機動六課が着々とその戦力を回復、増強しているその頃――
「柾木ジュンイチは?」
「また出かけたみたいだよー」
ジュンイチの本拠地――巨大陸上母艦マックスフリゲートの居住区で、セインは先日の外出で買ってきた雑誌を読みながらノーヴェの問いに答えた。
「ったく、つくづく何考えてんだよ、アイツ……
敵のはずなのに、あたしら完全に野放しじゃねぇか」
「『勝手に帰っていい』とまで言われたしな……
なんつーか……もう“敵”として見られてない、って感じ、するよな」
そんなセインの答えに、ノーヴェは「またか」とばかりに苛立ちをあらわにする――彼女の言葉に、セインもため息をついて同意する。
「くそっ、あんにゃろ、余裕ぶりやがって……
“王サマ”のこととかドクターとのこととかとは別に、何かギャフンと言わせてやらないと気がすまないな」
「お、仕返しか?
あたしもノってもいいよ」
うめくようにつぶやくノーヴェに、セインは楽しそうに雑誌を閉じてそう答え――
「……そういえば……ウェンディお姉様は……?」
『………………あれ?』
ふとつぶやいたディードの言葉に、二人はようやくウェンディの姿がないことに気づいた。
「そういえば……アイツ、どこ行ったんだ?」
「いつもなら、こういう話してるとどこからともなくかぎつけてくるのにな……どうしたんだろ?」
いれば正直うるさいが、いないというのも気にかかる――それぞれにつぶやき、ノーヴェとセインは思わず顔を見合わせた。
「失礼しまーす……
誰かいませんか……? いませんね……っと……♪」
そのウェンディはというと、居住区の一角にその姿を潜めていた。
こっそりとドアを開け、中に入るのは自分の私室――ではない。そうであればこんなコソコソしながら入る必要などないのだから。
「ここが柾木ジュンイチの部屋っスか……
…………趣味全開なのを期待してたっスけど……案外普通っスね」
そう。そこは現在マックスフリゲートを留守にしているジュンイチの私室――もうコソコソしている必要はないとばかりに立ち上がり、部屋の中を見回す。
作業中だったのだろう、デスクに書類が出しっぱなしになっている以外は実に整理の行き届いた、清潔感あふれる部屋だ。
ウェンディのイメージでは、さんざんに趣味関係のものが散らかった、まさに“ヲタク”といった感じの部屋を想像していたのだが、そんなイメージとは大違い。確かに趣味のものも置かれてはいるがちゃんと棚に整理されており、乱雑な印象は見られない。
思わず感心するが――ウェンディは知らない。
ここはあくまで“生活するための”部屋でしかなく――彼女のイメージしたような“趣味の部屋”は、別にしっかりと用意されていることを。
閑話休題。
「……さて、そんじゃ、さっそく始めるっスか……♪」
自分はここに“お部屋探検”に来たのではない――気を取り直し、ウェンディは自分の頬をぴしゃりと叩いた。
「いつまでも、好き放題されてもいい気分しないっスからねー。
何か、柾木ジュンイチに対する弱みのひとつでも……」
そう。わざわざジュンイチの不在時を選んでここに来たのはすべてそのため――ジュンイチに対抗するためのヒントを、彼女はこの部屋に求めていたのだ。
「まずは……やっぱりコレっスよね?」
そんなワケだから――彼女の目がデスクの上に出しっぱなしになっていた書類に向いたのも、ある意味当然のことだった。
「あたしらがいるってのに、こんな書類出しっぱなしにして、バカっスよねー♪」
お前には言われたくない――そんなことを言うノーヴェの声が聞こえた気がしたが、幻聴と割り切ってガン無視。書類のひとつを手にとって――その見出しを見て眉をひそめた。
「……“教導案”……っスか?
誰か鍛えるつもりってことっスか? でも、誰を……」
言いかけ――ウェンディは止まった。
表紙の下の方に書かれた、教導対象者の名前を見て。
「これ……あたしの名前……!?
まさか、これ、あたし用っスか……!?」
そう。そこに書かれていたのは紛れもなく自分の名前――中を確認しても、確かにライディングボードを使っての、自分独特の戦闘スタイルを前提とした訓練の指針が記されている。
しかも――
「それにこれ……第19版って何スか。どんだけ手ェ加えまくってんスか」
そこにはその書類が相当な手直しを重ねてきたであろうことを示す記述まであった。呆れと困惑の入り混じった、微妙なため息と共にそうつぶやいて――
「……って、まさか……」
ふと“そんな”予感に捉われた。改めて書類の山に視線を落とし――
「…………やっぱり……」
あった。
自分だけではなく、セイン、ノーヴェ、ディード、さらにはルーテシア……ついでな感じにガスケットも。
現在このマックスフリゲートに“居候”しているメンバーの中で戦う力を持つ者、その全員分の教導計画のメモがそこにはあった。
「ジュンイチは……あたし達も強くしようとしてる……?
でも、何のために……」
思えば、ジュンイチの態度は最初から自分達に対してどこか好意的だったように思う。
自分達を“管理局から”守るためにマックスフリゲートに連れ帰り、特に拘束もせず自由にさせてくれて……それどころか、自分達を切り捨てようとしたクアットロに対して本気で怒りを見せていた。
彼はスカリエッティと敵対している。すなわち自分達は本来敵同士なのに――ジュンイチの態度からはそんな印象はまったく受けた覚えがない。せいぜいアインヘリアル攻防戦で容赦なく撃墜されたくらいだ。
だからこそわからない――ウェンディの中で、ジュンイチのことをどうしても“敵”としてイメージできない。
「あたし達を守ってくれて……あたし達の成長を願って……
何なんスか、アイツ……」
では彼は何なのか――そこに至り、ウェンディの思考は適切なたとえが思いつかずにまた止まる――
しかし――仮にもし、ウェンディが普通の家庭に生まれ育ったなら、きっと彼の態度をこう評していただろう。
――「まるで父親みたいだ」と……
第84話
背景なんて言わせない!
〜連結合体テンカイオー〜
さて。
今現在ウェンディを混乱させている張本人であるジュンイチはというと――
「あいにくと、粗茶しかないがな」
「ウソつけ。
フィアッセさんがいるんだぞ――上等な茶っ葉くらいあるだろうに」
「貴様に出す高級茶葉なんぞないわ」
現在、セイバートロン星の政庁にいた。ソファにどっかりと座り、スタースクリームと対峙している。
が、対するスタースクリームの表情は憮然としたものだ。茶について言及するジュンイチに対し、ぶっきらぼうにそう言い放つ。
「やれやれ、嫌われたもんだねー。
オレが一体何をしたのやら」
「最初に出会って以来、貴様がからむとロクなことがない。
そもそも、初めて出会ったきっかけ自体がトラブルだっただろうが」
「あーあー、フィアッセさんのコンサートの護衛の一件だな。
恭也さん達が呼ばれたもんだから、一緒に香港で修行してたオレもなし崩し的に参加したんだっけか」
「その『なし崩し』の結果、過剰破壊を大量生産したんだろうが……!」
「しゃーないじゃん。
オレ、高威力殲滅型の能力者なんだしさ」
「その気になればその“高威力”をピンポイントで叩き込める制御能力があるクセに、『めんどくさい』とかほざいてやらないのはどこのドイツだっ!?」
ジュンイチに対し思い切り言い返し――スタースクリームはため息をついて自分の席に戻った。
「それより……だ。
貴様が来た用件は……」
「そ。
お前さんが拾った“ひよっこ”二人のこと♪」
そして話はいよいよ本題へ――スタースクリームの問いに、ジュンイチは不敵な笑みと共にそう答える。
そんな彼に応じ、スタースクリームは傍らにウィンドウを展開。そこに六課隊舎攻防戦の際の、オクトーンとブロードサイドの映像を映し出した。
「しっかし、いつの間にあんなヤツらを……」
「貴様がからむと、事件は例外なく大規模化するからな。
事態が深刻になるのがわかりきっているんだ。備えておくのは当然だろう」
「好きで事態を深刻化させてるワケじゃないんだけどなぁ……」
「だろうな。
今回は意図的なものとしても……ただそこに“いた”だけで悪化した事件も数知れず、だからな。お前の場合」
痛いところをツッコまれ、思わず頭を抱えるジュンイチだが、そんな彼にスタースクリームは容赦なく追い撃ちをかける。
「まったく、お前の周りはどうしてそんなヤツらばかりなんだ。
事態を悪化させるお前やらとにかくトラブルを引き当てるチビスケやら……」
「言うな……オレもアイツもけっこう気にしてるんだ」
「だったら何とかしてくれ。
アイツがトラブルを呼び込んでお前が悪化して……挙句そろいもそろってハデに暴れてくれるから被害も甚大。最凶の多段コンボだろうが」
「あ、それムリ」
「ムリなのか!?」
瞬時に立ち直ったジュンイチに返され、スタースクリームが声を上げる――が、ジュンイチはそんな彼を手で制し、脱線しかけた話を修正する。
「それより、今はこっちの二人だろう?」
「あ、あぁ……」
「ホント、よく見つけてきたぜ。
お前らには分析用の“レリック”しか回してなかったのに」
「気づくべきポイントさえ気づけば、ゴッドマスター探しはそれほど難しくはなかったさ」
感心するジュンイチに答え、スタースクリームは息をつき、
「しかし……幸いだったのはそこではない。
“彼女”達が泉こなた達の知り合いだったこと――それが何よりの決め手となった。
おかげで、彼女達が戦っているのを知らせただけで、簡単に参戦を決めてくれた」
「おやおや、こなた達との友情をダシにしやがったのか。
さすがは元デストロンの裏切り魔。悪党だねぇ♪」
「貴様に言われたくはない」
茶化すジュンイチに対し、あっさりと返す――息をつき、スタースクリームがウィンドウに表示したのは地上本部攻防戦の直後、ジュンイチの崩壊させた地上本部跡の調査の様子を映した記録映像だった。
「地上本部を叩き、不正を暴き……貴様のせいで管理局の上層部は未だに混乱が続いている」
「そだねー」
何を言いたいのかはすでに予測しているのだろう。ジュンイチの反応は淡白だった。
「柾木……貴様は何を目指している?
管理局にあそこまでのダメージを与えたのが、貴様の目的にどうからんでくるんだ?」
「ンなの決まってる」
だから――スタースクリームの問いに、ジュンイチはあっさりと答えた。
「守るのさ。
スバルが、ギンガが、はやてが……みんなが生きる、この世界をな」
「管理局を叩き、貴様ひとりで守るとでも言うつもりか?
おごりだぞ、それは」
「わかってるよ」
反論するスタースクリームだったが、やはり予想の内の問いだったのだろう。ジュンイチはあっさりと返してくる。
「オレだって、自分ひとりで全部守れるなんて思ってないさ。
守れなかったものなんてたくさんある……取りこぼしてきたものも、たくさんな……」
その言葉と共に、ジュンイチの表情が曇った。
その背景を知っているスタースクリームも何も言わない。しばしその場を沈黙が支配し――
「だから……守る」
ジュンイチの小さな、しかし力の宿った言葉がその沈黙を打ち崩した。
「守るんだ。
みんなの生きるこの世界を……みんなで、な」
「そういえば……」
その頃、スタースクリームのパートナーであるフィアッセは相棒の“教え子”達とアフタヌーンティータイムの真っ最中――紅茶を優雅に飲みながら、思い出したように口を開いた。
「どうしました?」
「あ、いやね……」
尋ねるのは“教え子”その1、峰岸あやのだ。彼女の問いに、フィアッセはどこか懐かしげに答える。
「なんかいろいろあって忘れそうになるけど……二人と出会ってから、まだ3ヶ月しか経ってないんだなー、って」
「あれ? まだそんだけだっけ?」
茶菓子に出されたタルトをかじりながら聞き返すのは“教え子”その2、日下部みさおだ。
「そうだよ。
なのに、そんなのも気にならないくらい、いろんなことがあったんだなー、って……」
「そうですね……」
「そうだっけか……」
フィアッセの言葉にあやのがうなずき、みさおもタルトを口の中に放り込んで自身の記憶を掘り返しにかかった。
「……えっと……いきなりフィアッセさん達が来て、あたしとあやのを誘ったんだよな? 確か」
「そうだよ。
出会い自体はそんなに驚きはなかったけど……あの時の誘いの言葉は、ちょっと印象に残ってるかな……?」
「そ、そうなの?」
「そうですよ。
だって……いきなり“アレ”だったんですから」
今をさかのぼること3ヶ月前――
「なーなー、あやの、これからどうする?
ウチ寄ってくか?」
「うーん……どうしようかな……?」
それは、ごくごく普通の日常の風景――学校の帰り道、みさおとあやのはそんなことを話しながら家路を歩いていた。
「ったく、柊誘えたらフツーに遊びにいけたのになー。
ひとりで行ってもつまんねーよ。付き合い悪いよ、最近……」
「仕方ないよ。
柊ちゃん達も、何かやりたいことがあるみたいだし……」
「だったら、その“やりたいこと”を教えろっつーんだよ。
みんなそろって秘密にしちゃってさ。所詮あたしら背景組には言う必要ないってかーっ!」
なだめるあやのの言葉に口を尖らせ、これがマンガなら「うがーっ!」とでも擬音がつきそうな感じにみさおが両手を天に突き上げて咆哮し――
「知りたいか?」
「え………………?」
突然声がかけられた。少々驚きながらも周囲を見回すみさおだったが、周囲に人の気配はない。
住宅街のド真ん中とはいえ、比較的交通量も多く幅を広めにとられている見晴らしのいい道だ。人ひとりがそう簡単に隠れられるようなものでもない。
――いや、ある。
自分達が今しがた通り過ぎたところに停められた、1台の大型トラック――いや、トレーラーか。誰かいるとしたらそこしかない。
「誰だよ?
コソコソ隠れてないで出てこいよ?」
だから――声をかけた。トレーラーの奥に隠れているであろう人物に向けて、みさおが声を上げ――
「別に隠れてなどいない」
声の主はそう返してきた。
「オレはさっきから、ずっと貴様らの前にいる」
「『いる』って、誰もいないじゃんかよ」
「みさちゃん、みさちゃん」
反論するみさおだが――そんな彼女に、あやのは背後から小声で声をかけてきた。
「何だよ、あやの」
「アレ、見て。
あのトレーラーのヘッドライト」
「ヘッドライト……?」
あやのの言葉に、みさおは不思議そうに視線を戻し――気づいた。
「ほぅ……そっちの娘は気づいたのか。
なかなかいい観察眼を持っている」
そう告げる声に合わせて、ヘッドライトが明滅していることに。
そして――
「スタースクリーム、トランス、フォーム!」
咆哮と共にその姿が変わる――トレーラーのビークルモードからロボットモードへとトランスフォームし、正体を現したスタースクリームはみさおやあやのの前に降り立った。
「な、何だよ? アンタ。
トランスフォーマーみたいだけど……」
「み、みさちゃん……」
いきなりの登場で面食らいはしたものの、それでもみさおが聞き返す――そんな彼女に、あやのは再びフォローの声をかけた。
「あの人……テレビで見たことがあるよ。
セイバートロン星のサイバトロン軍総司令官代行、スタースクリームさん。
みさちゃんもニュースとかで見るでしょ?」
「ニュースは見ねぇ!」
「…………そうだったね……」
キッパリと断言されてあやのがため息をつくが、かまわずみさおはスタースクリームに尋ねる。
「で? そのサイバトロンのお偉いさんのオッサンが、あたし達に何の用なんだよ?」
「オッ…………っ!?」
みさおのストレートな物言い――よりもむしろ『オッサン』呼ばわりは、スタースクリームに思いも寄らないダメージを与えていた。若干ショックを受けながら口ごもり――
「フフフ……スタースクリーム、おじさんだって」
「むぅ……」
そんなスタースクリームに笑いながら告げ、彼の足の後ろから姿を現した女性がいた。彼女の姿を前にして、あやのはもちろん、みさおも驚き、目を丸くする。
「あ、あやの!
こっちのねーちゃんはあたしも見たことある!」
「う、うん……!
“光の歌姫”……フィアッセ・クリステラ……!」
「うん。
初めまして、だね♪」
驚くみさおやあやのに答えると、フィアッセはニッコリと笑い、二人に尋ねた。
「ねぇ、二人とも……」
「“正義の味方”……やってみない?」
「いやー、今考えるとアレは傑作だったよなー。
いきなり“正義の味方”だもんな」
「そ、そうかな……?
回りくどく誘うよりも直球の方がいいと思ったんだけど……」
「直球すぎたんですよ……」
確かにいきなり「“正義の味方”になれ」と言われても困惑が先に立つというものだ――笑いながら告げるみさおにフィアッセが恥ずかしげに尋ね、そんな彼女にはあやのが答える。
「でも、そのおかげで二人とも話を聞いてくれたじゃない」
「あー、そうだよなー。
アレ聞いて、あたし『おもしろそー!』とか思ったし」
フィアッセの言葉にみさおが次のタルトに手を伸ばしながら同意し、
「でも……一番の決め手は、柊ちゃん達だよね」
「そだな」
続くあやのの言葉にもあっさりと同意。手にしたタルトを一口かじり、みさおは不敵な笑みと共に続ける。
「あんな話聞かされて、黙ってるなんでできるかっつーの♪」
「さてと、お前達への用件だが……」
両者が対面した住宅街から場所を変え、やってきたのは地球サイバトロンの詰め所のひとつ――応接室のひとつを借り、スタースクリームはあやのとみさおに対してそう切り出した。
「まずは、これを見てもらおうか」
言って、スタースクリームが二人の目の前に置いたのは、あやの達からすればトランクケース程の大きさのケースだった。
開閉スイッチを押そうとするが、自分の指では太くてボタンを押し込めないと断念。代わりにフィアッセがスイッチを入れ、ケースを開く。
その中から現れたのは、真紅に輝く結晶体――
「なんだよ、コレ?」
「“レリック”――そう呼ばれている」
尋ねるみさおに対し、スタースクリームはそう答えた。
「コイツについての詳しい説明はまたいずれ。
今の話のキモは、コイツのケースの方だ」
「ケースの方……ですか?」
「ただの機械仕掛けの入れ物にしか見えねーぞ?」
「今のままではな」
聞き返す二人に答えたスタースクリームが傍らの端末を操作。目の前にウィンドウを展開した。
そこに表示されたのはカイザージェットやライトライナーを始めとしたカイザーズのトランステクターの数々――その映像と目の前のものとの関連性が思い当たらず、みさおはスタースクリームに尋ねる。
「何コレ……?」
「このケースと同じものが変化したものだ。
これはトランスフォーマーの非スキャニング体、プロトフォームと同じものでな――対象をスキャニングすることで、トランステクターとなる」
「トランステクター、ですか……
トランスフォーマーとは違うんですよね?」
「あぁ。
トランステクターはトランスフォーマーと違って命を持たない。
“ゴッドマスター”と呼ばれる適格者が融合することで、ロボットモードへとトランスフォームし、戦うことができる」
「すげーな! 人間がトランスフォーマーになれるのかよ!?」
あやのに答えるスタースクリームの言葉に、元々そういったノリの好きなみさおが思わず目を輝かせるが――
「…………その“すげー”存在に、自分もなれるとしたら……どうだ?」
「………………え?」
サラリと返されたスタースクリームの言葉に、みさおは思わず動きを止めた。
「ど、どういうことだ?
あたしらも、そのゴッドマスターになれるってのか?」
「その素養があると、オレ達は判断した」
答え、スタースクリームは目の前の“レリック”のケースに手を伸ばした。中央に置かれた“レリック”を取り去り――ケースに変化が起きた。ぼんやりと光を放ち、明滅を始める。
そのケースを、スタースクリームは手に取り、みさお達に近づける――と、二人のどちらかに近づけた時だけ、その光の明滅が早くなっているのがわかる。
「これは……?」
「お前達に反応しているんだ。
ゴッドマスターとしての素養のある、お前達にな」
尋ねるあやのに、スタースクリームは息をついてそう答える。
「トランステクターはゴッドマスターを探し出し、見つけたゴッドマスターにあわせた仕様に自動的にシステムが調整される。
それはつまり、“ゴッドマスターをサーチする機能がある”ということだ。“レリック”のケースそのものを使えば、ゴッドマスターを探すことは……手間ではあるが難しくはない。
まぁ、他所の勢力は“レリック”を直接持ち出すことで他の勢力に狙われる危険性を踏まえ、この手は使えずにいたようだがな。
ともかく、コイツが反応したということは、お前達にはゴッドマスターとしての素養がある、ということだ」
「なるほど。
お話は大体わかりました」
スタースクリームの説明によって、彼らの言いたいことが見えてきた――息をつき、あやのがスタースクリームに対しそう口を開く。
「つまり……お二人は、私達がゴッドマスターになれる可能性がある、とわかった上で、こうして会いに来たんですね?
とすると、目的は……」
「あぁ。
おおよそ、お前達の……」
そう答えかけ――言葉が止まった。スタースクリームの視線があやのからみさおに移り、
「……お前の考えた通りだ」
「おい、なんで今複数形から単数形に言い直したんだよ?」
何事もなかったように訂正するスタースクリームだが、みさおは目ざとく気づき、ツッコんでくる。
「とにかく、だ。
オレ達はゴッドマスターを求めている。戦力として、その力を必要としている。
だからこそ……お前達二人をスカウトに来た」
「つまり……私達に、あなた達の“敵”と戦え……と?」
「オレ達とて、お前達のような戦いとは無縁に生きてきた者を戦いに駆り出すことは不本意だ。
だが……オレ達の今追いかけている事件の中で、ゴッドマスターはかなり重要な立ち位置にいる。
ゴッドマスターの力なくして、事件の解決はない――そう判断したからこそ、オレ達はお前達の前に現れた。
民間人であるお前達に……オレ達の戦士としてのプライドを曲げてでも、助力を願いたい」
「そんなことを言われても……」
「えー?
いーじゃん、あやの、やってもさ。
正義の味方だぜ。カッコイイじやん♪」
「そんな簡単な問題じゃないんだよ、みさちゃん」
自分もゴッドマスターになれるかもしれない――目を輝かせるみさおだが、そんな彼女とは対照的にあやのはかなり消極的だ。
「だって、戦いだよ?
すごく危ないんだよ。ケガとかもするかもしれないし……ヘタしたら、死んじゃうかもしれないんだよ?」
「大丈夫だって!
あたしとあやののコンビなら、どんな敵でもヘッチャラだよ!」
「もう、みさちゃんったら……」
あやのの警告もどこ吹く風。胸を叩いて言い切るみさおにため息をつくと、あやのは改めてスタースクリームに尋ねた。
「それに……私達じゃなくても、ゴッドマスターになれる人は他にもいるんでしょう?
ううん。もう“なった”人もいるはず……そういう人達は、どうしているんですか?」
「残念ながら、オレ達の元にはいない――お前達が最初の候補者だ」
そうあやのに答えながら、スタースクリームは端末を操作。ウィンドウの映像を切り替え――
「現在のところ、ゴッドマスターの存在が確認されているのは3勢力。
今回の事件の主要なところを占めている次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティの一派。
彼らを逮捕しようと動いている、時空管理局の部隊、機動六課。
そして――」
そして、映像が切り替わり――そこに映った者達を見て、あやのやみさおは思わず目を見開いた。
「この地球の大帝、スカイクェイクが遭遇したゴッドマスター達……現在は、“カイザーズ”というチームを組んで活動している」
そう説明するスタースクリームだったが、あやの達の耳には届いていなかった。
注目するのは、映像の中の少女達――
「柊ちゃん……!?」
「それにちびっ子も……アイツの周りにいたヤツら、みんないるじゃんか……!」
「なんだ。
ヤツらと同じ制服だとは気づいていたが……お前達、泉こなた達のことを知っているのか?」
「あ、はい……
柊ちゃんとは同じクラスで……」
「なるほど。
いやはや、世間というものは広いようで狭いものだな」
答えるあやのの言葉に、スタースクリームは息をつき――
「…………やろう。あやの」
先ほどとはどこか雰囲気を変え、みさおはあやのにそう告げた。
「あたし達も、ゴッドマスターになろう!」
「み、みさちゃん……!?」
「アイツら……最近付き合いが悪いと思ったら、黙ってこんなことしてやがったんだ……
あたしらはジャマ者なのかっつーの」
いきなりの宣言に驚くあやのだが、みさおは強い決意の込められた声でそう告げる。
「だったらこっちも考えがある。
アイツらに、あたしらをのけ者にしたこと、思いっきり後悔させてやらぁっ!」
「………………うん。
そうだね」
みさおの力強い言葉は、あやのの背中をも押す形となった。拳を握り締めて力説するみさおに、ハッキリとうなずいてみせる。
「柊ちゃん達、優しいから……きっと、私達のことを心配して、巻き込まないようにって、内緒にしててくれたんだと思う……
でも……それって水臭いよ。
友達なんだもん……頼ってほしかったよ……」
そして――フィアッセとスタースクリームを交互に見据え、告げる。
「フィアッセさん。スタースクリームさん。
その話……お受けします。
私達を……ゴッドマスターにしてください」
「本当に、それでいいの?」
「正直……できるかどうかなんてわかりません。
素養はあっても、引き出せないかもしれない。引き出せても、役には立てないかもしれない……
でも……知っちゃいましたから。柊ちゃん達のこと。
友達がそんなことになってるってわかって……無関係な顔なんて、できません」
話を持ちかけておきながら何だが、本当にいいのか――確認するフィアッセに対し、あやのも譲るつもりはなかった。
「あの子達とは指揮系統は重ならない……一緒には、戦えないかもしれないよ?」
「別々でも……いいです。
私達が戦うことで、少しでも柊ちゃん達の助けになれるのなら……」
「…………決まり、だな」
あやのの言葉に、スタースクリームは静かにうなずいてみせた。
「だが……そうであるなら、覚悟しろよ。
貴様らのためにも、オレ達のためにも、貴様らに素人のままで戦いに出てもらうワケにはいかないからな。
事態がすでに動いている以上、時間の余裕もそうはない――悪いが、戦いに出られるレベルまで突貫で鍛えさせてもらうぞ。
その覚悟があるのなら……ついて来い」
「はいっ!」
「お任せろぉっ!」
半ば挑戦的に告げるスタースクリームにあやのがうなずき、そのとなりでみさおも力強く答え、
「見てろ、柊!
お前らにばっかりオイシイところは持っていかせねぇぞぉっ!」『………………はい?』
続くみさおの言葉に、彼女を除く全員の目が点になった。
「えっと……みさちゃん?
まさか、戦いたいって言い出した理由って……」
「もちろん、あたしらもアイツらみたいにカッコよく戦いたいからだよ!」
恐る恐る聞き返すあやのだったが、そんな彼女のかすかな望みを、みさおは情け容赦なくぶち壊してくれた。
「“人知れず悪をやっつけるヒーロー”! いーじゃん、いーじゃん、すげーじゃん!
やるぜ、あやの! 目指すは背景キャラ脱出だぁっ!」
「あー……なんだ……」
「みさおって、こういうキャラなんだ……」
「……ご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします……」
自分達を置いてきぼりにしてテンションをひたすらに上げていくみさお――コメントに困るスタースクリームとフィアッセに対し、あやのはただ頭を下げるしかなかった。
「そうだね……
みさおが戦いたがった理由って、かがみ達に負けたくなかったからなんだよね」
「だってだってー、ズルイじゃんか。
自分達だけ、そういうことに首突っ込んでさ」
当時のことを思い出し、苦笑するフィアッセの言葉に、みさおは軽く口を尖らせてそう答えた。カップの紅茶を一気に飲み干す彼女に対し、あやのがとなりで苦笑し、
「でも……すぐにそんなに簡単なものじゃないってわかったよね?
……スタースクリームさんとの模擬戦で」
「あー、そうだね。
確か、ゴッドオンに初めて成功したとたん、大はしゃぎで『勝負したい』って言い出して……」
「負けたんだよね?
それも言い訳のしようのないくらいの完敗で」
「あうぅ〜……フィアッセもあやのも意地悪だぁ……」
あやのや彼女に同意するフィアッセの言葉に、みさおのテンションが急降下。テーブルに突っ伏し、力なくうめき声を上げる。
「けど、それを言うならあやのだって〜。
近接戦闘の訓練、さんざんだったじゃんか〜」
「そう言うみさちゃんは、射撃がダメだったよね?
あとは座学も逃げ出して、サイクロナス達に捕まって……」
「あうあうあう……」
懸命の反撃もあっさりつぶされる。意外と手ごわい親友に、みさおは再びテーブルの上に突っ伏して――
「でも……二人とも、本当に強くなったよ」
そんな二人にフォローの声を上げたのはフィアッセだった。
「素人の私が見ても、最初の頃とは比べ物にならないくらい」
「って言っても、戦い方がうまくなっただけなんですけどね」
「そーそー。
スタースクリームが言うには、パワーとかはぜんぜん上がってないみたいだし」
「それでも……ううん、だからこそ、だよ。
二人とも……すごく強くなった」
答える二人だが、フィアッセの答えは変わらなかった。
「私も、恭也や美由希が強くなっていくのを見てたから……そういうの、わかるんだよ。
うん。本当に強くなったし、まだまだ強くなれるよ、きっと」
そう告げて、フィアッセは優しげに微笑み、
「きっと……二人が最初の頃の想いをずっと貫いてるからだよ。
二人の想いがブレないから、二人の強さもブレないで伸びていけるんだよ」
「はい。
柊ちゃん達ばっかりに、危ないことはさせられませんから」
「あたしらだって主役を張れるんだって、教えてやらないとな!」
フィアッセの言葉に、あやのも、みさおも元気にうなずく。そんな二人に、フィアッセもまた先ほど以上の笑顔を見せ――
次の瞬間、鳴り響いた警報が憩いの一時をぶち壊した。
「んー、こりゃどうも見つかったっぽいか……?」
「かまうものか。
今度こそ――ヤツらの対応よりも速くターゲットを確保すれば問題はない」
セイバートロン星の市街地――その一角に身を潜め、言葉を交わすのはディセプティコンのバリケードとレッケージだ。
その場に身を潜めているのは彼らだけではない。ブロウルやボーンクラッシャーもいる。
このメンバーをまとめるのが今の自分の役目だ――息をつき、レッケージは彼らに告げる。
「さぁ、いくぞ。
今回獲物が運び込まれたのは……」
「セイバートロン星、政庁だ」
「ありゃ、ディセプティコンの下っ端どもじゃんか……
最近見ないと思ったら、セイバートロン星に来てやがったのか」
「あぁ。
最近、ひんぱんに襲撃を繰り返している」
警備システムが捕捉し、自分達の前に映像として映し出したのはレッケージ達の姿――ビークルモードで街を爆走、交通法規を完全に無視したその走りぶりで街を混乱に陥れているその姿を見て、つぶやくジュンイチに、スタースクリームはため息まじりにそう答えた。
「狙いは……やっぱり?」
「あぁ。
オレ達の保有している“レリック”だ。
何度も移動させているが、その都度保管施設を特定して攻めてくる――間違いないだろう」
ジュンイチに答え、再び映像の中のレッケージ達へと視線を戻す。
「それで今回は、この政庁を保管場所としたのだが……それでも攻め込んでくるとはな。
魔法は専門外のオレ達であれば扱いにもスキがあるだろうと踏んで、我々の“レリック”に狙いを定めたんだろうが――まったく、なめられたものだ」
「お前が行って、サクッとつぶしてこりゃいーじゃん?」
「その必要はない」
告げるジュンイチだったが、スタースクリームの答えはあっさりとしたものだった。
「ウチの守備隊は優秀だし、何より……」
「彼女達がいる」
せっかくのフィアッセとのお茶の時間も、ディセプティコンの出現によって中断を余儀なくされた。それぞれのトランステクターに搭乗し、みさおとあやのはディセプティコン迎撃のために出撃することとなった。
「ったく、毎度毎度やってくれるよな!
おかげでフィアッセの淹れ直してくれた紅茶を飲み損なっちまったじゃんか!」
「まぁまぁ、みさちゃん。
帰ったらきっと、またフィアッセが用意してくれてるよ」
自身も紅茶好きのフィアッセのことだ。きっと帰ってくる自分達のために労いの紅茶を淹れてくれることだろう。自身のジャンボジェット機型トランステクターのコックピットでボヤくみさおに、あやのも自らのクルーザー型ビークルのコックピットでそう答える。
元々航空機であるジャンボジェット機をモチーフにしたみさおの機体はともかく、クルーザーをモチーフにしたあやののトランステクターはそのままでは陸上では活動できない。船体下部からエネルゴンを放出。擬似水面を作り出しての航行である。
「よぅし、それじゃ、いつも通りさっさと片づけて、フィアッセの紅茶を飲みに帰るとすっか!」
「うん!」
ともかく、こんな本意でない戦いなどさっさと終わらせてしまうに限る。みさおの宣言にあやのも笑顔でうなずき、宣言する。
『ゴッド、オン!』
その瞬間――コックピットに座る二人の姿が光に包まれた。そのままコックピット全体に広がり、溶け込むように一体化していく。
光はそのままコックピットからトランステクター全体に広がっていく――その瞬間、光だけでなくそこに溶け込んだみさおやあやのの意識もまた、機体全体に行き渡っていく。
「オクトーン!」
「ブロードサイド!」
『トランスフォーム!』
そして、二人のさらなる宣言により、トランステクターがその姿を変える――ジャンボジェット機と大型クルーザーから一転、人型のロボットモードとなり、目標に向けて跳躍する。
狙いは、ビークルモードでの爆走を続けるディセプティコン――
「どぉりゃあっ!」
「どわぁっ!?」
先陣を切って飛び込んだみさおのオクトーンがそのままの勢いで飛び蹴りを一発。あわてて回避し、バリケードはロボットモードへとトランスフォーム、同様にトランスフォームした仲間達と共にオクトーンと対峙し――
「みさちゃん!
ブロードランチャー!」
『どわぁぁぁぁぁっ!?』
みさおを援護すべくあやのがブロードサイドに装備されていたロケットランチャーで爆撃。放たれたミサイルがディセプティコンの面々めがけて降り注ぐ!
「てめぇら、またジャマする気か!」
「『また』とか言うならあきらめろよな!
こっちは、フィアッセのお茶をジャマされて頭にきてるんだ!」
体勢を立て直し、うめくブロウルにみさおが言い返し、両者は地を蹴り――激突した。
「『フィアッセのお茶』って……
アイツが怒るのはそこなのね……」
「というか……連中かみさおか、どちらかの間が悪いんだ。
なぜか、アイツらの襲撃があいつらのティータイムと重なることが多くてなぁ……」
そんな彼女達の様子を、ジュンイチとスタースクリームは執務室で観戦中――呆れるジュンイチに対し、スタースクリームが肩をすくめて答える。
「だいたい、貴様がそれを言うか?
貴様とてよくフィアッセのお茶を楽しんでいるだろうに」
「は? 冗談じゃねぇ」
返すスタースクリームに対し、ジュンイチはあっさりとそう答えた。
「オレが楽しみにしているのはフィアッセの紅茶じゃない。っつーか、“ココア派”のオレが紅茶なんぞ飲むワケなかろうが。
オレが楽しみにしているのは――フィアッセの手作りシュークリームだ!」
「一応ツッコませてもらうが……ほとんど変わらんからな、それ」
「彼女とは違うんです」とばかりに胸を張るジュンイチの言葉に、スタースクリームはため息をついてツッコミを入れた。
「どぉりゃあっ!」
「オラオラオラぁっ!」
豪快な咆哮と共に、バリケードとみさおが拳をぶつけ合う――少なくとも一方は生物学上“女性”なのだからその咆哮はどうかと思うがそれはさておき――
「バリケード!」
「ぅわっとぉっ!」
そんなバリケードを援護すべく、レッケージが飛び込んできた。両腕のブレードから繰り出した斬撃をかわしてみさおが後退し――
「逃がすかよ!」
そこに追撃をかけるのはボーンクラッシャーだ。背中のクローアームを伸ばしてみさおを狙うが、
「ブロードキャノン!」
そんなみさおを救ったのはあやのだ。ブロードサイドの大型砲が火を吹き、ボーンクラッシャーの足を止める。
「貴様――ジャマをするな!」
だが、そんな彼女にはブロウルが砲撃――あやのもそれをかわし、両者は再びそれぞれに集結して場を仕切り直す。
「へっ、毎回毎回追い払われてるクセして、今回はずいぶんとしぶといじゃんか」
「何度貴様らとやり合ったと思っている。
貴様らとの戦い方も、だんだんと理解できてきた」
不敵に笑い、告げるみさおに対し、レッケージが冷静にそう答えるが、
「それって……それだけお前らが負けまくってるってことだよな」
「うるさいっ! その話題に触れるなーっ!」
ポロッ、ともらしたみさおのつぶやきに、バリケードが思わず声を上げる。
「でもさー、実際それだけ負けてんじゃん、お前ら。
いい加減あきらめて帰ってくれよー」
「フッ、そんなことを言っていられるのも今のうちだぞ」
告げるみさおにそう答えると、レッケージはそれを取り出した。
ワシをかたどったレリーフだ――頭上に掲げ、叫ぶ。
「天空を裂け――“バサラ”!」
その瞬間、彼の頭上に“力”が収束した。結合し、物質を成し――それが終息した時、そこには巨大なワシ型の機動メカが出現していた。
そして、次の瞬間、そのワシがレッケージの背中へと舞い降りた。両足と頭部をたたみ、バックパックとなって背中に合体し、レッケージの背に翼を生やす。
さらに――
「殴り尽くせ――“ヘカトンケイル”!」
バリケードもまた自らのパワードデバイスを起動。両肩に巨大な拳を装備し、周囲に飛翔する拳“フライングフィスト”を作り出す。
「不名誉ながら、お前達にはさんざん手こずらされたからな――おかげで、お前達に対するデバイスの使用許可が下りたんだ。
こうなったオレ達を、甘く見ない方がいいぞ!」
「ボコボコにしてやるぜ! 覚悟しな!」
「いや、それはいいけどさ……」
宣言するレッケージやバリケードの言葉に、みさおは頬をかきながら彼らの後方へと視線を向けた。
ボーンクラッシャーとブロウルを見て――レッケージに尋ねる。
「あっちの二人は?」
「うるせーっ!」
「オレ達のデバイスは柾木ジュンイチにブッ壊されて修理中だ!
文句あっか、このヤローっ!」
当事者達から半泣きで回答が返ってきて――
「…………だ、そうだぞ」
「知らんがな」
政庁では、“犯人”がキッパリとぶった斬っていた。
「それはともかく――ここからは、我々の反撃の時間だ!」
「させるかよ!
ちょっと羽根が生えたくらいで!」
少々話が脱線しかけたが、戦いはこれからが本番――言い放ち、レッケージが背中の翼を羽ばたかせて大空へと飛び立った。対し、みさおも言い返しながらその後を追うが、
「残念だったな!」
そんな彼女に告げ、レッケージは急遽転進。猛スピードでみさおめがけて急降下――さらにみさおのすぐ目の前で身をひるがえし、追ってきたみさおをかわして背後に回り込む!
「え――――ぅわぁっ!?」
そして、一瞬の刹那にこちらを見失ったみさおの背中に一撃。叩きつけられたブレードが、彼女のゴッドオンしたオクトーンを吹っ飛ばす!
「みさちゃん!」
そんなみさおの姿に、あやのが思わず声を上げ――
「お前の相手はオレだぜ!」
「きゃあっ!」
彼女の前にはバリケードが襲いかかった。両肩に装備したヘカトンケイル本体である巨大な拳が、あやののブロードサイドを立て続けに殴り飛ばす!
「あやの!」
「おっと、行かせん!」
眼下で親友が苦戦するのに気づき、あわてて援護に向かおうとするみさおだったが、そんな彼女を飛び込んできたレッケージが蹴り飛ばす!
「ありゃありゃ……なんか旗色危なくなってきてるな……」
明らかに戦いの流れが変わった――苦戦するみさお達の姿に、ジュンイチは軽くため息をついてそうつぶやいた。
しかし、その表情は二人を心配しているというよりは――
「…………あぁ、また外した。
せっかくキレはいいのに、攻撃のタイミングが甘いぜ。焦れったいなー、もう……」
むしろみさお達の戦いぶりが見ていて非常に焦れったいらしい。うずうずと身体を震わせながらつぶやき――
「なぁ、スタースクリーム」
「出たいんだろうが自重しろ。
“焦れッたい”などという理由であの場をかき回されてたまるか」
声をかけた目的はすでに読まれていた。口を開くジュンイチに、スタースクリームはキッパリとそう答えた。
「確かにお前が暴れればすぐにでも解決するんだろうが、それではアイツらの成長の糧にはならん。
貴様も、同じ思いでスバル達の戦いには手を出さずにいたんだろうが」
「アイツら、オレの教え子じゃねーし」
「…………相変わらず、そういうところはアバウトというか線引きが極端というか……」
口をとがらせるジュンイチにため息をつき、再びスタースクリームは彼に告げる。
「とにかく。
確かにデバイスを持ち出されて戦いの流れを持っていかれてはいるが……あの程度ならどうということはない」
そう告げることのできる“根拠”が彼にはあった――笑みを浮かべ、続ける。
「お前はどっしりとかまえていればいい。
そして、見るがいい――」
「アイツらの、“切り札”を」
「こん、のぉっ!
タービン、ボンバー!」
みさおが咆哮し、オクトーンの翼に装備された4基のエンジン、その外側の2基が射出された。ミサイルとしてレッケージへと襲いかかるが、機動性ではレッケージの方に分があった。あっさりとかわし、みさおの懐に飛び込んでくる。
「にゃろうっ!」
そのままレッケージがみさおを狙って刃を振るう――対し、みさおも残る2基のエンジンを両拳にかぶせるように装着。タービンが音を立てて回転を始めると、エンジンから光刃が生み出される。
「タービン、セイバー!」
咆哮し、みさおが生み出した2本の光刃でレッケージの斬撃を受け止める――が、レッケージはムリにみさおと押し合うことはしなかった。あっさりと刃を引き、押し込もうとしていたみさおが勢い余ってつんのめったところを蹴り飛ばす!
「ぅわぁぁぁぁぁっ!?」
「きゃあっ!?」
そのまま、吹っ飛ばされたみさおは地上でバリケードを相手に苦戦していたあやのに激突――大地に倒れ伏す二人の前で、レッケージはバリケードのとなりに舞い降りた。
「どうした?
デバイスを持ち出したとたんに形勢がひっくり返ってしまったぞ」
「うっ、せぇ……!」
告げるレッケージに答え、みさおはなんとか身を起こし、改めてかまえる。
「……あー、くそっ。
アイツ、戦い方メチャクチャうめぇ……! パワーじゃ勝ってるのに、ぜんぜん当てさせてくんないや……」
「本当だね……
まぁ、戦士としては私達より先輩なんだし、当然なんだけど」
みさおに同意し、あやのもまた立ち上がり、彼女のとなりに並び立つ。
「なぁ、あやのー。
何か、作戦とかある?」
「うーん……
“作戦”って言えそうにないくらい単純なのが、ひとつだけ」
このままでは危ない――尋ねるみさおに対し、あやのは少し困ったようにそう答えた。
「まず……みさちゃん、空戦でレッケージに負けちゃってるよね?
私も、パワー勝負でバリケードにやられてる……どっちも一番の自慢な部分がひっくり返されちゃってる。
それに……戦い方もすごくうまい。そんなに戦いの回数が多いワケじゃない私達は、技でも戦術でも完全に負けてる。
これをもう一回ひっくり返すには、作戦がどうこうっていう方向じゃムリだと思うの」
「………………で?」
「だから……シンプルに。
もっとこっちの能力を上げて、力ずく――これしかないと思うんだよね」
「ふーん……」
本当に“作戦”と言うのもおこがましい単純な手段――そんな提案をするあやのに対し、みさおの答えはシンプルだった。
なぜなら――
「つまり……“アレ”?」
「そう。“アレ”。
“できる仕組みがある”ってデータを見つけただけで、まだ試してもいないけど……」
自分達は知っているから。
その“手段”を実際に行える方法があることを。
「おいおい、作戦会議はおしまいか?」
「なら、さっさと片づけさせてもらうぞ。
これから、セイバートロン星の政庁を襲撃して“レリック”を回収しなければならないのだからな」
「ここであたしらに勝っても、向こうで返り討ちにあうだけだと思うけどなぁ……」
一方、レッケージ達はすっかり優勢ムードだ。バリケードとレッケージの言葉に、みさおは思わず限りなく現実的な感想をもらす。
「まぁ、それ以前にあたしらだって負けたくないけどさ。
っつーワケで……勝たせてもらうぜ!
あやの、やるぜ!」
「うん!」
告げるみさおに対し、あやのがうなずく――レッケージ達へと視線を戻し、あやのは自らを鼓舞するように宣言する。
「ぶっつけ本番だろうが、まだ何もわかってなかろうがかまうもんか! こういうのは勢いだ!
見せてやるよ! あたしらの――」
「――――合体を!」
「オクトーン!」
高らかに名乗りを上げ――みさおのゴッドオンしたオクトーンのボディが変形を開始した。両腕を後方に折りたたみ、頭部をボディ内に収納すると全体が上下反転。下半身、腰から下が左右に分かれると両側に開かれ、足の裏から新たな拳が出現。左右に分かれた腰部を両肩、両足を両腕に変形させた新たな上半身が完成する。
「ブロードサイド!」
続けて、あやのがゴッドオンしたブロードサイドが変形――こちらはもっとシンプルだ。両腕を後方にたたんで頭部を収納する。
そして下半身、腰が左右に分割――ここまではオクトーンと同じだが、彼女の場合はそこまでで終了だ。左右に分かれた腰を大腿部として両足を延長した、新たな下半身となる。
変形を完了したオクトーンとブロードサイドが交錯し――
『ゴッド、リンク!』
二人の変形した上半身と下半身が合体、ひとつとなる!
そして、ボディ内から新たな頭部が出現し、みさおが高らかに咆哮する。
「連結合体! テン、カイ、オォォォォォッ!」
「よっしゃ、成功っ!」
合体を完了し、レッケージ達の前に降り立つのは新たな合体戦士――新たな身体で拳を握り締め、みさおはレッケージ達へと向き直り、
「見たか! これがあたし達のフルパワー!
できるってことすら最近わかったばっかり、できたてホヤホヤの新形態!
名づけて――“天”と“海”を制する“王”! テンカイオーだ!」
《み、みさちゃん、みさちゃん……!》
高らかに宣言するみさおに対し、あやのは“裏”側から声をかけてきた。
「何だよー、あやの?
今イイところなんだからさ――」
《あ、あの、えっと……
今データバンク見たら、ちゃんと“イージスライナー”って名前が……》
………………
…………
……
「見たか! これがあたし達のフルパワー!
名づけて――“天”と“海”を制する“王”! テンカイオーだ!」
「何事もなかったかのようにやり直した!?」
「なかったことにする気だ……!
名前に関するツッコミ、丸々なかったことにする気だぞコイツ!」
改めて宣言するみさおに対して、レッケージとバリケードのツッコミが飛んだ。
「…………なぁ」
「言うな」
政庁の執務室――口を開いたジュンイチに、スタースクリームはキッパリと答えた。
「アレはそれ用のデータがあるのが先日発見されたばかりで、まだ詳しい確認もしていなかったんだ。
内容も確認せず、ただ“できる”というだけで合体を強行し、正しい機体名も知らないままノリだけで名乗ったヤツのことなど知らん」
「“こういうのはノリ”ってセオリーに則るだけでデータの確認を怠ったみさおが悪いのか、そいういうノリがあるってのに無粋にも設定されていた機体名が悪いのか……微妙だよなー……」
「とにかく!
これで勝つのはあたしらだ! 覚悟しろよ、お前ら!」
「バカにするなよ!
合体できるというだけで強行したんだろう!? まだどんなことができるかもわからんだろうに!」
気を取り直し、戦いを再開――宣言するみさおに対し、レッケージは地を蹴った。空中に舞い上がり、めまぐるしい機動でテンカイオーの周囲を飛び回る。
「どうだ! 貴様にこの機動は見切れまい!
これで――終わりだ!」
告げながら、レッケージはテンカイオーの背後、死角へと滑り込んだ。勝負を決めるべく、ブレードで刺突を繰り出し――
「………………なっ!?」
次の瞬間、彼は自らの目を疑った。
自分の斬撃が受け止められたからだ。
と言っても、ガードされたワケではない。
こちらの刃を阻むのはエネルギーの渦――展開された防壁“だけ”で、テンカイオーはこちらが必殺の意志と共に放った一撃を受け止めたのだ。
「どういう出力だ、コイツ!?」
「当然、だろ!」
驚愕するレッケージに言い返すと、みさおは彼の腕をブレードごと捕まえて、
「あたしらはあたしとあやのの二人分のパワーで戦ってるんだ。
でも――」
そのまま、レッケージの身体を振り回して――
「同じ合体してても――お前の場合、デバイス動かしてるのはお前の力じゃんか!」
渾身の力で、レッケージの身体を大地に叩きつける!
「レッケージ!
てめぇっ!」
そんなレッケージの姿に、バリケードもヘカトンケイルで殴りかかり――
「『てめぇ』じゃなくて――『てめぇら』だぁっ!」
そんなバリケードには全身のバネを最大限に動員したゲンコツ一発。頭上からの一撃が、バリケードの身体を地面に叩きつける!
「ひとり分の力でしか戦ってないお前らと二人分の力で戦ってるあたしら!
どっちが強いかなんて、比べるまでもないじゃんか!」
言いながら、みさおはレッケージ達から距離を取る――ブロウルやボーンクラッシャーが叩き伏せられた二人を助けに走るが、こちらとしては都合がいい。
理由は簡単。
まとめてブッ飛ばせるからだ。
「あやの!」
《うん!
必殺技のデータ、ちゃんと見つけたよ!》
ずっとみさおが“表”で戦っていたのは実はこのため――呼びかけるみさおに対し、あやのはテンカイオーの“裏”側から“準備”が整ったことを知らせてきた。
『フォースチップ、イグニッション!』
あやのとみさおの咆哮が響き――ミッドチルダのフォースチップが飛来した。テンカイオーの背中の備えられたオクトーンのチップスロットに飛び込んでいく。
それに伴い、テンカイオーの両足、両肩の装甲が継ぎ目にそって展開。内部から放熱システムが露出する。
〈Full drive mode, set up!〉
二人に告げるのはトランステクターのメイン制御OS――同時、イグニッションしたフォースチップのエネルギーが全身を駆け巡った。四肢に展開された放熱システムが勢いよく熱風を噴出する。
〈Charge up!
Final break Stand by Ready!〉
強烈なエネルギーが周囲で渦巻く中、制御OSが告げる――身がまえた二人の両手にフォースチップの“力”が収束、みさおはその両手を水平に、前方にクロスさせるようにかまえる。
「テンカイ――」
告げながら、みさおがその両手を、今度は外側に開いていく――その軌跡にフォースチップの“力”が残され、彼女達の前に光の帯が描き出される。
《フォトン!》
続いてあやのが叫び、右半身を大きく引く。それに伴い、機体の中を循環している残りのエネルギーが右拳に収束していく。
そして――
「《インパルス!》」
先に作り出した光の帯を撫でるように――否、薙ぎ払うように右拳を振り抜いた。帯の“力”と拳の“力”が反応して炸裂。解放されたエネルギーがレッケージ達に降り注ぎ、吹き飛ばす!
振り抜いた拳を頭上高くかかげ、振り下ろす――拳に残っていた“力”を振り払い、みさおの操るテンカイオーはクルリときびすを返し、
「一丁――」
《あがりっ!》
その言葉と同時――レッケージ達の周りでくすぶっていた残留エネルギーがトドメの大爆発を巻き起こした。レッケージ達を4人残らず、空の彼方へ吹き飛ばしていった。
「………………最後の『一丁あがり』、絶対みさおの発案だよな……」
「あやのの発想でアレは絶対にない」
こちらはテンカイオーがレッケージ達を叩き伏せにかかった時点で安心しきっていた――最後の勝ち鬨の声に、ジュンイチとスタースクリームは正直な感想をもらしていた。
「しっかし、ホントにオレが出ないで片づいちまったな……戦い方は粗いままだったけど」
「そこは今後の課題だ。ビシビシ鍛えていくさ」
つぶやき、ため息をつきジュンイチにスタースクリームが答える――落胆するジュンイチの姿に「さっき出たがったのは自分が暴れたかったからでもあるな」と確信したりもしたが口には出さず――
「……でも……ちょっとだけ、安心した」
「ん?
何がだ?」
「お前がちゃんと、そうやって“師匠”ができてることだよ」
聞き返すスタースクリームに、ジュンイチはあっさりとそう答えた。
「今日こっちの様子を見に来たのは、それが本命だったからね。
フィアッセの護衛の一件で対面した時から、『あー、コイツ指揮はできても指導はできねーなー』って思ってたからさ」
「待て。
貴様あの時、そんなことを考えていたのか?」
「だから、お前がアイツらをいつの間にか確保してたのを知って、ちょっと不安だったんだよ、ムチャやらせてないか」
「こら! こっちのツッコミを無視して話を進めr――」
「けど、ちゃんとアイツらのこの先を考えた発言してくれた」
「………………っ」
ツッコみかけたスタースクリームだったが、ジュンイチの続けたその一言に思わず言葉を失っていた。
「ちゃんと、アイツらを育てることを考えてくれてる。
これなら、こなたの知り合いのアイツらを、ちゃんと守ってくれそうだ」
「…………当然だ」
ジュンイチの言葉に若干の照れと共にうなずき――スタースクリームはジュンイチへと視線を向け、
「で……そういう貴様は、アイツらの心配をしているかと思えば、アイツらの知り合いである自分の教え子の心配だけか」
「当然」
スタースクリームと違い、こちらはあっさりと答えてくる。
「アイツらの身の安全を守るのはアイツらの師匠であるお前の仕事。
で、オレの担当はオレの教え子であるスバル達やこなた。OK?」
「その割には、今回の件でアイツらにあまり干渉していないな?」
「いや、オレって放任主義だし」
「2行前にほざいていたことを思い出せっ!」
ジュンイチの言葉にツッコみ、スタースクリームは息をつき――
「それよりさぁ」
ジュンイチが再び口を開く――ウィンドウに映る戦場跡を見ながら、告げる。
「あそこって……市街地だよな?」
「…………あぁ」
それだけで、ジュンイチの言いたいことがわかった――スタースクリームがうなずき、ジュンイチも続ける。
「で……あそこにに集まった戦力の中で、魔法が使えるヤツは誰も……少なくともこっちサイドには誰もいない」
「…………あぁ」
映像の中では、ビルやら道路やらがあちこちで破壊されていて――
「つまりアイツら……あのままあそこで遠慮なくバトってくれた、と」
「………………」
とうとうスタースクリームからの返事がなくなった――傍らの彼の足をポンと叩き、ジュンイチは告げた。
「復旧、がんばれ」
「誰か止めてくれ。あの過剰破壊娘を……」
あっさりと見放してくれたジュンイチの言葉に、セイバートロン星の現統治者はそう答えながらその場に崩れ落ちるのだった。
スタースクリーム | 「まったく……みさおの過剰破壊にも困ったものだ」 |
ジュンイチ | 「っつーか……あやの、お前は止めないのかよ? そういうのは相方のお前の役目だろう?」 |
あやの | 「それは、そうなんですけど……」 |
ジュンイチ | 「…………『けど』?」 |
あやの | 「みさちゃんに、そんな器用なことは期待できませんし♪」 |
ジュンイチ | 「なんかさりげに毒吐いた!?」 |
なのは | 「次回、魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜 第85話『我こそキング!〜その力、最大級につき〜』に――」 |
3人 | 『ハイパー、ゴッド、オン!』 |
(初版:2009/11/07)