「…………ぐすっ……ぐすっ……!」
「私のこと……覚えててくれたんだ……」
 なのはの胸に顔をうずめたまま、ただひたすらに泣きじゃくるスバル――彼女の頭を撫でてやり、なのはは優しくそう告げる。
「あの、覚えてるって言うか……あたし、ずっと、なのはさんに、あこがれてて……」
「そうなんだ……
 うれしいな」
 泣きながらのその言葉になのはが答え――ようやく顔を上げたスバルに、笑いながら続ける。
「バスター見て、ちょっとビックリしたよ」
「…………あ」
 その言葉に――ようやくスバルは気づいた。
 この場になのはが現れたということは、今回の試験のことをなのはは一部始終見ていたと言うことで――
「す、すみませんっ! 勝手に、マネしちゃって!」
「……フフフッ。
 いいよ、そんなの」
 笑いながらなのはが答えるのを前に――マスターメガトロンは首をかしげ、
「…………知り合いなのか? 貴様ら」
「うん……ちょっとね」
 尋ねるマスターメガトロンの問いになのはがうなずくと、
〈マスターメガトロンが寝てた10年間の間に、私らもいろいろあったんよ〉
 そんな彼に通信をつなぎ、答えたのは――

〈……その声は……ビッグコンボイのところの車イス娘か?〉
「ま……まぁ、確かに10年前は車イスで動き回ってたけど……もーちょっと言い方あらへんかな?
 その言い方やと私が車イスそのものみたいに聞こえるんやけど」
 答えるマスターメガトロンの言葉に、はやては現場上空に彼女達を運んできたスプラングの中で肩をコケさせながらうめく。
 と――そんな彼女のとなりで、フェイトもまた首をかしげ、
「はやて……私も、知らないんだけど……?」
「ほら、アレやよ。
 4年前の、みんなが、私の演習先に遊びに来てくれた時の空港火災」
「あ……
 ひょっとして、災害救助の手伝いをした時の?」
「せや」
 聞き返すフェイトに答え、はやてはモニターに映るスバルへと視線を戻し、
「スバルは、なのはちゃんが助けた要救助者のひとり。
 ちなみに、フェイトちゃんとジンジャーはスバルのお姉ちゃんを助けてるし、ジャックプライムは義理のお兄ちゃんと一緒に救助活動して、その時に、マスターメガトロンの宿ったあのトランステクターを見つけてる」
《そうなんですか……?》
「女の子を助けたのは、よく覚えてるけど……」
〈ボクもよく覚えてる。
 そっか……あの人、スバルのお義兄ちゃんだったんだ……〉
「しかもな、もっと前にさかのぼると、もっとおもしろい因縁が出てきたりもするんよ」
 ジンジャーやフェイト、そして通信で会話に加わってきたジャックプライムに答えると、はやてはニヤリと笑い、
「フェイトちゃんやジャックプライム、10年前の“GBH戦役”の時、ミッドチルダの災害救助、したやろ?
 なんと! スバルのパートナーのティアナは、その時にアリシアちゃんに助けられとるんよ」
「ホントに!?」
〈世間って狭いねぇ……〉
「せやろ?
 ちなみにスバルの方は、今は姉妹二人そろって管理局員。部隊は別なんやけどね」
 驚嘆の声を上げるフェイトとジャックプライムにはやてが告げ――と、ジンジャーがはやてに尋ねた。
《それにしても……スバルさん達の方についてはずいぶんと詳しいですね》
「せやね。
 『因縁』云々を言うんやったら、スバルとの縁はなのはちゃんよりもちょっとだけ深いから」
「はやても知り合いなの?」
「うん……直接の、っちゅーワケやなくて、家族つながりなんやけどね。
 スバルの家は、お父さんも管理局の部隊長をしてるんやけど……前にあった事件で、“お義兄ちゃん”共々ちょっとお世話になってね。
 例の空港火災の時にも手伝ってもらってるし、その後も部隊に研修でお邪魔したりもしてるんよ。
 スバルのお姉ちゃんとは、その時以来先輩後輩の間柄やしね」
〈そうなんだ……〉
 フェイトに答えるはやての言葉に納得し――ジャックプライムが尋ねた。
〈じゃあ……はやてって、“お義兄ちゃん”の方とも知り合いなの?〉
 瞬間――びしぃっ! と音を立ててはやての身体が硬直した。
 眉をひそめ、フェイト達が見守る中、しばし動きを止め――突然頭を抱えた。
 その口からもれるのはうわ言のような小さなつぶやきの数々――

「あ待ってそこでそんな大技キッツいって死ぬ死ぬホンマに死ぬからうぅ訓練で非殺傷設定のはずやのにちっとも生きて帰れる気がせぇへんヴィータもシグナムもなんでそない遠くにいるん?あそーかとっくに墜とされとったねあははそーいえばザフィーラとシャマルどこやろ……」

「…………なんと、言うか……」
〈“お義兄ちゃん”がらみで……心の古傷が、それもかなり豪快に開いたっぽいね……〉
《内容からすると、訓練でご一緒したようですが……一体、そこで何が……?》
 何やらトラウマが呼び起こされてしまったのか、頭を抱えてブツブツとうわ言を続けるはやての姿に、フェイトとジャックプライム、ジンジャーが若干引き気味にそううめき――
〈貴様らの因縁の異常っぷりはよぉ〜くわかった〉
 つなぎっぱなしだった通信の向こうから、マスターメガトロンの不機嫌そうな声が聞こえてきた。
〈だが、わからないことは山積みだ。
 オレが宿ったトランステクターのこともある――欠けている情報については、きっちり説明してもらうぞ〉
「あ、うん……それはもちろん。
 ただ……」
 マスターメガトロンの言葉にうなずき――フェイトは視線を動かし、
「はやてが“帰って”くるまで、待っててくれると助かるんだけど……」
 はやてが正気を取り戻すには、まだしばらくかかりそうだった。

 

 


 

第3話

機動六課・発足
〜始まりは4年前〜

 


 

 

「とりあえず……『復活おめでとう』、かな?」
「………………フンッ」
 ようやくトラウマ状態から脱出し、告げるはやての言葉に、マスターメガトロンは不機嫌そうに鼻を鳴らした。
 彼女達がいるのはミッドチルダ首都、クラナガンにある時空管理局の地上本部――10年前のこともあり、マスターメガトロンを連れてくることについては多少の悶着は覚悟していたが――
「やれやれ、10年経とうとその性格は相変わらずか」
「ずっと眠っていたんだ。貴様らにとっては10年前の話でも、オレにとってはつい昨日の話のようなものだ」
 それについては彼が便宜を図ってくれた。地上本部で待ちかまえ、うまくごまかして中に案内してくれたザラックコンボイの言葉にも、マスターメガトロンはぶっきらぼうにそう答える。
「しかし、なんとも型破りなことをしてくれる。
 トランステクターに取りついて復活した上、管理局の新人といきなり“ゴッドオン”するとはな……」
「“ゴッドオン”……? あの融合状態のことか……
 ま、そんなことよりも、だ……」
 ザラックコンボイの言葉に、マスターメガトロンはため息をつき、
「その新人どもが、どうしてオレと一緒に連れてこられているんだ?」
 “新人ども”――スバルとティアナへと視線を向け、尋ねる。
 当の二人はと言えば、現在進行形でガチガチに緊張している――まぁ、二人にとって、ミッドチルダのトランスフォーマーの頂点に立ち、しかもベルカ式魔法の創始者のひとりであるザラックコンボイは雲の上の天上人だ。緊張するのもムリのない話ではあるのだが。
 と――
「二人にも話があるんよ」
 マスターメガトロンの疑問に答えたのははやてだった。傍らのフェイトとも視線を交わし、マスターメガトロンに告げる。
「ちょう長い話になるけど……順を追って話さんとわからんくなるところもあるからガマンしてな。
 じゃあ……まずは、ことの起こりになった事件から話すな」
 そう前置きして――はやてははフェイトと共に語り始めた。
 

 きっかけは4年前――ミッドチルダの臨海地区で起きた、スバルも巻き込まれた空港火災。
 ある危険な密輸物が原因で起きた火災はまたたく間に空港全域に広がり、近隣の陸上部隊や航空隊も緊急召集される、大惨事となった。
 そして、その中に――“闇の書”事件に関わる保護観察処分の終了後も管理局に残留、陸上部隊で勤務していたはやてや、彼女の休暇に合わせて集合、近くのホテルに宿泊していたなのは達の姿もあった。

 

「203、405、東側に展開してください!
 魔導師陣で防壁張って、燃料タンクの防御を!」
 陸士部隊に支給された、最新型の戦闘指揮車両――その上で多数のウィンドウを展開し、はやては状況に合わせて逐次指示を出していく。
 類稀なる才覚によって異例のスピード出世を遂げた彼女は、すでに指揮官研修も受けている――実際その指揮は的確なものだったが、
《ダメです、はやてちゃん!
 まるっきり人手が足りないですよー!》
〈こっちもだ!
 救助用の装備はともかく、消火装備を持ってるトランスフォーマーがあまりにも少ない!
 一旦消火しても他からまた燃え広がってきてキリがない! もう少し数をそろえられないのか!〉
「そやけど……首都からの航空支援が来るまで、今の人員で持ちこたえるしかないんよ」
 問題は現場で消火、レスキューにあたっている人員の致命的な人手不足――舞い降りてきたリインの、通信してきたビッグコンボイの言葉に、はやてもまた苦々しい表情で答えた。
 

〈航空魔導師、“本局02”、応答願います〉
「はい、“本局02”――テスタロッサ・高町」
 指揮所からの通信に、アリシアとともに火災現場上空を飛行していたフェイトはすぐに応答した。
〈8番ゲート付近に、要救助者の反応が出たんですが、局員が進めないんです。
 お願いできますか?〉
「了解。
 アリシア、頼める?」
「オッケーおっけー♪
 お姉ちゃんにお任せ!」
 告げるフェイトに答え、アリシアはロンギヌスをかまえ、
「ロンギヌス、カートリッジ、ロード!」
〈やぼーる!〉
 アリシアの言葉に、ロンギヌスはカートリッジをロード。自身の全体をロケットに見立てた“ラケーテンフォルム”へと変形する。
「………………その舌足らずな口調、治さないの?」
「カワイイからいーの♪
 発掘現場の同僚さん達にも好評なんだから♪」
 思わず尋ねるフェイトに答えると、アリシアは狙いを定め、
「ドカンと一発、安全第一!
 ボーリング――バレット!」
〈ぼーりんぐ、ばれっと!〉
 その言葉と同時――アリシアの身体が爆発的に加速した。光の帯を軌跡に残しながら空港の屋根へと突っ込み――突き破る!
 と――軌跡に残された光の帯が突然ふくらんだ。魔力で形成されたトンネルとなり、アリシアの突き破った天井の穴を支える。
 “ボーリングバレット”――アリシアの得意とする突撃魔法“ラケーテンバレット”のバリエーション魔法であり、障害物を突破しつつ魔力トンネルを形成、突入と同時に退路も確保する救助用魔法である。もちろん、要救助者を探すためのサーチ機能も完備している。
 あっという間に1階まで到達。アリシアの後に続いたフェイトはホール内を見回し、
「――――いた!」
 ホールの片隅にバリアによって保護された数人の男女を発見し、アリシアが声を上げる。
「管理局です!
 大丈夫ですか!?」
「あ、はい……」
 すぐに駆け寄り、尋ねるフェイトに、バリアに守られた女性のひとりが答えるが、
「あ、けど……もうひとり、魔導師の女の子が。
 『妹を探しに行く』って、私達をこのバリアで保護して、あっちに……」
「そうですか……
 ……アリシア、この人達を頼んでいい? 私はその子を助けに行くから」
「うん!」
 答えるアリシアにうなずき、フェイトは空港の奥を目指して飛翔した。
 

 一方、はやてのいる指揮所では――
《はやてちゃん!
 応援部隊の指揮官さん、到着です!》
「うん!」
 自分のとなりでその知らせを受けたリインの言葉にうなずくと、はやては指揮車から降りて駆けつけてきた部隊の指揮官へと向き直り――
「すまん! 遅くなった……って、八神!?」
「な、ナカジマ三佐!?」
 自分に気づき、驚く相手を見て思わず声を上げた。
 知らない顔ではない――かつて共に事件に立ち向かった仲だ。
 陸上警備隊、108部隊々長、ゲンヤ・ナカジマ三等陸佐である。
「お前だったのか、臨時指揮を執ってくれていたのは」
「いえ……ちょうど、近くの部隊に研修で来ていたので……」
 ゲンヤの言葉に答えると、はやては改めて表情を引き締め、
「では……ナカジマ三佐、部隊指揮をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「ん?
 ……あぁ、お前さんも魔導師だったっけか。
 前の事件じゃ戦ってるのを見られなかったからな……忘れてたぜ」
「はい、広域型なんです。
 空から消火の手伝いを――」
 そうはやてが言いかけた、その時――
《はやてちゃん!》
 そんなはやてに、なのはが通信してきた。
《指示のあった女の子ひとり、無事救出!
 名前はスバル・ナカジマ。さっき、無事に救護隊に渡したんだけど、お姉ちゃんとお兄ちゃんが中にいるんだって!》
「了解。
 私もすぐ空に上がるよ」
 なのはに答えると、はやては通信を切り――
「《…………『ナカジマ』……?》
「え………………?」
 そのとなりでつぶやいたリインの言葉に動きを止めた。二人で顔を見合わせると、その視線はゲンヤに向かい――
「あぁ。うちのガキどもだ。
 そういえば、お前らは面識はなかったな」
 そんな二人に、ゲンヤは静かにうなずいた。
「じゃあ……『お兄さん』っちゅうのは……」
「あぁ。
 お前さんもよく知ってる……“アイツ”だ」
 尋ねるはやてに、ゲンヤは静かにうなずいてみせる。
「兄妹3人でうちの部隊に遊びに来る予定だったんだがな……この騒ぎに巻き込まれちまったみたいなんだ。
 とりあえず、娘二人はともかく、“アイツ”については心配ない――まぁ、お前さんには今さらだろうがな。
 中にいるのは、二人を探しながら救助活動に参加してたからだろう。こっちで確認してみる」
「そうですか……
 ではナカジマ三佐、後の指揮をお願いします。
 リインは三佐への申し送りをお願い。説明が終わったら、上で私と合流や」
《はいです!》
 リインの答えにうなずき――すぐにはやてはきびすを返し、空港に向けて駆け出した。そのままバリアジャケットを装着し、夜空へと飛び立つ。
 上から見るとまだかなりの範囲が燃えているのがわかるが――
「それでも……私なら……!」
 こういう時のための広域型だ。自分自身に気合を入れ、はやては最適な消火ポイントを探して移動を開始した。
 

「スバルー?
 スバル、どこなの!?」
 西側区画の一角――吹き抜けの回廊を、ギンガ・ナカジマは妹の姿を探していた。
 すでに回廊内に人の気配はない。他を探そうとギンガはきびすを返し――フェイトが回廊に到着したのは、ちょうどそんな時だった。
「キミ! そこでじっとしていて!」
 フェイトの声に、ギンガが彼女に気づく――が、まるでそれを合図にしたかのように、ギンガの足元が崩落する!
 ギンガの身体が宙に投げ出され――
《危ない!》
 すかさず実体化したジンジャーがそれに対応した。彼女の落下軌道上に射出したプラズマフェザーを敷き詰めてギンガを受け止め、残りのフェザーで降り注ぐガレキからギンガを守る。
「ありがとう、ジンジャー」
《まだです。
 外に退避させるまでが救出活動ですよ》
 礼を言うフェイトにジンジャーが答え、彼女はプラズマフェザーを操り、ギンガを自分達の元へと引き寄せる。
「もう大丈夫だよ」
「あ、あの……」
 ギンガをなだめるフェイトだったが、そんな彼女に対し、ギンガは遠慮がちに声を上げた。
「まだ、妹が中にいるんです。
 義兄あにも探してくれてると思うんですけど……!」
「妹さん?
 名前は?」
「スバル・ナカジマ……11歳です」
《スバル・ナカジマ、11歳ですね。
 少し待ってくださいね、照会します》
 フェイトに答えるギンガの言葉に、ジンジャーはデータベースにアクセスし、
《……救出を確認。
 2分ほど前に、なのはさんによって救出されています。
 お義兄さんの方は……応援部隊として到着した108部隊の識別反応の移動が、彼らの展開地域とは別の位置で確認されています。おそらくはこの反応でしょう》
「そうなんですか……
 よかった……」
《妹さん達にあなたの無事を知らせます。
 お名前を》
「あ、はい……
 ギンガ・ナカジマ、13歳。陸士候補生です」
《あ、管理局に就職されるんですか?》
 ギンガの名乗りに、ジンジャーはデータを送信する一方でフェイトを見上げ、
《よかったね、フェイト。
 未来の同僚ですよ》
「そうだね」
「そ、そんな……恐縮、です……」
 ジンジャーとフェイトの言葉に、思わず顔を赤くしたギンガが答え――フェイトは外に向けて一気に加速した。
 

「補給は!?」
《後18分で、液剤補給車が7台到着します!》
 指揮所で尋ねるゲンヤの問いに、リインは入ってくる連絡をテキパキとさばきながらそう答えた。
《首都航空部隊も、あと1時間以内には主力出動の予定だそうです!》
「チッ、遅いな……!」
 まるで人手が足りない状況で、増援は1時間待ち――リインの報告に、ゲンヤは思わず舌打ちする。
「要救助者は?」
《確認されているのは、あと20名ほど……
 魔導師さん達ががんばってますから、なんとか……!》
「そうか……最悪の事態は、回避できそうか……」
 安堵の息をつき、ゲンヤがつぶやくと――
〈オッサン!〉
 突然、彼の個人端末にサウンドオンリーで通信が入った。
「おぅ、どうした?」
〈スバルとギンガ、無事救出されたって!?〉
「あぁ。二人とも無事だ」
〈そっか……
 よかったぁ……〉
 声の主はゲンヤの言葉に心から安堵したようだ。その声色から力が抜け――
《お久しぶりです! リインフォースです!
 お手伝いありがとうございますですー!》
〈って、チビスケ!?〉
 会話に乱入してきたリインの言葉に、その声が驚きのそれに変わった。
〈じゃあ、はやても来てるのか!?〉
《はいです! 消火活動の指揮を執ってたです!
 今は空に上がって、消火活動にあたってるです――巻き込まれないように注意してくださいね!》
〈心配無用!
 アイツの攻撃をむざむざくらうようなヘタレかよ、オレは〉
 リインの忠告に対し、“彼”は余裕に満ちた口調でそう答えるが――続く言葉はすでに気を引き締めたものに戻っていた。
〈なら、オレはこのまま人命検索に移る。
 今いるのが中央管制区画。そこから東側に向けて検索かけっから、他のエリアは頼むぜ〉
「おぅ。任せろ」
 言って、ゲンヤは通信を切ると傍らの空港の地図へと視線を向け、
「アイツが動いてくれるんなら、東側区画はもう問題ないだろう。
 こっちの人員は他の区画に振り分けるぞ」
《おひとりで大丈夫なんですか?》
「あぁ」
 “彼”の実力は知っているが、それでもたったひとりで、というのは――不安を覚え、尋ねるリインだったが、対するゲンヤは迷わずうなずいてみせる。
「嘱託でありながら管理局の若手ナンバー1の呼び声も高い、高町なのは一等空尉相当官。
 ヤツが“エース・オブ・エース”なら、アイツは……」

“ジョーカー・オブ・ジョーカー”だ」

 

 ―― ほの白き雪の王
銀の翼もて、眼下の大地を、白銀に染めよ!

 火災現場の一角――その上空で、はやては足元に魔法陣を展開。詠唱を行い、周囲に氷結の“力”を込めた4つの魔力スフィア――いや、箱状の魔力キューブを生み出す。
「八神一尉! 指定ブロックの避難、完了しました!」
「おねがいします!」
「了解!」
 眼下の魔導師達の言葉に従い、はやてはシュベルトクロイツを振りかぶり――
「来よ、氷結の息吹!
 アーテム・デス・アイセス!」
 はやてが魔法を解放すると同時――魔力キューブが放たれた。眼下の火災現場に降り注ぎ、それぞれの着弾地点を中心に冷気を開放。瞬く間に炎を打ち消し、凍結させていく!
「よし!」
 目標区画の完全な凍結を確認し、はやてが満足げにうなずき――
「――――――ん?」
 ふと、視界のすみにいくつもの光点が現れたのに気づいた。
 それは徐々に数を増やし、大きさを増し――編隊を組んで飛行する首都航空部隊の魔導師だとわかるまで、さほど時間はかからなかった。
《遅くなってすまない!
 現地の諸君と、臨時協力のエース達に感謝する!
 後はこちらに任せてくれ!》
「了解しました!
 引き続き協力を続けますので、指示をお願いします!」
 念話で連絡してくる航空魔導師隊のリーダーに答え、はやては息をつき――
〈あー、ちょっといいか?〉
 そんな彼女の元に、突然通信が入った。
〈消火部隊の指揮官の回線ってこれであってっか?
 一応、突入前に指揮系統調整した時、この回線を使えって言われたんだけど〉
「あー、すみません、今はゲンヤ・ナカジマ三佐の方に指揮権が移ってて……」
〈そうなのか? 悪いな。
 やっぱ個人端末、断らないで素直に支給してもらうんだったな……入れ違いばっかりだぜ……〉
 そうつぶやき――何かあったのか、相手は突然通信の向こうで沈黙する。
「どうしました?」
〈………………をい〉
 何かあったのかと尋ねるはやてに対し、声の主はうめくように彼女に告げた。
〈お前……まだ気づかないのか?〉
「はい…………?」
 その問いに、はやてはしばし首をかしげ――
「………………あぁぁぁぁぁっ!
 その声、ひょっとして!?」
〈ったく、ようやく気づきやがったか、この小娘。
 初対面を装って問い合わせてみれば、案の定気づかないんだもんなぁ……素直すぎて、逆に引っ掛けがいがねぇぜ〉
 気づいた。思わず声を上げるはやてに対し、声の主は呆れたようにそううめく。
 だが、今はそんなことを論じている場合ではない。声の主は声色を引き締め、はやてに告げた。
〈まぁ、その辺のことでお前をおちょくるのはまたの機会として……ここからはマジメなお話だ。
 はやて、ちょっと手間かけさせて悪いけど……お前、地上部隊の“古代遺物ロストロギア”関係部署にいろいろと顔がきくよな?
 “古代遺物ロストロギア”の回収班、空港の貨物ターミナルまで手配してもらえないか?〉
「“古代遺物ロストロギア”の……?」
〈あぁ〉
 聞き返すはやてに、声の主はマジメな声色で答えた。
〈今回の火元、とぉーっても厄介なシロモノだったらしくて、ね〉
 

〈おはようございます。
 さっそく、現場を呼んでみましょう〉
〈はい、こちら現場です。
 火災は現在は鎮火していますが、煙は、未だに立ち上っている状態です。
 なお、現在は時空管理局の局員によって、危険の調査と、事故原因の解明が進められています。
 幸いにも、迅速に出動した本局航空魔導師隊の活躍もあり、民間人に死者は出ておりません――〉
「うーん……」
 翌朝――テレビのニュースが火災のことを伝えるのを、はやてはベッドの上で横になったまま複雑な表情で聞いていた。
「やっぱりなぁ……」
「………………?
 何が『やっぱり』なの?」
「実際働いたんは、災害担当と初動の陸士部隊と居合わせたフリーの魔導師さんご一同、なのはちゃんとフェイトちゃん、それにアリシアちゃんやんか」
 聞き返すなのはに答え、はやてはリモコンでテレビを消す。
「まぁ、お休み中だったしね」
「それに、民間の人達も無事だったんだし」
《なの姉達のお休みがつぶれちゃった以外は万々歳じゃない。何か問題あるの?》
 なのはとフェイト、そしてプリムラが答えると、はやてはベッドの上で身を起こし、
「あんな、みんな……
 私、やっぱ自分の部隊を持ちたいんよ」
『《………………?》』
 いきなりの発言に話の展開がつながらず、なのは達が顔を見合わせる中、はやては続ける。
「今回みたいな災害救助はもちろん、犯罪対策も、発見された“古代遺物ロストロギア”の対策も……何につけ、ミッドチルダ地上の管理局部隊は行動が遅すぎる。
 後手に回って正面ばっかりの動きじゃあかんし、私も今みたいに、フリーで呼ばれてはあっちこっち回ってたんじゃちっとも前に進めてる感じがせぇへん。
 少数精鋭のエキスパート部隊――それで、成果を挙げてったら、上の方も、少しは変わるかもしれへん。
 でな……私がもし、そんな部隊を作ることになったら……フェイトちゃん、アリシアちゃん、なのはちゃん。協力してくれへんかな?」
 その問いに、なのは達は再び顔を見合わせて――
「もちろん、3人の都合とか、進路とかあるんは、わかるんやけど……」
 そんな彼女達に対し、はやてはあわてて弁明の声を上げるが――
「はやてちゃん、何を水臭い」
「小学3年生からの付き合いじゃない」
 対し、なのはとフェイトは肩をすくめてそう答えた。
「それに。
 そんな楽しそうな部隊に誘ってくれなかったら、逆に怒るよ。
 ね、フェイトちゃん、アリシアちゃん」
「うん」
 なのはの言葉にうなずくフェイトだが――なぜかアリシアからの反応はない。
「アリシアちゃんはどないする?」
「うーん……」
 改めて尋ねるはやてだが、アリシアはなぜか難しい顔をして考え込んでしまう。
「どうしたの?」
「まさか……イヤなの?」
「あ、うぅん、イヤとかそういうことじゃなくて……」
 不安になり、尋ねるなのはとフェイトだが、アリシアはパタパタと手を振り、
「はやてがそういうコト考えてるんなら……あたしも、ちょっとやってみたいことがあるんだ」
「やってみたいこと……?」
「うん」
 なのはの問いにうなずき、アリシアは3人を前に静かに語り始めた。
「ほら、今はやてが言ったとおり、地上部隊ってとにかく後手後手じゃない?
 状況の把握が遅れた結果、事態が取り返しのつかない状況まで進んじゃって、失われちゃう“古代遺物ロストロギア”も少なくない――それって、みんなにとって危険なのはもちろん、再発防止の意味でも大問題だと思うんだよね。
 だから……現場に直接出て行って、いち早く分析を行う――そうすることで、最悪の事態や、事件、事故の再発を防止する、そんなアナライズチームを作りたいの」
「現場で直接分析をするの?」
「うん。
 もちろん、後方での本格的な分析も大事なのはわかってる――けど、現状のシステムだと、“現場”と“後方”の間の距離がありすぎだと思うの。
 実際、そのせいで現場と後方とでものの見方がぜんぜん違う、ってコトも珍しくないし」
 それは魔導師として現場に立ち、同時に“古代遺物ロストロギア”研究者として後方支援業務にも携わるアリシアだからこその意見――現場と後方、双方の視点を持つアリシアの言葉に、聞き返したフェイトはもちろん、なのはやはやて、そしてプリムラ達も真剣に聞き入っていた。
「現場と後方を橋渡しする、現場でのデータ収集のプロフェッショナルチーム――
 これなら、はやての考えてる新部隊の活動とも連携していけると思うんだけど」
「うーん……確かに、そういうチームがあれば、私達としても助かるなぁ」
「でしょ?
 もちろん、危険が伴う現場に出るからにはこっちも少数精鋭になるだろうけど――その子達は、あたしが責任を持って守る。
 だから……一緒にやっちゃ、ダメかな?」
 うなずくはやてにアリシアが聞き返すと、
「……もう、アリシアもはやてと一緒だよ」
「うんうん。やっぱり水臭いよね」
 そんなアリシアに、フェイトとなのはは笑いながら答えた。そしてはやてもうんうんとうなずき、
「もちろん大歓迎だし」
「その子達はみんなで守る!」
「せやから……みんなでがんばろう。な?」
「……うん!」
 3人の言葉に、アリシアは満面の笑顔でうなずき――
「じゃあ、これもムダにならなくて済むね!」
『「これ」……?』
 思わず声をそろえて首をかしげるなのは達だが、そんな3人の前でアリシアはベッドの上をモソモソと横断、すぐ脇においてあったバッグをあさり始め、
「じゃーんっ!」
 取り出したのは1冊のスケッチブック。
 意図がわからず、顔を見合わせるなのはとはやてだったが――ひとりだけ気づいた。笑顔のアリシアに対し、フェイトの顔が見る見るうちに青ざめていく。
「ま、まさか、アリシア……“アレ”、本気だったの!?」
「とーぜんっ!
 みんなで一緒にお仕事できる日に備えて、ずっとあっためてたアイデアだもん!」
 フェイトに答え、アリシアはパラパラとスケッチブックをめくっていき、
「4人おそろいの戦隊コスチューム、バッチリ考えてあるよ!」
「戦隊……?」
「けど問題は誰がレッドをやるか、なんだよねぇ……部隊長のはやてをリーダー扱いで、とも考えたんだけど、はやてはレッド、ってイメージじゃないし……どっちかっていうとみんなをまとめるグリーン的なポジションなんだよね」
「レッド? グリーン?」
「なのはとフェイトはホワイトとブラックで確定だし……一番似合うのは炎使いのあたしだけど、あたしは実現した場合アナライズ組だし、『炎使いだから赤!』ってパターンももう使い古されちゃってるしねぇ……」
 なのはが、はやてが思わず疑問の声を上げるが、アリシアはまったく気にしない。
「あぁ、安心してね。
 誰もやりたがらないだろうから、ちゃんと黄色の人は省いたから♪」
 むしろこっちの困惑をまったく意に介していない。満面の笑みと共に告げるその言葉に、なのは達は――視線を交わし、苦笑せずにはいられなかった。

 

「……と、そんなことがあって、八神二佐とT・高町研究員が新部隊の設立に奔走」
「4年ほどかけて、なんとか私側のスタートが切れた、というワケや。
 アリシアちゃんの方は、本局との調整の関係でもーちょっとかかるみたいやけどね。外部機関からの協力やし」
 フェイトと共に告げ、はやては手にしていた紅茶のカップをその場に下ろした。
 はやての話が長くなることもあり、一同は地上本部の応接室に移動。はやて、フェイト、リインの正面にスバルとティアナが座り、マスターメガトロンはその傍らにTF用のイスを持ち出し、ザラックコンボイと共に座っている。
《部隊名は、時空管理局本局、遺失物管理部、機動六課!》
「登録は陸士部隊、フォワード陣は陸戦魔導師が主体で、特定遺失物の捜査と、保守管理が主な任務や」
「遺失物……“古代遺物ロストロギア”ですね?」
「そう」
「でも、広域捜査は一課から五課までが担当するから、うちは対策と、特定の“古代遺物ロストロギア”に対するもっと突っ込んだ捜査が中心だね」
 聞き返すティアナにはやてとフェイトがうなずくと――
《ティア、ティア》
 そんなティアナに、スバルは念話で呼びかけた。
《何よ?》
《“古代遺物ロストロギア”って、何だっけ?》
《………………
 っさい! 話中でしょ!》
 何かと思えば――スバルをあっさりと一蹴し、ティアナははやてへと視線を戻し――
「“古代遺物ロストロギア”……
 プラネットフォースのような、古代の遺物のことか?」
「せやね。
 一般的には危険な遺物を指すことがほとんどやけど……力の強弱に関係なくそう総称されるのが正確なところやね」
 そんな彼女達の話をぶった斬って尋ねるのはマスターメガトロンだ。その問いにはやてが答え――スバルは気づいた。
 ほんの一瞬――マスターメガトロンがこちらに視線を向けたことに。
(ひょっとして……フォロー、してくれた……?)
 スバルが胸中で首をかしげると、
「で……スバル・ナカジマ二等陸士、ティアナ・ランスター二等陸士」
 そんなスバルやティアナへと順に視線を向けていき――はやては告げた。
「私は、二人を機動六課のフォワードとして迎え入れたいと考えてる。
 厳しい仕事にはなるやろうけど……濃い経験は積めると思うし、昇進機会も多くなる。
 どないやろ?」
「え? あ、いや……」
 はやての突然の提案に、スバルはどう答えたものかと困惑する。
 見れば、ティアナも同じような顔をしていて――そんな彼女達にフェイトが告げる。
「スバルは、高町教導官から魔法戦を直接教われるし……執務官志望のティアナには、同じ執務官志望の先輩として、私からいろいろとアドバイスできると思うんだ」
「あ、いえ、とんでもない……と言いますか、恐縮です、と言いますか……」
 フェイトの言葉にティアナが困惑の声を上げると――
「ティぃアぁっ♪」
 そんな元気な声と共に、突然ソファの後ろから誰かが抱きついてきた。
「ちょっ、な、えぇっ!?」
 いきなりのことで思わずティアナが声を上げ――

「アリシア、いきなりそれはないんじゃないかな?」

(え――――――?)
 たしなめるように告げたフェイトの言葉に、ティアナの思考が停止した。
 その名は忘れたくても忘れようがない。今のはやての話に出てきた名前だし、何より――
「ほら、ティアナもビックリしてるじゃない」
「再会には驚きは不可欠だって♪」
 フェイトの言葉に笑顔で答え、自分を放すその人物へと、ティアナは振り向いて――
「アリシア……さん……?」
「うん。訓練校のオフに会って以来かな?  元気そうで何よりだよ、ティア♪
 スバルもお久し〜♪」
 呆然とつぶやくティアナに対し、アリシアは元気にそう答え、続けてスバルにも笑顔で手を振ってみせる。
「フェイト見た時、ビックリしたでしょ? 我が妹ながら、そっくりだもんねぇ♪
 あ、ティア、左足ケガしたって聞いたけど、大丈夫? リインの治癒魔法は優秀だから、心配はないと思うけど」
「は、はぁ……」
 まるで言葉のマシンガンだ――久しぶりの再会ですっかりテンションの上がってしまったアリシアにまくし立てられ、ティアナはリアクションに困って言葉に窮し――
「そのくらいにしておけ」
 そんなティアナに助け舟を出したのはザラックコンボイだ。
「まったく、ちょっとうれしいことがあるとすぐこれだ」
「だってぇ、ホントにうれしいんだもん」
 口を尖らせて答えるアリシアだったが、そんな彼女にかまわずザラックコンボイは尋ねる。
「で……貴様が来たということは……」
「あぁ、うん。来てるよ」
 答えて、アリシアが視線を向けた先には――
「みんな、お待たせ」
「想定外の襲撃もあったが……全員無事で何よりだ」
 セイバートロン星から急行してきたスターコンボイを連れた、なのはの姿があった。
 セイバートロン星の最高責任者を前に、スバルとティアナがあわてて立ち上がって敬礼する――手を振り、スターコンボイがそれを制すると、
「スタースクリーム……いや、今はスターコンボイか」
「久しぶりだな、マスターメガトロン。
 お互い、今のボディでは初の対面だな」
 こちらに気づき、口を開くマスターメガトロンに答え、スターコンボイは静かに彼を見返す。
 対するマスターメガトロンもスターコンボイに鋭い視線を向け、両者の間に緊迫した空気が漂い――
「…………まぁいい。
 今のところ、やり合う理由はない」
「お互いにな」
 同時に矛を収めた。マスターメガトロンの言葉に答えると、スターコンボイは傍らのなのはを見下ろし、
「高町なのは。
 オレから伝えるが……かまわんな?」
「はい」
 なのはの答えにうなずくと、スターコンボイはスバルとティアナに座るよう告げ――続けた。
「さて、まずは、今回の試験についてだ」
『あ………………』
 スターコンボイの言葉に、スバルとティアナは思わず顔を見合わせる――いろいろなことがありすぎて不覚にも忘れていたが、今日自分達は魔導師ランクのアップのための試験を受けていたのだ。
「知っての通り、試験は“ディセプティコン”を名乗る者達によって乱入され、メチャクチャになってしまった。
 当然、試験は中止、なかったことになる――」
 スターコンボイの言葉に、スバルとティアナはうつむいて――

「――のだが」

 続いたその言葉に、二人は思わず顔を上げた。
「試験経過、そしてその後のディセプティコンとの戦闘の様子を見せてもらった。
 その結果、最後までディセプティコンに立ち向かったスバルはもちろん、カートリッジを使い切ってしまったとはいえ、ティアナにもBランクを名乗るには十分すぎる素質があると判断した」
「そ、それって……」
「多分に異例の形になってしまったが……合格、ということだ」
 聞き返すスバルにスターコンボイが答えると、今度はザラックコンボイが告げる。
「管理局としても、敵の侵入と襲撃を許し、貴様らの試験を台無しにしてしまった負い目がある。
 その侘び、という形にとられてしまうかもしれないが――正当に実力を評価した結果だ。胸をはるがいい」
『はいっ!』
 その言葉に、スバルとティアナは笑顔でうなずき――

「ただし」

 そんな二人に、ザラックコンボイは告げた。
「今回の試験における、報告不良と危険行動は決して無視できるものではない――わかっているな?」
「あ……それは、あたしがムリにティアを付き合わせただけで……」
「その前にケガのことを報告すればよかったんだ。
 その上で続行可能なら続けさせるし、ムリなようでもこちらだって鬼じゃない。再試験を受けさせることもできたんだ」
 ティアナのことをかばおうとしたスバルの言葉を一蹴し、ザラックコンボイは続けた。
「スバル・ナカジマ二等陸士、ティアナ・ランスター二等陸士。
 今回の処分として――二人には六課発足までの間、陸上警備隊、108部隊での再訓練を命じる」
「い、108部隊!?」
「そう。貴様の父の率いている部隊だ」
 思わず声を上げるスバルに対し、ザラックコンボイはサラリと答える。
「身内のいる部隊ではあるが――最近の陸士部隊の中では特に伸びのいい、注目の部隊だ。
 不服はないな?」
「ふ、不服と言うか、不安と言うか……」
「スバル……?」
 ザラックコンボイの言葉に顔を引きつらせるスバルに、ティアナは思わず疑問の声を上げ――そんな彼女にスバルは答えた。
「…………父さんの部隊の伸びがいいのって……昔、“師匠”が鍛えた時のノウハウが残ってるからなんだよ」
 瞬間――二人の動きが止まった。
 日頃スバルから“師匠”について聞かされていたティアナと、彼女の言葉から“師匠”の正体に思い至ったはやての動きが。
 一変した二人の様子に首をかしげるが――放置しても別段問題はないと判断し、マスターメガトロンは改めて尋ねた。
「で、だ……お前ら、結局オレの疑問にはほとんど答えてないんじゃないのか?」
「え………………?」
「このボディの――トランステクターのことだ」
 首をかしげるなのはに、マスターメガトロンは自分の胸をトンと叩いて答える。
「小娘のようなこのボディに融合できる存在――“ゴッドマスター”といったか、そいつについての説明も聞いていない。
 八神はやてがこの有様な以上、貴様らに説明してもらうしかないんだが」
「あー、そうだね」
 マスターメガトロンの言葉になのはがようやく納得すると、
「ボクが説明するよ」
 そう彼らに告げたのは、ビッグコンボイを連れてやって来たジャックプライムだ。
「あ、試験場の実況検分、終わったの?」
「うん。
 その報告についてはまた後でね」
 尋ねるフェイトに答えると、ジャックプライムはマスターメガトロンへと向き直り、告げた。
「そのボディはね……」

「4年前の空港火災の時、火元になった貨物室から見つかったんだよ」

 

「こちらジャックプライム!
 東側エントランスに到着! これから人命検索を開始します!」
〈お願いします!〉
 オペレータの言葉にうなずき、空港東側のエントランスに到着したジャックプライムはロボットモードへとトランスフォーム。炎の中へと足を踏み入れる。
 すでにエントランス内は火の海と化しており、動く者などどこにもいない――かと思われたが、
「――――っ!
 いた! 要救助者1名発見! 確保します!」
 炎の中に人影を見つけた。本部に告げると、ジャックプライムは人影に向けて走り出す。
「大丈夫!? 助けに来たよ!」
 ジャックプライムの言葉に、人影は振り向き――

「だぁれが要救助者じゃボケぇっ!」

 跳躍し、手にした剣でジャックプライムの顔面を張り飛ばした。
 20歳過ぎくらいの青年だ――不意打ちをくらい、ひっくり返るジャックプライムの胸部装甲を着地ついでに両足で踏みつけ、ドスの利いた声で告げる。
「この大火災の中でビビるでもパニクるでもなく、れーせーに周囲を確認しながら歩いていたオレの、どぉこが要救助者だってんだ? えー、オイ?」
「ご、ゴメンナサイ……」
 謝るジャックプライムの言葉に、青年はうなずいて彼の上から飛び降りた。身を起こし、ジャックプライムは青年に尋ねる。
「で……キミは?」
「陸士108部隊部隊長、ゲンヤ・ナカジマのゆかりのモンさ。
 オッサンのトコの娘っ子二人が部隊に遊びに行くっつーからそのお守りをしてたんだが、かたっぽがはぐれて、探しに出たところにこの騒ぎだ」
「そうなんだ……」
 青年の言葉にうなずき――ジャックプライムは先ほど飛び交った通信の内容を思い出した。
「『ナカジマ』……?
 ――って、ひょっとして、キミの連れってスバル・ナカジマとギンガ・ナカジマ?」
「そー。その二人。
 ま、さっき二人とも無事救助されたって聞いたから、人命検索しながらこっちの出口に来た、ってワケ」
 ジャックプライムの問いに答え、青年は「オレの出番はなかったな」と肩をすくめてみせる。
「じゃあ、もうこっち側は要救助者はいないの?」
「一応、ね。
 見落としの可能性もあるから、念のためもう一回行ってみようかと思ってんだけど……」
 答えて、青年は息をつき――
『――――――っ!?』
 “それ”を感じ取り、二人は同時に空港の奥へと視線を向ける。
「……気づいた?」
「あぁ」
 尋ねるジャックプライムに、青年は真剣な表情で答える。
「きわめて無機質な魔力の塊……
 ただの火事にしちゃ火の回りが速いと思ったら、それもそのはず、魔法がらみかよ!」
 舌打ちすると同時、青年は地を蹴った。迷うことなく空港の奥へと走り出す。
「え!? ちょっと、キミ!?」
 思わずジャックプライムが声を上げると、青年は振り向き、告げる。
「何ボサッとしてやがる! さっさと火元を押さえに行くぞ!
 魔法がらみの火災だとしたら、ほっといたらどうなるかわかんねぇだろ! “古代遺物ロストロギア”がらみだったらなおさらだ!」
「え? あ、う、うん!」
 青年の言葉にうなずき、ジャックプライムはあわてて彼を追って駆け出した。

「もうすぐだよ!
 次のエリアの貨物室が火元!」
「おう!」
 告げて、ビークルモードで疾走するジャックプライムの上で青年がうなずき、二人は火元を目指して空港内の通路を突き進む。
 そして、貨物室へと続く最後の角を曲がり――
「――――――っ!?
 危ない!」
 目の前には巨大な壁――あわててジャックプライムはブレーキをかけ――
「どわぁっ!?」
 上に乗っていた青年はまともに前方に投げ出された。思い切り壁に激突する。
「ふぅ、危ない危ない。
 危うくぶつかるところだったよ」
「じゅーぶん危ないし思いっきりぶつかったわ、このバカチンが!」
 ロボットモードにトランスフォームし、告げるジャックプライムに言い返すと、青年はぶつけた鼻をさすりながら自分の激突した壁へと視線を向けた。
「……崩落、だな……
 これ、天井の構造材だ……崩れた天井が道をふさいでやがる」
「どうしよう……」
 つぶやく青年の言葉に、ジャックプライムはセンサーで向こう側の安全確認を始める。
「向こう側に何かガスが出ていたら人間のキミには危ないし、ヘタに壊したらバックドラフトの危険だって――」
「せー、のっ!」
「って、人の話聞いてた!?」
 見れば、こちらのスキャン完了を待たずに突破を試みる青年の姿――握りしめた拳に“力”を収束させる青年を、ジャックプライムはあわてて制止した。
「何考えてるの!? 危ないじゃないか!」
「ガスならねぇよ」
 声を上げるジャックプライムだが、青年はあっさりとうなずいた。
「しこたま燃えまくった結果、CO2濃度が通常の4倍くらいになってるが――それだけだ。
 何ならスキャンして確かめろよ」
「え…………?」
 青年の言葉に、ジャックプライムはすぐにガレキの向こうのスキャンを再開する。
 ――有害ガスなし。CO2濃度、通常の4倍――
(この人……ボクのセンサーよりも速く状況をスキャンした……!?
 魔法を使った様子もないのに、どうやって……!?)
「そんなワケだから、ブッ壊すぞー♪」
「って、ストーップ!」
 再び突破を試みる青年を、ジャックプライムはあわてて止める。
「ガスはないかもしれないけど、バックドラフトの危険は――」
「それこそ心配いらねぇよ。少なくともオレにとってはな」
 あっさりと答え、青年は再びガレキの山へと向き直り、視線だけをジャックプライムに向けて尋ねる。
「何だよ、心配してくれてんの?」
「当たり前だよ」
「ハハハ、サンキュ。
 だったらさ――」
 笑いながらそう告げて――青年は拳に“力”を収束。“力”は炎となって拳の周りで渦を巻く。
 その“力”は――
(……魔力じゃ……ない……!?
 この“力”、一体……!?)
 胸中でうめくジャックプライムにかまわず、青年は拳を振り上げ、
「別に心配はしなくていいから――」
 瞬間――青年の目がまるで抜き身の刃のような鋭さを帯びた。一瞬前とのあまりにも大きなギャップに、ジャックプライムの背筋を寒気が走り――

「信用しろ」

 その言葉と同時――轟音と共にガレキの山が爆裂、吹き飛ばされた。
 青年の炎の拳は一撃で今いる通路とガレキの山の向こうの貨物室とをつなげ――次の瞬間、炎が巻き起こった。新鮮な空気を得て、ガレキの向こうでくすぶっていた炎が一気に燃え上がる。
 炎は貨物室から一気に通路へとあふれ出た。対応する間もなく、青年とジャックプライムを飲み込んでいく!
「ち、ちょっとぉ!?」
 文句なしの直撃だ。トランスフォーマーである自分は大丈夫でも、人間である青年は――勢いよく迫りくる炎から身を守りつつ、ジャックプライムが声を上げ――

「はーい♪」

「………………へ?」

 あっけらかんと返ってきた返事に、ジャックプライムは思わず動きを止めた。
 そして――
「言ったろ? 『信用しろ』って」
 そう告げて――青年は炎の向こうから平然とその姿を現した。
「え? え? えぇっ!?」
「おいおい……何驚いてんだよ?
 まさか、今のバックドラフトでブッ飛んだとでも思ったのか?」
 驚き、口をパクパクさせるジャックプライムに、青年はため息まじりに聞き返す。
「あのなぁ、今さっきさんざんバックドラフトの危険性をオレにほざいたのはお前だろ?
 その上で壁をブチ破ったんだ――対策があるに決まってんだろ」
「対策……?」
 青年の言葉につぶやき――ジャックプライムは気づいた。
 彼の周りだけ、炎と煙が避けている。これは――
「バリア……!?
 今のバックドラフトを、バリアで耐えたって言うの!? 並みのバリアで防げる燃焼じゃなかったよ!?」
「まー、そこはホラ、オレって強いし♪」
 声を上げるジャックプライムに対し、青年はカラカラと笑いながらそう答え――だが、その笑顔も長くは続かなかった。
「――ぬがっ!?」
 天井から崩れ落ちてきたハンドボール大のガレキが青年の頭を直撃したからだ。
「っつぁ……!」
「え? え? え……!?」
 あまりの痛みに、思わず頭を抱えてうずくまる青年だが、ジャックプライムの困惑は増すばかりだ。
 なぜなら――
(今……バリア、残ってたよね……?)
 彼のセンサーは、青年の張っていたバリアの反応をしっかりと捉えていたのだから。
「あのバックドラフトに耐えられる強度があるのに、ガレキひとつであっさり……?」
「って、しゃーねぇだろ」
 つぶやくジャックプライムに、青年は頭をさすりながら答えた。
「オレの力場は対エネルギー特化――エネルギー系攻撃が相手ならほぼ無敵のクセして、対物防御は銃弾を止められれば運がいい、くらいの強度しかねぇんだよ」
「えぇっ!?」
 青年の言葉に、ジャックプライムは思わず声を上げた。
(対エネルギー防御は鉄壁なのに、対物防御は反対に紙キレ同然って……それじゃあまるで、フィールド系の特定効果防御じゃないか……
 本来なら広域フィールド展開して、境界面から術者までの間で無効化させるさせるのに……それをバリアで、しかも今のバックドラフトを相手に難なくこなすなんて、どういうデタラメ防御だよ……)
 胸中でつぶやき――ジャックプライムの中である確信が固まる。
(間違いない……
 この子、“希少技能保有者レアスキルホルダー”だ。それも超一流の……)
 その確信と共に――記憶の底から浮上してくる情報があった。
(思い出した!
 この間の任務の時にクロノが言ってた――民間協力者とはいえ希少技能レアスキル嫌いの中将がトップを張っているミッド地上部隊の中にその身を置いてる“希少技能保有者レアスキルホルダー”――
 そっか……この人がその――)
「――――って、アレ?」
 そこまで思考をめぐらせ、ジャックプライムは目の前から青年の姿が消えているのに気づいた。あわてて周囲を見回すと、すでに貨物室に入り、火元を探しているのが見える。
「ち、ちょっと、待ってよ!」
 急いでジャックプライムも後を追い、青年の後に追いつく。
「どう? 何かわかる?」
「典型的な魔力爆発みたいだけど――爆発の規模に対して放出された魔力の量がかなり少ないな。ずいぶんと魔力の減衰が激しい」
 ジャックプライムに答え、青年は爆心と思われる方向へと振り向き、
「ほら、あっちの鉄骨は放出されたエネルギーで溶解してるのに、入り口付近の鉄骨は熱でひしゃげる程度で終わってる。この短い距離でエネルギーが弱った証拠だ。
 放出された魔力自体は強力なものだったみたいだけど……放出量が少なかったんだろう。だからすぐに減衰して、大気中に霧散しちまったんだ」
「けど……火事は空港全体に広がってるよ?
 すぐに魔力の放出が収まったって言うなら、それはありえない話だと思うんだけど」
「たぶん、だけど……そのカラクリはアレだな」
 言って、青年が指さしたのは、天井を走っていた動力伝達ラインだ。
「この空港の動力を支えている、エネルギー伝達ライン――当然その中には、魔力で稼動するシステムを維持するための魔力伝達ラインも含まれる」
「そっか……あれを伝って、空港のあちこちにエネルギーが飛び火しちゃったんだね」
 うなずき、納得したジャックプライムは火元へと向かい――
「――え――?」
 この火災の原因と思われるそれを前に思わず動きを止めた。
 宝石のようにも見える結晶体。これは――
「これ……まさか、“レリック”……!?」
 そう。自分はこの結晶体を知っている。
 約2週間前に自分達が回収した“古代遺物ロストロギア”と同じものだ――仕事の際、自分達は外側のケースしか見なかったが、後で閲覧した最終的な報告書の中に“中身”であるこの結晶体の資料があった。
 これがなぜここに――予想外の“火元”に、ジャックプライムは困惑を隠せない。
 と――
「おい」
 そんなジャックプライムに、別のところを調べていた青年が声をかけた。
 が――考え事に夢中なジャックプライムは気づかない。
「ボクらが見つけたものとは別のものみたいだけど……」
「おーい」
「まさか、あの時シグナム達の方の現場が消滅してたのも……?」
「こらー、聞いてっかー?」
「けど、“レリック”はムリなちょっかいを出さない限り暴発とかしないって話だったよね……?」
「………………」
「そもそも、あの時見つかったもの以外に“レリック”があったなんて……」
「………………
 おいコラ、そこのチビガキ」
「誰がチビ!? 誰がガキ!?」

「やっぱその二つのキーワードに反応したか。
 そーやって反応している内は実際ガキだぞー」
「うっさいな!」
 青年の言葉に、ジャックプライムはムキになって言い返す。
「で? 何?」
 唇を尖らせながら尋ねるジャックプライムだが――そんな彼に対し、青年は逆に聞き返した。
「ここって……車って入らないよな?」
「え? うん……
 入るとすれば、貨物を搬送するフォークリフトやカーゴぐらいだと思うよ」
「だよなぁ……」
「それがどうかしたの?」
 青年に尋ね、ジャックプライムは彼の元へと向かう。
 そんなジャックプライムに対し、青年は“それ”を指さし、
「じゃあさ……なんで“コレ”がこんなところにあるんだろうな?」
「え………………?」
 尋ねる青年と目を丸くするジャックプライム――二人の前に横たわるのは、1台の大型トレーラーだ。
 しかもこれは――
「ねぇ……コレって……」
「あぁ、わかってる。
 ゲンヤのオッサンのトコにもあるよ」
 ジャックプライムに答え――青年は告げた。
「これ……」

「陸士部隊の最新型戦闘指揮車両だ」

 

「つまり……このトランステクターはその、“レリック”とかいう“古代遺物ロストロギア”のそばで発見されたのか?」
「うん」
 マスターメガトロンの問いにうなずき、ジャックプライムは今度は彼に尋ねた。
「ねぇ、マスターメガトロン。
 そのボディって、マスターメガトロンが宿ったことでトランスフォームできるようになった――とか思ったりする?」
「いや」
 あっさりとマスターメガトロンはうなずく。
「このボディには、最初から変形機構が存在した。
 オレはそれに従ってトランスフォームしているにすぎない」
「だよね」
 マスターメガトロンの答えにうなずき、ジャックプライムは一同を見回し、
「その場にあるはずのない、陸士部隊の最新型指揮車。
 元々から存在していた変形機構。
 さて、この二つのことから導き出される仮説は?」
 その問いに、スバルは思わず首をかしげ――そのとなりでティアナが答えた。
「スパークが宿っていなかっただけで、トランスフォーマーのボディと何ら変わらないものだった……
 その戦闘指揮車の姿は、空港火災の現場に急行した、管理局の車両をスキャンしたんじゃないんですか?」
「うん。そうだね」
 満足げにそう答え、ジャックプライムは話を続ける。
「ボクらもそう考えて――回収して、いろいろ調べてみたんだ。
 徹底的にデータを取って、そのデータを手がかりに“無限書庫”まで動員してね。
 その結果――そのボディがトランステクターであることを知ったんだ。
 そして、ゴッドマスターのことも」
 そこで一度言葉を切り、ジャックプライムはスバルへと向き直り、
「スバル――キミは、マスターメガトロンの宿ってるトランステクターに選ばれた“ゴッドマスター”なんだよ。
 マスターメガトロンが宿る直前、トランステクターは勝手に起動して、キミの所に急行してる。それはキミを――自分を操ることのできる、自身のシステムに適合できる“適格者”を守るための、トランステクター自身の防御行動だったんだ」
「あたしが……トランステクターに……?」
「そう。
 トランステクターに融合レベルで合体すること――これを“ゴッドオン”って言うんだけど、そのゴッドオンができる、トランステクターの適格者、それがゴッドマスターなの」
《私がはやてちゃん達にユニゾンするみたいなものですー♪》
「なるほど……
 今でこそオレが宿っているが……本来ならば、このボディにはその小娘がひとりでゴッドオンするはずだったワケか」
 スバルに答えるジャックプライムとリインの言葉に、マスターメガトロンは納得してうなずき――
「せや。
 スバルがゴッドオンすることで、マスターメガトロンのその新しいボディは初めて本当の力を発揮できるようになる」
 そう告げたのは、本日二度目のトラウマ状態からの帰還を果たしたはやてだ。
「けど……逆を言うなら、スバルがおらへんと、マスターメガトロンは全力を出せへん。
 せやから――」
 そして、その後に続いた言葉は――

「あなたにも……機動六課に参加してほしい」

 会話の流れから考えれば、十分に予測できるものだった。


次回予告
 
はやて 「なーなー、マスターメガトロンさん。ホントに六課に入らへん?
 今ならいろいろ特典ついてくるんやけどなー」
マスターメガトロン 「特典……?」
はやて 「せや!
 今ならなんと! 洗剤が1パックついてくる!」
マスターメガトロン 「…………おい?」
はやて 「何? 不満やの?
 えぇい、おまけや! それならジョイもつけたるで!」
マスターメガトロン 「新聞の勧誘と違うだろうが!」
ギガストーム 「次回、魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜
 第4話『機動六課・集結〜それぞれの決意〜』に――」
二人 『ゴッド、オン!』

 

(初版:2008/04/19)