さて、2月である。
2月といえば、男にとってはある意味1年で最も重要なイベントのある月である。
自分が異性にとってどれほどの価値があるのかが如実に具現化される、恋路を歩む者にとって最大の祭典、その名は――
バレンタインデー。
だが――“ここ”では少しばかり事情が異なっているようで――
「ばれんたいん? 何ですか? それは」
(あー、そうだよな。
そういうオチだろうと思ったさ……)
眉をひそめ、聞き返す少女――天下の軍神、関羽こと愛紗の問いに、は心の中で涙を流していた。
「恋姫†無双」
バレンタインSS
「バレンタイン・君主の憂鬱」
「そりゃさ、頭の中ではわかってたんだよな……
“こっちの世界”でそういうことを期待するだけムダだって……」
季節は2月に入ったばかり――城壁の上でたそがれつつ、はため息まじりにつぶやいた。
自分がこの三国志のパラレルワールドのような世界に来てずいぶんと経つ――この世界のことをなまじ知っているだけに、このテのイベントについては望み薄だということは、“クリスマスの時に”すでに思い知っていたはずなのに――
(そういえば……あの時もオレが一から教えたんだっけ……)
2ヶ月ほど前の苦労が脳裏によみがえる。
あの時もうっかりクリスマスに関して口を滑らせてしまったがために、行事の説明からクリスマスパーティーのセッティング、果ては愛紗から月々与えられるなけなしの小遣いで全員分のプレゼントを買う羽目になった。
そもそもクリスマスもバレンタインも、史実の上でも行事として成立したのはもっと先の時代の話。今のこの世界にないのはむしろ当然とも言えるのだし――
(第一、チョコレートもこの時代にはないしさ……)
こみ上げてくるものを抑えきれなくなる――だが泣くことはなんとか自制する。
(愛紗に鈴々、朱里……みんなと仲良くなって、今年こそは、と思ってたのになぁ……)
考えれば考えるほど虚しさが募るばかりで、は思わずため息をつき――突然、野太い声が耳元でささやいた。
「あらぁん?
どうしちゃったのかしら、ご主人様? なんだかとっても、落ち込んでるわねぇ?」
「ぅわぁぁぁぁぁっ!?」
惨劇
「そ、そりゃね……私だって、いきなり声を……かけたのは、間違いだったとは………思うわよ……!
けど……これは、あんまりなんじゃ、ないかしら……!?」
「す、すまん……
つい、反射的に……」
声をかけてきたのは全身ムキムキのマッチョマン――だが、現在は地面に突っ伏し、股間を押さえてピクピクと痙攣している。突っ伏したまま告げるその言葉に、は思わず謝罪する。
男の名は貂蝉。貂蝉と言えば三国志の中では絶世の美女といわれる存在だが――登場人物の性別が逆転しているこの世界では見てのとおり、というワケだ。しかも真性のハードゲイ。
そんな相手がいきなり耳元でささやいたのだ。驚いたが防衛本能の従うままにその股間を渾身の力で蹴り上げても、一体誰が責められようか。
まぁ、その貂蝉もこうやって抗議の声を上げられるほどに回復してくれたのは幸運というものだろう。うっかりツブしていたりしたら目も当てられない。
「それで……何を……たそがれて、いたのかしら……?」
「ん? あぁ……ちょっとな……」
突っ伏したまま(まだ動けないらしい)尋ねる貂蝉に、はため息まじりに答えた。
「もうすぐ、バレンタインなんだなー、ってね……」
「ばれんたいん?」
「オレの元いたところの風習だよ。
2月の14日に、女の子が好きな男の子にチョコレートを渡すんだよ。
……まぁ、こっちの世界は太陰暦だから、太陽暦の2月14日とは日付がズレてるのは覚悟の上だけどさ」
「ちょこれーと?」
「そういう名前の甘いお菓子だよ。
それを渡して、『好き』だって告白するんだ。
けど――」
聞き返す貂蝉に答え、はため息をつき、
「考えてみれば、この世界にはそんな行事はまだないんだよな……
かと言って、教えたりしたら自分から『チョコくれ』って言ってるようなものだろ。さすがにそれは恥ずかしいし……」
気が滅入ってタガでも外れたか、は貂蝉に対して愚痴をこぼし――ふと眉をひそめた。
クルリと振り向き、いつの間にか起き上がっていた貂蝉に尋ねる。
「………………なぜ詳しく聞く?」
「なぁに?」
「まさかとは思うが……お前、オレにくれるとか言わないよな!?」
「もちろん、あげるに決まってるじゃない♪」
「いらんっ!」
即答し、は一気に城壁の反対側まで後ずさった。
よく考えたらコイツ、自分にツバつける気マンマンだったじゃないか――うかつにも話してしまった自分を呪いたくなる。
「いいか! 絶対に何も持ってくるなよ! ってゆーか、2月14日は絶対に屋敷に来るな!
来たら国外退去だからな! 絶対だぞ!」
言い放ち、はその場から全速力で逃亡していく――それを見送り、貂蝉はつぶやくように告げた。
「……私は行かないわよ
そう――“私は”ね」
そして――2月14日がやってきた。
「………………ん?」
執務室に向かう途中、その耳が何やら声を聞きつけた。
どんどん近づいてくる――何事かと振り向いた、その時、
「お兄ちゃぁぁぁぁぁんっ!」
大声と共にその視界がふさがれた。一瞬遅れて、張飛――鈴々が飛びついてきたからだと気づく。
「どうしたんだ? 鈴々」
「えへへ……」
尋ねるその問いに、鈴々はなぜか照れながらの目の前に飛び降り、
「はい、これ!」
言って差し出してきたのは、ホカホカの肉まんだった。
「これは……?」
「鈴々からお兄ちゃんへの贈り物なのだ!」
満面の笑みで答える鈴々だが、はなぜいきなり肉まんを贈られたのかわからない。思わず眉をひそめ――
「………………あ」
気づいた。
一度は説明を求める愛紗達から逃亡した自分が――唯一バレンタインについて説明した人物の存在を。
「ひょっとして、今日が何の日か……知ってたりする?」
「貂蝉から聞いたのだ!
今日は、大好きな人に贈り物をする日なんだって!」
(やっぱり!
貂蝉、グッジョブ!)
答える鈴々の言葉に、は心の中でガッツポーズ。だからと言って『屋敷に近づいたら国外追放』を撤回してやるつもりもないが。
「ありがとう、鈴々。
大切に食べさせてもらうよ」
「うん!」
うなずく鈴々の目の前で、は肉まんを口に運び――いざかぶりつこうとしたところで気づいた。
しばし考え――肉まんを二つに割り、
「せっかくだし、食べるか?」
「いいの?」
「オレだけ食べるのは、なんだか悪いからさ」
「ならもらうのだ!」
の答えに、鈴々はさっそく肉まんを受け取る。
一気に口の中にほお張り、本当においしそうに食べ終えて――
「じゃ、鈴々の分も食べるのだ!」
腰の袋からさらに肉まんを取り出した。
「鈴々の分はちゃんとあったのに、お兄ちゃんはやっぱり優しいのだ!」
「………………」
なんだかいろいろとツッコみたい気分に駆られたが――鈴々の無邪気な笑顔を見ていたらそんな気持ちもすぐに霧散した。改めて礼を言うと、は執務室に向けて歩き出した。
が――
「………………ぅわぁ」
執務室に入るなり、目の前の光景に思わずうめき声がもれる。
いつもなら、自分の机の上には山盛りに書簡が積み上げられているのだが――今日ばかりは勝手が違った。
肉まんやら焼き鳥やら――とにかく食べ物が山と積み上げられている。書簡はと言えば机の脇にどかされ――というか蹴散らされている。
原因は恐らく――
「貂蝉のヤツ……まさかみんなにふれ回ったんじゃないだろうな……?」
感謝はするが、さすがにコレは――つぶやき、は机に向かい、贈り物の数々を確認することにした。
(……これは恋のだな。この点心、アイツのお気に入りだし。
これは……璃々ちゃんの絵が添えられてるってことは紫苑か。
肉まんに、馬の焼印……? あぁ、市で西涼からの行商が打ってたヤツだ――翠だな、たぶん……
…………酒? ……あぁ、これ、酒蔵で作ったヤツか。だとすると華琳だな。
あ、このパンダを模した饅頭は小蓮か)
そんな中には、食べ物以外で攻めてきている子達も若干見受けられるようで――
(この本は……穏か? 執務の上に勉強もしろと?
この剣と弓の文鎮は……あ、春蘭と秋蘭の連名だ。さすがにこの二人は実用面で来たか。
……季衣……ケンダマなんて贈られても遊んでるヒマないんだけど)
他にも霞や思春、二喬からもある。さすがに桂花からもあったのには驚いたが――そんなこんなで一通り確認を進めていき、
「で……」
最後に、は“それ”へと視線を向けた。
絶対的な確信と共につぶやく。
「………………このメンマの山は絶対に星だな」
こうして、貂蝉の配慮でたくさんのバレンタインのプレゼントに恵まれただが――だからと言って政務をおろそかにすることもできない。プレゼントは近くの机に移し、仕事に取り掛かる。
大量の書簡の山と格闘することしばし――突然扉がノックされた。
「どうぞー」
「は、はい……
あの、お茶が入りました……」
の応答に、おずおずと入ってきたのは董卓こと月だ。
「いつものことだけど、ありがたく飲むのよ!」
そしてその後には月の頼もしき保護者サマ、賈駆こと詠も控えている。
「ふー、ありがと。
ちょうどいいし、休憩にしようか」
そんな二人に微笑を返し、は机の上をいったん片付けると二人を招き――ふと、机の上に置かれたお盆の上にあるものに気づいた。
砂糖菓子のようだが――
「あれ、今日はお茶菓子もあるんだ」
「あ、あの、えっと……」
その言葉に、月はとたんに顔を真っ赤にしてオロオロし始めて――それを見て、は思わず苦笑した。
「なるほど。
バレンタインの贈り物か」
「………………はい……
貂蝉さんから、『ばれんたいん』のことを聞いて……」
とうとうこちらを直視できず、月は顔を真っ赤にしてうつむいてしまう――そんな彼女に代わり、詠がに告げる。
「ほら、あんたのためにわざわざ用意してあげたんだから、ありがたく食べる!」
「はいはい」
詠の言葉に苦笑し、は茶菓子に手を伸ばし、ひとつ口の中に放り込む。
「………………どうよ?」
「ん、うまい」
「そうでしょ、そうでしょ!」
答えるの言葉に、詠は満足げに胸を張る。
「……なんでお前が威張るんだよ?
これを用意したのは月だろう?」
ため息まじりにツッコむだったが……
「あ、あの……
そのお菓子を選んだのは……詠ちゃんなんです」
「なぬ!?」
「月!?」
思わぬところから思わぬ情報が――おずおずと告げる月の言葉に、と詠はそれぞれに驚きの声を上げる。
「ゆ、月、それは言わないでって……月が選んだことにしといて、って言ったじゃない!」
「だ、だって……」
顔を真っ赤にして詰め寄る詠に、月は思わず肩を縮こまらせて――
「まぁ、いいじゃないか、詠」
そんな詠を、は優しくたしなめた。
「月は詠のために本当のことを教えてくれたんだろ?
あのままじゃ、月ひとりの手柄になっちゃって、詠は結局ほめられないままだったワケだし」
「そ、それは……」
今度は、詠がの言葉に押し黙る番だった。
そんな、素直じゃない詠の態度が可愛くて――気がつけば、は彼女の頭をなでてやっていた。
「な――――――っ!?」
「ありがとうな、詠。
このお菓子、ありがたくいただくよ」
「と、当然よ! 感謝して食べなさい!
月、行くわよ!」
「あ、で、でも……」
言って、顔を真っ赤にしたままズンズンと執務室を出て行く詠――廊下でものすごい音がした。何かにつまずいて転んだようだ。
対し、取り残された月は詠の出て行った扉と机の上のお茶セット一式をオロオロと見比べている。
詠のことは放っておけないが、かと言ってお茶を放り出していくワケにも、というところだろうか。ならば――
「いいよ、行ってあげな。
お茶なら、いつも月が煎れてくれるのを見てたから大体わかるし」
「は、はい……」
の言葉にうなずくと、月はぺこりと一礼して出て行った。
しばしの休憩の後、は仕事を再開した。
仕事に没頭し、休憩し――それを3回ほど繰り返した頃だろうか。
「ご主人様、こちらでしたか」
言って姿を見せたのは、軍が誇るスーパー軍師、諸葛亮こと朱里だった。
「今の時間、他にどこにいるっつーんだよ?」
「えっと……警邏に出ていたり、璃々ちゃんと遊んであげていたり、恋ちゃんをかまっていたり、鈴々ちゃんや翠ちゃんの手合わせを見物していたり……」
「…………スマン。オレが悪かった」
指折り数え始めた朱里の言葉にあっさりと白旗を揚げる。
「で……何?
これ以上仕事を増やされても、今日中には終われなくなるぞ」
「はわわ、そうではなくて……」
尋ねるの言葉に、朱里はあわてて否定の声を上げる。
「あの……そろそろお昼ご飯の時間だと思ったので……」
「あぁ、もうそんな時間か」
つぶやき――ふと眉をひそめる。
なんだか、似たような展開が前にあった気がする。あの時は――
「……廊下で、愛紗が待ってたりする?」
「はぅあ!?」
まともにうろたえる朱里。どうやら図星らしい。
だが――
(悪いけど、朱里の身長じゃ厨房の調理台が使えるとも思えないし)
胸中で、決して本人には告げられない推理の根拠をつぶやく。
今の会話の流れからして、『手作り料理をご用意しました!』という展開はある程度予想できる。が――酷なようだが、厨房の調理台は正直朱里の身に余る。となれば誰かに手伝ってもらったと考えるのが自然だ。
加えて、今日の一連の流れの中でまだ姿を見せておらず、且つ料理の心得のある人物といえば――愛紗というワケだ。
「はぁ……ご主人様にはかないませんね」
案の定、ため息まじりに姿を見せた愛紗が手にしているお盆の上では、彼女が現時点でもっとも得意とする料理――炒飯が綺麗に皿に盛り付けられ、ホカホカと湯気を立てていた。
と愛紗にとっては、失敗から成功の過程を身をもって体験した、思い出の料理である。
「これ……二人で作ったの?」
「えぇ。
朱里に、ご主人様に贈る料理を作りたいと相談されたのですが……残念ながら、私もまだ修行中の身ですので……」
「それで、愛紗の得意料理に落ち着いたのか」
少し恥ずかしそうに答える愛紗に苦笑しつつ、はお盆から炒飯を受け取る。
「じゃあ、さっそくいただくよ」
「ど、どうぞ!」
「はい……」
緊張が丸出しの朱里、経験がある手前まだマシなものの、それでも落ち着きに欠ける愛紗――二人が見守る中、レンゲで炒飯をすくい、口の中へと運ぶ。
モグモグとよく味わい、飲み込む。
二人が息を呑む中、もったいぶって茶などをすすり――
「……おいしいよ。ありがと」
その一言に、二人の顔が輝いた。笑顔でハイタッチするのを見守りつつ、は笑顔で二杯目を口の中に運んだ。
「………………終わったぁ……」
の願いも虚しく、結局あの後書類仕事はしっかり増えた。おかげで仕事上がりもずいぶんと遅くなってしまった。
疲れた身体を引きずりつつ、は私室への道を歩く。
その脳裏を占めるのは、ひとりの少女――
(蓮華……結局、何も渡しに来てくれなかったな……)
呉王・孫権――蓮華の姿を今日は一度も見ていない。
小蓮や思春、穏からもプレゼントは来ていたから、まさか『貂蝉印のバレンタイン情報』が届いていないとも思えないのだが……
そうこうしている内に、部屋の前へとたどり着き――
(え――――――?)
部屋の中に人の気配を感じた。
一瞬自分を狙う刺客かとも考えるが――愛紗達に鍛えられた第六感が気配の主に殺気がないことを教えてくれる。
それどころか、その気配には覚えがある――
(蓮華……?)
だが、なぜ自分の部屋に――?
(ま、まさか……
貂蝉のヤツ、『贈り物は私♪』なんてネタを教えてないだろうな!?
それはそれでうれしいけど――いやいや! そうじゃなくて!)
脳裏に浮かんだ不埒な想像を追い払い、は改めて扉と相対する。
武芸にはそれなりの心得のある蓮華だが、気配から察するにこちらには気づいていないようだ。ずいぶんと落ち着きがないのがわかる。
(えぇい、ままよ!)
ともかく、このままでは埒があかない。覚悟を決め、は扉に手をかけ――開く。
「あ………………」
案の定、蓮華はこちらに気づいていなかったようだ。クルリと振り向きかけたそのままの姿勢で固まっている。
「えーっと……
何を、してるのかな?」
「あ……えっと……
貂蝉から、の国の行事のことを聞いて、何か贈らないと、と思って……けど、何も思いつかなくて、その……」
の問いにしどろもどろになって答える蓮華――その顔が見る見るうちに赤くなっていく。
「えっと……だから……
……こ、これ!」
言って、耳まで真っ赤になった蓮華がに差し出したのは――
「……お守り……?」
「え、えぇ……」
受け取り、つぶやくの言葉に、蓮華もまた顔を真っ赤にしてうなずく。
「な、なんだ……
オレはてっきり、『贈り物は私♪』とか言ってくるかと……」
「な…………っ!?」
安堵の息をつき――安心からか油断した。思わず口にしてしまったの言葉に、蓮華は思わず後ずさる。
だが、それはの言葉への嫌悪ではなく――
「…………は……そっちの方がうれしかった……?」
「あ…………
い、いや……そういうんじゃ、なくて……」
モジモジと尋ねる蓮華の言葉に、は返答に困って頬をかき、
「……好きな子に、そこまでさせたくないし……」
「え………………?」
小声でつぶやいた言葉だが――その言葉は彼女の耳にしっかりと届いていた。蓮華の顔の赤みがさらに増す。
「…………
今……何て……?」
「だ、だから……」
蓮華の言葉に、もまた顔を真っ赤にして――それでも、覚悟を決めて蓮華に告げた。
「オレ……」
恥ずかしさで思わず視線を背けそうになる――だが、懸命に耐えて一気に言い切る。
「蓮華のこと、好きだから……」
「………………!」
対し、蓮華の顔の赤みは最高潮に達した。とてものことを直視できず、視線をさまよわせる。
は――何も言わない。ただ静かに、蓮華が口を開くのを待つ。
「わ、私も……その……」
うまく言葉が出てこない。
だが――言わなければならない。
ここで応えなければ――たぶん、一生この想いを伝えることはできなくなる。
大きく息を吸い、吐き出す――存分に心を落ち着け、蓮華はに告げた。
「私も……貴方のことが好き。
呉の王としてでなく――ひとりの女として、貴方のとなりにいたい……!」
お互い、そこまでが限界だった――恥ずかしさから顔を伏せた蓮華を、は優しく抱きしめる。
「ありがとう……蓮華」
「……」
告げられた言葉に、蓮華は顔を上げる。
二人同時に瞳が閉じられ――
気持ちを伝え合った二つの影が、今、静かに重なった。
あとがき
正直に言いましょう。
書いててものすごく恥ずかしかったです。
そんなワケで『恋姫†無双』をお題にしたバレンタインSSでした。
今回は孫権こと蓮華をヒロインに据えてみました。キャラ単体で萌えるなら馬超こと翠ちゃんなんですが、主人公とのカップリングで萌えるなら彼女なので。
さて、書き始めてまず最初に思ったのが『あの世界にバレンタインはないだろ』という点。
何しろ舞台となる世界は三国時代がベースとなってますからね。だからみんなバレンタインなんか知らないだろう、ということで今回のような展開に。
セリフ中でしか名前の出てない子達(恋達)は名前と真名が結びつかないキャラもいるかとは思いますが……むしろ説明文や()の注釈を入れると見づらくなる、との考えからあえて説明は省いてます。
これが限界でした。ゴメンナサイ。
あと、今回は「ゲームでできなかったから」ということで名前変換にも挑戦。うまく動作してくれているか心配です。
自分ですか? もちろんジュンイチの名前で――(以下削除)
(初版:2007/02/14)