マックスフリゲートの格納庫、その一角――専用のメンテナンスベッドで翼を休めるホクトの専用トランステクター、ギルティドラゴンの周囲は、ここ最近連日のように蜂の巣をつついたような騒ぎとなっていた。
原因は先日の戦いでホクトがノーヴェを守り、トーレの一撃を受けたこと――あの一件で中破相当のダメージを受けたギルティドラゴンは、それまでの負担の蓄積に対する処置も兼ね、根本的な部分から徹底的な修理の再発防止措置を受けることとなったのだ。
ワークボットが総出でギルティドラゴンの全身に取りつき、装甲をはがし、中の対象パーツを取り外し、新品のそれに取り替えていく――
「やっほー♪
みんな、がんばってるー?」
と、そこに姿を見せたのはホクトだ。ワークボット達に声をかけると、駆け回る彼らの間を器用にすり抜けていく。
「ぎーくん!」
目当てはもちろん、自分と今まで共に戦ってきた“相棒”――眼前に躍り出てきたホクトに対し、ギルティドラゴンは野性
プログラムに則ってうなり声を返してくる。
「まだ……治らないの?
ゴメンね、ケガさせちゃって……」
だが、ギルティドラゴンの調子が芳しくないのは一目瞭然だ。責任を感じ、肩を落とすホクトに対し、ギルティドラゴンは修理中であまり動けないにもかかわらず、優しく鼻先をすり寄せてくる。
「許して……くれるの……?」
尋ねるホクトに、ギルティドラゴンは小さくうなずく――
「ありがとう。
優しいね、ぎーくんは」
プログラミングされた動作パターンのひとつであろうが関係ない。そんなギルティドラゴンの行動はホクトの心を落ち着けるには十分だった。礼を言い、すり寄せてきた鼻先をなでてやる。
「………………よし!」
そして――それは彼女の中でくすぶっていた“ある選択”を後押しする結果となった。うなずきながら、ホクトはクルリときびすを返した。
「………………どうだ?」
《まずまずですね》
一方、こちらは何やらシミュレーションの真っ最中――目の前で尋ねるジュンイチに対し、マグナはマグナダッシャーの“中”から、計測されたデータを元にそう結論づけた。
現在、二人はマグナブレイカーの動力部――多段式相転移エンジンがジュンイチの無茶でその“あり方”を変えた“精霊力相転移エンジン”の調整中。出力を上げ、エンジンがうなりを上げる中で言葉を交わす。
《“フルバースト”級の出力であれば、“擬似カイゼル・ファルベ”の域まで出力を上げることは可能です。
ただ……安定域を保てる時間があまりに短い――現状ではせいぜい15秒といったところですか》
「上等。
機動戦の中での15秒だ。それだけあればデンプシーロールだって放てるさ」
マグナに答え、ジュンイチは彼女の表示してくれたデータに目を通し、
「問題は……これだけのパワーに耐えるための動力伝達系だな」
《はい。
トランステクターのそれをそのまま流用している部分は問題ありません。元々ハイパーゴッドオンにもついていけるような作りになってますから。
しかし……こちらで新たに組み込んだ部分はそうもいきません。現行のまま“フルバースト”をかければ、まずそこから異常が発生していくことになるでしょう》
「過負荷対策、もっと本腰入れなきゃダメか……
相転移エンジンの制御でもいっぱいいっぱいなのに、これ以上負担が増えてもやってらんねーっつーの」
《それに……ここできっちりシステムを組み上げておかないと、危なっかしくてみんなの機体に実装できませんしね》
「む………………」
告げるマグナの言葉に、ジュンイチは思わず動きを止めた。
《せめて、バーストモードだけでも安全に使えるようにならないとダメ……そう言い張ってたのは、そういうことでしょう?
大事にしてますね、あの子達のこと♪》
「うっせ」
マグナの言葉に口を尖らせ、ジュンイチはぷいとそっぽを向いて――
「パパぁーっ!」
「ぐほぉあぁっ!?」
会話の流れを断ち切ったのは真横からの強烈なタックル――ものすごい勢いでホクトに飛びつかれ、ジュンイチの身体が“横に”折れ曲がる。
完全な不意討ちで、踏ん張る余地すらなかった。ホクトに飛びつかれたまま真横に吹っ飛ばされ、勢いのままに床を転がる。
「て、てめぇ……っ!」
痛む腰を押さえ、うめくジュンイチだったが、そんな彼に対し、ホクトは告げた。
「パパ――」
「ぎーくん強くして!」
第90話
ホクト、大空に起つ!
〜その名はギルティコンボイ〜
「…………あー、すまん。
あまりにも話が突然すぎて状況が飲み込めないんだが」
「だーかーらー! ぎーくんを強くしてほしいの!」
まったく前フリも予兆もなかったところにいきなり結論だけを持ってこられては、さすがのジュンイチも事態を把握するのは難しいというものだ。聞き返すジュンイチに対し、ホクトはぷぅと頬をふくらませてそう答えた。
「ぎーくん、今動けないでしょ? わたしがこないだ、ノーヴェお姉ちゃんを守って、攻撃をモロにくらっちゃったせいで……
それに、今までだって、ぎーくん、わたしのために一生懸命がんばってくれて、痛い思いとかもいっぱいしてるはずで……
でも、ぎーくんが強くなれば……攻撃とかくらっちゃっても平気なくらいに強くなれば、ぎーくんがそんな痛い思いとかしなくてもすむかな、って……」
「で……パワーアップの交渉?」
聞き返すジュンイチに返ってきたのは無言の首肯だった。
「だって、わたし、ぎーくんの身体がどうなってるのかとか、ぜんぜんわかんないもん。
だから、できる人にお願いするしか……」
「ふーん……そうきたか……」
まさに突然のギルティドラゴンのパワーアップ要請。単に“強くなりたいから”的な理由かと思えば、意外にも相棒を思いやってのもの――息をつき、ジュンイチはホクトの顔を見下ろした。
まだ歳相応にあどけない顔立ちだが、その視線は真剣そのもの。こんな顔ができるようになっていたとは――自分なりに彼女のことは気にかけていたつもりだったが、今の彼女を見る限り、自分も“まだまだ”だったようだ。
自分の“血”を受け継ぐ少女の成長に苦笑するジュンイチだったが――
「簡単に言うな」
それでも、言うべきことは言っておく。
「そんな『パワーアップさせたいからパワーアップさせてください』なんてポンと言われて、簡単にやれると思うな」
「でもでも、いつも『こんなこともあろうかと』って……」
「アレだってちゃんと前々から予想していて、準備を進めてたからこそできるんだ。
今回みたいにいきなり話を持ってこられたってムリだっての」
「そんなこと言わないでよ、パパのケチ!」
肩をすくめるジュンイチにホクトが声を荒らげると、
「何ナニ? 何の話っスか?」
となりのメンテナンスベッドにいたウェンディが今のやり取りを聞きつけた。不思議そうにこちらへと顔を出し、
「こ、こら! ウェンディ! いきなり放すな――どわぁぁぁぁぁっ!?」
彼女がいたのはガードフローターのメンテナンスベッドで、していたのは脚立の支え役――脚立の上でガードフローターの装甲を磨いていたノーヴェがバランスを崩して落下する。
「の、ノーヴェお姉ちゃん……?」
「…………大丈夫か?」
「ウェンディ……後で泣かす……!」
さすがにこれをほったらかしにして自分達の話を進めるワケには――恐る恐るジュンイチとホクトが声をかけるが、怒りのオーラを身にまとって立ち上がるノーヴェの耳にはどうやら届いていないようだ。
「覚悟しろ……今日のメシのメインのおかずは食えないものと思え……」
「まぁ、効果絶大だろうな。うん」
「うんうん」
うめくノーヴェの言葉にジュンイチとホクトがうんうんとうなずいていると、
「おいおい、何の騒ぎだよ?」
「どうかしましたか?」
さらにセインやディードまでやってきた。意外と耳ざとい面々に肩をすくめるものの、ジュンイチは簡単に自分達のやり取りについて説明してやった。
「……で、オレとホクトがにらみ合ってるのにウェンディが気づいて、持ち場と一緒にノーヴェを放り出してくれた、と」
「ウェンディ……」
「あ、あはははは……」
セインに冷たい視線を向けられ、ウェンディが乾いた笑いでごまかす――そんな彼女達から視線を移し、ディードがジュンイチ達に尋ねる。
「でも……どうしてダメなんですか?
戦力強化になるなら問題はないと思われますが」
「そうだよ。
パワーアップすればぎーくんが傷つくこともグッと少なくなるんだし。
なのになんでしてくれないの? パパの意地悪!」
ディードの問いに便乗してジュンイチに迫るホクトだったが、
「ムリだ」
対し、ジュンイチはあっさりとそう答えた。言ってからしばし首をひねり、改めて一同に告げる。
「……前言撤回。
まぁ、『ムリ』は言い過ぎにしても、かなり難しいのは確かだってことさ」
そう告げると、ジュンイチは修理の続くギルティドラゴンへと視線を向け、
「ギルティドラゴンはオレ達の作った機体じゃないからな。
当然、組み込まれてるシステムはオレ達のシステムのそれとはぜんぜんの別物。まずはそこの仕組みをオレ達が理解するところから始めなきゃならないし……」
「『ならないし』……何?」
「そもそも設計思想からしてギルティドラゴンのそれはオレ達のそれとは相容れない」
セインに答え、肩をすくめて続ける
「オレ達の……っつーか、オレの作る機体はマスターの能力、詳しく語るなら現時点の力やできること、できないこと、そして将来の可能性――そういうのを一切合財詰め込んで、マスターの力を最大限に引き出してやることを大前提として組まれてる。
けど、ギルティドラゴンは違う――タイプゼロとしてこの世に産まれたお前の可能性に早々に見切りをつけてたんだろう。お前の成長を完全に度外視して、“産まれた時点での”お前の能力を運用する、ってのを前提にしたシステムしか組んでないんだ」
「つまり……基本設計の段階からシステムに拡張の余地がない……?」
「はい、ディード正解。
そんなワケで、ギルティドラゴン自体のパワーアップは……『できない』とは言わないが、少々骨だ。難易度はどうあれ、時間がかかるのは確定事項だ。
そして、何より――ホクト」
そう告げ、向き直ったジュンイチが見つめるのはホクトだ。
「それでもギルティドラゴンを強化するっつーなら――ひとつだけ、条件をつけさせてもらう。
お前も一緒に強くなること――それが条件だ」
「わたしも……?」
ジュンイチの言葉に首をかしげ、ホクトはしばし考え込み――
「………………ハッ! まさかわたしも改造されて大パワーアップ!?
ただのホクトから新ホクトに!?」
「だぁれが改造されろっつったよ? どこの1号だ、お前は。
せっかくパワーアップさせても、使うのはお前なんだ。そのお前が弱いままじゃ、お話にならない。
装備がレベルアップする以上、お前もそれを使いこなせるようにならなきゃいけない、ってことだ」
そして――ジュンイチは改めて尋ねた。
「パワーアップと並行して、お前に修行をつける。でもってお前自身にも強くなってもらう。
それがイヤなら、ギルティドラゴンのパワーアップはナシだ。
さて……どうする?」
その言葉に逡巡するホクトを、ジュンイチは悠然と見下ろし――
後に、セインはこの時のジュンイチの表情について、こうすずかに語っている。
「“相手の足元を見てふっかける悪徳商人”の目をしていた」と――
それから小一時間が経過し――
「なんでお前らまでいるんだ……?」
「だって、あたしもお前に鍛えてもらう約束、してたからな」
尋ねるジュンイチに対し、セインはあっさりとそう答えた。
結局、ホクトの出した答えはおおよその予想通り――そうと決まれば話は早いと、さっそくマックスフリゲートを潜伏させた森の一角で結界を張り、修行を始めようとしたのだが、指定した集合時間に出向いてみれば、ホクトだけでなくセイン、ノーヴェ、ウェンディ、ディードまでもが勢ぞろいしていたのだ。
「強くなりたいのは、ホクトだけじゃないんだよ」
「せっかくもらったエリアルスライダー、ちゃんと使いこなせるようになりたいっスからねー」
「ヴィヴィオのために!」
「………………わかった」
どうやら全員やる気のようだ。まぁひとり教えるのも5人教えるのも同じだろうと自分の中で結論づけ、ジュンイチは息をついて自らの意識に区切りをつけた。
「よし、そういうことなら、さっそく修行に入るぞー」
「それで?
訓練って、何すんだよ?」
「内容自体はいたってシンプルだよ」
尋ねるセインにそう答え、ジュンイチは右手を自分の顔の高さまで上げて――
「全員まとめて、かかってらっしゃい♪」
くいくいっ、と、ホクト達に向けて手招きしてみせた。
『………………え?』
一瞬、何を言っているのか理解できなかった――ジュンイチの言葉に、ホクトやセイン達は思わず顔を見合わせた。
「えっと……ジュンイチ?
これって……訓練だよな?」
「あぁ」
「いきなり……模擬戦からですか?」
「模擬戦からだよ」
確認をとるセインとディードだが、ジュンイチの答えはあっさりしたものだった。
「ムチャクチャな……
基礎訓練もなしにいきなり模擬戦からかよ?」
そんなセオリー無視の訓練内容に、半ば呆れてつぶやくのはノーヴェだ。
「だいたい、準備運動だってまd――」
まだだろう――そうつながるはずの言葉を、ノーヴェは最後まで告げることができなかった。
一瞬にして足を刈り払われ、空中で体が一回転、地面に仰向けに転がされていたからだ。
同時――ダンッ!と顔のすぐ脇に補強されたブーツの靴底が叩きつけられ、
「はい。
準備運動している間に一回死亡だ」
あっさりと告げると、彼女を投げつけた張本人であるジュンイチは彼女の顔のすぐ脇を踏みつけた右足を引く。
「実戦の場で相手が準備運動なんか待ってくれるワケねぇだろうが。
有事即応、常在戦場――いつ攻撃されても反応できるように、身体を“そういう”形に慣れさせる。準備運動ナシでいきなり開始ってのは、そういうことだ」
「で、でも、基礎訓練とかはしなくていいんスか?
普通、訓練ってそういうのから入るんじゃないんスか?」
「いらねぇよ、ンなもん」
尋ねるウェンディに対し、ジュンイチはやはり平然とそう答えた。
「いつ戦闘になるかわからないんだ。ンな段階から悠長にやってられるか。
ひたすら模擬戦やる中で、自分の戦いやすい動きを勝手に身に着けろ」
「ンな乱暴な……」
「基礎だの準備運動だの、ンなもんは時間的に余裕のある時に言うべきもんだ。
少なくとも、今のこの状況で当てはまるもんじゃ――」
セインのうめきにそう告げた瞬間、ジュンイチの身体が沈む――ヒザをカクンッ、と落とし、身を沈めたジュンイチの頭上を、思い切り振り抜かれた大鎌が駆け抜けた。
「そういうこと言うんなら……今のも別にズルくないよね♪」
「あぁ。
お前は、セイン達と違ってちゃんとわかってるみたいだな」
ホクトの振るった愛用の大鎌型デバイス“ニーズヘグ”だ――着地し、尋ねるホクトに対し、ジュンイチも不敵な笑みと共に身体を起こす。
「そんなワケで、だ。
早速始めるぞー。お前らもいい加減腹くくれー」
「え、えっと……?」
そうこちらを促し、肩をコキコキと鳴らして身体をほぐすジュンイチに対し、ウェンディは恐る恐る声をかけた。
尋ねるのは、これから始まる事態に対する重要な確認事項――
「一応……訓練なんスから、手加減はしてくれるっスよね?」
「ハッハッハッ。
一体何を言い出すかと思えば……」
そんな彼女の問いに対し、ジュンイチは――
「一応、実戦想定してるんだぞ。
相手が手加減なんかしてくれるワケないだろう」
情け容赦なく、彼女の希望を粉砕した。
「…………終わったみたいね」
ジュンイチがウェンディの希望を絶望に塗り替えた瞬間から、時間にしておよそ30分――ウィンドウにズラズラと表示されたデータの羅列がスクロールを停止したのを作業の合間に横目で確認し、イレインはポツリ、とつぶやいた。
「蜃気楼からのデータ?」
「そ。
また向こうのケリがついたみたい――観測データの送信が止まったわ」
尋ねるすずかに答え、イレインは軽く息をついた。
「えっと……今の、何戦目だっけ……?」
「確か……3戦目」
すなわち、この30分で3回“決着”がついた、ということ――単純計算で10分に1回決着がついている計算だ。
しかし――GLX-Jシリーズを与えられるまではケチのつきっぱなしだったとはいえ、セイン達もそれなりの実力者だし、何よりこの訓練の一番の主役であるホクトもいる。
いくらジュンイチでも、このメンバーをそれだけの短時間で壊滅させるのはたやすいことではない。
もしかすると――
「……ひょっとして、ジュンイチさん……本気モード?」
「間違いなくね」
そうとしか考えられない。すずかの問いに、イレインは迷わずうなずいてみせる。
「でなきゃ、あの子達が10分以内で壊滅するはずないわ。
さらに逆の視点――本気モードのジュンイチなら、10分以内であの子達全員に撃墜判定をくれてやることは十分に可能。
だからこそ、ジュンイチが本気モードだと確信できる……すずかも同じ推理でしょ?」
「うん……」
イレインの言葉にうなずくすずかだが――懸念はあった。
「でも……そんなに短時間で叩いちゃって、データの計測は大丈夫なの?
“最後の切り札”の製作にはマスターになる子の膨大なデータが必要になるっていうのに……そんなにすぐに撃墜してちゃ、十分な量のデータなんてとれないんじゃ……」
「あー、そこはいいのよ」
しかし、そんなすずかに対し、イレインは苦笑まじりにそう答えた。
「ジュンイチが欲しいのは、あの子達の“本気”のデータ。
“最後の切り札”を作り上げるために必要なのはただの戦闘データじゃない。あの子達の限界値
。あの子達がホントに“本気”で戦った、そういうデータが必要なの。
だから、ジュンイチはあの子達の修行に便乗して、本気であの子達を叩きにいって、本気で抵抗させている――あの子達の“本気”を知るためにね」
そう告げると、イレインは自分の頬をピシャリと叩いて気合を入れ、
「さて……その辺の話はこのくらいにしときましょう。修行もデータ収集もジュンイチの仕事だし。
あたし達はあたし達の仕事に取りかかろうじゃない」
「そうだね。
早くスキャニング用の設計データを仕上げないと……」
イレインの言葉にすずかがうなずき、二人の目の前にそれが浮かび上がった。
3Dの立体設計図だ。そこには――
「なんたって……ホクトの、新しい“翼”になる機体なんだから……」
小型のジェット戦闘機が、無数の光のラインによって描き出されていた。
それから、一週間が経ち――
「このこのこのこのっ!」
高速で飛び回る“標的”をしっかりと自身の視界に捉え、ウェンディがライディングボードの上から身を躍らせる――射撃モードに切り替えたライディングボードから魔力弾を連射するが、ジュンイチはばらまかれる魔力弾の間をすべるようにすり抜けていく。
「なんの――まだまだ!」
それで終わりではない。先日自主的に組み込んだばかりの魔法のプログラムを走らせる――足元にテンプレートを展開、足場としてそこからジュンイチを狙い――
(回り込んでズドンッ、の機動射撃型が足止めるなよなー……)
ジュンイチにとって、そんなウェンディはただの“的”でしかなかった。内心でため息をつきながら解き放った炎がフィールドを駆け抜け、ウェンディを直撃、吹き飛ばす。
「ウェンディ!」
その光景を前に、セインが思わず声を上げ――
「はい、見っけ!」
「ぅわっとぉっ!?」
その声をジュンイチに聞きつけられた。すかさず放ったジュンイチの炎から逃れるべく、セインは自身のIS“ディープダイバー”で地中に潜り込む。
(よし……このままここに隠れて、ジュンイチをやり過ごせば……)
地中に潜ってしまえばジュンイチは手出しできないはず。そのまま指先のサポート用固有武装“ペリスコープ・アイ”でジュンイチの様子をうかがうセインだったが――
「それで……逃げたつもり?」
ジュンイチがそう告げると同時――彼のかざした右手の上で炎が渦を巻いた。
炎はみるみるうちに勢いを増し、しかしその大きさはむしろ縮小した。自らの起こした炎を、ジュンイチがより小さな範囲に凝縮したのだ。
「ま、まさか……!?」
ジュンイチがそんなものを作り出した理由があるとすれば――血の気が引いたセインのつぶやきに、ジュンイチは――
「そのまさか♪」
迷うことなく、火球を眼下の地面に――セインの潜んでいる辺りに叩き込んだ。大爆発が巻き起こり、セインを周りの地面もろとも吹き飛ばす!
(地中に逃げるっつーのは、まぁ悪くない選択肢だったけど――その後がよくない。
オレの火力で抉れる範囲内に留まったまま、安心してんじゃねぇよ)
爆煙が晴れれば、そこには戦闘スーツがこんがりと焼けたセインの姿――内心でつぶやき、ジュンイチがため息をつき――
「二人の仇だぁぁぁぁぁっ!」
ぎゅいんぎゅいんと回転音を上げるリボルバーをそなえたローラーブーツ型兵装“ジェットエッジ”、軌道を用意に読ませてしまうエアライナー。これだけでも十分にアレなのに雄叫びまで上げてくれるとは――
(いくら何でもあからさますぎだろうが)
繰り出された、こちらを打ち貫かんばかりの跳び蹴りをあっさり回避――すれ違いざま、ジュンイチは手にした霊木刀“紅夜叉丸”の柄を、蹴りをかわされ驚愕するノーヴェの額に叩き込んだ。
「やれやれ……」
衝撃が頭の中を駆け抜け、一撃で意識を刈り取られたノーヴェが地面に向けて落下していく――そんな彼女を見下ろしながらため息をつき、ジュンイチは懐に手を差し込み――
(あからさますぎるから――簡単にオトリとわかる)
「――――――っ!?」
取り出した苦無の切っ先が、背後に忍び寄っていたディードののど元に突きつけられていた。
「さて……奇襲が失敗したワケだが、どうする?」
「く………………っ!」
刃だけではない。同時にそれだけでこちらを刺し貫けそうな鋭い視線を突きつけられ、ディードは確信した。
まずい、あれは人を斬ったことのある人間の目だと。斬る力はあっても斬ったことのない自分とは違うと。
ジュンイチがホントに“斬ったことのある人間”だと知らないディードが視線だけでそこまで見抜けたのはある意味評価もできようが――
「素直に一旦退いて、再攻撃のチャンスを狙うか?
それともムリに攻めて、撃墜されてヴィヴィオに看病してもらうか?」
「………………」
「悩むなよ」
いくら目が肥えようと、ディードはやっぱりディードだった。
と、次の瞬間――
「――――――っ!?」
「え………………?」
突然ジュンイチの姿が視界から消えた。呆然とするディードの目に飛び込んできたのは、視界を縦一文字に断ち切る光の刃。
直後、ディードの全身を衝撃が襲い、意識が刈り取られる――
要するに、
ジュンイチにかわされたホクトの光刃が、彼に代わってディードを撃墜したのだ。
墜落していくディードの顔がどこか恍惚としているのは、この後のヴィヴィオからの“手当て”を期待してのものだろうか。間違っても「痛いのがイイ」などというアブナイ性癖に目覚めた、なんてオチはつかないでほしい。もしそうなったら、チンクになんて言って謝ったらいいか見当もつかない。
そんな、他愛もない(ある意味ちっとも“他愛もなくない”)ことを考えていると、
「――――――っ!」
再び背後から迫る殺気――動じることなく、視界の外から迫る光の刃をかわし、反転しつつ距離を取る。
「へぇ……今のも避けちゃうんだ」
「お前らと一緒にすんな」
感心して告げるホクトに対し、ジュンイチもまた静かに“紅夜叉丸”をかまえる――ジュンイチの“力”が流し込まれ、それは彼の手の中で新たな姿、爆天剣へと作り変えられる。
「てめぇらとは、経験値の桁そのものからして違うんだ。
オレに勝ちたきゃ――まずはそこを何とかすることから始めるんだな!」
告げると同時、ジュンイチが一気に加速。対するホクトも迎え撃とうと飛翔する。
「たぁぁぁぁぁっ!」
真正面から飛び込んでくるジュンイチに対し、渾身の力でニーズヘグを振るい――
ホクトの斬撃は、ジュンイチの姿を捉えることなく虚空を薙いでいた。
「え――――――?」
戸惑うホクトの前でジュンイチの両足が“振り上げられ”、背中、後頭部を経て再び彼の顔が視界に飛び込んできた。バック宙返りでこちらの一撃をしのいだのだと気づくが、その瞬間にはすでに、ニーズヘグは彼女の手から叩き落とされていた。
「く――――――っ!」
追撃が来る――そう判断したホクトの判断は正しく正解。ジュンイチの動きを警戒し、とっさに後退を選んだのも及第点と言えよう。
ただし、ただ一点――ジュンイチにそれを読まれていた点を除けば、の話だが。爆発的な加速と共に、ジュンイチの姿がホクトの眼前からかき消える。
次の瞬間、ホクトの全身をエネルギーの塊が痛打――彼女の背後に回り込んでいたジュンイチが自らの精霊力を球状にまとめ上げ、炎として燃焼させることなく叩きつけたのだ。
純粋な“力”の塊を思い切りぶつけられ、ホクトの身体は大地に叩きつけられ――
「はい、詰み」
起き上がろうとした彼女の肩をつかんで地面に抑え込み、ジュンイチは静かにそう告げた。
「ま、まだまだ……!」
「いや、もう終わりさ」
それでも、ホクトはなんとかジュンイチに抵抗しようともがく――そんな彼女にジュンイチが告げた、次の瞬間、
「――――――がっ!?」
彼女の全身を激痛が走った。
彼女の持つ不安定な“生体核”が制御の限界を超えて暴走を始めた。耐えられる限界を超えた出力が全身を駆け巡り、神経を焼きつかせる――彼女の戦闘の限界時間、5分間を過ぎたそのツケが回ってきたのだ。
だが――
「言ったろ? 『詰み』って」
その言葉と共に右肩に手が添えられ――同時、ホクトの身体を痛めつけていた激痛は幻のように消え去ってしまった。
オリジナルの“生体核”を持つジュンイチが自身のそれでホクトの“生体核”にアクセス、コントロールし、暴走を押さえ込んだのだ。
「きっかり5分――お前の暴走が始まると確信しての『詰み』宣言だったんだよ。
おとなしく“生体核”の力を通常出力に落としてればよかったものをさ」
「あぅ……」
ジュンイチの言葉にホクトが軽く凹み――そんな彼女を解放してやると、ジュンイチは周囲を見回した。
「とりあえず、“次”を始める前に全員回収してきて……」
言いながら、自分の懐に右手をつっ込んで――
「額に“肉”だな」
満面の笑顔と共に油性マジックを取り出した。
その後も、模擬戦と休憩が交互に繰り返され――
「はーい、それじゃ、オレはちょっと席外すから、その間休憩なー」
『はーい……』
“装重甲”の着装を解き、爆天剣から元に戻した“紅夜叉丸”を肩に担ぐ――告げるジュンイチの言葉には力の抜けた返事が返ってきた。とりあえず返事するだけの余裕はあるようだと肩をすくめ、ジュンイチはそんな彼女達をおいてその場を後にした。
それをただ無言で見送り――その姿が見えなくなったところで、セインは大地に仰向けに転がったまま、深々と息をついた。
「あの……大丈夫ですか……?」
「また負けちゃったねー」
「あぁ、サンキュ」
そんな彼女達に駆け寄ってきて汗拭き用のタオルを配るのはゆたかとヴィヴィオだ。礼を言い、ノーヴェはタオルを受け取って額の汗をぬぐい――
「あーっ、くそっ!
また勝てなかったぁーっ!」
「というか……“勝てそう”という領域にすら……」
「何発か、当てられてはいるんスけどねー……全部ガードされてるっスけど」
こちらはタオルを受け取りはしたものの、疲れ切って汗をぬぐうのもおっくうなようだ。仰向けに寝転がったまま悔しがるセインの言葉に、ディードやウェンディも力なく同意する。
「っつーか、訓練始めて今日で一週間……未だにマグレ勝ちすらしてないっつーのはさすがに凹む……」
愚痴りたいのは彼女も同じだ。ため息をつき、ノーヴェは力の入れられない両足をピシャリと叩いて叱咤し、ヨロヨロと“相手”のもとへと歩み寄り、
「おい……大丈夫かよ、お前?」
そうノーヴェが尋ねるのは、仰向けに寝転がって息を切らせているホクトである。
「今日だけで何回暴走したよ? 5回は軽く超えてるはずだぞ。
ジュンイチのヤツがその都度暴走を抑えててくれてるみたいだけどさ……それでも、収まるまではすんげぇ痛いんだろ?」
「そりゃ、痛いことは痛いけど……」
尋ねるノーヴェに答え、ホクトは「よっこいしょ」と身を起こす。
「まったく……毎回毎回、よくやるよな。
そんな痛い思いをしてまで、あのトランステクターをパワーアップさせてほしいのかよ?」
確か、ホクトがこの訓練を受けることになったのは、ギルティドラゴンの強化に対する対価だったはずだ。そんなことを思い出しながらノーヴェが告げるが、
「うん。
ぎーくんには、もっともっと、強くなってもらうんだもん!」
ホクトにとっては、ノーヴェの言葉はただ自分の意思を確認するためのものでしかなかった。元気にうなずき、ガッツポーズをとってみせる。
「しかし……なぜそこまであの機体にこだわるのですか?」
「だよなぁ……
もっと強い機体に乗りたいんなら、もっと強い機体を作るなり探すなりすればいいだろ」
「ぎーくんじゃなきゃダメなの!」
そんな彼女のこだわりがわからず、首をかしげるディードやセインだが、そんな二人にもホクトはキッパリと言い返す。
「だって……わたしとぎーくんとにーくんは、生まれた時からずっと一緒だったから……」
そして、ホクトが視線を落とすのは自分の握る大鎌、“にーくん”ことニーズヘグだ。
と――
「そういえば……オレも、お前がどこをどうしてスバル達の前に現れたのか、ちゃんと聞いたことはなかったな」
言いながら姿を見せたのは、大型のドリンクキーパーと人数分のコップの入ったかごを持って戻ってきたジュンイチである。
「ジュンイチも聞いてなかったんスか?」
「あー、まぁ……な。
コイツがウチに居座ったから、いつでも聞けると思って後回しにしてて……すっかり忘れてたぜ」
尋ねるウェンディに答えると、ジュンイチはホクトへと向き直り、
「で?
“生まれた時から一緒”だった、っていうのは、どういうことなんだ?」
「うん……」
ジュンイチに促される形で、ホクトは語り始めた。
自分がどのようにして生まれ、どのようにしてスバル達の前に現れるに至ったのか、その経緯を。
「わたしね……自分を産んでくれた人達のこととか、実はぜんぜん知らないんだ。
気がついたら、誰もいない研究所の中だったから……」
「誰も、って……
そんなことないはずっスよ。だって、最低限、眠ってたホクトを起こした人がいるはずなんスから」
「そんなの、それまで寝てたホクトが知るはずないだろ。
ホントに誰かいたのか、それとも装置のトラブルで覚醒措置が始まっちまったのか……」
口をはさむウェンディはジュンイチがたしなめ、ホクトは続ける。
「もちろん、誰かいないか探し回ったよ――誰もいなくて、独りぼっちで、寂しかったもん。
でも、誰もそこにはいなかった……でも、わたしはひとりじゃなかった」
言って、ホクトはニーズヘグを、そして木々の向こうに見えるマックスフリゲートを交互に見つめ、
「ぎーくんもにーくんも、その研究所にいたの。
わたしと同じように寝てて……でも、起きてくれた。
わたしを、ひとりにしないでくれた……
それで、どうしてかはわからないけど、わたしにはお姉ちゃんがいるんだってわかって……会いに行こうと思って、一緒にお出かけして……」
「あの市街地戦闘につながったワケか……」
「うん!
パパに会えて……みんなに会えた!」
つぶやくジュンイチに、ホクトは笑顔でうなずいてみせる。
「なんか……最後でいきなり抽象的になったよな。
何だよ、『いるのが“わかった”』って。そんなテレパスみたいなことがあるのか?」
だが、最後の最後で釈然としないものが出てきた。首をかしげてつぶやくセインだったが、
「いや……あり得ない話じゃない」
そう答えたのはジュンイチだ。
「スバルもギンガもホクトも、同じクイントさんの細胞から生まれてる――姉妹というより分身に近い。
そんなアイツらがホクトと引き合ったとしても、それは決してあり得ない話じゃないさ」
首をかしげるセインに説明し、ジュンイチが視線を向けたのは――
(それに……お前とも、な)
ノーヴェだ。今の話に大した興味を持たなかったのか、退屈そうにしているその姿を見ながら内心で苦笑する。
「でも……おかげで納得だ。
お前にとって、ギルティドラゴンやニーズヘグは生まれたばかりだった自分が初めて出会った相手だ。それなりに思い入れもあるか」
「うん!
ぎーくんもにーくんも、ずっと一緒にここまできた“お友達”だもん!
だから、これからも一緒にいたい……だから、これからも一緒に戦いたい。
そのためだもん……ぎーくんが強くなるためだもん。がんばらなくちゃ!」
「そっか……
なんかいいな、それ」
話していて、改めて気合が入ったようだ。グッ、と胸元で拳を握り、小さくガッツポーズをとるホクトの頭を、セインは優しくなでてやり、
「そうやって、ずっと付き合っていきたいって機体とめぐり合えたんだ。幸運だよ、お前は」
言って、セインは視線をすすーっ、と動かしていき、
「あたしらにとって“そうなるはずだった”ドクター作のトランステクター、どっかの誰かが粉々にしてくれたからな」
「………………」
当事者からの返事はない。それが事実であること、事実であるからこそ余計な反論がさらなる墓穴を呼び込むであろうことまで理解しているが故の沈黙である。
「そうそう。こなっごなのバランバランにな」
「………………」
「まさに一瞬の出来事でしたね」
「………………」
ノーヴェやディードの言葉にも、彼はそしらぬ顔で茶をすすり――
「セインの機体以外、みんなほぼ新品だったんスよねー。
特にディードの機体なんて、初陣だったのに、卸したてだったのに、初出撃でもうスクラップに――」
「だぁぁぁぁぁっ! もう、うるせぇぇぇぇぇっ!」
だが、そこがガマンの限界だった。ウェンディの“トドメ”に絶叫。好き勝手言ってくれる一同をにらみつけ、
「仕方ないじゃねぇか! あの段階ではまだ敵味方だったんだからっ!
それに、ちゃんと代わりにGLX-Jシリーズ、くれてやったろうが!」
「それはそれ、これはこれっス♪」
「よーし、休憩明けの模擬戦は覚悟しておk――」
笑いながら返してくるウェンディの言葉にうめいたジュンイチの動きが唐突に止まった。口をつぐみ、周囲に視線を走らせる。
「…………パパ……?」
「しっ」
声をかけてくるホクトを制止し、ジュンイチはなおも周囲を探り、
「…………向こうか」
感じ取ったモノの正確な居場所を割り出していた。気配のする方へと鋭い視線を向け、つぶやく。
「まさか、敵……?」
「少なくとも、好意的なモノは感じないな」
「いつも思うんスけど、よくそういうのわかるっスよね」
「人外ナメんな、と言いたいところだけど……別に特別な才覚を必要とすることじゃないさ。
お前らだって、十分に訓練すればできるようになるだろうよ。
それより……」
セインやウェンディに答え、ジュンイチはグルリと一同を見回した。
今発言したセインやウェンディはもちろん、ディードもノーヴェも出られるコンディションではない。再三自分が“干渉”したホクトはまだなんとか……といった具合だが、
(ホクトはこいつらの護衛に残しておくのが無難、か……)
「お前らは今回は留守番だ。
オレがひとりでなんとかしてくるよ」
「え…………?
ちょっ、ひとりで、って、パパ!?」
突然の提案に思わずホクトが声を上げるが、ここで応じてもおそらく話がこじれるだけだ。かまわずジュンイチは“装重甲”を着装、背中のゴッドウィングを広げて空へ飛び立っていった。
地面を踏みしめた瞬間ダンッ!と音が響くが、彼らの重量を考えればむしろ抑えられている方だろう――森の中に身を潜め、ビーストモードのドランクロンは目標を目指して疾走していた。
彼だけではない。エルファオルファやラートラータ、そして――
「ようやく見つけたぜ……!」
ビークルモードのノイズメイズ達もいる。サウンドウェーブ、サウンドブラスター、そしてビーストモードのランページと共にドランクロン達に続く。
「こないだボコボコにされた恨みつらみ……今度こそ晴らしてやるぜ!」
「コソコソ近づいての奇襲じゃ、イマイチスッキリせんのじゃがのぉ」
「仕方ないだろ!? こないだアイツらにボコられたせいで戦力ほとんど残ってねぇんだからさ!
こうして不意討ちでもしないとどうしようもないだろ!」
景気よくタンカをきったところに相方からツッコミが入った。身内に出鼻をくじかれたノイズメイズがランページにツッコみ――
「残念ながら、とっくにお前らには気づいてるよ」
『――――――っ!?』
あっさりと告げられたその言葉に、一同がとっさに散開――次の瞬間、ノイズメイズ達のいた場所に強烈な炎の塊が叩きつけられた。
そして――
「お決まりのセリフで甚だ本意だけどさぁ……」
そう告げながら、ジュンイチは警戒し、ロボットモードへとトランスフォームするノイズメイズ達の前に静かに舞い降りてきた。
「それでも、あえて言おう! 柾木ジュンイチであると!……じゃない。違う違う。
ここから先は、通行止めだぜ!」
「やれやれ……」
力いっぱい名乗りを上げ――しかし、言いたいセリフは別にあった。あわてて訂正するジュンイチに対し、ドランクロンはため息をつきながら一歩進み出てきた。
「ノリに任せたネタ発言と“お約束”とは、余裕だな」
「あ、ネタだってわかるんだ。お約束も通じる?
なんだ、ドランクロンってなんか性格固そうなイメージあったけど、意外にそういうのイケるクチ?」
「身近にそういうのが好きなヤツらがいるんでな――自然と詳しくなってしまった」
ジュンイチに答えるドランクロンの言葉に、彼の背後でノイズメイズとランページが不意に視線をそらす――が、とりあえず無視してジュンイチは彼らに告げる。
「ったく、また『オレ達を倒して名を上げよう』ってハラか?
わかりやすくていいけど、こりないねぇ」
「やかましいっ!
こっちだってなぁ、自分達の立場を守るために必死なんだよ!」
不敵な笑みと共に告げるジュンイチのその言葉に、ノイズメイズは怒りの咆哮と共にこちらをビシッ!と指さしてきた。
「お前らとのこないだの戦闘で、こちとらますます貧乏度が増しとるんじゃ!
そうでもして裏社会でのアピールを強めておかないと、明日のご飯にすら困る生活から脱却できないん
じゃ!」
「我らの組織運営のカツカツぶりを甘く見るなぁっ!」
「うーん、追い詰められてるなぁ……」
さらにランページやサウンドウェーブまでもが声を上げる――同情でも引こうというのか、半ばヤケクソ気味に叫ぶその姿に、ジュンイチはもう一度ため息をつく。
「まー、いいや。
どっちにしても、やることは変わらないんだし」
「同感だな」
仕切り直そうとするジュンイチに同意するのはドランクロンだ。ジュンイチが手にした“紅夜叉丸”を爆天剣へと変化させ、ドランクロンも右腕のドランカッターをかまえる。
それを合図に、ノイズメイズ達もまた各々の武器をかまえ――
「いくぜ!
今までの恨みつらみ――まとめて返してやるぜ!」
ノイズメイズのその言葉と同時――ユニクロン軍の面々は一斉にジュンイチへと襲いかかった。
「始まった……!」
いくら索敵関係は結界によって隠蔽されても、大地を伝わる衝撃までは隠せない――大地に手をあて、わずかに伝わってくる微振動を感じ取り、セインは戦いの始まりを察して静かにつぶやいた。
「ジュンイチ、大丈夫っスかね……?
そりゃ、アイツらよりは強いっスけど、さすがに7対1じゃ……!」
「ったく、あたしらを動けなくなるまでブッ飛ばすからだ。
あたしらも加われば、あんなヤツら……!」
模擬戦でジュンイチにとことん叩きのめされた自分達は戦闘に参加できるコンディションではない。ジュンイチの身を案じてつぶやくウェンディにノーヴェがうめくと、
「大丈夫なんじゃないの?」
そう告げながら姿を見せたのは、マックスフリゲートから出向いてきたイレインである。
「大丈夫……とは、どういうことですか?」
「だって、ジュンイチにしてみればこの状況は想定の内だもの」
聞き返すディードに対し、イレインは特に動じることもなくそう答えた。
「ジュンイチだってわかってるのよ。自分の鍛え方じゃ、あんた達がしばらく戦えるコンディションを維持できなくなることくらい。
だから、その間は自分がひとりで戦うことを前提にしてる。あんた達を休ませて、あたし達他の動けるメンツをその直衛に充てて、自分が敵を迎撃する――って感じでね。
あんた達を戦えなくしちゃうツケを、きっちり自分が背負う。同時に、“そこまでやるんだから、教え子をきっちり鍛え上げなくちゃ”って、自分自身のケツを引っ張たく材料としても利用する。
まったく、抜け目ないのか不器用なのか……」
「いや、不器用でしょ、間違いなく」
イレインの言葉にセインが迷うことなく断言し――
「……パパ……ちゃんと、わたし達のことを考えてくれてたんだ……」
そんなイレインの言葉に、ホクトは静かにつぶやいた。
ジュンイチの不器用な優しさを知り、わき上がるのは“そんな彼に自分も何かしたい”という想い――顔を上げ、その名を呼ぶ。
「イレインお姉ちゃん!」
「わかってる」
しかし、相手は自分の考えなどお見通しだった。不敵な笑みと共にうなずき、イレインは彼女に告げる。
「ここはあたしが引き受けてあげるから、行ってきなさい。
“準備”の方も、できてるからさ」
「なめるなぁぁぁぁぁっ!」
「あー、もうっ! うっさい!」
咆哮し、エネルギー弾をばらまくサウンドブラスターに言い返し、ジュンイチはその右手を横薙ぎに思い切り振るった。その軌跡から炎があふれ出し、飛来する光弾群を迎撃し――
「クラップミサイル!」
「ポイズンアロー!」
「キラーシューター!」
「どわぁぁぁぁぁっ!?」
動きを止めるトリモチから毒矢、さらには溶解液――かなり危険な連携を放つブレントロンの同時攻撃を回避、上空に逃れる。
「さすがのお前も、オレ達7人を同時に相手にするのは骨が折れるみたいだな!」
「あぁ、まったくだ!」
そこに、ノイズメイズが突如としてワープアウトしてきた。振り下ろされたウィングハルバードの斬撃を、ジュンイチは爆天剣で受け止める。
「どうせ折るなら、お前らの首の骨でも折ってやりたいんだがね――こう、こきゃっ、と♪」
「その減らず口――いつまで叩けるかな!?」
告げると同時に刃を振り抜く――ノイズメイズが力ずくでジュンイチを押し返し、
「死にさらせぇっ!」
体勢を崩すジュンイチに向け、ランページがミサイルを乱射する!
「こんなもんで!」
だが、ジュンイチもそう簡単にやられはしない。自分の防壁と相性の悪い実体弾を受けるつもりなどさらさらなく、炎を放ってそのことごとくを迎撃する。
「――――――そっち!」
目の前で両者の攻撃による爆発が起こり――ジュンイチはその爆発に紛れた敵の攻撃を正確に予測していた。
理由は簡単。自分も相手の立場ならそうするから――次の瞬間、彼の読みどおり、爆煙の中からサウンドウェーブが飛び出してくる。
対し、ジュンイチも迎え討たんと爆天剣を振りかぶり――
「ちょいなぁぁぁぁぁっ!」
どこか気の抜ける咆哮と共に飛び込んできた人影があった。突然のことに驚き、動きを止めたサウンドウェーブの顔面にドロップキックを叩き込み、ブッ飛ばす!
そして――
「パパ!」
「ホクト!?」
ニーズヘグを悠然とかまえ、ジュンイチの目の前に舞い降りてきたのはホクトだった。
「お前、どうして!?」
「戦いたいから!」
思わず尋ねるジュンイチだったが、対するホクトはキッパリとそう答えた。
「あたし達を鍛えて、パパだって疲れてるはずなのに、それでもあたし達のために戦ってくれてる!
なのに、あたし達が疲れたからって後ろに下がってなんかいられないよ!」
宣言し、ホクトはニーズヘグをかまえ、
「さぁ、ここからはあたしも相手だよ!」
「お、おいっ、ホクト!
お前、何勝手に話を――」
「疲れてるからって甘く見るとケガするよ!」
「いやね、だから――!」
「覚悟はいい!?
それじゃ、いっくよーっ!」
「話を聞けぇぇぇぇぇっ!」
いきなりのことに思わずジュンイチが声を上げるが、ホクトはかまわずノイズメイズ達に宣戦布告する――あるいは、ジュンイチに口をはさませたら参戦を反対されると気づいているのかもしれない。
「へっ、ガキがひとり増えたくらい、なんでもないわいっ!」
「返り討ちにしてやろう!」
そんなホクトに対し、ノイズメイズ達も戦闘態勢へ。ランページとラートラータがホクトに言い返し――
「あぁ、そこは安心して♪」
対し、ホクトは笑顔で総返した。
「あたしだって――何も“このまま戦う”つもりはないから♪」
その言葉と同時、ホクトの頭上をそれが駆け抜けた。
ギルティドラゴンではない。それよりも一回り、二回りも小さなジェット戦闘機だ。
そして――
「ハイパー、ゴッドオン!」
瞬間、ホクトの身体が虹色の輝きに包まれた。ハイパーゴッドオンし、飛来したジェット機と融合し、
「ギルティサイザー、トランスフォーム!」
その宣言と同時にジェット機が変形――機体後部が左右に分かれて両足となり、機体左右に固定されていた両腕が解放される。
最後に機首が後方にたたまれるとロボットモードの頭部が姿を現し、トランスフォームが完了する。
「ぎーくん!」
続けて呼び出すのはずっと自分と共に戦ってきた相棒――すずか達の“強化”によるものだろう、胸部が幾分スッキリしたギルティドラゴンが飛来する。
そして、ホクトはギルティドラゴンの上に飛び乗り、
「にーくん!」
〈All right.〉
ホクトの言葉に答えるのはギルティドラゴンと並ぶもう一方の相棒――システム音声と共に、かまえたギルティサイザーの手の中に大鎌が作り出される。
「なめるな!」
「そんな程度で!」
新たな機体にゴッドオンし、こちらへと向き直るホクトに対し、ラートラータとエルファオルファが声を上げて襲いかかってくるが、
「当たらないよ!」
ホクトの叫びを合図にギルティドラゴンが動く――機体を起こし、ホクトの位置を後方にずらして攻撃を空振りさせ、そこへホクトがカウンター。横薙ぎに振るったギルティサイズで、二人をまとめてブッ飛ばす!
「ラートラータ! エルファオルファ!」
その光景に、サウンドブラスターが声を上げ――
「てめぇはやかましいんじゃ、ボケぇっ!」
ホクトに気を取られてジュンイチのことを失念していた。真下から懐に飛び込んできたジュンイチが、炎をまとった右拳でサウンドブラスターを殴り飛ばす!
「ったく、ホクトのヤツ、勝手しやがって……
まぁ、いいや! こうなりゃとことんやってやれ!」
「うん!」
しかし、おかげでジュンイチの腹も決まった。告げるジュンイチにうなずき、ホントはギルティドラゴンを加速させる!
「ギルティサイザー、スーパーモード!
トランス、フォーム!」
ホクトの宣言に伴い、ギルティドラゴンが彼女の頭上に飛来した。高らかに鳴き声を上げ、変形を開始する。
両後ろ足をたたむと後ろ半身全体が後方へスライド。左右に分かれるとつま先が起き上がり、ロボットモードの両足となる。
続けて両前足はつま先が腕の甲へとスライド、つま先のあった部分には内部からせり出してきたロボットモードの両拳がセットされる。
と、そこでギルティドラゴンの胸部に動きがあった。頭部が分離すると胸部がまるでシャッターのように展開され、ドッキングジョイントが露出したのだ。
そして、そこにホクトのギルティサイザーが飛び込んできた、ビークルモード、サイザージェットへとトランスフォームすると、機首と機体後部を折りたたみ、ブロック状になったそれがギルティドラゴンの胸部に合体。たたまれた機首を胸飾りとしたボディの一部となる。
最後に、分離していたビーストモードの頭部、その口が開かれた。中からロボットモード時の顔が姿を現し、ロボットモードの頭部としてボディに合体する。
システムが起動、カメラアイに輝きが生まれ、ホクトは新たな自分の名を名乗る。
「ギルティコンボイ――Stand by Ready!
さぁ……オシオキの、始まりだよ!」
「ギルティコンボイだと……!?」
「はっ、とりあえず『コンボイ』を名乗っただけ、とかいうオチなんじゃねぇの!?」
ホクトの新たな機体、ギルティサイザーとギルティドラゴンが合体、ギルティコンボイとなったホクトを前に、うめくサウンドウェーブに告げたノイズメイズが襲いかかるが、
「遅いよ!」
「どわぁっ!?」
その一撃がホクトを捉えることはなかった。むしろその姿を見失い、次の瞬間、背後からブッ飛ばされる!
「ノイズメイズ!」
「おのれ!」
一瞬にしてノイズメイズを叩き落とされ、とっさに迎撃行動に入るサウンドウェーブとラートラータだが、二人が斉射したエネルギー弾の雨もホクトを捉えられない。素早くサウンドウェーブらの周りを飛び回り、そのすべてをかわしていき、
「にーくん!」
〈Scythe shooter!〉
ホクトとニーズヘグの声が交錯――同時、彼女達の周りに、鎌の刃をかたどった、ただし切断力を持たない炸裂性の魔力弾が多数作り出された。ホクトのコントロールで飛翔し、サウンドウェーブ達を吹き飛ばす!
「な、何だ、あのスピードは!?」
「スピード違反じゃ! 反則キップ切れぇーっ!」
ホクトのすさまじいスピード驚きながらも、なんとか迎撃しようと火器を向けたエルファオルファ、ランページだが――
「オレもいるっての」
そんな二人はジュンイチが背後から放った炎によってブッ飛ばされる!
「パワーと防御力じゃブレイクコンボイに譲るけどな、スピードと攻撃の精密さは、ホクトのギルティコンボイの方がはるかに上なんだよ」
こんがり焼けた二人にそう告げると、ジュンイチは最後に残ったドランクロンを見上げ、
「さぁて……ホクト!
オレに向けてタンカを切ったんだ――きっちりキメやがれ!」
「うん!」
「なめるなぁっ!」
うなずくホクトに言い返し、突撃してくるドランクロンだが――
「だから――遅いんだってば!」
水平に振るわれたドランカッターを、ホクトはバック宙の要領で回避、攻撃を空振し、姿勢の崩れたドランクロンを、逆に右から左に薙ぎ払ったニーズヘグでブッ飛ばす!
「へぇ…………」
普通に見れば、何のことはないフルボッコの風景――しかし、今の一撃はジュンイチに感嘆の声を上げさせるには十分な“モノ”を持っていた。
なぜなら、今の“バック宙返りによる回避から反撃”の流れは先の模擬戦で彼女がジュンイチから受けたもの、そのものだったのだから。
すなわち――
ジュンイチの模擬戦による教訓を、彼女が自分なりに血肉に変えている確かな証だったから。
「フォースチップ、イグニッション!」
ホクトが元気に宣言し――彼女のもとにフォースチップが飛来した。ミッドチルダのそれが、ギルティコンボイの背中のチップスロットへと飛び込んでいく。
それに伴い、ギルティコンボイの両足、両肩の装甲が継ぎ目にそって展開。内部から放熱システムが露出する。
〈Full drive mode, set up!〉
ホクトに告げるのは、ギルティドラゴンのメイン制御OS――同時、イグニッションしたフォースチップのエネルギーが全身を駆け巡った。四肢に展開された放熱システムが勢いよく熱風を噴出する。
〈Charge up!
Final break Stand by Ready!〉
「にーくん、サイズシューター!
ぎーくんはその制御!」
準備完了が告げられると同時、素早く指示を下す――瞬間、彼女の周囲に鎌状の魔力弾が、しかもフォースチップの力を借りて大量に作り出される!
「いっけぇっ!」
そして、それらはギルティドラゴンの制御のもと、ホクトの目標指定によって一斉に飛翔、ノイズメイズ達の周囲を飛び回る。
大量の魔力弾による完全な包囲陣によって、ノイズメイズ達は脱出することも叶わず――
「万鎌――爆斬!
ギルティ、ジャッジメント!」
ホクトが決定打を放った。彼女の宣言により、周囲の魔力弾が一斉にノイズメイズ達へと襲いかかり――炸裂する!
巻き起こる大爆発の中、ホクトはクルリと背を向け、
「オシオキ――完了」
『ぐわぁぁぁぁぁっ!』
告げると同時、絶叫と共に再びの大爆発――“無数”と表現しても差し支えないほどの魔力弾を全身に受け、ノイズメイズ達はひとり残らず、空の彼方まで吹き飛ばされていった。
「えへへ! どうだった!? あたしの活躍!」
戦闘後、マックスフリゲート――ノイズメイズ達を残さずお空の星に変え、ジュンイチと共に帰艦し、一足先に帰還していたノーヴェ達の出迎えを受け、ホクトは上機嫌でそう返した。
「すごかったっスよ、ギルティコンボイ!
これで、ホクトもノーヴェと同じでコンボイの仲間入りっスね!」
「えへへ♪ もっとほめろほめろぉ♪」
素直に感心するウェンディの言葉に、ホクトはますます胸を張り――
「調子に乗らないの」
そんなホクトの頭をパシンっ、と叩き、イレインが告げる。
「他の子達もそうだけど、あんた達はまだ、トランステクターの性能に助けられてる部分がかなりある――生身の模擬戦でジュンイチにまるで歯が立たないのもそのせいよ。
この結果に満足しないで、もっと訓練しないとね」
「…………はーい……」
こんな時くらい手放しでほめてくれてもいいのに――イレインの言葉に、ホクトが少しばかり肩を落としてそううなずくのを見て、ウェンディは軽く肩をすくめた。
まったく、彼女も彼に似て素直じゃない――そんなことを考え、知らす知らずのうちに苦笑をもらし――
「………………?
ジュンイチ……?」
さっきから、その“イレインに似て素直じゃない”彼の態度が静かだ。首をかしげ、ウェンディがジュンイチに声をかけた。
「どうかしたんスか?」
その問いに対する答えは意外なものだった。
「………………」
無言のまま、ジュンイチは突然ウェンディのそれなりに主張されている胸の間に顔を埋めてきたのだ。
「え………………?
え、えぇっ、ぅえぇぇっ!?」
前触れが一切なかったし、何より彼のとりそうな行動とは思えない。完全に不意を突かれたウェンディが混乱する中、ジュンイチの頭の位置は徐々に下がっている。
そのまま、下腹部に顔を埋めるような形になり――
この行動がジュンイチの意図的なものではなかったとウェンディが知るのは――
完全に力の抜けたジュンイチの身体が格納庫の床に崩れ落ちた、そのきっかり2秒後のことだった。
ウェンディ | 「じ、ジュンイチ!? どうしちゃったっスか!?」 |
ジュンイチ | 「………………」 |
ウェンディ | 「ヤだ……目を開けるっスよ! 死んじゃうのなら、せめて……通帳と印鑑のある場所を教えてからにしてほしいっス!」 |
ジュンイチ | 「ちょっと待てやコラぁっ!」 |
ウェンディ | 「次回、魔法少女リリカルなのは〜Master strikerS〜 第91話『つながるココロ、重なるカラダ 〜苛烈に熾烈・ギルティブレイクコンボイ〜』に――」 |
二人 | 『ハイパー、ゴッド、オン!』 |
(初版:2009/12/19)