それは、どこにでもある学校の怪談だった――そう思っていた。

 ただのウワサ話だと、ずっと思っていた。

 だから、肝試ししようと言われても、特に怖いとは思わなかった。

 

それは――間違いだった。

 

 最初に消えたのは田中だった。

 次が牧村。

 続いて山口、宮下――

 最後に残ったオレは、死に物狂いで逃げ回った。

 あと少しで玄関だ。ここから逃げ出せる――

 そう思った瞬間――

 

肩を叩かれた。

 

 


 

番外編
「えくすくらめいしょん・ないと!」

 


 

 

〈ギャァァァァァッ!〉
 テレビから放たれた絶叫に、その前でなのはとフェイトはビクリとその身をすくませた。
 見ているのは夏場恒例の怪談番組――アリサ達友人達を招いての、久しぶりになる高町家でのお泊り会での一幕である。
「な、なのはぁ……」
「だ、大丈夫だよ、フェイトちゃん」
 すでに涙目のフェイトに答えるなのはだが、そう言う彼女の身体も先程からガタガタと震えている。
「何よ、二人ともだらしないわねぇ」
 対して、ぜんぜん平気なのがアリサだ。となりではすずかもうんうんとうなずいてみせる。
「こんなのぜんぜん怖くないじゃない」
「こ、怖くなんかないよ!
 ね? フェイトちゃん」
「う、うん……」
 告げるアリサに答えるなのはとフェイトだが――アリサはそんな二人の手元を指さし、
「その割には、ジュンイチさんの両手を握ったままよね、二人とも」
 その言葉に、なのはもフェイトもあわてて手を離す――それを見てすずかはクスクスと笑みをもらし、
「二人とも、大丈夫だよ。これはただのお話なんだし。
 ジュンイチさんもさっきから悲鳴も上げずに見てるし」
 言って、すずかはジュンイチへと視線を向け――

 ちーんっ。

 などという効果音が聞こえそうな雰囲気と共に、ジュンイチは意識を手放していた。

 翌日、翠屋にて――
「あははははっ!
 そんなことがあったんだ!」
「笑い事じゃないですよ」
 話を聞き、大笑いするエイミィに、恭也は注文のケーキを差し出しながらため息まじりにそう答えた。
「その後大変だったんですよ。
 ジュンイチは気がついても怖がって部屋のすみに縮こまって動かないし、面白がったかーさんが『一緒に寝てあげようか?』とか言い出すし、それを聞いたなのは達までなぜか立候補するし……」
「……まぁ、そのことについてはノーコメント、ってことで」
 その表情の種類に関わらず、子供っぽい部分を垣間見せた時のジュンイチはどうもこちらの母性本能というか、保護欲のようなものをかき立てる雰囲気がある。その場にいたら同じく(桃子同様面白半分で)参戦していたであろう自分の姿を思い描き、エイミィは思わず苦笑しながら答える。
「けど意外ねー。ジュンイチくんがお化けとか苦手だなんて」
「なんていうか、怖いもの知らずなところがありますからね、ジュンイチくんって」
 リンディの言葉にエイミィが同意すると、
「けど、そんなことじゃ困る一面もありますよね」
 そう言い出すのはクロノだ。
「どういうことだ?」
 思わず尋ねる恭也に、クロノは逆に聞き返した。
「ジュエルシードは、発動した者の想いに反応する――覚えてますよね?」
「あぁ」
「動物とかであればただ本能に則した形ですみますけど……人間が発動させた場合、その人の想いが強く反映されることになります」
「そうだな」
 恭也がうなずくのを確認し――クロノは告げた。
「今、怪談シーズンまっさかりですよ」
「……いやでも『そっち方面』の連想がされやすくなってるワケか」
「はい……」
 こちらの言いたいことに気づき、うめく恭也にうなずくと、クロノは告げた。
「ヘタをすれば、これからシーズンが終わるまで、ジュンイチさんは延々と『役立たず』のままになりかねませんよ」
「なんとかしなければな……それも早急に」
 恭也がつぶやくと、
「だったらさ……」
 口を開いたのはエイミィだった。
「こういう作戦はいかが?」

 作戦は採用された。

「トレーニングコースのテスト?」
「あぁ」
 とりあえず、というレベルだが一応復活していたジュンイチの問いに、恭也はそううなずいた。
 が――毛布に包まって縮こまっているこの状態ですら『一応の復活』なのだから、直後のジュンイチの状態は推して知るべし。
「晶やレン用に、クロノにアスレチック形式のトレーニングコースを作ってもらってね。
 トラップ形式の仕掛けも多く取り入れてあるから、まずはジュンイチに試してもらおうか、と思ってね」
「まぁ、別にかまいませんけど……
 いつやるんですか? 明日ですか?」
 その問いに、恭也は答えない――なんとなくイヤな予感がして、ジュンイチは尋ねた。
「まさか……今から?」
 言いながら、ジュンイチは外へと視線を向けた。
 日は、すでに沈んだ後だった。

「引き受けるんじゃなかった……」
 心の底から後悔しつつ、それでもジュンイチは準備運動を念入りに行っていた。
 その気にならない限りテコでも動かないが、一度『やる』と引き受けたら絶対にやりとげなければ気がすまない――我ながら損な性格だと思う。
「コースはさっき説明したとおりだ」
「いつも恭也さん達が走ってるランニングコース沿いに外回り一周、でしたね」
 確認する恭也に答え、ジュンイチは立ち上がり、スタート地点に立つ。
「じゃ、さっさと終わらせて帰りましょうか」
 告げるジュンイチのその表情は完全にビビりモードに入っている。こんな夜間に、今のテンションのまま出歩きたくない――少しでも早く済ませて高町家に(逃げ)帰りたいのが見え見えだ。
「わかった。
 それじゃあ、用意――」
 そんなジュンイチに苦笑し、恭也は合図を送り、ジュンイチは静かに身を沈め――
「スタート!」
「ぬおりゃぁぁぁぁぁっ!」
 スタートと同時に咆哮――いや絶叫か。恐怖を振り払うかのように大声を張り上げながら、ジュンイチは森の中へと消えていった。
 それを見送り――恭也は無線を取り出し、スイッチを入れた。
「こちらスタート地点の恭也。
 ターゲットがスタート。各自作戦を開始されたし」
《了解っ!》

 一方、勢いよくスタートしたジュンイチだったが――
「う゛ぅっ………………」
 スタート15秒後にはすでに二の足を踏んでいた。恐る恐る周囲の様子を伺いながら先へと進む。
「恭也さんの話だとトラップを仕込んだってことだけど……どんなの仕掛けたんだ?
 あの人のことだから、むしろ体術強化につながるようなワナだと思うけど……」
 ジュンイチは知らない。
 確かに恭也はこのコースに仕掛けを施した。
 だがそれは晶やレン用ではなく――対自分用だということを。

 そして、その『トラップ』の第1陣は――
「もうそろそろ来る頃ね……」
「準備は万端です」
「問題ありませーん♪」
 忍、ノエル、ファリン組――いきなり致死率MAXな面々である。
「見てなさい、ジュンイチくん。
 この私が特別に考案した、『必殺絶叫フォーメーション』の出番よ!」
 『必“殺”』がついてる時点ですでにヤバいと思うのだが――そこにツッコむつもりなどノエルもファリンも一切ない。
 というか――むしろツッコむべきだということに気づいていなかった。

「……今のところ……異常はない、よね……?」
 相変わらずおっかなびっくり、といった様子で、ジュンイチは夜の山道を進んでいた。
「このまま何事もなく、トラップだけが出てくれればいいんだが……でなきゃテストにならんし」
 一応当初の目的は覚えているらしい――身をすくませたままため息をつき、ジュンイチはつぶやき――
「………………?」
 ふと前方に明かりがあるのに気づいた。
「誰かいるのか……?」
 だとしたら危ない。もしこのコースのトラップが作動したら――そんな危機感から思わず走り出し――
「ぶべっ!?」
 いきなり左足の動きが何かによって止められた。唐突に勢いを殺され、ジュンイチは顔面から地面に突っ込む。
「ってぇ……何だよ、いきなり……」
 うめいて、ジュンイチは顔を上げた。
 自分の足をつかんでいる何かを確かめようとして――振り向こうとした瞬間、気づく。
(………………“つかんでる”?)
 恐る恐る自分の左足へと視線を向け――その表情が引きつった。
 青白い手が自分の足をつかんでいる。
 そしてその手は――
 地面の中から生えていた。
「――――――っ!?」
 瞬間的にのどが引きつり、悲鳴すら出ない――半ば本能的にジュンイチはその手を振り払おうと左足を振り上げ――手は地面から抜けた。
 手だけが。
「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!?」
 今度はまともに絶叫し、ジュンイチはそのまますさまじい勢いで後ずさり――ふと背後が明るくなった。
「だ、誰だ!?」
 そういえば、誰かがいるような明かりを見つけたのだった――とっさにジュンイチは振り向き――止まった。
 明かりは確かにそこにあった。
 ただし――明かりだけだ。
 いくつかの炎が、空中を漂っている。つまり――
「人魂ぁぁぁぁぁっ!?」
 もはや冷静な思考など、頭の中から完璧にブッ飛んでいた。ジュンイチは立ち上がることもままならず、両手両足を総動員してその場からはうようにして逃げ出し――
「――――――!?」
 ふと前方に人影を見つけた。
「す、すみませーんっ!」
 助かった――そんな安堵と共にジュンイチは人影に声をかけ――
「――――――はい?」
 振り向いた人影には――目も眉も鼻も口もなかった。

「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!?」
 全力疾走で逃げていくジュンイチを、人影は黙って見送り――
「……作戦成功ですね、忍お嬢様」
 のっぺらぼうのマスクを外し、ファリンは人魂(型のラジコン)を操っていたコントローラーを手にした忍に声をかけた。
「ホント、面白いくらいに引っかかってくれたわね……
 ノエル、もう出てきていいわよ」
「わかりました」
 忍に答え、地中から姿を見せたのはノエルだ。汚れてもいいように、という配慮なのか、身に着けているのはいつものメイド服ではなく陸戦用のアーミールックだ。
「忍お嬢様、次のポイントに連絡を」
「OK」
 ジュンイチが放り出した自分のロケットパンチを回収するノエルに答え、忍は無線のスイッチを入れた。
「こちらポイント1。ターゲット通過。予測どおり全力で逃走」
〈了解!〉
 すぐに次のポイントから返事が返ってきた。

「ジュンイチさん、こっちに来るって」
「うん」
 無線を地面に置いて告げるアリサに、すずかはうなずいて自分達の『獲物』を用意する。
「なんか、定番すぎて地味よね、あたし達の担当って」
「ま、まぁ……がんばろうよ」
 アリサの言葉に精一杯のフォローを入れて――すずかはそれを見上げた。
 彼女達に割り当てられた『獲物』とは――

「こ、ここまでくれば……!」
 形振りかまわず逃げ出したかと思えば、キッチリ当初のコースをたどっていた――足を止めて呼吸を整え、ジュンイチはひとりつぶやいた。
 トラップのはずが出てきたのはお化け――しかもあそこまで立て続けに攻められれば、いい加減これが自分をターゲットにした一大肝試しだということに気づいてもいいはずなのだが、あいにく今のジュンイチの思考能力は恐怖で完全にマヒし、常人以下にまで低下している。おかげで微塵も疑う余地は出てこない。
「とにかく、早くゴールして帰ろう……」
 もはや途中にあるトラップのことも完全に忘却している。先に進もうとジュンイチは足を踏み出し――
 ピタリ。
 その頬に、冷たくてヌルヌルした何かが触れた。
「――――――っ!?」
 突然のことにジュンイチが固まり――追い討ちが来た。
 同じものが、その顔面に飛んできたからだ。

「%&*¥#$※☆∞〜〜っ!」
 もはや言葉にすらならない悲鳴を上げ、ジュンイチはまたもや全力で逃げていった。
 そんな彼を茂みの中から見送り、アリサはポツリとつぶやいた。
「……あーゆージュンイチさんも、なんか可愛げがあっていいわね」
「う、うん……」
「それにしても……」
 となりですずかがうなずく中、アリサは『獲物』を手元に引き寄せて、
「意外に効くのね、コレ」
「効くから定番なんだろうけど……」
 それは竿の先端からピアノ線で吊るされた――
 こんにゃくだった。

 一方、ゴール地点に設置された待機所では――
「あのー、エイミィさん……」
「何?」
 尋ねるなのはに、端末でジュンイチの様子をモニタリングしていたエイミィはごく普通に聞き返してきた。
 あまりにもあっさり返され、なのはは思わず面食らい――そんな彼女に代わり、フェイトがエイミィに告げた。
「これ……ジュンイチさんのお化け嫌いの克服になってるのかな……?」
「なってないわね」
 あっさりと答えてくれる。提案者なのに。
「私もまさか、ここまでお化けがダメだとは思わなかったわ」
「もう筋金入り、って感じだよね……」
 エイミィのとなりでブイリュウがうなずくと、改めてなのはが声をかけた。
「けど……エイミィさん。
 どうして、最後のポイントがクロノくんなんですか?
 マジメなクロノくんじゃ、こういうのってあまり効果は見込めないと思うんですけど……」
「だからこそ、じゃないかな?
 クロノだと効果的なおどかし方はできないだろうから、おどかし続けて冷静さがなくなってところで攻めてもらおうか、って……」
 フェイトがそう答えると、
「うーん、それもあるんだけど……」
 なぜか、そうエイミィはお茶を濁して――そんな彼女に、なのはとフェイトは思わず顔を見合わせた。

「なんでボクがこんなことをしなければならないんだ……?」
 無論、エイミィに押し切られたからではあるのだが――クロノはそう問わずにはいられなかった。
「しかも、こんな子供だましの手が、いくら冷静さを失っててもジュンイチさんに通じるのか……?」
 渡されたのは武装局支給の光学迷彩マント1枚だけ。これで気配を残して姿だけを消し、ジュンイチをおどかせというのだ。
 言われた当初は、冷静さを失ったジュンイチなら気配はしても姿が見えないという状況に必ず霊の存在を連想するだろうとは思っていたが――いざ冷静に考えてみると、本当に通じるのだろうかと不安になってくる。
 だが、もう後には退けない。覚悟を決めて、クロノはマントを被った。

「うぅ……帰りたいよぉ……」
 もはやいつもの姿など見る影もない。完全な半泣き状態で、ジュンイチは山道をトボトボと歩いていた。
「もうちょっとでゴールだけど……」
 一応ルートは覚えているらしい。中途半端に冷静だ。
 と――
「………………ん?」
 ふと、ジュンイチはそれを感じ取った。
 ――何かがいる。
 明確な気配を感じ取り、そちらを振り向くジュンイチだが――そこには誰もいない。
 だが――気配は依然としてそこにある。しかし姿は見えなくて――
「ま、まさか……」
 ジュンイチは、自分の顔から血の気が退いていくのをハッキリと自覚していた。

(効いてるよヲイ……)
 完全に予想外だった。目に見えて恐怖を抱いているジュンイチの姿に、クロノは胸中でため息をついた。
 情けない――仮にもAAA+ランクの自分を秒殺したことすらあるほどの実力者だというのに。
 そう思ったら、だんだん腹が立ってきて――クロノはもう少し、彼をおどかすことにした。

「来るな、来るなぁぁぁぁぁっ!」
 思わず逃げ出したら、気配もまっすぐ自分を追ってきた。いつの間にかコースを全力で逆走し、ジュンイチは恐怖のままにわめき散らす。
 完全に逃げ腰モードだ。こうなるとクロノも面白くなってきた。日頃苦労させられている恨みを晴らすチャンスとばかりにジュンイチを追い回す。
 だが――そんな追いかけっこもついに終わりが訪れた。
「どわぁっ!?」
 足元の木の根につまずき、ジュンイチが転倒したのだ。
「くっ、来るなぁ……!」
 それでもなんとか後ずさり、半泣き状態で告げるジュンイチだが、クロノは姿を消したままジュンイチへと迫る。
「来るな……!」
 ジュンイチの顔がさらに引きつり――
「……来るなぁぁぁぁぁっ!」
 絶叫と共に――世界が光を取り戻した。

「なっ、何!?」
 轟音と共に閃光――突然の事態になのは達が待機所のテントから飛び出すと、森の一角に火の手が上がっている。
「……も、もしかして、あれって……」
 なんとなくその正体に察しがついた――思わずつぶやくフェイトの背後で、エイミィはポツリとつぶやいた。
「あちゃー、やっぱりこうなったか」

「あ、あのー、えーっと……」
 一撃で迷彩マントが焼滅した――バリアジャケットになんとか守られ、クロノは恐る恐るジュンイチに声をかける。
 が――聞こえていない。ジュンイチはゆっくりと一歩を踏み出し――その足を中心に足元の草がゆっくりと燃え始める。
 そんなジュンイチの姿に、クロノもまた後ずさり――ジュンイチがまた一歩。
 さらにまた一歩。
 また一歩。
「あの……ジュンイチさん……?」
 もうここまでくれば完全にバレただろう――クロノはもう一度ジュンイチに声をかけるが、
「お化けがナンボのもんじゃ……!」
 かまわず、ジュンイチは静かに告げる。
「人魂がナンボのもんじゃい……!」
(ま、まさか……
 この期に及んで、ボクに気づいてないとか!?)
 おそらくそうだろう。原因として考えられるのは――
(恐怖で――完全にキレてる!?
 ――まさか!?)
 そこに至って、クロノはようやく気づいた。
 自分が最終ポイントに配置された、その“真の”意味に。
(ちょっと待て……
 まさか、こうなった時のストッパーも兼ねさせるつもりだったんじゃないだろうな!?)
 たぶん正解。
(えっと……わかってるんでしょうか、エイミィさん……)
 念話で確認することも忘れ、クロノはなぜか敬語で、今頃十字を切ってるであろう同僚に告げた。
(彼は、初めて会った時の戦いで、このボクを秒殺したんですけど……)
 脳内の友人兼同僚はあっさりと答えた。

 『ファイト♪』

「ムリだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 クロノの絶叫が響き渡ると同時――炎の柱が空と大地を貫いた。

 結局。
 恐怖に突き動かされたジュンイチの大暴走は夜が明けるまで続いた。
 この事態を予測し、エイミィが事前にユーノに結界を張っておいてもらっていたため周辺の被害は最小限で抑えられたものの、結界を撃ち抜かれた攻撃や終盤流れ弾の直撃でユーノが沈黙した後の破壊行動により若干森が焼けることとなった。
 人的被害は真っ先に焼かれたクロノとよりにもよって全力全開の流れ弾をもらったユーノが本局の病院に直行。全力で阻止にあたったなのは、フェイト、恭也が軽傷。援護したノエルが中破した。
 当のジュンイチはある意味一番の被害者ということで多少情状酌量の余地が与えられたものの、だからといってAAA+ランクの執務官を一撃で沈黙させるような大暴走はいかがなものかと、首謀者であるエイミィと許可を出したリンディもろとも本局においてリンディの友人、レティ提督にこってり絞られたという。
 加えて、追加の罰則としてこの3名は今回の件に関わった全員に手作りの夕食をおごるハメになった。

 

本日の教訓。
 人間、あまり追い詰めない方がいい。

 

 お後がよろしいようで。


あとがき
 七夕SSが『GM』だったので『なのブレ』ではお盆ネタ。『なのブレ』では作中時間はまだ8月なのでタイミング的にも良し、ということで。
 というワケでお化け嫌いのジュンイチをメインにした肝試し特訓ネタとなりました。
 おそらく、おどかされたジュンイチを差し置いて一番の犠牲者となったであろうクロノくん、ゴメンナサイ。
 しかし……季節ネタはいつも突貫執筆になる上にイマイチ締めのいい終わり方ができない。今後の課題です。

 なお、モリビトもお化けの類は嫌いです。小さい頃に連れて行かれたお化け屋敷の恐怖が未だに忘れられません。
 我が父よ。よくもいらんトラウマを残してくれたな。どうしてくれようか。
 まぁ、「恐怖を感じないってのは人の感情として重大な欠落だよな」と気づいてからは、開き直って素直にビビっておりますが。

 ちなみに。
 タイトルの『えくすくらめいしょん』は英表記「exclamation」。意味は『絶叫』。某ホラー映画のタイトルとして使われた「scream」は同じく『絶叫』の意味を持ちますが、より強い意味として『金切り声』が挙がるため今回のタイトル案からは却下しました。
 ……ってことは、スタースクリームって「星の金切り声」って意味なんだなぁ……確かに似合うけど、名付け親の顔が見てみたい。
 以上、補足トリビアでした。


本編未公開シーン(よーするにボツ案)
 結局。
 恐怖に突き動かされたジュンイチの大暴走は夜が明けるまで続いた。
 この事態を予測し、エイミィが事前にユーノに結界を張っておいてもらっていたため周辺の被害は最小限で抑えられたものの、結界を撃ち抜かれた攻撃や終盤流れ弾の直撃でユーノが沈黙した後の破壊行動により若干森が焼けることとなった。
 人的被害は真っ先に焼かれたクロノとよりにもよって全力全開の流れ弾をもらったユーノが本局の病院に直行。全力で阻止にあたったなのは、フェイト、恭也が軽傷。援護したノエルが中破した。
 当のジュンイチはある意味一番の被害者ということで多少情状酌量の余地が与えられたものの、だからといってAAA+ランクの執務官を一撃で沈黙させるような大暴走はいかがなものかと、首謀者であるエイミィと許可を出したリンディもろとも本局においてリンディの友人、レティ提督にこってり絞られたという。
 加えて、追加の罰則としてこの3名は今回の件に関わった全員に手作りの夕食をおごるハメになった。

 なお、エイミィの撮っていた今回の件の記録映像は証拠としてレティに没収された。
 が、後日確認したところ、プライバシーの保護として決着後破棄されるはずのその映像ファイルが削除された形跡はなかった。
 そして――そのコピーが本局勤めの女性局員の間で比較的高値で取引されていると知り、ジュンイチが全身全霊をもってそれらのコピーファイルを殲滅したものの、マスターデータがどうしても見つからず涙したのは、また別の話である。


 

(初版:2006/08/13)