「うん……うん……大丈夫。
この忍ちゃんにドーンと任せてください!」
スカイドームの指令室で、忍は携帯電話に向けて笑顔でそう告げた。
携帯電話には通信システムから伸びたコードがつながっている――基地の通信システムを使って、地球と連絡を取っているのだ。
「じゃあ、また今度連絡しますから♪」
言って、忍が携帯電話の通話を切ると、
「ここにいたのか」
そこへ、恭也が顔を出してきた。
「そろそろミーティングルームに行くぞ。
ベクタープライムの説明が始まる」
「うん、今行く」
「ところで、誰と話してたんだ?」
「秘密♪
ま、その内わかるから」
尋ねる恭也に答え、忍は彼と共に指令室を出て、一路ミーティングルームへと向かった。
第68話
「ギガロニアの旅立ちなの」
「時空トンネルは、現在ガイコツ座星域、暗黒ガス雲の中にあると判明した」
「セイバートロン星から、約五千光年の距離です」
集まった一同を前に説明するベクタープライムの言葉に、バックギルドは端末でデータをまとめながらそう付け加える――
なのは達は現在スカイドームに集合、ミーティングルームでベクタープライムが特定したという時空トンネルの場所についての説明を受けていた。
と、今度はファストガンナーとパーセプターが説明を始めた。
「時空トンネルは、我々の宇宙とギガロニアのある宇宙を結んでいる」
「当初の予想通り、時空トンネルの中は極めて不安定な空間となっている――内部は、時間と空間の捻じ曲がった、想像を絶する世界だ」
「そんなところに突っ込んだら、一体どうなっちまうんだ?」
「最悪――時空に対する感覚が崩壊するかもれないんだ」
尋ねるライガージャックに答えるのはユーノだ。そんな彼に、今度は恭也が尋ねた。
「どういうことだ?」
「あー……要するに、物質的な存在と非物質的な存在、この二つを認識する感覚がメチャクチャになってしまうんです」
そう答えて、ユーノは息をつき、
「そうなると、最悪の場合肉体と精神、この二つの認識もあいまいになって――結果、つながりの弱くなったこの二つが分離してしまう可能性があります」
「つまり、身体と心が分かれちゃう、ってこと?」
「そう」
なのはの問いにユーノが答える傍らで、ドレッドバスターはなんとなくその様子をイメージしてみて――あまりいい場面ではなかったようだ。思わず頭を抱える。
「冗談じゃない。そんなもの!」
「心配ない。
そうならないための、予防プログラムを開発した――これをインストールすれば、大丈夫だ」
うめくドレッドバスターに、ファストガンナーは苦笑まじりにそう答えた。
「守護騎士のみんなやノエル、ファリン……それからレイジングハート達デバイスの面々も、念のためインストールしておいたほうがいいだろう。
我々と仕組みは違っても、プログラムと人格データによって意思を保っている点は変わらないからね」
「わたし達は?」
尋ねるフェイトにはジャックプライムが答えた。
「なのは達には前にも説明したんだけど……人間の有機頭脳は、時空を超えられる存在であるマイクロンと構造が似てるから、時空トンネルに対しても適応できるの」
「なら大丈夫やね。
ウチらだけお留守番、なんてことになったらどないしようかと思ってたわ」
安堵し、レンが胸をなで下ろすと、ソニックボンバーが自信たっぷりに腕まくりする仕草を見せ、
「じゃ、準備ができしだい、とっとと出発しようぜ」
だが、そんな彼に待ったをかけたのはある意味予想外の人物だった。
「ちょっと待って、ソニックボンバー」
「リンディさん?」
「その前に、私達がギガロニアに向かう際に乗り込む、船についてなんだけど……」
疑問の声を上げるソニックボンバーにそう告げ、リンディはギャラクシーコンボイへと向き直り、
「現在私達が運用できる艦船はアースラ、マキシマス、そして戦艦トランスフォーマーであるグランダス――都合3隻とカウントできます。
けど、グランダスは言うまでもなく、マキシマスもフォートレスのボディとして機能しますから……事実上、拠点として使える艦はアースラだけとなります。
手分けしてプラネットフォースを探す事態を想定すると、せめてあと1隻くらいは用意しておきたいところなんですけど……」
「まさか……管理局からは艦を回せないとか?」
なんとなく話が見えた――尋ねる恭也に、リンディは沈痛な面持ちでうなずいた。
「今のところ、トランスフォーマーを運用できる規模の艦の空きがなくて……」
「つまり、別のツテから用意しなきゃならないワケか……」
思わず肩をすくめてビクトリーレオがうめくと、真雪がとなりに立つガードシェルに尋ねた。
「なぁ、お前らは宇宙船とか持ってないのか?」
「スペースブリッジで事足りていたからなぁ……セイバートロン星では、もう何世代も前から宇宙船は使われていないんだ」
言われてみれば確かにそうだ。
「造船ドックは残っているから、作ろうと思えば作れるんだが……時間がかかりすぎる」
「そんなの待ってられないっての」
真雪の言葉は全員の総意だった。どうしたものかと考え込む。
「どっかに、宇宙船とか落ちてないもんかねぇ……」
「って、そんなワケないだろう」
うめくアルフにファングウルフがツッコむが――
「いや。そうでもないよ」
「意外と近くに落ちてるかもしれないわね」
『………………?』
なにやら意味深なことを言い出したバックギルドとアリサの言葉に、一同は思わず顔を見合わせる。
「アリサちゃん、それってどういう――」
その真意を聞きだそうとすずかが口を開いた、その時――突然通信が入った。
その相手は――
〈こちらデモリッシャー。聞こえるか?〉
「デモリッシャー……?」
「そういえば、ここのところ彼や地球の合体戦士チームの姿を見ていなかったけど……」
思わずつぶやくライブコンボイと真一郎の言葉に、バックギルドとアリサはどこか楽しげに視線を交わしていた。
そんな彼らの真意は、意外な形で判明した。
デモリッシャー達を出迎えるためにスカイドームから出たなのは達の前に、“答え”がその姿を現したのだ。
上空に滞空する“それ”を前に、ビクトリーレオとヴィータがうめく。
「…………アトランティス……?」
「いや……けど、アトランティスはもっとボロボロのはずだろ?」
そう。それはどう見てもスーパースタースクリーム達に奪われたはずのアトランティス――だが、その船体には一切の破損がなく、多少ほこりをかぶった印象がある以外はほぼ新品同様な雰囲気がある。
と――ワケがわからないでいる一同に、バックギルドが説明を始めた。
「あれはアトランティスではありません。
はるか昔、スピーディアに向かった移民船です」
「スピーディアに、でござるか?」
メビウスコンボイが聞き返すと――
「よっ、と!」
「はっ!」
声を上げ、デモリッシャーとホットスポットがシェリーや都古、そしてプロテクトボットやダイノボットの面々と共に移民船から飛び降りてきた。
「すげぇじゃねぇか!」
「どうしたんだ? こんな大きな船……」
「それは、オレよりニトロコンボイの方が詳しく説明できるさ」
すぐさまデモリッシャー達を取り囲み、ブレインストームやブラッカーがはやし立てる――興奮気味に説明を求める彼らにデモリッシャーはニトロコンボイへと視線を向けてそう答える。
「ニトロコンボイに……?」
首をかしげてレールスパイクが振り向くと、ニトロコンボイは息をついて説明を始めた。
「スピーディアに伝わる、伝説のことを思い出したんだ。
はるか昔、天から降りてきた伝説の船――さっそくデモリッシャーやプロテクトボット、ダイノボット達に頼んで、発掘調査を行ってもらっていたワケだ」
「なるほど……よく考えてみたら、スペースブリッジのつながってなかったスピーディアにニトロコンボイの先祖達がたどり着くには、当然スターシップを使ったに決まってるものね……」
思わずシャマルが納得すると、そのとなりでザフィーラがニトロコンボイに尋ねた。
「それで……この船の名前は?」
「我々の伝承では、『ムー』という名を伝えている」
「ムー!?」
答えるニトロコンボイの言葉に思わず声を上げたのは美由希だ。
「地球には、ムーって名前の失われた大陸の伝説があるよ!」
その問いには、ライブコンボイがしばし考えた末に答えた。
「おそらく、地球に移住したボクらの先祖が伝えた他のスターシップの名が、アトランティスと同じように『失われた大陸』の名として伝わったんだろう。
移民世代となれば、当然自分達と同じように旅立ったみんなの船のことも知っていたはずだからね」
「ってことは、アニマトロスのスターシップは……レムリアとか?」
つぶやき、美由希はフレイムコンボイやブレイズリンクスに回答を求めるが――
「オレ達に聞くな」
「我輩もフレイムコンボイも勉強はからっきしだったからなぁ……
ファングウルフも歴史は専攻していなかったし……サイドス先生ならば知っているかもしれないが……」
(サイドスさんの授業って専攻式だったんだ……)
二人の答えに、なのはが場違いな感想を抱いていると、その一方でギャラクシーコンボイはドレッドバスターに告げた。
「ドレッドバスター。至急発進準備にかかってくれ」
「了解しました」
そんなこんなで、ギガロニアに出発するための準備が本格的に始まった。
ムーへはもちろんのこと、アースラやマキシマス、グランダスにもギガロニア探索のために必要となるであろう資材が次々に積み込まれていく。
そんな中――
「………………?」
アースラへと資材を積み込み、次を運ぼうと外に出たガードシェルは、すずかや忍、そして琥珀がロングマグナスにいくつかのコンテナを運んでもらっているのに気づいた。
「一体、何を運んでるんだ?」
「それは、まだ秘密♪」
尋ねるガードシェルだが、忍はイタズラっぽく笑ってそう答えるのみ。説明を求めようとロングマグナスに視線を向けるが――
「ボクも知りませんよ」
「私達にも、中身が何なのか教えてくれないんですよ」
「久遠も、しりたいのに……」
「ふむ…………」
ロングマグナスや那美、久遠の答えに、ガードシェルはしばし考え――
「………………ま、いっか」
倉庫の容量には余裕がある。彼女達の荷物くらいなら問題はないだろう――そう判断し、ガードシェルは追求をあきらめて自分の作業に戻っていった。
「ではこれから、予防プログラムのインストールを始める。
順番に並んでくれ」
「インストールの際、少し痛みを感じるだろうが、ガマンしてくれよ」
準備も取り急ぎ進めなければならないが――こちらも忘れてはならない。作業の合間に一同を指令室に集め、ベクタープライムとファストガンナーが彼らに指示を出す。
インストールに使うのは、まるでアンプルのようなデザインの接続デバイスだ。先端がエネルギー塊による非実体の接続端末になっており、装甲越しに回線にアクセス、高速でデータのインストールを行うのだ。守護騎士達に使われるのも、大きさが違うだけで同じ仕様のものである。
最初のインストールは先頭に並んだガードシェルだ。デバイスを押し付けた瞬間、痛みが走ったのか一瞬顔をしかめるが――何事もなくインストールは終了する。
インストールを終え、ガードシェルは列を離れ――そんな彼にライガージャックが尋ねた。
「なぁ、痛かったか?」
「あぁ、少しな」
「えぇっ!?
少しって、どれくらい!?」
「……まるで、予防注射みたいだね」
「う、うん……」
答えるガードシェルの言葉に、ライガージャックの後ろに並んでいたジャックプライムがあわてて聞き返す――そんな様子を見て、フェイトは耳打ちしてくるなのはに苦笑まじりでうなずいてみせる。
「わたしは経験ないんだけど……やっぱり、注射って痛いの?」
「そんなことないよ。ちょっとチクッ、ってするだけ。
ね? シグナムさん?」
「あぁ。
戦いの痛みに比べれば、注射などどうということはない」
フェイトに答え、話を振ってくるなのはに、シグナムは落ち着いた様子でそう答える。
守護騎士の面々も使い方を教わった耕介からインストールを受けている――後ろで残念そうな顔をしている忍や琥珀はとりあえず無視だ。
見れば、その性格から嫌がりそうに思われたヴィータとプリムラも、比較的おとなしく注射を受けている。
「全員済んだかな?」
ともあれ、列に並んでいた面々には一通りインストールが行われ――尋ねるファストガンナーの問いに、一同は顔を見合わせ、互いにインストールを確認し――
「……そういえば、ドレッドバスターはまだだよな?」
「ん?
あ、あぁ……」
尋ねる志貴に答えるドレッドバスターだが――その態度はどこか歯切れが悪い。そのまましばし考えると、ギャラクシーコンボイに声をかけた。
「ギャラクシーコンボイ総司令官。お話が……」
「どうした?」
「私は、ここに残ろうかと思うのですが……」
「えぇっ!?
いきなり何言い出すんだよ?」
思わず声を上げるエクシゲイザーだが――そんな彼に答える形で、ドレッドバスターはギャラクシーコンボイへと続けた。
「まだ完全でないプライマスを残して、全員で旅立ってしまって良いのでしょうか?
誰かが残って、プライマスと共にいた方が……」
「ふむ……」
確かに言われてみればそうだ。ギャラクシーコンボイは思わず考え込み――そんな中、突然指令室に光があふれた。
突然、指令室の中央に光の塊が生まれたのだ。その正体は――
――心配は無用だ。サイバトロンの戦士達、そして人間の勇者達よ――
「この声は……プライマス……!?」
「とうとう復活されたのですね?」
――まだ完全ではないが、私の機能は順調に回復している――
声を上げるベクタープライムとギャラクシーコンボイに、彼らに声を伝えてきたプライマスはそう答える。
――私はここに残り、グランドブラックホールの消滅を試みる。安心して行くがいい――
そう一同に告げ――プライマスの意思の光は再び消えていった。
「よかった……
これで一緒に行けるね、ドレッドバスターさん♪」
「あ、あぁ……」
満面の笑顔で告げるなのはに、ドレッドバスターはうなずくが――やはりその態度には落ち着きがない。
そんな彼の姿に――なんとなく気づいたシックスナイトが尋ねる。
「ドレッドバスター……まさか、インストールの注射が怖い、とかいうのではないだろうな?」
「ば、バカを言うな!
わ、私はただ……」
あわてて反論するドレッドバスターだが――声がどもりまくりな上に後が続かないのでは説得力など皆無に等しい。
「まったく、サイバトロンの副司令官ともあろう者が、情けない……」
「む、むむ……」
告げるシグナムの言葉に、ドレッドバスターはもはや反論もできずにうめき――
「………………あれ?
そういえばシグナムもまだじゃないか?」
ふと気づいた耕介が尋ね――シグナムの動きが唐突に止まった。
そんな彼女にインストールをしようと耕介が一歩踏み出し――シグナムはまるで測ったかのようなタイミングで一歩離れる。
さらに一歩。また一歩――
「…………シグナムさん……?」
「まさか、あれだけ言ってて……」
もはや推理など必要もない――なのはとフェイトの声に、シグナムの額を冷や汗が流れていく。
「あかんよ、シグナム。ちゃんと注射はせな」
「うぐっ………………」
はやての言葉に、シグナムは思わずうめき――
「…………すみません、主はやて」
「えぇよ、わかってくれたなら……」
静かに告げるシグナムに答え、はやては優しく笑みを浮かべ――
「いくらあなたの命でも、こればかりは!」
「え――――――?」
思わず顔を上げるが――もう遅い。シグナムは猛烈なダッシュで一同の間を駆け抜け、そのまま指令室を飛び出していってしまった。
「あぁっ! 逃げた!?」
「追いかけるわよ!」
思わず声を上げるさつきのとなりでアルクェイドがどこか楽しそうに答え――
「その必要はないよ。
みんなは捕獲の準備だけしてて♪」
そう告げたのは知佳だ。訝る一同にかまわず基地内放送のスイッチを入れ、
「シグナムさん、観念して戻ってきた方がいいよ。
でないと――」
「婚姻届にハンコ押しちゃうから♪」
「待てぇぇぇぇぇいっ!」
知佳の言葉に対する反応は早かった。ものすごい怒りの声と共に、シグナムは転送魔法で指令室の中央に姿を現し――
「はい、捕獲」
「しまったぁぁぁぁぁっ!」
さすがの彼女もアルクェイドやシエルに、しかも不意打ち同然のタイミングで襲われてはどうしようもなかった。知佳の合図であっという間に捕縛され、耕介の前に連行される。
「すみません、知佳さん……お手数おかけしてもうて……」
「いいのいいの♪
今のシグナムさんなら、恭也くんがらみで挑発すれば絶対突っかかってくるからね♪」
謝るはやてに答え、知佳は笑顔で肩をすくめ、
「それに、私にだってメリットはあるよ。
さすがにこういう話題に巻き込めば、いくら恭也くんが鈍くたって……」
言いながら、知佳はその恭也へと視線を向けるが――
「知佳さん、結婚されるんですか?
おめでとうございます」
「………………
……あ、いや、えっと……」
おそらく本気で言っているのだろう――恭也から曇りのない笑顔で祝福され、知佳は思わず反応に困ってうめくしかない。
「………………知佳さん、ふぁいと」
注射を受けるドレッドバスターとシグナムの悲鳴が響く中――それでもはやての言葉はちゃんと知佳に届いていた。
ともあれ、出港準備は滞りなく完了。ついにギガロニアへの出発の時がやって来た。
「エンジン出力、定格へ。
全艦、発進準備整いました!」
「うむ」
半ば当然のように、ムーの艦長兼指揮官はギャラクシーコンボイに決定した――報告するファストガンナーの言葉にうなずくと、メインモニターに映るリンディと視線を交わす。
「よし……では、これよりギガロニアに向けて出発する!
全艦発進! 第一目標、時空トンネル!」
『了解!』
ギャラクシーコンボイの言葉に操舵士に任命されたバックギルドが、そして各艦の面々が答え、サイバトロン艦隊は一路ギガロニアに向けて出発する。
途中、何度かワープと転送を駆使して距離を稼ぎ――五千光年の距離をわずか数日で踏破した彼らは、ついにギガロニアへの時空トンネルのあるガス雲を目標に捉えていた。
「あれが、ギガロニアへと続く時空トンネルの入り口だ。
時間と空間の波動が一致した今しか、通り抜けるチャンスはない」
メインモニターに映る、ガス雲の中にポッカリと開いた漆黒の穴――時空トンネルの入り口を前に、ベクタープライムが一同に説明する。
「この中では、各々の精神のあり方が空間にダイレクトに影響を及ぼす。
不安や恐れ――精神の揺らぎが空間を歪ませてしまう。精神を集中させるのだ」
〈アトランティスの方はどうなんだ?〉
そうベクタープライムに尋ねるのはグランダスに乗艦している真一郎だ。
〈人間であるフィアッセさんやエイミィ、マイクロンであるホップ達は大丈夫だろうけど……スタースクリーム達は、この空間を乗り越えられるものなのか?〉
〈大丈夫だと思うよ〉
そう答えたのは、フェイトと共にアースラに乗艦しているジャックプライムだ。
〈さっきベクタープライムが言ったみたいに、時空トンネルの中じゃ精神の乱れが空間に影響を与えて、その結果時空感覚が崩壊しちゃう。
けど、逆に言えば精神の乱れがなければ、時空の壁の影響を受けなくてすむ――っていうか、影響を受けてもそれを突っぱねちゃうことができるんだ〉
そう告げるジャックプライムの脳裏によぎるのは、ダブルフェイスの陰謀によってスターセイバーと戦った際、自分を助けてくれたスーパースタースクリームの後姿――
(そう……今のスタースクリームなら……仲間の人達も助けて突破できる……)
「確かに……ヤツの精神力は並外れたものがあるからな……」
「執念深いからなぁ、アイツ……」
ため息をつき、ジャックプライムとはまったく別の納得の仕方をしているニトロコンボイとライガージャック――訂正してあげようとも思うが、
(…………っと、いけないいけない。
スタースクリーム、自分の目的のこと秘密にしてたんだっけ……)
そもそもそのせいで、自分は肝心要の彼の“目的”の内容を知らされていない――スーパースタースクリームが自らの目的を秘匿していたことを思い出し、ジャックプライムは開きかけた口をつぐんだ。
と――
「けど……みんななら、大丈夫だよね?」
一同を見回し、そう告げたのはなのはだった。そのとなりでギャラクシーコンボイもうなずき、
「なのはの言うとおりだ。
私も信じている――この仲間達なら、必ず突破できると。
そして、ギガロニアのプラネットフォースを手に入れ、宇宙を救うのだ!」
その言葉に、ムー、アースラ――そしてもちろんマキシマスやグランダス、それぞれの艦に乗る面々が一様にうなずいてみせる。
〈ほな、行きましょうか〉
「うむ」
マキシマスのブリッジから告げるはやてにうなずき、ギャラクシーコンボイはバックギルドに指示を出した。
「では、これより時空トンネルに突入する。
先頭はアースラ。マキシマス、グランダスと続き、本艦は殿を務める。
全艦、前進!」
「これは……すさまじいところね……!」
いざ突入したのはいいが、内部の空間は想像以上に安定を欠いていた――絶え間なく艦を襲う振動に、リンディは思わずうめいた。
元々時空間での航行を前提としたアースラでさえこの有様だ。他の艦は大丈夫だろうか――?
「みんな、大丈――」
通信を開き、尋ねようとするリンディだったが――次の瞬間、アースラをひときわ大きな衝撃が襲った。
「きゃあっ!?
何があったの!?」
「ま、待ってください……!」
リンディに答え、ゆうひは状況を分析し――
「――――――っ!
攻撃です! 真上から!」
「真上だって!?」
アレックスが声を上げると、メインモニターの映像が切り替わり――そこに映し出されたものを見て、ブリッジにいる全員の驚きの声が上がった。
『だ、ダイナザウラー!?』
「がははははっ! 不意打ち成功!
ここが貴様らの墓場になるのだぁっ!」
一方、こちらはダイナザウラーのブリッジ――気づかれることなく先制攻撃に成功し、ギガストームが勝ち誇って声を上げる。
どうして彼らがここにいるのか?――その答えは彼らの背後に転がっていた。
「こらっ! いい加減コレをほどかんかいっ!」
彼らに捕まり、簀巻きにされているランページである。
アトランティスが月面裏からワープで離脱した際、彼はエイミィ達のポッドと激突した衝撃で放り出され、そのまま宇宙をさまよっていたところを捕まってしまったのだ。
そんなランページから情報を得て、ギガストーム達は時空トンネルの存在を知り――
「後をつけられていたとも知らないで、ご苦労なことだ!」
しかし時空トンネルの場所を特定できなかった彼らは、サイバトロンを尾行することを思いついた。探知妨害をフル稼働させたダイナザウラーで彼らの後をつけ、この場にたどり着いた、というワケだ。
「敵に体勢を立て直すヒマを与えるな!
とりあえず1隻ツブせ! そうすれば、向こうは救助のために動きを止めざるを得なくなる!」
「アイアイサー♪
やっちまえ、ダイナザウラー!」
オーバーロードの言葉にウィアードウルフが答え、彼の指示でダイナザウラーはすべての砲塔を起動させる。
狙いは先制打をお見舞いしたアースラ――だったが、
「ぐおぉっ!?」
「どわぁっ!?」
衝撃はアースラではなくダイナザウラーを襲った。油断していたギガストームとオーバーロードはその場でまともにひっくり返る。
「な、何だ!?」
「攻撃です!」
「ンなコトぁ言われなくてもわかってんだよ!
どこからの攻撃だ!?」
「モニターに出します!」
スカルに言い返すギガストームに答え、メナゾールはメインモニターに攻撃の主を映し出した。
破損し、それでもこちらに向けて猛スピードで突っ込んでくるセイバートロン星のスターシップ――
そう――アトランティスである。
「くそっ、ヤツらめ……どうしてここを突き止めた……!?」
「ちっきしょー……
こっちはデータに残してたマイクロンの記憶データを連日徹夜で解読して、やっと突き止めたってのに!」
他の勢力を出し抜いたと思っていたら、すでに先客が2勢力も――アトランティスのブリッジで、スーパースタースクリームとノイズメイズは思わずうめき声を上げた。
「連中に先を越されるワケにはいかん! 攻撃続行だ!」
「り、了解!
――って、何でアンタが仕切るのよ!?」
サイクロナスの言葉にあわててコンソールに向かいかけ、ふと我に返ったヘルスクリームが抗議の声を上げる。
その一方で、ノリ気だったのがダージガンとスラストール、そして地球デストロンの面々だ。嬉々として砲手席に座り、照準システムを立ち上げる。
「で? どいつを狙えばえぇんや?」
「決まってるだろ! 全部だ、全部!」
尋ねるスラストールにワイルダーが答えるが、
「いや――ダイナザウラーに攻撃を集中しろ」
そんな彼らに反して、スーパースタースクリームはダイナザウラーへの集中攻撃を指示した。
「サイバトロンどもは艦隊で動いている――機動性には欠けるはずだ。
それよりも単独行動で逃げられる可能性の高いダイナザウラーを先に黙らせるんだ」
「了解でさぁ!」
スーパースタースクリームの言葉にロードストームが答え――次の瞬間、アトランティスの放った砲火がダイナザウラーに降り注いだ。
「まさか、アトランティスまで現れるなんて……!」
最悪なタイミングでの第三勢力の登場――攻撃を開始したアトランティスの姿をメインモニターで確認し、真一郎はグランダスのブリッジで思わずうめいた。
「グランダス殿、攻撃を!」
「うむ!」
現在、アトランティスはダイナザウラーへと攻撃を集中しているが、いつその矛先がこちらに向くかはわからない――乗艦していたメビウスショットの言葉にグランダスがうなずくが――
「ま、待ってよ!」
それを止めたのは美由希だった。
「ダイナザウラーはともかく、アトランティスにはエイミィさんやフィアッセ、それにバンパーやホップもいるんだよ!
もしここから真上に攻撃して、アトランティスを巻き込んだら……!」
「く………………っ!」
美由希の言葉にグランダスが思わずうめき――頭上での戦いの流れ弾が彼らに襲いかかる!
その頃、問題のフィアッセ達は――
「うーん、うるさいなぁ……」
「何かあったのかしら?」
アトランティス艦内、フィアッセの部屋で思いっきりくつろいでいた。
「フィアッセさん、確認できる?」
「うん、ちょっと待ってね」
尋ねるエイミィにうなずき、フィアッセは端末を操作して外の様子を映し出し――
「あぁっ! アースラ! それにグランダスに、マキシマスも!」
そこに映し出されたサイバトロン艦隊を見て歓喜の声を上げ――
「…………あれ? けど、なんだかその後ろにアトランティスがもう1隻……?」
ムーの姿を前に思わず首をかしげていた。
「メインエンジン、非常停止システム作動!
再起動できません!」
「推力ダウン!
このままやと、時空の狭間に流されてしまいます!」
アトランティスの乱入で混乱しつつも、ダイナザウラーからの砲撃は止まない――アースラのエンジン区画に直撃を受け、ランディやゆうひの切羽詰った報告の声が上がる。
〈冗談じゃないぜ!〉
〈何か、手はないんですか!?〉
格納庫からロディマスブラーやエクシゲイザーからの通信が入るが、そんなことを言われても、反撃もままならない現状ではどうすることもできない。
「なんとか、エンジンを復旧させないと……!
消火班と整備班を――」
ともかく、できることをしなくては――リンディが指示を出そうとすると、
「私達が行きます!」
立ち上がり、そう告げたのは忍だ。となりでは琥珀も決意に満ちた表情で立ち上がる。
「すずか! エクシゲイザーと一緒でしょ!? 先に行ってて!
私達もすぐに行くから!」
〈う、うん!〉
告げる忍の言葉に、格納庫のすずかはそう答えて通信を切る。もうすでにエクシゲイザーと共にエンジン区画へと出発したのだろう。
「けど、あなた達だけでは……」
だが、エンジンの修理は並大抵の労力では行えない。思わずうめくリンディだったが――
「人手が足りないなら――」
「私達がいます!」
「――――――っ!?」
突然のその声は気覚えのある――だが、この場で聞くはずのないものだった。あわててリンディは声のした方へと振り向き――驚きの声を上げた。
「桃子さん!?
それに、小鳥さん、唯子さん……舞さんまで!?」
「か、かーさん!?」
彼女達の登場は完全に予想外だった――意外な人物の登場に、恭也はアースラのブリッジで声を上げ――気づいた。
出発準備の際、忍達の運んでいた複数のコンテナ――おそらくあの中のひとつに紛れ込んでいたのだろう。忍達によって居住可能な状態に改造してもらって。指令室でひとり電話していたのも、桃子達との打ち合わせのためだろう。
だとすれば――
「とーさん!」
当然、この人もグルのはずだ――迷わずグランダスに通信し、件の人物に対して抗議の声を上げる。
「何を考えてるんだ! かーさん達を連れてくるなんて!
パートナーのいる子達と違って、かーさん達は相棒のいない、完全な非戦闘員だろ!」
〈しかし……フィアッセやエイミィちゃん達が捕まっているんだ。
家族や友人として、共に助けに行きたいという彼女達の意見は、尊重すべきなんじゃないのか?〉
「ぐっ…………」
逆に士郎の言葉に反論を封じられる――と言っても、別に士郎の言葉が正論だと感じたからではない。身内に危険が及ぶとなれば、正論から外れようとも止めるのが恭也のやり方なのだから。
反論できなくなったのは――士郎の目が本気だったからだ。
彼女達に及ぶ危険を把握しながら、それでも彼女達の意思を尊重したがゆえの――『必ず守り抜く』という決意が、父の視線には込められていた。
だから――
「…………わかった。
それなら、オレ達は御神の剣士として、全力でかーさん達を守る」
〈そういうことだ〉
士郎の言葉にうなずき、恭也はフレイムコンボイへと向き直り、
「フレイムコンボイ、こっちは任せる。
オレはかーさん達を手伝いに行ってくる」
「おぅ、任せろ」
「エンジン部への着弾を確認!
ダイナザウラー、減速します!」
「よし、これでヤツらは出し抜ける!」
こちらの攻撃のクリーンヒットを確認し、報告するラナバウトの言葉に、サイクロナスが思わず声を上げる。
「サイバトロンどもはどーせ足も遅いだろうし、このままギガロニアに一番乗りだぜ!」
もう障害はないとばかりに勝ち誇り、スナップドラゴンが言うが――
「いや……
ここでサイバトロンどもも黙らせろ」
そんな彼らに、スーパースタースクリームはそう指示を下した。メインモニターに映るアースラへと視線を向け、胸中でつぶやく。
(こっちとしても、このまま見逃しては他所の勢力からいらぬ疑惑を抱かれかねないのでな。悪いがたたみかけさせてもらう。
貴様らならば、この程度の障害どうということもあるまい。自力で乗り切ってもらうぞ……)
ダイナザウラーからの攻撃が止んだと思ったら今度はアトランティスから――ムーやマキシマス、グランダスがシールドを展開して盾となってくれてはいるが、それでも確実にアトランティスの攻撃はアースラに襲いかかっていた。
そしてそれはアースラの状況を確実に悪い方へと運んでいた。つい今さっきも直撃弾がエンジン部を襲ったところだ。
「あー、もう、今のでメイン出力は全滅よ……!」
「推力、50%にダウンしました」
芳しくない状況に思わず舌打ちし、懸命に修理を進める忍だが、直すそばから破壊されては意味がない。ノエルの報告も不安をさらに助長してくれる。
アースラの整備班も駆けつけ、手伝ってくれてはいるが、それでも作業は一向にはかどらない。
「マズいです、あぁ、マズいですよ!
このままじゃ艦が沈んじゃいます!」
そんな危機的状況は彼女も察しているのだろう。桃子達に指示を出しながらも琥珀が頭を抱えてみせる。
「せめて、使えるエネルギーが他所にあれば……!」
さすがに焦りを隠し切れず、すずかがポツリとつぶやき――資材を運んできた恭也がその言葉を聞きつけた。
しばし考え――尋ねる。
「なぁ、月村」
「何?」
「エネルギー源が必要だって言うなら……武装系のエネルギーは回せないのか?
どうせフィアッセ達が捕まっている以上、アトランティスには攻撃できないんだ――使わないエネルギーをただ蓄えていても意味がないだろう?」
「そうか……武装系なら伝達系は独立してる――推進動力部と違って被害は少ないはず!
恭也、ナイスアイデア!」
「なら、その手で行きましょう!
桃子様達と恭也様、ノエル様は、すずかちゃんとエネルギー経路の変換作業に回ってください!
ソフトウエア面は、私と忍さんでなんとかします!」
忍と琥珀の言葉に、一同はそれぞれの作業に取り掛かる。
忍や琥珀がシステムのプログラムを変換したエネルギー経路に対応させている間に、恭也とノエルが実働要員となり、すずか達はエネルギー経路の変換作業を進める。
「恭也!」
最後のコネクタをしっかりと差し込み、桃子は恭也に向けて声を上げ――それを受けた恭也は忍に告げる。
「月村! こっちは完了だ!」
「わかったわ!」
告げる恭也に答え、忍はエンジンのイグニッションボタンのカバーへと手を伸ばし――ふと思いとどまった。その口元に笑みを浮かべ、
「……アリシアちゃんがいれば、きっとこのネタをやるでしょうね……」
笑顔でつぶやくと、拳を振り上げ――
「プログラム――じゃないけど――ドラァイブ!」
カバーもろとも、その拳をイグニッションボタンへと叩きつける!
瞬間――アースラのエンジンが力を取り戻した。無事な推進系から再び推進ガスが噴出され、その姿勢が立て直されていく。
「エンジン、再起動を確認!
上昇率、プラスに移行しました!」
「やった!
恭也くん達、ぐっじょぶや!」
ブリッジでも歓喜の声――報告するアレックスの言葉にゆうひが声を上げ、アースラは完全に体勢を立て直した。
これで後は、加速してアトランティスを振り切ればいい――だが、そんな中、再びブリッジに警報が響いた。
「今度は何!?」
「今見ます!」
リンディに答え、ゆうひは状況を確認し――その顔から血の気が引いた。
「い、隕石です!
ギガロニア側から紛れ込んだと思われる隕石が、こっちに!」
「くそっ、ようやくアースラが復活したと思ったら!」
「主砲で打ち落とせ!」
自分達の前にその巨体を現した巨大隕石――ムーのブリッジで思わず声を上げるニトロコンボイのとなりでドレッドバスターが告げるが、
「ダメです!
チャージが間に合いません!」
〈こっちもあかん!
アースラかばうのにシールドにパワーを回しとったから、主砲のチャージが間に合わんって、フォートレスが!〉
バックギルド、そしてマキシマスからのはやての答えはそんな彼の希望を打ち砕くには十分だった。
「グランダス! お前はどうだ!?」
〈私は空母だ。あれだけの隕石を破壊できるだけの火力は……!〉
尋ねる耕介だが、グランダスの答えも芳しくない。
そうしている間にも、隕石はものすごいスピードでこちらに向かってくる――回避しようにも、小惑星ほどの大きさのあるその巨体をかわす時間ももはや残されてはいない。
ここまでか――彼らの間に重苦しい沈黙が漂い――
「…………みんなで、壊そう」
ポツリ、となのはがつぶやいた。
「みんなで力を合わせて、あの隕石を壊そう!」
「って、なのは、本気!?」
《そーだよ、なの姉!
あんな大きな隕石、わたし達の火力じゃ……!》
そのなのはの提案は無茶の過ぎるものだった。あまりにも突飛過ぎる提案に、さすがにフェイトやプリムラも反論するが――
「いや……やろう」
反して、ギャラクシーコンボイはなのはの提案に同意した。
「これまでも我々は、力を合わせてあらゆる困難を乗り越えてきたではないか。
サイバトロンの、時空管理局の――我々の力を見せてやるんだ!」
見回し、告げるギャラクシーコンボイの言葉に、一同の間に活力がよみがえっていく。
〈よぅし、やろう!〉
そんな中、真っ先に同意の声を上げたのはアースラから通信してきているジャックプライムだった。拳を振り上げ、一同に告げる。
〈みんな! なのはやギャラクシーコンボイに、続けぇっ!〉
『おぅっ!』
こうして、なのは達一同による、超巨大隕石の迎撃作戦が開始された。各艦の甲板上にはすべてのサイバトロン戦士がパートナー達をライドスペースに乗せて集結。一斉攻撃に備える。
「では、作戦を説明します。
ビクトリーコンボイのネクサスとビッグコンボイのビッグキャノン、この二つを同時に叩き込み、次いで残り全員の一斉攻撃で隕石をえぐり抜く――それだけよ。
この一撃に、みんなの力を集中して!」
『了解!』
アースラのブリッジから指示を出すリンディの言葉に答え、一同は次々にイグニッション。各々の獲物をかまえる。
「うぅ……わたしも船外活動ができれば……」
「ここはただの時空間ではない。ガマンしてくれ」
さすがのなのは達のバリアジャケットも、時空トンネルの中ではその真価を発揮できないらしい――ライドスペースで肩を落とすなのはに、ギャラクシーコンボイは苦笑まじりにそう答える。
そして――
「いくぜ、ギャラクシーコンボイ!」
「あぁ!」
ビクトリーレオの言葉にギャラクシーコンボイがうなずき、彼らは時空間へと飛び立った。
『ギャラクシーコンボイ!』
なのはとギャラクシーコンボイの叫びが響き、ギャラクシーコンボイはギャラクシーキャノンを分離。両腕を背中側に折りたたみ、肩口に新たなジョイントを露出させ、
『ビクトリーレオ!』
次いでヴィータとビクトリーレオが叫び、ビクトリーレオの身体が上半身と下半身に分離。下半身は左右に分かれて折りたたまれ、上半身はさらにバックユニットが分離。頭部を基点にボディが展開され、ボディ全体が両腕に変形する。
そして、ビクトリーレオの下半身がギャラクシーコンボイの両足に合体し――
『リンク、アップ!』
4人の叫びと共に、ビクトリーレオの上半身がギャラクシーコンボイの胸部に合体。両腕部がギャラクシーコンボイの両肩に露出したジョイントに合体する!
最後にビクトリーレオのバックユニットがギャラクシーコンボイの背中に装着され、4人が高らかに名乗りを上げる。
『ビクトリー、コンボイ!』
「目覚めよ、次代の希望!
“つなぎし者”――Set up!」
〈Stand by Ready, Set up!〉
デバイスカードをかまえ、呼びかけるビクトリーコンボイ――その言葉に従い、銀色のカードはアームドデバイス“ネクサス”へと形を変えた。
「ネクサス、カートリッジ、ロード!」
〈Load cartridge!〉
ビクトリーコンボイの言葉にネクサスがカートリッジをロード。左右のネクサスが立て続けにカートリッジを排莢する。
そして――
「ビッグコンボイさん!」
「はやて!」
『フォースチップ、イグニッション!』
なのはとヴィータの呼びかけに、ビッグコンボイははやてと共にイグニッション。ビッグキャノンを巨大隕石に向ける。
そして――
『ビッグキャノン――GO!』
『エターナル、ブレイズ!』
〈Eternel Blaze!〉
彼らの放った閃光が、一直線に巨大隕石、そのど真ん中へと突き刺さる!
「今だ、みんな!」
「おぅよ!
いくぜ、野郎ども!」
そして続くは本命の一撃。合体したまま告げるビクトリーレオにソニックボンバーが答え――
『サイバトロン、アタック!』
サイバトロン全員が総力を結集した一撃が巨大隕石に突き刺さり――ビクトリーコンボイとビッグコンボイが穿った大穴をさらにえぐり、一気に打ち貫く!
その衝撃は隕石全体に及び――砕け散った隕石の破片の中を、サイバトロン艦隊はアースラを先頭に悠々と突破していく。
そして――砕けた隕石の破片でアトランティスが足を止められているそのスキに、彼らはギガロニアのある宇宙へと飛び出していった。
だが――
「ここがギガロニアか……」
ギガロニアへと一番乗りを果たしたのはなのは達ではなかった。
サウンドウェーブという水先案内役を得た、マスターメガトロン達である。
「最後のプラネットフォースは、このオレがいただく……」
決意と共につぶやき、マスターメガトロンは拳を握り締める。
「宇宙の支配者は誰か……
絆の力と個の力、真に勝つのはどちらか……すべての勝負はここからだ。
どちらも負けるつもりはない――」
「最後に勝つのは、このオレだ!」
(初版:2007/04/15)