転送魔法の発動を示す光が弱まり、なのははゆっくりと目を開けた。
 彼女達がいるのはすでに見慣れた一室――アースラ艦内の多人数用転送ポートである。
「……未だにしっくりこねぇな、転送魔法コレも……」
「その内慣れますよ」
 ため息をつくジュンイチにフェイトが笑いながら答えると、
「みんな、お疲れ様」
 外で待っていてくれたのだろう――優しく笑いながら、リンディがクロノやエイミィと共に姿を見せた。
「そっちも大変だったみたいね」
「まったくですよ。
 ジュンイチがいろいろやらかしてくれたおかげで、こっちが苦労するハメになったんですから」
「えぇい、それについては謝っただろうが」
 リンディに答えるアリサの言葉に、ジュンイチは苦々しくうめく――ちょうど二人の間にはさまれているすずかは飛び交うプレッシャーに巻き込まれて冷や汗モノだ。
 と――そこへエイミィが声をかけてきた。
「それで……ジュンイチくん。
 そっちの子が?」
「ん? あぁ。
 どうしても行きたい、ってみんなそろってダダをこねてくれてな――くじ引きの結果コイツになった」
 ジュンイチが気を取り直して答えると、エイミィがいうところの『そっちの子』は深々と一礼し、名乗った。
属性エレメントは“風”、ランクはノーマル!
 ファイ・エアルソウル、ジュンイチお兄ちゃんに代わり、なのはちゃん達のガードに参りましたーっ♪」

「…………むぅ……」
 不機嫌ぶりを隠そうともせず、ライカはそれをまるで親の仇かのように見つめていた。
 彼女の手にある、1本の爪楊枝を。
 そんなライカに、読んでいた本から顔を上げた美由希はため息をついて告げた。
「ライカさん」
「何?」
「いくらにらみつけても……それがハズレクジだっていう現実は変わりませんよ」
「わかってるわよ!」
 バンッ! と机に両手を叩きつけ、ライカは大声で答える。
「そりゃ、あたしだってクジで決まったことだから文句は言わないわよ。
 けどね……それでも納得できないことってあると思うワケよ!
 美由希さんだってそう思うでしょ? でしょ!?」
「う、う〜ん……」
 ライカの言葉に、美由希は返答に困ってうめくしかない。
 なぜなら――彼女は知っていたから。
 公正にクジを引いたのは他の面々だけで――真っ先にハズレクジを引いたライカにだけは、彼女に引き続き勉強をさせようと企んだジュンイチによってイカサマが仕組まれていたことを。
(普通、ムリヤリにでも真っ先に引かされた時点で怪しむと思うんだけどなー……)
 戦闘指揮はアリサが尊敬の眼差しを向けるくらい優秀なクセに、こういう点には頭が回らないのはどういうことだろう――本気で悔しがるライカの姿に、美由希は内心でため息をついていた。

「それで、こっちがわたしのプラネル――ワシ型のソニック!」
「こんにちは。
 この度はファイ共々、お世話になります」
 紹介するファイの言葉に、彼女に抱きかかえられているソニックがペコリと頭を下げる。
「わー♪ カワイイ♪
 ね、ね、抱っこさせて♪」
「あ、はい。いいですよ」
「え、ちょっ、ファイ!?」
 あわてるソニックなど一向にかまわず、ファイは彼をエイミィに引き渡す。
「うーん、抱き心地もサイコー♪」
「あ、あの、だからっ!」
「……なんだか、他人事には思えないなー……」
「うん…………」
 満面の笑みで抱きしめてくるエイミィに対し困惑の声を上げるソニックの姿に、思わずブイリュウがユーノに同意し――そんな彼らを尻目に、ジュンイチはリンディへと向き直り、
「じゃ、アイツらもなのは共々よろしくお願いします。
 さすがにオレまでついて行ったら、ウチの世界の方のマスターランクがいなく――なりはしないけど、あてにできるヤツがいなくなるんで」
「えぇ、任せて。
 こちらも、なのはさん達の変わりにクロノを向かわせますから」
 答え、リンディはクロノへと振り向き――
「…………クロノ?」
「あ、は、はい」
 眉をひそめたリンディの言葉に、何やら思考の渦に沈んでいたクロノは我に返って返事してくる。
「………………?
 珍しいな。お前さんが反応忘れるくらい考え込むなんて」
「何かあったの?」
「いや、何かあった、というワケじゃないけど……」
 尋ねるジュンイチとなのはの問いに、クロノはそう答えると再びしばし考えて――意を決してジュンイチに告げた。
「…………ジュンイチさん」
「あん?」
 振り向くジュンイチに――クロノは告げた。
 

「ボクと……手合わせしてもらえますか?」

 

 


 

第21話
「荒れ狂う闘士」

 


 

 

「で…………コテンパンにノしちゃったワケ? ジュンイチが」
〈そ。
 コテンパンにノしちゃったワケで。ジュンイチくんが〉
 ブレイカーベースのコマンドルーム――事情を聞き、問題集から顔を上げて尋ねるライカに、モニターに映るエイミィは肩をすくめてそう答えた。
「そりゃ、クロノくんもタイミングが悪いわよ。
 よりにもよって、復活したてでテンションMAX絶好調のジュンイチにケンカ売るなんて」
 言って、ライカは先ほど目にした、すっかり意気消沈していたクロノの姿を思い出して苦笑する。
 ブレイカーベースを案内してもらっているところに出くわしたのだが――案内していたのがよりにもよって自分に快勝したジュンイチだったというのはいかにも皮肉な話だ。
〈そんなワケだから、フォローの方、お願いしていいかな?〉
「お願いされましょう♪」
 笑顔で答えて通信を終え――ライカはため息をついた。
「まったく……こーゆーメンタルケアは、ホントならリーダーのジュンイチの役目なんだけど……」
 元々そういうことは気が向かない限り絶対にやらないのがジュンイチだ――その上今回は彼が一連の事態の実質的な犯人ときている。彼に任せてもむしろ逆効果なのは明白である。
 まったく、前回ダウナー状態でこちらを散々心配させた一件といい、なんであの男は厄介ごとばかり巻き起こしてくれるのだろうか――というか、いつも自分にその後始末が回ってくるのはいったいなぜだろうか。
 考えれば考えるほど怒りがこみ上げてくるのは決して気のせいではあるまい。
「さーて……どうしたものかしらね……」
 これもホントならアイツのセリフなのよねー、などと考えながら、ライカはシャープペンをペン立てへと放り込んだ。

「それにしても……まさに一方的な展開ですね……」
 ジュンイチとクロノ――二人が繰り広げた模擬戦闘の記録映像を見ながら、エイミィはため息まじりにつぶやいた。
 画面の中で、クロノはジュンイチの目まぐるしい機動と度重なるフェイントを前に完全に翻弄されている。そのまま終始振り回され続け――真正面から一撃をもらい、模擬戦闘は終了した。
「レイザードを装備したクロノ執務官が、まるで歯が立たないなんて……」
 アレックスがつぶやくが――ブリッジのリンディはじっと何やら考え込んでいる。
「……艦長?」
 エイミィが声をかけると、リンディはつぶやくように答えた。
「……実力差……じゃないわね」
「え…………?」
「クロノが負けたのは、実力差っていうワケじゃないのよ」
 答え、リンディは手元からの操作で映像のうちいくつかのシーンをピックアップしてみせた。
「ジュンイチくんとクロノの実力はほぼ互角――それどころか魔法の速射性や攻撃、防御への魔力の配分バランスなどを考えると、どちらかと言えばむしろクロノの方が勝ってるのよ」
「じゃあ、クロノくんはどうして?」
「相性が悪すぎるのよ」
 尋ねるエイミィに、リンディは答えた。
「ジュンイチくんが得意としているのは、『相手のペースを乱す』タイプの戦い方よ。
 敵のリズムを把握し、乱し、掌握する――そうすることで戦いのペースを常に自分の下へと引き寄せる。それが彼の戦い方よ。
 そういうタイプは、クロノのような常道にのっとって戦うタイプにはまさに天敵――良くも悪くも模範的な戦い方をするクロノの動きは、彼にしてみればすごく読みやすいの」
「あー、確かにクロノくん、パターンにはまらないトリッキータイプは苦手ですもんねー……」
「その上あのスピードですからね……自分の裏をかかれて、反応する頃にはすでに一撃、ですか……」
 エイミィとランディが思わず納得するのを眺め――リンディは胸中で付け加えた。
(それに……今のあの子にはもうひとつ、“問題点”もあるし、ね……)

「けどさ、ジュンイチ。
 ずいぶんとコテンパンにやっちゃったね」
ふほほほほほはクロノのことか?」
 ジュエルシードの発動や瘴魔の出現に備えてのパトロールも現在休憩中。タイヤキをかじりながら声をかけてきたブイリュウに、ジュンイチは大判焼をほお張りながら聞き返す。
「まぁ、そりゃジュンイチが相手を振り回す戦い方が大好きなのは知ってるけどさ、それにしたって今回は……」
 そのブイリュウの言葉に、ジュンイチは大判焼の残りを口の中へと放り込み、
「じゃあ、お前はクロノに花を持たせて、“欠点を抱えたまま”調子づかせた方がよかった、ってのか?」
「欠点……?」
「そ。欠点」
 聞き返すブイリュウに、ジュンイチはあっさりとうなずく。
「指揮官だからこその――チームワークを重んじるからこその欠点がクロノにはある。
 ってゆーか……欠点ができた、ってところかな? なのは達やオレ達とつるんで、団体戦ばっかりするようになったせいでね。
 そこを修正してやらんと、後々厄介なことになりそうだからな――ま、問題提起はしてやったんだ。後は本人のオツムに任せよう。自分で気づけないほどバカでもないだろうし」
 そう言うと、ジュンイチは缶ジュースを一気に飲み干し――投げつけた空き缶は絶妙なコントロールでゴミ箱へと飛び込んでいった。

「はぁ…………」
 気分転換に散歩に出たものの、あまり効果はなかった――沈んだ気持ちのまま、クロノは街を歩いていた。
 レイザードを得て、自分の戦力は大幅に強化された。デバイス性能や出力でなのは達に後れを取っていた分も補われ、堕天使との戦いにも十分に通用するようになったと自負していた。
 ジュンイチに模擬戦を挑んだのも、そんな今の自分の実力を知りたかったから、という点が大きかった――もちろん、わずかな時間でなのは達の信頼を勝ち得たジュンイチに対する嫉妬がなかったといえばウソになるが、それ以上に、かつての自分を瞬殺したジュンイチに今の自分の力がどこまで通用するのかを知りたかった。
 だが――結果はどうだ。終わってみればものの見事に惨敗。実力を試すどころか、レイザードの力を彼に見せる余裕すらクロノにはなかった。
 それは能力の差、というより――
(戦い方の差、か……)
 自分の戦い方がジュンイチの奔放な戦い方に対してきわめて相性の悪いものであることは、すでに理解している。その上で勝つとなると、その相性の差をひっくり返すほどの実力が必要となる。
(もっと、戦闘パターンを煮詰めないと……!)
 胸中でつぶやき、クロノは脳裏でいくつかのケースを想定して――
 ――と、そんな彼のポケットの中で、突然それは震え始めた。
 外出前に鈴香から渡されたそれは、ブレイカーベースのシステムと連動した――
(対瘴魔レーダーの端末が……?
 まさか、瘴魔が現れたのか!?)

 宙を舞い、乗用車がビルに叩きつけられ、爆発を起こす――
 燃え上がる炎の中、瘴魔獣はゆっくりと歩を進めた。
 その周りでは、恐怖にかられた群集が逃げ惑っている――元々恐怖や怒りに代表される“負”の思念をエネルギー源とする瘴魔獣にとって、今この場は格好の餌場となっていた。
 と――
「――――――いた!」
 自分から逃げる人々の流れ――その流れに逆らい、瘴魔獣の前に立ちはだかった者がいた。
 クロノだ。すぐにジュンイチからコピーしてもらった過去の瘴魔獣のデータと照合する。
(データライブラリと照合――
 ライブラリ・コード“デモンズハッグ”――ダンゴムシを媒介にした瘴魔獣で、頑強な生体装甲と怪力が武器、か……)
 記録によれば、前に現れた時はジュンイチによって、自分と同じようにさんざんにペースを乱された挙句に倒されているが――
「だからって……あてにはできないよな」
 つぶやき、クロノは封時結界を展開。S2Uにサポートデバイスを装着させてレイザードを形成する。
「ジュンイチさんがが間に合えばよし、間に合わないなら――」

 ――自分がケリをつけるまでだ。
 

「瘴魔獣か?」
〈はい。
 現在クロノさんが交戦中です〉
 その出現を感知するなりブレイカーブレスで通信。確認をとったジュンイチの問いに、ブレイカーベースのメインAIプログラム“クロノス”は淡々とそう答える。
 と、脇から顔を出したブイリュウがブレイカーブレスに向けて尋ねる。
「タイプは? もう出現済みのヤツ?」
〈はい。
 デモンズハッグです〉
「げ………………」
 クロノスの答えに、ジュンイチは思わず天を仰いだ。
「あちゃー、よりによってあのボーリング野郎かよ……」
「何かマズいの?」
「マズいっての」
 ブイリュウにそう答え、ジュンイチは逆に聞き返した。
「お前……アイツの攻撃方法忘れたか?」

「このぉっ!」
 咆哮と共に一撃――クロノの放ったスティンガースナイプの一撃は、狙いたがわずデモンズハッグを直撃するが――
「そんなものかぁっ!」
 デモンズハッグには傷ひとつつけられなかった。かまわず突撃し、思い切り拳を振るう。
 だが、そんな力任せの打撃などクロノには通じない。前転の要領でかわし、すれ違うようにして間合いを取り直す。
「試しに一撃、と思ったけど……確かに相当な防御力だな……!」
 さすがにまったく傷つけられないとは思わなかった。防壁か装甲か、という違いはあれど、この防御力はなのはのそれにも迫るものがある。
「けど……ジュンイチさんはそれを破ったんだ……!」
 つぶやき、クロノはレイザードをかまえ、
「たとえあの人には及ばなくても……せめてそれくらいのことはできないと、これからの戦いにはついていけないんだ!」
 咆哮と共に地を蹴る。が――
「何を、ごちゃごちゃほざいてやがる!」
 言うなり、デモンズハッグは身体を丸め――球状になり、クロノに向けて猛スピードで転がり、突撃する!
「な――――――っ!?」
 カウンターの形にはなったが、何とか反応には成功した――クロノはとっさに左へ跳び、デモンズハッグの突進を回避する。
 だが――デモンズハッグの動きは止まらない。ビルや車の残骸など、障害物に次々に激突、跳ね返り、さらに自身による方向転換も織りまぜ、クロノの周囲を縦横無尽に駆け回る。
 これではクロノには逃げ場はない――かと思われたが、
「残念だね。
 上がガラ空きだよ!」
 上空はまったくのノーマークだった。クロノは上空へと舞い上がり、レイザードの狙いを定め――
「バカが!
 それが狙いだよ!」
 言うと同時、デモンズハッグは車の残骸へと突撃――踏み台にし、球状のまま上空のクロノにその全身を叩きつける!
「がぁ………………っ!」
 予想外の動きに反応できなかった――まともにくらい、衝撃で肺から空気が叩き出される。
 バランスを崩して落下。大地に叩きつけられたクロノに、デモンズハッグは再び飛び上がり、全身で落下し――
 

 轟音が響いた。

 そして――

 

 弾き飛ばされた“デモンズハッグは”、地響きを立てて大地に落下した。
 

「………………っ!」
 揺らぐ視界に最初に入ったのは、自分の前で敢然と瘴魔獣に立ちはだかる人影――
(ジュンイチ……さんか……!?)
 そう推察するが――すぐに間違いだと気づいた。
 明らかにシルエットが違う――体格も違うし、ジュンイチの装重甲メタル・ブレストの象徴とも言える背中のしなやかな翼が見られない。それに――
(何なんだ……!?
 あの、バカデカい剣は……!)
 人影のかまえる剣は、意匠こそ日本刀のそれだったが――とにかく巨大だった。人の身の丈ほどはあるだろうか。
 その巨大な剣を片手1本で肩に担ぎ、人影は口を開いた。

「おい、そこの瘴魔獣。
 こんなクソつまらねぇヤツより、オレと遊ぼうや」
 

 それは、戦いを楽しむことを最優先に考える“もうひとつのブレイカーズ”――
 ブレイカーきっての武闘派集団“DaG”の筆頭――

 “剣”の属性を宿すマスター・ランクのブレイカー、通称“ブレード”の参戦表明だった。

 

「ぅわぁ……」
 クロノとデモンズハッグの戦う現場に向かう途中、新たに現れた気配を感じ取った――その気配の正体を悟り、ジュンイチは心の底から嫌そうな声を上げた。
 思わず頭を抱えてしまう――バイクがAIの自動運転でなければ転倒し事故を起こしていたところだ。
「なぁ……ブイリュウ。
 オレ、今すぐUターンして帰りたくなったんだけど」
「同感だけど……そういうワケにもいかないでしょ」
 一応の同意は示しつつ、それでもブイリュウはジュンイチの背中にしがみついたままそう答える。
 が――やはりジュンイチは気乗りしないようだ。ため息まじりに答える。
「けどさぁ……相手はあのブレードだぞ。
 瘴魔獣倒したら、絶対オレに矛先が向くに決まってるじゃんか……」
「そうは思うけどね……」
 そんなジュンイチをなだめるように、ブイリュウは一番の問題点を告げた。
「ジュンイチが行かなかったら、その『矛先』は誰に向くのかな?」
 その問いに、ジュンイチはしばし沈黙し――
「……クロノの冥福を祈ろう」
「祈るな!」

 ブイリュウのツッコミが炸裂した。

「オラよっ!」
「ぐわぁっ!?」
 交錯するのは咆哮と悲鳴――下からすくい上げるように放たれたブレードの斬撃に対し、ガードを固めるデモンズハッグだが、巨大な彼の剣――日本刀をベースにしたブレードの精霊器“斬天刀”から繰り出される衝撃は彼の耐えられるレベルを超えていた。いともたやすく押し負け、その巨体が真上に跳ね上がる。
 だが――それで終わりではなかった。
「まだ、まだぁっ!」
 真上に跳ね上げたのはこのためだった。ブレードは斬天刀を大きく振りかぶり、落下してきたデモンズハッグに一撃。今度は真横に吹き飛ばされたデモンズハッグは一直線に近くのビルに叩き込まれる。
「す、すごい……!」
 その荒々しい戦いぶりは、クロノを驚嘆させるのに十分な衝撃を持っていた。
 巨大な刃でただ力任せにブッ飛ばす――ただそれだけの考えなしの戦い方。普通に考えれば無謀以外の何ものでもないが――彼に限っては違った。
 どう見ても力任せ。どう見ても一直線――だが、その動きにスキがまるで見当たらない。
 いや――スキがないワケではない。むしろスキだらけだ。
 現にデモンズハッグもそのスキを何度も狙っているが、ブレードはそのたびに反応、防ぎきっている。
 つまり、彼の場合は自らのスキに対する対処法を知り尽くしている。“スキをなくす”ことではなく、“スキを狙ってくる攻撃に対処する”ことに徹底的に特化している。
 技術や理屈、訓練などで身につくものではない――ただただ、今までに経てきた戦いの経験によって磨き上げられたものだ。
 理屈も技術もない、ただ経験だけによって形成された戦法――“経験”、ただその一点だけが、ブレードの戦いを無謀なそれから必殺のそれへと変貌させていた。
「おいおい、どうした?
 まさかそれで終わりじゃねぇよな!?」
「ぐ………………っ!」
 斬天刀を肩に担ぎ、退屈そうに告げるブレードに対し、悔しそうに歯噛みしたデモンズハッグは身体を丸め、球状となってブレードの周りを転がり始める。
 クロノを追い詰めた、デモンズハッグの得意とする戦闘パターン――だが、
「へっ、ようやくか……」
 ブレードは余裕だった。デモンズハッグの変則的な動きを前にしても、動じる気配がまったくない――それどころか、むしろその口元には歓喜の笑みすら浮かんでいる。
「待ってたぜ……そうくるのを。
 そいつを――破りたかったんでな!」
 言うと同時、ブレードは斬天刀をかまえ――
「ずぁありゃあっ!」
 渾身の力で空を薙ぎ――次の瞬間、斬天刀から無数の光刃が放たれ、走り回るデモンズハッグに襲いかかる!
 これがブレードの斬天刀が有する固有の能力“斬撃複製”――精霊力によってブレードの繰り出す斬撃を複製。威力、スピード、斬れ味――すべてがまったく同一に再現された光刃を無数に放つことができるのだ。
 周囲に降り注ぐ無数の光刃――それはデモンズハッグの動きを抑えるには十分すぎた。巻き起こる衝撃によって動きを乱され、デモンズハッグは思うようにブレードを狙えない。
「くっそぉっ!
 だったら、これでどうだ!」
 地上からはムリだ――デモンズハッグは先ほどクロノにしたようにガレキを踏み台に跳躍。頭上からブレードを狙う。
「これならオレの自重もある! てめぇの光刃程度じゃ止められねぇぞ!
 破れるもんなら破ってみやがれ!」
 狙いは確実にブレードをとらえている――咆哮するデモンズハッグだったが――

「言われなくても、そうするさ」

 勝利を確信するのはまだ早かったと悟った時には――すでにその身は斬天刀の巨大な刃によって貫かれていた。
「バカかてめぇは。
 てめぇ自身がそれだけの重量で落ちてきてくれるんだ――刺突でそのパワーを一点に集中して受けてやれば、オレはただ踏ん張るだけで簡単にブチ抜けるさ」
 そう。ブレードは特にカウンターを撃ったワケではない。ただ斬天刀をデモンズハッグへとまっすぐに向け、踏ん張っただけだった。
 だが――それだけで十分だった。自分の重量と落下の勢い――ただでさえ強力なその衝撃が、迎え撃つ斬天刀の切っ先、その一点に集中されたのだ。いかに頑強なデモンズハッグの生体装甲であろうと関係ない。
 結果、いともあっさり貫かれ、ブレードの頭上であわれな屍をさらすに至っていた。
「残念賞、だな。
 少しあしらわれただけで簡単に切り札を見せた、テメェの浅はかさを呪うんだな」
 告げて、ブレードは斬天刀を振るい――放り出されたデモンズハッグの身体は力なく大地に落下した。
 

「誰かはわからないが……すまない、助かった」
 身体を貫かれ、力なく横たわるデモンズハッグを見つめ、退屈そうにあくびをするブレードに対し、クロノは一言そう謝辞を述べた。
「ところで、キミは……?
 見たところ、ブレイカーみたいだけど……」
 尋ねるクロノに対し、ブレードはため息をつき――

「――――――っ!」

 次の瞬間には、クロノは一撃を受けて近くのビルに叩き込まれていた。
 そして、一撃の主――ブレードは再び斬天刀を肩に担ぎ、
「ったく、期待してたのに、てんで弱いじゃねぇか、アイツ……」
 どうやら、先ほどのデモンズハッグのことを言っているらしい――苛立ちを隠しもせず、ブレードはクロノへと向き直り、
「でもって、そんなヤツにあぁも遅れをとるてめぇもてめぇだ。弱いヤツ相手に、いちいちいろいろ考えやがって。
 せっかくの才能も、扱うてめぇがへっぽこじゃ何の意味もねぇ」
「へっ………………!?」
「違うってのか?」
 崩れ落ちるガレキの中から姿を現し、思わず言葉を失うクロノに、ブレードはあっさりと聞き返す。
 その態度は余裕そのもの――それが言葉以上に自分のことを貶めている気がして、クロノの口元がわずかに歪む。
「悔しいって言うなら……証明してみせろよ。
 お前が、へっぽこじゃないってことをな」
「言われなくても!」
 自分にだって、執務官としての誇りがある。へっぽこ呼ばわりされて黙っているワケにはいかない――言い返すと同時、クロノはレイザードをかまえて跳躍する。
 レイザードをシューティングモードに――ブレードに狙いを定め、まずはあいさつ代わりとばかりにブレイズキャノンを放つが――
「それが――どうしたぁっ!」
 ブレードは回避も防御もしなかった。ブレイズキャノンの閃光に対し、真っ向から斬天刀を振るい――巻き起こった衝撃波が閃光を粉みじんに吹き飛ばす!
「な………………っ!?」
 なんという強引な防ぎ方だ――しかし、驚きながらも身体はすぐに反応した。とっさに真横に飛び、突っ込んできたブレードの斬撃をかわす。
 だが――
「それで、逃げたつもりかよ!?」
 ブレードはクロノを逃がしはしなかった。強引に身をひねると回避したクロノの後を追い、斬天刀で力任せに斬りつける!
 とっさにレイザードで受け止めたが――止められない。クロノはガードの上から弾き飛ばされ、大地に叩きつけられる。
 1回、2回――激しく地面の上でバウンドさせられ、それでもなんとか受身を取って立ち上がり、クロノはブレードをにらみつけた。
(強い…………!
 ジュンイチさんといい、コイツといい――マスター・ランクっていうのはバケモノばっかりか!)
 自分がまるで相手にされていない――AAA+ランクとして管理局においてその名を知られた自分の力が、彼らにはまったく通用しない。
 “力”の質で負けているつもりはない。技術だって上のはずだ。
 それなのに――勝てない。
(考えろ……!
 自分より強い相手と戦うんだ、知略を駆使して、突破口を見つけ出すしかない……!)
 どうすれば彼に勝てる――必死に思考をめぐらせるクロノだったが、
「やれやれ……」
 そんなクロノの姿に、ブレードはいかにもつまらなさそうにため息をついた。
「ムダなコトぁやめとけ。
 頭でいろいろ考えたって、てめぇはオレには勝てねぇよ」
「そんなこと……やってみないとわからないだろ!」
 そんなブレードの言葉にクロノが言い返し――
「なら、証明してやるぜ!」
 言うと同時、ブレードは斬天刀を振るい――放たれた光刃が一斉にクロノへと襲いかかる!
「そんなもの!」
 対し、クロノは上へと飛び上がり飛来する光刃をかわし、レイザードをかまえ――
「ムダだ!」
 ブレードはその動きを読み、すでに間合いを詰めていた。瞬時にクロノの眼前に肉迫し、斬天刀の一撃でクロノを大地に叩き落す!
「く――――――っ!」
 それでも、クロノは何とか体勢を立て直して着地するが、
「甘いっつってんだろ!」
 着地の衝撃で反応が遅れた。真上からブレードが放った光刃が、クロノの周囲に降り注ぐ!
「ぅわぁぁぁぁぁっ!」
 まともにくらった――衝撃で弾き飛ばされ、クロノは無様に大地に転がる。
「これでわかっただろ。
 今のてめぇの限界ってヤツが」
 着地し、そう告げるとブレードは斬天刀を肩に担いだ。
「いくら考えようと、どうにもならねぇこともあるってことだ。
 お前が、今のままでいる限りはな」
「く…………そ……っ!」
 ブレードの言葉に、クロノはレイザードを支えに立ち上がる。
(どうすればいい……!
 どうすれば、この人に勝てる……!)
 能力、戦闘スキル、言動――今までのやり取りで得られた情報を頭の中でフル回転させ、クロノは打開策を模索し――

(………………ん?)

 気づいた。
 ブレードが数回、繰り返し告げていることがあることに。

『弱いヤツ相手に、いちいちいろいろ考えやがって』
『頭でいろいろ考えたって、てめぇはオレには勝てねぇよ』
『いくら考えようと、どうにもならねぇこともあるってことだ』

(…………そうか……)
 ようやくわかった。
 ジュンイチやブレードに対し、自分がどうして勝てなかったのか――
「…………よぅし!」
 そうとわかれば――クロノは意を決し、レイザードのシューティングモードを解除。通常のデバイスモードへと戻した。
「へぇ、勝てねぇとわかってあきらめたか?」
「そうでもないさ」
 告げるブレードにそう答え、クロノは静かに呼吸を整える。
(おそらく、チャンスは一度……!)
 これをしくじれば、もう後はない――内心で自分自身を叱咤し、その先端に魔力を収束させる。
 対し、ブレードはすでにクロノに対する興味を失っていた。決着をつけるべく、斬天刀をかまえる。
「いい加減、てめぇの相手にも飽きた。
 終わらせて――もらうぜ!」
 そう告げ、ブレードは身を沈め――次の瞬間、爆発的な加速と共にクロノに向けて突撃する!
 対し、クロノは静かにかまえるのみ――今までの自分なら、相手のパワーにいちいち付き合うことなどせず、一旦回避、後に砲撃でカウンター、というきわめて堅実な手に出ていただろう。
 だが――それくらいブレードだって読んでいるはずだ。それに、仮に読んでいなかったとしても――それでも彼ならば対処し、こちらをいともたやすく打破してみせるだろう。
 ならば――
「――いくぞ!」
 咆哮――いや、宣告と同時にクロノは地を蹴った。
 後退するのではなく――
「何――――――っ!?」
 驚愕するブレード――その眼前へと。
 そして――
「いっ、けぇぇぇぇぇっ!」
 こちらの予想外の動きにコンマ数秒単位で反応の遅れたブレードに、渾身の魔力を込めたレイザードの一撃を叩きつけていた。

「ぐぁ………………っ!」
 ただ一撃を叩き込む――そのことにばかり意識が向き、着地がおろそかになっていた。レイザードを振り抜いた勢いそのままに、クロノは大地にその身体をしたたかに打ちつけた。
「アイツは!?」
 それまでのダメージが蓄積された全身に痛みが走る――それでもすぐに身を起こし、自分の一撃を叩き込んだブレードの姿を確かめる。
 今の自分に、あんな一撃をそうそう何度も放てる余裕などありはしない。願わくば今の一撃で倒れていてくれれば――
 だが――
「………………っ!?」
 そんな彼の視界をそれがふさいだ。
 自らの前に立つ、ブレードの身体が。
「そんな…………!?」
 デモンズハッグに翻弄され、ブレードに叩き伏せられ――消耗した上のこととはいえ、自分の出しうる渾身の一撃だった。それが通用しないというのか――!?
 絶句するクロノの目の前で、ブレードは静かに右手の斬天刀を頭上に掲げる。
(やられる――!)
 回避など、今の身体でできるはずがない。クロノは自らを襲うであろう一撃に覚悟を決め――

 

 次の瞬間、ブレードの一撃はクロノの背後を薙いでいた。
 そして――

「が…………ぁ……っ!」

 身体を深々と斬り裂かれ、後ずさるのは――デモンズハッグだ。ブレードの斬天刀に貫かれ、死んだとばかり思っていたが――
 驚愕するクロノの目の前で、デモンズハッグの身体に“封魔の印”が現れ――爆発を巻き起こし、デモンズハッグは今度こそ跡形もなく消滅した。
 そして――
「…………やりゃあ、できるじゃねぇか」
 満足げにうなずくと、ブレードは斬天刀を肩に担いで跳躍。近くのビルの上に跳び上がる。
 突然態度をひるがえしたブレードの行動に思わず眉をひそめ――クロノは気づいた。
 ブレードの装重甲メタル・ブレスト――その胸部を大きくゆがめた一撃の跡を。
「あのままダラダラとつまんねぇ戦い方するようなら、ホントに斬って終わりにするつもりだったが……気が変わった。
 傷を治せ。でもって――」
 そこで一度言葉を切り――ブレードは満面の笑みでクロノに告げた。
「そん時は、また思う存分やり合おうぜ♪」
「え………………?
 ……ち、ちょっと待て! それはつまり、『また“殺”り合おう』ってことか!?」
 思わず顔を引きつらせ、声を上げるクロノだったが――ブレードはかまわず跳躍。封時結界の結界面を斬天刀で粉砕し、脱出していった。

「へぇ……
 あのブレードがねぇ……」
 結局、ジュンイチはクロノを見捨ててさっさとブレイカーベースに帰還していた――クロノの放つ抗議の視線を気にすることもなく、平然とそうつぶやいてホットココアをすする。
「助けてくれても良かったんじゃないですか?」
「冗談じゃねぇ。誰が好き好んであんな戦闘狂バーサーカーを相手にするかよ。
 お前もムキにならずにとっとと引き上げてれば良かったんだよ――こっちを目の敵にしてる、ってワケじゃねぇんだ。逃げる相手を追っかけるような悠長なシュミを持ってるヤツでもないしな」
 クロノにあっさりと答え、ジュンイチは肩をすくめ、
「けど、そのおかげで得るものはあったみたいだな」
「まぁ……一応は」
 告げられた言葉に、今度はクロノが肩をすくめる番だった。
「ボクは執務官としてチームをまとめ、指揮を執らなければならない立場にいる。
 けど――それにこだわるあまり、チームプレイの際の自分の役割ばかりにこだわってしまっていた……」
「だな」
 当人が気づいたのなら隠す必要もない――ジュンイチはあっさりとクロノの言葉にうなずいた。
「お前は確かにチームリーダーだ。
 けど――その前にひとりの戦闘要員だってことを、お前は忘れてた。
 単独で戦う時まで、お前はチームプレイの時と同じように思考を展開していた――考えること、それ自体を悪いとは言わんが、お前の場合は指揮官としての思考から頭を切り替えられずにいたんだ。
 要は――指揮官として一歩引いたところにいる場合と、同じ思考を最前線で展開していたんだ。最前線じゃンな余裕なんかないのも忘れてな」
 まったく、習慣ってヤツは恐ろしい――と付け加え、ジュンイチはココアをすする。
「チームプレイの時はチームプレイの時の、単独戦闘の時には単独戦闘の思考パターン、ってヤツがある――けど、お前はチームプレイばかりが多くなってきた今の戦いの中で、その切り替えができなくなってきていたんだ。
 ま、それもブレードのおかげで修正できたみたいで何より、だけどな」
 口元に笑みを浮かべて告げて――しかし、ジュンイチはクロノに対しジト目で続けた。
「けどさ、あのブレードがそんなおせっかいを焼くなんてよっぽどのことだぞ。
 お前、どんなじれったい戦い方してたんだよ?」
「そ、それは……まぁ、デモンズハッグに散々振り回されて……」
「ま、お前がどれだけへっぽこだったかには興味ないんだけどね、ぶっちゃけ」
「どっちなんですか」
 思わずうめくクロノだが、ジュンイチはかまわず続けた。
「問題なのは――お前がアイツの前できっちり立ち直っちまった、ってことなんだよな」
「え………………?
 どういう……ことですか……?」
 何が問題だと言うのだろうか――なんとなく不安になってクロノが尋ね、そんな彼にジュンイチは告げた。
「だってさ、お前、アイツに対して『自分はちゃんと戦える』ってことを態度で示しちまったワケだ。
 それでなくても、その前のへっぽこぶりを見てたんだ――ブレードが興味を持つには十分だと思うぜ」
「あ………………」
 そのジュンイチの言葉に――クロノは思い至った。
 同時、ブレードが去り際に放った一言が脳裏によみがえる。

『また思う存分やり合おうぜ♪』

「まさか……」
 イヤな予感が最大級にふくれ上がった――青ざめたままうめくクロノに、ジュンイチはパチパチと拍手し、
「おめでとう。見事にブレードのターゲットに選ばれたな」
「ちっともめでたくないですよ!」
 ジュンイチの言葉に、クロノは思わず声を上げる。
「それって、これからも延々ブレードにターゲットとして追い回される、ってことじゃないですか!」
「間違いなくね」
 サラリと答えるジュンイチの言葉に、クロノは頭を抱えてデスクに突っ伏した。
「最悪だ……
 ほとんど通り魔も同然じゃないですか」
「ま、心配するな。
 アイツに一矢報いたヤツが誰もが通る道だから」
「………………」
 なんとなく――彼も経験者だったんだと確信し、クロノは改めてため息をつき――
「あれ? クロノくん、また元気ないの?」
「ジュンイチさんから復活したみたいだ、って聞いたんですけど……」
 そんな彼らに、ちょうど司令室へとやってきたライカとジーナが不思議そうに声をかける。
「なぁに、大したことじゃねぇよ。
 クロノがブレードへの生贄に捧げられることが決まっただけだ」
「……つまり、ブレードさんに目をつけられちゃったんですね、クロノくん……」
 さすがと言うべきか、ジュンイチのどこか微妙な例え話からあっさりと事情を看破し、ジーナはクロノへと慰めの視線を向ける。
「大変ですね、クロノくんも」
「ブレードが相手なんて、命がいくらあっても足りないものね」
「いえ……」
 慰めの言葉をかけてくれるジーナとライカに、クロノは苦笑まじりに答え――
「まぁ、ジュンイチさんに振り回されるよりはマシだと思いますから」
「戦場で出くわしたら、がんばって引きつけておいてね♪」
「………………」
 もはや味方はいないのか――クロノは天井を仰ぎ、心の底からため息をつく。
 そんな彼らのやり取りに苦笑し、ジュンイチはシートの背もたれに身を沈め――不意に表情を引き締めた。
(しっかし……“DaG”まで動き出しやがったか……)
 今回は幸いと言うべきか、現れたのはブレードだけだった。
 だが――他の面々までも姿を見せ、さらに堕天使やジュエルシードのことを知ったら――面倒な事態になるのは避けられまい。
(早いうちに、手は打っておくべきだろうな……)
 何があろうと、みんなは自分が守り抜く――決意を新たにし、ジュンイチはもはや愚痴のこぼし合いになりつつあるクロノ達のやり取りを尻目にココアを飲み干した。


 

(初版:2007/02/22)