プロローグ

 


 

 

――『普通』とは何か――



「やーい、キチガイ!」
「こっち来るなよ! キチガイが移るだろ!」




――『常識』とは何か――



「お前なんかがオレらとつるめるとでも思ってたのかよ?」



――それは、人が人と手を取り合う上で必要とされるもの――



「お前がいると迷惑なんだよ」
「消えろ。もう顔も見たくねぇよ」




――集団で生きる者達が、同じくする価値観を普遍の基準としたもの――



「お前の言うことなんて、誰が信じるんだよ!」



――だがもし、その基準に適合することのできない者がいたとしたら――



「お前のせいでうちはもうメチャメチャなんだぞ!」
「もう、二度とうちの敷居をまたぐことは許さないから」




――適合できない集団から、飛び立つ力のない者がいたとしたら――



「ジャマだ――」

「消えろ――」

「迷惑だ――」








――その者にとって、世界とは即ち――







『――死ね!』







地獄だ


 

(初版:2014/07/04)