「ギャラクシーコンボイさん……!?
 ホントに、ギャラクシーコンボイさんなんですか……!?」
「あぁ。
 本当に久しぶりだな」
 “ユニクロンの復活”という最悪のシナリオすら想定していたジュンイチによって、続々と呼び集められるかつての仲間達――現れたかつてのパートナー、ギャラクシーコンボイは、なのはの問いにうなずきながらそう答える。
「えっと……誰?」
「セイバートロン・サイバトロン軍の総司令官、ギャラクシーコンボイさん。
 なのはさんの、“GBH戦役”の時のパートナートランスフォーマーだった人で……」
 一方、新世代組は彼らコンボイ達とは初対面だ。尋ねるティアナに答えるのはなのはに憧れ、彼女の経歴についていろいろと調べていたことのあるスバルで――
「……マスターコンボイさんとは、コンボイと大帝として、昔からのライバルだった人」
 その言葉とちょうど同じタイミングで、ギャラクシーコンボイの視線が自分に向いた。思わず居住まいを正すスバルだったが、
「フンッ、久しぶりだな、ギャラクシーコンボイ」
「やはりお前だったか、マスターメガトロン」
「その名で呼ばれるのも、ずいぶんと久しぶりだな」
 ギャラクシーコンボイが用があったのはスバルではなくマスターコンボイの方だった。告げるギャラクシーコンボイに対し、マスターコンボイも不敵な態度でそう答える。
 と――
「ギャラクシーコンボイ総司令官!」
 歓喜の声を上げ、彼らの元に飛来してきたのは一機の大型輸送機――
「ドレッドウィング、トランスフォーム!」
 それは、ギャラクシーコンボイの副官、かつてのドレッドバスターだ。この10年間の間にスキャニングし直した新たな姿、ドレッドウィングとして、ロボットモードにトランスフォームして目の前に舞い降りてくる。
「ドレッドウィングさん……!?
 じゃあ……」
「あぁ。
 オレもいるよ、なのはちゃん」
 声を上げるなのはに答え、ドレッドウィングのライドスペースから現れたのもかつての仲間。ドレッドウィングのパートナーである遠野志貴である。
 久しぶりの再会に盛り上がる一同をよそに、ギャラクシーコンボイはジュンイチへと向き直り、
「キミが柾木ジュンイチか。
 ザラックコンボイから聞いている――手間をかけさせてしまったようだな」
「そいつぁこっちのセリフだよ。
 結局オレ達だけじゃどうにもならなくて、外宇宙に出ていたアンタ達をムリヤリ呼び出すハメになっちまったんだからな」
「そんなことはない」
 肩をすくめるジュンイチだったが、そんな彼の言葉にもギャラクシーコンボイは迷うことなくそう答えた。
「ザラックコンボイから、大体の事情は聞いていた――だからこそ、歯がゆかった。
 自分達は、遠く離れた宇宙で、ただ無事を祈るしかないのか、とな。
 だが……キミの打った一手が、私達にも彼女達と共に起つ機会をくれた。
 この宇宙のすべての命を守る――私達が、ここでサイバトロンとしての私達をまっとうできるのは、キミのおかげだ。
 だから……改めて礼を言う。ありがとう」
「………………っ」
 面と向かって礼を言われ、ジュンイチは思わず返事に窮するが、
「後は私達に任せてくれ。
 キミの作ってくれたこの勝機、絶対にムダにしない!」
「って、おい、ちょっと待て!?」
 続くギャラクシーコンボイの言葉に、ジュンイチは思わず顔を上げる――が、すでにギャラクシーコンボイは動いていた。スーパーモードのバックパック、その推進システムを全開にふかして戦場に向かう。
「あぁ、もうっ!
 仕掛けるにはまだ早いってのに!」
 うめき、ジュンイチは自分の手元――そこに装着された自らのデバイス“蜃気楼”へと視線を向けた。
 だが、“蜃気楼”は不気味に沈黙するばかりで――
“まだ”かかるか……!
 ……しゃーない。もう一踏ん張りいくか!」
「ジュンイチさん、私も!」
 うめいて、ジュンイチもまたゴッドドラゴンに命じて戦場に向かう――その後を追おうとしたなのはだったが、
「………………っ!」
 ブラスターの反動ダメージは癒えたワケではない。先ほどまで戦えていたのもマグナのフォローがあってこそ――全身でぶり返してきた痛みに顔をしかめ、その場で崩れそうになるのをグッとこらえる。
「まったく……そんな身体でムチャするんじゃないの」
 そんな彼女の頭を軽く小突くのはマグナだ。なのはの身体を支えて助け起こし、
「もう一度私とユニゾンするわよ。
 まだひとりじゃ満足に戦える体調じゃないんだから」
「はい!」
「《ユニゾン、イン!》」
 告げるマグナになのはがうなずく――再びのユニゾンを遂げ、彼女達もまた戦場へと飛び立った。

 

 


 

第115話

みんなまとめて全力全開!
〜本当の“最後の切り札ラストカード”〜

 


 

 

「このこのこのこのぉっ!」
「ちぃっ!」
 雷をまとった多数の弾丸が走り、青い炎が渦を巻く――それぞれにユニクロン軍の白いトランスフォーマーを薙ぎ払い、イクトとライカは背中合わせに身がまえた。
「まったく……ジュンイチってば、どこまで小細工してるんだか」
「まぁ、何年も前から準備を続けていたようだしな……仕込むための時間はタップリあったか」
 苦笑するライカの言葉にイクトが答えると、
「――――――っ!?」
 ライカの感覚が“それ”を捉えた。
「精霊力……こっちに来るっ!?
 しかもこれって……」
「柾木め……まさかアイツらまで呼んでいたのか……!?」
 イクトも気づき、声を上げ――次の瞬間、自分達の一撃から立ち直ろうとしてた敵編隊に追撃が襲いかかった。渦巻く突風と水流が白いトランスフォーマー達を地上に叩き落とし、地面から屹立した無数の錐が彼らを次々に打ち貫く。
 そして――
「ここにいましたか、二人とも」
「やっほー♪ ライカお姉ちゃん! イクトさん!」
「ようやく追いつきました!」
 ライカとイクトの元に鈴香とファイが合流。直下の廃ビルの屋上にはジーナも降り立ち、ユニクロン軍に対し戦闘態勢に入る。
 そして――
「スティンガァァァァァッ! インパクトォッ!」
 咆哮と同時、敵陣を貫く一撃――敵中を突破し、合流してくるのは青木だ。
「啓二さんも来たんですか!?」
「当たり前だろ。
 トランスフォーマーのメンツだって、軍属、局属、フリーランス問わずで呼ばれてるみたいだし……オレ達だけ“Bネット”組しか呼ばれない、ってことはないだろ」
 驚くライカにそう答え、青木は肩をすくめ、
「っつーワケで……呼ばれたのはもうひとり」
「何――――――?」
 付け加えられた一言にイクトが顔を上げ――直後、戦場を巨大な精霊力の渦が駆け抜けた。ユニクロン軍をまとめて飲み込み、粉砕し――
「…………やっと……オレの出番ってところかな?」
 静かにそう告げて――砲撃の主は身の丈ほどもある巨大な大鎌を肩に担いだ。
属性エレメントは“影”、ランクは“マスター”!
 退魔士兼ブレイカー、橋本崇徳、只今参上っ!」
 体勢を立て直そうとしているユニクロン軍に向け、橋本と名乗ったその青年は元気にそう言い放ち――
「あー、そういやアンタもいたのよね」
「というか……ミッドに来ること自体初めてなんじゃないですか?」
「ぜんぜんジュンイチお兄ちゃんに呼ばれなかったモンねー」
「やかましいわっ、そこっ!」
 ライカ、鈴香、ファイの言葉に思わず言い返す――それをスキと見たか、白いドランクロンが橋本を狙うが、
「はい、ご苦労さん」
 そう告げる橋本の力場によって、繰り出された一撃は難なく受け止められる――直後、防壁の展開が解除され、橋本は手にした大鎌、専用の精霊器“影天鎌えいてんれん”で白いドランクロンを叩き斬る。
「残念だね。
 対エネルギー系絶対防御のジュンイチ、対物理系絶対防御の青木ちゃんときて……オレの力場はその二つを併せ持つ完全絶対防壁なんだよ。
 もっとも――その代償として展開中はこっちからも攻撃できないから、いちいち防御を解いて攻撃しなきゃならないんだけどね」
 言って、橋本は影天鎌を肩に担ぎ、
「さて……次は誰?
 かかってきてもいいけど、その代わりいいことないよ――どーせ攻撃効かないんだから♪」
 その橋本の言葉を合図に、ユニクロン軍は一斉に橋本へと襲いかかり――
「あたし達を無視するたぁ――」
「いい度胸をしてるじゃないか!」
 ライカのカイザースパルタンとイクトの炎が、迫るユニクロン軍を薙ぎ払った。
 

「ハァァァァァッ!」
 気合と共に刃を一閃――イレインのブレードの一撃がシャークトロンを両断し、
「フッ――――!」
 鋭く息を吐き、ドゥーエは上空から襲いくる白いドランクロンを一瞬のカウンターで叩き斬る。
「オメガスプリーム!」
《了解イタシマシタ》
 そして、素早く後退した二人をオメガスプリームが援護――二人を狙って集まってきた白いトランスフォーマー達を、放たれた砲撃が薙ぎ払う。
「ったく、数だけは多いんだから!」
「ボヤくヒマはないわよ――来る!」
 だが、これで倒したのは何体になるのか――先の見えない戦いに思わずグチをこぼすイレインだったが、ドゥーエの言葉と同時に再び敵が集まってきて――

「フォースチップ、イグニッション!
 ダブル、エクスショット!」

 咆哮が響き――飛来したミサイルが敵群のド真ん中で炸裂する。
 そして――
「エクシゲイザー、トランスフォーム!」
 駆けつけてきた装甲車がロボットモードにトランスフォーム。エクシゲイザーはイレイン達の前に降り立った。
「エクシゲイザー!
 久しぶりじゃない!」
《ゴ無沙汰シテオリマス》
「イレインやオメガスプリームも、相変わらずだな!」
 声を上げるイレインやオメガスプリームに答えると、エクシゲイザーは周囲を見回し、
「ところで……お前らの母艦、どこで戦ってんだよ?
 すずかのヤツと合流したいんだけど……」
 どうやら、自分達の前に現れたのは偶然ではなく、相棒の所在を確かめるためらしい――エクシゲイザーの問いに、イレインとオメガスプリームは顔を見合わせ、
「何? すずかとヨリを戻しに行くワケ?」
《ふラレテモウ何年モ起ツトイウノニ、マダアキラメテイナインデスカ?》
「うるさいよ二人そろって!
 っつーか! ヨリ云々以前にイグニッションパートナーなんだから、アイツがいなきゃ全力出せないだろうが!」
 破局した――どころかカップル成立前に終わった――かつての相棒との関係をツッコんでくる二人に対し、エクシゲイザーが全力で言い返すと、
「まったく……二人ともそういう方向に話を持っていかないの。
 彼も困ってるじゃない」
 エクシゲイザーを援護する形でイレインとオメガスプリームをたしなめるのはドゥーエだ。間髪入れずにエクシゲイザーへと振り向いて、
「で……実際のところヨリを戻す気はあるの?」
「数秒前に自分の言ったセリフを思い出せぇぇぇぇぇっ!」
 エクシゲイザーは天を仰いで絶叫した。
 

「オォォォォォッ!」
 咆哮と共に力が暴風となって荒れ狂い、立ちふさがる者達を次々に粉砕する――フレイムアックスでユニクロン軍の白いトランスフォーマー達を薙ぎ払い、フレイムコンボイは戦場を我が物顔で突き進んでいく。
「やれやれ、相変わらずだな、フレイムコンボイ!」
「当然だ!
 正義も悪も、力で勝利をつかみ取る! それが、アニマトロスの掟だぁっ!」
 そんなフレイムコンボイを援護するのは恭也だ。彼の言葉に答え、フレイムコンボイはビーストモードにトランスフォーム。手近なシャークトロンにかみつき、力任せに振り回すと別のシャークトロンに思い切り叩きつける!
 と――
「出すぎだぞ、フレイムコンボイ!」
 頭上からフレイムコンボイに迫っていた白いサウンドウェーブを体当たりで吹き飛ばしたのは鳳凰型のビーストトランスフォーマー、フレイムコンボイの実兄ブレイズリンクスである。
「久々の実戦だからと、はしゃぎすぎるものではないぞ」
「フンッ、この程度、『実戦』の内にも入らんわ!
 兄者こそ、身重の知佳が不参加でパートナーがいないんだ。ムチャできる立場じゃなかろうが!」
「見くびるなよ、フレイムコンボイ!
 このブレイズリンクス、相棒たる知佳の分まで戦い抜いてみせるっ!」
 フレイムコンボイに言い返し、ブレイズリンクスの吐き放った凍気が、氷の槍を作り出してシャークトロンを1体串刺しにする。
「ならば存分に戦うがいい、兄者よ!」
 そして、フレイムコンボイもまた白いエルファオルファと激突。力押しではね飛ばし、
「さぁさぁ、次々にかかって来んかぁっ!
 我こそはアニマトロスのコンボイ、暗黒司令官フレイムコンボイ!
 討ち取って名を上げたくば、かかって来いッ!」
 

「フッ、相変わらずだな、フレイムコンボイは」
「そういう耕介、キミは大丈夫か!?」
 そんなフレイムコンボイの姿に苦笑するのはスピーディアのコンボイとそのパートナー。ライドスペースで肩をすくめる耕介に、ニトロコンボイはビークルモードで戦場を疾走しながらそう尋ねる。
「コンビを組むのは久々なんだ。オレのスピードについて来れない、なんていうのはナシだからな!」
「心配するなよ。
 これでも、毎日寮の食材の仕入れで国守山の峠道を攻めてる身の上だからな!」
 ロディマスコンボイの言葉に、耕介も不敵な笑みと共にそう答え、
「二人とも、そんなところで何やってんだ!?」
「早くしないと置いてくよーっ!」
 そんな二人に声をかけるのは、前を走るドラッグカー型のトランスフォーマー、ロディマスブラーとその相棒の陣内美緒だ。
「スピーディアのトランスフォーマーはスピードが命!」
「ボヤボヤしてると、見せ場全部もらっちゃうのだ!」
「そうはさせるか!
 いくぞ、耕介!」
「もちろんだ!」
 ロディマスブラーと美緒に答え、ニトロコンボイは耕介と共にさらにスピードを上げた。
 

「まったく……またユニクロンと戦うことになるとはな!」
「けど、おかげでまたコンビが組めたんだ――そこは、感謝しないとな!」
 一方、上空で白いノイズメイズやサウンドウェーブと斬り結ぶのは、ローターを分離させたジャイロソーサーをかまえたライブコンボイだ。彼の言葉に、真一郎がライドスペースで笑いながらそう答える。
 と――
「ライブコンボイ殿!」
「真一郎さん!」
 声を上げて合流してきたのはミッドチルダ公儀隠密局の忍者トランスフォーマー、メビウスショットだ。パートナーであるなのはの姉、美由希も一緒である。
「二人とも、久しぶり。
 元気にしてたかい?」
「えぇ。二人とも元気にやってましたよ」
「お気遣い、かたじけのうござる」
 尋ねる真一郎に美由希とメビウスショットが答えると、
「なら、二人とも少し手伝ってくれるかな?」
 そんな彼らに告げるのはライブコンボイだ。
「今からコイツらを突破して、あのユニクロンに一撃入れに行かなくちゃならないからね」
「そういうことでござるなら!」
「全力で協力します!」
 

「オラオラ、どいたどいた!
 安全第一! ひきつぶされたくないヤツは下がってな!」
 立ちふさがるユニクロン軍を、その巨体から来るパワーと重装甲で強引に突破――リンディをライドスペースに乗せ、メガロコンボイは敵陣の中を地響きを立てて突き進んでいく。
「相変わらず力任せね……」
「当然だ。
 このパワーこそが、ギガロニアのトランスフォーマーの持ち味なんだからな!」
 作戦も技もない、ただ突き進むだけ――強引極まりない戦いぶりに苦笑するリンディにメガロコンボイが答えると、
「それは聞き捨てならないな、メガロコンボイ」
 口をはさんでくるのは、彼らと同じく防衛ラインを突破してきたフレイムコンボイである。
「パワーは我らアニマトロスの掟!
 貴様らのようなデクの坊にはもったいないわ!」
「フンッ、言ってくれるな。
 突っ込むだけのデクの坊のクセしてなぁ!」
「ぬかせ!」
 返すメガロコンボイにフレイムコンボイが言い返し、両者はしばしにらみ合い――
「まったく、この二人ときたら!」
「今の状況をわかってるのかな、二人とも!」
 乱入してきたのはニトロコンボイとライブコンボイだ。両者の間を駆け抜け、その意識を散らす。
 そんな彼らに向け、周囲の白いトランスフォーマー達が一斉に火器を向け―― 
「ギャラクシー、キャノン!」
「ディバイン、バスター!」

 咆哮が響き、薙ぎ払われたのは白いトランスフォーマー達の方――障害を排除し、なのはとギャラクシーコンボイが合流してくる。
 さらに――
『ディバイン、テンペスト!』
 虹色の魔力が荒れ狂い、新たに出撃してきた白いドランクロンやラートラータを粉砕する――スバル達の宿るカイザーマスターコンボイもまた、フェイトやキングコンボイ、はやてやビッグコンボイと共になのは達を追って合流してくる。
「みんな! このままユニクロンに一撃入れる!
 一斉攻撃だ!」
『おぅっ!』
 そして、ギャラクシーコンボイの言葉に一同がうなずき、一斉にユニクロンに向けて飛翔する。
『フォースチップ、イグニッション!』
 そして、彼らが一斉にフォースチップをイグニッションし、
『デス、フレイム!』
 口火を切ったのはフレイムコンボイと恭也だ。アニマトロスのフォースチップをイグニッションし、両肩の隠し首が起動。本来の首と共に放った三連の炎がユニクロンを直撃し、
『ジェットミサイル!』
 そこへさらにライブコンボイと真一郎が地球のフォースチップをイグニッション。展開した隠しミサイルを発射。追撃をお見舞いする。
『メガロ、クラァッシュ!』
 今度はギガロニアのフォースチップをイグニッションしたメガロコンボイとリンディだ。展開されたメガロアックスを投げつけ、ユニクロンに叩きつけ、
『マッハショット!』
 スピーディアのフォースチップをイグニッションしたニトロコンボイと耕介が、マッハショットのビームをたて続けに叩き込む。
「みんな、相変わらずすごい……!」
 実質10年ぶりの共闘となる仲間達だが、その実力は鈍るどころかますます磨きがかかっている――思わず
フェイトが感嘆の声を上げると、
「何してるのさ、フェイト!」
 そんなフェイトに声をかけるのはキングコンボイである。
「フェイトだってコンボイのパートナーじゃないか。
 ほら、ボクらもいくよ!」
「う、うん!」
 告げるキングコンボイにフェイトがうなずき、
『ストーム、カリバー、ブレイカー!』
 ミッドチルダのフォースチップをイグニッション。キングコンボイの放った竜巻がユニクロンを直撃する!
「次――ビッグ!」
「任せろ!」
 間髪入れずにはやてとビッグコンボイ――はやてがシュベルトクロイツを、ビッグコンボイがビッグキャノンをかまえ、
「ビッグキャノン――GO!」
 イグニッションによってチャージされたエネルギーを解放。放たれた砲撃がユニクロンを直撃し、
「フレース――ヴェルグ!」
 はやてもまた、砲撃魔法で間髪入れずに追撃を叩き込む。
 そして――
「いけるな、なのは!」
「はい!
 スバル達は!?」
「いけます!」
「なめるな!」
「のーぷろぶれむ!」
 残るはギャラクシーコンボイとなのは、スバル、マスターコンボイ、こなたの5名だ。口々に告げてユニクロンに向けてかまえ、
『フォースチップ、イグニッション!』
「ギャラクシーキャノン、フルバースト!」
「イグニッション、パニッシャー!」
『ハイパー、ディバイン、テンペスト!』

 それぞれがフォースチップをイグニッション。一斉に必殺技を叩き込む!
「どんなもんだ!」
「倒せていなくても、少しは効いただろう!」
 すべての攻撃が文句なしの直撃――ダメージを確信し、声を上げるライブコンボイとニトロコンボイだったが、
「………………っ!
 みんな、アレ!」
 爆煙の向こうに見えてきたものに気づき、真一郎が声を上げた。油断なく身がまえる一同の前で爆煙が晴れていき、その向こうから姿を現したユニクロンは――
「ちょっと待て……!
 まったくの無傷だと……!?」
「いくら何でも、効いてなさすぎだろうが!?」
 ダメージを受けていない、どころではない。むしろさらに再生が進み、ボディがより巨大にふくれ上がっている――恭也のうめきにフレイムコンボイが声を上げると、
「ざまぁないな!
 どれだけ抵抗しても、もはや無意味なんだよ!」
 そう告げ、仲間達と共に姿を現したのはオリジナルのノイズメイズである。
「ユニクロン様はすでに本格的に再生を始めている!
 お前らがいくらあがこうが、もう止めることはできないんだよ!」
「もっとも――完全復活される頃には、貴様らは全員、我々に倒されているだろうがな!」
「言ってくれるな!」
「やれるもんならやってみろ!」
 サウンドウェーブやドランクロンの言葉にニトロコンボイやキングコンボイが言い返し、なのは達が改めて身がまえる。
 ノイズメイズ達もそれに応じ、配下の白い自分達と共に襲いかかり――
 

「しゃらくせぇっ!」
 

 咆哮が響くと同時、巻き起こった炎がノイズメイズ達を包み込む!
 そして――
「はいはいっ、コンボイさんとそのお仲間御一同!
 ここはムリせず一旦下がれ!」
 飛来したゴッドドラゴンの頭上から、ジュンイチがなのは達にそう告げる。
「だが、ユニクロンを放ってはおけない!
 全員が力を結集し、ユニクロンに立ち向かわなければ――」
「そういうセリフはちゃんと攻撃通してからにしろ!
 一斉攻撃叩き込んでも、傷ひとつつけられてないだろうが!」
 反論するギャラクシーコンボイに、間髪入れずに言い返す――ジュンイチの容赦のない、しかし否定のしようのない反撃に、ギャラクシーコンボイは思わず気圧されるが、
「だが……それでは、私達の何のために……!
 キミがこうして、私達を呼び集めてくれたというのに……!」
 それでも、退けない理由が彼にはあった。
 せっかく自分達を戦力としてあてにしてくれたというのに、倒すべき相手に傷ひとつ負わせられない。期待に応えられない無力感に、ギャラクシーコンボイは思わず拳を握りしめ――
 

「阿呆」
 

 そんなギャラクシーコンボイに、ジュンイチは容赦なくダメ出しをお見舞いした。
「うぬぼれんな。
 たとえ実力が一流でも、たかだかトランスフォーマー一個人――それを数に任せて呼び集めたところで、あの規格外のバケモノに通用するワケねぇだろうが」
「ならば、貴様はなぜオレ達を呼び集めた?
 オレ達の力を、必要としたからではないのか?」
「あぁ。
 確かにオレはあんた達を戦力として呼び集めたよ。ユニクロンに対抗するためにね」
 聞き返すフレイムコンボイに答え、ジュンイチは息をつき、
「けど……“まだ”それだけだ。
 オレはアンタ達をただ呼び集めた……“まだ”、それだけのことしかしていないんだ」
「『まだ』…………?」
 そのジュンイチの言葉に、リンディはメガロコンボイのライドスペースで眉をひそめ――
「なめたマネ――してくれるじゃないか!」
 しかし、リンディがそのことを問いただす余裕はなかった。ジュンイチの炎の渦を突破し、ノイズメイズがこちらに向けてビームを乱射してきたからだ。
「ちぃっ!」
 対し、ジュンイチもすぐに応戦する――ゴッドドラゴンの頭上から飛び立ち、爆天剣でノイズメイズのウィングトマホークを受け止める。
 しかし、間髪入れずに追撃――さらに飛び出してきたラートラータがジュンイチに対して斬りかかり、ジュンイチは素早く後退してゴッドドラゴンの頭上に降り立つ。
「詳しい説明は余裕ができればしてやるよ!
 とにかく今は――」
 いずれにせよ、ここは一度退かなければ体勢の立て直しようがない。なのは達に撤退を促そうとしたジュンイチだが、その動きが唐突に止まった。
「何だ…………!?」
 突然感じた違和感に、ノイズメイズ達の向こうでその威容を見せつけているユニクロンへと視線を向けた。
「どういう、ことだ……!?
 おい! お前ら、ユニクロンに何をした!?」
「あん?
 何って……決まっとるじゃろ。
 “ゆりかご”の動力を使って、ユニクロン様を復活させて――」
「そうじゃない!
 他にも何かしてるだろ!」
 答えかけたランページだが、ジュンイチは迷わずその言葉を否定した。
「でなきゃ、なんで――」
 

「ユニクロンが、瘴魔力を放ってるんだよ!?」
 

『――――――っ!?』
 ジュンイチのその言葉に、なのは達だけでなくノイズメイズ達も驚き、動きを止め――

 

 

 

 

 

 ノイズメイズ達の身体を、ユニクロンから伸びた触手が貫いた。

 

 

 

 

 

「な………………っ!?」
「ゆ、ユニクロン様……何を!?」
 背後から高速で迫った触手に、反応すらできなかった。突然の主からの一撃に、サウンドブラスターやエルファオルファがうめき――彼らを貫いた触手が動きを見せた。彼らの身体を貫いた、その先端がほどけ、ノイズメイズ達の身体に巻きついていく。
「こ、これは……!?」
「ユニクロン様……!?」
 ドランクロンやサウンドウェーブがうめくが、触手はさらに彼らの身体をからめ取っていく――そのまま、伸びてきた時と同様にすさまじいスピードでノイズメイズ達を引き寄せた。自らの身体に押しつけ、そのまま体内に飲み込んでしまう。
「な、何だったんだ、今のは……!?」
「………………アイツらの“力”が……消えた……!」
 突然のことに理解が追いつかず、ニトロコンボイが呆然とつぶやく――そんな彼に、ジュンイチはうめくようにそう答えた。
「……ノイズメイズ達の“力”を、アイツらの身体ごと飲み込んだ……
 あのバカ神……! 自分の部下達を……食いやがった……!」
「く、食った、って……!?」
「どういうこと……!?」
「オレが知るか!」
 ブイリュウやアリシアがゴッドドラゴンのコックピットから尋ねるが、ジュンイチは乱暴な物言いで言い放つ。
「どういうワケか、ユニクロンの“力”に瘴魔力が混じり始めてる……
 そのことが、ユニクロンに何らかの悪影響を与えてるとしたら……!」
「ち、ちょっと待って……!」
 ジュンイチは知らない。一発逆転を狙って“ゆりかご”にもぐり込んだザインが、ユニクロンの復活に巻き込まれ、吸収されてしまったことを。
 しかし、それでもかなり事実に近いところを言い当てたジュンイチの言葉は、一同の脳裏にイヤな予感しか呼び起こさなかった。できればこの仮説が外れていてほしいと絶望的な希望にすがりながら、マスターコンボイはジュンイチに声をかけた。
「つまり、何か……?
 ヤツは瘴魔力を発する何かを取り込み、その瘴魔力が体内を侵食し始めていて……
 その結果……」
 

「暴走している……とでも言うつもりか……!?」
 

「………………っ」
 そのマスターコンボイの言葉に、ジュンイチは答えない――しかし、悔しげに歯がみしたその姿が、彼の中の“答え”を雄弁に物語っていた。
「じ、冗談じゃないぞ!
 ただでさえ始末に終えないユニクロンが、さらに暴走しているだと!?」
「そんなの、どうやって止めろって言うのさ!?」
「暴走してるっつっても、パワーが増してるワケじゃない……
 それだけは、唯一の救いだけど……!」
 それでも、事態はさらに最悪の方向に動き出しているのは間違いない――声を上げるメガロコンボイやキングコンボイにジュンイチが答えると、
《………………?》
 最初にそれに気づいたのはプリムラだった。
「どうしたの? プリムラ」
《うん……
 なんか……ユニクロン、身体震えてない?》
『え………………?』
 プリムラの言葉に一同が声を上げ――
 

 ユニクロンの体内から、無数の白いトランスフォーマーが出撃してきた。
 

『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』
 今までとは比べ物にならないほどに大量の眷属が、ユニクロンの体内から飛び出してくる――あわてて迎撃するなのは達だったが、雪崩のように押し寄せる大量の敵機を彼女達だけで裁ききれるはずもない。その大半に突破を許し、撃ちもらした白いトランスフォーマー達は後方の仲間達にまるでイナゴのごとく殺到していく。
「しまった! みんなが!」
 このままでは仲間達のもとにあの新手が殺到することになる。なのはが思わず声を上げ――
「バカヤロー! 注意をそらすなっ!」
 そんななのはをジュンイチが突き飛ばす――直後、二人の間を別の個体の放ったビームが貫いた。
「す、すみません!」
「悪いと思ってんなら集中しろ!」
 礼を言うなのはに答え、ジュンイチはゴッドドラゴンの上に戻り、
「みんなを守りたいと思うなら――ここで一機でも多く叩き落とすぞ!」
「はい!」
 こうなったらやるしかない。告げるジュンイチに答えてなのはがレイジングハートをかまえ――アリシアはゴッドドラゴンのコックピットからジュンイチに声をかけた。
「ところで、ジュンイチさん」
「何だよ?」
ゴッドドラゴンの頭コックピットハッチの上からどいてくれない? 出られないんだけど」
「あ、ゴメン」


「クロスファイア――シュート!」
「レンジャー、バスター!」

 ティアナとかがみがそれぞれに叫んで一斉射撃――勢いを増したユニクロン軍に対し、彼女達フォワード陣は懸命の防戦を強いられていた。
「ちょっとちょっと!
 なんか、数がますます増えてきてないか、コレ!?」
「このままじゃ、押しつぶされる……!」
 しかし、圧倒的物量を前にしてはジリ貧だ。みさおの言葉にあやのがうめき――
「――――っ!
 ウェンディ、よけて!」
「え――――ぅわぁっ!?」
 ティアナの警告は間に合わなかった――白サウンドウェーブのビームをまともに喰らい、ウェンディが吹っ飛ばされ、
「ウェンディさん!
 ――――きゃあっ!?」
 声を上げるキャロにも、雨のように降り注ぐビームが次々に直撃する!
「みんな!
 マックスキング、みんなを守って!」
《了解しました》
 その光景に、ゆたかの指示でマックスキングが動く――押され始めたティアナ達を守ろうと前に出るが、そんなマックスキングにも容赦なく敵の攻撃が降り注ぐ!

「みんな…………っ!
 フォートレス! まだ来られないんですか!?」
〈すまない……!
 こちらも、敵の攻撃が激しくて……!〉
 そのマックスフリゲートの艦内――医務室で声を上げるシャマルに、ウィンドウに映るフォートレスが歯がみしてそう答える。
 そんな彼女の目の前では、意識のないヴィータがシャマルの治療を受けていて――
「…………シャマル……ヴィータを頼む」
「って、シグナム!?
 ムリよ! まだ応急手当をしただけだし、ビクトリーセイバーだって満足に動ける状態じゃないのよ!」
 シャマルに告げ、医務室を出て行こうとするシグナムに対し、シャマルはあわてて声を上げる。
「しかし、柾木達はまだ戦っているんだぞ!
 恭也だって、フレイムコンボイと共に戦っているというのに……!」
「だからこそよ。
 ヴィータちゃんほどではないにしても、今のあなたじゃ恭也さん達の足手まといになるだけよ」
「く………………っ!」
 告げるシャマルの言葉に、シグナムは悔しさをかみ締め、ウィンドウに映し出された戦いの映像へと視線を向けた。
 何もできない無力感が彼女の胸をしめつけ――
「…………大丈夫だよ」
 そんな彼女の手を取り、告げたのはヴィヴィオだ。
「きっと、大丈夫……
 なのはママ達は、絶対に負けないよ……」
 シグナムに、というよりもむしろ自分自身に言い聞かせるように告げると、ヴィヴィオはシグナムの見ていた戦いの映像へと視線を向けた。
「そうだよね……なのはママ……」
 

「コイツら……次から次に!」
「いったい何体いるの……!?」
「きっと、数に制限なんかないんだ……
 おそらく、ユニクロンの体内で無数に作り出されてる……!」
 一方、ディエチ達は他の誰とも合流できずに孤軍奮闘――うめくディエチの砲撃が敵を蹴散らし、答えるディードやオットーが生き残りを叩き落としていく。
 しかし、そんな彼女達も次第に押され始めていた。機体がボロボロで戦いに加われないセインを守りながら、ジリジリと後退させられていく。
 そして、別の場所でも――
「敵はゾロゾロ、こっちはボロボロ……!」
「オマケに、前回ユニクロンを倒したマスターコンボイ様のマトリクスも、もう使えないんだな!」
 こちらも戦況は絶望的――周囲に降り注ぐ攻撃に後退を余儀なくされ、ガスケットやアームバレットがうめく。
「せっかく、ジュンイチくんがユニクロンを倒すためにみんなを集めてくれたのに……!」
「それ以上に、相手の数が多すぎる……!
 生産能力だけなら、前回以上だ……!」
 別の場所で一般の武装隊員を守り、ユニクロン軍を迎撃するフィアッセとスタースクリームも苦戦を強いられていて、
「こんなところで……!」
「やられて、たまるかぁっ!」
 志貴やドレッドウィングもまた、懸命に戦線を支えていた。ドレッドバスターのライフルが敵を次々に打ち落とし、突破してきたものは志貴の能力“直死の魔眼”で急所を見切られ、斬り捨てられる。
「絶対に……あきらめない……!」
「ユニクロンに……この世界を好きにさせてたまるか!」
 ホクトやノーヴェもだ。ブレイクコンボイとギルティコンボイに分離し、間合いに入ってきた敵機を片っ端から撃墜していく。
「アイツら……!」
 その様子を、ディセプティコンの生き残りの3人は離れた場所から眺めていた。戦場を走る戦いの光を見つめ、バリケードが静かにつぶやく。
「おい、どうするんだよ、バリケード?」
「マスターギガトロン様達とも連絡取れないしよぉ……」
 尋ねるブロウルやボーンクラッシャーの言葉に答えることなく、バリケードはただ戦いの様子をジッと見つめ続けていた。
 

「………………っ……!」
 意識が戻り、視界が開ける――大破したマグマトロンのすぐ脇で、トーレは痛みに顔をしかめながら身を起こした。
「いったい……どうなったんだ……!?」
 意識を失っている間に、状況は大きく動いていた。現在周囲の管理局の部隊が何と戦っているのか、確認しようとトーレは目をこらして――
「チンク……!?」
 戦場のド真ん中で戦うチンクの様子を視界に捉えていた。
 

「ハァァァァァッ!」
 気合と共に咆哮し、ビームソードを振るう――すれ違いざまに白ノイズメイズを斬り捨て、チンクはさらに続けて白ドランクロンを斬り倒す。
「終われるか……!
 こんなところで、終わってたまるか……!」
 もう、何機倒したかも覚えていない――息を切らせて、チンクはさらに押し寄せてくる敵群をにらみつけた。
「私の……いや、私達姉妹の戦いは、まだ終わってはいない……!
 すべての結末を見届けるまで、倒れるワケにはいかないんだ、私は!」
 どれだけ絶望的な状況であろうと、それはあきらめていい理由にはならない――圧倒的な物量差にくじけそうになる自分を叱咤し、チンクはブラッドサッカーの翼を広げ、飛翔した。
 

「…………っ、のぉっ!」
 咆哮と共に炎を放ち、視界を奪われた敵に刃を一閃――爆天剣で白ノイズメイズを斬り捨てるジュンイチだったが、
「――――っ! 次――っ!」
 爆散する白ノイズメイズの向こうから、間髪入れずに白ドランクロンが襲いかかってきた。すくい上げるように繰り出された爪をとっさに受け止めるが、衝撃に耐え切れずにガードの上から吹っ飛ばされる。
「く………………っ!
 ゴッドドラゴン!」
 なんとか体勢を立て直し、地面に降り立ったジュンイチの指示で、ゴッドドラゴンが動く――放たれた火球が自分を弾き飛ばした白ドランクロンを直撃、爆砕するが、今度は地中から白ランページが飛び出し、ジュンイチを殴り飛ばす!
 先ほどまでに比べ、明らかにジュンイチの動きが悪くなっている。それはジュンイチも自覚しているのだが――
(……くそ……っ!
 トライゴッド戦はともかく……その前のチンク戦で血ぃ流しすぎたっ……! 出てった分の血が、まだ補充されてねぇ……!
 その上で大規模召喚なんぞすれば、そりゃ体力持っていかれるわな……!)
 そう。
 精霊力はゴッドドラゴンによって供給され、不足することなく大規模召喚を成功させることはできた――しかし、供給されたのはあくまで精霊力であり体力ではない。それまでの連戦のダメージから元々大きく消耗していたジュンイチの体力は、大規模召喚の制御という荒業によりすでに危険域にまで達しようとしていたのだ。
 それでも、追撃に来る白ランページの拳をかわし、空中に逃れるジュンイチだが、さらに飛来した白ラートラータや白サウンドウェーブがたて続けにジュンイチを吹っ飛ばす!
「ジュンイチさん!」
《なのは、集中して!》
 その光景に思わず声を上げるなのはだが――そんな彼女にもユニクロン軍は容赦なく襲いかかった。マグナの警告も間に合わず、飛び込んできた白エルファオルファが、彼女達を力任せに殴り飛ばす!
「なのはちゃんまで……!」
「はやて、油断するな!」
 ジュンイチだけではない。なのはの消耗も尋常ではない――あわてるはやてに警告し、ビッグコンボイははやてと対峙していた白エルファオルファを叩き落とし、
「みんな、聞いて!
 なのはちゃんもジュンイチさんも、今までの連戦で体力を使い果たしてる!
 誰でもえぇ――手の届く人達で、二人を援護するんや!」
「わ、わかりました!」
 はやての指示でスバルが動く――すぐそばにいたなのはを守り、白ランページを殴り飛ばし、粉砕する。
 そんな彼女にも、ユニクロン軍の白いトランスフォーマー達が襲いかかるが、
「ギャラクシーキャノン、フルバースト!」
 ギャラクーコンボイの砲撃がスバル達を救った。共に並び立ち、なのはを守ってユニクロン軍と対峙する。
「フッ、まさかまた、貴様とこうして並び立つことになるとはな」
「私も、再びこういうことになるとは思っていなかったさ」
 苦笑するマスターコンボイに答え、ギャラクシーコンボイは息をつき――
「だが……悪くない」
「だろう?」
 続くマスターコンボイの言葉にうなずき、彼らはユニクロン軍を迎撃すべく攻撃を開始する。
 そして――
「ジュンイチさん!」
「ギンガ……!?」
 ジュンイチに向けられた声は後方から――立ち上がり、振り向いたジュンイチのもとに、ロードナックル・シロとゴッドオンしたギンガが駆けてくる。
「ジュンイチさん、そんな体調で……!」
「下がって、少し休むっスよ!」
 さらに、ウェンディのエリアルスライダーも駆けつける――彼女と共にゴッドオンを解き、ギンガがフラフラのジュンイチに駆け寄り、助け起こす。
 そのままウェンディと二人でジュンイチを支え、後退しようとするが、
「まだ……ダメだ……!」
 そんな彼女達に対し、ジュンイチはハッキリと拒否の意志を示した。ギンガとウェンディの手を振り払うが、ヒザから力が抜け、その場にひざまずく。
 明らかに消耗している――しかし、ジュンイチの瞳には、強い闘志が宿ったままだ。
「まだ……下がれねぇ……!
 やることが……残ってるからな……!」
「やること……?」
 聞き返すギンガにかまわず、ジュンイチは手元に――腕に装着した“蜃気楼”の本体へと視線を落とした。
「まだか……!?
 まだなのか、“蜃気楼”……!?」
 だが、“蜃気楼”はまだ、ジュンイチの望む状態となってはいなかった。うめくジュンイチの意図がわからず、ギンガは思わず眉をひそめ――
「………………あれ?」
 ロードナックル・シロが気づいた。
「ナノマシンの反応がない……!?
 ナノマシンは、どこに……!?」
 “蜃気楼”を構成する主な要素であるナノマシンが、ジュンイチの周囲にほとんど残っていない。“蜃気楼”自体に生成システムが備わっているにもかかわらず――ワケがわからず、ロードナックル・シロがつぶやき――
「――――――っ!?
 来た!」
「ジュンイチさん、とにかく今は下がりましょう!
 何かやるにしても、準備はできてないんでしょう!?」
 そんな彼女達を狙い、ユニクロン軍が殺到してきた。ロードナックル・シロの言葉にギンガがジュンイチを促し――その瞬間、甲高い電子音が響いた。
 出所はジュンイチの腕の“蜃気楼”――次いで、“蜃気楼”自身がジュンイチに告げる。
〈お待たせしました、マスター。
 新規参戦メンバー全員の必要データ、収集完了〉

「え………………!?」
 “蜃気楼”の言葉にギンガが声を上げ――気づいた。
 なぜ、ジュンイチの周囲から“蜃気楼”のナノマシンの反応がしなかったのか。
 なぜ、彼は消耗した身体に鞭打ってでも戦場に留まり続けたのか。
 彼は待っていたのだ。
 戦場全体に散らした“蜃気楼”のナノマシンが、自分が召喚によって呼び寄せた仲間達のデータを収集し終えるのを。
「待っていたぜ……この、瞬間を!」
 そして、“蜃気楼”の報告は、ジュンイチの闘志をさらに燃え上がらせていた。“時”が来たことを悟り、不敵な笑みと共に立ち上がる。
「待たせたな、みんな」
『………………っ?』
「反撃準備――完了だ!」
 言い放つジュンイチの意志を受け、彼の腰のデッキホルダーが1枚のカードを撃ち出した。それを手にし、ジュンイチはその絵柄を見せつけるようにかまえた。
 そこに記されたのは――虹色に塗られた“∞”の一文字。
「すべての手札がそろった今――もう手加減する理由はねぇ!」
 そして、その“∞”のカードを“蜃気楼”に装填そうてんし、
「見せてやるぜ。
 これが、“蜃気楼”の――いや!」

 

「オレ達みんなの、全力全開だ!」

 

〈Fulldrive!〉

 

 ジュンイチの言葉を合図に、“蜃気楼”がカードを読み込み、告げる――直後、その両サイドのカバーが開かれた。
 拳の側に向けて内部を露出させた“蜃気楼”、そのカバーの奥から光があふれ――全方位に向けて解き放たれる!
 それは、フルドライブの発動によって“蜃気楼”が急速に、そして大量に生成を開始したナノマシン――ジュンイチの周囲で渦を巻いたソレは、勢いよく全方位に解放された。急速に周りへと――それこそクラナガンの戦場全域をカバーするかのように散布されていく。
 これこそが、“蜃気楼”のフルドライブモード。名づけて――

 

――“究極蜃気楼エターナル・エヴォリューション・テリトリー”――

 

「こ、これは……!?」
「ジュンイチさんの……“蜃気楼”の、ナノマシンの光……!?」
 “蜃気楼”のフルドライブモード発動により、周囲に解放されたナノマシンは各地で戦う仲間のもとへ――自分達の周囲で舞い散るナノマシンの輝きに、ディエチやディードがつぶやいて――
「………………っ!?
 何だ、コレ……!?」
 その変化に最初に気づいたのはオットーだった。自分の機体、クラウドウェーブに起きた異変に、いつもは感情を表に見せない彼女が珍しく起用学の声を上げる。
 なぜなら――
「クラウドウェーブの出力の制御効率が……いきなり向上した……!?」
 

「え………………?」
 変化が起きたのはトランステクターの機体制御だけではない。
 突然、クラールヴィントを介してヴィータとシグナムにかけている治癒魔法の治癒効率が爆発的に向上した――驚愕し、クラールヴィントのシステムを確認したシャマルは、クラールヴィントの扱っているデータ処理量が増大していることに気づいた。
「何…………?
 クラールヴィントのサーチ範囲が、いきなり広がった……!?」
 それがもっとも顕著に出ているのがサーチ関係だ。思わず声に出してつぶやき――すぐに自分のその認識が間違っていたことに気づく。
「ううん、違う……
 サーチの中心点が複数……これは……」
 

「他のみんなとのサーチデータが、リンクしている……!?」

 

「これが、“究極蜃気楼”の能力さ」
 腕に装着した“蜃気楼”は未だナノマシンを吐き出し続けており、周囲で激しく渦を巻く――ナノマシンの輝きに照らし出されながら、ギンガやウェンディに支えられたジュンイチは不敵な笑みを浮かべてそう告げた。
「フルドライブモードを発動した“蜃気楼”のナノマシンは、その影響圏内にいるすべての味方のデバイス、艦船のような電子頭脳を持つすべての存在に取り付き、システムをリンク。オレの持つ本体を中心とした巨大な並列分散処理ネットワークを形成する。
 そして、今まで蓄積されてきたオリジナルの運用データ、さらにオレがコピーデバイスを使って蓄積してきた別視点での運用データ――それらを統合し、さらに並列分散処理ネットワークによって魔導プログラムの処理能力を大幅に引き上げられたみんなのデバイスはその性能を飛躍的に高め、使用者の能力を極限まで引き出すことが可能となる。
 それと同様に、トランステクターやトランスフォーマーのみんなも、それぞれの運用データの“イイトコ取り”ができるようになり、やっぱりボディスペックを劇的に引き上げることが可能となる」
「そうか……
 レイジングハートで殴ったり、ジュンイチさんがオリジナルの持ち主とまったく違う形でコピーデバイスを使っていたのは……」
「本来のマスターの運用方法とは違う運用方法、そのアプローチのデータを得るため……」
「そういうこと。
 今まで見せてきた、サードモードまでの形態は、全部この能力を使うための、データ収集用の形態でしかなかったんだよ」
 つぶやくなのはやギンガの言葉にジュンイチが答えると、
「ち、ちょっと待つっス!」
 気づき、声を上げたのはウェンディである。
「『使い手の能力を極限まで引き出す』って……
 それじゃ、まるで……」
「そう。
 その特性はそのものズバリ、オレが今まで作り出してきたデバイスシリーズ――“最後の切り札ラストカード”に通じるものだ」
 ウェンディの指摘をあっさりと認め、ジュンイチは笑みを浮かべて告げた。
「…………味方が持つ、すべての戦力を“最後の切り札ラストカード”に進化させる……
 それが、“蜃気楼”の持つ、本当の力だ」
 

「すっげぇっ!
 デバイスだけじゃねぇ……オレ達の武器までパワーアップしてやがる!」
「身体もすっごく動きやすいんだな!」
 ジュンイチの“究極蜃気楼”の発動により、戦場に散った仲間達が次々にパワーアップ――自分達の能力の上昇に、ガスケットやアームバレットが歓喜の声を上げる。
「とびっきりの――散弾!」
 上空でも、イリヤによる反撃開始――ルビーから放たれた魔力弾の雨は、今まで以上の威力をもって白いトランスフォーマー達を蹴散らしていく。
「すごい……!
 技術のぜんぜん違うルビーまで、パワーアップしてる……」
《まぁ、本体をいぢるワケではないですからねぇ……》
 イリヤに答えるルビーだが、その声はどうにもテンションが低くて……
「どうしたの?」
《いえ……いきなり大量の情報を流し込まれたので、ちょっと“情報酔い”を……おぇっぷ》
「吐くものないでしょ、ルビーには」
 

「“究極蜃気楼”の本質は、リンクさせた電子システム同士で作り上げる並列分散ネットワーク――すなわち、ネットワークに組み込む電子システムが多ければ多いほどその効果が上がる。
 オレがみんなを呼び集めたのは、単なる頭数の確保だけじゃない。みんなの力を借りて、“究極蜃気楼”の能力を極限まで高めるって意味もあったんだよ」
 ジュンイチの発動した“究極蜃気楼”の効果で仲間達が次々にパワーアップ。あちこちで反撃の狼煙が上がる――ナノマシンの再散布を終え、ジュンイチはそう告げて不敵な笑みを浮かべ、
「そして――それは“オレ達自身も例外じゃない”。
 さすがに有機システムであるオレの脳みそまでは組み込めなかったけど、ゴッドドラゴンやオレの“装重甲メタル・ブレスト”にも電子システムは使われてるんだよ!」
 ジュンイチの言葉に、ゴッドドラゴンが高らかに咆哮する――相棒のやる気を感じ取り、ジュンイチもまた己の“力”を高めていく。
「っつーワケで、こっからはオレ達も全力全開だ!
 いくぜ、ブイリュウ! ゴッドドラゴン!」
「うんっ!」
 

「エヴォリューション、ブレイク!
 ゴッド、ブレイカー!」

 ジュンイチが叫び、ゴッドドラゴンが翔ぶ。
 まず、両足がまっすぐに正され、つま先の2本の爪が真ん中のアームに導かれる形で分離。アームはスネの中ほどを視点にヒザ側へと倒れ、自然と爪もヒザへと移動。そのままヒザに固定されてニーガードとなる。
 続いて、上腕部をガードするように倒れていた肩のパーツが跳ね上がり水平よりも少し上で固定され、内部にたたまれていた爪状のパーツが展開されて肩アーマーとなる。
 両手の爪がヒジの方へとたたまれると、続いて腕の中から拳が飛び出し、力強く握りしめる。
 頭部が分離すると胸に合体し直し胸アーマーになり、首部分は背中側へと倒れ、姿勢制御用のスタビライザーとなる。
 分離した尾が腰の後ろにラックされ、ロボットの頭部が飛び出すと人のそれをかたどった口がフェイスカバーで包まれる。
 最後にアンテナホーンが展開、額のくぼみに奥からBブレインがせり出してくる。
「ゴッド、ユナイト!」
 ジュンイチが叫び、その身体が粒子へと変わり、機体と融合、機体そのものとなる。
 システムが起動し、カメラアイと額のBブレインが輝く。
「龍神合身! ゴォォォッド! ブレイカァァァァァッ!」
 

「龍の力をその身に借りて、神の名の元悪を討つ!
 龍神合身ゴッドブレイカー、お久しぶりに只今見参!」

 合身を完了し、あふれ出すエネルギーで周囲がスパークする中、ゴッドブレイカーそのものとなったジュンイチが高らかに口上を述べる。
「あれが……柾木ジュンイチの最強の力……!?」
「そうだよ。
 ゴッドドラゴンのロボットモード……お兄ちゃんが“融合ユナイト”した、ゴッドブレイカー……」
 ジュンイチとゴッドドラゴンの“合身”によって完成したのは、ギガロニア組に勝るとも劣らない青い巨体――感嘆の声を上げるマスターコンボイにスバルが答えると、
「――――――って、来たよ!」
 そんな彼らの元へと、白いトランスフォーマー達が殺到してくる――こちらに向けて一斉射撃。無数の閃光がジュンイチや声を挙げたスバル、その後ろのコンボイ達を狙うが、
「させるかよ!」
 そうは問屋が卸さない――ジュンイチが吼えると同時、ゴッドブレイカーの両肩前面の装甲が開いた。露出したエネルギー制御装置が作動し、
「ゴッド、プロテクト!」
 周囲に展開されていたゴッドブレイカーの力場が前面に集結。すべてのビームを受け止める!
 そして――力場は難なくビームを“撃ち返した”。飛来した軌道をそのまま逆に押し返されたビームは、逆にこちらの弾幕としてユニクロン軍へと降り注ぐ!
「お次は、こいつだ!」
 今度はジュンイチの反撃の番――頭上にかざしたゴッドブレイカーの右腕の周囲で、ジュンイチの“力”がまるでドリルのように渦を巻き、
「クラッシャー、ナックル!」
 ジュンイチがその右腕を“発射”した。撃ち出された右腕は敵陣に突入。“力”のドリルミサイルと化してユニクロン軍のトランスフォーマー達を蹴散らしていく!
 

「す、すごい……!
 アレが、ジュンイチくんの、本当の力……!」
 撃ち放たれた一撃は、その巨体に恥じない圧倒的な力を見せつける――ジュンイチのクラッシャーナックルがユニクロン軍を蹴散らすその光景に、フィアッセはスタースクリームのライドスペースで感嘆の声を上げ――
「となれば、我々も負けていられないな」
 その光景に更なる闘志を燃やすのはスタースクリームだ。
「フォースチップ、イグニッション!
 スターブラスター!」

 そして、フォースチップをイグニッション。両足の砲塔“スターブラスター”を展開し、
「アイツばかりにいいところを持っていかれてたまるか!
 バーテックス、ブラスト!」
 放たれた砲撃が、前方のユニクロン軍の中央に撃ち込まれ、大爆発を巻き起こす。
「コンボイどもに負けてられるか!」
「オレ達もいくぞ!」
 さらに、別の場所では大帝達も大暴れ――口々に叫び、ギガストームとオーバーロードがユニクロン軍に向けて突撃し、
『フォースチップ、イグニッション!』
「ギガ、スパイラル!」
「エネルゴン、クレイモア!」

 それぞれの必殺技が、ユニクロン軍のトランスフォーマー達を力任せに蹴散らしていき、
《スカイクェイク!》
「アルテミスか!」
 スカイクェイクの元には、負傷者の手当てに区切りをつけたアルテミスが駆けつけていた。スカイクェイクとアルテミス、二人が並び立ち――
「《ユニゾン、イン!
 覇道大帝、デスザラス!》」

 二人の身体が、“力”がひとつに――デスザラスへの転生を遂げ、ユニクロン軍と対峙した。
 

「フォースチップ、イグニッション!
 ギャラクシーキャノン、フルバースト!」

 咆哮と共に、フォースチップの力を宿したギャラクシーキャノンが火を吹く――ギャラクシーコンボイの砲撃が、前方のユニクロン軍を薙ぎ払う。
「すごいな……
 我々の武装も、威力が上がっている……!?」
 その威力は自分の想像以上のもの――振り向き、ゴッドブレイカーへと合身したジュンイチに告げる。
「ありがとう、ジュンイチ。
 これで我々も思い切り戦える」
「礼は言葉より戦果でほしいトコなんだけど?」
 しかし、礼を言うギャラクシーに対し、ジュンイチはあっさりと肩をすくめてそう答える。
「オレはパワーアップさせてあげる。アンタ達はそのパワーで戦果を出す――等価交換ってワケだよ。do you understand?」
「フッ、了解だ」
 ジュンイチの言葉に苦笑し、ギャラクシーコンボイは傍らのなのはに尋ねる。
「なのは、いけるか?」
「当然です!」
《なんたって、私がユニゾンしてるんだからね!》
 傷が癒えておらず、マグナとのユニゾンが必須ではあるものの、戦うことはできるのだ。この状況で手をこまねいているワケにはいかない――ギャラクシーコンボイの問いになのはは力強く答え、彼女の“中”からマグナもそう答える。
「あたし達もいけます!」
「そういうこと!
 そうでしょ? マスターコンボイ」
「当然だ」
 スバル達もやる気は十分だ。それぞれに名乗りを上げて――
「総司令官! お久しぶりです!」
「みんな、ヤッホー♪」
 そんな彼らの直下に駆けてきたのはかつての部下、獣神ライガージャックとそのパートナー、真祖の吸血鬼アルクェイド・プリュンスタッドである。
「ライガージャックさん! アルクェイドさん!」
「オレ達もいるぜ!」
 声を上げるなのはに答えたのはクロノを背に乗せたビークルモードのソニックボンバーだ――さらにブリッツクラッカーと晶、ロディマスブラーと美緒、ブレイズリンクス、メビウスショットと美由希、メトロタイタンまでもが次々に合流してくる。
 だが――このメンツが合流してきてくれたのはありがたい。ギャラクシーコンボイは一同を見渡し、告げる。
「よぅし……!
 いくぞ、みんな――合体リンクアップだ!」
『了解っ!』
 

『ニトロコンボイ!』
 耕介とニトロコンボイが叫び、背中のニトロブーストで勢いよく上昇、頭上にマッハショットを放り投げ、
『ロディマス、ブラー!』
 次いで美緒とロディマスブラーの叫びが響き、ロディマスブラーはビークルモードのドラッグカーにトランスフォーム、両腕にあたる後輪の駆動ユニットが分離する。
 そして、両者が交錯し――
『リンク、アップ!』
 4人の叫びと共に、ロディマスブラー本体がニトロコンボイの背中に、そして分離した駆動ユニット部分が両足の外側に合体する。
 ロディマスブラーの両足にあたる前輪部分が二つに分かれて展開され、両肩をカバーする追加装甲となり、落下してきたマッハショットを手にした4人が高らかに名乗りを上げる。
『ロディマァス、コンボイ!』
 

『フレイムコンボイ!』
 恭也とフレイムコンボイが叫び、フレイムコンボイはビーストモードで大地を疾走し、
「ブレイズ、リンクス!」
 次いでブレイズリンクスの叫びが響き、ビーストモードのブレイズリンクスがフレイムコンボイを追走。胸部装甲が分離し、合体用のジョイントが露出する。
 そして――
『リンク、アップ!』
 ブレイズリンクスがフレイムコンボイの背中に合体、フレイムコンボイがロボットモードへとトランスフォームする。
 そして、ロボットモードとなったフレイムコンボイの胸にブレイズリンクスの胸部装甲が合体。高らかに名乗りを上げる。
『ブレイズ、コンボイ!』
 

『ライブコンボイ!』
 真一郎とライブコンボイが叫び、両腕のアンカーフックとジャイロソーサーを分離させ、両腕を折りたたんだライブコンボイは上下が反転。腰から展開された両足に拳が飛び出し、上半身となる。
『メビウスショット!』
 次いで美由希とメビウスショットの叫びが響き、メビウスショットは上半身を後方に折りたたみ頭部を収納、下半身となる。
 そして、両者が交錯し――
『リンク、アップ!』
 ライブコンボイの変形した上半身とメビウスショットの変形した下半身が合体。両肩にアンカーフックとジャイロソーサーが合体し、肩アーマーとなる。
 最後に、ボディの中から新たな頭部が現れ、高らかに名乗りを上げる。
『メビウス、コンボイ!』
 

『メガロコンボイ!』
 リンディと共に咆哮し、メガロコンボイはボディを変形、両手、両脚の順に四肢を後方に折りたたんで身体をブロック状に変形させ、
「メトロタイタン!」
 次いでメトロタイタンが変形、両腕を左右にまっすぐに伸ばすとボディ上部が展開。二つに分かれた胸部を肩とした、より巨大な両腕となり、胸部中央を空けた大型のボディを形成する。
 そして両者が交錯し――
『リンク、アップ!』
 メガロコンボイがメトロタイタンの胸部スペースに合体、固定されて一体化する。
 メガロコンボイとメトロタイタン、二人のシステムがリンクし、リンディを加えた3人で高らかに名乗りを上げる。
『タイタァン、コンボイ!』
 

『キングコンボイ!』
 フェイトとキングコンボイが叫び、キングコンボイが四肢のパワードデバイスを分離させると下半身を展開。両足が新たな両腕に変形し上半身を形成する。
『ブリッツクラッカー!』
 次いで晶とブリッツクラッカーの叫びが響き、ブリッツクラッカーが上半身のみをビークルモードに変形し、さらにそれを後方に展開。こちらは下半身を形成する。
 そして、両者が交錯し――
『リンク、アップ!』
 4人の叫びと共に、キングコンボイの変形した上半身とブリッツクラッカーの変形した下半身が合体する!
 最後に、後方に展開していたブリッツクラッカーの上半身、ビークルモードの機首部分が背中に合体、フライトユニットとなり、4人が高らかに名乗りを上げる。
『ブリッツ、コンボイ!』
 

「よし、私が道を切り拓く!
 その道をみんなで広げて突撃するんだ!」
「了解だ!」
 ギャラクシーコンボイの言葉にニトロコンボイ改めロディマスコンボイが答え、合体を遂げた面々がかまえる――そして、ギャラクシーコンボイはライガージャックとアルクェイド、ソニックボンバーとクロノ、なのはへと向き直り、
「よし――我々はリンクアップの切り替えで、敵防衛ラインに連続攻撃をしかける!
 まずはライガージャック、アルクェイド! お前達からだ!」
「了解っ!」
「はーい♪」
 

『ギャラクシー、コンボイ!』
 なのはとギャラクシーコンボイが叫び、ギャラクシーキャノンを分離させたギャラクシーコンボイが右腕を後方にたたむ。
『ライガー、ジャック!』
 次いでアルクェイドとライガージャックの叫びが響き、ライガージャックは両腕を分離、両足を折りたたむとそこに分離していた両腕が合体し、巨大な右腕に変形する。
 そして、両者が交錯し――
『リンク、アップ!』
 4人の叫びと共に、右腕となったライガージャックがギャラクシーコンボイに合体する!
 背中に分離していたギャラクシーキャノンが合体。最後にライガージャックの変形した右腕に拳が作り出され、4人が高らかに名乗りを上げる。
『ライガァァァァァ、コンボイ!』
 

『フォース――』
『――チップ!』
「イグニッション!」

 ライガーコンボイとなのは、ライガージャックとアルクェイド、そしてフェイト――3組の声が響き、飛来したアニマトロスのフォースチップがライガーコンボイの右腕のチップスロットに飛び込む。
 そして、右腕のプラティナムクローを展開したライガーコンボイはそれを天高く掲げ――その全身がフォースチップの“力”の輝きに包まれる!
 渦巻くエネルギーに導かれ、浮き上がったライガーコンボイは一気に敵陣へと突っ込み、
『ライガー、グランド、ブレェイク!』
 渾身の力で振るった一撃から放たれたエネルギーの渦が、ユニクロン軍の中で荒れ狂う!
「次! ソニックボンバーとクロノ!」
「はいよ!」
「了解!」
 

『ソニックボンバー!』
 クロノとソニックボンバーの叫びが響き、クロノをライドスペースに乗せたソニックボンバーはビークルモードへとトランスフォーム。そこから機首を後方にたたみ、主翼のバルカンシステムも展開。機体下部の装甲を展開して合体ジョイントを露出させる。
『ギャラクシー、コンボイ!』
 次いでなのはとギャラクシーコンボイが叫び、なのはをライドスペースに乗せたギャラクシーコンボイがギャラクシーキャノンを分離。その両足にソニックボンバーの翼から分離した火器が合体する。
 そして、両者が交錯し――
『リンク、アップ!』
 4人の叫びと共に、バックユニットとなったソニックボンバーがギャラクシーコンボイに合体する!
 最後にソニックボンバーの胸部装甲がギャラクシーコンボイの胸部に装着され、4人が高らかに名乗りを上げる。
『ソニック、コンボイ!』
 

「ギャラクシーキャノン!」
 ソニックコンボイの言葉に、リンクアップの際分離していたギャラクシーキャノンが飛来。キャノンモードとなってソニックコンボイの前に降下する。
 そして、ソニックコンボイはそのトリガーに両手をかけ、
『フォースチップ、イグニッション!』
 なのは、ソニックボンバー、そしてクロノ――彼らと共に咆哮、背中のギャラクシーキャリバーとギャラクシーキャノン、双方に同時にフォースチップをイグニッションする。
 そして、ソニックコンボイは全ての火器を展開し、
『ギャラクシーキャリバー、フルバースト!』
 放たれた多数の閃光がひとつにまとまり、巨大な閃光となって陣容の乱れたユニクロン軍に追撃を叩き込む!
「よし、いくぞ、みんな!」
『おぅっ!』
 ギャラクシーコンボイからライガーコンボイ、そしてソニックコンボイへ――連続リンクアップから繰り出された必殺技は敵中を大きくえぐり抜いた。メビウスコンボイの言葉に一同がうなずき、一気に突破を試みる。
 あわてて防衛ラインをふさごうと白いトランスフォーマー達が集まってくるが、ジュンイチの“究極蜃気楼”でパワーアップし、さらにリンクアップまで遂げた彼らを止められるはずもない。寄ってくるそばから次々に撃墜されていく。
「では、まずはオレ達から行かせてもらおうか!
 いくぞ、リンディ! メトロタイタン!」
「えぇ!」
「おぅっ!」
 そして、一気にユニクロンを射程に捉える――告げるタイタンコンボイの言葉にリンディやメトロタイタンが答え、

『フォースチップ、イグニッション!
 タイタン、ノヴァ!』

 ギガロニアのフォースチップをイグニッション。全身をエネルギーで包み込んだタイタンコンボイの体当たりが、ユニクロンの腹部に直撃する!
 もちろん、相手は現在の状態でも数百メートル級の巨体だ。タイタンコンボイといえど、腹部の装甲の一角にヒビを入れるのが精一杯だが――
「斬撃組3組!
 やっちまいな!」
『おぅっ!』
 タイタンコンボイに答え、突撃するのはロディマスコンボイ、メビウスコンボイ、ブリッツコンボイだ。素早くユニクロンの懐、タイタンノヴァの痕へと襲いかかり、

『フォースチップ、イグニッション!』

『ロディマス、ディバイディング、スラァッシュ!』
『メビウス、クロスブレイク!』
『スターダスト、カリバー、ブレイカー!』

 彼らがたて続けに叩き込む必殺の斬撃が、ユニクロンの腹部の亀裂をさらに広げる!
 さらに、

『フォースチップ、イグニッション!』

『ヴァニシング、スマッシャー!』
『ビッグキャノン、GO!』

 ブレイズコンボイと恭也、ブレイズリンクス、そしてはやてとビッグコンボイの咆哮が響く――直後、放たれた必殺の砲撃が、ユニクロンの腹の傷に叩きつけられる!
 が――
「ダメだ……!
 あと一手……!」
 かなりもろくなった装甲だが、破るには至らない――思わず顔をしかめるフェイトだったが、
「どいてろ!」
 そんな彼女の脇を抜け、突撃するのはジュンイチの宿るゴッドブレイカーだ。
「そこまでヒビ入れてくれれば――十分だ!」
 そう告げて――ジュンイチの、ゴッドブレイカーの全身から“力”が炎となってあふれ出した。
 炎は掲げた右手に収束。弾け飛ぶように周囲に散ると術式陣を描き出し、
「久しぶりの出番だぜ――出て来い!
 召喚サモン――」

「炎帝鬼――フレイム・オブ・オーガ!」

 ジュンイチの言葉と同時、新たな炎があふれ出す――術式陣から噴き出したその炎が人の形を作り出し、炎の鬼神となって顕現する。
 いつか青木が戦いの中で呼び出したダイナスト・オブ・キマイラと同じ、“炎”の精霊獣――炎帝鬼フレイム・オブ・オーガである。
「いけぇっ! オーガ!」
《おぅっ!》
 そして、ジュンイチの号令でオーガが飛翔、炎を収束させた右の拳をユニクロンの腹の傷に叩きつけ、
「追い討ちいきますっ!
 ブレイジング、スマッシュ!」
 炎をまとったジュンイチの蹴りが、トドメの一撃となってユニクロンの装甲を打ち砕く!
「今だ!
 やったれ、スバル! こなた! マスターコンボイ!」
『了解!』
 ジュンイチの指示で動くのはスバル達だ。一気にユニクロンの装甲の割れ目へと飛び込み、
『ハイパー、ディバイン、テンペスト!』
 至近距離からハイパーディバインテンペストを叩き込み、大爆発を巻き起こす!
「よぅし!
 全員、あの傷に集中砲火だ!」
『了解!』
 間髪いれず、ソニックコンボイの指示で全員がユニクロンの腹部に攻撃開始。周囲のトランスフォーマー達や魔導師達も加わり、無数の火線がユニクロンの腹部に降り注いでいく。
 そんな中には当然なのは達もいて――
「ディバイン、バスタァァァァァッ!」
「プラズマ、スマッシャー!」
「フレース、ヴェルグ!」
「ヴォルテック、ブラスター!」

 なのは、フェイト、そしてはやてとアリシア――4人の一斉砲撃が、ユニクロンの腹部で大爆発を巻き起こす!
 そして――
「ソニックコンボイ!」
 ソニックコンボイに合流、告げるのはジュンイチだ。
「オレを使え!」
「キミを……!?」
 ジュンイチの言葉に一瞬首を傾げるが――すぐに彼の言いたいことに気づいた。
「よし……いいだろう。
 いくぞ!」
「おぅともよ!」
 

「ソニックコンボイ!」
「ゴッドブレイカー!」
『爆裂武装!』

 ソニックコンボイとジュンイチの咆哮が響き、それぞれが飛翔――ソニックコンボイの前方へと先行したゴッドブレイカーが、ジュンイチを宿したままゴッドドラゴンへと変形する。
 と、ゴッドドラゴンの下半身が180度回転。前後逆になるとリアスカートが左右に展開。空いた空間を通す形で両足がゴッドドラゴンの胸側に折りたたまれる。
 そして、その後方に追いついてくるソニックコンボイ――ゴッドドラゴンの後部、折りたたまれた大腿部の内部からせり出してきたトリガーグリップを握り、システムをリンクさせる。
『爆裂武装! ドラゴニックバスター!』
 両者のシステムが同調――竜の上半身を模した砲台となったゴッドブレイカージュンイチをソニックコンボイがかまえ、
『フォースチップ、イグニッション!』
 二人の叫びに呼応し、セイバートロン星のフォースチップが飛来した。ソニックコンボイのチップスロットにセットされ、彼を通じてドラゴニックバスターへとその“力”が流れ込んでいく。
 そのエネルギーはゴッドドラゴンの頭部に集中。口腔内に生み出された“力”の塊が見る見るうちにそのサイズを増していく。
「全員離れろ!
 巻き添えをくうぞ!」
 そして、ソニックコンボイの言葉に一同が散開。ユニクロンの腹部の傷へと狙いを合わせ――
『ドラゴニックバスター、グランドフィニッシュ!』
 トリガーを引き――巨大な火球が撃ち出された。ゴッドドラゴンの口から放たれたその一撃が、ユニクロンを直撃する!
「へっ、手ごたえあったぜ!」
 一撃一撃がそれぞれの全力を込めた必殺技。しかもジュンイチの“究極蜃気楼”によって強化済み――ソニックコンボイの背中でソニックボンバーが合体したまま声を上げ、ジュンイチも元のゴッドブレイカーに戻り、効果のほどを確かめようと爆煙をにらみつける。
 彼だけでなく一同が注視する中、爆煙が少しずつ晴れていき――そこには、腹部を大きく抉られたユニクロンの姿があった。
 もっとも、彼の巨体からすれば微々たるもの――しかし、先ほどは攻撃がまったく通らなかったことを考えると破格の進歩と言えるだろう。
「よしっ……! 攻撃は通ってる……!
 これならいける!」
 未だ撃破には程遠いが、ユニクロンには確実にダメージを刻んでいる。思わず拳を握りしめ、なのはがつぶやいて――

 

 

「………………ダメだ」

 

 

 ポツリ、とそうつぶやいたのはマスターコンボイだった。
「確かにダメージは与えられているが……これでは、撃破には届かんっ……!」
「そんなことないよ!
 このままみんなで力を合わせていけば……!」
 マスターコンボイの言葉に反論するスバルだったが、
「それは……“こちらが受けるダメージを計算に入れた上で言っているか”?」
「え………………?」
 返すマスターコンボイの言葉に、一瞬思考が停止した。
「よもや貴様、このままユニクロンが何もしないでいてくれると……そう考えてはいないか?
 ヤツは未だ身体の再生に専念していて、攻撃はもっぱら眷属のトランスフォーマー達に任せきりになっているが……このままではいずれ動き出す。
 そして……ヤツがその気になった時、それを止められるだけの力はこちらにはない。
 ヤツの一撃は、こちらの一万発を遥かに超える――たった一撃でも許せば、それだけでこちらの打つ手はなくなる」
「そんな…………っ!」
 マスターコンボイの言葉の通りなら、ここまでやっても自分達には勝ち目が残されていないことになる。スバルが認めたくない気持ちは全員が理解できたが――
「いやー、こういう時にリアリストがひとりでもいると助かるね。
 希望的観測を抜きにして、現実をズバッと指摘してくれる」
 そう告げるジュンイチの言葉が、何よりもマスターコンボイの指摘が事実であることを認めていた。
「ヤツを倒そうと思うなら、他にも手を打つ必要があるだろうが……」
「ハハハ……
 悪い、さすがのオレももう策は打ち止めだ」
 告げるマスターコンボイだったが、ジュンイチもまた乾いた笑いと共にそう答えるしかなかった。
「可能な限り戦力をかき集めて、“究極蜃気楼”の効果で可能な限り能力を引き上げて――それでも通じないってことがこれでハッキリしちまった。
 これでも倒せないとなると、もうプライマスを引っ張ってくる、くらいしか思いつかないけど……」
「ムリだろうな」
 ジュンイチの言葉をマスターコンボイはあっさりと否定。ジュンイチもそのことは理解していたのか、苦々しげにうなずいて肯定を示す。
「こんな惑星上であの巨体が満足に戦えるものか――そもそも降り立つ場所がない。
 仮にムリヤリ降り立ったとしてもこの星への被害を考えると武装のほとんどが使えない――実力の一割も出せずにボコ殴りになるのが関の山だ」
「かといって、宇宙におびき出しても今度はユニクロンが取り込んだ“ゆりかご”の力で無敵モード爆入……どっちにしてもプライマスのボコ殴りは確定だな」
「役に立たねぇな神サマ!」
 マスターコンボイの言葉にジュンイチもさらに付け加える――ソニックボンバーが思わず暴言を吐いているが誰もそれを否定できない。実際問題として本当に役に立たないのだから。
「つまり、あくまで現行戦力でヤツを倒さなければならない、か……」
「でも、アイツを倒せるくらいの攻撃なんて……」
 ビッグコンボイの言葉にはやてがつぶやき、一同はユニクロンやその眷属達の動きを警戒しながら次の策へと思考をめぐらせ――
「………………そうだ!
 ジュンイチさんの“ヴァニッシャー”は?」
「そうか……
 小惑星も吹き飛ばせるあの威力なら……!」
 最初にアイデアを思いついたのはなのはだった。彼女の言葉に、キングコンボイもまたうなずいて――
「ムリだな」
 迷うことなく即答したのは、他ならぬ“ヴァニッシャー”の使い手であるジュンイチだった。
「お前らなぁ……“ヴァニッシャー”がどういう原理で相手を吹っ飛ばすのか、実はぜんっぜんわかってないだろ」
「え………………?
 確か……“相手の魂を焼き尽くすことで、相手の存在の全てを“死”へと切り替え、消滅させる”って……」
「はい、なのは正解」
 思い出すなのはにジュンイチが答え――
「――――――あ」
 そのことに気づいたのはこなただった。
「つまり、それって……“相手の魂を焼き尽くさなきゃ、相手の身体を吹っ飛ばせない”ってことだよね?」
「そういうこと。
 なのはー。教え子の方がよっぽど察しがいいぞー」
「あぅ……」
 ジュンイチのツッコミになのはが思わずたじろぐが、かまわずジュンイチは続ける。
「今こなたが言ったとおりだ。
 オレの“ヴァニッシャー”の本来の攻撃対象は相手の“魂”そのもの――相手の魂を焼滅させることができて、初めて相手の物理的な存在を焼き尽くすことが可能となる。
 つまり、今の状況では大した威力は期待できない――さすがのオレも、あのバケモノ相手に“力”で押し勝つ自信は……ちょっとない」
 うめくように答えて、ジュンイチは腹部の傷を再生させつつあるユニクロンをにらみつけた。
「あと一手……あと一手なんだ……!
 言うなればサッカー、ゴール前の猛攻……!
 ゴールの目の前から、片っぱしからシュートを打ちまくってる、そんな状態……!
 後は押し込むだけなんだっ……! 足でも頭でも……場合によっちゃ手でも……!」
「…………柾木ジュンイチ……
 貴様、何を考えている……?」
「気にすんな。
 ひとりだけ……たったひとりだけ、レッドカードをもらうだけだからさ」
 「反則を使ってでも」――不穏なことをもらしたジュンイチにマスターコンボイが尋ねるが、ジュンイチはあっさりとそう答えた。
「10年前、アンタがユニクロンを倒したマトリクスの“力”……それは、代々のデストロン・リーダーの知識とスパークの残滓が蓄積された……デストロンの“命の力”だ。
 それでユニクロンを倒せるっつーなら……同じ“命の力”なら、同様にユニクロンに対して決定打になり得るはずだ」
「待て、ジュンイチ!」
 推理をめぐらせるジュンイチの言葉に、イヤな予感が脳裏で頭をもたげる――ジュンイチが結論を出すよりも早く、恭也はあわてて待ったをかけた。
「まさかお前……自爆するつもりか!?」
「えぇっ!?
 ダメだよ、ジュンイチさん! そんなの絶対ダメ!」
「けど、有効な手段ではある」
 恭也の指摘にあわてるなのはだが、ジュンイチはキッパリとそう答えた。
「だとすれば、それができるのは死んでも生き返ることのできるオレだけだ。
 10年前のマスターコンボイのように、ヤツの中枢に飛び込んで、自爆を仕掛ければ……」
 言って、ジュンイチはユニクロンをにらみつけ――

 

「…………ダメだよ」

 

 静かにそう告げたのはスバルだった。
 ジュンイチに対しては従順なイメージのあったスバルの意外な反論に、なのはが思わず目を丸くする……が、スバルにとってはそれどころではない。ジュンイチとまっすぐに正対し、告げる。
「お兄ちゃん……大事なことを言ってない。
 お兄ちゃんが死んでも生き返ることができるのは、“生体核バイオ・コア”がひとつでも機能を維持することができれば、の話でしかない……
 自分の“力”を限界まで振りしぼって、自爆までしかけて……それで“生体核バイオ・コア”がすべて無事でいられるか……無事だったとして、お兄ちゃんが復活できるほどのエネルギーが残るかどうか……」
「なるほど。
 もっともらしい理屈でオレ達を納得させて、正真正銘、自分の命をチップにした賭けに出るつもりだったのか」
 告げるブレイズコンボイの言葉に、ジュンイチは答えない――しかし、うつむき、視線をそらしたその態度が、事の真偽を明確に示していた。
「せやったら、ジュンイチさんの策もアウトやな。
 何かないか、他に……!
 ユニクロンに通じる攻撃が、何か……!」
 最終的にジュンイチの自爆作戦は却下。はやてが再び考え込み、一同の間に再び沈黙が落ちる。
「いくらパワーアップしてても、みんなの防戦もそんなに長くはもたへんやろう。
 それに、今は沈黙してるユニクロンが動き出したら、一気に戦況は向こう側に持っていかれる……!
 押されだす前にカタつけたいところやけど……」
「そのための攻撃手段がない、というのが痛いな……!」
 はやての言葉にロディマスコンボイが同意すると、
「あのー……」
 手を上げ、提案するのはスバルである。
集束魔法スターライトとか、いけないですか?
 周りの魔力を集めて放つあの魔法なら、自分の魔力以上の威力が出せるんだし……」
「うーん……ちょっと難しいかな?」
 しかし、そんなスバルの言葉に、その集束魔法スターライトの使い手であるなのはが難色を示した。
「確かに、この戦場に今満ちている魔力を総動員したスターライトブレイカーなら……何とかなると思う」
「本当か?」
「うん。
 さすがに全身すべてを吹き飛ばすのはムリだけど……装甲を撃ち抜いてコアを破壊する、くらいのことはできると思う。
 昔戦った完全体ならともかく、今のユニクロンの装甲なら……!」
 聞き返すビッグコンボイに答えるが――話はそれで終わりではなかった。
「けど、それはあくまで理論上――『今の状態で、この場のすべての魔力を動員したスターライトブレイカーが撃てれば』っていう、仮定の話……
 それだけの大きさの魔力となると、制御もとんでもなく大変だし、私でもそこまでの魔力を媒介しきれない……というか、生身の人間の許容できる限界を軽く超えてるよ」
「じゃあ、ジュンイチさんは!?
 ジュンイチさんも集束魔法スターライト、使えましたよね? そこにゴッドブレイカーのエネルギー容量が加われば……」
「確かに、ゴッドブレイカーのエネルギー容量ならこの戦場中の残留魔力を集めたって多分耐えられるだろうし、オレ自身の制御能力があれば、安定した状態で撃つこともできるけど……オレの場合は放つ技に問題がある。
 オレの集束魔法スターライト、スターライトグレネイドは接触炸裂系……内側まで撃ち貫かなきゃならない今回の攻撃とは致命的に相性が悪い。
 あくまでもぶちかますのは貫通系、譲歩したとしても放出系の砲撃じゃないと……なのはのスターライトブレイカーみたいにな」
「大丈夫!
 ジュンイチさんのトンデモスキルなら、技のひとつや二つ、インスタントでポポンと!」
「編み出す“までは”できるけど……オススメはしないな。
 オレだって万能じゃないんだ。技自体は編み出せても、使うオレが使い慣れてないんじゃ、十分な威力を出せるかどうかはわからねぇ。
 使ったはいいけど威力不足で無駄撃ち――なんてオチじゃ目も当てなれない。それなら、なのはに自爆覚悟でスターライトブレイカーを撃ってもらった方がはるかにマシだ」
「うーん……お兄ちゃんは威力に耐えられても使える技がない……
 なのはさんは使える技はあるけど威力に耐えられない……
 あー、うまいこと条件がそろわないなぁ……」
 はやてに答えるジュンイチの言葉に、スバルは頭を抱えてそうつぶやき、
「せっかく、みんなが力を合わせて戦ってくれてるのに……!」
「何………………っ!?」
 スバルが何気なく口にした、グチとも言えるつぶやき――だが、その一言に反応を示したのはマスターコンボイだった。
「ちょっと待て……
 “柾木ジュンイチは威力に耐えられても使える技がない”……
 “なのはは使える技はあるが威力に耐えられない”……
 ……“みんなが力を合わせて”……」
「マスターコンボイさん……?」
 キーワードを列挙し、考え込むマスターコンボイに、彼の“中”でスバルが首をかしげる――が、そんな相棒に答えることなく、マスターコンボイは静かに口を開いた。
「…………おい、お前ら。
 さっさと準備しろ」
「え…………?
 準備、って、何の……?」
「決まってる。
 スターライトブレイカーのだ」
「ま、待ってくださいよ!
 今話してましたよね!? 私じゃ、ユニクロンを倒せるほどのスターライトブレイカーなんて……」
「話を聞いていないのはお前達の方だ。
 オレは言ったぞ――“お前ら”とな」
 驚くなのはにあっさりと答えると、マスターコンボイはゴッドブレイカーへ――ジュンイチへと向き直り、
「柾木ジュンイチ。
 貴様もだ」
「ち、ちょっと待ったのしばし待ていっ!」
 マスターコンボイの言葉に、彼の意図がなんとなく読めてきた――告げるマスターコンボイに対し、ジュンイチはあわてて声を上げた。
「まさか……オレとなのはの合体攻撃として、スターライトブレイカーを撃てっつーのか!?」
「貴様のその機体は、ユニクロンの腹を破れるだけの集束魔法スターライトを撃つのに十分なエネルギー容量を持つんだろう?
 そして、なのはは現状でユニクロンを叩くのにもっとも有効な形で集束魔法スターライトを発動させられる。
 ならば、貴様が魔力をかき集め、なのはが撃つ――これで、ユニクロンを倒せるほどの魔力を持ったスターライトブレイカーの完成だ」
「簡単に言うな。
 オレの収束したエネルギーを、なのはが放出系の形にしてブチかます……それは、“オレの制御下にあるエネルギーになのはが干渉する”ってことだぞ。
 他人の扱ってるエネルギーへの干渉なんて、制御特化系の能力者であるオレですら難しい。修業の場で試すならともかく、とても戦闘中に使えるレベルじゃねぇんだ。
 それをなのはにやらせるっていうのは……」
「うぅ……未熟者ですみません」
 ジュンイチの言葉に思わず謝るなのはだったが――
「問題はない」
 マスターコンボイはあっさりとそう答えた。
「それについてもあてはある。
 柾木ジュンイチは魔力を集め、なのははそれをまとめ上げる――その間に立ってフォローできるヤツなら、ちゃんとこの場にいる」
 そして、視線を落とし――自分の胸元に向け、告げる。
「最後のトリガーはお前だ――」

 

 

「スバル」

 

 

「あ、あたし!?」
「あぁ、そうだ。
 貴様しかいない」
 いきなり指名され、驚くスバルだったが、そんな彼女に対してもマスターコンボイは迷うことなくそう告げる。
「貴様のディバインバスターはなのはのそれを元に術式を組み上げ、柾木ジュンイチが貴様に扱えるようにアレンジを施した、言わば二人の技術のハイブリッド魔法……
 二人の技術を受け継ぐ貴様なら、二人のそれぞれの役目をひとつにまとめ上げることができる」
 そう告げると、マスターコンボイは再び顔を上げ、一同を見回した。
「他にユニクロンを倒せるアイデアがあるなら聞こう。
 だが……ユニクロンが動き出すまでわずかな時間しか残されていないことは頭に入れておけ。
 今の戦況が、攻撃を仕掛けてきているのが眷属だけだからこそのものだということを忘れるな」
 そのマスターコンボイの言葉に、一同は再び沈黙し――
「…………確かに、現状出ている案の中では、もっとも現実性の高いプランだな……」
「って、ソニックコンボイさん!?」
 最初にうなずいてみせたのはソニックコンボイだった。驚くなのはへと向き直り、
「教え子の身を案ずるなのはの気持ちもわかる。
 しかし……現状ではこの方法しかなくて、それをできるのはキミ達だけなんだ」
「でも……」
「心配するな。
 攻撃準備完了までは、我々でなのは達を守る」
「…………あぁっ、もうっ!」
 なのはに告げるソニックコンボイの言葉に、ジュンイチが声を上げる――ゴッドブレイカーに合身したままその頭をガシガシとかきながら、ソニックコンボイに告げる。
「考えれば考えるほど、その方法しかないじゃねぇか……!
 こうなったらやるしかねぇ……『守る』っつったんだ。収束中の守りは任せるぞ」
「当然だ」
「…………わかりました」
 ジュンイチまでもが決断し、もう後に引ける状況ではない――自らもうなずき、なのははスバルへと、彼女の宿るカイザーマスターコンボイへと視線を向けた。
 ジュンイチも、ソニックコンボイも、フェイトやはやても――その場の全員がスバルに注目し――
「………………わかりました。
 あたし……やります!」
 ついにスバルも腹を括った。強い口調でうなずいて――
「こらこら、スバル。
 『あたし』じゃないでしょ」
「『達』をつけろ。このバカ」
「こなた、マスターコンボイさん……」
 そんなスバルに苦笑まじりにツッコむのはこなたとマスターコンボイだ。
 そして、ソニックコンボイは一同を見回し、
「おそらく、これが最後の賭けになるはずだ。
 これを外せば、おそらく我々に未来はない。
 万策尽きた我々が倒れれば、あとはユニクロン軍にこのミッドチルダを、そしてここからつながる全ての宇宙が蹂躙されるだろう。
 私達のすべての希望を、なのは達に託す」
 その言葉に、一同が深刻な表情でうなずく――それを受け、ジュンイチは軽くカイザーマスターコンボイの背中を小突いた。ジュンイチに促され、スバルは彼らに対して口を開く。
「あ、あの……
 正直言って、あたしなんかに宇宙の命運なんか託されても、重い、っていうか……自信がないって言うか……とにかく、最初『ムリだ』って思っちゃったし……今でも、心のどこかでそう思ってて……
 ………………でも!」
 言葉を重ねるうちに、次第に視線が落ちていた――うつむいていた顔を上げ、スバルは改めて、力強く告げる。
「みんなは、そんなあたしを信じてくれた……
 だから……絶対、成功させてみせます。
 みんながわけてくれる力で……絶対、ユニクロンを倒してみせます!」
「うん。よく言ってくれたね。
 偉いよ、スバル」
 スバルの宣言に対し、なのはもまた笑顔で告げる――それを見守り、ジュンイチは静かに息をつき、
「そんじゃ、始めようか……
 ラストミッション――」
 

「――開始!」
 

『了解っ!』


次回予告
 
なのは 「“レリック”、“ゆりかご”、そしてユニクロン……」
フェイト 「強大な力を巡る戦いは、いよいよ最後の局面を迎える」
はやて 「世界を“明日”につなげるために……」
アリシア 「みんなの笑顔をなくさないように……」
4人 『今こそ、本当の全力全開!』
なのは 「次回、魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜
 第116話『最後の希望〜星の光に願いを託せ〜』に――」
4人 『ハイパー、ゴッド、オン!』

 

(初版:2010/06/12)

 

 

 

 

 

『GM』シリーズ

NEXT PROJECT

 

「つまり……新メンバー、か……?」

 

SPECIAL THANKS

コルタタ
(敬称略)

 

「……やっと、帰ってきました」

 

――“古き鉄”、参戦――

 

「蒼凪恭文……だな?」

 

『とある魔導師と守護者と機動六課の日常』

 

2010年7月

新たな物語は“その先”の世界で――