「おぉぉぉぉぉっ!」
咆哮と共に鉄拳――スーパースタースクリームの拳が、ブレンダルによって敷き詰められたコンクリートを打ち砕く。
「スキャンによればあと少しです!
がんばってください、スーパースタースクリーム様!」
「言われるまでも、ない!」
ラナバウトに答え、スーパースタースクリームはコンクリート壁にさらに拳を叩きつける。
当初は共に作業に加わっていたラナバウト達だったが――彼らの攻撃力では頑強なギガロニアのコンクリート壁を打ち砕くことはできなかった。結果、唯一十分な攻撃力を持っていたスーパースタースクリームのみが作業に従事する形となっていた。
「急がなければ、プラネットフォースが――!」
完全に出遅れた形だ――焦りもあらわにスーパースタースクリームがうめくと、
「……スタースクリーム」
突然、そんな彼にライドスペースに座るフィアッセが声をかけた。
「どうした?
今は一刻も早く、プラネットフォースを――」
「その理由を聞きたいの」
「何………………?」
こちらの言葉をさえぎり、告げるフィアッセに、スーパースタースクリームは思わず眉をひそめた。
〈どういうことだ……?〉
作業の手を止めることなく、尋ねる――ラナバウト達に聞かれたくなかったのか、あえて自分とライドスペース内のみに通話を絞った専用回線での通信だ。
「スタースクリーム……前と様子がぜんぜん違うんだもの。
北極で会った時は、なんだかすごくギラギラしてて、まるで抜き身のナイフみたいだったけど……今のスタースクリーム、まるで何かに対してものすごく焦ってるような……
それに、前にセイバートロン星で見つけたファイル――あれを見てからよね? あなたがそんな風に変わったのは。
だから、教えて。
あなたは一体――何を見たの?」
〈………………〉
フィアッセの言葉に、スーパースタースクリームはしばし考え――
〈…………誰にも言うな〉
そう前置きし、告げた。
〈このままでは……宇宙は滅びる。
グランドブラックホールではなく――〉
〈“ヤツ”の手によって〉
第77話
「揺るがされた信頼なの」
「…………見つけた。
おそらくはここだ」
つぶやき、ビッグコンボイが見下ろすのは、今まで通ってきたものとは明らかに規模の違う、階層を貫く巨大な空間だった。
「『これほどの階層惑星が、バラバラの柱で支えられているはずがない。必ず中枢となる大黒柱がある』――
さすがビッグコンボイ、大正解やね」
「そのくらい読めなければ、“一人軍隊”とは言えないさ」
はやてに答え、ビッグコンボイは空間の底を見下ろした。
「このメインシャフトを抜ければ、最下層までは一直線のはず……」
「よっしゃ、一気に行こうぜ!」
ライドスペースのアイリーンと共に告げるブロードキャストだったが――
「待て」
そんな彼らを、ビッグコンボイが呼び止めた。
「どうした?」
「その前に……言っておくことがある」
尋ねるアトラスに答え、ビッグコンボイは一同を見回し、告げた。
「今アイリーンが言ったように、このまま行けば一気に最下層だ。
そこで、だ――お前らは最下層につくと同時、はやてを連れてオレから離れろ」
「え………………?
オレ達はともかく……はやてもか?」
告げられたのは意外な内容――眉をひそめ、ブロードキャストはビッグコンボイに聞き返した。
「どうしてなん?」
「はやて……お前はまだ自分のデバイスを手にしていない。
今は後を追ってきている――いや、もうギガロニアに到着しているはずのメガザラックとの合流を優先するんだ」
「…………意図、理解」
はやてに答えるビッグコンボイの言葉に、アトラスは彼の言いたいことに気づいた。
彼もまた、気づいているのだ。
ライバルとの決着が近いことを。
「おそらく、最下層に降りれば……」
「デスザラスが来る」
「こいつは……?」
うめき、デスザラスは目の前のそれを見下ろしていた。
地面に大きく口を開けた縦穴――しかも、つい最近破壊されたものである。
と――
「デスザラス様……」
「レーザークローか」
背後からかけられた声の正体はすぐにわかった。振り向き、デスザラスはそこにレーザークロー以下アニマトロンが全員そろっていることを確認する。
「全員無事か……」
「はい……
しかし、これは……?」
デスザラスに答え、レーザークローが目の前の縦穴をのぞき込んだ、その時――縦穴の底の方で衝撃音が響いた。
見ると、縦穴の向こうに広がる下の階層――流れる雲越しにうっすらと見える地上で爆発が起きているのが見える。
「……誰かは知らんが、ずいぶんと乱暴に近道しているヤツがいるようだな」
「いかがなさいますか?」
「もちろん、追うに決まっているだろう」
尋ねるレーザークローに、デスザラスはあっさりとそう答える。
「このまま、突破しているヤツに気づかれずに降下できれば、一気に最下層まで行けるはずだ。
レーザークロー、お前はアニマトロンを率いてプラネットフォースを目指せ」
「デスザラス様は?」
「決まっている」
そう答え――デスザラスは改めて縦穴の向こう側を見下ろした。
「オレは――ビッグコンボイを討つ」
「あれは……ダークライガージャック!?」
突然振ってきたガレキの中に紛れていたのは、メガロコンボイに敗れて以来行方知れずになっていたダークライガージャック――その姿を確認し、ライブコンボイが声を上げる。
「アイツ……マスターガルバトロンを追ってきたのか?
くそっ、こうしちゃいらねれぇ! いくぜ、アルクェイド!」
「モチのロンよ!」
「ち、ちょっと、どこに行くつもり!?」
舌打ちし、グランダスのブリッジを飛び出していこうとするライガージャックをシャマルが呼び止める――対し、ライガージャックもすぐに振り向き、答えた。
「当然、ヤツを叩きに行くに決まってんだろ!
このままマスターガルバトロンと合流させてたまるかよ!」
「ち、ちょっと、待ちなさいよ!」
告げると同時、改めてブリッジを出ていくライガージャックの姿に、アルクェイドもあわてて彼の後を追ってブリッジを飛び出していく。
「……やれやれ、勝手なことを……」
「しかし、放っておくこともできまい。
ヤツはマスターメガトロン――いや、今はマスターガルバトロンか。ヤツと合体できるのだろう?」
つぶやくフォートレスにレオザックが告げると――
「あら…………?」
ふと、愛は眼下のダークライガージャックの動きがおかしいことに気づいた。
「もしかして、あの子……」
〈「ぅわぁ……」〉
重厚な扉の向こう――開かれたその先に広がっていた景色を前に、なのはとプリムラは思わず声を上げた。
見渡す限りの山紫水明――地球でもなかなかお目にかかれない大自然がそこに広がっていた。
「すごい……」
《ギガロニアに、こんな場所があったなんて……》
思わずつぶやくなのはやプリムラの傍らで、耕介は足元の土を一握りすくい、
「……本物の土だ。人工物なんかじゃない」
「天然の自然、ということですか?
じゃあ……」
耕介の言葉に、リンディは思わずメガロコンボイを見返し――当のメガロコンボイはハッキリとうなずいてみせた。
「そうだ。
ここが、ギガロニアの最下層だ」
「ここが……」
メガロコンボイの言葉に、なのはは改めて目の前の大自然を見渡した。
「大昔のギガロニアのトランスフォーマーさん達が、どうしてこの星を階層惑星にしたのか、わかった気がします……」
「あぁ……
環境維持システムを備えた階層で覆うことで、この豊かな自然を保護しようとしたのだろう」
シグナムがなのはに同意すると、ギャラクシーコンボイがメガロコンボイに尋ねた。
「それで、プラネットフォースはどこに?」
「パンゲア、とかいう名前のところにあるらしいな」
「パンゲア、ねぇ……」
メガロコンボイの言葉に、ソニックボンバーは周囲を見回し、
「どこだよ? って感じだな」
「まぁ、階層で覆ってまで手付かずにしていたくらいだし、標識なんかないだろうしな」
思わず苦笑し、クロノが肩をすくめると、
「おそらくはメガロコンボイ達の祖――ギガロニアの第1世代が乗ってきた移民船のことだろう」
そう言い出したのはブレイズリンクスだ。
「なるほど、スターシップか……
なら、探し出すのは楽かもしれないな」
「あぁ。
アトランティスとムーが同じ仕様だったんだ。そのパンゲアとかいう船だって!」
つぶやくスターセイバーの言葉に、ソニックボンバーはそういうなり跳躍。ビークルモードへとトランスフォームし、
「んじゃ、一足先に探してくらぁ!
とっとと行くぜ、クロノ!」
「ぅわっ、ソニックボンバー!?」
そのままクロノの襟首にフックを引っ掛け、彼を連れて飛び去ってしまう。
「やれやれ、相変わらずせっかちだな。
じゃ、オレ達も行くか」
「あぁ」
そして、ニトロコンボイと耕介もまた、ソニックボンバーを追って先行していく。
「待て、お前達!
そんな勝手に――」
「はっはっはっ、いい仲間達じゃないか」
ソニックボンバーたちの勝手な行動に思わず声を上げるギャラクシーコンボイだったが、そんな彼にメガロコンボイは豪快な笑い声と共にそう告げる。
「確かにな。
自分達が次に何をするべきか、よく理解している」
「オレ達の在任時は少数精鋭だったが、今回は大所帯にも拘らず粒ぞろいと来た」
「そうですね。
優秀な人材が豊富で、うらやましい限りです」
「そ、そうか?」
スターセイバー、ビクトリーレオ、そしてリンディにまでほめられ、まるで自分のことのように照れるギャラクシーコンボイだったが――
「で、す、か、ら♪」
そう続けたリンディの目が妖しく輝いたのを、なのはは見逃さなかった。これから起きるであろう事態を予想――いや、確信できてしまった自分に思わずため息をつき――
「ギャラクシーコンボイさん、この件が片付いたら、何人か管理局に人材を派遣してくれるつもりはないですか?
今回の件で、管理局の方でもトランスフォーマーとの連携は考えるようになっていくでしょうし、今のうちに、ね♪」
「え゛っ!? あ、いや……」
「やっぱり始まった……」
久しぶりである意味油断していた――満面の笑顔でスカウトに走るリンディの姿に、なのはは苦笑まじりにそうつぶやいていた。
「ベクタープライム、スターセイバー、ブレイズリンクス――何か見えるか?」
「いや……まだ何も」
「もっとも、何かあれば先行している二組が見つけているだろうがな」
地上を走りながら尋ねるギャラクシーコンボイの問いに、上空を飛行するスターセイバーとブレイズリンクスがそう答える。
「クロノくん、そっちはどう?」
《こっちもだ。何も見つからない。一面森だらけだ》
ギャラクシーコンボイのライドスペースに座り、念話で呼びかけるなのはだが、クロノの答えも芳しくなく――
《――いや、待て!
何かある!》
「ソニックボンバー、あれ!」
「あん……?
あれは……」
クロノの言葉に従い、ソニックボンバーは前方に見え始めたそれにカメラを向けた。
湖の中に、まるで意図的に置かれたかのようにいくつもの島が――いや、山が整列している。
「おい、ニトロコンボイ、耕介!
変な形の山があるぞ!」
「わかった。
こちらでも確認してみる」
告げるソニックボンバーに答え、ニトロコンボイは加速、さらにソニックボンバーとクロノも上昇し、上空からの確認を試みる。
スピードにおいてトップクラスの彼らは、あっという間にその山を視界にとらえ――その正体を確信した。
「こいつぁ……」
「スターシップ……これが、パンゲアか!」
「せー、のっ!」
気合と共に爪による一撃――勢いよく跳躍し、叩きつけるように振り下ろしたアルクェイドの一撃を、後方に跳躍してかわすダークライガージャックだったが、
「逃がすかよ!」
その眼前に、絶妙なタイミングでライガージャックが飛び込んできた。抜群のコンビネーションの元に放たれたプラティナムクローの一撃をダークライガージャックは左手で受け止め――ようとしたが一瞬動きが止まった。結果、ライガージャックの拳は防御をすり抜け、ダークライガージャックの顔面を痛打する。
間髪入れず、弾き飛ばされたダークライガージャックに追撃を仕掛けるライガージャックとアルクェイドだが、ダークライガージャックはすぐにその場を転がって二人の攻撃を回避する。
そして、身を起こすなりダークライガージャックはビーストモードにトランスフォーム。ライガージャック達に襲いかかるが――
「おせぇっ!」
ライガージャックはその突撃を真っ向から受け止め、逆にダークライガージャックを投げ飛ばす!
再び間合いが開き、着地したダークライガージャックはアルクェイド達と対峙するが――その表情は優れない。
そして、ライガージャックとアルクェイドは同時にダークライガージャックに向けて跳躍し――
「――――待って!」
制止の声は突然だった。
振り向いた先にいたのは意外な人物――驚愕に目を見開き、アルクェイドは言葉を搾り出した。
「…………愛?」
「ここが最下層……?」
「そのようだな」
重厚な扉を開き、大自然の中に踏み出したジャックプライムの問いに、後に続いたメガザラックにそう答える。
「フェイト達は?」
「……まだ1コ上みたい」
尋ねるアリシアの問いに、ジャックプライムはビーコンでフェイト達の位置を確認する。
「ボクらは運良く高速エレベータを見つけられたから……結果的にボクらが追い越しちゃった形になってるみたい」
「そっか……
オレ達、バトルしながらアイツらが移動してったのとは反対方向に移動してたからなぁ……同じルートじゃないのも当然か」
ジャックプライムのつぶやきにブリッツクラッカーが肩をすくめると、
《………………あれ?》
突然、リインフォースが顔を上げた。
「どしたの?」
《上の方で、何か作動したみたいなのです》
尋ねるアリシアにリインフォースが答えると、上方から円筒形のシャフトが地上に向けて降りてくる。
「あれは……?」
「オレ達が使ったものとは、別の降下エレベータのようだな」
メガザラックが晶に答えると、地面に到達したエレベータの扉が開き――
「ほぉ……貴様らか」
「ま、マスターガルバトロン様!?」
その中から姿を現したマスターガルバトロンの姿に、ブリッツクラッカーが声を上げる。
「ブリッツクラッカーにミッドチルダの小僧、それにメガザラックか……
なかなかに多彩な組み合わせだな」
そんな彼に対し、余裕の笑みと共に告げるマスターガルバトロンだったが――
「ちょっと、マスターガルバトロンさん!
後ろがつかえてるんだから、そんなところで立ち止まってないで!」
「…………どうしてこの女は、こうも場の空気を読んでくれないんだ……」
後ろから上がった声が緊迫した空気を粉みじんに粉砕してくれた。ため息まじりにマスターガルバトロンはエレベータから出て――後に続いた人物を前に、ジャックプライム達は目を丸くした。
「あぁぁぁぁぁっ! 桃子ママ!」
「ヴィータ!? それにホップ達まで!?」
「あれ、ジャックプライム、それにアリシアちゃん、晶に、ブリッツクラッカーに……」
思わず声を上げたジャックプライムとアリシアにまず気づき――桃子はそのまま後ろに控える晶やブリッツクラッカーにも気づいた。
「どうして、桃子さんがマスターガルバトロンと一緒に……!?」
「まさか……人質か……?」
「フンッ、そういうことだ」
うめく晶とメガザラックの言葉にマスターガルバトロンが答えるが――
「そ、そんな……!」
「ウソでしょ……!?」
そうつぶやくジャックプライムとアリシアの反応は違った。
「完全に盲点だった……」
「まさか、マスターガルバトロンが……!」
『熟女趣味だったなんて!』
『………………は?』
場の空気が音もなく凍りつく――が、当然のことながら元凶たる二人はそんな周りの困惑に気づくこともないワケで。
「だからなのはの可愛さにもぜんぜん揺るがなかったんだ!」
「守備範囲が違うんだもん! 当然だよ!」
「大変だ、アリシア!
桃子ママさんが何かされる〜〜〜っ!」
「やかましい! オレとて好きで連れているワケではないわ!
とゆーかメガザラック! 今すぐそのガキどもを黙らせろ!」
好き勝手なことをわめく二人だが――とんでもない疑惑を突きつけられてしまった方はたまらない。マスターガルバトロンは思わず天を仰いで絶叫する。
《あのー……“じゅくじょしゅみ”って何なのです?》
「あー、えっと……
………………聞くな」
一方で意味を理解していないのが精神面でまだ幼いリインフォース――尋ねるが、内容が内容なだけにメガザラックも言葉を濁すしかない。
「フフフ、大変ねー、マスターガルバトロンさんも」
「誰のせいだ!?
なぁ、誰のせいだと思っている!?」
そんなやり取りを前に、笑いながら告げる桃子にマスターガルバトロンが告げ――
「――――――っ!?」
何かに気づいた。抗議を中断し、頭上へと視線を向ける。
「どうしたんスか?」
「……上の階層で衝撃……?」
尋ねるインチプレッシャーにかまわず、マスターガルバトロンは頭上の様子をうかがい――
「………………来る!」
声を上げた、次の瞬間――マスターガルバトロンの降りてきた降下エレベータ、その天井側の基部が大爆発を起こした。
「な、何!?」
驚きの声を上げる桃子の目の前で、降下エレベータは轟音と共に倒れていく。
そんな中、一同の頭上に影が落ち――衝撃と共に、彼らをまたぐかのように巨大な何かが地面に落下する!
そして――
「ここにも、よそ者が入り込んでいたか」
そう告げて、メトロタイタンはその巨体でマスターガルバトロン達やジャックプライム達、両雄の前に立ちはだかった。
「な、何だ!?」
メトロタイタンの階層突破の際の爆発は、彼らからも確認できた――突然爆発を起こし、倒壊する降下エレベータを見て、ギャラクシーコンボイが声を上げる。
しかも、降下エレベータは確実に自分達の方へと倒れてきていて――
「みんな、下がってろ!」
言って、一同の前に飛び出したのはメガロコンボイだ。
「いくぜ、リンディ!」
「えぇ!」
告げるメガロコンボイにリンディが答え――
『フォースチップ、イグニッション!』
メガロコンボイのイグニッションをリンディがサポート。より強大な力を解放しつつ、フォースチップの飛び込んだメガロアックスが展開される。
そして、メガロコンボイはメガロアックスを振りかぶり――
『メガロ、ブーメラン!』
投げつけたメガロアックスはフォースチップの“力”をまとい、巨大な輪刃となって降下エレベータを断ち切った。残骸はちょうど彼らを間にはさむ形で大地に落下する。
「あ、ありがとうございます……」
「なぁに、お安い御用だ」
とっさにレイジングハートをかまえたものの、彼女に止められるシロモノではなかった――息をつき、礼を言うなのはにメガロコンボイが答えると、そんな彼らの元に地響きが伝わってきた。
メトロタイタンの着地の衝撃だ――残念ながらジャックプライム達やマスターガルバトロン達の姿は見えないが、メガロコンボイすら上回るメトロタイタンの巨体は彼女達の位置からもハッキリと確認できた。
「あいつぁ……メトロタイタン!?」
「以前言っていた、『捨てた街を見回っている』というヤツか?」
「あぁ……
だが、なんでヤツがこんなところに……!?」
ロボットモードにトランスフォームし、尋ねるギャラクシーコンボイの言葉にメガロコンボイがうなずき――
『――――――っ!?』
その場の全員が動きを止めた。
頭上から降りかかる強烈なプレッシャーによって。
このプレッシャーには覚えがある。このプレッシャーの主は――
「デスザラス!?」
「また会ったな――ギャラクシーコンボイ」
声を上げるギャラクシーコンボイに、上空に佇むデスザラスは余裕の笑みと共にそう答えた。
「ど、どうして止めるんだよ、愛!」
いきなり現われ、戦いを止めたのはブレンダルに連れられた愛だった――状況が読めず、思わずライガージャックが声を荒らげる。
そんなライガージャックの問いに、愛は静かにダークライガージャックへと視線を向け、
「だって、あの子……ケガしてるみたいだから……」
「…………は?
そりゃ当たり前でしょ、あたし達にさんざんやられたんだから……」
「ううん、そうじゃなくて……」
アルクェイドの問いに、愛は首を左右に振り――そんな彼女の見ていた先へと視線を向けたブレンダルは、ようやく彼女の言いたいことに気づいた。静かにライガージャック達に尋ねる。
「ライガージャック、アルクェイド……
お前ら、アイツの両腕――いや、今は両前足か。そこを攻撃したか?」
「はぁ? ンなトコ狙ってどーすんだよ。
相手ブッ倒すんなら、やっぱ顔面狙いだろ――」
言いかけ――ライガージャックもまた、ようやく気づいた。
ダークライガージャックの両前足が不自然に歪んでいる。あそこは――
「あそこって……合体形態だと腕の甲よね?」
「だな……」
「つまり……ライガーメガトロンが攻撃をガードしたら、真っ先にダメージを受ける場所なワケで……」
「………………そうか!」
つぶやくアルクェイドの言葉に、ライガージャックは気づいた。
ダークライガージャックの負っているケガが、いつ受けたものなのか――声をそろえて叫ぶ。
『メガロコンボイの、メガロクラッシュ!』
そうだ――ダークライガージャックがデストロン軍からはぐれるきっかけとなった、ギガロニアでの初めての戦い――あの時、マスターメガトロンと合体、ライガーメガトロンとなっていたダークライガージャックは共にメガロクラッシュを受けていた。その際に、あのケガを負っていたのだろう。
「くそっ、何だよ……
妙に歯ごたえがないと思ったら、手負いだったのか……」
「いい気になって攻めてたのがバカらしいわね」
すっかり毒気を抜かれ、ライガージャックとアルクェイドがつぶやく中、愛はふらつきながらも懸命に自分を支えるダークライガージャックへと歩み寄り――
『――って、ちょっと待った!』
そんな愛を、二人はあわてて連れ戻した。
「何考えてんだ! ヤツは敵だぞ!」
「で、でも、ケガしてる子をほっとけないし……」
「いや、そーゆー問題じゃないでしょうが!」
ライガージャックに答える愛にアルクェイドが詰め寄るが――
「そういう問題よ」
今までの穏やかな態度が一変。愛は真面目な表情でアルクェイドに告げた。
「人間もトランスフォーマーも、敵も味方もない――ケガをしたら痛いのは誰だって同じじゃないの?」
「そ、そりゃ……あたしみたいな真祖だって、ケガすればそれなりに痛いけど……」
「けど、だからって敵を助けるなんて……」
愛の予想外の反撃にうろたえながらも、そう答えるアルクェイドとライガージャックだったが――
「別にかまわないんじゃないのか?」
あっさりとそう告げたのは、後を追ってきたレオザックだった。
「そいつはもう戦えない――非戦闘員も同じだ。
いかに戦いの場であろうと、敵対勢力の人物であろうと、非戦闘員の生命を保障するのは戦士の礼ではないのか?」
「だ、だけどよぉ……」
「それとも貴様は、この場で傷ついたこいつを打ちのめし、倒すというのか?
戦うことのできない者を打ち据えるのが貴様の戦士としての道か?」
たたみかけるレオザックの言葉に、ライガージャックは今度こそ黙り込む――それでもまだ納得がいかないのか、口を尖らせるライガージャックだったが、そんな彼の元に真一郎を連れたライブコンボイが舞い降りてきた。諭すように告げる。
「いいじゃないか。
どうせヤツは単独だ。ケガが治ってもなお暴れるようであれば、ボクらで取り押さえればいい」
「んー、まぁ、そういうことなら、いいけどよ……」
「けど、ヤツが素直に手当てさせてくれるとも思えないのよねぇ……野生の固まりみたいなヤツだし」
ある意味ライブコンボイらしい、人命と利害を両立させた意見にライガージャックとアルクェイドが苦言を呈するが――
「大丈夫よ」
「って、おいっ!」
言って、ダークライガージャックへと向かう愛の姿に、ライガージャックは思わず声を上げるが――
「大丈夫だから……」
気づいた。
先の『大丈夫』も今の『大丈夫』も、自分達に向けられたものではないということに――
「私はただ、あなたを助けてあげたいだけだから……」
そう告げて、愛は傷だらけのダークライガージャックに向けて手を差し伸べる。
当然、警戒するかのように唸り声を上げるダークライガージャックだったが――
「怯えないで……」
告げて、愛はダークライガージャックの右前足――そこに刻まれた傷を優しくなでた。
「私は……あなたの味方だから」
そう告げる愛を、ダークライガージャックは静かに見下ろしている。
その気になれば、愛のことを瞬時にかみ砕ける距離だが――
「私にはムリだけど……治せる人達と一緒にいるの。
だから安心して。きっとあなたを元気にしてあげるから……」
その言葉に、ダークライガージャックはさらにしばらくの間彼女のことを見下ろし――
ゆっくりと、彼女の前に ひざまずいた。
「フォースチップ、イグニッション!
デス、テイラー!」
咆哮と共にフォースチップをイグニッション。デスザラスは胸部から分離したデステイラーを右腕に装着し、ギャラクシーコンボイ達と対峙する。
「ギャラクシーコンボイ!」
「ここは、リンクアップできるオレ達に任せろ!
ヤツが相手じゃ、多人数でかかっても意味がない!」
対し、前面に出たのはスターセイバーとビクトリーレオだ。シグナムやヴィータと共に跳躍し、
『リンク、アップ!
ビクトリー、セイバー!』
そのまま空中でリンクアップ。スターブレードを抜き放ちデスザラスへと突撃する。
「いくぞ、デスザラス!」
「いいだろう――リンクアップの力、見せてもらうぞ!」
咆哮し、デスザラスもまた跳躍。上空から襲いくるスターセイバーの斬撃を受け止め――
「――――来るか!」
すかさず飛び込んできたシグナムとヴィータにもすぐに反応。後退するとバーストモードに切り替えたデステイラーのビームでけん制し、
「ギャラクシーコンボイさん!」
「あぁ!」
「――――――っ!」
そんなこちらを狙ってきたなのはとギャラクシーコンボイの砲撃も回避。間合いを取って着地する。
「フンッ、なかなかに楽しませてくれるな……
やはり、戦うならば貴様らくらいの相手でなければ話にならん」
しかし、彼らを相手にしてもデスザラスの余裕の態度は揺るがない。不敵な笑みを浮かべて告げる。
「バンガードチームとかいう連中も、地球で始めて戦った頃に比べればなかなかの使い手に育ったようだったが、残念ながらウォームアップにもならなかった」
「何!?」
「アリサちゃん達と!?」
思わずギャラクシーコンボイとなのはが声を上げ――
(………………ほぅ)
そんな彼らの動揺を、デスザラスは見逃さなかった。素早く思考を巡らせ――言葉を続ける。
「それにしてもアイツら、力の差を知りながらオレに向かってきた。
その勇気は評価してやらんこともないが――ギャラクシーコンボイよ、貴様はこの星の地表でヤツらがオレに敗れていたこと知っていたはずだ。
なのに、オレと出会ったら逃げろと教えてなかったのか?」
「――――――っ!?
そ、それは……!」
デスザラスの言葉に、ギャラクシーコンボイは思わずうろたえ――
「そうか……
教えて、なかったのか!」
自らの揺さぶりによって生じたスキを、デスザラスは見逃さなかった。瞬時に間合いを詰め、デステイラーの一撃でギャラクシーコンボイを弾き飛ばす!
「ガルブル! ギルブル!」
メトロタイタンの言葉に、彼の胸部に砲台として合体していた2体のマイクロンが動いた。分離するなりロボットモードへとトランスフォームするとメトロタイタンの両腕を駆け上がり、両肩の砲座に座るなりメトロタイタンの両腕の火器を起動させる。
「くらえ――よそ者ども!」
咆哮と共に一斉射撃――放たれた砲撃を、マスターガルバトロン達も、武装したキングコンボイ達も散開して回避する。
そしてもちろん、この人も――
「大丈夫っスか!?」
「え、えぇ……」
「よかった……
大事な人質なんだ。傷つけたりしたら、マスターガルバトロン様にどやされちまう」
桃子の答えに安堵し、彼女を守ったモールダイブはメトロタイタンと対峙する。
「モールダイブか……
このギガロニアの恥さらしめ。よそ者などとつるみおって」
「うるせぇ!
お前やメガロコンボイの指示になんか従わねぇ――オレはオレのやりたいようにやるだけだ!」
告げるメトロタイタンに言い返し、ジャイアントドリルをかまえるモールダイブだが――
「ほぉ……
なら、何がしたいと言うんだ? 貴様は」
「――――――っ!」
逆にメトロタイタンに聞き返され、モールダイブは言葉を失った。
メトロタイタンの言葉に、返すべき答えを見出せなかったのだ。
「フンッ、やはりそうか。
貴様はやはり甘ちゃんだ。ただ指図されるのがイヤで逆らってるだけの、反抗期のクソガキだということだ」
「な、何を!?」
メトロタイタンの言葉に、モールダイブの頭に血が上り――
〈貴様、オレのような勝ち目のない相手と出会ったら、逃げろと教えてなかったのか?〉
「む………………?」
突然の声に、マスターガルバトロンは眉をひそめ、声の発生源へと視線を向けた。
救援でも呼ぼうとしたのだろうか――桃子の手にした、通話状態のサイバトロンPDAに。
「地球で初めて出会った頃の貴様なら、部下の安全を真っ先に考えた作戦を立てただろうに……」
一撃を受け、倒れ込むギャラクシーコンボイに対し、デスザラスによる揺さぶりは続いていた。
「部下などただの駒、使い捨ての消耗品だと、考えを改めたのか。
貴様もずいぶんと成長したものだ」
「貴様……好き勝手なことを!」
武人としてあるまじき、かと言って怒りに突き動かされているワケでもない、明らかに彼らしくない物言い――それがギャラクシーコンボイに対する精神的な口撃であることはすぐに読めたが、だからと言って聞き流せるようなものでもなかった。自分のことのように激昂し、後輩を侮辱されたビクトリーセイバーはデスザラスへと斬りかかるが――彼もこちらへの警戒を解いてはいなかった。ビクトリーセイバーの斬撃を真っ向からデステイラーで受け止める。
「だが、前線に出すならば鍛えておかなければな。
まったく、どういう教育をしているんだ――あんな無能なザコでは、犬死ではないか」
「誰が――」
「無能なザコだってんだ!」
反論し、突撃するシグナムとヴィータだが――
「貴様らもだ!」
デスザラスの胸部――普段はデステイラーの装甲によって隠されているビーストモード時の頭部が口を開いた。竜の口から放たれた火炎が、シグナム達を吹き飛ばす!
そしてビクトリーセイバーの腹にも蹴りを一発。弾き飛ばされたビクトリーセイバーは大地に叩きつけられ、その衝撃でリンクアップも解けてしまう。
「だが、オレは容赦しないぞ。
戦場での手加減は相手に対する非礼も同じ――立ちふさがるのであれば、どんなザコでも叩きつぶしてくれる!」
「く………………っ!」
宣言し、デステイラーをかまえるデスザラスを前に、ギャラクシーコンボイもまたかまえ――
「ギャラクシーコンボイ!」
そんな彼の元に、いち早く体勢を立て直したビクトリーレオがヴィータと共に合流した。
「リンクアップだ!
スターセイバーとソニックボンバーだって、ナビゲータなしで合体したんだ! オレ達だって!」
「あぁ!
いくぞ、なのは!」
「はい!」
応えるギャラクシーコンボイの言葉になのはがうなずき、彼らは合体すべく上空に飛び立ち――
「いいのか?」
そんな彼らに――いや、ギャラクシーコンボイに、デスザラスは笑みを浮かべて告げた。
「合体は一瞬でできるワケではあるまい。
その間――“他の部下が無防備になるぞ”」
「――――――っ!?」
その言葉が意味するところは明白だ――デスザラスの宣告に、ギャラクシーコンボイの動きが止まってしまう。
「ど、どうしたんですか、ギャラクシーコンボイさん!」
「なんでリンクアップをやめちまうんだよ!」
思わずなのはとヴィータが声を上げるが、ギャラクシーコンボイは答えない。大地に降り立ち、改めてデスザラスと対峙する。
「何やってんだ、ギャラクシーコンボイ!
もう一度いくぞ! リンクアップだ!」
「いや……」
後を追って着地し、告げるビクトリーレオだが――ギャラクシーコンボイは首を左右に振った。
「常に戦いの先頭に立ち、仲間を絶対に見捨てない――
私はずっとそうしてきたんだ――私でさえ躊躇するような状況に、チームを送り出すことはできない!」
「だ、だからって!
今はンなこと、どうだっていいじゃねぇか!」
「いや、よくない!」
ビクトリーレオに言い返すなり、ギャラクシーコンボイは彼らを――なのはすらその場に残して単身突撃するが、
「その、程度か!」
逆に、デスザラスに殴り飛ばされ、大地に叩きつけられる!
「ブルァアァァァァァッ!」
「ぬぅりゃあぁぁぁぁぁっ!」
咆哮が交錯、そして衝撃――フレイムコンボイとギガストーム、両者のアックスが激突し、衝撃で周囲の地面が砕け飛ぶ。
なおも数合打ち合うと、両雄は弾かれるかのように間合いを取り、
『トランスフォーム!』
両者同時にビーストモードへとトランスフォーム。再び激突する。
互いが互いにかみつき合い、先ほど弾けた地面のカケラを踏みつぶしながら転がっていく。
やがて一際大きなガレキに衝突したのをきっかけに両者は再び間合いを取った。互いに息を整え、戦いを仕切り直す。
「フンッ、貴様も貴様で、腕を上げていたようだな……
アトランティスで、仲間の助けがなければまともに戦えなかったのがウソのようだぞ」
「ほめたところで、手加減なぞしてやらん!」
告げるギガストームに答え、フレイムコンボイはいつでも相手に襲いかかれるように重心を落とす。
「だが――勝つのはオレだ!」
咆哮と共に、先に動いたのはギガストームだった――フレイムコンボイを相手に切った“切り札”は、自分にあってフレイムコンボイにないもの――
「ギガストーム、ビークルモード!」
突撃の途上でビーストモードからビークルモードのドリルタンクモードへとトランスフォーム。そのままフレイムコンボイへと襲いかかる!
「フンッ、そんなもの!」
しかし、それも当たらなければ意味がない。真っ向からの突撃をいともたやすく回避するフレイムコンボイだったが――
「ぬるいわぁっ!」
それはギガストームにとって予想の範疇だった。真の目標は今までの激突によって大地に転がるガレキのひとつ――それをジャンプ台にして跳躍、さらに通路の支柱を足場にフレイムコンボイの方へと軌道を修正し、
「フォースチップ、イグニッション!
ギガ、スパイラル!」
続けてフォースチップをイグニッション。チップスロットに飛び込んだガンメタルのフォースチップの“力”に後押しされ、先端の大型ドリルが高速回転を始める。
そのまま、ギガストームはフレイムコンボイめがけて落下し――
「出来立てホヤホヤの新技!
名づけて――スパイラル、ナパーム!」
「ぬぅ!」
まともに受けるのは危険すぎる――とっさに落下してきたギガストームのドリルをかわすフレイムコンボイだったが――それがかえって事態を悪化させた。
ギガストームの一撃が大地に突き刺さり――そこから流し込まれたフォースチップのエネルギーが大爆発を起こしたのだ。
それは、度重なる両者の戦いでダメージを負っていたその場の地面には完全なトドメとなった。轟音と共に崩落し――二人を最下層の大空へと放り出す!
「くそっ、ギャラクシーコンボイのヤツ……!」
「なぜリンクアップしない……
なぜ、オレ達と一緒に戦わない……!」
参戦しようとしても、当のギャラクシーコンボイから制止の声がかかってしまう――たったひとりでデスザラスを相手に苦戦を強いられているギャラクシーコンボイの姿に、ヴィータとビクトリーレオがうめくと、
「……先ほどの、デスザラスの揺さぶりだろう」
そう告げたのはブレイズリンクスだ。となりで知佳もうなずき、告げる。
「バンガードチームがデスザラスに負けちゃったこと、そして合体している間、デスザラスは自由に私達を攻撃できること――デスザラスに言われたこの二つのことが、ギャラクシーコンボイの心を縛っちゃってる……」
「なるほど……」
知佳の言葉に、リンディはギャラクシーコンボイへと視線を戻した。
「バンガードチームをデスザラスにぶつけてしまったことに対する責任、そして今ここにいる私達を守らなければならないという責任――
リーダーだからこそ、彼は思考の袋小路に放り込まれてしまった……」
「城を攻めるは下策、心を攻めるは上策――デスザラスめ、ずいぶんと頭に上っていた血が下りてきたと見える」
「どうすればよいのだ?」
「どうしようもない」
リンディとブレイズリンクスに尋ねるベクタープライムだが、スターセイバーがあっさりと答える。
「これはヤツの心の問題だ――あくまでも、ギャラクシーコンボイ自身が乗り越えなければならない」
「じゃあ、それまで黙って見てろってのかよ!?」
「そうは言ってないさ」
声を張り上げるヴィータに答えると、シグナムはギャラクシーコンボイとデスザラスの戦いに視線を戻す。
一方、デスザラスはギャラクシーコンボイを痛めつけるのも十分だと判断したようだ――より力を込めた一撃でギャラクシーコンボイを弾き飛ばし、
「今の貴様の相手など、座興にもならん。
ビッグコンボイはいないようだし――先にプレダキングと合流し、プラネットフォースをいただくか。
トランスフォーム!」
言うなりドラゴンモードへとトランスフォーム。ギャラクシーコンボイをその場に残し、一路パンゲアへと向かう。
「デスザラスに、プラネットフォースを渡すワケにはいかない――今は我々が動くしかあるまい」
そう告げると、シグナムはメガロコンボイへと向き直り、
「メガロコンボイ、あなたはメトロタイタンの方を頼む。
あの様子ではどうやら戦闘中のようだ――相手が誰かはわからないがな」
「あぁ。
他のアタックチームがいるなら、助けてくるさ」
そうシグナムに答えると、メガロコンボイはビークルモードにトランスフォーム。リンディを連れてメトロタイタンの元へと向かう。
「なら、オレ達はデスザラスの追跡か。
いくぜ、ヴィータ!」
「おぅよ!」
言うなり、ビクトリーレオはビークルモードにトランスフォーム。ヴィータを乗せてデスザラスを負い、ブレイズリンクスと知佳も後に続く。
「わたしも――」
「いや、なのはとベクタープライムは残れ」
言いかけたなのはだが、シグナムはそんな彼女を制止した。
「ギャラクシーコンボイを頼む。
今の彼を支えられるのは、パートナーのなのはと、常に一歩退いたところでみんなを見守り続けてきたベクタープライムだけだ」
「…………わかった」
ベクタープライムの答えにうなずき、シグナムはスターセイバーと共にデスザラスやビクトリーレオ達を追って飛び去っていった。
『フォースチップ、イグニッション!』
咆哮と共にフォースチップが飛来――それぞれのチップスロットにセイバートロン星の、そしてスピーディアのフォースチップが飛び込み、
『マッハショット!』
『ギャラクシー、キャリバー!』
耕介とニトロコンボイ、ソニックボンバーとクロノの一斉攻撃が、立ちはだかるプレダキングを直撃する。
しかし――プレダキングも負けてはいない。彼らの攻撃をものともせず、力任せに殴りかかってくる。
「くそっ、このバカ力が!」
「けど、効いてないワケじゃない――耐えてるだけだ!
このまま攻撃を続行するぞ!」
うめくソニックボンバーに答え、耕介は“御架月”をかまえ――突然、彼らの頭上の天井が爆発を巻き起こす!
「何だ!?」
思わずニトロコンボイが声を上げ――それはパンゲアのすぐそばに落下し、
「グァオォォォォォッ!」
咆哮し――階層を踏み抜き、落下してきたダイナザウラーはゆっくりとその場に身を起こした。
(初版:2007/06/17)