プロローグ

“始まり”の前に
〜夢の中の邂逅〜

 


 

 

 夢を見ていた。
 

 夢の中で、自分は天を衝くような巨大な敵と戦っていた。
 唸りを上げる右腕が旋風をまとい、撃ち放つ――同時、解放された“力”が竜巻となって目標に叩きつけられる。
 そんな自分のとなりを、全身の装甲を青を基調としたカラーリングでまとめた仲間が駆け抜けていく――炎に包まれた右足で蹴りを叩き込むが、敵の巨体の前にはまったくと言っていいほどダメージを与えられない。
 それでも――あきらめるワケにはいかない。仲間と共に飛翔し、巨大な敵の顔面に向けて飛翔する。
 自分と仲間、二人の軌跡はやがて重なり、ひとつとなって――
 

「………………んにゃ……?」
 朝日の差し込む自室で、彼女は静かに目を覚ました。
 寝ぼけまなこをこすりながら身を起こし――
「まったく、やっと起きたわね、スバル」
 そんな彼女に、ルームメイトの少女は呆れを多分に含んだ口調でそう告げた。
「大方、今日のことで興奮して眠れなかったんじゃないの?」
「そんなことないよぉ。ちゃんと早めに寝たのに……」
 答え、スバルと呼ばれた少女はベッドからピョンッ、と飛び降りる。
「今日の試験、コケるワケにはいかないんだから、しっかりしなさいよ」
「うん、わかってるよ、ティア」
 告げる少女――ティアナ・ランスターにそう答えると、スバル・ナカジマは顔を洗うべく洗面所へと足を運んでいった。

 

 

 

 

 夢を見ていた。
 

 夢の中で、自分は天を衝くような巨大な敵と戦っていた。
 となりで、全身の装甲を白く染めた仲間が右腕から竜巻を放ち、敵の腹部に叩きつける。
 次いで自分が突撃し、右足に込めた“力” を燃やして蹴りを叩き込むが、敵の巨体の前にはまったくと言っていいほどダメージを与えられない。
 それでも――あきらめるワケにはいかない。仲間と共に飛翔し、巨大な敵の顔面に向けて飛翔する。
 自分と仲間、二人の軌跡はやがて重なり、ひとつとなって――
 

「……ふみゅう…………?」
 朝日の差し込む自室で、彼女はふと目を覚ました。
 机に――パソコンの前に突っ伏したまま眠っていたらしい。徹夜でネットゲームをしている内に寝てしまったのだろう。記憶がないにもかかわらずちゃんとログアウトしているのを確認して思わず苦笑する。
 と――階下から家族の声が自分を呼ぶのが聞こえてきた。
「お姉ちゃぁーん」
「こなたー、朝ごはんだぞー」
「はーい!」
 元気にそう答えると、泉こなたは「うーん」と背伸びして凝り固まった身体をほぐすと、あくびまじりに自室を後にした。

 

 

 スバル・ナカジマ――

 

 泉こなた――

 

 

 

 二人の少女の運命が交差するのは、この日から少しだけ先の話で――

 

 

 

 

 二人の“道”が重なるのは、もっと先の話――


 

(初版:2008/04/04)