奥様の名前はリィンフォース・アイン。
だんな様の名前は恭也。
まったくもって普通じゃない出会いをした二人は、危うく世界を滅ぼしかける恋愛をして、奥様の“元持ち主”の数限りない暗躍の末に結婚をしました。
でも、ただひとつ――というか、一番違っていたのは――
だんな様は最強の剣士で、奥様は魔導書だったのです。
番外編
「奥様はマジョ?」
〜もしくは「あるバカップルの日常」〜
(恭也×リィンフォース・アイン編)
とんとんとんとん……――
軽快に響くのは、朝食の食材を刻む包丁の音。
クツクツクツ……――
そのとなりからは、いい匂いを立ち上らせている鍋の音。
「恭也、そちらはどうだ?」
「待て。
…………あぁ、問題ない」
それは新婚当時から変わらない夫婦の光景――並び立ってキッチンに立ち、食材を刻みながら尋ねる“アイン”ことリインフォース・アインの問いに、恭也は味噌汁の味見をしてそう答える。
「ほら」
「うむ」
そして、当然妻にも――小皿に注いだ味噌汁を差し出す恭也に応え、アインはそれを口に含み、
「…………あぁ、悪くない」
「そうか、よかった」
笑顔で告げるアインの言葉に、恭也は優しげな笑みと共にうなずき――
「…………あのさぁ……」
そんな二人だけの空間に無粋な乱入者が現れたのはそんな時だった。
ジャマをされ、一転して不機嫌そうな顔になった二人が振り向いた先で――
「ラブラブをやるのは、せめて嫁さんにオレとのリンクを切らせてからにしてもらえないでしょうか……」
根本でつながっているため、リンクを遮断してもらわなければ彼女の感情がダイレクトに流れ込んでくる――顔を真っ赤にして、すっかり空気にあてられたジュンイチは二人にそう告げ――いや、“懇願”した。
「相変わらずのようだな」
「ほっといてくれ」
機動六課隊舎、隊員食堂――昼食の修羅場もなんとか過ぎ去り、落ち着いたその中で、ジュンイチは机に突っ伏したままイクトに答えた。
傍らにはなのはやフェイト、それにフォワード陣の4名も控えており――彼女らもコメントに困っているのか、ジュンイチに向けて若干乾いた笑いを向けている。
「毎朝毎朝、朝っぱらからいちゃつきやがってからに……
恭也さん、あーゆートコは確実に士郎さんの息子だって実感するよ……」
「確かに、あの二人は未だに新婚同然だからな……」
知り合ってからジュンイチは10年、イクトも9年半になるが、変わらぬあの地で喫茶店を営むあの夫婦は未だに新婚同然のラブラブぶり――その血が着実に受け継がれていることを実感し、イクトはジュンイチの言葉に肩をすくめる。
「くっそー、なんでこんなことになったんだ……」
先ほどから一度も顔を上げず、うめくジュンイチの言葉に、イクトはため息をついて彼に尋ねた。
「ならば……お前はアインを救ったことを後悔しているとでも言うつもりか?」
「後悔できねぇから余計に理不尽さを感じるんだろうが……」
10年前、第97管理外世界と第108管理外世界で起きた“堕天使”との戦い――その中で起きた、ロストロギア“闇の書”を巡る攻防は、暴走した“闇の書”の防御プログラムを強制停止させることで一応の決着を見た。
だが、悪意ある改変を受けた“夜天の魔導書”改め“闇の書”改めリインフォース・アインは悲劇の連鎖を断ち切るため自らの消滅を選ぶ。
それを食い止めたことを後悔はしていない。そのために、自分の持ち得る“裏ワザ”の大盤振る舞いをやってのけたことも。しかし――
自分がアインの新たな持ち主にされてしまうなど、一体誰が予想できただろうか。
「そりゃ、当時まだ侵食から回復しきってなかったはやてにもう一度アインとリンクしてもらうワケにはいかなかったのはわかってるさ。
いろいろあって、オレがアイツに一番近い立ち位置にいたことだって認めるさ。
けどさ……だからって、女性型ユニゾンデバイスのマスターに男のオレを選ぶか!? 普通!
しかも! リカバリ作業やってるウチにアインのヤツが恭也さんにホレちまったのを知ってた上で!」
「むぅ…………」
机に突っ伏したまま延々と愚痴を垂れ流すジュンイチの姿に、イクトは思わずため息をつく。
思わず「その愚痴はもう何度目だ?」と口に出しかかるが――それがより彼の愚痴を加速させる地雷ワードだと思い出して自重する。
先日その一言を口にしてしまったシャリオがより激しさを増した怒涛の愚痴にさらされ、1時間後に真っ白な灰と化しているのが発見された(つまりその間誰も助けなかった)一件を思い出し、イクトはとりあえず話を合わせてやることにする。
「まぁ、確かに二人の関係を考えるなら恭也がアインのマスターになるのが最善だったとは思うが、な……」
「言わなくてもわかってるよ。
リンカーコアのランクの低い恭也さんに、アインの制御はムリだってことは」
答えるジュンイチはやはり突っ伏したままだ。
「けどさ、それならそれで、なのはとかフェイトとか……他にも選択肢はあったんじゃないのかよ?」
「まぁ……確かにな」
ジュンイチの言葉に肩をすくめてそう答え――イクトはなのは達へとチラリと視線を向け、
「今のままでは、お前が誰かと一緒になる時に問題が起きそうだしな」
その言葉に、思わず女性陣は顔を赤くして――
「はぁ? オレが?」
そんな空気を粉みじんにぶち壊すのがジュンイチだ。ようやく顔を上げ、イクトに告げる。
「オレが誰かと? それこそありえない冗談だって。
そもそもオレを好きになるようなヤツなんているのかよ? いたとしたらソイツぁ天然記念物を通り越して珍獣だっつーの」
間。
「じゃあ、午後の訓練に行こうか」
「はーい!」
「手伝うよ、なのは」
「ほら、キャロもエリオも行くわよ」
なのは、スバル、フェイトとティアナ――4人が口々に言いながら食堂を後にし、エリオとキャロがフリードと共におっかなびっくりその後を追うのを、イクトはただ静かに見送り――
「………………なぁ」
そんな彼への疑問の声は、背後から弱々しく聞こえてきた。
「なんでオレは……あの4人に問答無用で総攻撃されにゃならんかったんだろうか……?」
「あー、まぁ…………なんだ……
……最低限、自業自得だということだけは理解しておけ。いい加減に」
ボロボロに崩壊した食堂の爆心地――全身にまんべんなく砲撃を受けてイイ感じに焼け焦げ、プスプスと煙を立てながら地面に突っ伏しているジュンイチの問いに、イクトはため息まじりにそう答えておいた。
「…………む……?」
「どうした?」
「いや、なんでもない。
マイスター・ジュンイチがいつものように自滅しただけだ」
尋ねる恭也の言葉に、主の身に起きたことを把握したアインはただ淡々とそう答える。本当にいつものことすぎて、心配する気にもならないのは果たして信頼か達観か。
まぁ、いいか――と同様に納得し、恭也は手元に視線を落とした。経過時間を確認し、告げる。
「少なくとも……秒殺は免れるようになったか」
「まぁ、な……」
息を切らせ、そう答えるヴィータの手には何もない――幾多の戦いを共に戦い抜いてきた“鉄の伯爵”は現在二人の立会いを見届けている烈火の将の手の中に預けられている。
“魔法にもデバイスにも頼れない状況における戦闘技能の追及”――ジュンイチが他の分隊と隊長陣全員に課した訓練メニューの一環“徒手空拳によるファイヤー分隊隊長陣との戦闘訓練”である。
対ガジェットの訓練から派生したものであり、“魔法の使えない状況を切り抜けること”を目的とした訓練なのだが――“対戦相手がジュンイチと恭也”という事実を忘れてはいけない。二人とも非能力戦においても超一流のエキスパートなのだ。
結果、スバル達フォワード陣はもちろん、隊長陣にとっても未だ越えることのできない、「絶対の壁」とも言えるメニューと化している――若干名、未だこの段階に到達することすらできていない分隊長と部隊長がいたりするが、彼女達の名誉のためにもその辺りはスルーだ。
「ジュンイチの訓練が活きているようだな」
「当然だ。
アイツとやる時は、恭也とやる時とは別の意味で必死だからな」
告げる恭也に答え、ヴィータは大きく息をついて呼吸を整え、
「何しろ……ヘタを打てば、待ってるのは“額に『肉』の刑”だ」
「…………彼にとって、譲れない一線と化しているからな」
基本的に剣を用いる恭也の得意距離はクロスレンジだ。「傷つけずに済ませられる代用品がない」という理由から飛針の使用が禁じられているため、この訓練で彼から受けるダメージと言えば鋼糸で捕らえられ、締めつけられる際のものと木刀の打撃によるものなのだが――ジュンイチが相手となると話は違う。
ジュンイチは零距離戦のエキスパートである。零距離打撃で宙を舞うなどまだ幸運。うかつに接近を許そうものならあっという間に関節技の餌食になり、組み伏せられてしまう。
そうなるともうイタズラ大好きなジュンイチの本領発揮だ。額に『肉』の字はもちろんのこと、まるで正月に羽根突きで惨敗したお父さんのように顔中に落書きをされてしまうことになる。
ちなみに現在の被害トップは傍らでため息をついているシグナムだ。中でも顔一面に『オンドゥルルラギッタンディスカーッ!』と朱記された彼女の写真は、ささやかな贈り物としてはやての端末に進呈されたとかされなかったとか。
この訓練メニューが決まった際、隊舎の購買でジュンイチが嬉々として油性マジックを買い込んでいたとの目撃情報があり、しかもそのマジックというのがジュンイチがこの訓練で落書きに使っているものと同一だという説もあるが――誰も確認はしていない。というか確認するのが怖すぎる。
ハッキリ言って“彼のシュミ”以外の何ものでもない――しかし必要性が実証され、しかも実際に効果も出ているがために却下するための正当な理由もない。
部隊長が(不名誉な意味で)蚊帳の外のため、この訓練がなくなることはしばらくないだろう――それがこの訓練を課せられている全員の統一見解だった。
「…………楽しそうだな」
「あぁ」
恭也の木刀を篭手によってガード。しかし体重と基礎筋力の差の前に敗れ去る――防御の上から宙を舞うヴィータの姿を見守りながら、アインはシグナムの問いにあっさりとうなずいた。
「ヴィータが夫に打ちのめされるのが、か?」
「ヴィータが夫によって鍛え上げられていくのが、だ」
告げるシグナムに、それが冗談とわかっているアインは気分を害することなく受け流す。
「本質はあくまでプログラムである我々だが、怪我をすれば血を流す。食事もすれば眠りもする――その存在は人間と変わらない。
そしてそれは――この訓練においても証明される。訓練によって成長する“命ある存在”であると教えてくれる」
「…………ふむ……」
その言葉に、シグナムは再びヴィータへと視線を向けた。
飛行魔法は禁止だが、だからといって何もできないわけではない。空中で体勢を立て直し、着地しようとするが――すでにそこには恭也が飛び込んでいた。放たれた鋼糸が瞬く間に彼女を拘束する。
勝負あり――息をつき、シグナムは告げた。
「よかったな。
“額に『肉』の刑”は免れたぞ」
「素直に喜べねぇよ。負けたことには変わらないんだからな」
告げるシグナムにヴィータが答え――
「そうだな。喜ぶべき問題ではないだろう」
言って、恭也は懐を探り、
「結局、“刑”は免れないのだから」
恭也が楽しそうに取り出したもの――油性マジックを見て、全員が思った。
“あの弟分”にして“この兄貴分”ありか、と。
「ちーっす」
「あ、ジュンイチさん」
デバイスのメンテナンスルーム――やってきたジュンイチに気づき、シャリオは笑顔で振り向いた。
「オーガさんのお迎えですか――痛っ!」
「ブレインストーラーのメンテナンス頼んだとたん、精霊石を外すのすら待たずに拉致った本人のセリフじゃねぇぞそれ」
告げるその額にデコピン1発。ジュンイチはシャリオの向き合っていた作業台へと視線を向ける。
ブレインストーラーはカバーと若干の部品が取り外されている。経過時間と作業台の汚れ具合から分解、洗浄を終えて組み立てている最中だったのだろうと推測する。
そして、そのとなりにはまるで喜んでいるかのように輝きを放つ真紅の精霊石――
「無事か? オーガ」
《なんとかな》
答える声にあわせて精霊石が明滅する。
《というより完全に無視された。
彼女はずっとブレインストーラー本体にかかりきりだったからな》
「このメカフェチが……」
「AIバイクに愛情注いでいる人がそれを言いますか……?」
うめくジュンイチに額を押さえたまま答え――シャリオは尋ねた。
「それより――大丈夫なんですか?」
「何が?」
「聞きましたけど、食堂の一件」
その言葉に――ジュンイチの動きが止まる。
「叱られるの、間違いなくジュンイチさんだと思いますよ。
それとももう叱られました?」
「言うな。
どうやってはやての機嫌をとろうか真剣に考えてんだから」
言外に「お説教はまだだ」と告げていた。
「だいたい、何でブッ飛ばしたなのは達がお咎めなしで、オレばっかり叱られなくちゃならんのだ……?」
「原因になる発言は間違いなくあなたが放ったものだから、でしょうね」
先ほど訓練のために充填済みの予備カートリッジを取りに来たなのはの愚痴を思い出す。
久しぶりに規模の大きなオシオキだった。これならさすがのジュンイチも自分の失言に思い当たるだろう――
「そっか?
恭也さんとアインのラブラブっぷりに文句を垂れたのがそんなに気に入らなかったのかな……?」
訂正。
まったくわかっていなかった。
「もう……
そんなだから、アインさんのマスター、貴方に指名されたんですよ……」
「………………?」
つぶやくシャリオの言葉に、ジュンイチは怪訝な顔で振り向いた。シャリオの組み立て途中だったブレインストーラーを仕上げながら。
「わかりませんか?
アインさんのマスターになれば、基本的に行動を共にすることになります」
「だな」
「そしてそのアインさんは恭也さんとゴールイン」
「おかげで四六時中あてられてるよ」
「そこです」
答えるジュンイチの言葉に、シャリオはすかさず食いついた。
「その“あてられる”状況を作りたくて、みんなはアインさんのマスターを貴方にしたんですよ」
「どういうことだよ?」
「だから……」
未だにわからないでいるジュンイチにため息をつき、シャリオは告げた。
「ラブラブの手本として恭也さんとアインさんを見せつけることで、ジュンイチさんのその鈍感が治るんじゃないか、とみんなは期待しているんですよ」
「………………鈍感なのか? オレは」
「鈍感です」
心底意外そうに聞き返すジュンイチに、シャリオは力強く断言する。
「ルックスはまずまず、資産は最上級、性格に多大な問題があるものの、守ってくれる保障は文句なし――恭也さんが既婚となった今、ジュンイチさんを狙ってる女性は多いんですよ」
「そうなのか……?
ンなコト言われても、心当たりなんぞひとつも……」
「でしょうね。
みんなが一致団結して何とかしようと乗り出すくらいに鈍感なんですから」
しきりに首をひねるジュンイチに答え、シャリオはため息をひとつ。
(せっかく二人っきりなのに、ちっとも意識してくれないのがいい証拠です)
頬を膨らませてそんなことを考えるが――口には出さない。どうせ出したところで通じないのだから。
どうやら、ジュンイチが“フラグジェノサイダー”の称号を返上するのはまだまだ先になりそうだ――そんなことを考えながら、シャリオはジュンイチに工具を手渡した。
「………………?」
その日の仕事も無事終了――訓練の汗を流し、隊舎の正面口にやってきた恭也は、そこに一緒に帰るはずの相手がひとりしかいないことに眉をひそめた。
「アイン、ジュンイチはどうした?」
「マイスターはやてに捕まった」
すぐに答えが返ってきた。
「食堂の件の説教だ。
『遅くはならないと思うが一応自分の食事はナシの方向で。最悪の場合は隊舎の仮眠室に泊まる』とのことだ」
「そうか……」
同時、二人が確信する。
今夜、ジュンイチは仮眠室ではなく、誰かしらのところに泊まることになるだろう、と。最有力は八神家か。説教が終わって夕食に誘われ、そのまま――といった流れが容易に想像がつく。
その最中に自分の妹やその友人が乱入すればまだわからないが……いやいや、その争いに乗じて妹の教え子のどちらかが……などと考えながら、恭也はつぶやいた。
「なかなかにカオスだな」
「つい先日までは恭也の周囲もそうだったんだぞ」
実際は今もだが――あきらめきれずにいる女性達、代表格として海鳴の“自称『内縁の妻』”のことを思い出すが、恭也を想う気持ちは彼女自身よくわかるので言及はしない。自らの中だけであっさりと自己完結し、アインは肩をすくめながら恭也にそう答えた。
「なぁ、恭也……」
「ん?」
夕食も入浴も済ませ、寝室で二人きり――唐突に口を開いたアインに、恭也は近しい者にしか――“家族”と認めた人間にしか見せない、優しげな笑顔で振り向いた。
「今日――訓練の時にシグナムと話していたのだが……」
「聞こえていた。
『自分達の本質はプログラム。だが訓練し、成長することで人間と同じ存在だと実感できる』だったか」
「あぁ……」
恭也の言葉にうなずき、アインは続ける。
「恭也、お前には本当に感謝している。
お前はいつも、私達が“人”であると教えてくれる。
“人”としての幸せを、私達に与えてくれる……」
「当然だ」
その言葉に、恭也は笑いながら答えた。
「お前達は“人”だ。
その身体がどれだけ人間と違おうと――それは決して覆せない事実だ」
言って、となりの妻を優しく抱き寄せる。
「だがな――ひとつだけ、訂正させてもらってもいいか?」
「何………………?」
そして――告げる。
「お前は『私“達”に幸せを与えてくれる』と言うが……」
「オレが幸せを与えたいのは、お前だけだ」
「…………まったく、恥ずかしいセリフを平然と……」
「これでも恥ずかしいのをガマンしているんだ」
顔を真っ赤にして縮こまる様子がかわいくて、恭也はそう答えるとアインを抱きしめて――夫婦の夜はふけていくのだった。
翌日、二人で出勤した恭也とアインは額に氷のうを乗せた状態でダウンしているジュンイチの姿を目撃することになる。
スバルとギンガ――ナカジマ姉妹がどこかうれしそうに彼を介抱し、なのは達がそれをうらやましそうに眺めている姿から昨夜の顛末を察すると、恭也はとなりのアインにもうひとつの懸念をぶつけた。
「そういえば……昨夜はリンクを切っていたのか?」
「………………あ」
その日、なぜか恭也とアインはナカジマ姉妹から豪勢な食事をおごってもらうこととなるのだが――
なぜ感謝されたのか――その真相が明かされ、それが新たな火種となるのは、まだ先の話である。
あとがき
最初に。
この『奥様はマジョ?』シリーズはそれぞれが独立したパラレルワールド的な物語です。
歴史上の大まかな流れは共通していますが、カップリングの差異によって各作品ごとにキャラクターの立場に若干の変更が生じております。
……よし! 前2作でアインが出てない言い訳終了っ!(爆笑)
そんなワケで本題。
「恭也×リインフォース・アイン編」です。今回はあまり甘くないです。強いて言うならビタースウィート。
お互いクール系なのであまり甘くならないのが困りモノ。『甘々バカップル』がこのシリーズのテーマなのに、なんてこったい。
『なのブレ』本編でも生存させる気マンマンなアインさん。リンカーコアのランクの低い恭也と添い遂げさせるにあたり、彼女の存在を維持するための魔力タンクとしてジュンイチが人身御供になりました(笑)。
本編では誰が“魔力タンク”になるかはわかりませんが、本作においては「ちょっとは色恋のノウハウを学べやこの鈍感野郎」という女性陣の策謀によってジュンイチが推された形です。
さて、そのジュンイチですが――今回は恭也とアインにあてられて余裕があまりありません。よほどテンパっているのか、どう考えても言っちゃマズイ失言が飛び出してます。
『珍獣』呼ばわりされたなのは達にブッ飛ばされても文句は言えません。アーメン。
まぁ、そんな彼も、恭也とアインが原因でラストにいろいろあったようなので、意外と身を固めるのは早いかもしれませんが(苦笑)。
その一方で今回『奥様はマジョ?』に初登場となったイクトとシャーリー。登場するなり二人そろってジュンイチの鈍感っぷりに頭を悩ませる役どころなあたりはこの二人ならではでしょうか。
特に『なのブレ』『ブレイカー』両本編において、ジュンイチの前に巨大な壁として現在進行形で立ちはだかっているイクトくん。仲間になってもこんな立ち位置とは不憫なことです。強く生きてください(笑)。
(初版:2007/10/19)