無限に続く漆黒の大宇宙――そんな中を、今1隻の艦が静かに航行していた。
スーパースタースクリーム一派の拠点である、アトランティスである。
「順調だな。
ここまで来れば追撃もあるまい。ギガロニアへの時空トンネルの位置も、ゆっくり分析できるというものだ」
地球での“闇の書”を巡るゴタゴタもどうやら収束したようだ――そんなことを考えながら、スーパースタースクリームは何の気なしにつぶやいた。
決着を待たずしてアトランティスに戻っていたスーパースタースクリームだったが、プライマスのスパークによって彼の知覚は一種の特殊性を得ていたようだ。感じ取れた“力”の様子から、地球での様子はなんとくだが理解できていた。
と――
「確かに、今ギガロニアにもっとも近いのは我々ですが……油断は禁物です」
そう進言するのはノイズメイズだ。
「ノイズメイズの言うとおりです。
ギガロニアの位置を特定できるのは我々だけではない――プラネットフォースの位置を示すマップを取り戻したサイバトロンもまた、ギガロニアへのゲートの位置を特定し、向かうはずです。
連中が動き出す前に、少しでも先行しておかねば……」
「わかっている」
同意するサイクロナスに答え、スーパースタースクリームは拳を握り締めた。
「ギガロニアにある最後のプラネットフォースは、必ず私が手に入れる」
そう――プラネットフォースは必ず手に入れる。
少なくとも他の勢力には渡せない――
(サイバトロン以外の連中は、プライマスにプラネットフォースを渡しはしないだろうからな……)
胸中でそう付け加え、スーパースタースクリームはブリッジのメインモニタに映る漆黒の宇宙空間をにらみつけた。
第67話
「激突! 砕け散る野望なの」
なのは達と和解し、別働隊として一足先にミッドチルダのプラネットフォースを回収に向かったメガザラック達ウィザートロン。
彼らを見送った後、なのは達は一路セイバートロン星へと向かった。
今までに手に入れた3つのプラネットフォースと、ギャラクシーコンボイ、ジャックプライムの持つマトリクスの力を使った、グランドブラックホール消滅作戦の準備のためである。
もちろん、それが失敗に終わった時のためにギガロニアに向かう準備も忘れてはいない。以前のセイバートロン星での戦いの際、スーパースタースクリームから取り戻したマップをベクタープライムが解析し、ギガロニアのある宇宙に続く時空の穴の場所の特定作業が急ピッチで進められていた。
「思ったよりも、作業に時間がかかってしまったな……」
「仕方あるまい。
プライマスのスパークの力を一点に集中してぶつけなければ、グランドブラックホールを消滅させるほどのパワーは発揮できないのだから」
グランドブラックホール消滅作戦の実行のためには、プライマスの全身を循環するプラネットフォースの力を一点に凝縮する必要があった――動力伝達形の変更作業の進む中、ギャラクシーコンボイは自分の担当区画の作業完了を伝えに来たライブコンボイにそう答える。
と――
「ギャラクシーコンボイ」
「ボクらの作業も終わったよーっ♪」
「我々も完了だ」
言って、ニトロコンボイとジャックプライム、スターセイバーもまた指令室へとやってきた。
「これであとは……」
これでほとんどの班の作業が終了。残りの面々のことを思い出し、なのはがつぶやくと、
「だから、お前があそこで余計なことをしなきゃもっと早くすんだんだよ!?」
「なんだと!?
貴様、オレのせいだと言うのか!?」
「事実そうだろうが!
メカのことなんかわかんねぇくせに余計なことしやがって!」
ギャアギャアとわめきながら入ってきたのは残りの1班――フレイムコンボイとブリッツクラッカーだ。
言い争いに夢中な二人に聞いてもまともな答えは期待できまい――そう考えたギャラクシーコンボイは二人に協力していた晶と恭也に尋ねた。
「作業は終わったのか?」
「一応ね」
答えて、晶はため息まじりに肩をすくめた。
「うまくいったんなら、どうしてあの二人はケンカしてるの?」
と、今度はフェイトが尋ねる。
「いや……それが、作業の途中でフレイムコンボイが再三接続を間違えてさぁ……」
「あー、なるほど……
確かフレイムコンボイのおったアニマトロスは、機械文明は発達しとらん、って話やったもんねぇ……」
思わず納得し、はやてが苦笑すると、
「仕方ないなぁ……」
彼女達の傍らでため息をつき、なのはは懐からそれを取り出した。
なんとなく――なのはの意図が読めた。レイジングハートを取り出し、起動させた彼女の行動に、ギャラクシーコンボイ達はそそくさと指令室を後にして――
数秒後、ケンカしていた二人はなのはによって鎮圧されることとなった。
その頃、宇宙の一角では――
「…………どうしたんだ? マスターメガトロン様」
「さぁね」
尋ねるインチプレッシャーに、クロミアはそう答えて肩をすくめてみせる。
彼らの目の前では、マスターメガトロンが無言で考え込んでいる――なんとなく声がかけづらくて、二人は困惑して顔を見合わせるしかない。
そんな二人の視線が自分に向いていることも気づかず、マスターメガトロンが考えるのは先日の地球での戦いのこと――
(ヤツらが、仲間と協力し合うことでより強くなれることは理解した。
だが――それが何だというのだ? いかに強くなれるといっても、元々が強くなければそれもたかがしれている。
結局、個人の力が強くなければ何の意味もない――やはり“個の力”こそが最強だということではないのか……?)
共に戦うことで、なのは達の力の源を知ることはできたが、果たしてそれが本当に真理なのか――そこまで結論付けるには、まだマスターメガトロンは自らの個人能力主義を捨てきれずにいた。
なのは達の力も、自分の力も、肯定できないと同時に否定もできない――そんな思考の悪循環に、マスターメガトロンは自分でも気づかぬうちに陥っていた。
「……やはり、ギガロニアで雌雄を決するしかあるまい。
ヤツらの“絆の力”とオレの力、どちらが勝るかでな……」
ポツリ、とマスターメガトロンがつぶやいた、その時――
「ギガロニアへ行きたいか?」
「――――――っ!?」
突然の声にとっさに周囲を見回すが、声の主の姿はない。
振り向いても、インチプレッシャーやクロミアも『自分じゃない』とばかりに手をパタパタと振って――そんな彼らの間を、何かが駆け抜けた。
漆黒の鳥型ロボットである。彼らの間を駆け抜けたそれは、やがて太陽の方角へと飛翔し――
「む――――――?」
そこでようやく、マスターメガトロンは太陽を背に佇む、1体のトランスフォーマーの存在に気がついた。
「貴様……いつの間に!?」
思わずうめくマスターメガトン――そんな彼の背後で、インチプレッシャーはポツリとつぶやいた。
「あれだけ考え事に夢中になってて、『いつの間に』も何もないっスよね」
間。
「貴様……何者だ?
名を名乗れ!」
とりあえず余計なことをほざいたインチプレッシャーを殴り飛ばし、改めて尋ねるマスターメガトロンに、そのトランスフォーマーは静かに答えた。
「私の名はサウンドウェーブ。そしてこいつはキラーコンドル。
キミ達をギガロニアに案内しよう」
「何………………?」
突然現れ、自分達をギガロニアに導くと言い出した謎のトランスフォーマー、サウンドウェーブ――さすがに訝るマスターメガトロンの前で、当人はただ悠然と佇んでいた。
その頃、セイバートロン星ではグランドブラックホール消滅作戦の準備が完了。後は実行を待つばかりとなっていた。
「これより、グランドブラックホール消滅作戦を開始します!」
「了解!」
「作戦、開始します!」
ギャラクシーコンボイはプライマスにマトリクスの力を供給するため、ジャックプライムと共にチップスクェアへと向かっていて不在――彼に代わり、指令室の中央で音頭を執るリンディの言葉に答え、バックギルドとパーセプターがコンソールを操作。システムを立ち上げていく。
「胸部エネルギー回路に、スパーク転送開始!」
二人の準備が整ったのを受け、さらにファストガンナーがコンソールを操作。チップスクェアが活性化し、プライマスの胸部に据えられた固定砲塔にエネルギーが集中されていく。
そして――
「いくぞ、ジャックプライム」
「うん!」
チップスクェアの前に佇むのはギャラクシーコンボイとジャックプライムだ。二人は胸部装甲を展開してマトリクスを取り出し、チップスクェアへと“力”を注ぎ込み、
「オォォォォォッ!」
天をも衝かんとする咆哮と共に、プライマスが胸部から放った閃光がグランドブラックホールに突き刺さる!
「む………………?」
アトランティスの艦内――突如それを感じ取り、スーパースタースクリームは顔を上げた。
「どうしました? スーパースタースクリーム様」
「質問の前にまずはそのアフタヌーンティーセットを片付けろ。
どこから出したんだ、そんなもの」
航行中は実質ヒマなことに便乗し、優雅にお茶を楽しんでいたヘルスクリームにツッコむと、スーパースタースクリームは改めて答えた。
「……プライマスが“力”を使った」
「プライマスが……?
よくわかりますね」
感心するラナバウトに答えることもなく、スーパースタースクリームは意識を集中させて様子を探り――
「………………ん?」
ふと、プライマスの元に近づいている存在に気づいた。
その周囲には別の気配。彼らは――
(……周りにいるのは……
だとすると、中心にいるのは“ヤツ”か? だが、この気配は……)
「様子はどうだ?」
「順調です。
グランドブラックホール、収縮を開始しました」
ジャックプライムと共に指令室に戻り、尋ねるギャラクシーコンボイにはフォートレスが答えた。
「これで、宇宙は救われるのか……」
「そうであってほしいが……」
つぶやくスターセイバーにベクタープライムがつぶやくと、
「………………ん?」
ビッグコンボイがそれに気づいた。映像のすみに現れたそれに気づき、懸命に目をこらし――
「――――――っ!?」
その正体に気づき、思わず息を呑んだ。
「はやて! あれを!」
「え………………?」
ビッグコンボイの言葉に、はやてもまた彼の示した存在へと視線を向け――気づいた。
「そんな……まさか…………!?
あれって――」
「スカイクェイク……!?」
「ぅわぁ……なんかスゴいことになってますね……」
プライマスから伸びる光の渦が、まっすぐにグランドブラックホールに突き刺さっている――スケールの大きすぎるその光景を前に、さすがのタートラーも圧倒されてうめくようにつぶやく。
「どうしますか? スカイクェイク様」
現状に対しどう動くべきか――指示を求めようとするレーザークローだったが、
「知るか。
貴様らは貴様らでなんとかしろ」
あっさりとそう言い放つと、スカイクェイクは荒れ狂う光の渦へと飛翔する。
「す、スカイクェイク様!?
危ないっスよ!」
あわててハングルーが声を上げるが、スカイクェイクはかまわず光の渦に向かう。
その身が光の渦に飲み込まれ――次の瞬間、渦が弾けた。
「アイツ、一体何を…………!?」
その様子は、ギャラクシーコンボイ達も一部始終をモニタしていた。スカイクェイクの意図が読めず、ニトロコンボイがうめくようにつぶやく。
彼らの眼前では、スカイクェイクの飛び込んだ辺りを中心に、プライマスの放ったエネルギーが球状となって渦巻いている。
それはさながら太陽のようにも見えるが――
「………………っ!」
最初に異変を感じ取ったのははやてだった。全身を得体の知れない悪寒が襲い、車椅子の上でその身を抱えてうずくまる。
「はやて!?」
「どうされました!?」
あわててヴィータとシグナムが駆け寄ると、はやては告げた。
「あかん……!
この感じ……間違いない……!
“あの子”は……消えてへんかった……!」
「あの子……?」
つぶやくはやてになのはが聞き返した、その時――
「なのは、見て!」
そんななのはに、美由希が鋭くそう告げた。
視線を戻すなのはの目の前で、太陽のごとく輝いていたエネルギー塊に変化が生まれた。
その中から、巨大な腕が現れたのだ。
「な、なんだ、あれは……!?」
うめくシルバーボルトの言葉と同時に、今度は足がエネルギー塊の中から飛び出す。
「まさか……あれは……!?」
「スーパースタースクリームの時と、同じ……!?」
恭也と忍がつぶやくと、光の中に巨大なシルエットが浮かぶ。
もう間違いない。驚愕の事態を前に一同が言葉を失う中、ついに光の塊が完全に弾け飛び――
「スカイクェイクが……巨大転生した……!?」
うめくギャラクシーコンボイの目の前で、惑星サイズにまで巨大化したスカイクェイクは悠然とプライマスと対峙する。
「ククク……フハハハハッ!
“力”だ……“力”を感じるぞ。
“ヤツ”の導きは間違ってはいなかった! オレは今、最強の力を手に入れたのだ!」
巨大になった自らの身体を見下ろし、スカイクェイクは勝ち誇って高笑いの声を上げる。
「この力があれば、プライマスとて恐るるに足りん!
覚悟しろ、プライマス――貴様を粉砕して、憎きビッグコンボイを引きずり出してくれる!」
「はやてちゃん、大丈夫?」
「う、うん……もう平気や。ありがとうな」
心配そうに声をかけるなのはに、はやてはそう答えて身を起こす。
「はやて……一体何を感じたんだ?
スカイクェイクに、一体何が起きている?」
そんなはやてにギャラクシーコンボイが尋ねると、彼の傍らでビッグコンボイが答えた。
「おかしいとは思わないのか?
ルインコンボイに瞬殺され、リインフォースの自爆を受け――それでもヤツはこの短期間で傷を全快させてきた」
「そういえば……
我々トランスフォーマーの技術をもってしても、あそこまでの急激な回復は不可能です」
「それに、身体の色も変化していますね……完全に黒一色だ……」
ファストガンナーとバックギルドの同意にうなずき、ビッグコンボイは続ける。
「あれほどの超回復能力を持つ漆黒のボディ――オレ達はつい先日目にしているはずだ」
『――――――っ!?』
その言葉に、なのは達はビッグコンボイの言いたいことに気づいた。一同の間に戦慄が走る。
「まさか……ヤツは……」
「あぁ、そうだ」
うめくベクタープライムに答え、ビッグコンボイは告げた。
「取り込んだんだよ。
消滅しきれずに残っていた――“闇の書”の防御プログラムの残滓を」
「そんな……そんなことって……!」
モニタに映るスカイクェイクの巨体へと視線を戻し、フェイトがうめくと、
「…………くそっ!」
「――――――っ!?
待て、ヴィータ!」
すぐさま走り出し、指令室を飛び出していこうとするヴィータを、クロノはあわてて引き止めた。
「どうするつもりだ!?」
「決まってるじゃんか!
倒すんだよ、ヤツを!」
尋ねるクロノに、ヴィータは真剣な表情で言い返す。
「リインフォースが命を捨てて……はやてがあんなに泣いて……そこまでして、やっと倒したと思ってたのに……!
これじゃ、リインフォースが浮かばれねぇよ!」
だが、そんな彼女を止めたのはクロノではなかった。
「落ち着くんや、ヴィータ」
「はやて……?」
「惑星サイズにまで巨大化してもうたスカイクェイクが相手なんよ。
いくらわたし達が力を合わせても、まともにやって勝てる相手やない」
「けど――!」
反論しかけ――ヴィータは気づいた。
はやてが、車椅子の手すりを強く握り締めていることに。
「ガマンしてや、ヴィータ……!
わたしはもう、誰にも哀しい想いはしてほしくない……ヴィータ達のマスターとして、このまま出てってやられてまうことを許可できへん……!」
「はやて……
…………ゴメン……」
彼女とて悔しいのだろう。だが、それでも現状を見据えて耐え忍んでいる――はやてのそんな内心に気づき、ヴィータはなんとか思いとどまり、はやてに謝罪する。
「はやての言うとおりだ。
今のスカイクェイクに対抗できるのは……プライマスだけだ」
自身も出ていきたいのを懸命にこらえているのだろう、腕組みしている手を強く握り締めたビッグコンボイがそう告げるが、
「…………マズいですね……」
突然そんなことを言い出したのはフォートレスだ。
「マズい?
何がマズいんですか?」
尋ねる秋葉の問いには、傍らの琥珀が答えた。
「今、プライマスさんはグランドブラックホール消滅作戦のために胸部にスパークのパワーを集中させちゃってます。
スパークはトランスフォーマーにとって動力源も同じ――それが全身に循環していない今の状態では、まともに動くこともできません」
「そんな!
それじゃあ、いくらプライマスでもまともに戦えないじゃないですか!」
琥珀の言葉に志貴が声を上げ――そんな中、ギャラクシーコンボイがいち早く動いた。
「バックギルド、シールドを展開しろ!」
「は、はい!」
「他の者は手分けして、プライマスのスパークの流れを元に戻す作業に取りかかるんだ!」
『了解!』
ギャラクシーコンボイの言葉に、一同はすぐに動いた。先の準備作業の時と同じように、手分けしてプライマスのスパークの伝達系を変更した現場へと向かった。
「いくぞ――プライマス!
フォースチップ、イグニッション!」
咆哮し、スカイクェイクはフォースチップをイグニッション。デスシザースをかまえ、プライマスに向けて斬りかかる。
だが――バックギルドの展開したシールドが間に合った。青く輝く防壁が、スカイクェイクの斬撃を受け止め、弾き返す。
「ほぉ……今のオレの斬撃を止めるとは、大したシールドだ。
だが、守っているだけではこのオレは倒せんぞ!」
告げるスカイクェイクだが、当然プライマスからの反応はない。
「あくまで守るだけか……それもよかう。
貴様のその防御――破ってみせるのもまた一興」
そんなプライマスに対して笑みを浮かべ、スカイクェイクはデスシザースをアーチャーモードへと変形させ、
「せいぜいしのいでみせろよ――プライマス!」
放たれた閃光の矢が、プライマスのシールドに叩きつけられる!
「くっ、なんて猛攻だ……!」
スカイクェイクの猛攻は、プライマスの身体を激しく揺らす――作業指揮のために指令室に残ったギャラクシーコンボイが思わずうめくが、それでスカイクェイクの攻撃が止むワケがない。
「マズいですよ、ギャラクシーコンボイ総司令官!」
「シールド出力低下――このままではもちません!」
あわてて声を上げるのはバックギルドとパーセプターだ。彼らの手元のモニタには、プライマスの全身のシールドシステムの各所に異常が発生していることが示されている。
「このままじゃ……!」
もはや時間の猶予はない――さすがに不安を感じ、なのはがつぶやくと、
〈こちらアルクェイド!
Bブロック、作業完了!〉
〈ニトロコンボイだ。
Aブロックも終わったぜ〉
〈ジャックプライム! Eブロック完了でぇーっす!〉
懸命にがんばってくれた仲間達から、次々に作業完了の報告が入る。
だが――現状は待ってはくれなかった。残りのブロックの作業完了を待たず、ついにプライマスのシールドが崩壊する!
「ここまでのようだな……プライマス。
デスシザース、バスターモード!」
勝利を確信し、スカイクェイクがデスシザースをバスターモードへと変形させ――
「Dブロック、作業完了!」
自分達の作業を終えたガードシェルが指令室に報告し――
「これで……終わりだ!」
スカイクェイクが告げる中、デスシザースの銃口に光が生まれ――
「Fブロック、作業完了だ!」
ブリッツクラッカーと共に作業を完了したフレイムコンボイもまた指令室に報告。そして――
「Cブロック完了!
全作業、完了しました!」
「うむ!」
ファストガンナーの報告にうなずき、ギャラクシーコンボイは振り向き――
「死ねぇぇぇぇぇっ!」
ついに、デスシザースから閃光の渦が解き放たれ――
「バックギルド!」
「はい!」
ギャラクシーコンボイの言葉に従い、バックギルドがシステムの再起動ボタンを思い切り叩き押し――
起動したプライマスが、デスシザースの閃光を弾き飛ばしていた。
「なん、だと……!?」
突然の再起動に驚き、さすがに動きを止めるスカイクェイクの前で、プライマスは無言で両腕をかまえ、そこに備えられたチップスロットへとフォースチップをイグニッション。起動した巨大な砲塔“ブライトネスショット”でスカイクェイクを狙う。
「なんの!」
だが、スカイクェイクも負けてはいない。とっさにシールドモードへと変形させたデスシザースでその一撃を受け止めてみせる。
「バカめ。
今さらそんな程度の攻撃で、オレを止められるとでも思ったのか?」
悠然と告げるスカイクェイクだが――そんな彼の目の前で、プライマスは両手にエネルギーを集中させる。
だが――スカイクェイクはそのエネルギーの正体に気づき、眉をひそめた。
「トラクタービームだと……?」
そう。それはセイバートロン星の宇宙港で艦船を係留するのに使うトラクタービームを高出力化したものだった。そんなものをいったいどうするというのか――?
訝るスカイクェイクだったが、そんな彼にかまうことなく、プライマスはトラクタービームで作られた光の帯を解き放ち――それはプライマスの左右に漂う、セイバートロン星の二つの月にからみつく。
そこに至って――スカイクェイクはプライマスの意図に気づいた。
「ま、まさか!?
それは月ではなく――」
うめくスカイクェイクの前で、プライマスは大きく振りかぶり――
「貴様の武器だったとでも言うのか!?」
繰り出された月が、巨大な鈍器となってスカイクェイクを次々に打ち据える!
「ぐぅ………………っ!」
すさまじい衝撃に吹き飛ばされながらも、スカイクェイクは何とか体勢を立て直す――が、プライマスもすぐに追撃に移った。背中のブースターで上昇。グランドブラックホールの超重力を利用して急降下し、渾身のムーンアタックをスカイクェイクに叩き込む!
「ぐわぁぁぁぁぁっ!」
完全なまでのクリーンヒット――もはや受身すらもままならず、吹き飛ばされたスカイクェイクはグランドブラックホールに飲み込まれていた惑星のひとつに激突。自らと同じくらいの巨体の直撃を受けた惑星はすぐさま崩壊を始め――数秒後、スカイクェイクは惑星崩壊の大爆発の中に消えていった。
「やった!
今度こそ、スカイクェイクの最期だ!」
最初はヒヤヒヤさせられたが、終わってみれば創造神の圧勝。戦いの決着を確信し、バックギルドが声を上げるが、
「果たしてそうだろうか……」
対し、ギャラクシーコンボイは浮かない顔だ。腕組みして考え込むそのとなりでビッグコンボイもうなずき、
「ヤツはその執念で“闇の書”の防御プログラムを取り込み、死の淵からよみがえってきた……
その執念が、果たして終わりを迎えるだろうか……」
本当ならばすぐにでも確認に出たいが、惑星規模の大爆発の後では、生きていたとしてもどこに吹き飛ばされたかわからない。
今回はあきらめるしかないか――静かに息をつき、ビッグコンボイははやてへと向き直った。
「安心しろ、はやて。
たとえ生きていようと、ヤツはオレ達で必ず倒す。
そして、ヤツに巣くう防御プログラムを今度こそ完全に消滅させる――それが、今のオレ達にできる、リインフォースへの手向けだ」
「ビッグコンボイ……」
その言葉に、ずっと不安げにしていたはやての顔にようやく笑顔が戻った。
「せやね……
もう二度と、あの子みたいな子を出したらあかん……そのために、わたし達はがんばらんとあかんのやからね」
「そうだね。
がんばろう、はやてちゃん!」
《同じデバイスとして、リインフォースさんの願いは叶えさせてあげたいもん!
わたし達も手伝うよ、はやて!》
「その意気だ」
はやてや彼女を励ますなのは、プリムラの言葉にビッグコンボイがうなずくと、
「…………む……?」
ふと、ベクタープライムは傍らのコンソールにメッセージが表示されているのに気づいた。
そしてそれは――彼の待ち望んでいた報告でもあった。すぐに振り向き、ギャラクシーコンボイに報告する。
「ギャラクシーコンボイ。
マップのデータの分析作業が終了したようだ」
「何?
では……」
「うむ」
聞き返すギャラクシーコンボイに答え、ベクタープライムは告げた。
「ギガロニアへのゲートの位置が、判明した」
(初版:2007/04/08)