なのは達がギガロニアのプラネットフォースを巡り、各所で激しいバトルを繰り広げている頃――ギガロニアとは時空を隔てた元の宇宙では、プライマスがグランドブラックホールを消滅させようと、孤軍奮闘していた。
 しかし――チップスクェアを別宇宙に旅立ったなのは達に託し、本来の力を発揮できないプライマスではその勢いを押しとどめることはできなかった。グランドブラックホールは更に勢力を増し、ついにはスペースブリッジの向こうの星々にも、深刻な影響を与え始めていた。
 そして――その影響がもっとも強く現れたのは、元々活発であるがゆえに不安定なアニマトロスであった。

「ったく、なんて嵐だ、ちくしょう……」
「まともに飛んでられないぜ……」
 グランドブラックホールの影響は、まず異常気象となって現れた――荒れ狂うアニマトロスの空を飛び、テラシェーバーとボンブシェルはため息まじりにつぶやいた。
 フレイムコンボイの不在の間、仲間達と協力して民を守る活動を続けてきた彼らではあったが、ここ最近の異常気象の前には、なすすべのない状態が続いていた。
 と――その時、一際大きな雷鳴が轟いた。降り注いだ雷光が、二人をまともに直撃する!
『ぐぁあぁぁぁぁぁっ!』
 その衝撃で推進システムに影響が出た――飛行能力を失い、テラシェーバーとボンブシェルは眼下の地上へ落下し――そんな彼の目の前で大地が避け、真っ赤に輝く溶岩が吹き出す!
 そのままなす術なく、二人はマグマの中に消えていく――と思われたが、
「危ない!」
 そんな彼らを救ったのはサイドスとダイノシャウトだった。大地の裂け目を飛び越えて落下してきた二人を受け止め、裂け目の反対側に着地する。
「す、すまねぇ、サイドス……
 けど……」
 助けてくれたサイドスに礼を言うと、テラシェーバーは彼の背中の上で不安そうに空を見上げた。
 同様に、ボンブシェルもダイノシャウトの背の上で空を見上げ、つぶやいた。
「なんとかしないと、本当にこの星も終わりだぜ……!」
 

 そして、ギガロニアに舞台は戻り――
「…………はい。終わりよ。
 健康上異常なし。もう身体の具合は大丈夫みたいね」
「ありがとうございます、フィリスさん」
 アースラの医務室でアリシアの診断を終え、告げるフィリスにリニスがアリシアに代わって礼を言う。
「よかった……これでわたしも最下層に向かえるね♪」
「私もですよ。
 『アリシアちゃんのことを頼む』って、フェイトちゃんに言われてたんですよ」
「それでアースラに居残ってたんですか……」
 アリシアに答え、背伸びするフィリスにリニスが告げると、
「こっちは準備できたよー♪」
「必要な荷物は各自で持たせたよ。
 これでいつでも最下層に向かえる」
 言って、ロッテと一角が姿を見せた――彼女達もまた、それぞれのパートナーと共にウィザートロンに同行していたのだ。
《では、みなさん、参りましょう!》
「うん!」
 告げるリインフォースに答えると、アリシアはウェイトモードのロンギヌスを手に取り、決意を込めて声を張り上げた。
「待っててね、フェイト……!
 お姉ちゃんが、今すぐ助けに行ってあげるから!」

 

 


 

第75話
「故郷を想う気持ちなの」

 


 

 

「…………む?」
 ギガロニア地下階層――突然何かに気づき、ビーストモードのファングウルフは思わず顔を上げた。
「どうしたんだ? ファングウルフ」
 尋ねるアルフの問いに、ファングウルフは不安もあらわに彼女に答えた。
「アニマトロスに……何かが起きた」
「アニマトロスに……?
 おいおい、アニマトロスが見えるワケないだろ」
「感じるんだ。
 我々アニマトロスのトランスフォーマーの持つ、野性の本能で……!」
「なるほど……」
 ライガージャックに答えるファングウルフの言葉に、ビッグコンボイはそうつぶやいて考え込み、
「アニマトロスのトランスフォーマーは、オレ達他の星のトランスフォーマーに比べて本能的な部分が研ぎ澄まされている。
 その本能が、時空を超えて故郷の危機を伝えるというのは、十分に考えられる」
「そないなことがあるの?」
「お前達人間も、動物の持つ野性がもたらす、理屈では説明のつかない本能めいた行動はいくつか知っているだろう? それと同じだ」
「本能、ねぇ……」
 はやてに答えるビッグコンボイの言葉に、ライガージャックは頭上を見上げ――そこに見える天井の更に先にあるであろう広大な宇宙に思いを馳せた。
「オレは……何も感じねぇ……
 野性のビーストボディを持ってても……結局はよそ者ってことかよ……!」
 

「だ、大丈夫か……?」
「……誰もいないな……」
 ガレキの中に身を隠し、尋ねるガスケットにアームバレットは周囲の様子を確かめてそう答える。
「よし、それじゃあ行くとするか」
 言って、ガレキをどけて立ち上がるガスケットだが、アームバレットはそんな彼のとなりでため息をつき、
「あ〜ぁ、情けねぇ……
 スピーディアの暴走コンビと言われたオイラ達が、こんなコソコソと……」
「しかたねぇだろ。サイバトロンと出会うたびに戦ってたんじゃ身がもたないっての」
 答えるガスケットだが、アームバレットの表情は晴れない。
「強くなりてぇなぁ……」
「プラネットフォースさえ手に入れれば思うがままよ!
 ボクちんだってもっとカッコよく転生してぇよ!」
 答え、ガスケットは力強く大地を蹴りつけ――

 ――ミシッ。

『え………………?』
 突然の音に二人が足元を見下ろし――次の瞬間、彼らのいる一帯が崩落、下の階層へとまっさかさまに落下する!
『どわぁぁぁぁぁっ!』
 絶叫と共に落下し――そんな彼らは、下の階層のハイウェイの真ん中に墜落した。
「いてて……」
「こ、腰……腰、思いっきり……」
 うめいて、二人がぶつけたところをさすりながら身を起こすと、
「あーっ! あなた達!」
「まだこりずにうろついていたのか!」
『は………………?』
 突然かけられたその声に、二人は不思議そうに振り向き――数秒後、

『フォースチップ、イグニッション!』
「ギャラクシーキャノン、フルバースト!」
「イグニッション――パニッシャー!」

「どわっはぁぁぁぁぁっ!」
「最近こればっかぁっ!」

 大爆発と共に、二人は再び空の星となっていた。
 

 一方、別の区画では――
「ここも違うようだ……」
「くそっ、急がないと、他の連中に先を越されちまうぞ」
 周囲をサーチし、告げるサウンドウェーブの言葉に、ノイズメイズは舌打ちしながら振り向き、
「おい、行くぞ」
「わ、わかっとるわいっ!」
 ノイズメイズの言葉に、ランページがサウンドブラスターからマイクを死守しながら答え――
「待て!」
「ノイズメイズ、ランページ――ここで一体何している!?」
 突然の声に振り向くと、そこにはエクシゲイザーやロディマスブラーを先頭としたバンガードチームの姿があった。
「一緒にいるのは――サウンドウェーブに、サウンドブラスター!?」
「意外な組み合わせだな」
「どういうことか……説明してもらいましょうか!」
 バックギルド、ファストガンナー、ロングマグナスが告げると、
「…………いいだろう。
 もう隠し立てする必要もない」
 不敵に笑いながら、ノイズメイズは一同に向けて告げた。
「オレ達は――プラネットXのトランスフォーマーの生き残りだ!」
「プラネット、X……?」
「そういば、メガロコンボイ達もそんな星の名前を……」
 思わず眉をひそめ、すずかとアリサがつぶやくと、そんな彼女達に答える形でサウンドウェーブが説明を始めた。
「プラネットX……それは高度なテクノロジーを持ち、敵対するすべての星を滅ぼし、この宇宙に君臨していた惑星だ。
 だが……そのプラネットXにはもうひとつ、別の顔があった」

「別の顔……?」
「そう。
 そしてそれは、貴様らにとっても決して無関係なものではない」

 シオンに答えると、サウンドウェーブは逆に質問を投げかけた。
「プライマスから聞いてはいないのか?
 彼らトランスフォーマーの神々が、聖戦に敗れた後どのようにして再生を果たすのか」

「何………………?」
 その言葉に、ファストガンナーはかつてプライマスの語った自らとユニクロンの関係について思い返した。

『ユニクロンの持つ闇のエネルギーは時空を超えて拡散し、やがて別の時代に新たなユニクロンとして再生する――』

「――――――っ!
 まさか、プラネットXとは……!」
「そうだ。
 プラネットXとは――」

 ファストガンナーの言葉に答え、サウンドウェーブは告げた。
 

「新たに降臨なさるはずだったユニクロン様だ」
 

「つまり、その星の住人であった我々は、あのお方の眷族というワケだ」
「そんな……!
 じゃあ、ユニクロンはこの宇宙で、すでに復活してるってことですか!?」
 突然明かされた、ノイズメイズ達の正体――サウンドウェーブの言葉に思わず声を上げる那美だったが、
「いえ……それはありません」
 そう答えたのはハイブラストだった――彼のライドスペースで、ノエルもまたうなずき、
「彼は先ほどから、プラネットXのことをすべて過去形で話しています。
 つまり……プラネットXはすでに……」
「そう。
 プラネットXは、すでに滅びている」
 ノエルの言葉に、ノイズメイズはそう答えてうなずいてみせる。
 そんな中、サウンドウェーブの説明は続く。
「ある時、我らの祖先はプラネットX自体の存在が不安定になっていることに気づいた。
 貴様らも聞いているだろう? ユニクロン様のスパークが何者かによって吸収されてしまった、と……」

「あぁ……
 それが原因で、グランドブラックホールがオレ達の宇宙に現れたんだからな!」
「それと同じように、こちらの宇宙ではユニクロン様が復活なさるはずのプラネットXそのものに影響が現れたのだ」
 答えるロディマスブラーにうなずき、サウンドウェーブは続ける。
「こちらの宇宙における影響は、 今からおよそ1000年前に現れた――本来宿るべきユニクロン様のスパークが不足したことで、ユニクロン様のボディである惑星の維持が困難となったのだ」
「1000年前に……?
 私達の宇宙でグランドブラックホールが発生したのは、つい最近なのに……」
「プライマスやユニクロン様の転生において、次元世界や時間の概念などないも同然だ。
 こちらの宇宙において、ユニクロン様は1000年前に転生なさるはずだった……」
「じゃがな、この時代で誰かがユニクロン様のスパークを吸収したもんじゃから、その影響が1000年前のプラネットXで起きたんじゃ!」
 うめく那美にノイズメイズやランページが答え、サウンドウェーブが続きを話し続ける。
「当然、我らの祖先はその問題を解決すべく、さまざまな方向から検討を重ねた。
 その結果――足りない惑星エネルギーを他所の星から補完すればいいという結論に達した我らの先祖は、時空の彼方にある別の宇宙に、あふれんばかりのエネルギーを持つ星を見つけ出し、捕獲した。
 それが……」

「ギガロニアですね? こちらの宇宙に来る前の……」
 ノエルの言葉にうなずくと、ノイズメイズはサウンドウェーブから説明を引き継ぎ、彼らに告げる。
「そうだ。
 だが……ギガロニアのトランスフォーマー達は我々の侵略に対し、自らの星を巨大化させて猛反撃を開始した。
 我々の祖先も、負けじと最後の攻撃を仕掛けたが……そこで予想もしなかった問題が発生した。
 ギガロニアがこちらの宇宙に来る原因となった、時空の裂け目の発生だ。
 それは、プラネットXがそっちの宇宙に行くために作り出した時空の穴を母体として発生した――すなわち、ギガロニアと対峙するプラネットXの後方で、だ。
 その結果、この災害による余波はプラネットXがまともに受ける形となった。プラネットXを盾としたギガロニアはこちらの宇宙に飛ばされることで難を逃れ、一方で余波をまともに浴びたプラネットXは……消滅した。
 我々は許さない……プラネットXを、ユニクロン様を犠牲にして、今ものうのうと生き延びているギガロニアを!
 ゆえに、我々はギガロニアに復讐する!」
「勝手なことを言うな!」
「そうですよ! そんなの自業自得じゃないですか!」
「故郷を失った我々の気持ちをわかれ、とは言わんさ」
 反論する美緒とファリンにノイズメイズが言い返すと、
「何と言われようと、ギガロニアへの復讐こそが我らの目的。
 我々には、別の宇宙の危機などどうでもいいのだ!」

 サウンドウェーブがそう告げると同時――サウンドブラスターと共に胸部を展開。そこから飛び出した2機のキラーコンドルがエクシゲイザー達の周囲に煙幕をまき散らす!
「ククク……我らの技を見破ることができるかな?」
「何を……!?」
 閉ざされた視界の向こうで告げるサウンドウェーブの言葉に、すぐに胸部のライトを点灯するエクシゲイザーだったが――あまりにも濃すぎる煙幕がその光をさえぎってしまう。
「くそっ、ライトも利かないぞ!」
「センサーもダメ!
 この煙幕自体に、ジャミング効果があるみたい……!」
「まるでオイルの中だな……」
 うめくエクシゲイザーとすずかの言葉にファストガンナーがつぶやき――ふと、彼の視界にノイズメイズの姿がよぎった。
「そこだぁっ!」
 すかさず間合いを詰め、拳を繰り出すファストガンナーだったが――突然ノイズメイズの姿が消えた。その拳はむなしく宙を凪ぐ。
「何っ!?」
 幻覚だったのか――思わずファストガンナーがたたらを踏むと、
「どうしたどうした?
 オレはここだぜ?」
 そう告げて――多数のノイズメイズがファストガンナーを取り囲んだ。

「バックギルド、アリサ――オレ達から離れるなよ!」
「わかってるって!」
「そっちこそ、気をつけてよ!」
 告げるエクシゲイザーにバックギルドとアリサが答え、彼らは慎重に周囲の様子をうかがい――
「ぅわぁっ!」
「きゃあっ!?」
「――――――っ!?
 バックギルド、アリサ!?」
 突然響いた悲鳴にエクシゲイザーが振り向くが、そこにすでにバックギルド達の姿はない。
「バックギルド!? アリサちゃん!?」
 姿を消した親友達の姿を探し、すずかが声を上げると――
「エクシゲイザー! すずか!」
「ノイズメイズを捕まえました!」
 聞こえた声はロングマグナスと那美――振り向くと、確かにロングマグナスがノイズメイズを取り押さえている。
「よぅし、いくぜ!」
 こうなればこっちのものだ。一撃を見舞うべく、エクシゲイザーは思いきり拳を振るい――
「ぅわぁっ!」
「きゃあっ!」
 その一撃がとらえたのは――バックギルドだった。強烈な衝撃に、バックギルドとアリサが声を上げる。
「な、何するんだ、ロングマグナス、エクシゲイザー!」
「そ、そんな……!」
「ボクが捕まえたのは、確かにノイズメイズだったはずなのに……!」

「くっ、いったいどうなってるんだ……!」
「通信は不通、音声も不透明……
 これじゃ、離れてしまったみんなと連絡が取れないよ!」
 周囲を見回すが、やはり何も確認できない――背中合わせに周囲をうかがい、ロディマスブラーとハイブラストがうめく。
 と――
「来てくれ、ロディマスブラー!」
「ファストガンナー!?」
 突然の声にロディマスブラーが顔を上げ――
「ぅおぉぉぉぉぉっ!」
 声のした方から飛び出してきたのはサウンドブラスターだった。渾身の飛び蹴りを受け、ロディマスブラーが吹っ飛ばされる!
「ロディマスブラー様! 美緒様!」
 漆黒の煙幕の向こうに消えてしまったロディマスブラーと美緒に、ファリンが思わず声を上げ――
「大丈夫だ。
 ついでにサウンドブラスターも倒したぜ」
 言って、ロディマスブラーは無事煙幕の中から姿を現した。
「早くみんなと合流しよう。
 今度は離れないようにするからさ」
「あ、あぁ……」
 告げるロディマスブラーの言葉にハイブラストがうなずき――
「だまされるな!」
 声を上げて――ロディマスブラーがもうひとり現れる!
「え、えぇっ!?」
「何言ってるんだ! この偽者が!」
「ブラーに化けるな!」
「何を! 偽者はそっちだろう!」
「そうなのだ!
 いい加減なことを言うな!」
 驚くハイブラストの前で、二人のロディマスブラーは言い争いを始める。
 どちらかが偽者のはずなのだが――ライドスペース内の美緒の声まで再現されてはどっちがどっちかわからない。
「ど、どっちなんだ……!」
 これにはたまらずハイブラストは頭を抱え――
「なんちゃって!」
 ――たりはしなかった。迷わず全身の火器を起動し――ロディマスブラーを二人まとめて薙ぎ払う!
「ぐわぁっ!?」
 と――そのうち一方のロディマスブラーの像が崩れた。すぐにその姿がサウンドブラスターのそれへと変わる。
「き、貴様!?
 仲間ごと撃つなんて、何を考えている!?」

「そっちの考えが甘かっただけだよ」
 マイクがなくとも、それでも絶叫するように告げるサウンドブラスターの言葉に、ハイブラストは平然と告げ――
「ボク達が――彼女持ちロディマスブラーへの攻撃をためらうとでも思っていたのか!」
「てめぇ……! これが片付いたら覚えてろよ……!」
 胸まで張って断言するハイブラストの言葉に、黒焦げになって大地に転がるロディマスブラーがうめいた。

「くそっ、相手の位置がつかめない……!」
「どうすればいいんだ……!」
 一方、エクシゲイザー、バックギルド、ロングマグナスはランページ、サウンドウェーブを相手に苦戦を強いられていた。
 ジャミング効果を持つ煙幕によって視界とセンサー類を塞がれ、さらにはサウンドウェーブのサウンド機能によって声や物音もあてにならない。相手の位置を捉える術を奪われ、どうすることもできずにただ翻弄されるばかりである。
「このままじゃマズいですよ……!
 けど、いったいどうしたら……!」
 いくら見回しても煙幕が広がるばかりで何も見えない。打つ手を見出せず、ロングマグナスがうめくと――
「……ロングマグナス」
 突然、ライドスペースの那美のヒザの上で久遠が口を開いた。
「久遠が、みつける」
「久遠?」
「そとにだして……おねがい」
「あ、あぁ……」
 一体何をするつもりなのか――しかし、現状で自分達に成す術がない以上、彼女に賭けるしかない。ロングマグナスは戸惑いながらも那美と久遠をライドスペースから降ろす。
「久遠、どうするの?」
「ちょっとまって」
 尋ねる那美に答え――久遠は那美の腕の中でしばし周囲を見回し、
「…………むこう」
「わかった!」
 煙幕の一方を指さした久遠の言葉に、ロングマグナスは試しに1発発砲し――
「ぐわぁっ!?」
 手ごたえがあった。直撃を受け、サウンドウェーブが吹っ飛ばされる!
「あ、当たった!?
 けど、どうして……」
 どうやって相手の位置をつかんだのか――ワケがわからずバックギルドが首をかしげるが、
「そうか――わかった!」
 一方で、アリサは久遠がサウンドウェーブの位置をつかんだカラクリを見抜いていた。
「匂いよ!
 久遠は元々は狐だもの――匂いでサウンドウェーブの位置をつかんだのよ!」
「そうか……なるほど!
 久遠、次はランページだ!」
「そっち」
 尋ねるバックギルドに、久遠は迷わず一方を指さし――次の瞬間、エクシゲイザー達の一斉射撃がランページに降り注ぐ!
「な、何じゃい!?
 なんでワシはすぐにわかったんじゃ!?」
 あわてて攻撃から逃げ惑い、尋ねるランページの言葉に、久遠は答えた。

「…………カニのにおい」

『………………』
 一瞬、場の空気が固まり――ランページを除く全員が、敵味方関係なくつぶやいた。
『さすがは海鮮』
「やかましい!」

「どうやら、お仲間は次々やられてるらしいぞ」
「くっ、やってくれるな!」
 その様子は、ファストガンナーやシオンと戦うノイズメイズも気づいていた。告げるファストガンナーの言葉に、周囲に浮かぶ自分の幻覚と共に殴りかかるが――
「あ、スタースクリーム」
「何っ!?」
 告げたファストガンナーの言葉に思わず振り向き――
「そこです!
 バレルレプリカ――フルパワー!」
 幻覚の動きを合わせ損なった。ひとりだけ振り向いてしまったノイズメイズの本体を、シオンの放った一撃が吹き飛ばす!
 各所で次々に敗れ去り、サウンドウェーブ達の展開した煙幕も晴れた。これで後はトドメの一撃をお見舞いするだけだ。
「いくぞ、みんな!」
『おぅ!』
 告げるエクシゲイザーに一同が答え――
『フォースチップ、イグニッション!』
『ギガ、パニッシャー!』
『ダブル、エクスショット!』
『ツイン、サーチミサイル!』
『ロディマスショット!』
『マグナ、スマッシャー!』
『ブラスト、ランチャー!』

 全員の一斉攻撃が降り注ぎ――ノイズメイズ達は大爆発の中に消えていった。
 

 バンガードチームとロディマスブラーがノイズメイズ達を相手に勝利を収めていた頃――
「また貴様か……」
 ライガージャック、ファングウルフを先頭に立てたビッグコンボイ達と対峙し、フレイムコンボイは退屈そうにそうつぶやいた。
「まったく、こりないヤツよ……」
 しかし、フレイムコンボイは目の前のライガージャックには大して興味を持ってはいなかった。その傍らのファングウルフへと視線を向け、
「ファングウルフ、それでも貴様、アニマトロスの戦士か!?
 腰抜けどもの後をウロウロと……まるで金魚のフンではないか。
 オレ様はザコにかまっている時間はないのだ。おとなしく、道を開けてもらおうか」
 だが――
「フレイムコンボイ! お前とはもう一度、サシでやりたいと思っていたんだ!」
 そんな彼の意に反し、ライガージャックがフレイムコンボイの前に立ちはだかる。
「お前には、アニマトロスのリーダーの資格はねぇ!
 お前に代わって、オレがアニマトロスのリーダーになる――決闘だ! アニマトロスの掟に従ってな!」
「なんだと……!?」
 だが、それはフレイムコンボイの神経を逆なでするだけだった。対峙するフレイムコンボイの声色に怒りが混じり始める。
「貴様にあの星の何がわかるというのだ?
 何もない――自然そのものが敵同然の、あの苦しみがわかるというのか?
 オレは今も感じる!  アニマトロスの、悲しみを……!」
「アニマトロスのことを知ってるから、何だってんだ!
 その苦しみと戦ってきたからって、何だってんだ!」
 告げるフレイムコンボイに対し、ライガージャックも毅然と言い返す。
「リーダーに必要なのは、力だけじゃない! もっと他に、大事なものがある!
 総司令官が、アルクェイドが――仲間達が、それを教えてくれた!
 アニマトロスのために、新しいリーダーが必要なんだ! 本当に必要なものを理解できない、お前に代わる新しいリーダーが!」
「知った風な口を利きおって……」
 まくし立てるライガージャックの言葉に、ついにフレイムコンボイの闘志に火がついた。身がまえ、その全身に“力”がみなぎる。
「トランスフォーム!」
 先手はこちらから――ビーストモードとなって突撃するライガージャックだが、
「甘いわぁっ!」
 フレイムコンボイも負けてはいない。ビーストモードとなってライガージャックの突撃を受け止めると、そのまま近くのビルに向けて投げ飛ばし――身を翻して壁面に着地したライガージャックに襲いかかる!
「く………………っ!」
 対し、ライガージャックはその一撃をかわして離脱、フレイムコンボイもその後を追っていく。
「ライガージャック!」
 そんな彼らを追って、アルクェイドも跳躍し――その一方で、ファングウルフはビッグコンボイへと振り向き、
「ここはオレ達に任せて、ビッグコンボイ達は先へ」
「大丈夫なのか?」
「相手はフレイムコンボイなんよ?」
「なんとかしてみせるさ。
 それに――これはアニマトロスのトランスフォーマーの問題だ。アニマトロスに生まれたオレと、アニマトロスで新たな生を得たライガージャックが戦うべき場だ」
 ビッグコンボイの言葉にファングウルフが答えると、アルフもまたザフィーラへと向き直り、
「ザフィーラ、はやてやみんなを頼んだよ」
「任せろ。
 盾の守護獣の名にかけて」
 その言葉にアルフがうなずき――彼女やファングウルフはライガージャック達を追ってビルの上を飛び移っていく。
「ビッグコンボイ……」
「今は、ヤツらを信じよう」
 やはり心配だ――不安げに声をかけるはやてに、ビッグコンボイはそう答えた。
「確かにフレイムコンボイは難敵だが――ライガージャック達とて今までの戦いで地力を増してきている。
 アイツら全員がその力を出し切ることができれば――おそらくは条件は互角だ」
 そうはやてに告げて、ビッグコンボイは彼らの去っていった方向へと視線を向けた。
「後の勝敗を分けるのは――両者の精神面の問題だ」
 

 一方、ライガージャックとフレイムコンボイの戦いは、フレイムコンボイによる追跡戦の様相を呈し始めていた。ビルの上を素早く飛び移っていくライガージャックを、フレイムコンボイの爪が、牙が、そしてデスフレイムが次々に襲う。
 だが――ライガージャックもまた負けてはいない。その攻撃をことごとくかわし、必死に反撃の機会をうかがう。
「どうした、逃げるのか!?」
「逃げねぇ、よっ!」
 だが、その戦いも一瞬にして様相を変えた――フレイムコンボイに言い返し、突如反転したライガージャックの突撃がカウンターとなって炸裂。フレイムコンボイをビルの屋上に叩きつける!
「ライガージャック!」
「大丈夫か!?」
 二人がどうなったのかは立ち込める土煙で見えない――声を上げ、アルクェイドとファングウルフがアルフと共に駆けつけると、
「腕を上げたようだな――サイバトロンの犬め」
「ライオンはネコ科だっつーの……!」
 互いに受けた傷に苦笑を浮かべ、対峙するフレイムコンボイとライガージャックの姿がそこにはあった。
 しかし、フレイムコンボイの傷はライガージャックのそれに比べて明らかに浅い――それは、二人の間の実力の差を如実に物語るものだった。
「だが――まだ足りぬ。
 その程度では、アニマトロスのリーダーは務まらぬ。
 腕を磨き、出直すがいい」
 そしてそれは、実際に味わった当人達が一番よくわかっていた。そうライガージャックに告げ、フレイムコンボイは彼に背を向け――
「フレイムコンボイ!」
 そんな彼を、ファングウルフが呼び止めた。
「グランドブラックホールの影響が、アニマトロスにも出始めたぞ!」
 そう故郷の危機を告げるファングウルフだが――
「言われなくとも、わかっとるわ」
 そんな彼に、フレイムコンボイは振り返ることもなくそう告げた。
「立ち止まっているヒマはないのだ。
 プラネットフォースを手に入れ、アニマトロスを救うためにも……」
 告げて、その場を去ろうとするフレイムコンボイだが――
「待て、フレイムコンボイ!」
 今度はライガージャックが彼を呼び止めた。
「お前は、間違ってる……! デストロン軍なんかに、戻りやがって!
 アイツらと組んで、何があるんだ! あるのは、破壊だけじゃねぇか!
 それがアニマトロスのためだってのか!?」
 その言葉に、フレイムコンボイは答えない。
「オレ達の総司令官は、なのはは――オレやアルクェイドに教えてくれた!
 殴り合うだけが戦いじゃねぇ――そんなのはただの手段だ!
 殴り合う、その中で――もっと別の、大切な戦いをしなけりゃならないんだ!」
「…………フンッ、くだらん」
 だが、そんなライガージャックの言葉を、フレイムコンボイは一蹴した。
「それほど言うのなら、ヤツをオレの前に連れてこい。
 オレは先を急ぐが――その前に立ちふさがるのであれば、オレは逃げも隠れもせん!」
 そう告げるフレイムコンボイだったが――今度はライガージャックがそれを一蹴する番だった。
「いや――お前の相手は、このオレだ!」
「何…………っ!?」
「総司令官やなのはには、もっと大事な仕事が待ってんだ! 迷惑はかけられねぇ!」
「ギャラクシーコンボイなしで、貴様ひとりで何ができると言うんだ?」
 ライガージャックの言葉に聞き返すフレイムコンボイだが――
「ひとりじゃないわよ!」
 そう告げ、アルクェイドが二人の間に割って入った。そしてさらに――
「私も相手だ!」
 ファングウルフもそれに加わった。アルフと共にフレイムコンボイと対峙する。
「フレイムコンボイ! 一緒にアニマトロスを救おう!
 ギャラクシーコンボイ達と協力すれば、アニマトロスを危機から救えるはずだ!
 お前の流儀がそれを認めないというのなら――ここで私がお前を倒す!
 いくぞ、アルフ!」
「あぁ!」
「あたし達も行くわよ!」
「おぅ!」
 ファングウルフの言葉にアルフが、アルクェイドの言葉にライガージャックが応え――
『フォースチップ、イグニッション!』
 4人は一斉にフォースチップイグニッション。それぞれパワーファングとプラティナムクローを装備する。
「いくぜ、フレイムコンボイ!」
「オレ達のすべてを――この一撃に賭ける!」
「いいだろう――来い!」
 ファングウルフの――そしてライガージャックの宣言に応じ、フレイムコンボイもまたフレイムアックスをかまえ、その刀身に“力”を集めていく。
「決めてきな、ファングウルフ!」
「あたし達の“力”――全部貸してあげるから!」
 対し、アルフやアルクェイドも各々のパートナーに乗り込み、自らの“力”をパワーファングに、プラティナムクローに収束させていく。それぞれが全力攻撃をしかけるよりも、その全力攻撃の“力”を一点に集中させ、一気に叩きつけようというのだ。
 そして、両者が跳躍。一瞬の内に交錯し――!
 

「――――――っ!?」
 それを感じ取り、フェイトは唐突に顔を上げた。
「アルフ…………?」
 感じたのは自らの半身とも言うべき使い魔の異変――言いようのない不安にかられるが、
「…………ううん、アルフなら、きっと大丈夫……!」
 それでもすぐに意識を切り替え、フェイトは自分達の対峙する相手へと視線を向け――
「どうしても……どいてくれないの?」
「しつけぇぞ!
 この先に行きたいんなら、先にオレを倒せっつってんだ!」
 尋ねるジャックプライムに、ブリッツクラッカーは迷うことなくそう答える。
「ブリッツクラッカー!」
「晶……いくらお前らの頼みでも、ここは譲れねぇよ」
 声を上げる晶にも、ブリッツクラッカーはそう答える。
「どうしても、やるってのか……!」
「当たり前だ。
 オレだって、お前らのことは嫌いじゃねぇ――だが、嫌いじゃねぇからこそ、この場は譲れない!」
 うめくオートボルトに答え、ブリッツクラッカーは拳を握り締め、
「オレはデストロン、お前らはサイバトロン――敵同士としてこの場に立ってるんだ。
 敵同士だからこそ――全力で戦うのが、オレ達戦士の友誼ゆうぎだろうが!」
 告げるブリッツクラッカーの目に迷いはない。
 戦士であり、同時に友人でもある――だからこそ、彼は戦士としての礼儀にのっとり、敵である晶達と対峙していた。
 だからこそ――
「――いいだろう。相手になってやる」
「シックスナイト!」
「若、ヤツの決意は固いようだ。
 ならばこそ、我らもまた全力で応じるべきだ――でなければ、それはヤツの決意に対する侮辱になる」
 思わず声を荒らげたジャックプライムだが、シックスナイトはそう答える。
「ジャックプライム、シックスナイトの言うとおりだ。
 ブリッツクラッカーのことを仲間だと思うのなら――全力でアイツと戦うべきだ」
「恭也さん……」
 恭也もまたシックスナイトに同意。彼の言葉にジャックプライムはしばし考え――決断した。フェイトへと向き直り、尋ねる。
「……フェイト。
 ちょっとの間だけ……パートナー解消してもいい?」
「え………………?」
 いきなり何を言い出すのか――突然の申し出に目を丸くするフェイトだが、ジャックプライムはすぐにその疑問に対する答えをもたらした。晶に視線を向け、告げる。
「この戦い……晶が決着をつけるべきだと思う。
 だから……晶が想いをぶつけるための、剣になってあげたいと思うんだ」
「晶と組んで、ブリッツクラッカーと戦うというのかい?」
「うん。
 その間に、みんなは先に進んでよ。
 ボクもすぐに決着をつけて――」
 美沙斗に答え、ジャックプライムはブリッツクラッカーへと向き直り、告げた。
「ブリッツクラッカーと一緒に、追いかけるからさ」
 

「ぐ……ぉ…………!」
 うめき声と共に巨体が崩れ落ち――力尽きたオボミナスは合体も解除され、大地にバラバラに放り出される。
「やれやれ、ようやくか……」
「ずいぶんと手こずらせてくれたな……」
 息をつき、かまえを解くダイリュウジンのとなりで、ロードシーザーも安堵と共に刃を収める。
「薫、ケガはないか?」
「問題なか。
 さぁ、先を急ごう」
 尋ねるスペリオンに薫が答えると、
「――――待ってください!」
 突然、そんな彼らをシエルが呼び止めた。
「どうしたの?」
「しっ!」
 尋ねる都古を制し、シエルはしばし耳を澄ませ――
「――そこです!」
 叫ぶと同時、投擲用の直剣“黒鍵”を投げつけ、
「ちぃっ!」
 舌打ちし、飛来した黒鍵を弾いたのは――
「サイクロナス!」
「それに、他の連中も!」
 黒鍵を弾き、姿を現したサイクロナスや彼と共に現れたヘルスクリーム達の姿に、みなみやレールレーサーが声を上げる。
「へっ、不意打ち失敗ってか」
「だからこんな性に合わない手はイヤだったんだ」
 一方、発見されても動揺のカケラもない者が若干2名――不意打ちし損なって舌打ちするサイクロナスやヘルスクリームにかまわず、スナップドラゴンとエイプフェイスはビーストモードにトランスフォームし、戦闘態勢に入る。
「やるしかないか……!
 いくぞ、薫!」
「はい!」
 向こうがやる気な以上、応戦しなければなるまい――告げるスペリオンに答えて薫が霊刀“十六夜”を抜き放ち、それに対しサイクロナス達も身がまえる。
 そして――再びその場で戦端が開かれた。
 

 そして、別の一角では――
「ほぉ……プラネットフォースか……
 それはいいことを聞いた」
 つぶやき、メトロタイタンは不敵な笑みと共につぶやいた。
「その力があれば、この星をより強大な惑星にすることも可能か……
 プラネットXも、他所の星も――どんな星の侵略も許さない、無敵の要塞惑星に作り変えることができる……
 なら、なんとしても手に入れるしかないな」
 決断し、メトロタイタンは身をひるがえし――ふと背後に視線を向け、
「貴様らの情報、有効に活用させてもらうぞ。
 それから――ほめてやる」
 そう彼が告げた、その先には――
「オレに踏みつぶされて、まだ生きてるんだからな」
 ボロボロの状態でクレーターの中に倒れる、ウィアードウルフ、スカル、ワイプの3人の姿があった。
 

『どわぁぁぁぁぁっ!?』
 絶叫し――またもや床を踏み抜いたガスケットとアームバレットは、またもやハイウェイの中央に落下して――
「何ナニ? またあなた達なの?」
 またもやなのは達と遭遇していた。ベクタープライムのライドスペースで、桃子が声を上げる。
「まったく、しつこいわねぇ……」
「それはこっちのセリフだ!
 来るなら来やがれ!」
 リンディに言い返し、かまえるガスケットだったが――
「どうせかないっこないんだから、いい加減降参したら?
 いぢめたりしないから。ね?」
「『ね?』じゃねぇぇぇぇぇっ!
 その悪意のない同情からしてすでにいぢめだろうがぁぁぁぁぁっ!」
 この人が爆弾を投下してくれた。サラッとキツいことを言ってくれる桃子の言葉に、ガスケットが涙ながらに絶叫する。
「サイバトロンの情けは受けねぇ!」
「そうだそうだ!
 やせても枯れてもボクちん達は!」
『スピーディアの暴走コンビだ!』
 ここまできたらもうヤケだ――そう告げるなりガスケットとアームバレットはその場にドッカリと腰を下ろし、座り込みを開始してしまう。
「まったく……私達に勝てないのがよっぽど悔しいのね……」
「……『私達』というか……主にキミの口撃に対して、だと思うが……」
 どうしたものか――あきれてため息をつく桃子の言葉にベクタープライムがうめくと、
「おーい!」
「みんな、無事か!?」
 そんな彼らに声をかけ、飛来してきたのはソニックボンバーとスターセイバーだった。ロボットモードにトランスフォームするとギャラクシーコンボイの傍らに着地し、
「一体何事だ?」
「どかないってがんばってるのよ。
 かないっこないのに……」
「そうか……」
 告げる桃子の言葉に納得すると、ソニックボンバーはガスケット達へと向き直り、
「お前ら――これでもどかないか?」
『は………………?』
 思わず眉をひそめるガスケット達だが、ソニックボンバーはかまわずスターセイバーと視線をかわし――

『ソニックボンバー!』
 クロノと共に景気よく名乗りを上げ、ソニックボンバーはビークルモードへとトランスフォーム。そこから機首を後方にたたみ、主翼のバルカンシステムも展開。機体下部の装甲を展開して合体ジョイントを露出させる。
『スター、セイバー!』
 次いでシグナムとスターセイバーが叫び、背中に合体用のジョイントを展開。その両足にソニックボンバーの翼から分離した火器が合体する。
 そして、クロノの誘導で両者が交錯し――
『リンク、アップ!』
 4人の叫びと共に、バックユニットとなったソニックボンバーがスターセイバーに合体する!
 最後にソニックボンバーの胸部装甲がスターセイバーの胸部に装着され、合体を遂げた4人は高らかに名乗りを上げる。
『ソニック、セイバー!』

『フォースチップ、イグニッション!』
 合体するなりすぐにイグニッション――咆哮と同時に飛来したセイバートロン星のフォースチップがソニックセイバーの背中のチップスロットに飛び込み、背中のギャラクシーキャリバーを起動させる。
『あわわわわ……!』
 そして、抱き合ってガタガタと震えるガスケット達へと向き直り――
『ギャラクシー、キャリバー!』
 解き放たれた真紅の閃光が、渦を巻いてガスケット達を吹き飛ばす!
「本日2度目のフライトでございまぁぁぁぁぁすっ!」
「クセになりそぉぉぉぉぉっ!」
「…………まったく、悪い子達じゃないんだけどね……」
「ムキにさせた張本人がそれを言うか?」
 吹っ飛んでいくガスケット達を見送り、つぶやく桃子にメガロコンボイがうめくと、
「あれ、もう片付いちまったのか?」
「出る幕なしかよ……」
 ヴィータとビクトリーレオがうめき、他の面々と共に合流してきた。
 

「無事か?」
「あぁ……」
 尋ねるサウンドブラスターに答え、ノイズメイズはガレキの中から姿を現した。
「サウンドブラスターとランページは?」
「向こうに埋まっているサウンドブラスターをランページが掘り出しに行っている」
 ノイズメイズにそう答えると、サウンドウェーブは息をつき、
「ともかく……対サイバトロン用の工作は完了だな」
「あぁ……事前に打ち合わせしておいただけあって、迫真の演技だったな」
 そうつぶやくノイズメイズだったが――ふと真剣な声色でサウンドウェーブに尋ねた。
「しかし……少し情報を与えすぎたんじゃないのか?」
「いや、あれでいい。
 どちらにせよヤツらに確認のしようはない――情報の欠落に気づかぬまま、我らの目的がギガロニアへの復讐“だけ”だと思ったはずだ」
 ノイズメイズに答えると、サウンドブラスターは改めてつぶやいた。
「そう……ヤツらは誤解したはずだ。
 “ユニクロン様のボディが、滅びたままだ”とな……」
 

「………………」
 半壊したビルの屋上で、フレイムコンボイは静かにそれを見下ろしていた。
 自分達の激突の余波で崩壊したビルの残骸――そしてその下に埋もれているであろう、ライガージャック達を。
「……『デストロンに戻っても、アニマトロスは救えない』か……」
 ふと、ライガージャックに言われたことを反芻する。
「……違うな。
 デストロンに戻らねば救えぬのだ。アニマトロスも、あの宇宙も。
 そのためならば、悪の汚名も、裏切り者の汚名も喜んで背負おうぞ。
 それが――ヤツの盟友たるオレの取らねばならぬ道だ」
 つぶやき、フレイムコンボイはその場に背を向け――静かに付け加えた。
「プラネットフォースは手に入れる。その力でグランドブラックホールを消滅させる。
 そして――」

 

 

「マスターガルバトロンを討ち、すべての禍根を断つ」


 

(初版:2007/06/03)