空間にその姿を現し――
『な………………っ!?』
その姿を目の当たりにし、絶句した。
「な、何なんだ、あれは……!?」
呆然とつぶやくシグナムの前で――プライマスは静かに宇宙空間に佇んでいた。
第55話
「歴史の裏の真実なの」
「すぐそばから見ると、どう見たって惑星の表面だよね……」
「けど……」
声をかけるなのはに、彼女とフェイトを乗せてかつての地表のすぐ上を飛ぶキングコンボイはうなずき、上昇し――プライマスの全貌が見通せる場所まで後退した。
「未だに信じられないよね……」
「うん……
このセイバートロン星そのものが、トランスフォーマーだなんて……」
フェイトの言葉になのはがうなずき、彼らは改めてプライマスの威容を見渡す――
セイバートロン星からのメッセージに従い、プラネットフォースをセットしたとたん、突如セイバートロン星からその姿を変えたプライマス――
事態を把握すべく、ギャラクシーコンボイ達は時空管理局本局にいるホップ達を呼び戻し、聖地跡において、彼らを通じプライマスとコンタクトをとることにした。
「準備は完了したか?」
「もう間もなくです」
「機材の配線は完了。後はシステムの立ち上がりを待つだけ、と……」
尋ねるギャラクシーコンボイに、バックギルドとパーセプターは機材の準備を進めながらそう答える。
「プライマスと話ができるなんてね……」
「どんな話が聞けるんでしょうか……?」
準備が進むのを待ちながらリンディとエイミィがつぶやくと、
「………………ん?」
ふと、士郎はトランスフォーマー一同がずいぶんとかしこまっているのに気づいた。
「どうした? みんな。
緊張しているみたいだが」
「そりゃ、緊張もしますよ」
尋ねる士郎に、ホットスポットは肩をすくめて答える。
「まさか、創造主の御前に立つことがあるなんて思ってませんでしたからね……」
「あぁ……」
となりでうなずくのはライガージャックだ。
「こんなカッコでいいのか? オレ達……」
「バチが当たらなければいいが……」
「野性丸出しのビーストタイプだもんね、二人とも……」
そのさらにとなりでファングウルフが同意するのを聞き、アリサが思わずつぶやくと、
「ギャラクシーコンボイ」
ワープを利用してホップ達を迎えに行っていたベクタープライムが戻ってきた。彼らだけでなくユーノやトゥラインと共にギャラクシーコンボイ達の元に降り立つ。
「どうしてホップを?」
「そっか……あの時はまだ、ライブコンボイさん達はいなかったんだよね?」
「前に、アニマトロスのプラネットフォースをチップスクェアにセットした時、ホップがプライマスの言葉を代弁してくれたんです」
尋ねるライブコンボイの言葉に思わず納得し、なのはとフェイトはその時のことを思い出しながらそう説明する。
「これで、何かわかるといいんだが……」
「もう、心配性だね、恭也くんは」
今は少しでも情報が欲しい――つぶやく恭也に、知佳は笑いながら告げる。
「相手はこの宇宙を作った全知全能の神サマなんだよ。
きっとグランドブラックホールから宇宙を救う方法だって教えてくれるよ」
「……そうですね」
知佳の言葉にようやく恭也は笑みを浮かべ――ちょうどホップが自身へのコードの接続を終え、すべての準備が完了した。
「では、始めよう」
「了解」
告げるギャラクシーコンボイにバックギルドがうなずき、システムを起動。プライマスの背に現れた巨大なチップスクェアにエネルギーを流し込み、活性化させる。
「私の声が聞こえますか? プライマス」
そして、ギャラクシーコンボイが呼びかけ――プライマスの瞳に輝きが生まれた。とたん、ホップが光に包まれ、宙に浮かび上がる。
「あの時と同じだ……!」
かつてアニマトロスのプラネットフォースをチップスクェアにセットした時とまさに同じ現象だ――アルフがつぶやくと、ホップが口を開いた。
《……諸君。
私のメッセージに応えてくれたこと――感謝している》
ただ、以前とは違い、今回の声はずいぶんとハッキリしている。やはり覚醒レベルの違いからだろうか。
明確に意思を示したプライマスに対し、その場の全員が居住まいを正す中、ギャラクシーコンボイはホップに――プライマスの意識へと語りかけた。
「おうかがいしたいことが、山ほどあります。
答えていただけますか? プライマス」
《何でも聞きたまえ》
「では……全宇宙を破滅へと向かわせる、このグランドブラックホールはどうして生まれたのですか?」
その問いに、プライマスはしばし沈黙し――
《……今ではない、別の時代の話だ》
そう言うと同時、プライマスの宿るホップの身体から光が放たれ――彼らはいつかと同じく、虹色に輝く宇宙空間のような不思議な世界にその身をゆだねていた。
プライマスが一同の脳裏に直接イメージを投影しているのだ。
そして――頭上の空間が変化した。赤色と青紫色、二つの輝きが現れる。
《その誕生以来、宇宙は善と悪、二つの力が拮抗して成り立っていた……》
「赤が善、青紫が悪ですね……」
「ちょうど、サイバトロンとデストロンのシンボルの色ですね」
《そうだ》
ベクタープライムとリンディのつぶやきにうなずき、ホップの身体を借りたプライマスは続ける。
《創造神たる私、プライマスと、対を成す破壊神……》
「破壊神……?」
その言葉になのはが首をかしげると、
「……“ユニクロン”……ですね?」
そう尋ねたのはユーノだった。
「ユーノくん、知ってるの?」
「名前を知ってる、くらいだけどね。
“闇の書”について調べる片手間に、プラネットフォースの手がかりも無限書庫で調べてみたことがあったんだけど……その時に、プライマスと対となる神の資料が見つかったんだ。
それがユニクロン……記録によれば、二人は元々創造と破壊、両方を司っていた――けど、時が経つに連れ、ユニクロンは破壊に、プライマスは創造にその特性を変化させ、互いにバランスを取るようになった……」
《その通りだ》
なのはに答えるユーノに、プライマスは肯定を示した。
《私とユニクロン――それぞれは互いに反発し、争い合いながらバランスを保っていた。
そして先の戦いには、我が方が勝利した。
眩き勇者、そして清き勇者――キミ達と同じようにマトリクスを持つ者によってユニクロンは封じられ、宇宙は創造された……》
プライマスが告げるとイメージにも変化が現れ、悪を示す青紫の光が消えていく。
「つまり……悪は滅びた、ということか……」
「そうなのだ!
やっぱり正義は勝つのだ!」
つぶやくドレッドバスターに美緒が告げると、
「そうでもないんじゃないかな?」
そうつぶやいたのはアリサだった。
「だって、今の話だと、プライマスとユニクロンは互いに存在することでバランスを保ってたのよね。
けど、その内の一方が消えちゃったら、バランスが崩れちゃうでしょ?」
「えっと……どういうこと?」
「こういうことさ」
首をかしげるゆうひに答え、オートボルトは胸のライトを点灯、彼女を照らし、
「光があれば影ができる――それと同じさ。
使い古された例えだけど、わかりやすいだろう?」
「つまり……プライマスとユニクロン、両方が存在せぇへんと宇宙は成り立てへんってこと?」
「そういうこと」
耕介がゆうひに答えると、ニトロコンボイがプライマスに尋ねた。
「確かにユニクロンは倒れた――しかし、完全に滅びてはいなかった、ということですね?」
《その通りだ。速き勇者よ。
ユニクロンの持つ闇のエネルギーは時空を超えて拡散し、やがて別の時代に新たなユニクロンとして再生する。
そうして、長いスパンの中で私とユニクロンの均衡は保たれてきた。だが――》
そう答え、プライマスは一度言葉を区切り、
《……だが、ここにきてそのサイクルに異変が生じたのだ》
「異変、とは……?」
《すべては、スペースブリッジ計画にその端を発している》
尋ねるギャラクシーコンボイに答え、プライマスは続ける。
《ユニクロンを封じた勇者は、ユニクロンのスパークを分割した。
そう――スペースブリッジ計画のために私のスパークをプラネットフォースとして分割したようにだ。
そして、ユニクロンのプラネットフォースを、私のプラネットフォースと共に宇宙へと送り出した。
そうすることで、ユニクロンにとって『存在していながら活動できない』状態を作り出した――同時に、私のプラネットフォースがユニクロンのプラネットフォースの力を押さえ込み、その復活を遅らせる効果をももたらした。
ユニクロンの復活を抑えるアンチシステムの構築――それがスペースブリッジ計画に隠された、もうひとつの目的だったのだ》
「では、それぞれの星にはプライマスのプラネットフォースだけでなく、ユニクロンのプラネットフォースもある、と……?」
《そうだ。高き勇者よ》
ライブコンボイの問いに、プライマスはそう言ってうなずいてみせる。
「そうか……それで合点がいったぜ。
スカージやオーバーライドがギガストームとオーバーロードにどうやって転生したのか、結局わからずじまいだったが……」
「スピーディアかアニマトロス、あるいはその両方か……封じられていたユニクロンのプラネットフォースを手に入れていたのか!」
ライガージャックとエクシゲイザーが納得してうめくと、プライマスは話を再開した。
《だが……そこに問題が発生した。
ユニクロンのプラネットフォースの数は私のものと同じ……すなわち、5つのプラネットフォースとチップスクェアの6つだ。
だが、その内のひとつが、ある者によって吸収されてしまったのだ。
そのため、ユニクロンの存在維持は阻害され、全宇宙のバランスは崩れてしまった……その影響が、その者の存在しているこの時代に歪みとなって顕れたのだ。
それこそが、グランドブラックホールの正体だ》
「ある者……?」
「ユニクロンのスパークを……吸収……?」
プライマスの言葉になのはとフェイトがつぶやくと、
「グランドブラックホールができたワケはわかりました。
じゃあ……それを消滅させる方法は?」
《それは私の仕事だ》
尋ねるリンディに、プライマスはそう答えた。
《そのために――5つのプラネットフォースに分け与えた、私のスパークを取り戻すのだ》
「と、取り戻せって言われても……」
そのプライマスの言葉に、真一郎は思わずライブコンボイと顔を見合わせる。
「プラネットフォースに宿るプライマスのスパークのいくらかは、スタースクリームに吸収されてしまったし……」
「それに、プラネットフォースもまだ3つ……
ジュエルシードをそろえなければならないミッドチルダのものはウィザートロンをどうにかするしかないし、最後のひとつに至っては在り処すら不明のまま……」
相槌を打つニトロコンボイにライブコンボイがうなずくと、
「マップさえ取り戻せれば……!」
悔しげにつぶやくのはベクタープライムだ――やはり、自分がかつてプラネットフォースの在り処を示したマップを奪われたことに責任を感じているのだろうが――
「マップを取り戻して――それでホントに探せるの?」
「そのマップを持っていた、スタースクリームやマスターメガトロンだって探し出せなかったんだぜ」
そんな彼に、美緒とロディマスブラーが異論をはさむ。
と、そこへハイブラストが口をはさんだ。
「けど……それもおかしな話ですよね?
次元世界を隔てているのはミッドチルダだけで、もうひとつの惑星はこちらの次元世界にあったはず……チップスクェアから推察されるプラネットフォースの配置図が四角錘を示していることからも、それは十分に推理できます」
「底辺を成す4つの星は、すべて同一の次元世界にあることを示す、と?」
聞き返すノエルにうなずき、ハイブラストは続ける。
「となれば……マスターメガトロンもスタースクリームも、最後の星を見つけ出すことは十分に可能だったはずです。
なのに探し出せなかった……何か別の要因によって、その座標から動いてしまった――そうは考えられないでしょうか?」
「しかし、そうだとしたら、何があったんだ?」
ハイブラストの言葉にギャラクシーコンボイが尋ねると、彼らの目の前が変化し――ある光景が映し出された。
4人のトランスフォーマーがいる。彼らが囲んでいる台座に描かれているのは――
「アトランティスの、紋様……?」
「いや……その真上に光点があることを考えると、アレはアトランティスの紋様の元となった、スペースブリッジの設計図でしょう」
つぶやくエイミィにパーセプターが答えると、再び映像が切り替わり、今度は宇宙空間が映し出された。
漆黒の宇宙をゆっくりと進むそれは――
「アトランティス!?」
「それに、同じような艦も……」
「ということは……これは、スペースブリッジ計画の移民船団か……?」
知佳と美由希、そして恭也が声を上げると、アトランティスを始めとしたスターシップはそれぞれの星に向かっていく。
地球、アニマトロス、スピーディア、時空を超えてミッドチルダにも。
そして――
「あれか……?」
つぶやき、美沙斗が見据えるその先で、最後のスターシップは巨大なリングを有する惑星へと向かっていく。
だが――異変はその時起こった。
今まさにその惑星に降下しようとしていたスターシップだったが――突然、その惑星がスターシップごと消滅したのだ。
「どうしたの?」
「消えちゃった……」
エリスが、そして都古がつぶやくと、プライマスが答えた。
《時空の狭間に、惑星ごと飲み込まれてしまったのだ》
「時空の狭間に……?」
「宇宙の膨張の代償だよ」
首をかしげるなのはに、ジャックプライムはそう答えて説明した。
「なのはもSFとか見てたら、宇宙が常に広がり続けてるっていうのは知ってるでしょ?」
「うん……」
「全体から見れば、その広がりはゆっくりしたものだけど――ある一ヶ所の観測点においては、そのスピードはものすごい速さになる。
いくら柔らかいゴムだって、急に引っ張ったりしたら千切れちゃうでしょ? それと同じ。広がり続ける空間の膨張スピードに空間の強度が耐え切れなくなって、ワームホールって形で別の次元世界につながる穴を作っちゃうの」
「それに、最後の星も飲み込まれちゃった、ってこと?」
「たぶんね」
「つまり、別の次元世界に移行してしまった、ということか……
だから、マスターメガトロンも、スタースクリームも最後の惑星を探し出せなかったのか……」
「この宇宙にない星だからな。
オレ達がミッドチルダのプラネットフォースに気づけなかったのと同じ理屈だろ?」
なのはに答えるジャックプライムの言葉に、クロノとソニックボンバーは思わず顔を見合わせてつぶやく。
「どうしましょうか……?」
「やはり、鍵はその星の場所だ」
ギャラクシーコンボイに尋ねるファストガンナーに、ベクタープライムが答える。
「その星の場所、って……
あのね、その星の場所がわからなくなったから、困ってるんじゃないか」
そんなベクタープライムに真雪が反論すると、その言葉にベクタープライムは思わず苦笑し、
「言い方が足りなかったな。
『今の場所』ではない――その星が『元々あった場所』だ」
「元々あった場所、ですか……?」
聞き返す那美に、ベクタープライムはうなずいて続ける。
「いくら次元を超えてしまったと言っても、その惑星は元々こちらの世界にあった星だ。
その惑星の元々あった場所がわかれば、その惑星を飲み込んだワームホールの位置を特定することも可能だ」
「よし。
プライマス、その最後の星の場所は――」
「あぁっ!?」
尋ねるギャラクシーコンボイの言葉は、バックギルドの上げた声によってさえぎられた。
「どうした?」
「プライマスのパルスに乱れが……!」
ギャラクシーコンボイに答え、バックギルドは手元の端末に表示されたプライマスとホップの同調データをにらみつける。
「このままでは、プライマスの意識が途切れます!」
「仕方あるまい。
プライマスの意識も、完全復活には程遠いのだからな」
「うむ……」
バックギルドに告げるベクタープライムの言葉に、ギャラクシーコンボイは質問を変えることにした。
「ではプライマス、最後にもうひとつだけ。
その星の名前を、教えていただけますか?」
ホップの身体を包み込む輝きが消えていく中、ギャラクシーコンボイが尋ね――プライマスは答えた。
《その星の名は……
…………“ギガロニア”……》
その言葉を最後に、周囲の空間は元に戻った。プライマスとホップのリンクが切れ、彼らに送られていたイメージが途切れたのだ。
だが――
「ギガロニア、だと……!?」
そんなことも気にならないほど、ベクタープライムはプライマスの言葉に驚きの色を見せていた。
「まさか、ギガロニアだったとは……!」
「その星、知ってるの?」
いつも冷静なベクタープライムがここまでうろたえるとは――アリサと顔を見合わせ、すずかが彼に尋ねると、ベクタープライムは静かにうなずいた。
「あぁ、知っている。
その星は、ホップ、ブリット、バンパー、そしてルーツ――“彼らマイクロンの故郷”だ」
『………………えぇぇぇぇぇっ!?』
ベクタープライムの言葉は、一同に驚きの声を上げさせるのに十分な衝撃を持っていた。
「サイクロナス、ノイズメイズ、スナップドラゴン、エイプフェイス。
ワイルダー、キャンサー、ブルホーン――そしてクロミア。
以上のメンバーはオレと共にセイバートロン星に向かう」
部下達を集め、スーパースタースクリームは同行するメンバーを選出してそう告げる。
「えー? オレは留守番っスか?」
「当たり前だ。
貴様にはこのアジトの修理の陣頭指揮を執ってもらわなければならないからな」
うめくラナバウトにスーパースタースクリームが答えると、
「スタースクリーム!」
声を上げ、フィアッセがその場へと駆けてきた。
「セイバートロン星に行くつもり!?」
「当然だ。
オレ達の求めるプラネットフォースは、今はあの星にあるのだからな」
「けど……!」
スーパースタースクリームの答えに、反論の声を上げるフィアッセだが――
「フィアッセ」
「………………っ!」
スーパースタースクリームに強い口調で名を呼ばれ、フィアッセは思わず口をつぐんだ。
しばし、二人の間に重い空気が流れ――スーパースタースクリームは息をつき、告げた。
「今回、お前は連れて行かない。
やりたいことがあるなら好きにしろ」
「教えて!
ホップ達の故郷はどこにあるの!?」
「さ、さぁ……
どこ、と言われましても……」
スカイドームの指令室――尋ねるアリサに、ホップは困惑しながらそう答えた。
「覚えてないの?」
「というより……“わからない”んです」
なのはの問いに答え、ホップはベクタープライムへと視線を向ける。
その視線から彼の意図を汲み取り、ベクタープライムは説明を始めた。
「私が時空を旅していた時のことだ――ポッドに搭乗して漂流していたホップ達を見つけてね。保護したのだ」
「それが、ベクタープライムとホップ達の出会い?」
「えぇ。
あの時はありがとうございました」
尋ねるフェイトの言葉に、ホップはそう答えてベクタープライムに礼を述べる。
「しかし……どうして漂流していたんだ?」
やはり『漂流』と聞いてはレスキューチームの一員として気になるのか、ホットスポットが尋ねるが、ホップはバツが悪そうにしばしためらい、
「実は……仲間達とかくれんぼをしていまして……
ポッドの中に隠れたまではよかったのですが、うっかり何かのスイッチを入れてしまったようで……」
「で、ポッドが射出されて漂流するハメになった、か……
それじゃ、迷子になっても当然か……」
毒気を抜かれ、耕介がため息まじりにつぶやくと、今度はジャックプライムがホップに尋ねた。
「ねぇねぇ。ギガロニアの人達って、やっぱりホップくん達みたいに小さいの?」
「いえいえ。普通のトランスフォーマーもおりますです。
ただ……みなさんよりも、少々体格のおよろしい方々で……」
「つまり、2形態あるということか……」
「我輩達がアニマトロスの環境に適応して、特殊な進化を遂げたのと同じ現象なのだろうか……」
ホップの答えにファストガンナーとブレイズリンクスがつぶやくと、
「はーい、しつもーん」
手を挙げて尋ねるのは忍だ。
「そういえばすっかり忘れてたんだけど、スピーディアのプラネットフォースは“駆動”の力でビークルモードを強化して、アニマトロスのプラネットフォースは“生育”の力で、トランスフォーマーをビーストモードって形でアニマトロスの環境に適応させたわよね?
じゃあ……地球とミッドチルダは? 見た感じ、ビーストモードのアニマトロスや2形態に分かれたギガロニアみたいに特殊な進化はしてないっぽいけど」
「やれやれ、プロテクトボットやダイノボットの合体能力を忘れてないかい?」
忍の問いに、ライブコンボイは肩をすくめ、ジャックプライムと共に答える。
「地球のプラネットフォースの力は“融和”――その力の加護の元に生まれたボク達は、生まれながらにしてコンビネーションスパークを持つんだ。
リンクアップナビゲータと同じ効果がある、と言えばわかるかな?――もちろん、合体にも相性があって、誰とでもできる、というワケじゃないけどね」
「ボクらミッドチルダのプラネットフォースは“啓蒙”だね。
その名の通り精神を高める力――ボクらのスパークのリンカーコア適性が高いのもそのおかげなの」
「へぇ……
じゃあ、ギガロニアのプラネットフォースの力は何かしら? 2形態に分かれたのだって、何か理由があるはずよ」
「うーん……
大きい人達は、マイクロンのみんなを危険から守るために大きくなった、とか!」
「あのね、なのは――バックギルド達でさえ踏んじゃいそうなのよ。
それよりも大きい人達じゃ、守るどころかマイクロンのみんなが危険じゃない」
忍の問いになのはやアリサが声を上げるのを眺めながら、ガードシェルはファストガンナーに尋ねた。
「しかし……どうする?
ホップ達はギガロニアの場所を知らないようだが……」
「知らないワケではないだろう。
メモリの中には、ちゃんとデータは残っているはずだ」
答え、ファストガンナーはホイルジャックと視線を交わすとホップの元へと歩み寄る。
「………………はい?」
思わず首をかしげるホップに、二人の顔に怪しい笑みが浮かんだ。
「ちょぉーっと痛いかも知れないけど……」
「調べさせてもらうよ♪」
「え? ち、ちょっとぉ!?」
どことなく楽しそうに告げる二人を前に、ホップは思わず後ずさる――その光景を前に、なのは達は一斉に視線を動かし――
「………………何?」
一同の視線を受け、すでに機材を用意して手伝う気マンマンの忍は首をかしげてみせた。
「あれは一体、何なんだ?」
「わからない。
あんな巨大なトランスフォーマーは見たことがない」
尋ねるシグナムに、フォートレスはそう答えて採取したデータの解析を進めていく。
「ただ……あのトランスフォーマーのいる座標はセイバートロン星のあった座標と一致する。
セイバートロン星と、何らかの関係があると思っていいだろう」
「セイバートロン星と……?
何だよ、そんな言い方だと、まるでセイバートロン星がトランスフォームでもしたみたいな言い草じゃないか」
「おいおい、いくら何でもそりゃないだろ」
フォートレスに告げるヴィータの言葉に、ビクトリーレオが笑いながら告げるが――
「……本当にそう思うかい?」
『え………………?』
フォートレスの言葉に、ビクトリーレオとヴィータは思わず声を上げた。
と、傍らでザフィーラとアトラスがつぶやくように告げた。
「あのトランスフォーマー……各部に球を思わせる曲線がある」
「可能性、否定できず」
「おいおい、待てよ。
まさか、ホントにセイバートロン星があのトランスフォーマーにトランスフォームしちまったってのか!?」
ザフィーラとアトラスの言葉に、ビクトリーレオは思わずそう声を上げる。
「…………どう思う? スターセイバー」
尋ねるシグナムに、スターセイバーはしばし考え、
「……表面に降りてみよう。
あのトランスフォーマーが本当にセイバートロン星だとすれば――ギャラクシーコンボイ達がいるはずだ」
「マスターメガトロンのヤツ……バカな死に方しやがって……!」
セイバートロン星付近の宙域――グランドブラックホールの超重力によってねじ切られたスペースブリッジの終端で、フレイムコンボイはポツリとつぶやいた。
「だが……無駄死ににはせん……!
貴様の仇は、必ずとってやる!」
決意を言葉にして――フレイムコンボイは振り向き、そこにいたガスケット達やデモリッシャーに告げた。
「おい、野郎ども!
今からデストロン軍の指揮は、このオレが執る!」
「おいおい、勝手に決めんなよ!」
「誰もお前がリーダーだなんて認めてないんだな!」
フレイムコンボイの言葉に、当然のように反対を表明するのはランドバレットとガスケットだ。
「はんっ! それならこの中で唯一転生してるオレ様だろうが!」
そして、インチプレッシャーもまたリーダーに立候補するが、
「ゴチャゴチャうるせぇ!
フォースチップ、イグニッション――デスフレイム!」
そんな彼らに、フレイムコンボイがキレた。3人まとめてデスフレイムをお見舞いする。
「うわちゃちゃちゃちゃぁっ!?
やってくれちゃったな、このヤロー!」
デスフレイムからあわてて逃げのびると、ガスケットはフレイムコンボイへと向き直り、
「上等だぜ!
だったら、誰がリーダーか、バトルロイヤルで決着をつけようじゃねぇか!」
「おぅ、いいとも!」
応え、フレイムコンボイはビーストモードにトランスフォームし――ランドバレットとインチプレッシャーがガスケットに耳打ちした。
「ガスケット、勝ち目なんかあるのか?」
「相手はフレイムコンボイの旦那だぜ」
「バーカ、だからバトルロイヤルなんだよ」
二人に答え、ガスケットは笑みを浮かべ、
「一番強いヤツは、袋叩きでさっさと退場してもらうのさ」
「あー……」
「なるほど……」
ガスケットの言葉に、納得した二人は彼と共にフレイムコンボイへと振り向き――
『ナイスアイデア♪』
ニヤリと笑みを浮かべ、すぐさまフレイムコンボイを包囲する。
「お命ちょうだい!」
「とっとと消えるんだな!」
「リーダーは、オレだぁっ!」
口々に声を上げ、フレイムコンボイに襲いかかるガスケット達――仲間割れの光景を前に、デモリッシャーは肩をすくめた。
「まったく……なんて勝手な連中だ!」
言うと同時、デモリッシャーはビークルモードへとトランスフォームし、
「もうついて行けん!
オレは抜けさせてもらう!」
もみくちゃに取っ組み合うフレイムコンボイ達に言い放ち、デモリッシャーは地球に向けてスペースブリッジを走り去っていった。
「驚きましたね……
まさか、セイバートロン星がトランスフォームしちまうなんて……」
「あぁ……こんなドッキリ大仕掛けが、この星に仕込まれていたとはな」
戦艦形態で宇宙空間を漂うダイナザウラーのブリッジで、ギガストームはメナゾールの言葉にそう答えた。
「どうします? ギガストーム様」
「惑星の表面、かなり激しく動いてて……ギャラクシーコンボイやあの小娘達の居場所、わかんなくなっちまいましたよ」
ウィアードウルフとスカルの言葉には、オーバーロードが答えた。
「しばらくは様子見だ。
他の勢力も、この事態に気づけば黙っていまい――いずれ、どこかがサイバトロンとぶつかるはずだ。
お前らも、すぐに動けるよう戦闘準備を怠るな!」
『了解!』
その頃、スカイドームでは――
「や、やめてください!
く、くすぐったいです! あははははっ!」
ホイルジャックによって抑えられ、ファストガンナーのスキャンを受け、ホップはくすぐったさを覚えて思わず声を上げる。
そんな彼らから視線を外し、アリサはバックギルドに尋ねた。
「ねぇ、バックギルド。
ブリットやバンパーのメモリは調べなくてもいいの?」
その言葉に、びくぅっ! と怯えるブリット達だったが――
「調べてもムダだと思うな」
対して、バックギルドは肩をすくめてそう答えた。そのとなりで、トゥラインが説明する。
「さっきの話では、ポッドを操作したのはホップのようですからね。
その様子を把握していないブリッド達では、ポッドがどう射出されたのかもわかっていないはずです」
「なんだ、そうなの」
当てが外れたとばかりにアリサが肩を落とすと、ギャラクシーコンボイがホップのスキャンを続けるファストガンナーに声をかけた。
「どうだ? ファストガンナー」
「それが、ホップの記憶装置、かなり複雑にできていて……
身体が小さい分、そうしなきゃ収まらないから、当然といえば当然なんですが……そのために、論理的ではない発想の飛躍ができ――」
「って、何言ってるかサッパリなんだけど?」
「すみません……ウチも機械は少し弱くて……
もう少し、わかりやすく説明してもらえないでしょうか?」
答えるファストガンナーの説明についていけず、真雪と薫が救援を求めると、知佳がそんな二人に答えた。
「えっと……つまりね、頭の中身の作りは、トランスフォーマーよりも私達人間に近いってことなの」
告げる知佳だったが、真雪も薫もただ首をかしげるのみ――そんな二人に苦笑し、知佳は説明し直した。
「んー、じゃあ……トランスフォーマーの人格っていうのは、スパークに宿ってる精神が個性を作ってるだけで、基本的なところは地球の機械と同じでプログラムに従って動いてるの――そこまではわかる?」
「あぁ、それなら、前にガードシェルに説明してもらったことがある。
つまり、トランスフォーマーの頭ン中の仕組みは、突き詰めてくとそこらのパソコンと変わらないってことだろ?」
「そういうこと」
確認する真雪にうなずくと、知佳はホップ達へと視線を向け、
「けど、ホップくん達の場合、記憶を管理してる部分が複雑にできてるせいでデータの処理まで複雑になっちゃってて……けど、逆にそのおかげでプログラムっていう基本の論理に当てはまらない考え方ができるようになってるの。
記憶システムが思考システムに影響を与えてる――って言うと難しいけど、わかりやすく言うなら、人格プログラムよりも記憶が元になって、ホップくん達は人格を作ってるの」
《なるほど……
記憶の積み重ねで人格を形成する――確かに人間と通じる部分がありますね》
説明を聞く薫の傍らに現れて告げるのは金髪、盲目の女性――彼女の持つ霊剣に宿る霊“十六夜”である。
と、彼女達の傍らで恭也もまたうんうんとうなずき、
「あー、なるほど……
つまり、ホップ達は、人間と同じような仕組みで経験を学習していく、と……」
「恭也くんも、わかってなかったんだね……」
どうやら彼も今の説明で納得したひとりらしい――恭也の言葉に、知佳は思わず苦笑する。
「ですから、メモリーの解析には時間がかかるかと……」
「……仕方あるまいな」
締めくくるファストガンナーの言葉にギャラクシーコンボイがつぶやいた、その時――突然警報が鳴り響いた。
「どうした!?」
「レーダーに反応!」
すかさず尋ねるニトロコンボイに、ほぼ同じタイミングでコンソールに飛びついたエイミィが告げる。
「この反応は……
……スーパースタースクリーム達です!」
「へぇ、アレがプライマスか……」
宇宙空間にその威容を示すプライマスの巨体を眺め、ジェット機形態のスナップドラゴンの上でエイプフェイスが感嘆の声を上げる。
「生きてるんですかね?」
「いや……まだ完全には覚醒していないようだ」
背の上でつぶやくつぶやくワイルダーに、ビークルモードのスーパースタースクリームはそう答える。
「プラネットフォースに込められていたスパークのほとんどを、この私に吸収されたからな。
今は、その消耗したスパークを回復させている段階だろう――つまり、今がチップスクェア奪還のチャンスだということだ」
言って、スーパースタースクリームはプライマスの肩口へと一直線に急降下。サイクロナスやスナップドラゴン、クロミアもそれに続く。
「目標、チップスクェア!
総員――攻撃開始!」
『了解!』
スーパースタースクリームの言葉に答え、ワイルダーらは彼らの背から降下。ロボットモードにトランスフォームしたスーパースタースクリームと共にプライマスの表面に降り立つ。
と――
「待て! スーパースタースクリーム!」
「ここから先へは行かせません!」
ギャラクシーコンボイとなのはが言い放ち、サイバトロン一同がスーパースタースクリーム達の前に立ちふさがる。
「おやおや、まぁたやられに来たのか?」
「ほざけ!」
ソニックボンバーに言い返すなり左腕からナル光線を一発――放たれた一撃を、ソニックボンバーや傍らのバンガードチームはとっさに散開して回避する。
「総司令官、チビスケども!
リンクアップだ!」
「あぁ!」
告げるソニックボンバーにギャラクシーコンボイがうなずき、
「フェイトちゃん!」
「ナビゲータを!」
「うん!」
なのはとクロノの言葉にうなずき、フェイトはリンクアップナビゲータを起動させた。
「いくよ――みんな!」
言って、フェイトがバルディッシュをかざし――その中枢部から光が放たれる。
その中で、ギャラクシーコンボイとソニックボンバー、二人のスパークがさらなる輝きを放つ。
『ソニックボンバー!』
クロノとソニックボンバーの叫びが響き、クロノをライドスペースに乗せたソニックボンバーはビークルモードへとトランスフォーム。そこから機首を後方にたたみ、主翼のバルカンシステムも展開。機体下部の装甲を展開して合体ジョイントを露出させる。
『ギャラクシー、コンボイ!』
次いでなのはとギャラクシーコンボイが叫び、なのはをライドスペースに乗せたギャラクシーコンボイがギャラクシーキャノンを分離。その両足にソニックボンバーの翼から分離した火器が合体する。
そして、両者が交錯し――
『リンク、アップ!』
4人の叫びと共に、バックユニットとなったソニックボンバーがギャラクシーコンボイに合体する!
最後にソニックボンバーの胸部装甲がギャラクシーコンボイの胸部に装着され、4人が高らかに名乗りを上げる。
『ソニック、コンボイ!』
「フラップソード!」
咆哮と共にフラップソードを抜き放ち、スーパースタースクリームへと突っ込むソニックコンボイだが、
「させるか!
フォースチップ、イグニッション!」
スーパースタースクリームは右腕のバーテックスブレードで対抗。ソニックコンボイを力任せに弾き飛ばす!
「く………………っ!」
「ソニックコンボイさん!」
「一斉射撃だ!」
うめき、後退するソニックコンボイになのはとクロノが告げ――ソニックコンボイのバルカンが、なのはのディバインバスターが、クロノのブレイズキャノンが一斉にスーパースタースクリームへと襲いかかる。
が――
「そんなもの――落ち着いて防御してしまえば!」
対し、スーパースタースクリームはバーテックスブレードでそれらの攻撃を薙ぎ払う!
「あー、もうっ!
エクシゲイザー! 目標、スーパースタースクリーム!」
「あぁ!」
なのは達を助けなければ――アリサの指示で狙いを定めるエクシゲイザーだったが、
「させるか!」
そこにエイプフェイスとスナップドラゴンが襲いかかった。そのままファストガンナーやバックギルドにも襲いかかり、バンガードチームと激しくぶつかり合う。
「ったく、性懲りもなく!」
「ほめ言葉と受け取っておくぜ!」
うめき、上空からビームを放つブロードキャストに答え、ワイルダーはロボットモードへとトランスフォーム。手にしたビームガンでブロードキャストを狙う!
「キングコンボイ! わたし達も!」
「うん!」
なのは達に加勢したいところだが、仲間達も援護しなければ――フェイトの言葉にうなずくジャックプライムだったが、
「………………あれ?」
ふと、頭上に見えたそれに気づいた。
隕石に乗ってこちらに向けて突っ込んでくるのは――
「あれって――フレイムコンボイ達!?」
「いてて、放せって!」
「放すんだな!」
結局、バトルロイヤルはフレイムコンボイの圧勝に終わった――フレイムコンボイの両肩の竜に咥えられ、ガスケットとランドバレットが声を上げる。
だが――フレイムコンボイはかまいはしない。そのまま、力任せにガスケット達をライブコンボイやベクタープライムに投げつける。そして――
「マスターメガトロンの、仇ぃっ!」
咆哮と共に跳躍。全体重を乗せてソニックコンボイに飛びかかる!
「ソニックコンボイさん!」
とっさに援護に向かおうとするなのはだったが、
「ほらほら、よそ見してんじゃねぇ!」
そんな彼女やクロノには、サイクロナスが襲いかかる。
「ガードシェル! 合体して、アイツをなんとかするんだ!」
「わかった!」
サイクロナスに襲われるなのは達の様子に、告げる真雪に答えたガードシェルはデバイスカードを取り出すが、
「私だっているのよ!」
彼らの前にはクロミアが立ちはだかり、ミサイルランチャーで攻撃を仕掛けてくる。
「このじゃじゃ馬め!
志貴!」
「あぁ!」
クロミアの乱入を前に、告げるドレッドバスターに志貴が答え、
『フォースチップ、イグニッション!
カートリッジシステム、Set Up!』
二人はフォースチップをイグニッション。背中のカートリッジシステムを起動し、
『ドレッドランチャー、エクスプロージョンアタック!』
放たれた閃光がクロミアの足元を爆砕し、
「このぉっ!」
「いっけぇっ!」
ライガージャックとアルクェイドが、二人がかりでクロミアをブッ飛ばす!
「フンッ、うまい具合に乱戦になったものだ……」
ソニックコンボイ達はフレイムコンボイの相手で手一杯――戦う相手もいなくなり、フリーになったスーパースタースクリームは笑みを浮かべてつぶやいた。
「これで、こっちとしてもやりやすくなった……
トランスフォーム!」
自分の目的を果たすなら今しかない――ビークルモードへとトランスフォームすると、スーパースタースクリームは上空へと飛び立つ。
(今後のためにも、貴様にはさっさと起きてもらわなければ話にならん!
全力でいかせてもらうぞ――プライマスよ!)
どうやら彼の目的において、プライマスの覚醒は必須事項のようだ――少々手荒だが力ずくでも起きてもらうべく、その顔面に一撃を加えようと、スーパースタースクリームは全身の火器を起動させる!
「選ぶがいい――目覚めるか、死するか!」
咆哮と同時、スーパースタースクリームの放った一撃がプライマスへと迫る!
「プライマスさん!」
フレイムコンボイに足止めされ、迎撃できない――思わずなのはが声を上げ――!
だが、その一撃がプライマスの顔面を叩くことはなかった。
間に割って入ったそれが、スーパースタースクリームの一撃を防いだからだ。
その正体は――
「プライマスの……腕が……!?」
「目覚めたの――プライマスさん!?」
プライマスの顔面を守るように動いたプライマスの腕――頭上を覆い尽くしたその巨大な腕を見上げ、ロングマグナスと那美が声を上げる。
「ようやくお目覚めか……
だが、このまますんなり帰っても不自然なのでな!」
一方、ようやく動きを見せたプライマスに対し、スーパースタースクリームはさらに一撃を加えるべく突撃し――
「――――――っ!」
気づいたが、反応は間に合わなかった。プライマスの振るった腕に直撃され、弾き飛ばされる!
「くっ、起こしてやったというのに、手荒い礼だな……!」
自分に“あの事実”を突きつけ、協力せざるを得なくしておいてやることがコレか――なんとか体勢を立て直し、スーパースタースクリームはロボットモードとなって苦笑する。
「だが、この方が自然の成り行きか!
ならば――とことん相手をしてやる!」
言うと同時、スーパースタースクリームはフォースチップをイグニッション。バーテックスブレードを装備し、プライマスへとその切っ先を向ける。
「どちらにせよ――今のオレに対抗できないようでは、貴様といえどこの先の事態には対処できん!
どこまで“力”を戻したか――試させてもらうぞ!」
咆哮し、突撃するスーパースタースクリームだったが――そんな彼に、無数のビームが襲いかかる!
プライマスの両足の超大型砲台が起動、一斉砲撃を開始したのだ。
「ま、まだまだぁっ!」
何発か直撃をもらった――それでも、スーパースタースクリームは止まらない。新たにバーテックスキャノンをかまえ、プライマスに攻撃を仕掛ける!
「何やってんだ? アイツぁ……?」
プライマスが突然動きを見せたことで、地上の面々は思わず戦いも忘れてその光景を見守っている――そんな中、フレイムコンボイはスーパースタースクリームの動きに妙な違和感を感じた。
殺気が感じられない。まるで芝居でもしているような――“神に逆らう愚か者を演じている”かのような――
「……ま、ヤツのことはどうでもいいか……
今は!」
自分の目的はスーパースタースクリームなどではない――呆然と頭上の戦いを見守るソニックコンボイを襲うべく、フレイムコンボイは地を蹴り――
「フォースチップ、イグニッション!」
「――――――っ!」
突然の声は背後から。とっさにフレイムコンボイはその場から飛びのき――
「ギガ、スパイラル!」
襲いかかってきた一撃をかわすと、ロボットモードとなったギガストームと対峙する。
「不意打ちたぁ、やってくれるじゃねぇか」
「貴様相手に、お上品に戦ってやるつもりなどないわ!」
フレイムコンボイに言い返し、ギガストームは両ヒジのアックスを抜き放ち、二刀流でかまえる。
「貴様のおバカさ加減に付き合うのも今日限りだ!
今日こそ決着をつけてやるぞ、フレイムコンボイ!」
「上等だ! 返り討ちにしてくれる!」
咆哮するギガストームに応え、フレイムコンボイもまたフレイムアックスをかまえ――次の瞬間、両者の一撃が激突、衝撃をまき散らす。
そして――それが一同に現状を思い出させた。ガスケット達やエイプフェイス達もまた、互いに交戦を再開する。
「ソニックコンボイさん!」
「あぁ」
フレイムコンボイがギガストームにかかりきりになったことでこちらはフリーだ――だが、安心して仲間達の援護にいけるワケではなかった。声を開けるなのはにうなずき、ソニックコンボイは周囲をサーチする。
ギガストームが現れたということは――
「――――――上だ!」
案の定センサーに反応があった。見上げるソニックコンボイの頭上に、戦艦形態で滞空するダイナザウラーの姿がある。
そして、その甲板の上には――
「まったく……最近のギガストームはどうしたんだ?
フレイムコンボイを見るたびに暴走してるじゃないか」
「まぁ……ヤツとはいろいろありますからね」
首をかしげるオーバーロードに、ウィアードウルフは肩をすくめてそう答える。
「特に、このダイナザウラーを手に入れたことで、それにターボがかかっちまいましたからねぇ……」
「ダイナザウラーを……?
どういうことだ?」
「ま、それは追々。
今はギガストーム様を」
「あ、あぁ……そうだな」
ウィアードウルフの言葉にうなずき、オーバーロードは眼下のなのは達を見下ろし、
「野郎ども、突撃だ!
ダイナザウラーも存分に暴れてやれ!」
『おぅっ!』
オーバーロードに答え、メナゾールやウィアードウルフ達は一斉に降下。ダイナザウラーも恐竜形態にトランスフォームして後に続く。
「くそっ、またデカブツの御登場か!」
「ロードシーザー、やっちゃえ!」
「む、ムチャ言うな!
相手は戦艦トランスフォーマーだぞ、ガタイが違いすぎる!」
うめくシックスナイトの脇でみなみとロードシーザーが声を上げると、
「……仕方あるまい」
頭上から彼らに告げたのは――
「グランダス!?」
ダイリュウジンのライドスペースで、思わず声を上げる都古の目の前で、グランダスはゆっくりとダイナザウラーへと艦首を向ける。
そして――
「グランダス、トランスフォーム!」
咆哮と共に、その姿が変わった。
艦の左右が起き上がり両腕に――
後部が分かれ両足に――
そしてゆっくりと全体が起き上がり、艦首のカバーが展開されてその素顔があらわになる。
「グランダスが……トランスフォームした……!?」
そのブリッジでは、さつきが驚きの声を上げていた。メインモニターに表示される各部のデータを眺め――
「グランダスって、トランスフォーマーだったの!?」
「はっはっはっ、言うと思ったよ。
何せ出会ってからこっち、一度もトランスフォームしてなかったからなぁ……!」
思わず叫ぶさつきの言葉に、グランダスは涙ながらに乾いた笑いを上げていた。
「なんの――これしき!」
一方、スーパースタースクリームは未だプライマスと交戦中――濃厚な弾幕をかいくぐり、バーテックスキャノンで反撃を試みるが、プライマスの巨体を前にしてはあまり効果があるとはいえなかった。
だが――
「………………チッ」
そんなやり取りの中、スーパースタースクリームは内心で舌打ちしていた。
(砲撃ばかりで本体は動かんか……やはり消耗は大きいようだな)
知らなかったとはいえ、考えなしにプラネットフォースに宿るスパークを搾取した自分を呪いたくなるが――今はそんなことを言っても始まらない。
(ならば、さっさと幕を引いて、回復に専念させるか……!)
「どうした、プライマス! その程度か!?
そんな攻撃では、オレには届かんぞ!」
攻撃をことごとくかわしながら、スーパースタースクリームはプライマスに向けて言い放つ。
その言葉の意味するところ――それは彼に今の行動を差し向けたプライマスには十二分に伝わっていた。すぐに動きを見せ、その両肩に展開したのは――
「ち、ちょっと何よ!?
あのデタラメな大きさのキャノン砲は!?」
「反則だろ、あんなの……!」
思わず声を上げるアルクェイドとライガージャック――彼らの言うとおり、プライマスの両肩には2門の超大型キャノンがセットされていた。
一発だけでも惑星ひとつを撃ち抜けそうなキャノン砲、その砲門に光が生まれ――次の瞬間、巨大な光の奔流が放たれる!
それは猛烈な光の渦となってスーパースタースクリームの脇を駆け抜け――その衝撃でスーパースタースクリームを吹き飛ばす!
「す、すごい…………!」
自分達の常識など及びもしない一撃を前に、フェイトは思わずつぶやき――
「うん……
すごいよ……本当に……!」
「あー、なのは?
キミの瞳が100%憧れに彩られてるように見えるのはボクの気のせいなのかな?」
目をキラキラと輝かせながらフェイトに同意するなのはに、キングコンボイは思わずツッコミを入れ――
「………………ん?
若、あれは……?」
傍らのスペリオンが、スーパースタースクリームのいた辺りから何かが落ちてくるのに気づいた。
あれは――
「――マップだ!」
思わず声を上げ、ベクタープライムは落ちてきたそれを――プラネットフォースの在り処を示すマップを受け止める。
「そのボールの中に、プラネットフォースの場所を示したマップが?」
「あぁ……ようやく取り戻したぞ!」
声をかける恭也にベクタープライムが答えると、
「ほぉ……それがあれば、プラネットフォースの在り処がわかるのか」
『――――――っ!?』
突然かけられた声に、二人はとっさに頭上を見上げ――
「ならば――渡してもらおうか」
「プラネットフォース、最後のひとつは、我らヴォルケンリッターがいただく」
スターセイバーとシグナムは、すでに戦闘態勢に入っていた。
「いっけぇぇぇぇぇっ!」
「く………………っ!」
急激な加速から強烈無比な一撃――ヴィータの繰り出したグラーフアイゼンの一撃をかわし、クロノはとっさに間合いを取る。
「やめるんだ、ヴィータ!
キミ達と戦う理由はない!」
「うっせぇ!
ちょっと一緒に戦ったからって、仲間ヅラすんじゃねぇ!」
「そういう問題じゃない!」
言い返すヴィータに答え、クロノは彼女の一撃を受け止め、
「聞くんだ、ヴィータ!
“闇の書”は今、システムに異常をきたしてる!」
「何………………っ!?」
「このままじゃ、“闇の書”は主を喰い尽くす! そうなる前に――」
「それがわかってんなら……!」
だが、クロノの言葉を待たずして、ヴィータは再びグラーフアイゼンをかまえ、
「プラネットフォースを、よこしやがれぇっ!」
渾身の力で、クロノに叩きつける!
「クロノ!」
詳しく説明しようにも、ヴィータの攻撃が激しくそれどころじゃない――苦戦するクロノを救おうとするソニックコンボイだったが、
「オラオラ! よそ見をするな!」
オーバーロードがそうさせてくれない。力任せに振るったエネルゴンクレイモアをフラップソードで受け止めるが、パワーはオーバーロードの方が上だ。真上から叩きつけられたその一撃がソニックコンボイの身体を大地に押さえつけてしまう。
「く………………っ!
なのは、頼む!」
「はい!」
ソニックコンボイに答え、代わりにクロノの援護に向かおうとするなのはだが――
《なの姉!》
一瞬早くプリムラが気づいた。なのはの意に反して後退し――その眼前を強烈なビームが駆け抜ける!
そして――
「見つけたぞ――サイバトロン!
プラネットフォース、渡してもらおうか!」
バスターモードのデスシザースをかまえ、スカイクェイクはなのはに向けてそう言い放った。
「やめるんだ、ザフィーラ!
あたしらが戦ったって、何にもならないんだよ!」
「主を救うため――やむを得ん!」
説得を試みるアルフだが、ザフィーラはかまいはしない。渾身の拳で彼女を弾き飛ばす。
一方、ダイアトラスはスカイクェイクと共に現れたプレダキングと交戦。ガッチリと組合い、互いに譲らないが――
「どいてろ、ダイアトラス!」
そこへビクトリーレオが乱入した。飛来した勢いそのままにドロップキックを敢行。プレダキングを吹っ飛ばす!
だが――そんな戦場に、死角から忍び寄る者達がいた。
「後ろから攻撃なんて、オイラ達悪だねぇ♪」
「ダーティーヒーローはこうでなくっちゃ♪」
ランドバレットとガスケットだ。
「誰がダーティーヒーローだって? 誰が」
そしてそれにつき合わされているインチプレッシャーがため息まじりにつぶやき――突然、そんな彼らの耳に無数の足音が聞こえてきた。
『………………?』
不思議に思い、3人は振り向き――そんな彼らに、現れたランブルが襲いかかる!
「ひ、ひえぇぇぇ!?」
「な、なんじゃこりゃあ!?」
「しつこいんだな!」
すぐさまガスケットが逃げ出す傍らで、ランドバレットとインチプレッシャーは組み付いてきたランブルを振り払い、大地に叩きつける。
「数が多いな……
おい、こっからの奇襲はあきらめて、他所に行くぞ!」
すぐさま決断し、告げるインチプレッシャーだが――
「かまうもんか!
フォースチップ、イグニッション!」
ランドバレットはむしろランブル達の迎撃に出た。フォースチップをイグニッションし、
「ランド、バズーカ!」
放たれた一撃がランブル達の一角を吹き飛ばす!
だが――
「逃げろ、ランドバレット!」
インチプレッシャーが声を上げるが――それはすでに遅かった。難を逃れたランブル達の一斉砲撃が、ランドバレットに襲いかかる!
「いで、いででっ!」
これにはたまらずランドバレットもひっくり返り――そんなランドバレットに、ランブル達が一斉に襲いかかる!
「ランドバレット!
ガスケット、てめぇはフレイムコンボイの旦那を――助けを呼ぶんだ!」
「お、おぅっ!」
答え、走り去っていくガスケットを見送るのは一瞬だけ――ランドバレットを救うべく、ダブルヘッドハンマーを振るうインチプレッシャーだが、数が多くてなかなかランドバレットの元へとたどり着けない。
そして――
「ぅわぁぁぁぁぁっ!」
絶叫と共に大爆発――巻き起こった炎は、ランドバレットをのしかかったランブル達もろとも吹き飛ばしていた。
一方、フレイムコンボイはギガストームと激しくぶつかり合っていた。ビーストモードの状態で互いに間合いを取る。
「大変だ、フレイムコンボイ!
ランドバレットが――ランドバレットが!」
「何だと!?」
と、そこにガスケットが駆けつけた。ランドバレットの危機を伝えるその言葉に、フレイムコンボイは思わず声を上げ――
「油断大敵だぞ、フレイムコンボイ!
ビークルモード! でもって――フォースチップ、イグニッション!」
対し、ギガストームはかまわずビークルモードとなってフォースチップをイグニッション。飛来したガンメタルのフォースチップが車体上部のチップスロットに飛び込むと、大きく全面に張り出したドリルが回転を始める。
そして――
「ギガ、スパイラル!」
「ぐぅっ!?」
突撃したギガストームの一撃をとっさに受け止めるフレイムコンボイだったが――止めきれない。そのまま勢いに押されて押し戻されていく。
その先は――
「――――――っ!
いかん!」
彼らの行き先に真っ先に気づいたのは恭也だった。つばぜり合いを繰り広げていたシグナムを振り払い、彼らの後を追う。
「どうした、高町恭也!」
シグナムが声を上げるが、恭也に答える余裕などない。
(あっちには――スカイドームがある!)
「まったく、やってらんないわよ!」
一方、こちらは乱戦となり、こう着した戦場に飽きが見えてきていた。掌底でオートボルトを弾き飛ばすと、クロミアはすぐさま反転。その場を離脱しにかかる。
「逃げるのか!?」
「まーねー!」
呼びかけるレールレーサーに答え、クロミアはその場を離れ――
「――――――っ!?」
突然その動きを止めた。
「逃がすものですか!――って……」
レールレーサーと共にそんな彼女を追ってきたシエルもまた、思わず動きを止める。
彼女達の頭上に現れた、漆黒の“何か”としか形容できない何かに包まれたそれは――
『マスター、メガトロン……!?』
「どういうこと!?」
モニターに映し出されたマスターメガトロン――その姿に、リンディは指揮を執っていたスカイドームの指令室で声を上げた。
「そんな……マスターメガトロンは、あの時確かに初期化されたはず!」
「じゃあ、あれは一体……!?」
同じく驚きの声を上げるエイミィにパーセプターがうめくが――
「けど……何だか様子が変だ……」
最初にそのことに気づいたのはユーノだった。
「よく見ると、身体が半分透き通ってる……
まるで幽霊みたいだ」
「そんな、まさか……
トランスフォーマーにも幽霊の概念はあるけど、あれは……!」
ユーノの言葉にトゥラインがうめくと、リンディはしばし考え、
「ホップさん、あなたのセンサーで何かわかりませんか?」
尋ねるが――反応はない。
「ホップさん……?」
眉をひそめ、リンディは振り向き――
「――――ノイズメイズ!?」
そこに現れたノイズメイズを見て声を上げる。
肝心のホップ達は――気を失い、彼に抱えられている。
「貴様、いつの間に!?」
「そんな……! センサーには何の反応も……!」
「おっと、そこまでだ」
何の気配もなく、センサーにも一切気取られずに侵入してきた――パーセプターとトゥラインが声を上げるが、ノイズメイズはそう告げて間合いを取る。
「あなたは……ホップさん達に何をしたんですか!?」
「おっと、そう殺気立つもんじゃないよ。
別に何もしてないさ――ただ、眠ってもらっただけだよ」
怒りを抑え、代表して尋ねるリンディにノイズメイズが答えた、その時――
「ぅおらぁっ!」
咆哮と共に、傍らの壁が粉砕され――フレイムコンボイが、そして彼をここまで押しやったギガストームが飛び込んでくる!
「フレイムコンボイ!?」
思わずリンディが声を上げるが――それが一瞬のスキとなった。
「今だ――!
あばよ!」
「――しまった!」
生じた混乱に乗じてノイズメイズはワープで離脱。逃げられたと気づいたパーセプターが声を上げる。
と――
「リンディさん!」
「お、おい、待て!」
そこに、フレイムコンボイ達を追ってきた恭也やシグナムが飛び込んできた。
「ケガは!?」
「わ、私達は……
けど、ホップさんがノイズメイズに……!」
「何ですって!?」
答えるリンディの言葉に恭也が声を上げると、
「いや……まだだ!」
ちょうどノイズメイズのいた場所の空間を探り、シグナムが告げる。
「ワープ空間はまだ閉じられていない。追えるぞ!」
「よぅし……!」
シグナムの言葉に、恭也は決意を固め――
「ぅおぉぉぉぉぉっ!」
「ぐぉおぉっ!?」
かまわず殴り合っていたギガストームとフレイムコンボイが、もつれ合ったままこちらに倒れ込んでくる!
「危ない!」
「きゃあっ!?」
「恭也!?」
とっさに恭也がかばったのはリンディとシグナム――だが、その拍子に彼らはワープゲートへと飛び込んでしまった。一瞬にしてその姿がかき消えてしまう。
しかも、ギガストームやフレイムコンボイもワープゲートをくぐってしまい、その向こう側へと飛ばされてしまう。
「しまった!」
「艦長! 恭也くん!?」
思わずアレックスとランディが声を上げると、
「ボクらが行きます!
ユーノ!」
「うん!」
すぐにトゥラインとユーノが動いた。とっさにワープゲートへと飛び込み、
「我らも行きましょう!」
「ち、ちょっと!?」
「彼らを放っておくワケにもいかないでしょう!
現地でのサポートも必要なはず!」
驚きの声を上げるエイミィを抱え、パーセプターもまたワープゲートへと飛び込み――次の瞬間、ワープゲートはその場から消滅してしまった。
「一体……艦長達はどこに……!?」
つぶやくアレックスだったが――誰からも答えは返ってこなかった。
(初版:2007/01/14)