新暦75年6月末。
機動六課・本部隊舎レクルーム――
 

「………………」
 真剣な表情で、スバルは紙面に向き合っていた。
 手にしたそれを慎重に、しかし硬くなりすぎないよう心がけ、なめらかに動かしていく。
 やがて、それら一連の動きは彼女の思い描いたとおりのモノを描き出し――
「………………よし」
 満足げにうなずくと、スバルは息をついて身を起こした。
 と――
「あぁ、ここにいた」
 そこへ姿を見せたのはなのはだった。
「みんなと一緒にいないから、どこに行ったのかと思っちゃった。
 ……って、それ……」
 声をかけながらスバルの元へと向かい――なのはは彼女の手元にあったそれに気づいて眉をひそめた。
 別にそれが何かわからないワケではない。自分も扱ったことがある。
 ただ、それをスバルが使っている、というのは少なからず意外な光景なワケで――
「…………書道?」
「あ、はい。
 前に師匠に薦められたんです。
 『決意を形にするにはこれが一番!』って……」
 そうなのはに答え、スバルは手にした筆を置き、“決意”を書き記した半紙を手に取る。
「今回のことじゃ、あたしもいろいろ考えて……
 気合を入れ直す意味でも、初心に帰ろうかな、って師匠の教えを書いてみたんです」
「そうなんだ。
 けど……なんで今? 後でゆっくりやればいいのに」
「あー、えっと……」
 首をかしげるなのはの問いに、スバルは苦笑まじりに視線を泳がせて、
「そろそろ、ティアがマスターコンボイさん相手にじゃれてた自分に対して自己嫌悪に陥り出して、初心に帰るどころじゃなくなっちゃうと思うので」
「…………そうだね」
 霞澄によるトランスデバイスの説明会が終わっても、ティアナは一向にマスターコンボイを放そうとはしていない――むしろ真っ赤になって逃げ出そうとするマスターコンボイの照れっぷりにますます参っている様子だ。
 あれほどベッタリしていれば、我に返った時の反動もまたすさまじかろう――真っ赤になって布団にもぐり込んでしまったティアナをスバルが一晩中なだめる光景がなんだかリアルすぎるくらいにイメージできてしまい、なのははスバルの言葉に苦笑するしかない。
 自分も何かティアナにフォローを入れることを考えておいた方がいいだろうか――そんなことを考えていたところにふとスバルの書いた“決意表明”が目に入り、なのはは思わず首をかしげた。
「スバル……?
 それ、ミッド語じゃないよね……?」
「はい。
 師匠に教わった、地球の文字ですけど……」
「だよね……」
 スバルの言葉にうなずき、なのはは半紙に記された三行の詞を読み上げる。
「えっと……『この拳』……」
「『この拳、がためでなく』――」
「え…………?」
 いきなり自分の声に被せて読み上げた声は背後から――振り向くと、イクトが苦笑まじりに二人のやり取りを眺めていた。
「イクトさん……?
 いつの間に?」
「ちょうど今通りかかったところだ」
 なのはの問いにそう答えると、イクトはスバルの習字へと視線を向け、
『この拳、がためでなく――
 この拳、我がためでもなく――
 ただ、己が信ずるまことのために』
……
 なるほど。柾木の教えか」
「はい!」
 スバルが元気にうなずくと、なのはは思わず首をかしげ、
「どういう意味ですか?
 自分の拳は誰かのためじゃなくて、自分のためでもなくて……
 けど、『自分が信じてることのために振るう』ってことは、まさにその二つを指してるような気がするんですけど」
「まぁ、文面をそのまま受け取ればそういう意味に取れるな」
 なのはの問いに対し、イクトは軽く肩をすくめてみせた。
「だが――真の意味はそんな禅問答のような難しいものではない。
 これはもっと単純な――“拳を振るう理由”云々よりももっと根本的なところを戒めたものだ」
「根本的な……?」
 首をかしげるなのはにうなずき、イクトは告げた。
「この教えが戒めているのは――」

 

 


 

GP-24

勇者ノツバサ
〜その名はカイザーコンボイ〜

 


 

 

3月某日、東京某所――

「“先生”の太鼓判付き、ヒーローもののお約束、ひとーつ!
 『最初はいきなり、無我夢中! やるべきことに全力全開!』」
 高らかに告げると同時、こなたはノイズメイズやシャークトロンに向けて地を蹴り、突撃する。
 対し、シャークトロン達も迎撃しようとこなたに向けて飛びかかるが、
「そんなの!」
 トランスフォーマーへとその身を変えたこなたの前には、シャークトロンなど敵ではなかった。あっさりと先頭の1体にカウンターの拳を叩き込み、打ち砕かれたシャークトロンは 後続の仲間に激突、2体まとめて爆散する。
 続けて別のシャークトロンの顔面にカカト落としを叩き込むとそのシャークトロンを足場に跳躍、その背後の1体に重量を存分に込めた拳を叩き込む。
 瞬く間に4体のシャークトロンを粉砕し、こなたは次の目標へと地を蹴り――
「――――――っ!?」
 その背筋を走った悪寒に従い真横へ跳ぶ――同時、さっきまで彼女がいたその場を刃が駆け抜け、
「……チッ、外したか。
 なかなかいいカンしてるじゃねぇか」
 舌打ちまじりにつぶやいて、ワープによってこなたを背後から強襲したノイズメイズは手にしたウィングハルバードをかまえ直す。
(今の……いきなり背後に回られた!?
 機動性とか、そんな問題じゃない……じゃあ、今のが……)
「ワープ、か……
 そういえば、“先生”がトランスフォーマーの知り合いに聞いたことがあるって言ってたっけ……
 『ユニクロン軍にはワープを使って後ろからブスッといくのが大好きなヤツがいる』って……」
「へぇ、お前の“先生”とやらはそんなことを言ってたのか。
 じゃあ、その知り合いのトランスフォーマーってのは、案外オレの知ってるヤツかもな!」
 うめくこなたに答え――ノイズメイズの姿が再びかき消える!
(ワープ――!?)
「後ろ!?」
 とっさに振り向くこなただが、そこにノイズメイズの姿はなく――
「残念! ハズレだぜ!」
 現れたノイズメイズはこなたの右サイド――放たれたエネルギーミサイルの群れがこなたを直撃、吹き飛ばす!
「こなた!」
「たはー、効いたぁー……
 ったく、やってくれるよね、向こうも……!」
 思わず声を上げるかがみに応える形でうめき、こなたは何とかその場に身を起こす。
 しかし――そんな彼女を前にノイズメイズは再びワープ、姿を消す。
(どっちにしても――止まってたら危ない!)
 判断すると同時に身体が動く――すぐにこなたは地を蹴り、視界に敵影のない方向、すなわち前方へと跳ぶ。
 しかし――
「そう来ると思ったぜ!」
 上空にワープしていたノイズメイズは、すでにその動きを読んでいた。上空からの爆撃が足元を崩し、足を取られたこなたが転倒してしまう。
「所詮素人だな。こっちの動きをぜんぜん読めてない!
 苦しませるつもりはない――このまま一気に決めてやる!」
 完全に翻弄ほんろうされているこなたに言い放つと、ノイズメイズは左腕のシールドをかまえ、
「フォースチップ、イグニッション!
 ブラインド、アロー!」

 シールドにフォースチップをイグニッションし、両側の刃が展開されてブラインドアローへと変形。ノイズメイズはその先端に光刃を生み出すとこなたに向けて突撃、そして――
「スクリュー、トルネード!」
 全身を高速で回転するドリルとし、こなたに向けて刃を繰り出した。とっさにかわそうとするこなただったが、ノイズメイズの一撃の衝撃はすさまじく、わずかに掠めただけでもその衝撃ではね飛ばされてしまう。
「こなた!」
「こなちゃん!」
「泉さん!」
 かがみが、つかさが、みゆきが悲鳴を上げる中、Uターンして戻ってきたノイズメイズは再びこなたへとスクリュートルネードを放ち――

 

「パンツァーシルト」

 

 淡々とした言葉と共に、こなたの目前に漆黒のベルカ式魔法陣が展開された。突っ込んできたノイズメイズは真っ向からその魔法陣に激突、弾き飛ばされる!
「な、何……!?」
 突然現れ、こなたを救った魔法陣を前に、かがみが思わずつぶやき――
「帰ってくるなり、好き勝手やってくれたようだな」
 そう告げて――スカイクェイクは静かに戦場へと舞い降りた。
 

「だ、誰……!?」
「新手……!?
 でも、それにしてはこなたを助けてくれたし……」
 おそらくは上空に現れた彼がこなたを助けてくれたのだろう――スカイクェイクの姿を見上げ、つかさとかがみがつぶやくと、
「この地球のデストロン・リーダー、スカイクェイクさんですよ」
 そう答えたのはみゆきだった。
「恐怖大帝スカイクェイク。
 地球トランスフォーマーのデストロンの中でも最大の派閥“ホラートロン”を統べていた方です。
 確か彼も、“真スペースブリッジ計画”のために宇宙に旅立たれているはずですけど……?」
 

「スカイクェイク……! 戻ってきていたのか……!」
「貴様が戻ってきているんだ。貴様らを追っているオレが戻ってくるのは当然だろう?」
 現れたのはこの10年間こちらを追い続けてきた因縁の相手だった。うめくノイズメイズだが、スカイクェイクは余裕の笑みと共にそう答える。
 と、そんな彼に対し、未だ健在のシャークトロンが一斉に襲いかかり――
《甘いですよ!》
 その声と共に、スカイクェイクの周囲で魔力弾の群れが荒れ狂った。巻き込まれたシャークトロン達が一瞬にしてスクラップと化し、
《私もいるということを、忘れてもらっては困りますね》
 スカイクェイクのライドスペースから姿を現し、アルテミスはそう告げながらスカイクェイクのとなりに並び立つ。
「さぁ、もう詰みだろう。
 あきらめて投降しろ」
「誰が!」
 告げるスカイクェイクのに言い返し、ノイズメイズは彼から距離を取り、
「こっちだってな、勝つのはムリでも――“逃げる手”くらいは残してるんだよ!」
 言って――“かがみ達に向けて”エネルギーミサイルを撃ち放つ!
《スカイクェイク!》
「わかってる!」
 当然、スカイクェイク達もすぐに動く――かがみ達の前に回り込み、放たれたエネルギーミサイルを叩き落とすが、そのスキにノイズメイズはその場から離脱してしまう。
 同時、ノイズメイズらと共に現れた空中要塞も離脱。ノイズメイズの遠隔操作によるものか、背後に巨大なワープゲートを展開し、その中へと消えていく。
《追いますか?》
「いや。
 今はこちらの体制も万全じゃない――今回は追い返しただけでもよしとしよう。
 それよりも……」
 尋ねるアルテミスにそう答えると、スカイクェイクは振り向き、こなた達の元に向かう。
「あ、あの、あなた達は……?」
《大丈夫ですよ。
 その子……ケガ、してますね?》
 尋ねるみゆきに答えると、アルテミスはつかさの前にかがみ込み、ひねってしまった彼女の足に回復魔法をかけてやる。
 そして、スカイクェイクもこなたの前に降り立ち、
「……いたた……」
「大丈夫か?」
 こちらはちょうど、ノイズメイズに弾き飛ばされた状態からこなたが身を起こしたところだった。彼女に向け、スカイクェイクは手を差しのべてやるが、
「あ、ありがt……」
 応えかけたこなたの動きが止まった。スカイクェイクの手をとろうとしたまま、呆然とこちらを見返してくる。
「…………?
 どうした?」
 そんなこなたに、スカイクェイクは不思議そうに尋ね――首をかしげ、こなたは逆にスカイクェイクに聞き返した。
「ひょっとして……地球の大帝、恐怖大帝スカイクェイクさん、ですか……!?」
「その通りだ。
 ここで起きた事……すべて話してもらおうk――」
「ぅわーっ!」
 答えかけたスカイクェイクだったが、そんな彼の言葉をさえぎったのはこなたの歓声だった。
「スゴイスゴイ! 本物だーっ!
 大帝クラスって初めて会うけど、こんなおっきいんだーっ!
 え? 待ってよ。ギガロニアの大帝はもっとおっきいんだよね?
 ってことは……わーっ♪」
「あー……おい?」
《完全に、私達を置いてきぼりにして盛り上がってますね》
 トランスフォーマーの身体のままで大はしゃぎのこなたの姿に、スカイクェイクやアルテミスは困惑もあらわに声を上げ――
「――って、えぇっ!?」
 突如、こなたの身体が光に包まれた。戸惑う間もなくこなたの身体が“外”へと放り出され、思わず尻もちをついてしまう。
「い、いたた……お尻ぶつけたぁ……」
 ぶつけた尻をさすり、うめくこなたの目の前で、つい今さっきまでこなたが宿っていたトランスフォーマーのボディが変形、大型のジェット機となってこなたの背後に着陸する。
《と、トランスフォーマーが、子供に……?》
「この娘……ゴッドマスター、か……?」
「ごっどますたー?」
 そんな、こなたの身に起きた一連の事態を前に、アルテミスとスカイクェイクが思わずうめく――聞き慣れない単語を耳にして、こなたは思わず二人を見返して――
「――――――っ!?」
 そのこなたの顔を前にして、スカイクェイクは思わず目を見開いた。
 前に知り合いの魔導師の少女が“あの男”のアルバムを勝手に持ち出し、騒ぎになったことがある――その時に偶然目にすることになった1枚の写真、そこに写っていた少女と目の前の少女が重なる。
 確か、名前は――
「……貴様……泉こなた、か……?」
「え…………?
 私のこと、知ってるの……?」
「やはりか……
 まったく、我ながらよくよく“あのバカ”と縁があるらしい」
「………………?」
 こなたの問いに答えることもなくひとりで納得するスカイクェイクの言葉に、こなたは話が見えずに首をかしげるしかなくて――その時、一同の耳に聞き慣れたサイレンが聞こえてきた。
「パトカー、ですね……」
「よかった……警察が来てくれたんだ……」
 ノイズメイズ達が引き上げたことで、警察も妨害されることがなくなったのだろう。みゆきやつかさが安堵の息をつき――
「何をしている、お前ら。
 さっさと引き上げるぞ」
「え!? ちょっと!?」
 その一方で、スカイクェイクは迷わず撤収準備に取り掛かった。こなたの宿っていたジェット機や科学館の屋上で気を失っているブロードキャストをフローターフィールドで運ぼうとする彼の言葉に、かがみは思わず声を上げる。
「いいの!? 警察に事情とか話さなくて――」
「話せるほど、現状を理解できているのか?」
 あっさりとスカイクェイクはそう返してきた。
「今証言しようとしても、わからないことの方が多いだろう。
 そんな状態でまともな調書など取れるものか。ムダに時間をとられるだけだ。
 それに……」
 そう説明すると、スカイクェイクはこなたへと視線を向け、
「泉こなたが本当にゴッドマスターに覚醒したとするなら……他にも、表ざたにできない理由もあるのでな……」
 

「……なるほど。
 つまり、オーパーツ展示会に出かけたところ、今回の騒ぎに巻き込まれたワケか……」
 その場をアルテミスに任せ、スカイクェイクの転送魔法で離脱し、やってきたのは未来的な内装の施設だった――指令室らしき広い室内でこなたを中心とした4人から一連の事情を聞き、スカイクェイクはうなずき、つぶやいた。
「そして、その混乱の中、あのトランステクターが起動した、と……」
「トランステクター、っていうんですか? アレ」
 納得するスカイクェイクと共にかがみが見たのは、先ほどまでこなたが一体化していたあのジェット機である。
「アレ、何なんですか?
 なんで、こなたがアレと一体化できたの?」
「まぁ待て。
 順を追って説明してやる」
 質問を重ねるかがみを制し、スカイクェイクは息をつき、
「今貴様が尋ねた通り、あのジェット機は“トランステクター”と呼ばれるものだ。とりあえず、“スパークの宿っていないトランスフォーマーのボディ”と思っておいてもらえば問題はなかろう。
 そして、泉こなたのようにトランステクターと適合し、一体化ゴッドオンすることのできる人間を、総じて“ゴッドマスター”と呼ぶワケだ」
「ですが、どうして泉さんが……?」
「それについては、こちらもよくわからない。
 何分、ゴッドマスターの適格者の条件自体、まだほとんどわかっていないのでな」
 みゆきにそう答えると、スカイクェイクは軽く肩をすくめて――
《お待たせしました》
 ちょうどそこへ、戻ってきたアルテミスが姿を現した。
「戻ったか。
 首尾は?」
《スカイクェイクの読みの通りでしたね。
 やはりありましたよ――ノイズメイズの狙いも、コレだったと見るべきでしょうね》
 言って、アルテミスがスカイクェイクに見せたのは――
「あ、“橙水晶”……」
「あぁ、お前らはコイツのことをそう呼んでいるんだったな」
 つぶやくつかさの言葉に、スカイクェイクはそう納得し、一同に対し説明する。
「コイツの名は“レリック”。
 古代の魔法文明の遺産――“古代遺物ロストロギア”と呼ばれるもののひとつだ」
「古代の……“魔法”文明、ですか?」
「そうだ。
 生命体とはいえ、科学技術のカタマリロボットであるオレの口から出るにはあまりにも不似合いな単語だが、そこはもう“そういうもの”と思ってもらうしかない。あきらめて納得してくれ」
 眉をひそめるかがみにスカイクェイクが答えると、今度はつかさが口をはさんできた。
「でも……黙って持ってきちゃったんですか?
 それ、確かどこかの博物館の持ち物だったと思うんですけど……」
「そういうワケにもいかないんだ」
 つかさに答えると、スカイクェイクはため息をつき、続ける。
「というのも、この“レリック”は元々地球の文明が作り出したものではないんだ。
 かと言って、トランスフォーマーの遺産でもない。別の次元世界の――魔法がれっきとした技術体系として確立している世界の古代遺産が、何かの弾みで地球に紛れ込んでしまったものだ。
 そういったものは、次元世界同志の交流を監督している“時空管理局”と呼ばれる組織が管理している。本来ならばそこの部隊が回収に出向くのだが――そこである問題が浮上する」
「問題……?」
 スカイクェイクの言葉にみゆきが首をかしげると、
「この世界じゃ、時空管理局の存在自体が秘密だってこと――でしょ?」
 そう口をはさんできたのはこなただった。
「そんなところがノコノコ出てきて、『それは私達が管理しているものだから渡してください』なんて言っても渡してもらえるワケないじゃん。そもそも信じてすらもらえないだろうし。
 まぁ、多分政府レベル――宇宙連合くらいになれば知ってるだろうけど、そっちルートじゃ引渡しの手続きにどれだけかかるかわかったものじゃないよ」
「そういうことだ。
 オレ達の世界は、未だ次元世界を行き来する技術も魔法技術も成立していないことから、管理局からは管理外世界として指定を受けている。
 もっとも、10年前の“戦役”で共闘した手前、政治的には提携しているが、それでもやはり民間にはその存在は魔法の存在と共に極秘とされている――したがって、局の人間達は自分達の身分を明かせず、その行動に大きな制限を受けてしまう。
 しかし、だからと言って“古代遺物ロストロギア”も放置してはおけない――万が一危険な“古代遺物ロストロギア”が暴発して大きな被害を出ししまえば、それこそ目も当てられないからな。
 正体を明かせない。しかし、時間もかけられない――その結果、選択肢はどうしてもしぼられる」
「……たとえこの世界の法を犯すことになろうと、甚大な被害をもたらしてしまうよりはマシ……ということですか?」
「これについては、お前らは納得はしなくてもいい。大人の汚い打算、というヤツだからな」
 肩をすくめ、スカイクェイクがみゆきにそう答えると、かがみはアルテミスの持つ“レリック”をのぞき込み、
「けど……そんなに危険なものなんですか? コレ。
 見た感じ、ただの水晶にしか見えないけd――」
「ちなみに、4年前それと同じものが第162観測指定世界で発見された際に暴発。直径1kmを越える巨大なクレーターを作り出した」
「ぅだぁぁぁぁっ!?」
 サラリと告げられ、かがみは一気に部屋のすみまで後ずさり――しようとして、途上のイスに蹴つまずいて盛大にひっくり返った。
《大丈夫ですよ。
 これはもう封印を施した後ですし、“レリック”はムリヤリ干渉しない限り爆発したりはしませんから》
 そんなかがみを苦笑まじりに助け起こし、アルテミスはなだめるようにそう告げる。
《それに、すべての“古代遺物ロストロギア”が危険なもの、というワケでもないんですよ。
 単なる生活用品として作られたものが、使い方がわからないということで“古代遺物ロストロギア”として指定されてしまうこともありますし、私のように問題点が改善されて無害になるケースもあるんです》
「はぁ……」
 アルテミスの言葉にうなずき――かがみの動きが止まった。ぎぎぎぃっ、とぎこちない動きでアルテミスへと振り向き、
「…………『私のように』?」
《はい♪》
 笑顔でうなずき――アルテミスは改めてかがみ達に名乗った。
《魔導技術蒐集ツール“夜天の魔導書”の不正改造によって誕生、暴走を繰り返した結果いくつもの次元世界を闇に沈めてきた“古代遺物ロストロギア”“闇の書”――その防御プログラムを務めさせていただいていたユニゾンデバイス、“夜天の月光”アルテミスと申します。
 以後よろしくお願いしますね♪》
 

間。
 

《狙った上での発言だったとはいえ、また一気に引きましたねー。まるで大潮みたいに》
 自分の自己紹介(特に『いくつもの次元世界を〜』の辺り)で一気に後ずさりし、コンソールの向こうから恐る恐るこちらをうかがうかがみ、つかさ、みゆきの3人の姿に、アルテミスはイタズラ成功、とばかりにクスクス笑いながらそう告げた。
「す、すいません。
 あまりに物騒な経歴だったから、つい……」
《かまいませんよ。
 暴走の結果とはいえ、自分のしてきたことに罪悪感がないと言えばウソになりますけど……この罪とは一生付き合っていくつもりです。
 それに、今みたいにネタにできるくらいには受け入れられていますから、気にしなくてもいいですよ》
 思わず引いてしまったことを謝るかがみにアルテミスが答えると、
「けど、脅かし方が過ぎてたのは事実だよー」
 そんなアルテミスをたしなめたのはこなただ。そのままスカイクェイクへと向き直り、
「ダメだよー、スカイクェイクさん。
 こーゆーところは“先生”の影響でしょ? ちゃんと軌道修正してあげなくちゃ」
「“修正”程度でアイツの影響が治せるとも思えんのだがなー。
 もうほとんど伝染病の域だろ。ウィルスとか症候群とか」
「アハハ、言い得て妙とはこのことだー♪」
 スカイクェイクの言葉にこなたが笑い――
「ち、ちょっと待ってください!」
 そんなこなたに対し、みゆきは思わず待ったをかけた。
「えっと……さっきの東京での泉さんのはしゃぎようからすると、お二人は初対面ですよね?
 でも、今のお二人、すごく自然に会話が成立していませんか?」
「そういえば……さっきスカイクェイクさん、こなたの名前を一発で言い当ててたわよね?
 ってことは、少なくともスカイクェイクさんはこなたのことを知っていた……」
「???」
 みゆきの言葉にかがみがつぶやくが、つかさは話についていけずに首をかしげるばかり――そんな妹にかまわず、かがみはこなたへと向き直り、
「こなた……アンタさっき、スカイクェイクさんに“先生”がどうの、って言ってたわよね?
 で、スカイクェイクさんはそれに普通に返してた。ってことは……」
「そゆこと。
 私としては、単なるカマかけのつもりだったんだけどねー」
「だろうな。
 どうせ、貴様自身は“ヤツ”から聞いていたんだろう? 魔法のことも、時空管理局のことも――先ほどの説明ですんなり納得していたのもそのせいだろ」
 あっさり答えるこなたにスカイクェイクが告げる――軽く息をつくと、二人は確認するように言葉を交わす。
「私のことを知ってる人の中で、大帝クラスのお偉いさんとつながりがありそうな神経の図太い人なんてひとりしかいないよ。
 私の“先生”で――」
「そして、はた迷惑極まりない我が戦友――」

 

『柾木ジュンイチ』

 

 

「…………チッ、どうやら“古代遺物ロストロギア”は回収されちまったらしいな……」
 先ほどの先頭の余韻も冷めやらぬ街並み――被害の調査や復旧のために人々が、トランスフォーマーが行き交う光景を見下ろし、ノイズメイズは舌打ちまじりにつぶやいた。
「ったく、復帰第一戦からケチがついちまったぜ……
 “ユニクロンパレス”を無事隠せただけでも良しとしとくべきなんだろうけど……」
 自分が地球に持ち込んだあの移動要塞は、厳重なカモフラージュを施した上で潜伏させている――ボヤきつつも、ノイズメイズは自分の“仕事”を果たすべくサーチを開始し――
「……お、いたいた。
 さすが、マイナーチェンジしててもユニクロン軍ウチの機体。頑丈さは折り紙付きだな」
 発見した。まだ動けるシャークトロンを見つけ出し、ノイズメイズは彼らを連れ帰ろうと集結を指示し――
「………………?」
 ふと、眼下の人の群れの中に覚えのある顔があることに気づいた。
 先に到着していた者達から状況の説明を受けているのは――
「ありゃ、サイバトロンのロングマグナス……パートナーのドジ巫女も一緒か……」
 ロングマグナスと那美だ――二人の姿を見下ろし、ノイズメイズはしばし思考をめぐらせ、
「……ウサ晴らし、させてもらおうか」
 ギラリ、と顔一面のセンサー保護ガラスを光らせてつぶやいた。
 

「……さて、お互いのことと現状の把握が済んだところで、だ……」
 ある意味意外で、またある意味納得の人物によって両者の縁はつながっていた――驚きやら興奮やらジュンイチの(余計な)武勇伝の披露やらが一区切りついたところで、スカイクェイクはこなた達に――いや、こなたに対してそう切り出した。
「泉こなた。
 ゴッドマスターとして覚醒したお前には、選択肢がある。
 トランステクターを、自らの力を受け入れるか、それともトランステクターをオレに預け、ただの少女としての人生をまっとうするか、だ」
「そんなの、決まってるじゃない」
 そう声を上げたのはかがみだ。迷わずこなたと向き直り、
「当然、スカイクェイクさんに預けるでしょ?
 あんなの、普通に生きてく上で必要ないじゃない」
「そうだよ、こなちゃん」
「私も、あれは過ぎた力だと思いますし……」
 脇からかがみに賛同し、つかさやみゆきもこなたに告げるが――
「お前達の言い分はそのくらいにしておけ。
 決めるのは、あくまで泉こなただ」
 そんな3人に、スカイクェイクはピシャリと言い放った。
「お前達が泉こなたの身を案じる、その気持ちはわかる。
 だが、それはあくまで“お前達の意見”だ――どれだけ声高に叫ぼうが、それは泉こなたが結論を出すための一判断材料でしかないことを忘れるな」
「けど――」
 食い下がり、声を上げるかがみだが、スカイクェイクはそんな彼女を手で制し、
「言ったぞ――『気持ちはわかる』と」
 そう告げ、スカイクェイクはこなたへと向き直り、
「さて、泉こなた。
 ハッキリ言わせてもらえば、オレも柊かがみ達と同じく、お前がこのままトランステクターを持ち続けることには反対だ」
「あれ、そうなの?」
「当然だ。
 さんざん迷惑をかけられてはいるが、それでも柾木ジュンイチはオレにとって戦友であり、恩人でもあるんだ。そんな男が手塩にかけた教え子を、みすみす危険にさらす気になどなれるものか」
 「本人の前では絶対に言ってやらんがな」と付け加え、スカイクェイクはこなたに対して続ける。
「だが、“力を持つ者”の先達としてのオレは、お前自身の選択を尊重したい。
 お前が手にした“力”はあくまでお前のもの――その“力”を捨てるも受け入れるも、そしてどう使うかも、最終的な決定権はその“力”の持ち主である泉こなた、お前しか持ち得ないものだと考えるからだ」
「…………うん、そうだね……」
 スカイクェイクの真剣な表情に、さすがのこなたもおちゃらけたりはせず、マジメな顔で考え込む――そんな彼女の姿に、スカイクェイクは息をつき、
「まぁ、目覚めてしまった以上、その“力”はヘタをすれば一生ついて回る。
 将来に関わる問題だ。期限は設けないから、じっくり考えて結論を――」
 しかし、そんなスカイクェイクの言葉はいきなりの警報によってさえぎられた。
「何かあったんですか?」
「待て。
 今確認する」
 尋ねるみゆきに答えると、スカイクェイクは手近なコンソールに備えられた端末を操作、メインモニターが起動し――
「――あれは!?」
 再び現れたノイズメイズがシャークトロンの生き残りと共に街を襲っている映像を見て、かがみが声を上げる。
「応戦しているのはロングマグナス……ということは神咲那美も一緒のようだな。
 雷撃が確認されていない辺り、久遠は共にいないようだが……」
《しかし……ノイズメイズはなぜ再度攻撃を?
 “レリック”は回収済みなのに……》
「知るか。
 とにかく、状況はあまりよくない。空間戦が可能な状況下でノイズメイズを相手にするには、地上型のロングマグナス達では相性が悪い。
 すぐに出る――今度こそ叩きつぶしてやる」
 言って、スカイクェイクはすぐさまきびすを返し――
「――――待って!」
 声が上がった。
 

「そらよ!」
「ぅわぁ!」
「きゃあっ!?」
 ワープで死角に回り込み、エネルギーミサイルで一斉砲火――ノイズメイズの攻撃をまともに受け、ロングマグナスはライドスペースの那美と共に吹っ飛ばされる。
「な、那美、大丈夫かい……!?」
「はい……なんとか……」
 立ち上がり、尋ねるロングマグナスに那美が答えるが、そんな二人を先の戦闘から生き残ったシャークトロンの群れがグルリと取り囲む。
「やれやれ、もうちょっともちこたえてほしいね。
 これじゃ、ウサ晴らしにもならないぜ」
「く…………っ!
 バカにして!」
 ノイズメイズの言葉にムキになり、反撃に転じようとするロングマグナスだが、
「バカにされたくないなら――それなりの力を見せてみろよ!」
 対するノイズメイズはあっさりと彼の拳をかわし、逆に横っ腹を蹴り飛ばす。
 そして、地面に倒れ込んだロングマグナスの背中を踏みつけ、ノイズメイズはウィングハルバードをかまえ、
「これで終わりだ!
 くたばれ!」
 咆哮と共に、凶刃が振り下ろされ――

 

 

 

 しかし、その一撃がロングマグナスをとらえることはなかった。
 突然、上半身な多数のエネルギーミサイルを浴びせられ、ノイズメイズがロングマグナスの上から吹き飛ばされたからだ。
「な、何が……!?」
 事態についてていけず、ロングマグナスのライドスペースで那美が思わず声を上げ――そんな彼女達の頭上を1機の大型ジェットが駆け抜けた。

「まったく、人の縄張りで好き勝手してくれちゃって!」
 飛来した大型ジェット機のコクピットで、こなたは口をとがらせつつそう言い放った。
「けど、これ以上はもうやらせないよ!」
 そして、気合を入れ直し、言い放つ。
「いくよ――カイザージェット!」

「トランスフォーム!」
 こなたの咆哮が響き、それに伴い、大空を飛翔するカイザージェットが変形トランスフォームを開始する。
 まず、後方の推進システムが後ろへスライド、左右に分かれ、尾翼類が折りたたまれると爪先が起き上がって人型の両足となり、さらにその根元、腹部全体が180度回転し、機体下部を正面にするように反転する。
 続けて、機体両横、翼の下の冷却システムが変形。後方の排気口がボディから切り離されると内部から拳がせり出し両腕に。両肩となる吸気部は、両サイドのカバーが吸気口を覆うように起き上がり、カバー全体が肩アーマーとなる。
 最後に機首が機体上部、背中側に倒れるとその内部からロボットモードの頭部が現れ、カメラアイに光が宿る。
「ゴッド、オン!」
 そして、こなたが再び咆哮。同時にこなたの身体が光に包まれた。その姿を確認できないほど強く輝くその光は、やがてこなたの姿を形作り――そのままカイザージェットの変形したボディと同等の大きさまで巨大化すると、その身体に重なり、溶け込んでいく。
 背中の翼が上方へと起き上がり、ゴッドオンを終えたこなたは高らかに名乗りを上げる。
「熱き勇気と絆の力!
 翼に宿して悪を討つ!

 
カイザーコンボイ――Stand by Ready!」

「カイザーコンボイ、だと……!?
 さっきオレに倒されたひよっこのクセして“コンボイ”を名乗るかよ!」
「それだけマジだ――って、思ってもらえたら幸いかな?」
 カイザージェットにゴッドオン、トランスフォームを遂げたカイザーコンボイを前にして、うめくノイズメイズに対しこなたはあっさりとそう答えた。
「さっきの借りも返したいし、もう負けないよ!
 アキバに流れ弾が行くのもイヤだし、さっさとケリをつけてあげる!」
「なめるな!
 もう一度、叩きのめしてやるぜ!」
 こなたに言い返し、ノイズメイズは迷わず地を蹴った。対するこなたも跳躍、両者の距離が一瞬にして0となり――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――完っ!

 

 

 

 

新暦75年6月末。

「――って、終わり!?」
 これからというところで、こなたは思いっきり回想の流れを断ち切ってくれた。予想外といえば予想外の展開に、イリヤは思わず声を上げた。
「ちょっ、何、その打ち切りエンド!?
 ここから一気に盛り上がるところでしょ!?」
「だってー、そこから先はもういつも通りの定番パターンだよ。
 私もあの頃はぜんぜん未熟だったけど……カイザージェットの性能に助けられたからねー。けっこう楽だったよ」
《だからって、何も語らないと言うのはどうでしょうか!?
 それに、今ではこなたさんとかがみさんはスカイクェイクを呼び捨てですけど、今の回想だと『さん』付け! その辺りの変化の経緯もまったく語られてないじゃないですか!
 語り部ストーリーテラーの怠慢です! 詳しい説明を要求します!》
「んー、どーしよっかなー♪」
「おーしーえーなーさぁーいっ!」
 どこか自慢げに口笛を鳴らすこなたと説明を求めるイリヤやルビー。まるで仲の良い友達か姉妹のようにじゃれ合う彼女達の姿を、スカイクェイクは口元に笑みを浮かべながら眺めていて――
「……楽しそうですね」
「そう見えるか?」
《そうですね》
 美遊に聞き返したスカイクェイクにサファイアが答える――しばし視線を泳がせた後、スカイクェイクは息をつき、二人に答えた。
「……かもしれんな。
 少し、あの時のこなたの宣言を思い出したものでな」
「宣言……?
 もしかして、今こなたちゃんがはしょった部分ですか?」
「あぁ」
 美遊に対してうなずいてみせて――スカイクェイクはその時のことを彼女に語って聞かせた。
 

「――――待って!」
「………………?」
 ノイズメイズ迎撃のために出撃しようとしていたところに突然上がった声――スカイクェイクが振り向くと、こなたが自分のことを真っすぐに見返していた。
「……どうした?
 “力”の件なら急ぐことはない。もっと時間をかけて――」
 そう告げようとするスカイクェイクの言葉を、こなたは無言で手をかざして制した。そして、あくまで真っすぐな視線のまま告げる。
「スカイクェイクさん……“先生”の親友でしょ?
 だったら……あの人の信条も知ってるんじゃない?」
「……柾木流の、“矜持”か……」
 つぶやくスカイクェイクに、こなたは静かにうなずいてみせた。
『この拳、がためでなく――
 この拳、我がためでもなく――
 ただ、己が信ずるまことのために』
……
 あの人が、最後に教えてくれた……力の振るい方を戒めた教えだよ」
「『誰かのために力を振るう……自分のために力を振るう……どちらも、力のあり方としては決して間違ってはいない。
 だが、真に大切なのはその前――力を振るうその目的は自らが正しいと思う、その想いの元、自らの意思で選ばなければならない』か……」
「そう。
 だから私は自分の想いにしたがって、私のゴッドマスターとしての“力”のあり方を決めた」
 そして――こなたはしっかりと握りしめた拳をスカイクェイクへと突きつけた。
「私は捨てないよ、この“力”。
 これからも、ずっとこの“力”と付き合っていく」
「ほぉ……
 で? 貴様はその“力”を何のために使う?」
「そんなの、ひとつしかないよ♪」
 聞き返すスカイクェイクに、こなたはシリアスな表情を引っ込め、笑顔で答えた。
「守るんだよ。
 のんびりとアニメを見られる毎日を、ね♪」
 

「世界平和よりも今日のアニメ……
 まったく、そんなことを言い出すようなバカは柾木だけかと思っていたんだがな」
《師匠に似た、といったところでしょうか?》
「ヲタクでしたからねー、ジュンイチさんも」
「いや、こなたのヲタク化は柾木ではなく彼女の父親の仕業だそうだ」
 ため息まじりにサファイアと美遊に答え、スカイクェイクは苦笑まじりに肩をすくめて見せる。
「彼女達は、ゴッドマスターとしての――強大な“力”を持つ者としての責任感は、正直、あまり持っているとは言いがたい。
 だが……だからこそ彼女達は“普通の人間”としての視点を失わずにいられる。“力”に呑み込まれず、“力”におぼれることなく、まっすぐに前を見ていられる」
 そう美遊達に告げて、スカイクェイクは未だじゃれ合っているこなたやイリヤ達へと視線を向けた。
「オレ達が守るべきなのは……彼女達の身の安全、ではないのだろうな。
 だからこそ、こちらの流れを知った柾木は、表立って動けない自分に代わりオレを彼女達の指揮官に据え、お前達をもよこしたのだろう」
「かつて絆を否定したからこそ、その重みを知るスカイクェイク。
 そして、“力”を持つことから来る恐怖をよく知るイリヤと、彼女を支えてきた私……」
 つぶやく美遊にうなずき、スカイクェイクはこなた達を見守りながら告げた。
「せいぜい、全力で守ってやろうじゃないか。
 アイツらの絆も、アイツらの心も。
 そして――」

 

 

「いずれ紡がれる、スバル達との絆も」


次回予告
 
つかさ 「次回は、今明かされる、お姉ちゃんの本当の想い!」
みゆき 「素晴らしい心のつながりがつづる感動秘話!」
つかさ&みゆき 『お楽しみに♪』
かがみ 「つかさ! みゆき!
 誤解を招く予告をするんじゃないわよ!」
つかさ 「次回、魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜
 TURN 25『少女 の 決意〜覚悟のハウリングパルサー〜』に――」
3人 『ゴッド、オン!』
こなた 「ほー、そいつは楽しそうだねぇ♪」
かがみ 「アンタも本気にするなぁっ!」

 

(初版:2008/09/13)
(第2版:2008/09/17)
(各所の修正)