「フォースチップ、イグニッション!」
咆哮と同時、飛来したガンメタルに輝くフォースチップはファングメガトロンの右腕――ダークファングウルフの背中のチップスロットへと飛び込み、拳にあたるダークファングウルフの口腔内により巨大な牙“ダークファング”が展開される。
そして、全身にエネルギーをみなぎらせたファングメガトロンは右腕を振りかぶり、
「ファング――クレッセント、ストライク!」
力任せに振るった右腕から放たれた光刃が、なのはやライガーコンボイ達に襲いかかる!
「く………………っ!」
対し、ビクトリーセイバーはスターブレードに魔力を収束させ、
『獅子王――煉獄斬!』
ビクトリーレオと共に咆哮。繰り出した斬撃がファングメガトロンの光刃と激突――爆発を起こし、相殺される。
「今だ!」
「いっけぇっ!」
そのスキを逃さず、一撃を加えるべくキングコンボイとロディマスコンボイが突っ込み――
「なめるな!」
ファングメガトロンもすかさず雷撃で迎撃。まき散らされた破壊の嵐をかわし、キングコンボイは上空へと逃れ――そんな彼の視界の隅に、離れたところで巻き起こった爆発がとらえられた。
爆発から検知されたエネルギー残滓、それは――
(あの反応は……
ビッグコンボイと――メガザラック!?)
だとすればメガデストロイヤーも――アリシアも来ているはずだ。すぐに広域サーチをかけ、メガデストロイヤーの位置を探る。
(……いた!)
反応は自分から見てチップスクェアをはさんだ反対側――戦場を避けてグルリと迂回してきていたようだ。
アリシアのことがある以上、できれば戦いたくない相手だが――
「だからって……チップスクェアは渡せない!」
それでもウィザートロンの目論見どおりに事を進めさせることはできない。メガデストロイヤーを阻止するのは、現状においてはどうしても必要だ。
一瞬フェイトに視線を向けるが、彼女はファングメガトロンに集中し、気づいていないようだ。
何より、アリシアのそばには――
「…………よし!」
彼女にはここを任せておくべきだろう――すぐに気を取り直し、キングコンボイはチップスクェアに向けて転進した。
「――――――若!?」
その動きは、地上で戦うロードシーザーも気づいた。転進したキングコンボイに気づいて声を上げる。
「スペリオン! レールレーサー!」
「わかっている!」
「若ひとりをウィザートロンとぶつけるワケにはいかん!」
ロードシーザーの呼びかけにレールレーサーが、スペリオンが同意し、彼らもまたキングコンボイを追って戦線を離脱した。
「あれは………………っ!?」
戦場を離れ、チップスクェアへと向かうキングコンボイ――その姿を見とめ、メガザラックはビッグコンボイから距離をとってうめいた。
今までファングメガトロンと戦っていたキングコンボイがチップスクェアに向かう――その意味があるとすれば――
(気づいたか……リニス達の動きに!)
となれば、ここに長居するワケにはいかない――追撃のマンモスハーケンをかわし、メガザラックはビッグコンボイに背を向ける。
「逃げるつもりか!?」
「貴様よりも、優先して足を止めなければならんヤツがいるからな!」
声を上げるビッグコンボイに言い返し、メガザラックはそのままビークルモードのジェット機へとトランスフォーム。急加速と共にその宙域を離脱した。
第58話
「それゆけ、脱出大作戦なの!」
「むんっ!」
「なめるな!」
十分な気合と共に打ちかかってくるギガストームの拳を受け止め、フレイムコンボイはそのままギガストームとガッチリと組み合う。
「頭を冷やせ、ギガストーム!
今は貴様にかまっているヒマなどない!」
「やかましい!」
フレイムコンボイに言い返し、ギガストームはフレイムコンボイを振り払うとヒジからアックスを抜き放つ。
「今がどういう状況だろうと、オレ様には関係ない!
敵地のど真ん中だろうと、貴様を始末してから悠々と出て行ってやるさ――かつて貴様が、オレの父を殺した時のようにな!」
告げると同時、ギガストームはアックスを投げつけ、フレイムコンボイもそれをかわして後退する。
だが――ギガストームもむざむざと逃がしはしない。すぐさま追撃し、もう一方のアックスがフレイムコンボイのフレイムアックスと激突する。
「確かに、父はあの時代のアニマトロスには無力だった――オレも貴様の選んだ道に反対はしない。
だが――それをすべきはオレだったんだ!」
しばしのつばぜり合いの後、両者は再び間合いを取り、場をいったん仕切り直す。
「あのような情けない男でも、我が一族の長だったのだ――その父が無力であったこと、そして貴様のような荒くれ者に敗れたことは、我が一族にとって二重の恥!
その恥をそそぐためにも――オレは貴様も、サイバトロンも、マスターメガトロンも倒し、全宇宙を救う英雄となる!」
放たれたギガストームの宣言――それを聞き、リンディは『自身の手によるグランドブラックホール消滅』を目論んでいたギガストームがなぜ今になってフレイムコンボイに執着するのか、その理由を垣間見た気がした。
自らの手でグランドブラックホールを消滅させ、全宇宙を救った英雄となる――それはただ自分が目立ちたいためではなく、無力な統治者だった父によって失墜した自らの一族の誇りを取り戻すためにと選んだ、彼にとって決して避けては通れない道だったのだ。
だが、それだけでは足りない――グランドブラックホールを消滅させて『無力なリーダーの一族』という不名誉を払拭しても、父を討った張本人であるフレイムコンボイを討たなければ『リーダーの座を奪われた負け犬』の不名誉は消えないまま――それが今の彼の思考なのだ。
その原因は――おそらくは彼らの母艦ダイナザウラー。奇しくも父と同じ名を持つその存在が、彼の中のフレイムコンボイとの因縁を再燃させてしまったのだろう。
だが――
「………………フンッ」
そんなギガストームの言葉を、フレイムコンボイは鼻先で笑い飛ばした。
「ずいぶんとご立派な目標だが――オレに言わせれば『それがどうした』だ。
状況の打開を願いながらも何もできず、結局オレのような『荒くれ者』に出し抜かれた――そんな貴様が、今さらこのオレを退けられるとでも思うのか!?」
「思っているさ!
何もできなかったかつてのオレを超え、一族の誇りを取り戻す――そのためにも、まずはこの場で貴様を叩き潰す!
何もできなかった者が強くなれないはずがない――何もできなかった、その後悔を知るからこそ、強くなれると知るがいい!」
咆哮し――ギガストームはフレイムコンボイに向けて地を蹴る。
迫り来る一撃をかわすべく、フレイムコンボイは腰をかがめ――
(――――――っ!)
一瞬で思い直した。その場に踏ん張り――背後にいたリンディを守り、ギガストームの一撃を受け止める!
「ほぉ……女をかばうか!
フレイムコンボイともあろう者が、ずいぶんと甘くなったものだ!」
「何とでも言え!
一時のものであろうと――同盟を結んだ者を見捨てるほど、オレは義理をなくしてはいない!」
言い返すフレイムコンボイだったが――
「ほざくな!
『守る者』の使命を忘れ、ただ戦いたいがためにデストロンに寝返った裏切り者が!」
猛攻を加えるギガストームに流れは傾いた。間髪入れずに放たれた蹴りが、フレイムコンボイの腹を思いきり蹴り上げる!
「はぁぁぁぁぁっ!」
「オォォォォォッ!」
一方、ギガストームの相方たるオーバーロードは、依然スカイクェイクとの交戦状態にあった。部下達も手出しできず、ただ見守ることしかできないほどの激しい斬撃の応酬が続いている。
そんな中――
「………………ん?」
ウィアードウルフがそれに気づいたのはまったくの偶然だった。
突然レーダー上に現れたそれは一直線にオーバーロード達のもとへと飛来し――
「――危ない!」
『――――――っ!?』
ウィアードウルフの上げた声に気づき、オーバーロードとスカイクェイクはその場から跳躍し――次の瞬間、彼らのいた場に多数のビームが降り注ぐ!
「何者だ!?」
とっさにビームの主――突然の襲撃者に向けてデスシザースをかまえるスカイクェイクだったが、
「貴様には用はない」
襲撃者達――その先頭の人物はあっさりとそう答えるとオーバーロードへと振り向き、
「答えてもらおう。
お前達の持つプラネットフォースはどこにある?」
尋ね――エルファオルファ、ラートラータを従えたドランクロンは手にしたライフルをオーバーロードへと向けた。
交差した両腕に叩きつけられる衝撃はまさに強力無双――ダイナザウラーの尾の一撃を何とか受け止めはしたものの、グランダスは大きく押し戻されてしまう。
「ぐぅ………………っ!
大丈夫か、さつき!?」
「私のことより、反撃反撃!」
「おぅ!」
さつきの言葉に答え、全身の火器を斉射するグランダス――だが、ダイナザウラーも多少ひるみはするものの、すぐに熱線で応戦してくる。
「まったく……! タフなヤツだ!」
どれだけ攻めてもまるで疲れを見せないダイナザウラーに、さすがのグランダスも舌打ちし――
「我々も、人のことは言えないと思うがな」
そんな彼のとなりで告げるのはフォートレスマキシマスだ。
「だが……いささか時間をかけすぎているのも確かだ――そろそろ片付けたいのが本音だな。
シャマル!」
「はい!」
告げるフォートレスマキシマスの言葉にシャマルがうなずき、
『フォースチップ、イグニッション!』
二人の叫びに呼応して、黄色の――ミッドチルダのフォースチップが背中のチップスロットへ。イグニッションしたフォートレスマキシマスの両腰に巨大なキャノン砲が展開される。
『マキシマム、ブラスター!』
そして、放たれた二条の閃光は混ざり合い、巨大な光の渦となってダイナザウラーを直撃する!
「く………………っ!
まったく、とんでもないパワーだな、アイツら……!」
そのすぐそば――フォートレスマキシマス達の足元にはインチプレッシャーの姿があった。戦いの衝撃に思わずうめくが――
「もっとも――こっちに気にしてる余裕はないか!」
とっさに跳躍――斬りかかってきたシックスショットの斬撃をかわす。
「やれやれ、せめてこの場から離脱しないか?
お互い、あの戦いには巻き込まれたくないだろう?」
「残念だが、せっかく孤立している貴様に合流の余地を与えてやるつもりはないんだ」
間合いを取り、肩をすくめるインチプレッシャーに答え、シックスナイトはシックスブレイドをかまえ、
「この場が危険だというのなら――貴様を倒して離脱するまで!」
「上等ぉーっ!」
シックスナイトに言い返し、インチプレッシャーがダブルヘッドハンマーをかまえ――
――薙旋!
「どぅわぁぁぁぁぁっ!?」
一瞬気づくのが遅れていたらまともに食らっていた――背後から放たれた美沙斗の薙旋を、インチプレッシャーはあわててかわす。
「て、てめぇら、普通今の会話の流れで迷わず不意打ちにいくか!?」
「あいにくと、こちらは元暗殺者だからね」
体勢を立て直し、抗議の声を上げるインチプレッシャーにそう答えると、美沙斗は追撃を加えるべく跳躍する!
「ノイズメイズを手玉に取るたぁ、やるのぉ、お前ら。
じゃが――それもここまでじゃ!」
恭也達の前にその巨体を現し、ランページはそう告げて手にしたランチャーの狙いを彼らに向ける。
「来るか……!」
「エイミィ達は下がるんだ!」
言って、それぞれの獲物をかまえる恭也とシグナムだったが――
「いえ――お二人も下がってください!」
そう告げて、彼らのさらに前に出たのはホップだ。
「ほぉ、もう降参か。
拍子抜けじゃが、まぁ、えぇか」
対し、ランページはそんなホップの態度を降参だと思ったようだ。ランチャーを下ろすとホップへと無造作に手を伸ばし――
「今です!
みなさん、早く!」
そのランページの油断をホップは見逃さなかった。背中のプロペラを回してワープ空間を展開。その中に恭也達を招き入れ、姿を消してしまった。
「ワープじゃと!?」
ホップがワープを使えるという情報を彼らは持っていなかった――思わずランページが声を上げると、
「いてて……! ひどい目にあったぜ……」
うめいて、ノイズメイズが作業室に戻ってきた。
「おぅ、大丈夫か?」
「大丈夫じゃねぇっての……
あのガキども……コケにしやがって!」
尋ねるランページに答えると、ノイズメイズは壁際の端末へと向かい、
「だが――こっちもいつまでもやられっぱなしじゃないぜ」
言って――コンソール中央のボタンを押し込んだ。
一方、ランページの手を逃れた恭也達は、アトランティスの別の区画に出現していた。
「ホップ、ナイスアシスト!」
「みなさんが助けてくれたおかげです。
私はプロペラが回せないと、ワープが使えませんからね」
笑顔でサムズアップして賛辞の声を上げるエイミィに、ホップは少し照れながらそう答える。
「では、さっそく情報セクションに向かい、通信システムを破壊して救援を呼ぼう」
「それに、フィアッセも探さないとな……」
ともかく、次の行動に移らなくては――つぶやくシグナムに同意し、恭也はサイバトロンPDAを取り出し、
「まずは、情報セクションの場所を探し出さないと……」
つぶやきながらサイバトロンPDAの操作パネルを展開し――止まった。
「………………恭也?」
思わずシグナムが疑問の声を上げ――恭也はクルリとエイミィに振り向き、
「エイミィ、頼む」
「あー、はいはい。
恭也くんじゃ使いこなせないよね、ソレ……」
苦笑まじりにうなずき、エイミィは恭也からサイバトロンPDAを受け取った。
一方、その頃スカイドームでは、ベクタープライムやアースラのブリッジクルー達が、恭也達の行方を懸命に捜索していた。
「……ダメですね」
「やはり、サイバトロンPDAの信号を検知できません」
「そうか……
検知さえできれば、手がかりになるのに……!」
アレックスとバックギルドの報告にファストガンナーがうめくと、
「やはり、通信が妨害されているっていうアリサちゃんの仮説が正しいんじゃ……」
「あぁ。
こうまで広域にサーチをかけて、反応がないことから考えても間違いはないだろう」
尋ねるランディに、ベクタープライムがうなずく。
「まったく……どこにいるのよ、恭也さん達は……!」
「とにかく、今はどんな微弱な信号でも見逃さないよう、モニターし続けるしかありませんね」
うめくアリサに答え、シオンはセンサーの検索範囲をさらに広域に切り替える。
「うーん……こんな時に何もできないのは正直辛いなぁ……」
「では、外の皆の援護に向かうか?」
今の自分は何もできない――焦りを募らせる知佳にブレイズリンクスが答えると、
「それは避けた方が懸命だ」
そう告げるのはドレッドバスターだ。となりで志貴もうなずき、
「オレ達は、恭也さん達の居場所がわかった時の救出メンバーとしてここにいるんです。
焦る気持ちはオレだって同じですけど……今は待ちましょう」
「そう……だね……」
志貴の言葉にうなずくと、知佳はメインモニターへと――ファングメガトロンと交戦するロディマスコンボイへと視線を向けた。
「ロディマスコンボイ……美緒ちゃん、お兄ちゃん……
気をつけてね……!」
「ねぇ…………」
唐突にエイミィが口を開いたのは、特定した情報セクションの場所に向けて移動を開始して、しばらくしてからのことだった。
「私達……情報セクションの場所を確認したのよね?」
「そうだ。
だからこうして、そこに向かっているんだろう?」
聞き返すシグナムにうなずき、エイミィは一同に告げた。
「ワープすれば早いんじゃない?」
『あ………………』
その言葉に、恭也とシグナムは思わず顔を見合わせた。
「そうですね、その手がありました!」
気づいていなかったのはこちらも同じだったようだ。ホップはいそいそとプロペラを回し――
「………………あれ?」
ふと首をかしげた。
「ワープゲートが……開きません。
シグナム様、あなたの転送魔法は?」
「やってみよう」
答え、シグナムはレヴァンティンをかざし――
「……ダメだ。
私の転送魔法も発動できない」
「どういうことだ?」
シグナムの言葉に恭也が聞き返すと、
「それはな……」
「ノイズメイズが、ワープ妨害シールドを張ったからじゃ!」
口々に言い、ノイズメイズとランページが廊下の奥から姿を現す!
「いかん!」
「逃げるんだ、ホップ!」
「はい!」
シグナムと恭也に答え、逃げ出そうとするホップだったが――
「逃がすか!」
ノイズメイズがウィングハルバードを投げつけ、後方の廊下に突き刺さったその刃が退路をふさいでしまう。
「さぁ、もう逃げられないぞ」
「く………………っ!」
突破するしかないか――ノイズメイズの言葉にうめき、シグナムはレヴァンティンをかまえ――
だが、変化は突然に訪れた。
次の瞬間、すぐそばの壁が轟音と共に砕け散り――
「ぶべぇっ!?」
「ぎゃあっ!?」
飛び込んできた何かに、ノイズメイズとランページがひき潰される!
「な、何!?」
突然の事態に思わずエイミィが声を上げると、
「エイミィ!?」
「リンディ提督!?」
土煙の中から姿を現したリンディに、エイミィは驚いて目を見開く。
「リンディ提督がここに現れたということは……」
なんとなく先ほど飛び込んできたモノの正体が想像できた――つぶやき、恭也はその“モノ”の方へと振り向き――
「くたばれぇっ! フレイムコンボイ!」
「お断りだ!」
「やはり……」
周囲の壁を破壊し、戦い合いながら移動していくギガストームとフレイムコンボイの声に、シグナムは思わずうめく。
「結局、ギガストームは説得できなかったみたいですね……」
「すみません……
思っていた以上に、ギガストームとフレイムコンボイの因縁は深くて……」
恭也にそう答えると、リンディは気を取り直し、
「とにかく、ホップさん達の救出には成功したようですね……
それで、今は何を?」
「情報セクションへ向かう途中です。
そこでユーノ達と合流することにしたんですが……」
「ちょうど今の騒ぎに巻き込まれちゃったのね……」
答える恭也の言葉に、リンディはしばし考え、
「なら、ギガストームはフレイムコンボイに任せて、私達は引き続き情報セクションに向かいましょう。
今はとにかく、フィアッセさんを発見すること、そしてギャラクシーコンボイ達と連絡を取ることが先決です」
リンディの言葉にうなずき、恭也達は移動を開始する――
踏み潰された、ノイズメイズ達を無視して。
「おぉぉぉぉぉっ!」
咆哮し、一直線に突撃するライガーコンボイだが、
「そんなもの!」
ファングメガトロンは素早いフットワークで間合いを保ちつつ雷撃で迎撃、ライガーコンボイをまったく寄せ付けない。
「くそ………………っ!
総司令官! 打撃に特化したオレ達の合体じゃ、あのすばしっこいファングメガトロンには対抗できない!
ソニックコンボイだ!」
「わかった!」
ライガージャックの提案にうなずき、ライガーコンボイは彼を分離させ、
「なのは、いけるか!?」
「はい!」
《もちろん!》
尋ねるギャラクシーコンボイに、なのはとプリムラはそう答えて彼の元へと飛翔する。
「よし、フェイト!」
「はい!」
そして、ギャラクシーコンボイの号令に答えたフェイトがバルディッシュをかまえ、
〈Link up Navigator, Get set!〉
リンクアップナビゲータが起動した。
「いくよ――みんな!」
言って、フェイトがバルディッシュをかざし――その中枢部から光が放たれる。
その中で、ギャラクシーコンボイとソニックボンバー、二人のスパークがさらなる輝きを放つ。
『ソニックボンバー!』
クロノとソニックボンバーの叫びが響き、クロノをライドスペースに乗せたソニックボンバーはビークルモードへとトランスフォーム。そこから機首を後方にたたみ、主翼のバルカンシステムも展開。機体下部の装甲を展開して合体ジョイントを露出させる。
『ギャラクシー、コンボイ!』
次いでなのはとギャラクシーコンボイが叫び、なのはをライドスペースに乗せたギャラクシーコンボイがギャラクシーキャノンを分離。その両足にソニックボンバーの翼から分離した火器が合体する。
そして、両者が交錯し――
『リンク、アップ!』
4人の叫びと共に、バックユニットとなったソニックボンバーがギャラクシーコンボイに合体する!
最後にソニックボンバーの胸部装甲がギャラクシーコンボイの胸部に装着され、4人が高らかに名乗りを上げる。
『ソニック、コンボイ!』
「まったく、ワープが使えればこんな移動も楽勝なのに……
ノイズメイズも余計なことしてくれたわね」
とりあえずギガストームはフレイムコンボイに任せることにした。ビークルモードのブリットに乗って移動しつつ、エイミィは不満げにつぶやく。
が――
「あら、そうでもないんじゃないかしら?」
そう答えたのは、バンパーに乗るリンディである。そして、シグナムと共にホップに乗る恭也がエイミィに告げた。
「ワープできないのはノイズメイズ達も同じだ。
条件は同じ――どちらも同じ距離を移動しなければならないんだ。向こうのワープのイニシアチブはこれで消えたことになる」
「あ、なるほど……」
恭也の言葉に思わず納得し、エイミィは改めてサイバトロンPDAに視線を落とし――
「――――っと、ちょっと待って!」
突然一同を呼び止めた。ブリットに指示し、近くの部屋に入ってもらう。
「ここは……?
見たところエンジンルームのようだが……」
「まだ、修理中みたいですね……」
それぞれにマイクロンから降り、シグナムとリンディがつぶやくと、
「まぁ……前の戦いじゃずいぶんとハデに爆発したからな。
むしろここまで修理したノイズメイズ達の努力の賜物と言うべきだろう」
そう二人に告げると、恭也はエイミィへと振り向き、
「それで……どうしてここに?」
「えへへ……」
尋ねる恭也に、エイミィはイタズラっぽく笑みを浮かべ、
「ノイズメイズ達は、このアトランティスを修理してるのよね?」
「あぁ」
「で、私達が今いるのはそのアトランティスの中枢部……」
「そうだな」
恭也が、そしてシグナムがそれぞれ答えるのを聞き、リンディは思わずつぶやいた。
「なるほど……
ここを破壊して、ノイズメイズ達を足止めするつもりね?」
「えぇ。
ノイズメイズ達がここを基地として利用しようとしている以上、ここを破壊されるのは大きな痛手のはずです」
リンディに答え、自信タップリに笑みを浮かべるエイミィだったが――
「待て。
ここはアトランティスの中枢なんだ――ヘタに破壊しては、我々にも危険が及ぶ可能性がある」
「あ、そっか……」
制止の声を上げるシグナムに、思わずエイミィは肩を落とす。
だが――
「いや……」
そんなシグナムのとなりで、恭也が声を上げた。
「発想自体は、悪くないかもしれない……」
『………………?』
その恭也の言葉に、シグナムとエイミィ、リンディは思わず顔を見合わせた。
『フォース――』
ロディマスコンボイと耕介――
『――チップ!』
ロディマスブラーと美緒――
『イグニッション!』
そして4人の声が唱和し、飛来したスピーディアのフォースチップがロディマスコンボイの背中――ロディマスブラーのチップスロットに飛び込む。
そして、展開されたウィングからロディマスショットが分離。ロディマスコンボイがかざしたマッハショットの二門の銃口、それぞれの先端に連結される。
『ロディマス、ライフル!』
咆哮し、ロディマスコンボイの放った閃光は一直線にファングメガトロンに向けて飛翔する――が、ファングメガトロンも負けてはいない。素早いフットワークを駆使し紙一重でかわすと逆にロディマスブラーへと肉迫。ダークファングウルフの口に輝くダークファングを振るう。
だが、それはビクトリーセイバーが防いだ。スターブレードで一撃を受け止め、息のあった連携でヴィータが急襲。速度と鋭さを兼ね備えたラケーテンハンマーを受ける気にはならなかったか、ファングメガトロンは素早く後退してヴィータの一撃をかわすが、
「そこです!」
《いっけぇっ!》
〈Baster ray!〉
なのはとプリムラ、そしてレイジングハートが追撃を放った。カートリッジをロード、十分なチャージの上で放たれたバスターレイがファングメガトロンを直撃し――
「今度こそ――」
「くらえぇぇぇぇぇっ!」
接近したフェイトとヴィータの一撃が、今度こそファングメガトロンを直撃する!
「ぐぅ………………っ!」
ガードには成功したが、フェイトとヴィータの攻撃にファングメガトロンは大きく押し戻される――身体のサイズで遥かに劣りながらも自分と大して変わらない攻撃力を持つ二人が、その攻撃力を一転に集中してきたのだからある意味当然ではあるのだが。
「どうした? 押され始めたな」
「さすがのお前も、リンクアップしたブラー達が相手じゃ分が悪いのだ!
降参するなら今のうちなのだ!」
腕の痺れに顔をしかめるファングメガトロンの姿に、ロディマスコンボイと美緒が余裕で告げるが――
「確かに、このままでは不利だな……
リンクアウト!」
対し、ファングメガトロンは再び分離。元のマスターメガトロンに戻る。
「またライガーメガトロンか!?」
リンクアップの切り替えか――警戒するソニックコンボイだったが、
「フンッ、そうとしか思えないのが貴様らの限界よ」
その言葉に対し、マスターメガトロンは余裕の笑みを浮かべて告げた。
「忘れたのか?
“あの“黒い霧”から生まれたのは、何人だった?”」
『――――――っ!?』
「リンクアップ!」
マスターメガトロンの号令にあわせ、ダークニトロコンボイはビークルモードにトランスフォーム。タイヤを車体に対して水平に倒すとボディ下部に合体用のジョイントを露出。合体形態への移行を完了する。
そのまま、ダークニトロコンボイはマスターメガトロンの背中に合体し――背中のメガブースターと動力部を連結。マスターメガトロンの身体にすさまじいエネルギーを供給する。
正面からはほとんど変化のない――だが、圧倒的なパワーを全身にみなぎらせ、マスターメガトロンは咆哮するように新たな自分の名を名乗った。
「ニトロ、メガトロン!」
「フンッ、何がニトロメガトロンだ! ただダークニトロコンボイを背負っただけじゃねぇか!
一気にいきましょう、総司令官!」
「いや――待て!」
ダークニトロコンボイとのリンクアップを遂げはしたが、その合体は先の2種に比べてきわめて単純なものだった――恐るるに足らずとばかりに息巻くライガージャックを、ソニックコンボイは慎重にいさめる。
自信たっぷりに――真打登場とばかりに合体して見せたニトロメガトロンの余裕に対して警戒を強める。が――
「アイツがどんな力を得ていようと知ったことか!」
「我ら騎士は、真っ向からぶつかるだけだ!」
「ま、待て、ビクトリーセイバー!」
ビクトリーレオと共に咆哮し、ビクトリーセイバーはソニックコンボイの制止も聞かずに突撃。渾身の力でスターブレードを振るうが――
「――――――何っ!?」
次の瞬間、その目は驚愕で見開かれた。
ニトロメガトロンが無造作に手を伸ばし――ビクトリーセイバーの刃を片手で受け止めて見せたからだ。
その手のひらは雷撃のエネルギーでコーティングされて、刃の到達を阻んでいる――すなわち、ビクトリーセイバーの一撃は刃を届かせることすらできなかったのだ。
「それで終わりか?
なら――」
「――――――っ!?」
告げるその言葉に、ビクトリーセイバーはとっさに後退するが――間に合わない。ニトロメガトロンの雷撃が、その全身に叩きつけられる!
「ぐわぁっ!?」
「ビクトリーセイバー!」
吹っ飛ぶビクトリーセイバーにあわてて近寄ろうとするヴィータだが――
「そんな余裕があるのか!?」
続けざまにニトロメガトロンは雷撃を放射。ヴィータはもちろん、なのは達にも援護を許さない。
「総司令官!」
「なのは!」
そんな彼らを救うべく、真上からソニックボンバーとクロノが突っ込むが――
「フォースチップ、イグニッション!
ダークショット!」
ニトロメガトロンは藍色のフォースチップをイグニッション。背中のダークニトロコンボイの展開したダークショットが二人を迎撃する。
さらに、両手から次々に雷撃を放ち、なのは達をまったく寄せ付けない。
「なっ、何だよ、アレ!?
雷撃がメチャクチャ速くなってないか!?」
「っていうより、チャージ時間が短くなくなってる……!
だから連射が利いてるんだよ、コレ!」
懸命に雷撃をかわし、ヴィータとなのはが声を上げると、
「そういう、ことか……!」
かわしきれずに雷撃を防御し、ソニックコンボイがうめいた。
「ダークニトロコンボイが背中に合体したのには、ちゃんとした意味があったんだ……!
動力部を直結させ、自身の出力を大幅に上昇させる……!」
「つまり、あの形態の特性は、徹底的な出力強化タイプ……!」
《雷撃のチャージが速くなったのも、出力に余裕が出て長時間のチャージが必要なくなったからですね?》
すぐとなりまで後退し、尋ねるフェイトとジンジャーの言葉に、ソニックコンボイは真剣な表情でうなずく。
だが――
「残念。
それでは――正解の半分だ!」
そんな彼らの会話に口をはさみ、ニトロメガトロンは自らの右腕を合体形態に折りたたみ、
「ニトロメガトロン――バスターモード!」
その咆哮に応えてダークニトロコンボイはニトロメガトロンの背中から分離。右腕に再合体し、新たな形態“バスターモード”となる。
その意図は――
「まさか……ダークニトロコンボイそのものをエネルギー集光器にするのか!?」
「ウソでしょ!?
あんなパワーでビームなんか撃たれたら……!」
「そう――この形態は出力強化型ではない!
出力強化は単なる副産物。それによる――徹底的な火力強化こそがこの形態の真髄だ!」
驚愕するソニックコンボイとアルクェイドに答え、ニトロメガトロンは急速にチャージを済ませ、
「消え去れ!
ニトロ、ギガンティックブラスト!」
咆哮と共に、ニトロメガトロンが紫電の閃光を解き放ち――すでにその攻撃に対抗していた者がいた。
「そっちが火力ならこっちも火力!」
《説明してくれてる間にチャージも完了!》
言って、なのはとプリムラはレイジングハートの照準をニトロメガトロンの放った閃光に向け、
「フォースチップ、イグニッション!」
〈Force-tip, Ignition!〉
告げると同時、黄色いフォースチップがレイジングハートのコアへとまるで溶け込むように飛び込み、なのはの周囲で魔力の光が渦を巻く。
そして――
「イグニッション――パニッシャー!」
解き放たれた桃色の閃光が、ニトロメガトロンの紫電の閃光と激突する!
だが――
「――――――そんな……っ!?」
レイジングハートを通じて伝わってくる手ごたえに、なのはは思わず声を上げた。
押されている。
カートリッジ、フォースチップ、そして今までの戦闘の残留エネルギー、そのすべてを込めたイグニッションパニッシャーの桃色の閃光は、ニトロメガトロンの紫電の閃光に徐々に食いつかれ始めている。
《負けるな、なの姉!》
〈Don't give up!〉
「うん!」
プリムラとレイジングハートの声援に応え、踏ん張るなのはだが――
次の瞬間――
桃色の閃光が砕け散り――
「きゃあぁぁぁぁぁっ!」
自分のすぐそばを駆け抜けた紫電の閃光、その衝撃でなのはが吹き飛ばされる!
「――――――っ!?
なのは!?」
その異変は魔力の流れの乱れとして感じ取った。思わず声を上げるキングコンボイだが――
「どこを見ている!?」
「――――――っ!」
上空から斬りかかってきたライオカイザーの斬撃を、キングコンボイは素早く後退してかわす。
アリシアを救いたいという意志は前回の対峙で伝えている。できれば話し合いで、と思っていたが――
(まったく、話くらい聞いてくれてもいいじゃないか!)
胸中で舌打ちし、メガデストロイヤーの甲板上から放たれるバトルガイヤーの援護射撃を素早い動きでかわしていく。
「シグナム達といいウィザートロンのみんなといい、何でこうも人の話を聞いてくれないかな!」
思わず声に出し、キングコンボイは体勢を立て直し――
「それは――こちらもそれだけ必死だということだ!」
そんなキングコンボイに答え、飛来したメガザラックがロボットモードへとトランスフォームする。
「言ったはずだぞ、キングコンボイ。
たとえ貴様達もまたアリシアを救うために動いていようと、我らも我らの選択を譲るつもりはないと」
「わかってるさ!
けど――だからって話し合いができないって理由にはならないでしょ!?」
メガザラックに反論し、キングコンボイは自らかまえを解き、メガザラックと正対する。
「アリシアを助けようとしてくれてるウィザートロンのみんなとは、戦いたくない……!
まずは話し合おう! それで、みんなで考えようよ! アリシアを助ける方法を!」
訴えるキングコンボイの言葉に、メガザラックはしばし沈黙し、
「…………どこまでもまっすぐだな、お前は」
「わかってくれたの!?」
つぶやくように告げるメガザラックに、キングコンボイは思わず顔を輝かせるが――
「――――だが!」
「――――――っ!」
次の瞬間、素早く後退し、メガザラックの繰り出したブリューナクを受け止める。
「すでに時は遅いのだ。
我らの戦端は開かれた――もはや、話し合いでの解決などできはしない!」
「できるよ! ボク達ならきっと!」
そう告げ、キングコンボイはメガザラックの攻撃をかわして上昇し――次の瞬間、その背中に背後からビームが直撃する!
「ぅわぁっ!?
な、何!?」
不意打ちの一撃をまともにくらい、キングコンボイはバランスを崩しながらも襲撃者の正体を確かめると――
「こんな離れたところで小競り合いとはな!」
「だが、それが災いしたな!
助けは期待できねぇぜ!」
口々に言って、ビークルモードのサイクロナスとスナップドラゴンが彼らに攻撃を仕掛けてくる!
さらに、地上からはキャンサー達やエイプフェイスが追いつき、メガデストロイヤーへと攻撃をかける。
「あー、もうっ! こんな時に!」
意外な乱入者の出現に、思わずキングコンボイがうめき――
「どこを見ている!」
そんなキングコンボイを、メガザラックがブリューナクで叩き落とす!
「覚悟が足りんぞ!
たかが乱戦になっただけでよそ見とはな!」
咆哮し、メガザラックはメガデストロイヤーの甲板上に叩きつけられたキングコンボイへと突撃。ブリューナクを繰り出し――
「――――――っ!」
思わず目を背けるキングコンボイだったが――必殺の一撃は襲ってはこなかった。
どういうことかと視線を戻し――
「お、お前は!?」
そこにいた、ブリューナクを防いだ人物を前に思わず声を上げた。
キラーパンチだ――両手にドリルとスクレーパーを装備し、ブリューナクを受け止めている。
「貴様……どういうつもりだ?」
自分達をセイバートロン星へと導いておいて、今度はジャマをする――キラーパンチの意図が読めず、メガザラックはブリューナクに力を込めたまま尋ねる。
だが――
「それは……こちらのセリフだ……!」
メガザラックのパワーに耐えながら、キラーパンチはうめくように告げた。
「貴様……その手でキングコンボイを倒すということがどういうことか、わかっていないのか……!?」
「わかっているさ!
我らの道を阻む敵を――討つということだ!」
言い返し、メガザラックはキラーパンチを弾き飛ばすと、再びキングコンボイへと向き直る。
「今度こそ――終わりだ!」
言って、メガザラックがブリューナクに力を込め――
「やめろ!」
そんなメガザラックに、キラーパンチは悲鳴に近い声を上げた。
「貴様――」
「自分の息子を討つつもりか!?」
『――――――っ!?』
その言葉は、メガザラックだけでなくキングコンボイにも衝撃を与えた。驚愕し、二人は共に動きを止める。
「どういう……こと……!?
ボクが……メガザラックの息子だって……!?」
目を見開き、尋ねるキングコンボイの言葉に、己の失言に気づいたキラーパンチは思わず視線をそらしていた。
(初版:2007/02/04)