《さて、とりあえずこなたさんの覚醒の経緯はわかりましたけど……》
 サファイアがそう切り出したのは、自分がゴッドマスターとなったいきさつをこなたがはしょって話し、はしょられた部分をイリヤとルビーが話すようにせがむ、その両者のやり取りがいい加減失速気味になってきた頃のことだった。
《何ナニ? どうしたんですか、サファイアちゃん?》
《いえ……
 今のお話では、かがみ様達の覚醒の経緯にまったく触れられていなかったので……》
「ま、そりゃそーだね。
 かがみ達が覚醒したのは、今話した部分よりも後の話だし」
 ルビーに答えるサファイアの疑問に対し、こなたはイリヤに背後から抱きすくめられた状態のままそう答える。
「けど、今にして思えば、かがみの時はかなり特殊だったんだよねー」
「特殊……?」
「うん」
 こちらに抱きついたまま、頭の上で首をかしげるイリヤにうなずき、こなたは告げた。
「だってさ、今のところかがみだけなんだよ。
 私達の中で――」

「自分から“トランステクターを選んだ”のって」

 

 


 

TURN25

少女 の 決意
〜覚悟のハウリングパルサー〜

 


 

 

3月某日、東京某所――

「カイザーコンボイ、だと……!?
 さっきオレに倒されたひよっこのクセして“コンボイ”を名乗るかよ!」
「それだけマジだ――って、思ってもらえたら幸いかな?」
 カイザージェットにゴッドオン、トランスフォームを遂げたカイザーコンボイを前にして、うめくノイズメイズに対しこなたはあっさりとそう答えた。
「さっきの借りも返したいし、もう負けないよ!
 アキバに流れ弾が行くのもイヤだし、さっさとケリをつけてあげる!」
「なめるな!
 もう一度、叩きのめしてやるぜ!」
 こなたに言い返し、ノイズメイズは迷わず地を蹴った。対するこなたも跳躍、両者の距離が一瞬にして0となり――
「――なんてな!」
 お互いに一撃を繰り出すかと思われた瞬間、ノイズメイズはワープでその場から離脱する!
「誰がわざわざ真っ向から勝負してやるかよ!」
 真っすぐに突っ込んできたこなたをあざ笑い、上空にワープしたノイズメイズが言い放ち――
「そう来ると思ってたよ〜♪
 そんじゃねぇ〜♪」
「――って、アレぇっ!?」
 ノイズメイズがワープでその場から消えても、こなたは迷わず直進した――ロングマグナスを通り過ぎざまに拾い上げ、さのままその場から走り去るのを見て、ノイズメイズは思わず間の抜けた声を上げる。
「こら待てぇっ!
 あれだけタンカ切っといて逃げるのか!?」
「とーぜんっ!」
 ツッコミの声を上げるノイズメイズだが、こなたはむしろキッパリとうなずいてみせる。
「さっきの戦いで、そっちが格上だったわかってるんだよ! 何が悲しくて、わざわざ勝ち目の薄い真っ向勝負なんかするかな!? やんないでしょ普通!」
「いや、そりゃやらないが、少なくとも普通じゃないだろソレっ!」
 思わず同意しながらツッコむノイズメイズだが、そうこうしている間にも、こなた達はどんどん遠ざかっていく。
 普通の作戦行動なら、このまま放っておくのが正解なのだが――
「それにな――自分がやられるとムカつくんだよ、そーゆーの!」
 単にウサ晴らしのために襲ってきただけのノイズメイズにしてみれば、裏をかかれた上に当初の獲物であるロングマグナス達まで連れて行かれるのはガマンならない。いら立ちもあらわに言い放つと、そのままこなたの追跡に入る。
「止まれ、このガキ!」
「ヤだよーっ!
 前に読んだラノベにもあったよ! 『古来より! 停まれと言われて停まったバカはいません! つまり!ここで停まると私は歴史上最悪のバカになってしまうのであり、停まれと言われて停まったバカとして後世まで語り継がれてしまうのはどーしてもヤなので、人としての誇りにかけても、ここは停まらずにいようと思います!』って!」
「気持ちはわかるがそれでも止まれぇっ!」
『人に停まれという時には、まず自分が停まって見せるべきではないでしょうか?』ともあったよ!」
「それで止まったらこっちがバカだろうがぁっ!」
 ラノベからセリフを引用して言い返すこなたに言い返し――ムキになったノイズメイズはワープでその場から一気に移動。こなた達の進行方向に回り込む。
「残念だったな!
 ワープのできるオレから逃げられるとでも――」

「思ってないよ」

 しかし、ノイズメイズの言葉は途中で断ち切られた――出現したノイズメイズの顔面に、こなたが思い切り蹴りを叩き込んだからだ。
「ワープ先バレバレ!
 そんな、逃げてるところをバカ正直に回り込んでくれば、真正面に来るのが丸わかりだよ!」
 言って、こなたはロングマグナスを大地に下ろし、彼や那美から距離を取ってノイズメイズをにらみつける。
 そんなこなたに対し、ノイズメイズは蹴られた顔面をさすりながら身を起こし、
「やってくれたな、小娘が!
 ワープ先がバレるっつーなら、これならどうだ!」
 言うと同時に再びワープ。こなたの背後に回り込み、ウィングハルバードで一撃を叩き込む!
 さらに、ノイズメイズはこなたが体勢を立て直すよりも早く再ワープ。こなたの死角に回り込んでの攻撃を立て続けにお見舞いする。
「ダメだ! ぜんぜん反撃できてない!」
「ロングマグナス、助けにいける!?」
 ノイズメイズにいいように翻弄ほんろうされるこなたの姿に、ロングマグナスと那美が声を上げるが、
「大丈夫!」
 そんな二人に対し、こなたは吹っ飛ばされながらもそう答えた。
「ちょ〜っとキツイけど、こんなのにやられたりしないから!」
「言ってくれるな!」
 ロングマグナスと那美に告げるこなただったが――そんな彼女に言い放ち、ノイズメイズは再びワープでこなたに肉迫し、弾き飛ばす!
「これでとどめだ!」
 そして、吹っ飛ぶこなたの背後にワープし、とどめの一撃を繰り出し――
 

 宙を薙いだ。
 

 一撃がこなたを捉えるかと思われた瞬間、こなたが身をひるがえしてノイズメイズの一撃をかわしたのだ。
「何だと!?」
 驚き、声を上げつつもノイズメイズは再びワープ、離脱すると共にこなたの背後に回り込み、再度強襲をかけるが、
「今度はそっち!」
 こなたは再びその攻撃に反応した。撃ち放たれたエネルギーミサイルをかわし、さらにノイズメイズの位置まで捕捉し、追跡すべく飛翔する!
「く…………っ!
 それなら!」
 どういうワケか、こなたはいきなりこちらの動きを捕捉し始めた――今度こそとばかりに再ワープ、ノイズメイズはさらにこなたの死角に回り込むが――ダメだ。こなたはやはりこちらを捉え、ウィングハルバードの打ち込みを回避し、
「これは――お返しっ!」
 ついに、ノイズメイズへとカウンターの蹴りを叩き込む!
「くそっ、どうなってやがる!?
 どうしてオレのワープが!?」
「ダイジョーブ!
 完全に見切ってるワケじゃないから、そっちのプライドはまだ無事だよ!」
 うめくノイズメイズに答え、こなたは放たれたエネルギーミサイルをかわし、
「けど……ほんの一部でもパターンが読めれば、そこから意外と何とかなっちゃうもんだよ!」
「パターン、だと……!?
 バカな! 回り込む位置は常にバラバラに散らしていたんだ! パターンなんか読めるものか!」
 こなたの言葉に反論し、再びワープでこなたの頭上に回り込むノイズメイズだったが――
「――――上っ!」
 やはりこなたは対応した。こちらの位置を把握した上で素早く移動。ノイズメイズにエネルギーミサイルの狙いを絞らせない。
「確かにワープ先はまったく一定じゃなかった。後ろだったり横だったり上だったり……そこからパターンを読むのはちょっとムリかな?
 けど――」
 ノイズメイズの狙いを避け続けながら、こなたはそう告げて――
「消えてから出てくるまでの時間は、ピッタリ一定だったんだよ!」
「――――――っ!」
 告げられた言葉に、ノイズメイズが息を呑む――そのスキをこなたは見逃さなかった。素早く上昇し、間合いを詰めて蹴り飛ばす!
「このトランステクターのセンサーを使って、ずっと測ってたんだよ――そっちのワープにかかる所要時間をね。
 それによると、ワープする距離に関係なく、姿を消してからまた出てくるまでの時間は、いつも0.8秒で一定だった。
 だから、ワープする瞬間を捉えることができれば、そこから出現のタイミングも割り出せる――それさえわかれば、そのタイミングに注意を集中していれば、たとえ先読みはできなくても最低限出現自体には気づきやすくなるし、ワープアウトした場所によっては、さっきみたいなカウンターも狙えるってワケ。おわかり?」
「なるほど、ね……そういうことかよ」
 こなたの言葉に対し、何とか体勢を立て直したノイズメイズはうめきながらウィングハルバードをかまえ、
「だが、それをオレに話してもいいのかよ?
 それを聞いて、オレがワープ時間をずらさないとでも思ってるのかよ?」
 そう告げるノイズメイズだが――
「できるの?」
「――――――っ!」
 あっさりと聞き返したこなたの言葉に、逆に歯がみし、黙り込むしかない。
 そんなノイズメイズの態度は、こなたの“推測”を確信に変えるには十分すぎた――悠々とノイズメイズに告げる。
「やっぱり、できないみたいだね。
 あぁまで毎回一定のタイミング、っていうのは、どう考えても意識してやってるとは思えないからね――大方、展開したワープゲートをくぐって、向こう側に出現するのにかかる時間――ワープそのものの仕組みからくる、システム的なものなんでしょ?」
(全部バレてる――――っ!)
 こなたの言葉に対し、思わず心の中で絶叫するノイズメイズだが――
「――だが、それなら!」
 それでも、まだやるようはある――すぐさまワープし、ノイズメイズは上空に回り込み、
「回避もカウンターも狙えないような攻撃を、ぶちかましてやるだけだ!」
 言い放つと同時、大量のエネルギーミサイルをこなたに向けて撃ち放つ!
 しかも、それは相応の範囲を保ちつつ、しかし逃げ場のないほどの密集状態をも保ったまま、こなたに向けて降り注ぐ!
「中域レベルの、高密度爆撃!?」
「危ない! 逃げて!」
 思わずロングマグナスが、そして那美が声を上げるが、
「逃げられないように撃たれたんだから、逃げてもムダでしょ!」
 あっさりとそう答えると、こなたは迫り来る爆撃に向けて右手をかざす。
(自分でもビックリするぐらい、感覚が研ぎ澄まされてる……感覚器官=センサーなおかげかな?
 けど、おかげで自分の中の“力”の流れもハッキリとわかる……)
「これなら……きっと!」
 その言葉と同時――こなたの足元に真紅の光が走り、図形を描き出した。
 俗に魔法陣と呼ばれる類の幾何学模様だが――
 

「あれは!?」
 この場はこなたに任せたが、いざとなれば自分が――はるか上空で戦いの様子をモニターしていたスカイクェイクは、こなたの足元に描かれた図形を見て声を上げた。
 すぐに通信をつなぎ、確認する。
「アルテミス! あれが見えるか!?」

《はい!
 こちらでもモニターしています!》
 自分達の“基地”、その指令室で、アルテミスは戦いの様子をモニターしながらスカイクェイクにそう答えた。
「アルテミスさん、あの図形が何か……?」
「魔法陣、よね、アレ……
 だとしたら、アルテミスさん達がさっき言ってた魔法のものじゃないんですか? なんでこなたが使えるのかはわからないけど」
 そんなアルテミスのあわてぶりに首をかしげ、みゆきとかがみが尋ねるが、
《いえ……そうじゃないんです。
 観測されているのはまぎれもなく魔力。おそらくはあれがこなたさんの魔力なんでしょう――そういう意味では、確かに“魔法”と言えないこともありません。
 しかし――あの陣の術式は、私達の使うベルカ式魔法でも、ミッドチルダ式魔法でもありません》
 二人に対し、アルテミスは困惑を残したままそう答えた。
《“世界そのもの”と“その中に生きる者達”、それぞれの“力”の循環を示す二重円。
 そしてその中に描かれた、“光・火・風”、“闇・水・大地”――世界を形作る六つの元素エレメントを表す六芒星ヘキサグラム……》
 つぶやき、アルテミスは映像の中のカイザーコンボイ――こなたへと視線を戻した。
《あれは魔法陣じゃない……
 彼女の師である、ジュンイチさんの操る“力”のひとつ――“精霊術”の構築に用いる、術式陣と呼ばれるものです》
 

「魔法だと!?
 お前、魔導師だったのか!?」
 こなたの足元に展開された術式陣、そしてトランステクターによって増幅され、ほとばしるこなたの魔力――思わずノイズメイズが声を上げるが、こなたはかまわず呪文を唱え始める。

 ―― 全ての力を生み出すものよ
命燃やせし紅き炎よ
我らが害悪を阻み 飲み込み消えよ!

炎梱包フレア・パッキング!」
 術式の構築の完成、そして解放――こなたの叫びと同時、解放された炎の渦がノイズメイズのエネルギーミサイル群へと襲いかかった。包み込むように呑み込み、焼滅させてしまう。
 そして、さらにこなたは素早く次の術の呪文詠唱に入る。

 ―― 全ての力を生み出すものよ
命燃やせし紅き炎よ
我が意に従い我が敵を撃て!

炎弾丸フレア・ブリッド!」
 そして、放たれたのは多数の炎の弾丸――動揺し、ワープの遅れたノイズメイズを次々に捉え、叩き落とす!
「もひとつ弱点みっけ!
 自分の意思でワープをコントロールしてるから、とっさの反応が間に合わないとワープで逃げることもできないみたいだね!」
 言って、こなたは大地に叩きつけられたノイズメイズへとかまえ、
「それじゃ……立て直されてワープで逃げられる前に、フィニッシュいくよ!」
 

「フォースチップ、イグニッション!」
 こなたの咆哮が響き――ミッドチルダのフォースチップが飛来した。そのまま、カイザーコンボイのバックパックのチップスロットに飛び込んでいく。
 それに伴い、カイザーコンボイの両足、両肩の装甲が継ぎ目にそって展開。内部から放熱システムが露出する。
〈Full drive mode, set up!〉
 カイザーコンボイのメイン制御OSがフルドライブモードへの移行を告げ――同時、イグニッションしたフォースチップのエネルギーが全身を駆け巡った。四肢に展開された放熱システムが勢いよく熱風を噴出、さらにバックパックの推進部からも炎が噴出し、炎の翼となる。
 頭上に掲げた右手、反対方向、真下に向けて伸ばした左手――それぞれの手を大きく半回転、描かれた円の軌道に“力”が流れて燃焼、発生した炎の輪が一気に火勢を増し、こなたの目の前で巨大な炎の塊となった。さらに勢いを増すと形を変え、巨大な鳳凰を形作る。
〈Charge up!
 Final break Stand by Ready!〉

 カイザーコンボイの制御OSが告げる中、こなたは炎の翼を広げて飛び立ち、炎の鳳凰の頭部へと後ろから飛び込んで――
「いっ、けぇぇぇぇぇっ!」
 鳳凰の口から、ノイズメイズに向けて強烈な勢いで撃ち出された。鳳凰を形作っていた炎を全身にまとい、自身の飛翔速度をはるかに上回る速さでノイズメイズへと突っ込み――
「紅蓮――蹴撃!
 クリムゾン、ブレイク!」

 ノイズメイズに向け、渾身の飛び蹴りを叩き込む!
 同時、こなたの導いた炎の渦が襲いかかった。蹴りを受けたノイズメイズを飲み込み、吹き飛ばす!
 強烈な衝撃によって宙を舞い、ノイズメイズはゆっくりと大地へと落下し――
「私の蹴りに――撃ち砕けぬものなし!」
「ぐわぁぁぁぁぁっ!」
 こなたの言葉と同時、絶叫と共に巻き起こる大爆発――周囲でくすぶっていた残留エネルギーが大爆発を起こし、ノイズメイズは天高く吹き飛ばされていく。
 そして――ノイズメイズは最後の力を振り絞ってワープし、その場から離脱していった。
 

「うっし、リベンジ完了!」
 ノイズメイズの撃破を果たし、こなたはガッツポーズと共に声を上げ――
「ち、ちょっと、キミ!」
 そんな彼女に対し、ロングマグナスが声を上げた。
「助けてくれてありがとう。
 けど、キミは……?」
「私?
 うーん……」
 ロングマグナスの問いに、こなたはしばし視線を泳がせて――
「……とりあえず、“越後のちりめん問屋のご隠居”ってことでひとつ♪
 それじゃ♪」
「え? あ、ちょっと!?」
 ベタなごまかしと共に離脱に入った。あわてて那美が声を上げるが、かまうことなくゴッドオンを解除、カイザージェットでその場から離脱していった。
 

「たっだいまー♪」
 適当なところでアルテミスの転送魔法で回収してもらい、帰還――指令室に戻ってきて、こなたは元気に声を上げた。
「こなちゃん!」
「泉さん、大丈夫でしたか!?」
「大丈夫だって。見てたでしょ?」
 すぐさま駆け寄ってくるつかさやみゆきにこなたが答えると、
「気にしなくてもいいわよ、つかさ、みゆき」
 不機嫌そうに声を上げたのはかがみだった。
「どうせ、私達が止めたって聞きゃしないんだから。
 好きにさせておけばいいのよ」
 こなたに視線を向けることなく、口をとがらせるかがみの姿に、スカイクェイクは息をつき、
「……泉こなた」
「はい?」
「今回は勝利したとはいえ、先の戦闘でノイズメイズに打ちのめされたことを忘れるワケにはいかん。
 今日はもう遅い。家に戻るべきだろうが、明日にでも改めてメディカルチェックを行ないたいのだが」
「んー、私はかまわないよ」
「そうか」
 こなたの答えにうなずくと、スカイクェイクは振り向き、アルテミスに告げた。
「アルテミス、4人を送ってくれるか?」
《わかりました》
 

《ここでよかったですか?》
「はい。
 ありがとうございます」
 転送によってたどり着いたのは、こなた達の通う“陵桜学園”の校舎裏――尋ねるアルテミスに、みゆきはうなずいて謝意を告げる。
《では、明日もこの場所に集合、ということで。
 お疲れさまでした》
「はーい♪
 じゃ、また明日ねー♪」
 解散を告げるアルテミスの言葉に、こなたは元気に答えて真っ先に帰路に着く――そんな彼女の後姿を、かがみは複雑な表情で見送っていた。
 その胸に、複雑な想いを抱いたまま――
 

「…………ふぅ」
 息をつき、風呂から上がったかがみはベッドの上にその身を投げ出した。
 帰ってからはもう大変だった――昼間のノイズメイズ達の出現は大々的に報道されていた。無事を喜び、そして何があったのかを聞きたがる家族からの追求に対し、かがみはこなたのこともあり、なんとかごまかそうと必死だったのだ。
 オマケにつかさがことあるごとに口を滑らせかかるので気が気ではない――なんとかごまかしきった自分を心の底からほめてやりたい気分だ。
「こなたのところはもっと大変だったでしょうね……」
 彼女を溺愛する父親と心優しい従妹いとこが無事を喜び、抱きついている光景が脳裏に浮かぶ――思わずかがみの頬が緩むが、
「……って、何なごんでんのよ。
 アイツ、戦うとか言い出してるのに……まったく、人の気も知らないで……」
 『力を得たから』とあっさり戦いを選んだこなたへの怒りがぶり返してきた。身を起こし、声に出して不満をぶちまけて――と、その時、彼女の携帯が音を立てて着信を告げた。
 のろのろと緩慢かんまんな動作で携帯を取り、応答する。
「…………はい」
〈かがみさんですか?
 私です――アルテミスですよ〉
「アルテミスさん?」
 この番号を教えた覚えはない。意外な相手からの電話に、かがみは思わず声を上げた。
「なんで私の携帯の番号を?」
〈簡単な話ですよ〉
 驚くかがみに対し、アルテミスは笑って答え――
《あなたがお風呂に入ってる間に確認させてもらいましたから♪》
「ぅわぁぁぁぁぁっ!?」
 いつの間に姿を現したのか、ベッドの足元辺りに置かれた座卓について紅茶を飲んでいたアルテミスの言葉に、かがみは思わずベッドの上で飛び起きて――
「んきゃっ!?」
 枕元側の壁に盛大に頭をぶつけた。
 

《軽いお茶目だったのにぃ……》
「『お茶目』で不法侵入しないでください」
 頭にゲンコツを落とされ、涙目でつぶやくアルテミスに対し、かがみは口をとがらせてそう答える。
 とりあえず、先ほどの大声は家族に感知されることはなかったようだ――つかさを呼びに行ってもいいが、彼女のオーバーリアクションがあると一発で他の家族にアルテミスの侵入がバレる。部屋の中央に座卓を寄せ、二人で正対しての対談である。
「だいたい、どうやって隠れてたんですか?」
《これでも“ロストロギア”の防御プログラムを務めていた身ですからね。
 サポート系は得意中の得意分野――当然、姿を隠すステルス系もその中に含まれます。
 おかげで楽に忍び込めましたよ♪》
 気を取り直し、自慢げに不法侵入の手口を語るアルテミスの言葉に思わずため息がもれる――気を取り直し、かがみはアルテミスのいれてくれた紅茶を一口飲み、改めて彼女に尋ねた。
「けど……何しに来たんですか?
 気にかけるべきなのは、むしろ戦うことになったこなたでしょう?」
《そうでもないですよ》
 しかし、そんなかがみに対してアルテミスはあっさりとそう答えた。
《私達も“こういう世界”の住人ですからね……今までにも、突然異能に目覚め、否応なく戦いに巻き込まれた人達のことはたくさん見てきました。
 そういった経験から言わせてもらえば……現状において危険なのは、むしろあなた達の方ですね》
「私達……ですか?」
 思わず聞き返すかがみに対し、アルテミスは静かにうなずいた。
 そして――まっすぐにかがみの顔を見て、告げる。
《まだ、心配なんでしょう?
 戦うことを決めた、こなたさんのことが》
「な、何言ってるんですか!
 つかさ達に言ったのを聞いてたでしょう!? 結局、アイツは止めたところで聞きゃしない――そんな勝手なヤツのことなんか、もう知りませんよ!」
 思わず身を乗り出し、反論するかがみだったが――
《もうどうでもいいのなら、なんでさっき解散した時、『明日あの場に“集合”』とあなた達も含めていたことに異を唱えなかったんですか?
 考え事に夢中だったのでなければ――結局、明日も来る気だった、そういうことでしょう?》
 そんな彼女に答え、アルテミスは平然とお茶をすすり、
《さっきも言いましたが、私達の経験上、現状において危険なのは戦う力を得たこなたさんじゃない――その周りで、自分達の身の振りを決めかねているあなた達の方です。
 彼女のことが心配で、けど、自分達には戦う力がない――身の振りを誤れば、彼女について行き戦いに巻き込まれるか、危険から離れようとしない彼女を見限って離れてしまうか……たいていは悲惨な末路が待っているものです》
「………………」
 アルテミスのそんな話に、かがみは気づけばじっと聞き入っていた。
 こなたを心配する気持ちは確かにある――だからこそ、こちらの気も知らないでサラリと「戦う」などと言い出したこなたに対するいら立ちを抑えられないでいるのだ。
 自分にも何かできれば――そんな想いも否定できない。元々、どことなく放っておけないところのあるこなただから、自分も何か手伝えないか、そんなことをつい考えてしまう。
「……どうすれば、いいんですか?」
 気づけば、かがみはそう尋ねていた――そんな彼女に優しく微笑み、アルテミスは告げた。
《あなたが自分で決めてください》
「あっさりと丸投げしましたね」
《当然ですよ。
 私はまだ、あなたにできること、できないことを知らないんですから。
 お望みなら『こなたさんと一緒に戦ってください』くらい言いましょうか?》
 うめくかがみに何食わぬ顔で答えると、アルテミスは静かに立ち上がり、
《とりあえず今夜一晩、じっくり考えてみてください。
 それで答えが出れば良し、出なければまた相談にくらい、乗ってあげますから》
「はい……
 紅茶、ごちそうさまでした」
《えぇ》
 かがみに答え、アルテミスは足元に転送魔法陣を展開し――
《あぁ、そうだ》
 ふと思い立ち、アルテミスはかがみに尋ねた。
《明日、どこの銘柄の茶葉を使ってるか教えてくださいね♪》
「え――――――?」
 思わず首をかしげるかがみだったが――その問いに答えるよりも早く、アルテミスは部屋から姿を消してしまった。
「茶葉……?」
 アルテミスの最後の言葉が気になり、かがみはふと座卓の上のティーセットに視線を落とし――気づいた。
「あんの人は……ウチの茶葉で紅茶いれてやがりましたか……!」
 

 明けて翌日――
「なーんか、こういうメディカルポッドって漫画とかでよく見るよねー♪
 具体的にはジャンプで長々やってた鳥山先生の作品みたいに」
《はーい、メガヒット漫画にケンカを売る発言はそのくらいにしてくださいね♪》
 アルテミスの案内で再び“基地”を訪れ、こなたはアルテミスによるメディカルチェックを受けていた。検診用のメディカルポッドの中でつぶくこなたに、アルテミスは笑顔で答えながらポッドから送られてくるデータをまとめていく。
 そんな彼女の背後では、スカイクェイクやかがみ、つかさとみゆきが事の成り行きを見守っている。
「どうだ? アルテミス」
《筋肉等にダメージが多少残ってますが……せいぜい打ち身程度ですね。
 脳へのダメージも今のところ確認されていませんし……この程度のダメージなら湿布や軟膏なんこうを処方しておけば問題はないでしょう》
 尋ねるスカイクェイクに対し、アルテミスは作業の手を止めることもなくそう答え、
《それから……一緒に調べた、こなたさんの魔力資質についての解析結果も出てますよ》
「どれどれ……?
 保有魔力の総量はAランクに至るも、出力レベルはBランク相当か……
 魔力だけで精霊術を撃ったんだ。もっと出力できるものと思ったが……」
《それは、おそらくトランステクターが増幅してたんでしょう。
 でなければどう考えても出力不足ですよ。何しろ、精霊術は元々大出力がウリである精霊力での行使を前提にしてますから、省エネというものを完全に度外視してますからね――射撃系である“炎弾丸フレア・ブリッド”ですら、魔導師ランク換算で最低AAランク級の出力が必要と言うんですから。
 当然、砲撃系の精霊術はさらに出力を必要としますし――そんなものを魔力だけで、増幅なしで撃てる魔導師なんてそうはいませんよ》
 スカイクェイクに答え、アルテミスは「まぁ、私達の身内にはゴロゴロしていますけど」と苦笑まじりに肩をすくめてみせる。
《話を戻しますけど、彼女自身は今まで魔力を扱わずに生きてきた子ですからね。魔力の出力に身体が慣れていないんでしょう。
 あと、属性は……》
 言って、アルテミスはそのデータを表示し――それを見たスカイクェイクは思わず苦笑した。
「なるほど……“火”属性か。
 まったく、ノリといい属性といい、つくづく似た者師弟だな、こなたと柾木は」
《えぇ、本当に……》
 スカイクェイクの言葉に苦笑し――アルテミスはふと室内の時計に視線を向け、
《ところで……そろそろ出かけなければ、今日中に帰ってこれなくなるんじゃないですか?》
「む…………?
 ……なんだ、もうそんな時間か」
「何かあるんですか?」
 さすがに魔法は専門外。今まで会話に割り込めないでいたみゆきの問いに、スカイクェイクはしばし考え、
「……そうだな。
 お前達も、ついて来るといい」
「いいんですか?
 私達、魔法のこととかトランスフォーマーのこととか、ぜんぜん知らないんですけど……」
「かまわんさ」
 思わず聞き返すつかさだが――スカイクェイクはあっさりとそう答えた。
「別に、お前達に手伝ってもらおうと言うワケじゃない。
 今のお前達は“知るべき時”――自分達の前に開けた新たな世界を知るのが、今のお前達のすべきこと。これからのことを“選ぶ”のは、その後の話だ」
「そういうことなら、かまわないけど……」
 昨夜もアルテミスに「じっくり考えるといい」と言われたばかりだ――スカイクェイクの言葉にうなずき、かがみはその上で彼に聞き返した。
「けど、せめて行き先くらいは教えてくれてもいいんじゃない?」
「ふむ……それもそうか」
 そんなかがみの言葉に、スカイクェイクは納得し、告げた。
「これから行くのは、この世界とは別の形で進歩した世界。
 オレ達が10年前に手にした、“魔法の力”の発祥の地……」
 

「次元世界“ミッドチルダ”だ」

 

「ぅわぁ……」
 転送魔法の魔力光が消え、目の前に広がるのは自然あふれる草原とその向こうに見える近代的な都市群――のどかなミッド郊外の風景を見渡し、つかさは思わず感嘆の声を上げた。
 一方、かがみやみゆきも周囲の光景を見回し、
「ここが、ミッドチルダ……
 地球とあまり変わらないわね」
「けど、違いも確かにありますね……
 地球の空では、あんなに大きく天体は見えませんし……衛星ですか?」
「いや、そういうワケではないようだ。
 オレもこの世界の生まれではないから詳しい理屈は知らないが……この世界の大気中の魔力が何らかの形でレンズの役割を果たし、少し離れたところにある天体を大きく見せているようだ」
 「見た目どおりの距離にあんなものがあれば、互いの重力で大変なことになるだろう?」と付け加え、スカイクェイクは改めてかがみ達に告げる。
「さて、もう一度“跳ぶ”ぞ――オレのそばから離れるな」
「え?
 目的地、この辺じゃないの?」
「あぁ。
 直接向かっても良かったんだが――先にミッドがどんな世界か、見せておきたくてな」
 思わず聞き返すかがみに対し、スカイクェイクは肩をすくめ、付け加えた。
「“これから行く場所”の光景が、ミッドの一般的な光景と思われるのは心外だからな」
 

「……『“これから行く場所”の光景が、ミッドの一般的な光景と思われるのは心外』――
 心ゆくまで納得したわ」
「理解が早くて助かる」
 再びの転送の後、目の前の光景に対し偽らざる感想を述べたかがみの言葉に、スカイクェイクはため息まじりにそう応じた。
 現在彼女達の前にあるのは、うず高く積み上げられ、崩壊防止のネットによって支えられたスクラップの山――確かに、こんなゴミの山を“ミッドに来て目にする最初の風景”とするのは、ミッドチルダという世界を憎からず思っている者達にしてみればいささか心外というものだろう。
「けど……こんなところに、一体何の用で?」
「ここの“主”に、預けているモノがあってな」
 尋ねるみゆきに答えると、スカイクェイクはゴミの山の間にかろうじて残されている道を彼女達を連れて進んでいく。
 と――道の奥に建物が見えてきた。周囲のゴミの山とは明らかに不釣合いな、きれいに清掃された大型の工場のような場所である。
 そして、スカイクェイクはその建物を前にして声を張り上げる。
「おい! オレが来ていることには気づいているんだろう!? 出迎えぐらいしてくれてもいいんじゃないのか!?」
 そう告げる声は、答える者の姿が見えないまま周囲に響き渡り――
「……作業中にムリ言わないでもらえるか?」
 そう答える声は彼らの頭上――やや後方のゴミの山の上から降ってきた。
 見上げると、肩に巨大なスクラップを担いだ、1体の大型トランスフォーマーがゴミの山の上からこちらを見下ろしていた――体躯からは想像もつかないような身軽な身のこなしでこちらの目の前に跳び下りてくる。
 体型はお世辞にもスマートとは言えない。一目見ただけで明らかにパワーファイターだとわかる。
 だが、そんな体型とは裏腹に、両腕に備えられたウィング状のシールドが彼のビークルモードが大空をかけるジェット機ではないかと推測させる――おそらくは爆撃機か輸送機か、そんなところだろう。
「……何だ? そいつら」
「少し事情があってな」
 かがみ達に気づき、尋ねるトランスフォーマーに答えると、スカイクェイクはかがみ達に彼を紹介する。
「紹介しよう。
 科学闘士、ギガントボム――ここのジャンク屋の持ち主だ」
「ま、一応“闘士”を名乗っちゃいるが、本職は“科学”――エンジニアの方だがな」
 スカイクェイクの言葉に、ギガントボムは軽く肩をすくめてそう答える。
 ともあれ、ギガントボムはスカイクェイクへと向き直り、
「で? 今日はどうしたんだ?
 まさか……また“持ってきた”のか?」
「いや、違う」
 尋ねるギガントボムの問いをあっさりと否定し、スカイクェイクは彼に告げた。
「その逆だ。
 お前に預けてあったものを、回収に来た」
 その言葉に――ギガントボムの周りの空気が一瞬にして引き締まった。スカイクェイクに対し、低い声色で尋ねる。
「すると、つまり……」
「あぁ」
 あっさりとスカイクェイクはうなずき、告げた。
「ゴッドマスターと、接触した」
 

「幸い、ノイズメイズ達もしばらくこちらに留まるようだ――ユニクロンパレスまで持ち込んだんだ。そのあたりは間違いあるまい。
 おかげで、こちらも晴れて、腰を据えて動けるようになった、というワケだ」
「なるほどな……」
 スカイクェイクの言葉に、となりを歩くギガントボムが納得する――現在二人は、かがみ達を連れてスクラップの山の間を目的の場所へと歩いていた。
「お前にとっては、渡りに船だったワケだ。
 ジュンイチの読みじゃ、“そろそろ”だったからな」
「あぁ。
 昨夜、オレが不在の間の記録に目を通させてもらったが……やはり、最近になってミッドチルダや近隣世界におけるガジェットの出現回数が格段に増してきている。
 スカリエッティの行動が、活発になってきている証拠だ」
 スカイクェイクが答えた、ちょうどそのタイミングで二人の足が止まった。目の前にそびえ立つ、一際大きなスクラップの山を前にして、ギガントボムは手元のリモコンを操作し――スクラップの山の一角に異変が起きた。
 スクラップの山に見えたのは、そう偽装されていた格納施設だった――全面にスクラップを貼り付けたハッチがゆっくりと開いていき、スカイクェイクとギガントボムは迷わずその中へと足を踏み入れ、少し遅れてかがみ達も続く。
「そういう意味でも、やはりこれらはこちらの手元に置いておきたい。
 まぁ、もう少しお前の元に預けて、分析を続けてもらいたい気持ちも確かにあるんだがな」
 センサーでも仕込んであったのだろう。次々に内部の証明が点灯していく中、スカイクェイクは静かに告げて――
「こ、これって……?」
 そこに置かれていたものを前に、かがみは思わず声を上げた。
 自分達にとっても、よく見知ったものだったからだ――彼女のとなりで、つかさもまた声を上げる。
「電車……?」
 そう。そこに置かれていたのは地球の列車類だった。
 数は5台。500系新幹線、E1系新幹線、400系新幹線――さらには最新のN700形新幹線まである。なぜか最後の1台はグッと時代がさかのぼってC62型SLだが。
 しかし、E1系や400系の後ろには、砲台やレドームユニットが連結されており、それがただの列車ではないことを雄弁に物語っている。
「どうして、地球の列車が……?」
 思わずみゆきが声を上げると、ギガントボムはスカイクェイクへと振り向き、
「なんだ、トランステクターのことは説明していないのか?」
「ゴッドオンの仕組みについて説明したのみだ」
「なるほどな」
 スカイクェイクの言葉に納得すると、ギガントボムはかがみ達に説明する。
「オレ達トランスフォーマーが、各種の乗り物や動物のデータをスキャニングし、それぞれのトランスフォーム形態を得るのは知っているな?
 それと同じように、トランステクターもまた、スキャニングによってそのビークル形態を決めるんだ」
「えっと……?」
「つまり、ここにある列車は、地球の列車をスキャニングしたトランステクターだ、ってことよ」
 話についていけず、首をかしげるつかさに答えると、かがみはギガントボムへと振り向き、
「ってことは……ここにあるトランステクターは地球にあったっての? こなたのカイザージェットと同じように」
「いや、そういうことじゃない。
 実際に地球から回収したのは、一番奥のSL型――アームライナーだけで、残りは別の次元世界から柾木ジュンイチが回収してきたものだ。
 残りの4機については、トランスフォーマーで言うところの“スキャニングのやり直しリスキャニング”が可能か、もし可能なら、どのくらいの自由度があるのか、そのテストを行なった結果だ――どうせならタイプを統一しようとアームライナーに合わせて地球の列車のデータをスキャニングさせてみたのさ」
 ギガントボムの説明にかがみが納得すると、今度はみゆきがスカイクェイクに尋ねる。
「あの……スカイクェイクさん。
 もしかして、今日ここに来たのは……」
「あぁ。
 適合者はこれから探すことになるが……とりあえず、これらのトランステクターを持ち帰る。
 それから……」
 言いながら、スカイクェイクはギガントボムへと目配せし――それを受け、ギガントボムは倉庫の奥へと消えていった。すぐに、厳重な補強の施されたケースを抱えて戻ってくる。
「大切に扱ってくれよ。
 封印してあるとはいえ、一応は危険物なんだからな」
「わかっている」
「“封印”? “危険物”?
 まさか、それは……?」
 告げるギガントボムと受け取るスカイクェイクの言葉に、みゆきが首をかしげる――そんな彼女の言葉にうなずくと、スカイクェイクは彼女達の前にケースを下ろしてそのフタを開ける。
 そこに収められていたのは――
「あ、“橙水晶”……」
「“レリック”でしょ」
 厳重な封印と共に収められていたのは5つの“レリック”――思わず地球での通り名を口にするつかさに、かがみはため息まじりにそう訂正する。
「これも……こなたの“先生”が回収してたの?」
「まぁ、そんなところだ。
 これも分析のために預けていたんだが……この機会に一緒に回収する」
 尋ねるかがみにスカイクェイクが答え――その時、突然傍らの壁に備えられた端末がアラームを鳴らした。
「どうした?」
「侵入警報だ。
 誰か、ここの近くに接近してきてる」
 スカイクェイクに答え、ギガントボムは端末を操作し、最寄りの監視カメラの映像を呼び出して――
「…………ノイズメイズ達かと思ったが、違うようだな」
 そこに映し出されたのは、軍用ヘリコプターと放出したエネルゴンウェーブを足場に宙を進む戦闘艇――明らかにノイズメイズ達ユニクロン軍とは誓う“侵入者”の姿に、スカイクェイクは眉をひそめる。
「しかし、ヤツらはまっすぐにここを目指している。
 狙いはオレか、それともトランステクターか、“レリック”か……はたまた別の何かか……」
「いずれにせよ、ムリヤリ突っ込んでくる以上、友好的な相手というワケではあるまい。
 となれば、丁重にお出迎えしてやるのが筋というものだろう」
 ギガントボムに答えると、スカイクェイクはかがみ達へと向き直り、
「お前達はここにいろ。
 侵入者はオレ達で対応する」
「大丈夫なの?」
「そんなもの、やり合ってみなければわからんさ」
 かがみに対してあっさりと答えると、スカイクェイクはギガントボムと共に外に出て、“侵入者”を迎えるために飛び立つ。
 “侵入者”はすぐに見つかった――隠れもしないでまっすぐにこちらへと突っ込んでくる2機の進路上に立ちふさがり、対峙する。
「何だ? 貴様ら」
「ここの家主とその知り合い、といったところかな」
 尋ねるヘリコプター型トランスフォーマーの問いにギガントボムが答え、今度はスカイクェイクが彼らに尋ねる。
「そう言う貴様らこそ何者だ?
 ここはコイツの私有地だ――何が目的でこの場に侵入した?」
「さて……答える義理はないな!
 ショックフリート、トランスフォーム!」
 答えるのは戦闘艇型トランスフォーマー、ショックフリート――ロボットモードにトランスフォーム、スカイクェイクと対峙し、
「ブラックアウト、トランスフォーム!」
 ヘリコプター型トランスフォーマー、ブラックアウトもまたロボットモードへとトランスフォーム。戦闘態勢に入る。
「問答無用、か」
「お前達が通してくれないなら、そういうことになるな。
 何者かは知らないが――オレ達“ディセプティコン”に逆らったこと、存分に後悔するんだな!」
 スカイクェイクにブラックアウトが言い返し――ブラックアウトの腹部から放たれたプラズマ砲が戦いの始まりを告げた。
 

「始まった……!?」
「みたいですね」
 戦いが巻き起こす閃光は彼女達のところからも確認できた。つぶやくかがみに、みゆきもまた静かにうなずいてみせる。
「お姉ちゃん……!」
「大丈夫よ。
 スカイクェイクさんは地球の大帝よ。あんなヤツらくらい……!」
 不安げにこちらの袖をつかんでくるつかさにかがみが答え――

「へぇ……大帝級がいたのか」

『――――――っ!?』
 突然の声は彼女達の背後から――あわてて振り向くと、そこには巨大なアームを備えた、1台の大型車両が停車していた。そして――
「ボーンクラッシャー、トランスフォーム!」
 咆哮と共に、ボーンクラッシャーは地雷除去車からロボットモードへとトランスフォームし、かがみ達の前に立ちはだかった。
 

「――――っ!?」
 ボーンクラッシャーの出現は、ショックフリートの放つエネルギーミサイルをかわしていたスカイクェイクもすぐに気づいた。あわててビークルモードのブラックアウトとドッグファイトを展開していたギガントボムに声をかける。
「ギガントボム!」
「わかってる!
 こいつら……最初からオトリだったのか!」
「そういうことだ!」
 ギガントボムの言葉に答え、ブラックアウトはロボットモードにトランスフォーム、彼に向けてプラズマ砲を撃ち放つ。
「く…………っ!」
 早く向かわなければ、かがみ達が危ない――舌打ちまじりにエネルギーミサイルをばらまくスカイクェイクだが、ショックフリートは多数の虚像を生み出すと同時に自らも実体を失い、スカイクェイクの攻撃を回避する。
「貴様らの目的は何だ!?
 あそこに何があるのか、知った上での行動か!?」
 せめて、狙いだけでもハッキリさせなければ――そうショックフリートに対して問いかけるスカイクェイクだったが――
「別に、あの場所そのものに興味はないな」
「何…………っ!?」
 返ってきたのは意外な答え――ショックフリートの言葉に、スカイクェイクは思わず声を上げた。
(こいつら……あそこに“レリック”とトランステクターがあることを知らないでいる……!?
 だとしたら、何が狙いで……!?)
 眉をひそめるスカイクェイクだが――余裕の表れか、ショックフリートはあっさりと自らの目的を明かした。
「我々の目的は――」
 

「へぇ……トランステクターに、“レリック”まであるのか。
 こんなところにあるとは思わなかったぜ……とんだ掘り出し物だ」
 かがみ達を前に、非人間的な顔でもハッキリとそれとわかる獰猛な笑みを浮かべ、ボーンクラッシャーは彼女達の背後に並ぶトランステクター群や“レリック”を収めたケースを見て満足そうにそうつぶやいた。
「あ、あんた……何が目的よ!?」
「目的?」
 そんな彼に対し声を上げるのはかがみだ――彼女の言葉に、ボーンクラッシャーはその笑みをますます深くして答えた。
「そんなの決まってる。
 オレ達の目的は――“ゴッドマスターだ”」
「え…………?」
 その言葉に、かがみは思わず声を上げた。
(ゴッドマスターが狙い……?
 けど、ゴッドマスターに覚醒したこなたは来てないのに……?)
 話が微妙にかみ合わない――眉をひそめるかがみだが、ボーンクラッシャーはかまわず続ける。
「トランステクターや“レリック”と一緒にいるってことぁ、お前らも少しは知ってるんだろ? ゴッドマスターのことをさ。
 一応、本命の獲物は“レリック”ってことになってるがな……同時に、オレ達は自分達の戦力として迎えるために、ゴッドマスターやそいつらの使うトランステクターも一緒に探してるんだよ」
 そして――ボーンクラッシャーは告げた。
 ゴッドマスターを狙っているのに、なぜゴッドマスターのいないこの場に現れたのか――そんなかがみの疑問に対する答えを。
「今回の目的は、あくまで“ゴッドマスターの適格者”だけだったんだがな。
 だが……まさかトランステクターまで見つかるとは、ラッキーだったぜ」
「“適格者”が、ここに――?」
(それって、まさか……!?)
 ボーンクラッシャーの言葉が本当なら、自分達の誰かがこなたと同じゴッドマスターだということになる。
 もしかしたら自分が、だが、つかさやみゆきという可能性も――そう思考をめぐらせるかがみだったが、
「さぁ、おしゃべりはここまでだ!
 死にたくないなら、おとなしく捕まりな!」
 告げると同時、ボーンクラッシャーは背中にたたまれていた爪付きのアームを展開した。あれでこちらを捕まえようとでも言うのか――
「お、お姉ちゃん……!」
 自分達に迫る危機に対し、つかさは恐怖に駆られたままかがみの袖を握りしめて――
「…………つかさ。
 アンタはみゆきと一緒にいなさい」
 そんなつかさの手を、かがみは無造作に払いのけた。静かにそう告げてボーンクラッシャーをにらみつける。
(単純に考えて確率は3分の1……
 なら、その3分の1に賭ける!)
 決意と共に、かがみは呼吸を整えて――
「みゆき――つかさをお願い!」
 みゆきに告げると同時にきびすを返した。全速力で格納庫内のトランステクターに向けて走る。
「お、おい! 逃げるな!」
 そんなかがみの突然の行動に、ボーンクラッシャーは思わず声を上げ――
「つかささん、こっちです!」
 そのスキにみゆきも動いた。つかさを連れてその場を離れる。
「くそっ、余計なことしやがって!」
 結果的に、かがみの行動のせいで優位が崩れた形だ――いら立ちもあらわにボーンクラッシャーは腕部のビームガンを撃ち放った。走るかがみの足元に着弾、爆発を起こしてかがみを吹っ飛ばす!
「お姉ちゃん!」
「あ!
 つかささん、ダメです!」
 そんなかがみを見て、黙っていられなかったのがつかさだ。みゆきの制止も耳に入らず、トランステクターの目の前まで飛ばされたかがみに向けて走り――
「おっと!」
「きゃあっ!」
 そんな彼女に対しても、ボーンクラッシャーは容赦なく牙をむいた。アームを伸ばし、つかさを捕まえてしまう。
「ったく、手こずらせやがって……」
 アームを引き寄せ、つかさを眼前に持ち上げながらボーンクラッシャーが告げ――
「つかさを……放しなさいよ……!」
 そんなボーンクラッシャーに告げ、かがみはふらつく足を叱咤しながら立ち上がった。
「ん? こいつを放せってか?
 ヤなこった。なんでてめぇの言うことなんか聞いてやんなきゃいけないんだよ?」
「ひ、ひゃあっ!?」
 しかし、ボーンクラッシャーは聞く耳を持たない。かがみに答えると、つかさを捕まえたアームを軽く振り回した。たまらずつかさが悲鳴を上げて――
「放しなさいって……言ってんのよ!」
 もう一度――より強い口調でかがみはそう言い放った。
 すぐ背後の、500系新幹線型トランステクターに触れ、静かに告げる。
「私がゴッドマスターかどうかなんてわからないし……アンタに心があるかどうか、なんてますますわからないけど……お願い、今だけでいいから力を貸して。
 アイツをぶちのめして……つかさを助けるために!」
 願いを捧げるように、自らが触れているトランステクターにかがみが告げ――
 

 光が巻き起こった。
 

 強烈な力の渦が巻き起こり、かがみとトランステクターを呑み込んだのだ。
「な、何……!?」
「まさか――!?」
 思わず声を上げるつかさを捕まえたまま、ボーンクラッシャーがうめき――次の瞬間、閃光が走った。ボーククラッシャーのアームを撃ち砕き、つかさを解き放つ!
 当然、持ち上げられていたつかさの身体は空中に投げ出されるが――そんな彼女を受け止め、“それ”は大地に降り立った。つかさを大地に下ろしてボーンクラッシャーへと振り向き、
「覚悟しなさいよ……
 つかさに手を上げた罪、心ゆくまで後悔させてあげるわよ!」
 そう言い放ち――かがみがゴッドオンし、トランステクターがトランスフォームした姿“ライトフット”は脚部に収納されていた専用拳銃“ライトショット”を取り出した。
 

「あれは!?」
 かがみのゴッドオンの様子は、上空の戦場でも捉えられていた。格納庫で巻き起こった“力”の渦を観測し、スカイクェイクが思わず声を上げる。
「ゴッドマスターが覚醒した……!?
 ボーンクラッシャーでは、荷が重いかもしれんな……!」
 一方、ブラックアウト達も事態に気づいて動きを見せた。うめき、ブラックアウトが格納庫に向かおうとするが――
「させると思っているのか!?」
 今度はスカイクェイク達が足を止める側に回った。エネルギーミサイルを放ち、ブラックアウトの足を止めて立ちはだかる!
 

「なめるなぁっ!」
「そんな気なんかさらさらないわよ!」
 咆哮し、肉弾戦に持ち込もうとするボーンクラッシャーだったが、かがみはそれを許さない。軽快なフットワークでボーンクラッシャーの突撃をかわし、逆にライトショットで銃撃をしかける。
 さらに、すれ違いざまに足を引っかけて転ばせ、さらに銃撃を浴びせかけると、かがみは間合いをとり、
「おまけ!」
 さらにライトショットを連射――ただし、狙いはボーンクラッシャーではなく、その背後のスクラップの山だった。崩壊防止のネットを破壊し、崩れたスクラップの山がボーンクラッシャーを押しつぶす!
「つかさに手ェ出したアンタに、手加減なんかしてやんない……!
 速攻で最後、いくわよ!」
 

「フォースチップ、イグニッション!」
 叫ぶかがみの声に答え、真紅に輝くスピーディアのフォースチップが飛来した。ライトフットの背中のチップスロットに飛び込み、
〈Full drive mode, set up!〉
 トランステクターのメイン制御OSがフルドライブモードへの移行を告げ――同時、イグニッションしたフォースチップのエネルギーが全身を駆け巡った。 両脚の外側の装甲が展開されると内部から放熱システムが露出し、すさまじい勢いで排熱を開始する。
 さらにライトフットの両腕を通じ、手にしたライトショットへとフォースチップのエネルギーが流れ込んでいき、ライトショット自体の放熱口からも光があふれる。
〈Charge up!
 Final break Stand by Ready!〉

「OK!」
 告げる自身のメインシステムにかがみが答え――
「ハウリング、パルサー!」
 トリガーを引いた。放たれたエネルギー弾はまき散らすエネルギーで周囲を薙ぎ払いながら飛翔し――ボーンクラッシャーを直撃、爆裂する!
 爆煙の中、ボーンクラッシャーはゆっくりと大地へと崩れ落ち――
「……皆、中」
「ぐわぁぁぁぁぁっ!」
 かがみの“宣告”と同時、絶叫と共に巻き起こる大爆発――周囲でくすぶっていた残留エネルギーが大爆発を起こし、ボーンクラッシャーは天高く吹き飛ばされていった。
 

「…………お姉、ちゃん……?」
「かがみさん……?」
 突如ゴッドオンを遂げ、ライトフットとなってボーンクラッシャーを圧倒したかがみ――その姿に、つかさが、みゆきが思わず彼女を呼び――
「…………ん? 呼んだ?」
 かがみはごく普通に反応した。ゴッドオンしたままの状態ではあったが、いつもと変わらぬ様子で二人へと向き直る。
「大丈夫? お姉ちゃん……」
「んー、特に、おかしなところは感じないわねー」
 思わず尋ねるつかさに対し、かがみは自分の身体――ライトフットのボディの様子を確かめながらそう答える。
「けど、まさか私までゴッドマスターになっちゃうなんてね……」
 つぶやき、かがみは自らの右手に視線を落とした。
「昨日まで、ゴッドマスターになって、『戦う』なんて言い出したこなたに腹立ててたのに、その私が同じ立場に、なんて、タチの悪い冗談よね……」
「あの……かがみさん?」
 自嘲気味につぶやくかがみに対してどこか不穏なものを感じ、みゆきが思わず声をかけるが、
「……大丈夫よ」
 そんなみゆきに対し、かがみは穏やかな口調でそう答えた。
「力を手にしたからって……私はこなたみたいに簡単に『戦う』なんて決められないわよ。
 今だって、つかさを守りたい、ただそれだけだったし……力があるからって、絶対に戦わなきゃいけないってワケじゃないんだもの……」
 そう告げて、かがみは息をつき、
「けど……この力があれば、あのバカのムチャだって止められる……
 こなたが危なくなっても、この力があれば助けられる……」
「お姉ちゃん……?」
 つぶやくかがみの言葉に、つかさが声を上げ――
「……ゴメン、つかさ。
 ちょっとの間、私も危ない橋渡るわよ」
 そんなつかさに、かがみは決意に満ちた口調でそう告げた。
「どうせ、あのバカは止められない……あのノイズメイズ達とか、今回みたいな敵がいる限り、こなたはきっとまたムチャをする……
 絶対、すぐそばでアイツをコントロールする役が必要になる……そんな役、付き合いの浅いスカイクェイクさんには頼めないわよ。
 それができるのは……“関係者”の中じゃ私達しかいないんだもん。やるしかないでしょ」
 その言葉に、つかさとみゆきの表情が明るさを取り戻した。そんな二人にかがみもまたうなずいて――

 

 その背中で爆発が巻き起こった。

 

「な…………っ!?」
 突然飛来した閃光が背中で炸裂した――いきなりの一撃に対応できず、かがみはまともにはね飛ばされ、スクラップの山に叩きつけられる。
「お姉ちゃん!?」
 一瞬にして起きた事態についていけず、つかさが思わず声を上げ――
「やれやれ……
 ボーンクラッシャーめ、適格者をいたずらに刺激するから、こういうことになる……」
 そうボヤきながら、それは彼女達の前に降り立った。
 1体の中量級トランスフォーマーだ。そして――
「ジェノスクリーム、トランスフォーム!」
 咆哮し、ディセプティコンの三大参謀のひとり、ジェノスクリームはビーストモードであるT-REX型機動兵器へとトランスフォーム。ヨロヨロと身を起こすかがみへと突撃し、その尻尾の一撃ではね飛ばす!
「お姉ちゃん!」
「かがみさん!」
 なす術なく弾き飛ばされるかがみの姿に、つかさとみゆきが思わず一歩を踏み出し――
「動くな!」
 そんな二人を一括。ジェノスクリームは胸部――ロボットモード時の爪先に仕込んだ機銃で二人の足元を銃撃し、その足を止める。
「手間をかけさせるな。
 余計な殺しはシュミじゃないんだ」
 言って、ジェノスクリームは改めてかがみへと向き直り、
「悪いが、こちらは先日、別件でゴッドマスターに叩きのめされたばかりでな――ボーンクラッシャーと違い、油断してやる慈悲はない。
 全力で、行動不能になるまで叩かせてもらう!
 フォースチップ、イグニッション!」
 言い放つと同時、ジェノスクリームはセイバートロン星のフォースチップをイグニッション。かがみに向けて大きく口を開け、その口腔内に露出させた砲門にエネルギーを収束させていく。
「く………………っ!」
 とんでもない攻撃が来ることは素人目にもわかる――なんとか妨害しようとライトショットをかまえようとするかがみだが、先の一撃で腕がしびれたか、まともに力が入らない。
 そして――

「ジェノサイド、バスター!」

 かがみに向けて、必殺の一撃が放たれた。


次回予告
 
ブラックアウト 「よっしゃぁ! 久々の出番っ!」
ショックフリート 「リニアレール以来、久しく出番がなかったからな」
ジェノスクリーム 「だが……現在展開しているのは過去編なんだよな?」
ブラックアウト 「あぁ、そうだが?」
ジェノスクリーム 「つまり、実際の時間の中では相変わらず出番のないまま、か……」
ショックフリート 「それを言うな。泣きたくなってくる……」
ブラックアウト 「次回、魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜
 修行その26『ジンジン!連なる心
〜連結合体トリプルライナー〜』
に――」
3人 『ゴッド、オン!』

 

(初版:2008/09/20)