「………………」
目の前の光景に、イクトは心なしか痛みを訴えてきたこめかみを軽く押さえた。
ため息をつき、その光景を作り出している二人に告げる。
「……もう3日だぞ。
いい加減、機嫌を直したらどうだ?」
「そんなこと言われてもねー」
「納得いかへんもんはいかへんもーん」
うめくイクトに答えるのは霞澄とはやて――霞澄は応接用のソファで不貞寝し、はやては自分の席で体育座りのようにヒザを抱えてクルクルと回転しっぱなし。目が回らないのかと気になるが、どうやら平気なようだ。
ブレインジャッカーの一件が片付いてからずっとこの調子――これで仕事が滞ればまだそれを口実に説教もできるだろうが、この二人の場合、この状態でも仕事はキッチリこなしてくれるのでタチが悪い。
「スバルがやられて、なのはちゃん達も捕まったって聞いたから、超特急で六課に戻って来て、“ゼロ”について説明して、いざ救出作戦開始! とか思ってたのに、気づけばぜーんぶ終わってるんだもんなぁ……
私達、何のためにがんばってたの? って思いたくもなるでしょ?」
「どーせ私は裏方ですよー。影の薄い部隊長ですよー」
「どこまで子供なんだ、まったく……」
やる気にあふれるのは結構だが、それが空振りに終わったからとここまですねるのは社会人としていかがなものか――心の底からため息をつくが、このままでは話が進まない。気を取り直し、イクトは本題に入った。
「とりあえず、仕事はこなしてくれそうだから用件を言うぞ。
あの零番機……このまま放置しておくつもりか?
今のところヤツに適応される罪状は拉致監禁……あとは思考をのぞかれることによるプライバシーの侵害くらいか。
罪状がこれでは、機動六課の任務からすれば首を突っ込むのは筋違いだろうが、かと言って、ヤツの出自や機の……能力を考えると……」
「フフフ、わざわざ『機能』と言いかけたのを『能力』と言い直してあげるあたりに優しさが感じられるわねー♪」
「茶化すな」
不貞寝していた姿勢のまま顔だけをこちらに向け、ニヤニヤと笑いながら告げる霞澄の言葉に、イクトはプイとそっぽを向いてしまう。
「それより、ヤツの処遇だ。
“相手の思考を読む能力”など、厄介なことこの上ない。ヤツにこちらへ戻ってくる意志がない以上、放置しておくのは危険だろう――オレ達にとっても、ヤツにとっても」
「せやね……
あの子はジェットガンナー達のおにーさんなんやし、なんとかしたい、っちゅうのは同意見やね」
はやてがイクトに同意すると、霞澄もうんうんとうなずき、
「そうね……
今までの罪状に関しては……まぁ、イクトくんの言う通り、最近の次元犯罪に比べれば軽いモノばっかりだし、六課に協力させて司法取引、って手でいけそうね、うん」
「さすがは柾木コンツェルンの現役重役。その手の工作はお手の物か」
肩をすくめてイクトがつぶやくと、はやてはイスに座り直して彼に尋ねる。
「せやけど……具体的にはどうするつもりなんですか?
あの子がこっちの考えを読める以上、生半可な対応したところで……」
「確かに。
心を読まれては、中途半端な策など無意味だ」
あっさりとイクトはうなずいてみせ――しかし、ニヤリと笑みを浮かべてみせた。
「だが――対抗策がないワケじゃない」
『………………?』
その言葉に首をかしげるはやてと霞澄だったが、そんな二人の反応は予想の内だった。特に気にすることもなく、イクトは続ける。
「アイツは、心を読むことでこちらの動きを読んでくる。
だが……そんなヤツも、“自分が読む”ことには慣れていても、“自分が読まれる”ことには慣れていないはずだ」
「こっちが向こうの動きを読むってこと?」
「そうは言うけど……実際にそんなことができるんですか?」
「できると思わなければ、そもそも提案自体しないさ」
疑問を口にする二人に対し、あっさりとイクトは答えた。
「オレ達はヤツのことをよく知らない――ヤツの教導を担当したライカも、ヤツが教導中に失踪している以上、それほど長い付き合いがあったとも思えない。
だが――」
そこで一度言葉を切り――イクトから告げられた一言に、はやてと霞澄は思わず顔を見合わせた。
「ヤツの“同類”なら、少なくともオレ達よりはヤツのことを理解できるんじゃないのか?」
第29話
サバイバルだよ大行進!
〜アニマトロスぶらり旅〜
「……と、ゆーワケで。
みんなには、外での訓練も兼ねて、残る3体のトランスデバイス、1〜3番機を迎えに行ってもらおうと思います」
「あたし達が……ですか?」
機動六課主要メンバーを集め、そう説明を締めくくったはやての言葉に、ティアナは困惑もあらわにそう聞き返した。
「ブレインジャッカーはジェットガンナーと同じトランスデバイス。そのAIには同じプログラム・コアを使ってる――それは霞澄さんから確認済みや。
学習や経験によって、人格はそれぞれ独自のものに育ってくけど、その根本は同一。つまり……」
「基本的な考え方は、同じ……?」
「せや」
つぶやくスバルに、はやては満足げにうなずいてみせる。
「もちろん、経験の量も内容も異なる両者だ。ジェットガンナーがブレインジャッカーの動きを読むには、それだけの要素では足りないが……」
「そこで、マスター・イクトは私達トランスデバイス、GLXナンバーを集結させることを考えた。
それぞれ異なる学習をしてきた私達が集結することで、さまざまなケースを想定、ひいてはブレインジャッカーの動きを読みやすくするのが狙いだ」
「ま、“三人寄れば文殊の知恵”ってヤツね――今回は4人になるワケだけど」
はやてに代わりイクトが説明、ジェットガンナーとライカが付け加えるのを聞き、なのは達は思わず顔を見合わせ――
「“船頭多くして船山に登る”なんてことにならなければいいがな」
「はいソコ、余計な茶々は入れないように」
軽口を叩くマスターコンボイに対し、ライカは少しばかりムッとしながらそうたしなめる。
「とりあえず、編成はフォワードチームと隊長格1名。残りのメンバーはフォワードチームの留守中の事件に備えて待機や」
「誰が来るんですか?」
と、はやてに聞き返すのはエリオだ。
「“隊長格1名”って言い方をするってことは、なのはさんとは限らないんですよね……?
……ひょっとして、イクト兄さんですか?」
「オレは“隊長”じゃないだろう」
イクトが肩をすくめてエリオに告げると、はやてがエリオの疑問に答えた。
「今回は、フェイトちゃんにお願いしようと思ってる」
「わ、私……?
でも、スカリエッティの捜査が……」
「あぁ、そっちは私が引き受けてあげるわよ」
はやてに反論しかけたフェイトに告げるのはライカだ。
「で、でも……」
「だいじょーぶ。
こちとら実働教導隊の隊長さんよ――いろんな事件に教え子を連れ回す手前、捜査スキルだってバッチリ身につけてるんだから♪
“Bネット”の捜査部からも度々ヘルプの依頼が来るぐらいなのよ」
「いや、そうじゃなくて……」
自分のするはずだった仕事を肩代わりさせるのが心苦しいのだ――そう伝えたいフェイトだが、ライカはそんな彼女の肩をポンポンと叩き、
「それに、ずっとひとつの事件ばっかり追いかけてると、視野が狭くなっちゃうわよ。
一度余所に目を向けて、視野の広さを取り戻してきなさい――これ、先輩捜査官としてのアドバイスね」
「は、はい……」
ライカの言葉に、とりあえずフェイトは納得したようだが――
「そっか……今回はフェイトちゃんか……
私も行きたかったなぁ……」
一方で、主任教官であるなのはは、“訓練も兼ねている”という今回の出動に同行できずに残念がっていた。ため息まじりにそうつぶやくと、
「心配するな。
貴様は貴様で、こっちでやることがある」
そんななのはに答え、イクトは彼女の肩をガッシリとつかみ、
「お前からスバル達が離れるのはいい機会だ。
こいつらがいない間、みっちり鍛え直してやる」
「え゛!? いや、ちょっ、イクトさん!?」
「なに、心配するな。
……地獄は最初の内だけだ」
「いやぁあぁぁぁぁぁっ!」
有言実行のマジメ人間であるイクトに『地獄』などというたとえを持ち出されて落ち着いてなどいられない――必死の抵抗を試みるなのはだったが、彼にパワーで勝てるはずがない。そのまま強制連行され、退場と相成った。
「……まぁ、ヤツはともかくとして」
しかし、そんななのはの姿も、ここ最近の日常風景ともなればイヤでも慣れる――コホンと咳払いして場を仕切り直すと、マスターコンボイは改めてはやてに尋ねた。
「同行者がフェイト・T・高町ということはわかった。
それで……行き先はどこだ? ミッドチルダの中か?」
「ううん」
その問いに対し首を左右に振り、はやては告げた。
「今回の行き先は第97管理外世界、現地惑星名――」
「アニマトロスや」
そんなやり取りを経て、機動六課フォワード部隊はフェイトの指揮で惑星アニマトロスへと向かうことになった。
スペースブリッジを使い直接移動。アニマトロスへと何事もなく到着し――
『暑っ!』
初来訪となる面々のウソ偽らざる感想が唱和した。
「何なのよ、この暑さ!
真夏のミッド南部ですら、ここまで暑くないわよ!」
「現在の気温、43℃を記録」
滴る汗をぬぐいながらうめくティアナだったが、そのとなりからジェットガンナーが追い討ちとばかりに現実を突きつけてくれる。
「元々、アニマトロスはあちこちで地殻変動が起きてる活発な星だからね――あちこちで常に流れている溶岩流が空気を暖めて、この暑さを作り出してるんだよ」
「よ、溶岩が、常に……?」
「それでこの暑さ……納得だわ」
ジャックプライムの説明にスバルとティアナがうめくようにつぶやき――しかし、理由がわかったからと言っても、それで涼しくなるワケではない。二人そろってため息をつく。
「エリオくん、大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だよ……今のところは」
一方、汗だくになっているのはこちらにも――気遣うキャロにエリオが答えると、
「フンッ、情けない」
そんなフォワード陣に告げるのはマスターコンボイだ。
「この程度の暑さで音を上げるとは……
もう少しぐらい、根性を見せたらどうだ?」
「って、ヒューマンフォームで知覚する暑さに耐えかねて、すぐさまロボットモードに戻った人が言っても説得力ないよ」
「………………」
汗をぬぐいながらツッコむアスカの言葉は図星だった。無言でマスターコンボイはそっぽを向き――そんな一同にフェイトが声をかけた。
「と、とにかく、この星のリーダーのトランスフォーマー達に会いに行こう。
霞澄さんの話だと、ちゃんと断りを入れた上で滞在させてもらってるらしいから、きっと居場所を知ってるよ」
『了解!』
「ふぇ〜、やっと涼しい場所に落ち着いたわ……」
「ですね……
石造りの建物って、見た目ほど暑くないんですね……」
トランスデバイスの居場所の手がかりを求め、やってきたのはアニマトロスの政治中枢である王の神殿――謁見の間で待たされている間、つぶやくアスカにティアナが同意する。
「フェイトさん、この星のリーダーっていうのは……?」
「うん。フレイムコンボイとギガストームだね」
一方、アニマトロスのリーダーについてフェイトに尋ねるのはキャロだ。優しく微笑み、フェイトは彼女にそう答える。
「けど、二人とも“新(真)スペースブリッジ計画”で不在になりがちだから、いつもはみんなで協力し合って代行してるんだけどね」
「そうなんですか……」
フェイトの説明にエリオが納得すると、
「フェイト、ジャックプライム!」
「久しぶりだな!」
姿を見せるなりフェイトとジャックプライムに向けて声を上げたのは懐かしい顔ぶれ――野獣副司令官ブレイズリンクスと猛獣指揮官ファングウルフである。
「ブレイズリンクス! ファングウルフ!
久しぶりだね、元気だった?」
「問題ない。
知佳やアルフからもよく連絡が来るぞ――二人とも息災のようだな」
笑顔で応じるフェイトに答えると、ブレイズリンクスはマスターコンボイと向き直り、
「貴様も久しいな、マスターコンボイ」
「…………フンッ」
声をかけるブレイズリンクスだが、マスターコンボイは鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまう。
そんなマスターコンボイの反応に苦笑しつつ、ブレイズリンクスはフェイトに対し本題に入った。
「ところでフェイト。
アニマトロスに来た用件については、すでにはやてから連絡をもらっている。
教育中のトランスデバイスを迎えに来たそうだな?」
「あ、うん……
ブレイズリンクス、どこにいるか教えてくれないかな?」
「それなら、“ヤツ”の方が詳しいだろう。
何しろ、彼らをアニマトロスに受け入れた張本人だからな」
「“ヤツ”……?
ひょっとして……」
ブレイズリンクスの言葉にジャックプライムがつぶやいた、その時――
「もちろん、オレ様のことだ」
その言葉と共に、彼は後ろの入り口から悠々と謁見の間に姿を現した。
ドラゴン型のビーストトランスフォーマーだ。しかし――
「ギガストーム! トランスフォーム!」
フェイト達にとってはなじみの顔だった。咆哮し、彼――ギガストームはロボットモードにトランスフォーム、フェイト達の前に着地する。
「久しぶりだな、小僧ども」
「ホントに久しぶりだね、ギガストーム。
ボクらとは、“真スペースブリッジ計画”の出発式以来だったっけ?」
告げるギガストームに答えると、ジャックプライムはスバル達へと向き直り、
「紹介しておこうか。
このアニマトロスの大帝の――」
「暴虐大帝、ギガストーム……ですよね?」
「――って、あれ?」
自分に先駆けて彼の名を告げたのはスバルだった。ジャックプライムが肩をコケさせる中、ギガストームの前に進み出て、
「久しぶり、ギガストーム!」
「おぅ、ゲンヤのところのチビスケか。
お前の兄貴は元気にしてるか?」
シュタッ、と手を上げてあいさつするスバルに、ギガストームもまたニヤリと笑みを浮かべて応じる――そんな二人のやり取りに声を上げるのはフェイトだ。
「す、スバル!?
ギガストームと知り合いだったの!?」
「あ、はい……
スカイクェイクさんつながりで知り合って……師匠と一緒に戦ったこともあるそうですよ」
「ま、腐れ縁のオマケみたいなもんだ」
フェイトに答えるスバルに付け加え、ギガストームはガハハと豪快に高笑いしてみせる。
「ま、それはともかく……本題に入ろうか。
お前らのお目当ての連中は、南部の湿地帯で訓練をしてる」
「『連中』……?
ひとりじゃないの?」
「あぁ、付き添いがいる」
思わず聞き返すフェイトに答えると、ギガストームはクルリときびすを返し、一同に告げた。
「まぁ、会ってみればわかるだろ。
とりあえず、ヤツらのところに向かうとしようか」
「……普通、トランスフォーマー同伴で現地に向かうと言われたら、当人達に乗せていってもらうって思うわよね……
まさか、こんな手段で行く事になるなんて、思いもしなかったわよ」
「そう言うな。
コイツも、なかなか味があっていいだろうが」
「湿地帯にはこれで向かう」とギガストームが持ち出してきたのは、意外とも言える移動手段だった――つぶやくティアナに対し、ギガストームはバカにするなとばかりに口をとがらせてそう答える。
「それにしても意外には違いあるまい。
他にいくらでも手段はあるだろうに、こんな――」
「熱気球で、か?」
そう――マスターコンボイとギガストームが交わす会話の通り、彼らが乗っているのはトランスフォーマーでも乗れるほどに巨大な熱気球だった。
「確かに、レトロなことは認めるがな――元々熱帯気候のアニマトロスは空気が暖めやすい。
空路において大人数で動く場合、一番効率のいい乗り物なんだよ。
それに――」
言って、ギガストームが視線を向けた先には、眼下に見える景色を楽しんでいるエリオやキャロ、スバルの姿があった。
「ガキどもには大好評のようだが?」
「あーあー、わかったわかった。
貴様の手段がベストだった。そういうことでいいんだろう?」
ギガストームの指摘はまぎれもない事実だった。自信タップリに告げるギガストームの言葉に、マスターコンボイは半ば投げやり気味にそう答える。
ちなみに、スバル達は皆ギガストームからリュック式のパラシュートを渡され、身につけている。「万一の事故に備えて」ということなのだが――
「エリオやキャロ達はともかく、どうして私も……?
私は飛べるから、パラシュートなんて……」
「フンッ、魔法で飛べるから、か?」
フェイトもまたパラシュートを身につけていた――窮屈そうにつぶやくフェイトに対し、ギガストームは鼻を鳴らして聞き返す。
「貴様……10年前の“戦役”の時、不意打ちくらって仲間とはぐれて、ビックコンボイに助けられたことを忘れたか?
実力があろうが関係ない。その実力を発揮できなければ、どんな強者だって無力なんだからな」
「魔法を過信するな……ってことですか?」
「そういうことだ」
フェイトに答えると、ギガストームは不意に視線をそらし、
「……ま、すぐに思い知ることになるだろうがな」
「………………?」
「っと――」
つぶやきを聞きつけ、フェイトが眉をひそめるが――彼女が追求しようとするよりも早く、ギガストームは気球のゴンドラ、その一角に設置された端末(バッテリー駆動式)へと向き直り、
「そろそろ、貴様らのデバイスに地図データの転送が終わるな……」
「ずいぶん時間がかかりましたね……しかも有線接続だし」
「そう言うな。
アニマトロスには機械に強いヤツが少ないんだ――仕組みがシンプルな、レトロなメカの方が扱いやすいんだよ」
端末から延びたコードは、起動状態で並べられたバルディッシュ以下一同のデバイスに接続され、データが転送されている――つぶやくフェイトに答え、ギガストームはスバル達に声をかける。
「はーい、機動六課ご一行様、集合〜〜っ!」
「何ナニ? ギガストームさん?」
「もう着くんですか?」
「いやナニ。
少しばかり、貴様らにアニマトロスをガイドしてやろうと思ってな」
バスガイドでも気取っているのか、裏声で呼び集めたスバル達にそう答えると、ギガストームは右手でアニマトロスの風景を指し示し、
「みなさぁ〜ん♪ 右手をご覧くださぁい♪」
再び裏声で声を上げるギガストームに対し、アスカはすかさず告げた。
「『真ん中に見えるのが中指です♪』とかいうネタはナシだからね」
間。
「帰る。
今日はもー帰って寝る」
「ネタをつぶされたからと気球の進路を反転させるんじゃない!」
進路を操っている簡易バーナーの向きを反対側に向けようとするギガストームに対し、マスターコンボイは力いっぱいツッコミを入れる。
「ぐぅ……しかし、オレのネタを先読みしてツブしに来るとは……
マスターコンボイ、優秀な相方を見つけたな。ヤツとならコメディアンの頂点を狙えるぞ」
「相方ではないしコメディアンでもない」
「それは何? フォワードチームでひとりだけゴッドオンできないあたしへのイヤミ?」
しかしそれで簡単に引き下がるギガストームではない。再びボケるその言葉に、マスターコンボイとアスカが再度のツッコミを敢行し――
「けど、考えてみれば不思議だよね」
アスカの「自分だけゴッドオンできない」という発言を聞きつけ、不意にそんなことを言い出したのはスバルだ。
「あたしにエリオにキャロにティア。
これだけフォワードチームから次々にゴッドマスターが出てきてるのに、アスカさんだけゴッドオンできないままってのもね。
何か理由でもあるのかな?」
「別にないでしょ。単なる偶然なんじゃないの?」
「えー? そんなことないよ!
きっと、ゴッドマスターにあったあたし達には共通点があるんだよ!」
投げやり気味に答えるティアナにスバルが言い返すと、ギガストームがポツリ、と一言。
「…………“若さ”とか?」
間。
「……トドメ刺すけどいいよね? 答えは聞いてない」
時として、女性に対する年齢の話題は限界を超えた力を発揮させる――素手でギガストームを殴り倒し、アスカは危険なオーラを立ち上らせながら言い放つが、すでに物言わぬ屍と化しつつあるギガストームからの返事はない。
そんなアスカに対し、フェイト達は身を寄せ合って震え上がり――
「……ねぇ? みんな」
静かに振り向き、アスカはそんな彼女達へと声をかけた。
表情は屈託のない笑顔だが――放たれるプレッシャーが尋常ではない。今の彼女なら神をも殺せる。そう一同が確信したのは決して錯覚ではあるまい。
そして、アスカが告げるのはたったひとつの問い――
「……“若さ”じゃないわよね?」
「は、はい!」
「絶対に違うと思います!」
ビシッと姿勢を正してスバルとティアナが答え、エリオやキャロ、フェイトも必死にコクコクとうなずいてみせる。
「……そうよね。
まったく、失礼しちゃうよ。あたしだってまだまだ花の20代なんだから」
そんな彼女達の答えに機嫌を直したか、アスカはぷぅと頬をふくらませてそうつぶやき――
「それに……仮定だけど“理由”だってわかってるんだから……」
「………………?
アスカ……?」
小声でつぶやくアスカにフェイトは首をかしげ――
「……あ、あー……
川の向こうで死んだばあちゃんが手ぇ振ってた……」
「そのまま渡りなさいよ、川」
「……容赦なくなったなー……」
「ムリはないだろう。
私の中の礼節のデータから見ても、ギガストームの発言は彼女を怒らせても仕方のないものだった」
復活したギガストームに対し、アスカは冷たく言い放つ――苦笑するマスターコンボイの言葉にはジェットガンナーが答える。
「それはともかく、そろそろ南部エリアに入るぞ」
「じゃあ、もうすぐなの?」
「そうだな。
空路なら早いもんだ。これが陸路なら障害物だらけだからな、ここからさらに3日はかかる」
聞き返すフェイトに答えると、ギガストームは気球のゴンドラに備えられたレバーに手をかけ、
「だから――」
「お前達にはその“3日の行程”を体験してもらおう」
その言葉と共に、ギガストームがレバーを引き下げたのと同時――
ゴンドラの底の一部が外れ、フェイト達は空中に投げ出されていた。
「………………え?」
何が起きたのか、一瞬わからなかった――が、全身を包む落下感は、フェイトに状況を的確に伝えてきた。
「…………えぇぇぇぇぇっ!?
なんで!? どうして!?」
なぜ自分達が空中に放り出されなければならないのか――あわてて声を上げるフェイトだったが、
(――――そうか!
このパラシュート、最初からそのために!)
ようやく気づいた。「万一に備えて」とギガストームが自分達に身につけさせたパラシュートの真の意味に。
要するに、ギガストームは最初から自分達をこの場で放り出すつもりだったのだ。
見れば、スバル達も同様に空中に放り出された状態で混乱している――
「く…………っ!
バルディッ――」
自分が何とかしなければ――とっさにバルディッシュを起動させようとするフェイトだったが、
「――そうか、バルディッシュは!」
当のバルディッシュはゴンドラの中に置き去りだ――魔法による救助はできない。やはりこのパラシュートを使うしかないようだ。
「みんな! パラシュートを展開して! 早く!」
「お、おい、ギガストーム!?」
一方、こちらは気球のゴンドラ――難を逃れたマスターコンボイは、あわててギガストームに対し声を上げた。
「どういうつもりだ!?
なぜアイツらを――」
「私がフォローに向かおう」
その一方で、ジェットガンナーは冷静に対処した。パートナーであるティアナを始め、空中に放り出されたメンバーを救おうと空中に飛び立ち――
「待て!」
そんな彼を、ギガストームは鋭い声で呼び止めた。
「ヤツらを助けに行くことはオレが許さん」
「なぜだ?」
「その必要はないからだ。
…………そら、見てみろ」
聞き返すジェットガンナーに答え、眼下を見下ろしたギガストームの視線の先で、スバル達はフェイトの指示でパラシュートを展開。地上に向けて降下していく。
「何のためにパラシュートを渡したと思っている。
ヤツらを無事に降下させるためだろうが――魔法によるものとはいえ、降下訓練はヤツらも受けてるんだろう? 問題なく降下できるはずだ」
「…………なるほどな。
ならば質問を変えよう。なぜヤツらをこんなところで降下させた?
まだ南部エリアに入ったばかり――貴様の話では、陸路ではあと3日はかかる距離だそうじゃないか」
「それもちゃんと理由があるさ」
尋ねるマスターコンボイにも、ギガストームはあっさりと答えた。
「アイツらの、レベルアップのためだ」
「み、みんな……大丈夫?」
「なんとか……」
「とりあえず、みんなはぐれずに降下できたみたいですね」
最初はいきなりのことであわてたが、フェイトの指示で落ち着きを取り戻してからは難なく事は運んだ――無事ジャングルの中に着地し、尋ねるフェイトにはキャロやティアナがパラシュートを外しながらそう答えるが、
「お、下ろしてぇ……」
あまり大丈夫じゃなかったのが若干1名――パラシュートが木に引っかかってしまい、アスカは情けない声で助けを求める。
と――
「きゅく……?」
キャロの外したパラシュートをのぞき込んでいたフリードが何かに気づいた。
見れば、パラシュートのベルトに何やら折りたたまれた紙がはさまっている。フェイト達のパラシュートにも同様のものが確認できる。
「メモ、かな……?」
つぶやき、フェイトは自分のパラシュートに仕込まれていた紙を開き――内容に目を通した。
そこにはプリントアウトした伝言。内容は――
『出迎えついでに訓練だ。
そこから目的地まで自力でたどり着け――ギガストーム』
確認したが、他のメンバーのパラシュートに仕込まれていたメモも同じ内容だった。
「なるほど……『地図データを転送するから』ってデバイスを私達から預かったのもこのためか……」
つぶやき、フェイトはゴンドラの中でギガストームと交わした「魔法を過信するな」云々の会話を思い出した。おそらくギガストームは、この課題を魔法なしで乗り越えろ、と言いたいのだろう。
「上等じゃない。
要は、このジャングルを抜けて、目的地にたどり着けばいいんでしょ? そんなの、訓練校の行軍訓練で……」
「そんな簡単なものじゃないよ」
自信タップリに告げるティアナだが、そんな彼女に対しフェイトは真剣な表情でそう答えた。
「アニマトロスの自然は結構きびしいよ――トランスフォーマーでも油断してたら命を落とすぐらいにね。
さっきも言ったけど、あちこちに溶岩流が流れてるし、他にも地震が多かったり、トランスフォーマーとは別に凶暴な野生動物だっているんだよ」
グルル……
「そうそう、ちょうどこんな感じの……」
言いかけ――フェイトは動きを止めた。
フェイトの目の前で、彼女よりも一足早く状況を理解したティアナ達が硬直している――振り向き、フェイトもまたそれを見た。
アニマトロスのビーストトランスフォーマーとは明らかに違う、恐竜を思わせる容姿の大型有機生命体を。
「……フェイトちゃん。
バルディッシュなしでコイツに勝てる?」
「……ちょっと、ムリかな……」
尋ねるアスカにフェイトは数秒の思考の後にそう答える――しかしそれもムリのない話だ。彼女達は魔導師。すなわち魔法によって各種の行動を行なうのが基本であり、その魔法の行使においては多くの部分でデバイスのサポートを受けている。
つまり、デバイスを手放している現状では、いかにオーバーSランク魔導師であるフェイトといえど大した魔法は行使できない。目の前の猛獣を相手に発揮できる戦闘力もたかが知れているワケだ。
となれば、彼女達の取り得る選択肢はたったひとつ。つまり――
『総員、退避ぃぃぃぃぃっ!』
声をそろえて叫び、フェイトとアスカが同時に走り出した。彼女に追従する形でスバル達も逃げ出し――恐竜の雄叫びが熾烈な追撃戦の幕開けを告げた。
「……なんとか、逃げ切ったね……」
「よくもまぁ、あの状況で誰もはぐれずに逃げ切れたもんだわ……」
「し、死ぬかと思った……」
結論として、恐竜からは何とか逃げおおせた――息を切らせ、フェイトが、アスカが、ティアナが思い思いにそううめく。
「あー……安心したらのどが渇いちゃったよ……」
つぶやき、スバルは大きく伸びをして――そんな彼女の耳がすぐ近くから聞こえてくる水音をとらえた。
「川……?
やった! 水が飲める! みんなも早く!」
そう気づけば行動は早かった。スバルは一同を先導する形で駆け出し――すぐに目的の水源である小川を見つけた。
そのまま、水を飲もうと流れる水へと手を伸ばし――
「ま、待ってください!」
そんなスバルをキャロが止めた。
「どしたの? キャロ」
「この川……どこかおかしいです」
尋ねるスバルに答え、キャロは周囲をキョロキョロと見回す。他の面々もそれにならい――最初に不審点に気づいたのはフェイトだった。
「……あれ?
別に川原ってワケでもないのに、川の周りに植物が少ないような……」
「それに、水場なのに、動物の姿がちっともないみたいだし……」
フェイトが、そして彼女とは別のことに気づいたアスカが声を上げ――キャロは試しに小石をひとつ拾い上げ、川の中に投げ込んでみる。
と――ポチャンッ、と音を立てて水中に没した小石からブクブクと泡が立ち始めた。泡はすぐに勢いを増していき――それが収まった頃には、小石は視認も困難なほどに小さくなってしまっていた。
「酸化してる……? それも、こんなに強烈に……!
ひょっとして、あちこちで活動してる火山のせい?」
「はい……
火山活動の激しい星だってフェイトさんに聞いて、もしかしたらとは思ってたんですけど……」
「なるほど。さすがは自然保護区育ち……
けど、そうなるとうかつに水場は選べないわね……」
アスカに答えるキャロの言葉にティアナがつぶやき――
「ちょっ、なんでみんなあたしの方を見るの!?」
一同の視線はスバルに集まった。突然注目を浴び、スバルは戸惑いもあらわに声を上げる。
「ひょっとして、あたしがまたハズレを引くんじゃないか、とか思ってない!?
失礼しちゃうなー! あたしだって、同じ間違いはやらないよ!」
「いや、そうは思うんだけどね……」
「なんか、スバルってゴール目指して一直線! なイメージがあるからねぇ……どうしても不安を感じずにはいられないというか……」
「そ、そんなことないよ!
フェイトさん達もそう思いますよね!?」
ティアナやアスカに反論し、同意を求めてくるスバルの言葉に、フェイトやエリオは顔を見合わせ――
「……そ、ソウダネ。すばるナラ大丈夫ダヨネ」
「ソウデスネ。キット……」
「なんで二人とも棒読みなの!?」
スバルの声は泣き声に近くなっていた。
そんなやり取りもあったが、気を取り直してフェイト達は目的地であるトランスデバイスの訓練地点を目指して出発した。
しかし、そんな彼女を待ち受けていたのはアニマトロスの厳しい自然の数々だった。
間欠泉地帯ではエリオが勢いよく噴き出した温泉に吹っ飛ばされ――
木々に紛れていた食人植物にアスカがつかまって――
茂みに隠れていた底なし沼にフェイトがはまりかけ――
野営の際、ティアナが見つけてきた木の実が実は毒を持っていたりして――
そんな中、威力を発揮したのが自然保護区育ちのキャロが持つ自然に対する知識の数々だった。彼女の助言を頼りに、一行は次々に襲いくる自然の猛威を潜り抜けていく。
そんなこんなで3日が過ぎ、目的地まであと少しというところまでたどり着いた頃には――
「みなさん、地図によればあと少しですからがんばってくださいねー♪」
『了解、キャロ隊長!』
「え、えっと……」
小隊リーダーが交代していた。
「しっかし、ここまでの道中を思い出せば出すほど、キャロちゃんの知識には助けられたよねー……」
「そうだね。
私も小さい頃はアルトセイムの山で育ったから、野外行軍にはそれなりに自信があったけど……ぜんぜん甘かったんだって思い知らされたよ……」
キャロを先頭にジャングルを進み、後方の警戒はこの二人――つぶやくアスカに、フェイトもまた苦笑まじりに同意する。
「とにかく、目的地まであと少し……」
「あたしはとりあえずシャワーを浴びたいわ……
ギガストームの話だと同伴者もいるみたいだったし、あのまま帰ってなかったらギガストーム達も向こうに先行してるはず……そうなればそれなりに宿泊設備も用意してるでしょ」
隊列の中央には誰に危険が迫っても対処できるように素早いエリオを待機させ、左右の警戒はスターズFの二人――スバルの言葉にティアナがそう答えると、
「…………ぎゅっ」
突然、キャロの頭の上でフリードが顔を上げた。真剣な表情で周囲を見回し始める。
「どうしたの? フリード」
「まさか、また猛獣が……?」
さすがにこの3日間ジャングルで死ぬような思いを繰り返せば注意力も磨かれる――警戒し、スバルとティアナが左右に異変がないか探り始める。
右サイド、スバル側のジャングルに動く気配はない。ティアナの警戒する左サイドも、少し離れたところに沼地があるおかげで視界が開けているが特に異変は見られなくて――
「――ティアさん、沼の中!」
気づき、動いたのはエリオだった。ティアナを突き飛ばし、沼の中から飛び出してきた“それ”の突進から彼女を救う。
「あ、ありがと、エリオ!」
驚きながらも礼を言うが、今は襲撃者への対処が先だ。すぐに身を起こし、ティアナは襲撃者を視界に捕らえた。
空中を泳ぐノコギリザメ――もちろんただのサメではない。その全身は金属の装甲に覆われている。
つまり――
「トランスフォーマー!?」
「トランスフォーム!」
驚くフェイトの言葉を合図に、襲撃者であるノコギリザメ型トランスフォーマーはロボットモードへとトランスフォーム。ノコギリ状の鼻先が変形したサーベルを手に一同に襲いかかる!
「何なのよ、アンタ!
いきなり襲ってきて! あたし達に恨みでもあるの!?」
「恨みなどないでござるよ!」
言い放つアスカに答え、トランスフォーマーはサーベルをかまえ直し、
「しかし……守ると誓った平穏のためには、汝らを消すもやむなし!」
言い放つと同時――トランスフォーマーは再び地を蹴った。振り下ろした一撃をフェイトは素早くかわし、狙いを外した斬撃は大地に叩きつけられ、鋭利な斬り跡を大地に刻む。
「話ぐらい……聞いてくれてもいいじゃない!」
そんなトランスフォーマーに対し、スバルは背後から襲いかかるが――
「侵入者を相手に、聞く話などないでござる!」
トランスフォーマーは素早く対応、振り向きざまの一撃でスバルを弾き飛ばす!
「まずは、お主からでござるよ!」
言って、トランスフォーマーは地面に叩きつけられたスバルに向けてサーベルを振り上げ――
「待ってください!」
そんな両者の間に割って入り、キャロはスバルを守るようにトランスフォーマーの前に立ちはだかった。
「…………何のつもりでござるか?」
「わたし達が、あなたの縄張りに入ってしまったのなら、それはわたし達が悪いです。ごめんなさい」
尋ねるトランスフォーマーに対し、キャロはそう答えて頭を下げ、
「けど……わかってください。
わたし達はあなたと戦うつもりはありません。ただ、この近くに用があって来ただけなんです。
だから、戦いはやめてください!」
そう呼びかけるキャロの姿を、トランスフォーマーはしばし観察していたが、
「…………武装は、しておらぬようでござるな」
「じゃあ……」
わかってくれたのか――トランスフォーマーの言葉に顔を輝かせるキャロだったが、
「しかし、だからこそ逆に怪しい。
このアニマトロスの厳しい自然の中、ろくな装備もなしにここまで来られるはずがないでござる!」
「そ、そんな!」
トランスフォーマーはあくまでこちらを敵と見なすようだ。刃をかまえて告げるその言葉に、キャロは思わず声を上げる。
しかし、トランスフォーマーはかまわない。キャロに向けてサーベルを振り降ろし――
止まった。
振り下ろされたトランスフォーマーのサーベルが――
沼から伸びた、水の帯によってからめ取られて。
「こ、これは……!?」
突然トランスフォーマーのサーベルにからみつき、キャロを救った水の帯を見て、フェイトは思わず声を上げ――
「そこまでです」
静かに告げ、水の帯を作り出した張本人はフェイト達の前に姿を現した。
腰まで伸ばした黒髪をまとめ、周囲のジャングルの風景から見ると明らかに場違いな巫女服に身を包んだ女性である。
「刃を収めなさい。
その人達に敵対の意思はありませんよ」
「しかし、師よ……この者達は拙者達の縄張りに……」
「ただの通りすがりかもしれないでしょう?
守ろうとする対象に近づく者に対して、過剰に反応してしまうのはあなたの悪いクセよ、シャープエッジ」
「シャープ、エッジ……!?」
巫女服の女性が告げたトランスフォーマーの名――それを聞き、フェイトは思わず声を上げた。
その名に覚えがあったからだ。
「ひょっとして……“GLXナンバー”の、2番機……!?」
「えぇ。
“GLX-02”シャープエッジ……それが彼の名です」
つぶやくフェイトに答え、女性はキャロにかばわれていたスバルを助け起こし、
「大丈夫? スバル」
「え……?
スバルさんのこと、知ってるんですか?」
「えぇ。
もうずいぶんと長い付き合いですね」
尋ねるキャロに女性が答えると、目を回していたスバルが意識を取り戻した。女性の存在に気づき、呆然と声を上げる。
「……す、すず、姉……?」
「えぇ♪」
笑顔でうなずくと、女性はスバルをキャロに任せて立ち上がるとフェイトへと向き直り、
「ウチのシャープエッジが失礼しました。
私は彼の実地教導を担当する、“Bネット”救難部、機動医療隊々長、並びに技術部、技術開発局局長――」
「水隠鈴香といいます。
以後、よろしくお願いしますね♪」
なのは | 「フェイトちゃん、行軍中、食事とかはどうしてたの?」 |
フェイト | 「えっと…… 実は、キャロが全部用意してくれて……」 |
なのは | 「全部って……材料とか?」 |
フェイト | 「ううん。ホントに全部…… すごいんだよ……捕まえた魚、石を削り出して作った簡単な包丁で全部さばいちゃって……」 |
なのは | 「さ、サバイバーだね……」 |
フェイト | 「次回、魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜 第30話『“優しさ”という“強さ”〜一閃、シャープコンボイ!〜』に――」 |
二人 | 『ゴッド、オン!』 |
(初版:2008/10/18)