「アトランティスや、ダイナザウラーの航跡は確認できたか?」
「いえ……
 途中で、ロストしてしまって……」
 漆黒の宇宙空間を進むサイバトロン艦隊――アースラのブリッジで、尋ねる恭也にアレックスが答えた。
「まぁ、あの隕石のゴタゴタで、ウチらがずいぶん先行できたし……まだ後ろの方におるんやないかな?」
「なんとか、向こうギガロニアで待ち受けることができそうだな……」
 ゆうひの言葉に、恭也が腕組みをしてつぶやくと、
「けど……考えてみたら、エイミィさんはともかくとして、フィアッセの救出は難しいんじゃない?」
 脇から恭也に尋ねたのは桃子だ。
「恭也の話じゃ、フィアッセは自分からアトランティスに残ったんでしょう?
 だったら……」
「いや……それでも、コンタクトは一度取っておくべきだ。
 連絡の取れる状況を作っておくのは、悪い選択じゃないからな」
「あ、なるほど……」
 士郎の答えに桃子が納得すると、
「――――――!
 熱感知レーダーに反応!」
 レーダー画面に反応を見つけ、ゆうひが声を上げた。
「バックギルド、パーセプター! 分析できる!?」

「ちょっと待ってくれ」
「こちらでも確認した。今調べているところだ」
 アースラからのゆうひの通信に答え、バックギルドとパーセプターはムーのブリッジで分析作業を開始する。
「ギガロニアなの?」
「わからない……
 ただ、サイズが大きすぎる……ひょっとしたら恒星かも」
 尋ねるアリサにバックギルドが答えると、シオンが彼に尋ねた。
「画像は出せますか?」
「サーモグラフィーなら。
 ……メインモニターに表示する」
 パーセプターがそう答えた数秒後、ムーの、そして情報をリンクさせている各艦のメインモニターに反応の主のサーモグラフィー画像が映し出された。
 ずいぶんと巨大な星だ。その周囲を1本のリングがグルリと1周している。
 ただ、サーモグラフィーの色は青色の部分が多い。ということは――
「温度が低すぎる……
 恒星ではないな」
〈死んだ恒星かもしれへんね〉
〈どっちにしても、今の段階じゃ答えは出せない、ってことか……〉
 つぶやくファストガンナーの言葉に、マキシマスのはやてやグランダスの真一郎がつぶやく。
「どうしますか? 総司令官」
「うむ……」
 ドレッドバスターの言葉に、ギャラクシーコンボイはしばし考え――となりでベクタープライムが告げた。
「行ってみよう。
 何か手がかりがつかめるかもしれない」
「…………そうだな、行ってみよう。
 進路を、あの星に!」
「了解!」
 ギャラクシーコンボイの言葉にバックギルドが答え、なのは達は一路、反応のあった星へと向かうことにした。

 そのまま、反応を追って航行することしばし――なのは達の進む先に、隕石群が見え始めた。
 それも、進めば進むほどその濃度を増している。
「隕石……かな?」
「いや……隕石というより、惑星の破片だな。
 表面部分がごっそり削り取られた、その残骸のようだ」
 首を傾げるなのはの言葉に、ギャラクシーコンボイは冷静にそう答える。
「まるで、採掘された後のようだな……」
「って、誰にだよ?」
「だいたい、採掘された後の星は、どこにあるってのよ?」
 つぶやくニトロコンボイに耕介とアルクェイドが答えると、
「まもなく、目的の星域に到着します」
「メインモニターに、映像、出るわよ」
 バックギルドとアリサが報告し、メインモニターにその星が映し出された。
 とてつもなく巨大な天体だ――これでもまだかなりの距離があるというのに、やや先行した位置にいるアースラがまるで豆粒のような対比で見えてくる。
「で、デカっ!?
 デカすぎだろ、コレ!」
「やっぱり、恒星じゃないの?」
「あぁ……恒星じゃないな」
 驚くライガージャックのとなりで尋ねる知佳に答えたのはファストガンナーだ。惑星の表面の一部を望遠映像で表示する。
 そこに映し出されていたのは――
《街…………?》
「じゃあ、やっぱり惑星……?」
 プリムラのそのつぶやきになのはが首をかしげ――突然、ブリッジの入り口の扉が開いた。
 そして飛び込んで来たのはブリットだ。メインモニターに映るその惑星を指さし、何やら騒ぎ始める。
 と、それに呼応するようにルーツもベクタープライムの腕から離れ、ロボットモードにトランスフォームするとブリットに向けてうなずいて見せる。
 二人のその様子から、導き出される結論――なんとなく思い至り、なのははメインモニターに視線を戻した。
「もしかして、この星が……」

 

「ギガロニア、なの……?」

 

 


 

第70話
「ギガロニアのメガロコンボイさんなの」

 


 

 

「大気成分、分析完了。
 酸素、窒素も二酸化炭素……セイバートロン星や地球に極めて良く似た大気です。
 有害物質、有害バクテリア、検出されません」
「重力は約1G。こちらも地球とほぼ同じです」
 ギガロニアの環境を分析し、アレックスやランディがリンディへと報告する。
「よかった……わたし達に危険な空気だったら、外で活動できないですからね」
「そうだね」
 安堵の息をつくフェイトになのはが答えると、
「けど……おかしな話やね」
「おかしい? 何がですか?」
 首をかしげたゆうひに、薫が眉をひそめて聞き返す。
「だって、この星の重力って地球とほぼおんなじなんやろ?
 これだけ大きな星やったら、その分質量もあるんやし、もっと重力がないとおかしいと思うんやけど……」
「そういえば……そうだよね」
 ゆうひの言葉に、ようやくそのことに思い至ったなのはが首を傾げるが、
「ともかく、降りてみましょう」
 そんな一同を見渡し、リンディが告げる。
「ギガロニアのトランスフォーマーと会えれば、その辺りの謎も解けると思いますしね」
 

「近くで見ると、ホントにおっきいですねぇ……」
 地上に降り立ち、巨大なギガロニアの建築物の数々を見上げ、思わずシャマルが感嘆の声を上げる。
「お前ら、ホントにこの星の住人なのか?
 この街、どー考えてもお前らのサイズに合わねぇんだけど」
 眉をひそめ、尋ねるヴィータだが、疑惑の目を向けられたブリットはむしろ憤慨するかのように電子音をかき立てる。
「それも、ギガロニアのトランスフォーマーに出会えばわかることだ」
「そういうことだ」
 そんな二人をシグナムがなだめ、その言葉にうなずいたスターセイバーが一同を見渡し、告げた。
「ギガロニアのトランスフォーマーがどこかにいるはずだ。
 チーム単位で手分けし、捜索に取りかかろう」
『了解!』
 

 しかし――
「……って、見事なまでに誰もいねぇな……」
「気配はおろか、レーダーにも何の反応もないとはな……」
 捜索の収穫はまったくと言っていいほど見つからなかった。捜索を続けるアニマトロス班の中で、ボヤくライガージャックにブレイズリンクスが同意する。
「この街の住人ならば、かなりの大きさのはず……すぐに見つかりそうなものなのだがな……」
「まるでゴーストタウンだよ……」
 つぶやくフレイムコンボイにアルフが答えると、
〈みんな、少しいいか?〉
 そこへ、ベクタープライムから通信が入った。
〈近くにいる者達は私のところへ来てくれるか?
 ルーツが何かを発見したようだ〉
 

 ベクタープライムの呼びかけで集まったのはアニマトロス班とヴォルケンリッター、そしてミッドチルダ班とギャラクシーコンボイ達だった。彼の反応を頼りに、街の一角のビルの中に集合する。
 そんな彼らの前には塞がれた廊下――まるで何かを封印するかのように、セメントのようなもので通路全体が押し固められてしまっている。
「何だ? これは……」
「ずいぶんとわかりやすい、物理的な封印だね。
 エネルギー系の封印もセキュリティも、もちろん魔法封印もナシ。ただ単に塞いだだけ、って感じだね、コレ」
 首を傾げるギャラクシーコンボイに、ジャックプライムはセメントのようなものをコンコンと叩きながらそう答える。
「……向こうは空間ですね。
 奥に何かあるみたいですけど……」
 試しにレイジングハートでスキャンしてみたなのはが告げると、
「はいはい、どいたどいた♪」
 一同をかき分け、前に出たのはソニックボンバーだ。
「って、おい、待て!」
 とっさにその意図に気づいたドレッドバスターが叫ぶが、ソニックボンバーはかまわずビークルモードへトランスフォーム。封印へと突進し――
「ふぎゃっ!?」
 見事に弾き返された。一同の目の前にカッコ悪く叩きつけられる。
「いってぇ……!」
「まったく、言わんことじゃない。
 何かあれば壊そう、っていうのは、正直感心しないぞ」
 思わずため息をつき、クロノが告げるが――
「やるなら打撃よりも砲撃だろう」
「その通り……って、えぇっ!?」
 意外な人物が破壊派に回った。ギャラクシーコンボイの言葉に思わず同意しかけ、我に返ったクロノが驚きの声を上げる。
 一方、それを聞いて大張り切りなのは――
「はーい! それじゃ、バーン! とやっちゃいましょう!」
「おーおー、やっぱり出てきた、魔砲少女サマが」
「前回隕石破壊に参加できなかったのが、よっぽど悔しかったんだね……」
「なんかもう、予想通りすぎてツッコむ気にもならないわ……」
 嬉々としてレイジングハートをかまえたなのはの言葉に、ヴィータ、フェイト、アリサによるツッコミの嵐が吹き荒れた。
 

『フォースチップ、イグニッション!』
 ともあれ、封印の破壊作業は決行だ。なのは達デバイス所有組も含め、一同はフォースチップをイグニッションし、封印の中央に狙いを定める。
 そして、イグニッションウェポンが近接兵装であるスターセイバーやライガージャック達がまず封印に一撃を見舞い――
「撃て!」
 ギャラクシーコンボイの合図で一斉射撃。直撃を受けた封印が爆発の中に消える。
 もうもうと立ち込める煙で周囲の視界が奪われるが、それもやがておさまっていき――
「ウソぉ!?」
 封印は完全には破られなかった。大きく穿たれながらも未だ行く手を阻むその姿に、キングコンボイが思わず声を上げる。
「むーっ! だったらもう一回!
 今度こそ完全に粉砕です!」
《って、なの姉、趣旨変わってるって!》
 ムキになり、再びレイジングハートをかまるなのはをプリムラがなだめていると、
「…………あれ?」
 すずかは、穿たれた穴の奥に何かが見えるのに気づいた。
 わずかだが、自分達の攻撃は封印を貫き、その向こうに通じる穴を開けていたのだ。
 ギャラクシーコンボイ達は通れそうにないが、自分達なら――
「…………よし、行ってみよう。
 すずか、悪いがついてきてくれるか? 機械関係はオレにはわからないからな」
「あ、はい……」
 同じように気づき、告げる恭也にすずかがうなずくと、
『私も行く!』
 まったく同じタイミングで立候補したのはシグナムと知佳だ。すぐに互いに気づき、火花を散らす。
「まぁまぁ、みんなで行けばいいじゃないですか」
 そんな二人を恭也がなだめていると、
「じゃ、先に行ってますねー♪」
「あ、なのは! そんな勝手に!」
 彼女達のやり取りが片付くのを待っていたらキリがないとでも言うのか、サラッと告げて封印の向こう側に向かうなのはを、クロノはあわてて追いかける。
 それを見送り――ふと気づいた志貴ははやてに尋ねた。
「…………はやてちゃん」
「何です?」
「単なる物理的な封印なら……キミ達転送魔法で向こう側に行けたんじゃないかな?」
「………………」

「何かわかったか?」
「あぁ……どうやらここは、街のコントロールルームのようだな」
「けど、今はもう使われなくなってだいぶ経ってるみたいですけど……」
 封印の壁の向こうから尋ねるスターセイバーに、シグナムとなのはは内部の様子を見渡してそう答える。
 そんな中、すずかはついて来たルーツと二人でシステムにアクセス、情報を引き出し、
「…………どうも、ギガロニアのトランスフォーマーさん達は、次々に都市を建造しては移り住む、そんな習慣があるみたいだね」
「街を作って……」
「移り住む……?」
 その言葉に、なのはとフェイトは思わず顔を見合わせた。
《まったく、それならそれで、早く教えてよ》
 実体化し、ルーツに告げるプリムラだが、ルーツはそれに対して電子音を発して答える。
「なんて?」
《『ここで見つかればそれで済む話だと思ってたから言わなかった』って》
「あてが外れちゃったワケだ……」
 なのはに答えるプリムラの言葉に、すずかは思わず苦笑する。
《それでも、やはり事前に説明すべきだと思いますよ。
 実際そうだったワケですし、ここにギガロニアのトランスフォーマーがいない、という可能性は最初から予測することはできたんですから……》
「ジンジャー、その話はまた後で」
 プリムラと同じように実体化し、ルーツに説教を始めたジンジャーを、フェイトはそう言ってなだめるとなのはやすずかの元へと向き直った。
「とにかく、みんなのところに戻ろう。
 このことを報告しないといけないし、ここにいないことがわかった以上、他の街に探しに行かないと……」
「うん!」
「そうだね」
 

 こうして、ギガロニアのトランスフォーマー達がこの街にいないということはわかった。なのは達はさらに探索の手を広げ、ギガロニアの各地に残されたいくつもの都市を捜し歩くことにした。
 だが――ただでさえ巨大なギガロニアをしらみつぶしに探すのは容易なことではない。何の手がかりも得られないまま、早1週間が経とうとしていた。
 

「ここにもいない、か……」
「あぁ……」
 訪れたこの街もハズレ――思わずため息をつき、合流したニトロコンボイとスターセイバーがうめく。
「ったく、一体どこに行ったんだよ?」
「焦るな焦るな。ゆっくり探そうぜ」
「けど、その間にスタースクリーム達が来たらマズいのだ」
「ギガストーム達もな」
 苛立つヴィータとなだめるロディマスブラー、二人の会話に美緒とビクトリーレオが口をはさむと、
〈はいはい、その話は後々〉
 シャマルの通信が入り、彼らの頭上にマキシマスが飛来した。
〈艦に戻って。
 次の街に行くわよ〉
『了解!』
 

「ギガロニアのトランスフォーマーの皆さん、聞こえますか?
 応答してください!」
 一方、アースラやムーでは、通信回線を使ってギガロニアのトランスフォーマー達への呼びかけが行われていた。バックギルドが呼びかけるが、やはりこちらも反応はない。
「ダメか……」
「そう簡単に見つかったら苦労はしないわよ」
〈せやで。根気よう行こうやないの〉
 肩をすくめるバックギルドにアリサやアースラのゆうひが答えると、
「あれ………………?」
 同じく呼びかけに加わっていたトゥラインが何かに気づいた。
「どうしたの? トゥライン」
「いや……外部マイクが変なノイズをとらえて……」
 尋ねるユーノに答え、トゥラインはそのノイズとやらをスピーカーで再生してみせた。
 ただのノイズならばよかったが――それにしてはおかしい。規則的なサイクルでノイズが聞こえてくる。
「何だろ……?」
「さぁな……」
 首をかしげるアリサにパーセプターが答えると、
「とにかく、ギャラクシーコンボイ総司令官に知らせよう」
 そんな彼らに告げて、バックギルドは通信回線を開いた。
 

「そのノイズというのは、地下から出ているのか?」
〈はい。
 微弱ですが、規則的に〉
 バックギルド達の報せを受け、なのは達はすぐにそのノイズの発生源へと向かうことにした。ジャックプライムやフェイト、ガードシェルや真雪、そしてブリットと共に急行しながら、尋ねるギャラクシーコンボイにバックギルドが答える。
「それって、地震とかじゃないの?」
〈その可能性もある。だから注意してくれ〉
 尋ねるなのはにユーノが答えた、その時――突然、彼らの走るハイウェイを強烈な振動が襲った。
「やっぱり地震!?」
「総司令官、撤退しましょう!」
「あぁ!」
 声を上げるジャックプライムとガードシェルにギャラクシーコンボイが答え――彼らの周囲でその異変が始まった。
 突然、彼らのいるハイウェイの周りに、地下から高層ビル群が姿を現したのだ。
「ち、地下から、街が……!?」
「すごい……!」
 それもひとつや二つではない。文字通り街そのものが現れた――想像を絶する迫力に、真雪やフェイトも呆然とつぶやくしかない。
 と――
「静かに!」
 驚く一同を制し、ギャラクシーコンボイは外部センサーを働かせ――聞こえてきたのは例のノイズだ。
「この街が発生源だったんだ……」
「ということは……ここにギガロニアのトランスフォーマーさん達が……?
 行ってみよう」
 つぶやくフェイトにジャックプライムが答え、彼らは一路町の中へと入っていく。
 そして――すぐにその光景に行き当たった。
 ちょうど今現在ビルを建設中の、工事現場である。
 

『ぅわぁ……』
 そんな感嘆詞しか出てこない――目の前の大迫力の工事風景を前に、なのは、ジャックプライム、フェイト――お子様3人組はポカンと口を開けて声をもらした。
 ジャックプライムから見ても自らの背丈の倍以上はあろうかという巨大なビークル――おそらく彼らがこの星のトランスフォーマー達なのだろう――が現場の中を縦横無尽に駆け回り、ものすごいスピードでビルが建てられていく。
「あっという間にビルが……」
「すごいや……」
 思わずつぶやくフェイトにジャックプライムが同意し――そんな時だった。
 クレーン車型のトランスフォーマーによって吊るされ、自分達の頭上を通過しようとしていた鉄骨――それを吊るしていたワイヤーが突然外れ、巨大な鉄骨がなのは達に向けて落下する!
「ぅわわっ!」
 あわててレイジングハートを発動させようとするなのはだったが――
(間に合わない――!)
 それよりも鉄骨の落下の方が早い。思わずなのはは目を閉じ――
「危ない!
 トランスフォーム!」
 そんな彼女達を救ったのはガードシェルだった。ビークルモードにトランスフォーム。自らのスクレーパーで鉄骨を受け止める!
「ジャックプライム!
 今のうちに、二人を……!」
「う、うん!
 なのは、フェイト、こっちへ!」
 懸命に鉄骨を支えるガードシェルに答え、ジャックプライムはなのはとフェイトを促してその場を離れる。
「ガードシェル! お前も早く!」
「そうしたいが……重くて……!」
 なのは達の無事を確認し、告げる真雪だが、ガードシェルは鉄骨の重みで完全に動きを封じられてしまう。
 それどころか、自分がその重量に耐えるのも危うい状態だ。重量に耐えかね、スクレーパーのアームが火を噴き始める。
「ガードシェル!」
「今助けるから!」
 すぐに駆けつけ、鉄骨を支えようとするギャラクシーコンボイとジャックプライムだが、彼ら二人がかりでも巨大な鉄骨はビクともしない。
「ど、どうしよう……!」
「スターライトブレイカーなら衝撃で吹き飛ばせるかもしれないけど、今からじゃチャージが……!」
 なんとかしたいが、今の自分達ではあまりにも無力だ――あわてるフェイトのとなりでなのはがうめくと、
「――――――あれは!?」
 同じようにガードシェル達を見守っていた真雪の視界に、それは現れた。
 ショベルやバケットホイールを擁する、巨大な複合重機をモチーフとしたビークルだ。そして――
「メガロコンボイ、トランスフォーム!」
 咆哮と共にトランスフォーム。ロボットモードとなり――さらにそこから両足やボディが展開。より巨大なロボットモードとなって大地に降り立つ。
 その体躯はギャラクシーコンボイ達と比べて段違いに巨大だ――トランスフォームの過程で見せた、ボディを展開する前の中間形態ですらギャラクシーコンボイ達とは子供と大人くらいの差があっただろう。
 そして、彼は分離し、斧となったショベルアームをかまえ――その先端、バケットホイール部が高速で回転を始め、
「アックス、カッター!」
 バケットホイールを刃とし、繰り出した一撃がガードシェルの上にのしかかっていた鉄骨を一撃の下に断ち切り、彼らを救出する。
「大丈夫か!?」
「え、えぇ……」
 あわてて駆け寄るギャラクシーコンボイにガードシェルが答えると、ジャックプライムは助けてくれたトランスフォーマーへと向き直り、
「助けてありがとう。
 ボクはジャックプライム。
 それで……あなたは? “コンボイ”って名乗ってたってことは……」
「お察しの通り。この星のリーダーだ。
 メガロコンボイだ。よろしく」
 名乗り、尋ねるジャックプライムに答え、メガロコンボイと名乗ったそのトランスフォーマーは彼やギャラクシーコンボイ、ガードシェルを見回し、尋ねた。
「ところで……あんた達はどっから来た?
 まさか、“プラネットX”じゃ、ないだろうな?」
「ううん、違うよ。
 ボクはミッドチルダから。で、ギャラクシーコンボイ達はセイバートロン星から来たの。
 なのは達は地球出身だし、他にも、スピーディアやアニマトロスから来てる仲間もいるけど……そんな名前の星の出身の人はいないよ」
「その“プラネットX”とは?」
「さぁな。
 オレも伝承だけでよくは知らないんだ――なんだか相当ヤバそうな星だって言い伝えられてて、他所の星からのお客さんに対してはその星の生まれじゃないか、警戒しろって話でな……」
 聞き返すジャックプライムとギャラクシーコンボイに答えると、メガロコンボイは鉄骨を落としてしまったクレーン型のトランスフォーマーへと向き直り、
「安全第一! 三唱!」
「安全第一! 安全第一! 安全第一!」
「よし! もう二度とヘマをするんじゃないぞ。
 行ってよし!」
 メガロコンボイの言葉に従い、彼が去っていくのを見届け、真雪はガードシェルへと向き直った。
「大丈夫か? ガードシェル。
 今すずかを呼ぶから、待ってなよ」
「あ、あぁ……」
 真雪の言葉にガードシェルがうなずくと、ふとブリットが何かに気づいた。一同の輪を離れ、メガロコンボイの足元へと向かう。
《ブリット、どこに行くんですか?》
《ウロウロしちゃ、みんなに迷惑だよ》
 言って、実体化したジンジャーとプリムラがブリットを連れ戻すべくその後を追い――突然メガロコンボイのショベルアームの一部、ショベル部に合体していたドリルユニットが分離した。
 と、突然そのドリルユニットがロボットモードへとトランスフォームし、ブリットの目の前へと着地した。
 その背丈はブリットとほぼ同じくらい――ドリルユニットはブリットと同じマイクロンだったのだ。
 ブリットと新たなマイクロン、二人はしばし対面し――突然ひしっ! と抱き合った。どうやら知り合いのようだ。
「ブリットくんの友達だったんだね……」
「けど……なんで合体してたんだろ?」
「なんで、って……いなけりゃ、不便だろ」
 つぶやくなのはとフェイトの言葉に、メガロコンボイはそう答えた。
「細かい作業は、マイクロンの仕事だ。
 直接作業してもらったり、オレ達の操縦をしてもらったり……いなけりゃ、不便だからな……」
「なるほど……ベクタープライムとルーツの関係みたいなものか……
 そーいやあの二人も、普段は合体しっぱなしだもんな」
 メガロコンボイの言葉に納得し、真雪がうなずくと、今度はメガロコンボイがなのは達をのぞき込み、
「そういうお前さん達は、うちのホリブル達とはずいぶんと違うな。
 見たところ、トランスフォームもできそうにないし……有機生命体のマイクロンなんて初めて見るぜ」
「あぁ、わたし達はマイクロンじゃなくて、人間なんです」
「ニンゲン……? あぁ、人間ヒューマノイドか。
 この星にはいないからなぁ……生きてるうちに本物の人間ヒューマノイドに会えるとは、こりゃ光栄だ」
 なのはの言葉に、メガロコンボイは相貌を崩し、笑顔で彼女達に一礼した。
「ようこそ、御客人。
 ギガロニアを代表して、歓迎するぜ」
「ありがとうございます♪」
 メガロコンボイの歓迎の辞に笑顔でうなずき、なのはが応えるのを見ながら――真雪はフェイトに声をかけた。
「…………なぁ」
「はい?」
「前にホップ、この星のヤツらのことを何て言ってた?」
「えっと……
 ……『みなさんよりも、少々体格のおよろしい方々で』って……」
「だよな……」
 フェイトの答えにうなずき、真雪はメガロコンボイへと視線を向けた。
 ギャラクシーコンボイ達の倍はあろうかという体躯を見上げ、続ける。
「………………『少々』か?」
「…………えっと……」
 フェイトには、答えることはできなかった。
 

 その後、メガロコンボイや彼のパートナーマイクロン、ホリブルの案内で、なのはやギャラクシーコンボイ達は工事現場の事務所へと迎えられた。
 メガロコンボイとの会談のため、歴代総司令官を擁するヴォルケンリッターや各プラネットリーダー、管理局の代表であるリンディもそれぞれ呼び集められた。彼らの他にも、その場にはソニックボンバー達各コンボイのリンクアップパートナー達も勢ぞろいしている。
「プラネットフォース?」
 ベクタープライムから説明を受け、眉をひそめて聞き返すメガロコンボイのボディは先ほどトランスフォームの過程で見せた中間形態だ。どうやらこの姿は屋内のような閉所作業のための形態のようだ。
「えぇ。
 どこにあるのか、教えて欲しいんです」
「それで、グランドブラックホールから宇宙を救うことができるのだ」
「そう言われてもなぁ……」
 リンディやベクタープライムの言葉に、メガロコンボイは思わず腕組みしてうなり声を上げる。
「ひょっとして……知らないのか?」
「すまないな……」
 ビクトリーレオの肩に座り、尋ねるヴィータに答えると、メガロコンボイは傍らに同席していたトランスフォーマーへと声をかけた。
「ブレンダル、何か知ってるか?」
 その問いに、ブレンダルと呼ばれたトランスフォーマーが答えかけ――ふと、メガロコンボイは彼の紹介をしていないことに気づいた。彼の答えを手で制すると、改めてなのは達に紹介する。
「こいつはブレンダル。オレの右腕で、物知りなんだ」
「よろしく。
 で、問題のプラネットフォースだが……そうかどうかは知らないが、最下層エリアに何かある、と聞いたことはある」
「最下層エリア……?」
「地面の下の下、一番下のエリアだ」
 聞き返すジャックプライムに、メガロコンボイはそう答えた。
「この星は繰り返される都市建設の結果、地表がいっぱいになると星そのものを新たな地表で覆ってさらに開拓していく――そういうことの繰り返しで何層も積み重ねられた階層惑星なんだ。
 つまり、元々の地表ははるか下――それが最下層エリアだ」
「案内してもらえないだろうか」
 そう頼むベクタープライムだったが――
「それはできない相談だな」
 彼に対し、ブレンダルは少し困った様子でそう答えた。どういうことかと訝る一同にはメガロコンボイが答える。
「掟があるんだ。
 『捨てた街には立ち入るな』ってな」
「それで、いくつも街をを作っては捨ててるのか……」
「けど、それにどんな意味があるんですか?」
「『過去を振り返るな』って意味じゃねぇかな?」
 納得する耕介のとなりで尋ねるシャマルにメガロコンボイが答えると、ブレンダルが一同を見回し、告げる。
「とにかく、掟は守らなければならない。
 『郷に入れば郷に従え』――我々だけじゃない。他所の星から来たキミ達にも、守ってもらう」
「そ、そりゃないぜ!」
「待て、ロディマスブラー」
「掟、か……
 久しく故郷を離れていたおかげで、忘れかけていたな。
 オレ達の星にも掟がある――それと同じことだ。
 お前達は、その掟に基づいてアニマトロスやスピーディアのプラネットフォースを手に入れたんだろうが」
 思わず声を上げかけたロディマスブラーをニトロコンボイとフレイムコンボイが制すると、そんな彼らの脇からリンディがメガロコンボイ達に呼びかける。
「しかし、今回は掟に従おうとするとプラネットフォースのある場所にいくことすらできないことになります。
 お願いです。別の宇宙のことだと思わず、特例として我々が最下層に向かうことを許可してもらえないでしょうか?」
「…………すまないな」
 だが、それでもメガロコンボイの答えは芳しくなく、一同の間に重苦しい空気が立ち込める。
 と――そんな中、動きを見せたのはベクタープライムだ。おもむろに背中の剣へと手を伸ばす。
「ま、待つんだ、ベクタープライム!
 いきなり剣を抜くなんて!」
 あわてて恭也が制止の声を上げ――それに同意したのはヴィータだ。
「そうだぜ!
 いきなり攻撃なんて、なのはじゃあるまいし!」
「あー、ヴィータちゃん、それってどーゆー意味かな?」
 思わずなのはがうめくが、ベクタープライムはかまわず剣を抜き放ち、
「心配ない。
 私の剣は、ただの武器ではないことは知っているだろう?」
「あ、そっか……
 ワープを試してみるのか……」
 美緒の言葉にベクタープライムがうなずき――その言葉に驚きの色を見せたのはメガロコンボイとブレンダルだ。
「ワープ!? ワープが使えるのか!?」
「ひょっとして、“プラネットX”の……!?」
《また、その名前……?》
「どういうこと……?」
 二人の言葉に、ジンジャーとフェイトは思わず顔を見合わせる――彼らが忌諱する“プラネットX”は、ワープと何か関係しているのだろうか……?
 だが、フェイトがそのことを尋ねようとするよりも早く、ベクタープライムから驚きの声が上がった。
「こ、これは……!?」
「どうした?」
「ワープできない……!」
「ワープが、妨害されているっていうのか……?」
 ビッグコンボイに答えるベクタープライムの言葉にうめくと、恭也はシグナムや知佳へと向き直り、
「シグナムさん、知佳さん、あなた達は?」
 その問いに、シグナムと知佳は早速試してみて――
「…………いや、ムリだ」
「私の瞬間移動テレポートもダメ……」
「あらゆる転移能力が、ここでは使えなくなってる、ってことか……」
 答える二人の答えにクロノがつぶやくと、
「た、大変です!」
 突然、その場にダンプカー型のトランスフォーマーが飛び込んできた。
 その背中の荷台にはブリッツクラッカーや晶、レンとブレインストームの姿がある。彼らを案内してきてくれたようだが、どうやら他にも問題を抱えてきたようだ。
「どうした?」
 尋ねるメガロコンボイに、そのトランスフォーマーは答えた。
「そ、それが……
 モールダイブの野郎が、封印を破りに!」
 

「フォースチップ、イグニッション!」
 咆哮と共に、紫色のフォースチップがチップスロットへと飛び込み――その先端のドリルが高速で回転する。
 そして――
「ジャイアント、ドリル!」
 咆哮と共に突撃。繰り出された一撃が封印のセメント壁に叩きつけられる。
「どうだぁ!」
 そのまま、ドリル戦車型のビークル形態を持つそのトランスフォーマーは封印を砕こうとエンジンをふかし――そこへ、ギャラクシーコンボイ達と共にメガロコンボイとブレンダルが駆けつけてきた。
「ブレンダル、トランスフォーム!」
 真っ先に飛び出したのはブレンダルだ。ロボットモードにトランスフォームすると、その巨体でドリル戦車型のトランスフォーマーへとつかみかかるが、
「やめるんだ、モールダイブ!」
「何しやがる!
 モールダイブ、トランスフォーム!」
 モールダイブと呼ばれたそのトランスフォーマーはロボットモードとなってブレンダルを振り払う。
「くっ、言っても聞かないなら!
 フォースチップ、イグニッション!」
 対し、ブレンダルもフォースチップをイグニッション。右腕となったミキサー部分の基部に備えられたチップスロットにフォースチップが飛び込み、ミキサーが展開されて内部から砲塔が姿を見せる。
「ミキシング、キャノン!」
 ブレンダルの咆哮と共に、放たれたビームがモールダイブを吹き飛ばす――大地に叩きつけられたモールダイブに、メガロコンボイが厳しく問い詰めた。
「何考えてやがる、てめぇ!
 掟破って何の得があるワケでもなし!」
 だが――その問いに答えたのはモールダイブ本人ではなかった。
「それが、あるんだよ」
「何っ!?」
 驚き、かまえるメガロコンボイに対し、現場の奥の暗闇の中から歩み出てきたのは――
「ま、マスターメガトロン様!?」
「ほぅ、フレイムコンボイだけでなく、やはりお前もサイバトロンにくっついて来たか……」
 驚き、声を上げたのはブリッツクラッカーだ――彼の言葉に、クロミアとインチプレッシャー、そして“暗黒三騎士ダークネス・トライナイツ”を従えたマスターメガトロンは、まるでそれが予想通りだとでも言いたげに笑みを浮かべてみせる。
「マスターメガトロンさん……!」
 “闇の書”との戦いの中で共闘した仲だ。できることなら再び敵として会いたくはなかった――予想通りではあるが望んではいなかった対面に、思わず渋い顔をするなのはだったが、
「フンッ、何を残念そうな顔をしている。
 あの“闇の書”との戦い、別れ際に言ったはずだぞ――『次会う時は、再び敵同士だ』とな」
 対し、マスターメガトロンは平然としている。なのはのその迷いをまるで断罪でもするかのように突き放す。
 だが――それよりも気になることがある。マスターメガトロンに対し、フェイトが疑問の声を上げた。
「け、けど、どうやってこっちの宇宙に!?
 時空トンネルの場所なんか知らなかったはずなのに!」
「案内してくれた者がいてな」
「誰のことだ!?」
 すかさずギャラクシーコンボイが聞き返し――そんな彼らの間を駆け抜けた者がいた。
 キラーコンドルだ。そのまま彼らの頭上、工事現場の骨組みの上に立っていたサウンドウェーブの元へと戻ると、六角形のユニットへと変形、その胸部に収まり――
「『誰のことだ!?』」
 サウンドウェーブの口から発せられたのは、つい先ほど告げられたギャラクシーコンボイの言葉だった。
「ぎ、ギャラクシーコンボイの声マネを!?
 何なんだ、テメェは!」
「自分の声でしゃべりやがれ!」
 驚きながらもソニックボンバーとライガージャックが怒りの声を上げるが――そんな彼らの言葉にサウンドウェーブはマイクを取り出し、「あー、テステス」とマイクテストを始める。マイク越しにしゃべるつもりだろうか。
 と、このままでは話が進まないと考えたのか、クロミアが一同にサウンドウェーブを紹介した。
「彼の名前はサウンドウェーブ。
 その名の通り、サウンドには相当うるさいみたいよ」
「カラオケ屋でマイクを離さない典型みたいなヤツだな……」
 クロミアの紹介にビクトリーレオがうめくと、
「この騒ぎは貴様の仕業か、マスターメガトロン!」
 そんな周囲のやり取りにかまわず、ギャラクシーコンボイがマスターメガトロンに言い放つ。
「貴様がこの若者をたぶらかして!」
「若者は常に変革を求めるものさ。
 古い掟には縛られない」
 だが、マスターメガトロンも平然とそう答え――
「そうか……てめぇが原因か!」
 そんなマスターメガトロンに対し、メガロコンボイがキレた。ギャラクシーコンボイを押しのけ、マスターメガトロンと対峙する。
「てめぇ、オレ達の星で何しやがる!」
 咆哮し、突撃するメガロコンボイだが、マスターメガトロンはそれをかわし、逆にメガロコンボイを背後から蹴り飛ばす!
「思ったとおりだ。
 図体に見合ってパワーはあるようだが、動きが鈍い……
 そして弱点は、その巨体を支える、脚だ!」

「リンクアップ!」
 マスターメガトロンの号令にあわせ、ダークファングウルフはビーストモードにトランスフォーム。四肢を折りたたむとボディに合体用のジョイントを露出させる。
 一方、マスターメガトロン自身も合体体勢に移行。右腕をボディ内部に収納するように変形、、本来の腕の甲にあたる部分にジョイントが露出する。
 そして、右腕となったダークファングウルフがそのジョイントに合体。その頭部を拳のように振りかぶり、マスターメガトロンは高らかに名を名乗る。
「ファング、メガトロン!」

「ゆくぞ!」
 咆哮と共に、リンクアップを遂げたファングメガトロンは地面スレスレをすべるようにダッシュ、メガロコンボイの足元へとすべり込む。
 そのまま、彼の足首に向けて一撃を放ち――

 空を薙いだ。

「何――――――っ!?」
 決まったと思った一撃が空振りに終わり、思わずファングメガトロンが声を上げ――
「オラぁっ!」
 そんなファングメガトロンを、真上にジャンプして一撃をかわしたメガロコンボイが思い切り踏みつける!
「いくら鈍かろうが、狙ってくる場所がわかってんならかわすのはワケないんだよ!」
 言い放ち、そのままファングメガトロンを足蹴にするメガロコンボイだが、
「いい気になるなよ……デカいの!」
「何っ!?」
 ファングメガロトンは踏みつけられたまま雷撃で対抗。たまらず足を放したメガロコンボイの下から脱出する。
「ファングメガトロン!」
「手を出すな!」
 戦友の思わぬ苦戦に、思わず駆け出そうとしたフレイムコンボイだったが、そんな彼にファングメガトロンは鋭く言い放った。
「このオレをコケにしやがって……! ヤツはオレがこの手で倒す!」
 言うと同時、ファングメガトロンはダークファングウルフとのリンクアップを解除、マスターメガトロンに戻り、
「ダークライガージャック!」
 スピード勝負がダメなら真っ向からパワー勝負――マスターメガトロンの呼びかけに答え、ダークライガージャックが彼の元へと駆けつける!

「リンクアップ!」
 マスターメガトロンの号令に応え、ダークライガージャックは跳躍し――両腕を分離、両足を折りたたむとそこに分離していた両腕が合体し、巨大な左腕に変形する。
 同時、マスターメガトロンの左腕も変形。一部をボディ内部に収納する形で折りたたみ、本来の腕の甲にあたる部分にジョイントが露出する。
 そして、左腕となったダークライガージャックがそのジョイントに合体。先端に収束した光が拳を作り出し、マスターメガトロンは高らかに名を名乗る。
「ライガー、メガトロン!」

「フォースチップ、イグニッション!」
 咆哮し、ライガーメガトロンは左腕のチップスロットにフォースチップをイグニッション。ダーククローを展開し、そこにイグニッションしたフォースチップのエネルギーのすべてを集中させる。
「ならば――こちらも!
 フォースチップ、イグニッション!」
 対し、メガロコンボイもまた手にした斧“メガロアックス”にフォースチップをイグニッションした。バケットホイール部分が展開され、その名の通りの大斧アックスとなる。
「ライガー、デスブレイク!」
 しかし、ライガーメガトロンはかまわず突撃。自身の全形態の中でも最大の打撃力を誇る、まさに必殺の一撃を繰り出すが――
「メガロ、クラッシュ!」
 同じパワー勝負となった今、対格差が――リーチの差が物を言った。メガロコンボイの振り下ろしたメガロアックスの一撃が、ライガーメガトロンを大地に叩きつけ、そこに込められたエネルギーが大爆発を巻き起こす!
「マスターメガトロン!」
「マスターメガトロン様!」
 これにはさすがに飛び出さずにはいられなかった。声を上げ、フレイムコンボイとブリッツクラッカーは爆発の跡と駆けつけ、打ち砕かれた地面の底をのぞき込み――息を呑んだ。
 どう見ても重傷だ。マスターメガトロンは下の階層まで叩き落とされ、その全身からは黒煙が上がっている。
 ダークライガージャックの姿はない。今の一撃でどこかに吹き飛ばされたのだろうか。
「こいつぁいかん!」
「助けねぇと!」
 思わず下の階層へと飛び降りかけ――フレイムコンボイとブリッツクラッカーは思わず動きを止めた。顔を見合わせ、ためらいがちになのはや晶達の方へと視線を向ける。
 その迷いの出所は明白――だが、迷いは一瞬だった。すぐに下の階層へと飛び降り、マスターメガトロンの元へと向かう。
「フレイムコンボイ!」
「ブリッツクラッカー!」
 とっさに追いかけようとする恭也と晶だが、
「待つんだ、二人とも!」
 そんな二人を止めたのはギャラクシーコンボイだった。
「彼らは、確かに我々に協力してくれた仲間だ。
 だが、同時にデストロンの戦士であることを捨てきれていない――マスターメガトロンの元に戻ったのがその証拠だ。
 彼らは自分達で選んだんだ。自らの居場所を……」
「け、けど……!」
 思わず反論しかける晶だったが――それが対応の遅れを生んだ。モールダイブやクロミア達もまたマスターメガトロンやフレイムコンボイ達と合流、そのまま下の階層の通路の奥へと撤退していった。
 

「アイツらも、プラネットフォースが狙いなのか?」
「そうだ」
 結果として、マスターメガトロンとメガロコンボイの一騎打ちはメガロコンボイの勝利に終わった――尋ねるメガロコンボイに、ギャラクシーコンボイがうなずく。
「しかし、彼らはその力を悪用し、自分達の望みを叶えようとしているんだ」
「他にも、同じようなことを考えて、スピーディアやアニマトロス、地球のデストロンも次々にこの星に来ようとしてる。
 なんとか、アイツらよりも先にプラネットフォースを手に入れないと……」
「そうか……」
 ギャラクシーコンボイや、彼に付け加えるジャックプライムの言葉に、メガロコンボイはしばし考え、ブレンダルとも視線をかわす。
 そして、彼が下した結論は――
「よし、お前達と手を組もう」
「本当ですか!?」
「あぁ。
 あんな連中に、ギガロニアを荒らされてたまるか」
 思わず声を上げたリンディに、ブレンダルもまた胸を張って答える。
「掟を破ることにはなるが、これも掟を守るためだ。
 ヤツらよりも先に、プラネットフォースを手に入れよう」
 そう告げて、メガロコンボイは自身の識別信号を中立からサイバトロンのそれへと変更。両肩にサイバトロンマークが浮かび上がる。
 と――
「それじゃあ、はい♪」
「………………?」
 そんな彼の前に飛翔し、右手を差し出したのはなのはだ――だが、そんな彼女の意図が読めず、メガロコンボイは思わず聞き返した。
「何だ? それは」
「握手ですよ、握手。
 ギガロニアにはないんですか?」
「いや……握手はわかるが……身体の大きさが……」
「身体の大きさは関係ない」
 なのはの答えに思わずうめくメガロコンボイだが、そんな彼にライブコンボイが笑顔で答える。
「大切なのは、サイバトロン魂を持っているかどうかさ」
「つまり、お仲間になれた、ってワケだな」
 ライブコンボイに同意したニトロコンボイの言葉に、メガロコンボイは苦笑まじりに人さし指を差し出し、なのはと握手を交わす。
 が――
「きゃわわわわっ!?」
 やはり体格差は大きなネックだったようだ。メガロコンボイはあくまで軽く握手しただけのつもりだったが、一方のなのはは全身を大きく揺さぶられてしまう。
「す、すまねぇ、大丈夫か!?」
「だ、大丈夫ですぅ……」
 あわてて謝るメガロコンボイに目を回しながらもそう答え、なのははなんとか復活すると一同を見渡し、音頭を執った。
「それじゃあ、みなさん!
 最後のプラネットフォース獲得のため、がんばろーっ!」
『おぉーっ!』


 

(初版:2007/04/29)