「さて……実際会うとなると、やっぱり準備は必要ね」
 スカリエッティのアジトの一角――自分以外誰もいないミーティングルームでつぶやきながら、ウーノは目の前にウィンドウを展開した。
 そこに表示されたのは最近のファッション情報――条件を少しずつ加えて絞り込み検索をかけ、自分に似合う服装を選んでいく。
「変な格好では、グリフィス・ロウランに警戒感を与えてしまうだろうし……
 彼の素の姿を観察するためにも、余計な不安要素は極力排除しないと……」
 その目的は、直接顔を合わせることとなったグリフィスに対し良い印象を与えるため――しかし、それは決してデートなどという甘い目的から来ているものではなかった。
 直接の原因は先日グリフィスから文通の返事として届けられた果たし状――今までの彼とはまるで違うその文面から、ウーノは強い衝撃を受けた。
 自分が集めたデータから評価するグリフィス・ロウランは、けっしてこんな好戦的な文章を書くような人間ではなかった――自分の集めた情報が間違っていたのかと、あの時は自分の力に対する自信を打ち砕かれそうな衝撃を受けた。
 だからこそ――直接会うことにした。
 直接彼と対面し、その人物を自分の目で評価するために。
 だが――
「…………ウーノ姉様……かなり真剣に選んでるわね……」
「あ、あぁ……」
 そんなウーノの思惑に気づかず、単に“グリフィス・ロウランとプライベートで会う”という表面上の事実しか認識していない他の姉妹達にとって、そんな彼女の姿は困惑の種以外の何物でもなかった。物陰からその様子をうかがい、うめくクアットロの言葉に、チンクもまた眉をひそめてうなずいてみせる。
「まさか……本気でグリフィス・ロウランに惚れたとか?」
「バカな。
 ウーノだぞ? ヤツが色恋沙汰などに興味を示すはずがないだろう」
「でも、あの真剣さはそれ以外の理由じゃ説明つかないんじゃ……」
 自分の仮説をバッサリと否定するトーレだったが、それでも納得できないディエチは首をかしげるしかない。
 その一方で――
「よーしっ! いよいよウー姉とグリフィス・ロウランが接触っスよ!」
「敵だろうがかまうもんか! その辺はヤツらをブッつぶすついでにアイツだけ拉致ってウーノ姉にプレゼントすれば万事オッケー!
 拉致った後のたらし込み――もとい、説得の下準備に、ここでグリフィス・ロウランの好感度を一気に稼ぐぞーっ!」
 セッテ、オットー、ディード――新入りのナンバーズ3名、さらにノーヴェを前にテンションを上げるのは今回の事態の元凶、ウェンディとセインである。
「…………あの、セイン、ウェンディ。
 まさか、私達も協力するのですか?」
「当然っスよ!」
 首をかしげ、尋ねるセッテだが、そんな彼女にウェンディはハッキリとうなずいてみせた。
「みんなの“お姉ちゃん”の未来がかかってるんスよ!
 あたし達みんなが協力しないでどうするっスか!」
「そんなワケで、あたし達みんなでバックアップだ!
 あたし達のために、なんて思わなくていい――ウーノ姉のために、その力を尽くせ!」
「わかりました。
 そういうことでしたら」
「ボクらもやる。
 ほら、セッテも」
「…………わかりました」
 セッテの言葉にディードやオットーがうなずき、さらに二人に促されたセッテも、未だ納得しかねる部分があるものの同意する――“自分達のため”ではなく“ウーノのため”にと3人の意識を誘導したセインの話術に、思わずチンクは感心する。
 ――同時に、それをこんなしょーもない事態で発揮しないでほしいと内心涙したりもしたが、今の彼女にとっては些細なことだった。
 なぜなら――
「グリフィス・ロウランめ……まさかこちらの思惑を超え、ウーノを逆に取り込んでくれるとは……!」
 となりのトーレが、何やら不穏な空気をまとっていたから。
「上等じゃないか……
 たかが補佐官の分際でウーノに手を出そうなど……その身の程知らずを後悔させてやるぞ。ククク……」
 何やら“信じられない”“認めたくない”という想いがおかしな方向に暴走しているようだ。アブナイ笑い声を上げるトーレの姿に、チンクはこの先起こるであろう騒動の予感に思わずため息をつき――
「――――――ん?
 どうした? ディエチ」
「え…………?」
 ため息をついた拍子に、妹の異変に気づいた――尋ねるチンクに、どこか上の空といった様子でウーノの姿を見つめていたディエチは我に返って声を上げた。
「何?」
「いや……何やらボーッとしていたようだが……」
「そう……かな?」
 チンクの言葉に首をかしげ、ディエチは改めてウーノへと視線を向けた。
(男と会うってだけで、あぁも真剣に……)
 ウーノのその姿に、自分の中の“ある感情”が頭をもたげてくる。
(私は……どうなのかな……?)
 彼女の脳裏に浮かぶのは、先日戦場で自分のアイデンティティを砕きかけた男の姿――
 リベンジを誓い、今でも再会を強く望んでいるあの男――
(あれから……アイツのことが頭から離れない……
 戦う相手、として、決着を望んでいる……それだけなのかな……?)
 自分の心がわからない――ディエチは息をつき、視線をウーノへと戻した。

 

 

 自分の情報の真偽を見極めたいウーノ。
 

 姉とグリフィスをくっつけんとするウェンディとセイン。
 

 状況に納得がいかず、どうにかしたくてしょうがないトーレ。
 

 荒れそうな空気に不安を感じるチンク。
 

 そして、ウーノの姿に自分を重ねているディエチ――

 

 

 

 すれ違いとカン違いによって豪快に彩られた彼女達の想いは、周りの姉妹をも巻き込みながら、“決戦”の日を静かに待つのだった。

 

 


 

第61話

ラブ・アタック!
〜ファーストデート防衛指令〜

 


 

 

「な、何や、これは……!」
 目の前のそれが信じられない――手の中の便せんに記された内容に、はやては驚愕の表情のままつぶやいた。
 

『ありがとうございます、グリフィスさん。
 家族のことで悩んでいた私に対する厳しい言葉に、私も目が覚めました。
 悩んでいても始まらない。ぶつかってみて初めてわかることもある――私に必要だったのは、相手の、自分の想いを信じ、相手と正面から向き合うことだったんですね。
 そのことを気づかせてくれたあなたには、本当に感謝しています。
 手紙ではなく、直接自分の言葉でお礼を言いたいくらいに……
 だから……』

 

『よろしかったら、直接会って、お話をしてみたいと思うのですが、予定は大丈夫でしょうか?』

 

「やったじゃないですか、補佐官!」
「こんなに早くデートにこぎつけられるなんて!」
「で、デート……なのかな……?」
「絶対そうですよ!」
 ティアナやギンガにはやし立てられ、照れるグリフィスにスバルが断言する――盛り上がる一同をよそに、はやて、なのは、フェイト、そして事の顛末てんまつが気になって様子を見に来ていたゲンヤの4人は素早く円陣を組んだ。
「ど、どういうこと!?
 なんであんな“果たし状”をもらって、『会いたい』なんて話になるん!?」
「オレに聞かれたって知らねぇよ!
 なんで“果たし状”で好感度上がってんだよ!? ありえねぇだろ、普通!」
 疑問の声を上げるはやてにゲンヤが答えると、
「ひょっとして……」
 不意につぶやいたのはフェイトだった。注目する他の3人に対し、自らの仮説を口にする。
 

「果し合いを受けた……とか?」
 

『………………』
 そのフェイトの言葉に、4人の間をイヤな沈黙が支配した。
「ど、どうするの!?
 グリフィスくん、手紙間違えて送っちゃったの、知らないままなんだよ!」
「はやてとナカジマ三佐が『黙ってよう』なんて言うから!」
「せ、せやかて……」
「言えるワケねぇだろ。あの坊主の楽しそうなツラ見てたらよぉ……」
 そう、手紙の取り違えのことを、なのは達は結局グリフィスに言えないままここまできてしまっていた――なのはとフェイトの指摘に、はやてとゲンヤは気まずそうに視線をそらす。
「と、とにかく……こうなってまったもんはしゃあないわ。
 グリフィスくんのためにも、なんとか手は打たんと……」
「具体的には?」
 気を取り直し、提案するはやてにゲンヤが聞き返す――しばし考え、はやては静かになのは達に告げた。
「とりあえず……
 …………グリフィスくんの無事を祈っとこか?」
「いや、ダメだろう、それは……」
 はやての言葉にツッコむのは傍らで盗み聞きしていたマスターコンボイだ。ため息まじりに首を左右に振り――その拍子に、自分達の輪の外にいるその少女に気づいた。
 スバル達の輪に入るでもなく、こちらに加わるでもなく、複雑な表情でグリフィスを見つめているのは――
「……どうした? ルキノ・リリエ」
「はい?」
「何か上の空だったようだが」
「な、何でもないですよ、何でも……」
「………………?」
 あわててパタパタと手を振って答えるルキノに、マスターコンボイは思わず首をかしげる――が、結局彼女の心情をそれ以上推し量ることができず、その場はそのままルキノを見送るしかなかったのだった。
 

「…………どーする?」
「どーしよっか……?」
 一方、今回の事態に対応に困っているのははやて達だけではなかった――アナライズルームで顔を突き合わせ、尋ねるアスカに、アリシアもまた困惑もあらわにそう返した。
「文通ぐらいならよかったけど、実際に会うとなると……」
「だよねぇ……正直油断してたよ。
 だって、相手はあのウーノだよ? 直接こっちと会おうなんてリスク、選ぶとは思えなかったし……」
「グリフィスくんが六課の隊員だって、気づいてないとは思えないしね」
 アスカの言葉に答え、アリシアは深々とため息をつく。
「……で、どうしよう?」
「うーん……」
 そして話はそこに戻る。アスカの問いに、アリシアはしばし腕組みして考え込み――
「…………ジュンイチさんに任せよっか?」
 よりによって、(いろいろな意味で)最悪な相手に丸投げすることにした。
 

「よっ、とっ、ほっ……」
 掛け声と共にリズムよく――ホクトの投げる苦無くないの数々が、吸い込まれるように彼女の視線の先にある、人型にくり抜かれた的へと次々に突き刺さっていく。
 「全力出せる時間に限りがある以上、戦い方の工夫を少しでも広げておくべきだ」とのジュンイチの指導によって行われている、投擲とうてきの訓練である。
 ジュンイチによってコツを伝授され、その狙いはきわめて精密――すべての苦無を投げ終えた時には、人型の的の顔面部分は突き刺さった苦無で埋め尽くされていた。
「…………よし♪」
 見事にすべての苦無を命中させ、ホクトは満足げにうなずいて――
「『よし』じゃねぇよ」
 間髪入れずにツッコむと、ジュンイチは背後から彼女の尻に足の裏を叩きつけた。
 要するに、ヤクザキックで蹴飛ばした――まともにくらい、ホクトは顔面から地面に突っ込む。
「な、何!? パパ!
 ちゃんと完璧にこなしたでしょ!?」
「ほほぉ……
 あれのどこが『完璧』なんだよ?」
 身を起こし、不満の声を上げるホクトに答え、ジュンイチは今しがた彼女が狙っていた的を指さした。
 むーっ、と口をとがらせながら、ホクトもまた的へと視線を戻し――
「………………あ」
「『あ』じゃねぇよ」
 気づいた。声を上げるホクトに答え、ジュンイチはため息をつき、
「あのなぁ……オレは“急所を外して”全弾当てろ、っつったんだぞ。
 全弾ドタマに叩っ込んでんじゃねぇよ」
「は、はーい……」
 そう。ジュンイチがホクトに与えた課題は、あえて急所を外して当てていく訓練――にもかかわらず、ホクトはすべての苦無を急所、すなわち顔面に打ち込んでしまったのだ。
「悪いがオレは無差別殺人なんぞする気はないからな――オレにくっついてきたいんなら、ちゃんと殺さずブッ倒す技術を身につけろ。
 っつーワケでやり直しだ。とっとと苦無引っこ抜きに行くぞ」
「……はーい」
 ジュンイチの厳しい言葉にため息をつき、ホクトは彼女と共に苦無の回収に向かう。
「悪い子しか相手しないんだし、殺しちゃってもいいじゃない……」
「アホか。
 それじゃ意味ないだろうが」
 的から苦無を引き抜きながらつぶやくホクトに答え、ジュンイチは自分の引き抜いた苦無を手にし、
「死んじまったらそれで終わり。殺しちまったらそれ以上“オシオキ”できねぇだろ。
 生きて、自分のしでかしたことをキッチリ反省してもらうためにも、犯人は生きたまま捕まえなきゃならないんだよ」
「ふーん……」
 そのジュンイチの言葉に、ホクトはしばし考え、
「つまり……死んでそれ以上苦しまないようにしちゃうよりも、殺さず生かさずジワジワといたぶってやるのが一番スッキリするやり方だってことだね?」
「正解だ」
「どこが『正解』よ!」
 すかさずツッコんだのはイレイン――同時に放たれた彼女の蹴りは、ジュンイチの後頭部を、これ以上ないほどに的確な角度で蹴り飛ばした。
「まだちっちゃいホクトに何物騒なこと教え込んでるのよ! アンタは!」
「何言ってんだ。
 この歳でも、ホクトには戦う力がある――戦わないことを許さない環境の中に放り込まれちまってる。
 だったら、今のうちから戦い方を教え込んどいて間違いはないだろ」
「せめて倫理は一般的なのを教えなさい! アンタ基準の“暴君流”じゃなくて!」
 あっさり答えるジュンイチに言い返し、イレインは心からため息をつき――
「相変わらずだね、ジュンイチさん……」
 そんな彼らのやり取りに苦笑するのはすずかである。
「あれ、すずかも見に来たのか?
 見てて楽しいもんでもないだろうに……」
「うーん、そんなことない……かな?」
 意外な来客に首をかしげるジュンイチだが、そんな彼の言葉にすずかは苦笑まじりにそう答える。
「だって……真剣な時のジュンイチさん、けっこうカッコイイし……」
「………………?
 何か言った?」
「う、ううん、何も」
 口から外に出るかでないか、ほとんど音にもならないほどの声量でも、何かつぶやいているのは気づいたらしい――聞き返すジュンイチの問いに、すずかは手をパタパタと振ってごまかして、
「そ、それはそうとして……
 どうですか? ホクトちゃんの調子は」
「良くもあり、悪くもあり……ってとこだ」
 気を取り直し、尋ねるすずかの問いに、ジュンイチは肩をすくめてそう答えた。
「戦闘技能自体は悪くない。荒削りな分、きちんとなのは達から訓練を受けてるスバル達ならあっさりさばけるだろうが、基本能力自体はスバルやギンガを確実に上回ってる。
 ただ……戦闘機人としての、そして“遺伝子強化人間マトリクス・ブースター”として生まれたアイツの能力は、戦闘に勝利する――つまり“相手を殺す”って方向に極端なまでに特化されてる。それが問題だ」
 そうすずかに説明し、ジュンイチはため息をついて続ける。
「戦闘機人として生まれた“だけ”のスバルやギンガより、事情は深刻だな――戦闘自体はちゃんとアイツ自身の意思で行えてるけど、その中で、無意識下でも相手の急所を狙うよう、戦闘本能がこれでもかってぐらいに研ぎ澄まされちまってる。
 まずはそこをなんとかするところからだな――時間が限られてる以上、“本番”までに戦闘技能のムラを叩き直すまでにはいかないと思うけど、それが一番確実な方法だと思う」
「そっか……」
「で? お前の要件はホクトが気になっただけ?」
「あぁ、そうでした」
 改めて尋ねるジュンイチの問いに、すずかはようやくそのことを思い出した。
「ジュンイチさん宛に、メールが届いてるんだよ」
「六課組からの“報告”の……ね」
「………………」
 すずかの、そして続くイレインの言葉に、ジュンイチの表情が鋭さを増した。
 定期連絡は先日済ませたばかりだ。にもかかわらず連絡してきたということはそれなりに緊急の要件であることが考えられるからだ。すぐに端末を立ち上げ、その内容に目を通し――
「………………はい?」
 固まった。
 

 そして、数日が過ぎ――
〈スターズF、配置につきました〉
〈ライトニングF、準備OKです〉
「ん。了解」
 彼女達がいるのは木々に囲まれた静かな林の中――無線越しに聞こえてくるティアナやエリオの声に、なのはは満足げにうなずき、
「ギンガ、そっちは?」
〈大丈夫です〉
〈ゴッドアイズ2もスタンバイ完了〜♪〉
 尋ねるアリシアにはギンガとアスカが答える。
「もうすぐ作戦開始時刻や。
 みんな、しっかりな」
<<了解!>>
 告げるはやての言葉に、無線の向こうでスバル達がうなずき――
「………………おい」
 そんなはやてに対し、マスターコンボイは困惑と共に声をかけた。
「どないしたん?」
「いや、『どーした?』じゃないだろ……」
 あっさりと聞き返すはやての言葉に、マスターコンボイは「気づいてすらいないのか」と思わず頭を抱えた。
 そんな彼の姿に、はやては不思議そうに首をかしげ、
「ホントに何やの?
 これからグリフィスくんのデートを監視せなあかんのやけど」
「その『デートの監視』で、どうして主力総出で出動する事態になってるんだ!?」
 あっさりと告げるはやてに対し、マスターコンボイは全力でそう言い返した。
「なのは達だけでなく、シグナム・高町やヴィータ・ハラオウン、果てはそのパートナーどもまで総出で駆り出して、何事かと思ったらただのデートの監視だと!?」
「『ただの』やあらへん!
 他ならぬ六課の仲間の一大事なんよ! 全力でバックアップせんでどーするの!?」
「ちょっかい出したいだけだろうが!」
 力説するはやてに言い返すと、マスターコンボイは今度はなのはへと向き直り、
「なのは……貴様も貴様だ。
 いつぞやのフェイト・T・高町と炎皇寺往人の一件ではブレーキ役だったというのに、何を思って……」
「い、いや……あの時は、イクトさんがいろいろ悩んでたから、気晴らしさせてあげたかったからで……」
「つまり、そういう“事情”がない今回は、むしろ自分の好奇心が優先、か?」
「あ、あはは……」
 マスターコンボイの言葉に、なのはは乾いた笑いと共に視線をそらした――どうやら図星だったらしい。
 そんななのはの姿にため息がもれるが、ここで鎮圧に動いても余計な騒ぎになりかねない。騒ぎを起こしてグリフィスのデートをぶち壊すよりも、おとなしく見物していてもらえるよう誘導した方が被害は少なかろうと判断し、マスターコンボイはなのは達の輪に加わることにした。
「グリフィス・ロウランはすでに待ち合わせ場所で待機、か……」
「相手を待たせない配慮……基本中の基本やな」
 ウィンドウに表示された公園の映像には、待ち合わせ場所に指定された公園でウーノを待つグリフィスの姿――つぶやくマスターコンボイに、はやては満足げにうなずいた。
「相手の人は?」
「ちょっと待ってな」
 しかし、相手の姿はまだ見えない――待ち合わせの時間には余裕があるため、ある意味当然と言えば当然だが、それでも気になったフェイトの問いに、はやては通信回線を開き、
「シグナム、ヴィータ、そっちはどうや?」
〈今のところ変化はありません〉
〈ウーノって人、最初の手紙に入ってた写真の人でいいんだろ?
 アイゼンにもサーチかけさせてっけど……ヒットしないし、見当たらないな〉
 通信の相手は公園の出入り口に配置したシグナムとヴィータ――しかし、二人の担当した出入り口にはウーノは姿を見せていないらしい。
《他の入り口から来てるんでしょうか?》
「スバル達を置いてるし、見かけたら連絡がくると思うんやけどなぁ……」
 首をかしげるリインにはやてがつぶやくと、
「…………! 待って!
 来た!」
 最初に気づいたのはなのはだった――彼女の指さした先では、待っていたグリフィスの元へとウーノが駆け寄っていく光景が映し出されていた。
 

「えっと……違っていたらごめんなさい。
 グリフィス・ロウランは……あなたかしら?」
「えぇ。
 じゃあ、あなたがウーノさん?」
 待ち合わせ場所に現れたウーノが先ずしたのは、目の前の男がグリフィス・ロウランであるかどうかの確認だった。尋ねる彼女の問いに、グリフィスは静かにうなずく。
「待たせてしまったかしら……ごめんなさいね」
「いえ……あなたを待たせてしまっては、とボクが勝手に早く来ただけですから、気にしないでください」
 苦笑するウーノにそう答えると、グリフィスはウーノに向けて手を差し出した。
「では……行きましょうか」
 

「よかった……
 少なくとも、“果し合い”って感じじゃないね」
「うん……」
 その様子は、当然ながらはやて達には筒抜け――抱いていた懸念のひとつが杞憂に終わり、安堵の息をつくなのはにフェイトがうなずくが――
「ふむふむ。相手をリードすることも忘れてへんな。
 さすがはグリフィスくん。ぬかりないわー」
 一方、満足げにうなずくはやての様子はどう見ても「グリフィスのバックアップ」という当初の“目的”を初っ端からかなぐり捨てているようにしか見えない。完全にデバガメに興じている。
 たとえその“目的”がただの“建前”にすぎなかったとしても、もうちょっと後の段階までその“建前”を貫くべきではなかろうかとマスターコンボイはどうでもいいことをチラリと考えたりもするがそれはさておき。
「でも……グリフィスくん、サラっと先回りしてたことをバラしちゃったね。
 普通、あそこは『ボクも今来たところですから』だと思うんだけど」
「チッチッチッ、甘いわねー、なのはちゃん」
 そんなマスターコンボイの傍らで、下あごに人さし指を添え、可愛らしく首を傾げるなのはに、霞澄は指を振りながら笑顔で告げる。
「今どき、そんなテンプレートそのままの定形文句で女の子がなびくワケないじゃない。あんなの、今となってはただの形式上のあいさつよ。
 そんな“おためごかし”よりも、素直に『あなたを気遣って早く来た』って言ってごらんなさいよ――定番を外したことで意表を突かれたところに“素直な好意からの気遣い”という追撃。なかなかの破壊力だとは思わない?」
「な、なるほど……」
 さすが、人妻はその手の経験が豊富なだけあって言うことが違う。霞澄の言葉になのはは思わず納得してうなずき――
〈こちら“ブレイカー1”〉
 新たな通信が入った――本来の作戦上でも使うコールサインを用いて報告してくるのはイクトだ。
〈ターゲットは公園を出てアーケードへと移動中。追跡に移る〉
「炎皇寺往人……貴様まで手を貸しているのか……?」
〈…………言うな〉
 意外な人物からの報告に、マスターコンボイが思わず眉をひそめる――彼の言葉に、イクトはしばしの沈黙の後にそう応えてきた。
〈これがはやて達だけならまだ止める手立てもあったさ……
 だがな……スバル達までもが『補佐官のために!』ってやる気満々なんだぞ。
 はやて達ならともかく、エリオやキャロに頼まれて断れるものか……〉
「…………そうだな」
 よほどの葛藤があったのだろう。イクトの声は半ば半泣きに近いものがあった――彼の心中を察し、マスターコンボイはため息まじりに同意するのだった。
 

「……動き出したか」
「みたいだな」
 つぶやくトーレに、チンクが小声でそう答える――グリフィスとウーノの様子をうかがっているのははやて達だけではない。トーレ以下ナンバーズの面々もまた、公園の一角に身を潜めて二人を見守っていた。
 ちなみに、はやて達もナンバーズも互いにはまったく気づいていない――どちらも追跡対象に見つからないよう徹底的に自分達の気配を絶って隠れているため、気づけないでいるのだ。
「出だしは上々、なかなかのエスコートですね。
 ただの坊やだと思っていたけど……けっこうやるじゃない」
「けっこうやらなくていいんだ。
 グリフィス・ロウランからは情報さえ得られればよかったんだ――元々は貴様の策だろうが」
 ウーノをエスコートするグリフィスを評価するクアットロをたしなめ、トーレはウーノと共にその場を離れていくグリフィスの背中をにらみつけた。
「このままでは、最悪ミイラ取りがミイラだ。
 こうなっては四の五の言っていられない。なんとかぶち壊しにするぞ」
「ち、ちょっと待つっス!」
 もはやなりふりかまっていない様子のトーレに待ったをかけるのは、当然最初からウーノとグリフィスをくっつけようと画策していたウェンディである。
「トーレ姉、ウー姉とグリフィス・ロウランの恋をジャマするつもりっスか!?」
「『恋』じゃないだろう!
 お前らはどうだか知らんが、我々はグリフィス・ロウランから機動六課の情報を得るために文通していたんだぞ!
 そのためにウーノは、腹芸もロクにできないクセに身の程もわきまえずあそこまで努力していたというのに!」
「でも、ウー姉は自分から『会いたい』って言い出したんスよ!
 あのヒキコモリ同然だったウー姉がそこまでがんばったんスよ! 最初はどうあれ、これってウー姉が本気になったってコトなんじゃないっスか!?」
「…………あー、一応ツッコんでおくね。
 二人とも、フォローしてるつもりなんだろうけど……実質ウーノ姉に向けてのコンビネーションブローになってるからね、それ」
 姉としての威厳からプレッシャーをかけてくるトーレに、ウェンディもまた負けじと言い返す――が、その内容はウーノにとっては悪口以外の何ものでもない。ため息をつき、セインがツッコミを入れると、
「それより……」
 そんな彼女達に口をはさんできたのはディードだった。公園の広場を指さして、
「すでに、お姉様達は公園を出ていってしまいましたが」
「な………………っ!?」
「な、なんでそれを早く言わないっスか!」
「早く追いかけないと!」
 そのディードの指摘に、トーレ達はあわてて移動を開始する――そんな彼女達の様子に、チンクは思わずため息をつくのだった。
 

「へぇ…………
 ホントにウーノとグリフィスがデートしてやがる」
 さらに、監視者は近くのビルの屋上にも――眼下の公園を出て、街へと繰り出すグリフィスとウーノの姿に、ホクトを連れたジュンイチは苦笑まじりにつぶやいた。
「どうするの? パパ」
「どうする、って言われてもなぁ……
 こんなの、予定外もいいトコだぞ」
 尋ねるホクトの問いに、困ったように頭をかくジュンイチだったが、
「……あー……まぁ、それでも問題はないかな?
 途中、あちこちで問題になりそうだけど……最終的な“ゴール”のことを考えたら、ここで二人がくっつくのは悪いことじゃない」
「じゃあ、応援するの?」
「そんなの、オレがしなくてもはやて達が勝手にするさ」
 ホクトの問いに対し、ジュンイチはあっさりとそう答えた。
「そういうイベントには飢えてるヤツだからな――周りにも似た者同士なヤツらがそろってるし、大いに盛り上げてくれるだろうよ」
「ふーん……」
「とりあえず、オレ達は余計な横槍がないようにフォローに回るぞ。
 六課の補佐官であるグリフィスとナンバーズの“土台”のウーノ――あの二人に何かあれば、お互いに大打撃だ。
 ヘタすればナンバーズ側の“予定”が大きく狂うことにもなりかねない――連中の“計画”を先読みする形で動いてるこっちとしても、それは歓迎できる話じゃないからな」
「うん」
 ジュンイチの提案にホクトが答え、二人はグリフィス達を追うべく地を蹴った。
 

「……機動六課が?」
「あぁ。
 なんか、総出で主力が出てってるみたいだぜ」
 ユニクロンパレスの広間――振り向き、尋ねるサウンドウェーブにノイズメイズはうなずいてみせた。
「どういうことだ?
 “レリック”でも出てきたか?」
「でも、主力が全員出てるんだぜ。
 どう考えても、ただ事じゃねぇだろ」
「ふむ…………」
 ノイズメイズのその言葉に、サウンドウェーブはしばし考え――
「どちらにしても、出撃すべきだろう!」
 突然響いたすさまじい大声が、そんな二人にそう答えた。
 サウンドウェーブと同じ、ただはるかに大音量のこの声は――
「さ、サウンドブラスター!?」
「戻ってきてたのかよ、お前!?」
「そのとぉりっ!」
 あまりの大声に自分の聴覚センサーを抑えてうめくノイズメイズやサウンドウェーブに答えるのは、サウンドウェーブの同型トランスフォーマー、サウンドブラスターである。
 自分の声にサウンドエフェクトをかけてその音質を楽しむサウンドウェーブと違い、とにかく大音量が大好きなサウンドウェーブとは別方向を突っ走るサウンドバカ――驚く二人にもかまわず、手にしたマイクの音量を最大に設定したままわめき散らす。
「“レリック”があろうとなかろうと、あの高町なのは達が出てきているのだろう!?
 これを、10年前に敗れたことへのリベンジの機会だとなぜ思えない!?
 出撃しているヤツらを叩き、さらに“レリック”を追っているようであればそれを奪う! これで十分ではないか!
 さぁ! 今こそ復讐の時! 今度こそ10年前の恨みを――」
『やかましいわぁぁぁぁぁっ!』

 ノイズメイズとサウンドウェーブ、二人は迷わずサウンドブラスターを広間から追い出した。
 

「ガジェット側のゴッドマスターどもが動きやがったか……」
 設置していたセンサーに反応――クラナガン市内にナンバーズの反応をとらえ、ジェノスラッシャーはひとり笑みを浮かべた。
「今度こそ……今度こそアイツらを叩きつぶして、部下の仇を……!」
 うめき、ジェノスラッシャーは広間を後にした。その光景を物陰から見つめ、ジェノスクリームはひとりため息をつき――
「……のぞき見とは、いい趣味ではないな」
「ブラックアウトか」
 背後から声をかけてくるブラックアウトの言葉に、ジェノスクリームは驚くこともなくあっさりと応じた。
「手伝いに行かんのか?」
「行ったところで断られるさ」
「ほぉ……
 前回二人で出ていって、共に返り討ちにあった仲だろうに」
「“前回二人で出ていって、共に返り討ちにあった仲”だからだ」
 皮肉を飛ばすブラックアウトだったが、ジェノスクリームはあえてその皮肉を用いてそう答えた。
「今あぁして部下の仇討ちに固執しているように、ヤツは粗暴に見えて義理堅いところがある。
 前回自分の仇討ちに巻き込んで共に撃退されたからこそ、同じ事態を招かないようオレには絶対に頼ろうとしないだろう。
 とりあえず……こちらの独断という形でレッケージ達でも出撃させるさ」
「やれやれ……ヤツが加入して以来、こういう余計な仕事ばかり増えているような気がするんだがな」
「気にするな」
 苦笑するブラックアウトに答え、ジェノスクリームはその場を後にして――最後に一言、背中越しに付け加えた。
「あんな血気にばかりはやる兄を持ったオレは、もっと以前からこの苦労を味わってきたんだ」
「そうか」
 ジェノスクリームの言葉にうなずき、ブラックアウトは彼を見送り――
「………………ん?」
 気づいた。
『兄』…………だと?」
 気になる単語を聞きつけ、思わず振り向き、尋ねるが、すでにジェノスクリームは広間から立ち去った後であった。
 

「じゃあ。ウーノさんは普段秘書みたいなことを?」
「はい。
 父の仕事を家族みんなで支えているんですけど……私は事務方、その中でも父のスケジュール管理などの直接的な部分を」
 今は街中を目的地に向けて移動中――自分の話を聞き、聞き返してくるグリフィスに対し、ウーノはあらかじめ用意してあった自分の偽のプロフィールを用いてそう答える。
 ただ――まったくのウソというワケではない。自分達を会社に見立て、生みの親であり“父”と呼べないこともないスカリエッティをその長に据え、姉妹達をその役割分担を基本に“普通の会社だったらどういう立場になるか”という仮定で置き換えたものだ。これなら事実に近い形なのでそう簡単にボロが出ることもあるまい。
 もっともバレにくいのは真実の中に埋もれたウソである――妹達が何度もぶつかり合い、今や最大の脅威となっている“ある男”から学んだことだった。
「グリフィスさんは……」
「『さん』づけじゃなくてもかまいませんよ。
 ボクの方が年下なんですから」
「あら、レディに対して歳の話は野暮なんじゃないですか?」
「あ、そ、そういうつもりじゃ……」
「フフフ、冗談ですよ」
 軽いものだ。少しつついただけですぐにうろたえる――まさに“自分の掌の上で踊っている”としか形容できないグリフィスの姿に、ウーノは内心で笑みを浮かべた。
「じゃあ……グリフィスくんで。
 グリフィスくんは、部隊ではどんなお仕事を?」
「ウーノさんと近い感じです。
 部隊長補佐として、部隊長の補佐に関わる雑務を少々……」
「そうなんですか?」
「はい」
 聞き返すウーノに、グリフィスは笑顔でうなずいてみせる。
「でも……すごいですね。その若さでもう部隊長補佐だなんて。
 優秀なんですね、グリフィスくんは」
「そんなことはないですよ。
 八神……あぁ、今の部隊長です。八神はやてというんですけど……彼女と知り合いだった縁で、今の部隊に誘われたんです」
「八神はやて……ひょっとして、“GBH戦役”の八神はやてですか?」
「ご存じなんですか?」
「えぇ。
 職業柄、管理局のウワサは少なからず耳に入ってきますから。
 それで……」
 答え、さらに問いを重ねようとするウーノだったが――グリフィスはふと首をかしげた。
「えっと……すみません。
 何だか、さっきからボクの職場に興味がおありのようですけど……」
 ――しまった。少し食いつきすぎたか……
 さすがにグリフィスの職場に対する質問ばかり続けてしまったようだ。グリフィスの問いに、冷や汗を流すウーノだったが――
「……やっぱり、仕事のことが気になりますか?
 さっき、『職業柄管理局のウワサが耳に入る』と言ってましたし……管理局関係のお仕事なんですよね?」
「………………え?」
 そんなウーノの焦りをよそに、グリフィスは彼女の問いを好意的に受け止めていた。投げかけられたグリフィスの問いに、ウーノは思わず動きを止めてしまう。
「え、えぇ……」
「やっぱりですか。
 ボクも、休みの時でも職場の様子が気になってしまう時がありますから」
 うなずくウーノの言葉を信じたか、グリフィスは笑顔だうなずいてみせる。
「本局組の八神部隊長を知ってるということは、お仕事では本局と?」
「……あ、あー……何とも言えませんね。本局とも地上本部ともお仕事をさせていただいてますから。
 ウチのような、家族だけで仕事をしているような小さな会社では、本局だ地上本部だと、仕事を選んでなどいられませんから」
 マズイ。自分達の“会社”のプロフィールは考えていたが、その取引相手までは考えていなかった――グリフィスの言葉に、心中の動揺を抑え、なんとか脳内で設定を作り上げて答えるウーノだったが、
「それはすごいですね」
 対し、あくまで気づいていないグリフィスはウーノの急ごしらえの“設定”に対し思わず感嘆の声を上げていた。
「そうですか?
 私達の商売なんて、吹けば飛んでしまうような小さなものですけど」
「規模の大小の問題ではないですよ。
 あなたも、局に関わる仕事をしているのなら知っているでしょう? 地上本部の本局に対する対抗意識の強さは」
 これには素直にうなずいておく――そのことは彼女達自身も強く感じていることであり、且つ最大の攻めどころだと考えているからだ。
「そんな関係から、本局と取引している会社は、どうしても地上本部との取引が難しい――逆の場合でも、地上本部と取引している会社はどうしても最大の取引先である地上本部の顔色をうかがって、本局と取引がしづらい部分があるから、結果的には同様と言えます。
 でも、そんな環境にありながら、あなたのお父さんは両方との取引を維持している――これはとてもすごいことですよ」
 そう告げるグリフィスだったが、そんな彼に対し、ウーノは開いた口がふさがらなかった。
 グリフィスの意見が見当はずれすぎて呆れた――というワケではない。むしろその逆だ。
 理にかなっている――自分が“設定”の不備を埋めるためにとっさに告げた出まかせよりも、グリフィスの見解の方がずっと筋が通っている。彼自身にその気はなかったのだろうが、彼のその見解によって、自分のついたあやふやなウソが見事に形あるものになってしまっている。
 これも彼が優秀であるが故――筋道を通して考えることのできる理論家としての一面、その力を目の当たりにして、ウーノはやはり彼は只者ではないと実感する。
 そして――実感したことはもうひとつ。
 確かに、彼は自分の正体を知らない。家族で経営している小さな会社のOLというウソのプロフィールを信じ切っている――だが、そのことを抜きにしても、彼は物事の見方が根本的に好意的なのだ。
 普通の人間ならば、先ほど彼自身が指摘した“地上本部と本局の軋轢”にからむ話の矛盾点からこちらの素性のウソを疑うところだろうに、彼はそれをあっさりと信じてしまったばかりか、自らの頭脳によってよりそのウソを説得力あるものにしてしまった。
 能力的には優秀だ。ひょっとしたら、サポート役としては自分に匹敵するほどかもしれない――だが、人を疑うことを基本とする事件捜査には根本的に向かない性格だ。やはり与しやすいと見たクアットロの見立ては間違ってはいなかった――目の前のグリフィスに対し、ウーノはクスリと笑みをもらした。
「ありがとうございます。
 少し、自分の仕事に自信が持てたような気がします」
 自分の笑みに見とれたのか、顔を赤くして立ち止まってしまうグリフィスに対し、ウーノは笑顔のままその手を取った。
 やはりあの“果たし状”は何かの手違いだったのだろう。グリフィス・ロウランの人柄は自分の集めた情報通り――いや、それ以上の収穫があった。目的を果たした今、少しくらい、この何も知らない坊やに夢を見させてやるのもいいだろう。
「どうしたんですか?
 さぁ、行きましょう?」
「え、えぇ……」
 突然手を握られ、戸惑いながら再び歩き出すグリフィスの姿に、ウーノはクスリと笑みをもらす――
 

 だが、ウーノはこの時気づいてはいなかった。

 

 自分が――今の状況を、打算的なもののない、もっと素直なところで楽しいと感じていることに。

 

 二人が向かったのは映画館。事前にグリフィスが――というかノリノリで作品をチョイスしていたシャリオ達が――用意しておいたチケットで中へと入る。
 内容はベタベタな恋愛映画。互いに想い合う二人が、日常の中で触れ合い、想いを育み、結ばれる――そんなストーリーだ。
 いきなりデート1発目でこれはないだろう。照れくささから顔を真っ赤にして、グリフィスはとなりのウーノの顔をチラリとのぞき見る。
 ――イヤそうな顔はしていなかった。そればかりか、興味津々といった様子でスクリーンに見入っている。
 どう考えても「結果的に功を奏した」としか言えない。内心で安堵し、グリフィスは胸を撫で下ろし――

「……あ、ありえん……
 あ、ああ、あそこであんな深いキスなど……」
「と、トーレ……?」
 別の一角には、ウーノ達を追って入ってきていたナンバーズの面々――真っ赤になってフリーズしているトーレの姿に、チンクは思わず呼びかけてみるが反応は返ってこない。
「あんな、し、舌まで……
 ……イヤ待て。恋人同士ということは、当然その後には……」
「トーレ……おい?」
 肩を揺すってみるが、それでも反応はない。真っ赤な顔で――しかしスクリーンから目を離さないまま、ブツブツとつぶやいている。
「…………“出会い系サイト”を知っていた割には、ずいぶんと純なことだ……
 ……と言いたいところだが、純情すぎるだろう、これは」
 かく言う自分も相当に照れくさいのだが、それでも目の前のトーレよりはマシだ。再起動のめどの立たないその姿に、チンクは思わずため息をついた。

 ちなみに、他のナンバーズの面々には大いに好評(セッテ以下新メンバー組はわかっていない部分の方が強かったようだが)で――

『………………』
「い、イクトさん!?」
「フェイトさん、しっかりーっ!?」
 別の一角で、頭から蒸気でも吹き出しそうなほどに赤面し、フリーズしたイクトとフェイトを、スバルやティアナが懸命に介抱していた。
 

「…………動きがないね……」
「せやなー……」
 一方、映画館の外――つぶやくアリシアのとなりで、はやてはため息をついてうなずいた。
 尾行の大人数化を避けるためにフォワード陣との合流はフェイトとイクトのみに留め、後方から遅れてついてきていたために、なのは達は映画館には入れなかったのだ。
 さすがに映画館の中からはマナー上の問題から通信は来ていない――中の状況もわからず、こうして待ちぼうけをくっている状態だ。
「うぅ……なんかこう、じれったいよね……!
 ねぇ、なんとか中のみんなと通信できない?」
「やめとけ。
 そんなことをすればむしろ目立つ――グリフィス達にバレないようにするためにも、今はガマンするしかない」
「というか……もうすっかりノリノリだな、お前」
 ウズウズしながら尋ねるなのはにはビッグコンボイが答え、マスターコンボイはそんななのはにため息まじりにそうツッコむ。
「映画かぁ……
 ボクら、見に行ったことないよねー」
「それは当然だ。
 我々の入れる、トランスフォーマーも入れる映画館はまだまだ数が少ないのだから」
「ヒューマンフォーム、設定してもらったら? 設定できるなら……だけど」
 そんななのは達の背後で、映画館を眺めながらつぶやくロードナックル・シロにジェットガンナーやアイゼンアンカーが答え――
「………………む?」
 不意にシャープエッジが顔を上げた。
「どうしたの?」
「…………何か来るでござる」
 尋ねるジャックプライムにシャープエッジが答えた、その瞬間――空気が変わった。周囲の世界が変質し、自分達以外のすべの人間が姿を消す。
「結界!?」
「上だ!」
 驚くジャックプライムに答え、ビッグコンボイが上空を見上げ――
「油断したな!」
「何をしているかは知らないが――」
「ここで、貴様らには消えてもらう!」

 ノイズメイズ、サウンドウェーブ、サウンドブラスターだ。こちらが対応するよりも早く一撃を見舞うべく、上空から猛スピードで突っ込んでくる。
「く――――――っ!」
 完全に対応が遅れた。それでも最悪の事態だけは防ごうと、ジャックプライムは愛用のデバイス、カリバーンを起動し――
 

『ジャマ(や)!』
 

 その瞬間、3人が動いた。
 瞬時にデバイスを起動、バリアジャケットを装着――はやてのブラッディダガーがノイズメイズ達へと降り注ぎ、アリシアのロンギヌスから閃いた光刃が彼らをかち上げ、なのはのディパインバスターが空の彼方に吹き飛ばす!
「なんでだぁぁぁぁぁっ!?」
「今えぇトコなのにしゃしゃり出てくるからや」
「まったく……空気の読めない人達だね」
「今回は手が離せないから逮捕はしません。
 そのまま吹っ飛んで反省しててください」
「…………あー、えっと……」
 せっかく出てきたのにあっさり退場。理不尽に対する抗議の声と共に空の彼方に消えていくノイズメイズ達にはやてとアリシア、なのはが言い放つ――その姿に、不発に終わった迎撃体制のまま、ジャックプライムはなんとか声を絞り出した。
「……いつもなら結構苦労する相手なのに……」
「間髪入れずに一蹴か……」
《女の子の色恋沙汰補正ってスゲぇ……》
「普段は限りなく役に立たん技能だがな」
 ジャックプライムの言葉にジェットガンナーやクロが同意、マスターコンボイがため息まじりに皮肉を飛ばす。
 今日ばかりは、ノイズメイズ達に心から同情したい気分だった。
 

 ノイズメイズ達が撃退されたことですぐに結界も解け、何も知らないグリフィス達はデート続行――いくつかの店でウィンドウショッピングを楽しみ、レストランで昼食という流れだ。
 そして――
「おのれ……グリフィス・ロウラン……!
 すっかりウーノといい雰囲気になりおって……!」
「トーレ姉。こぼれてるって」
 レストランに大人数で入り込めばさすがにバレる――路地裏に身を潜め、右手のあんパンを握りつぶし、缶ジュースを握る左手を震わせるトーレの姿に、ノーヴェはため息まじりにそう指摘する。
 だが、当然そんなことでトーレの機嫌が直るはずもなく――
「……よし、つぶそう」
「わぁぁぁぁぁっ! ダメダメ!
 今出てったりしたら、私達の正体がバレちゃうじゃないですか!」
「落ち着け、トーレ!
 セッテ達も手伝え! トーレを止めろ!」
「わかりました」
 据わった眼で立ち上がるトーレに対し、クアットロとチンクがあわてて制止に入った。チンクから援軍の要請を受けたセッテも、トーレを止めようと動きを見せ――
「――お姉様方!」
『――――――っ!』
 気づき、声を上げたディードの声に、全員が意識を切り替え――直後、背後のマンホールが地下に向けて崩落した。
 そして――
「見つけたぜ――ガジェット側のゴッドマスターどもか!」
「恨みはないが、これも任務。
 悪いがおとなしくしてもらおうか」
 地下から姿を現し、告げるのはバリケードとレッケージ――さらにボーンクラッシャーやブロウルも彼らに続いて地下から姿を現す。
「こちらとて余計な騒ぎは起こしたくない。
 運が悪かったと、あき、らめ……」
 そう勧告するレッケージの言葉が不意に止まった。不思議そうな顔でトーレ達を見回し、
「ひぃ、ふぅ、みぃ……
 ……報告より数が多くないか?」
「当然だ。
 新たなメンバーが加わっているからな」
 人数を数え、尋ねるレッケージに答えるのはチンクだ。
「……なんか、オレ達、数で負けてないか?」
「えっと……10対4っスからねー。完璧に負けてるっスね」
 冷や汗まじりにつぶやくバリケードにはウェンディが答え――
「…………余計なジャマを、しないでもらおうか」
 静かに振り向き、レッケージ達に告げるのはトーレだ。完全に据わった眼つきで、ギロリとレッケージ達をにらみ返す。
「あ、あれ……?
 なんか、ヤバめ?」
「よりによって、私の機嫌が最悪な時に現れるとはな……」
 うめくブロウルに答えると、トーレは静かに一歩踏み出し、
「運が悪かったと……あきらめろぉぉぉぉぉっ!」
『ぎゃあぁぁぁぁぁっ!?』

 トーレの咆哮とレッケージ達の悲鳴が路地裏に響き渡り――
 

 双方が隠密行動に徹したため、陰に隠れたこの惨劇のことが六課の耳に入るのは、数日先のこととなる。

 

「さて、次はどこへ連れて行ってくれるのかしら?」
「そうですね……」
 すぐそばの路地裏でディセプティコン(下っ端)がナンバーズ(主にトーレ)にボコボコにされていることなど露知らず、グリフィスはウーノを連れてレストランを後にしていた。
「ウーノさんは、どこか行きたい場所はありますか?
 午前中はボクのプランで動いてましたし、ウーノさんもご希望があれば」
「それもそうね……」
 グリフィスの提案に、ウーノは街を見渡し、
「…………あら?」
 ある一点で視線を止めた。そこは――
「……チェス喫茶……?」
 それは漫画喫茶と同じようにチェスをしながらコーヒーが飲める喫茶店――首をかしげ、グリフィスはウーノに尋ねた。
「チェス、やられるんですか?」
「えぇ。少しは」
 実際の作戦担当はクアットロだが、自分とて指揮官的立場の身だ。それなりの技能は身につけた方がいいと戦略シミュレーションのつもりで学んだことがある――尋ねるグリフィスに、ウーノは少しばかり誇らしげにそう答える。
「グリフィスくんは?」
「ボクも、たしなみ程度ですが……」
「そうですか。
 じゃあ、試しに一戦」
「いいですよ。
 そうと決まれば、行きましょう」
 楽しげなウーノにそう答えると、グリフィスは彼女を先導する形でチェス喫茶へと足を向けるのだった。
 

「反応はこの辺りのはずだが……」
 その頃、市街上空――ステルスシステムを用いて姿を消し、ジェノスラッシャーはターゲットであるナンバーズの姿を探していた。
 先ほどもこの近くで戦闘の反応があった。近くに彼女達がいるのは間違いなさそうだが――
「――――――っ!?」
 だが、彼がナンバーズの姿を見つけることはかなわなかった。直前で気づき、身をひるがえした彼の眼前を、上空から飛来した炎弾が駆け抜けていき、
「だぁりゃあっ!」
 続いて射撃の主からの一撃――“装重甲メタル・ブレスト”を着装し、急降下してきたジュンイチの蹴りを受け、ジェノスラッシャーはそのまま眼下のビル工事現場へと叩き落とされる。
 現場正面の広場に落下したため目立つ破壊などは伴わない――大地に叩きつけられたジェノスラッシャーの前に、ジュンイチは静かに舞い降りた。
「やれやれ。なんかなのは達やクソスピードスター達がバトってやがったし、また出るんじゃないかと思ってたけど……大当たりだぜ」
「なん、だと……!?」
 ため息をつくジュンイチの姿に、ジェノスラッシャーがうめきながら身を起こすと、
「パパ、待ってよぉっ!」
 そんなジュンイチを追って、パタパタと駆けてきたのはホクトである。
「もう……わたしが生身じゃ飛べないの知ってるクセにー!」
「悪い悪い。
 コイツを逃がすワケにはいかなかったからな」
 ぷぅと頬をふくらますホクトに答えると、ジュンイチは頭上に向けて右手を――人さし指をかざし、
「ステルスフィールド――展開」
 静かに告げて――彼の指先から“力”があふれた。周囲を包み込み、外界との情報のやり取りをシャットアウトする。
「これで思う存分戦っても周りにはバレねぇ。
 悪いが、ナンバーズもオレの“計画”にとっては欠かせない存在だからな――今管理局に捕まってもらうワケにも、お前らにツブされるワケにもいかねぇんだ。
 っつーワケで……横槍禁止。とっとと消えてもらうぜ」
「言わせておけば……!
 何者だ、てめぇ!」
「……あー、そーいやお前とは初対面だっけか」
 言い放つジェノスラッシャーの問いにそのことに思い至り、ジュンイチは首から下げた漆黒の宝石を手に取り、
「じゃあ……こう答えておこうか。
 通りすがりの暴君だ! 覚えておけ!」
 そして――咆哮する。
「揺らめけ――“蜃気楼”!」
 ジュンイチの言葉に、彼の手の中の宝石――待機状態だった彼のデバイス“蜃気楼”が起動した。同時、砂塵のような“何か”がジュンイチを中心に渦を巻き、一気に周囲にばらまかれる!
 そして――
「さて、と……」
 言いながら、ジュンイチは手にした“それ”を頭上に掲げ――振り下ろし、視界をさえぎる“何か”を振り払った。
 クリアになった視界の中央で、“装重甲メタル・ブレスト”を身にまとったジュンイチは一歩を踏み出し――
「一応、聞いておこうか。
 王か松井かイチローか……誰のフォームでカッ飛ばされたい?」
 手にした鉄槌――漆黒のグラーフアイゼンをジェノスラッシャーへと突きつけた。
 

「…………参りました」
「まぁ、よくもった方かしらね」
 ウーノは「よくもった」と評価してくれたが、文句なしに彼女の圧勝――投了した自分に満足げにうなずくウーノを前に、グリフィスは思わず息をついた。
「最初からずっと手加減なしでしたね……」
「あら、手を抜いてほしかったのかしら?」
「そうは言いませんけど……
 まぁ、男の子の意地と言いますか……」
 うめくも、あっさりと返されるだけ――グリフィスはウーノに答え、改めて二人の間の盤面に視線を落とした。
「…………どうしたの?」
「あ、いや……
 なんていうか……不思議な対戦だったな……って」
 今の対戦で不自然なところがあったのか――不思議に思い、尋ねるウーノだが、対するグリフィスの答えは要領を得ないものだった。
「ウーノさんの攻め方、すごく容赦なかったんですけど……何て言うか、こっちに考える余地を残してる、って言うか……
 まるで、『さぁ、どうする?』って、問いかけられているような……」
「…………そうかも、しれないわね」
 自分でもワケがわからないのか、首をかしげながらつぶやくグリフィスに対し、ウーノはクスリと笑みをもらし、
「グリフィスくんは知ってるかしら?
 チェスと似たルールの――将棋というゲームを」
「あぁ、チェスと同じ、地球発祥のゲームですよね?」
「そう。
 そして、その将棋が生まれたのと同じ地方から、同じく囲碁と呼ばれる盤ゲームが生まれているわ」
「その囲碁が……どうかしたんですか?」
「囲碁には、おもしろい別名があるの。
 “手談”――“手”で“談”じる、つまり手をもってして語り合う、という意味よ。
 こういったゲームは、自分の腕を磨くだけでは決して勝てない――相手のことを知り、相手の手を読むことで、自分に勝機を引き寄せる。
 もうわかったでしょう? この手のゲームは、自分と相手の語り合いこそがその本質。相手の打ち手を見て、こちらの打ち手を見せ――そうやって、お互いのことを知っていくことにその根源がある……」
「なるほど……
 ウーノさんは今の対戦で、自分の打ち手を見せることでボクに語りかけていたワケですか……」
 ウーノの言葉に納得し――グリフィスは息をつき、ウーノに対し頭を下げた。
「すみません、ウーノさん。
 そうやってウーノさんが語りかけてくれていたのに、自分のことで手いっぱいで、気づかなくて……」
「“手談”の考え方を知らなかったんだもの。仕方ないわ」
 まったく、律儀なものだ――グリフィスの言葉に苦笑し、ウーノは盤上のポーンの駒を軽くなで、
「それに……あなたはちゃんと答えていてくれたわ。
 私の動かす駒、そのひとつひとつに対して、自分がどう動くべきか――懸命に考えて、自分なりの答えを返してくれた。
 だから……大丈夫」
「はぁ……
 それなら、いいんですけど……」
「今いち実感がわかない……そんな顔ね。
 まぁ、そのうちわかるわよ」
 まだ納得がいかないのか、しきりに首をかしげるグリフィスに対し、ウーノは優しげに微笑んでそう答えた。
 

「今日は本当にありがとう。
 楽しかったわ」
「えぇ……ボクも楽しかったです」
 その後は何事もなくデートは進み――夕暮れ時、街が茜色に染まる中、待ち合わせ場所だった公園に戻ってきた二人はそう別れのあいさつを交わしていた。
「……次に言葉を交わすのは、また手紙の上ね。
 それじゃあ……」
「あ、あの……」
 言って、きびすを返そうとしたウーノだったが、そんな彼女にグリフィスはためらいまじりに声をかけた。
「………………何?」
「また……会ってもらえますか?」
「………………っ」
 聞き返したところに告げられたグリフィスの問いに、ウーノは思わず言葉に詰まった。
 自分はスカリエッティ側、グリフィスは六課側――その事実を忘れたワケではない。今回は、予想外の手紙の返事に対し、彼の実際の姿を確かめたかっただけであり、それを果たしてしまった以上、グリフィスに会う理由は存在しない。
 とはいえ、それを正直に口に出しても意味はない。適当に「また会いましょう」とでも答えておけばいい――しかし、ウーノはなぜかそうすることができなかった。
(どうして……?
 何をためらっているの? 私は……?)
 自分のためらい、その正体がわからない。ただ、どうしても「ウソ」という形でまた会う約束を交わすことはできなくて――
「…………そうね。
 また、会いましょう」
 だから、ウーノはその言葉に“別の意味”を込めることにした。
「それじゃあ……また」
「えぇ……また」
 そして、二人は互いに言葉を交わしウーノは彼に背を向けて歩き出す。
(そう……また会いましょう)
 その胸中で、自らの言葉を繰り返す――そこに込めた、“本当の意味”と共に。
(また……今度は、“戦いの場で”。
 あなた達との決戦……プランを変えて、私も“アグリッサ”で出る――)

 

 

(せめて……私の手で、あなたを撃つために)


次回予告
 
ウェンディ 「あーあ……結局、ウー姉とグリフィス・ロウラン、普通に終わっちゃったっスねー」
セイン 「だよなー。
 せめて“ABC”の“A”くらいはいってほしかったんだけどなー」
ディード 「………………?
 お姉様方。“ABC”とは……?」
セイン 「あー、さすがにまだその辺は知らないか。
 “ABC”ってのは……」
トーレ 「“A”は核兵器、“B”は生物兵器、“C”は化学兵器だ」
ウェイディ&セイン 『ぜんぜん違う(っス)』
トーレ 「何!? 違うのか!?」
ウェンディ 「次回、魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜
 第62話『六課が静止する日
 〜医食同源、“毒”食同源!?〜』に――」
4人 『ゴッド、オン!』

 

(初版:2009/05/30)