海鳴市中心部、その地下深く――
 誰も知る者のないその空間に、彼女はいた。
「……集まって、機界四天王」
 そう告げると同時、あちこちの壁が盛り上がると分裂、人間の形へと変わった。
「ポロネズならここにおります」
「プリマーダ、もう待ちくたびれましたわ」
「ピッツァ、只今到着しました」
「ペンチノン、すぐにでも出航可能です」
 目の前に勢ぞろいした4人を前に、彼女は尋ねた。
「あの黒いロボットは――間違いなく、『マジカルメカノイド』だよね?」
「おそらくは」
 答えるのはポロネズだ。
「しかし、あのゴミを寄せ集めたロボットは弱すぎたわね」
「核となる地球人の選択も甘かった。
 せっかく確保したジュエルシードを、こちらに持ち帰ることもせずに暴走するとは……」
「そんなことはいいの」
 先日の自分達の尖兵――EI-02について語るプリマーダとピッツァを、少女は制止した。
「問題はこれから。
 次の手を思いついてる人はいる?」
 その少女の問いに答えたのは――
「お任せください」
 ペンチノンだった。
 と、その姿が変化し――水兵のような姿に変化したペンチノンは告げた。
「今度の人間は、とびきり凶暴なヤツですぞ。ウィィィィィッ!」

 

 


 

第2話
「赤・青・緑の宝石なの」

 


 

 

「ジュエルシードは、ボクらの世界の古代遺産で、あらゆる生命体の精神に強く反応する特性を持った、エネルギーの結晶体なんだ」
 都庁前での初めての戦いから一夜が明け、なのは達は高町家・なのはの部屋に集合し、そこでユーノからの説明を受けていた。
 改めて行われた自己紹介もすでに終わり、なのはの要望によってユーノは敬語で話すことをやめていた。
「本来は、その“力”で手にした者の願いをかなえる、魔法の石なんだけど、“力”の発現が不安定で、昨日みたいに暴走することもある。
 一体何があったのかはわからないけど……昨日のアレは、取り込まれていたあの人の願いを拡大解釈して、暴走したんだと思う……」
「そんな危ないものが、どうしてウチのご近所に?」
 尋ねるなのはに、ユーノは答えた。
「……ボクの、せいなんだ……」

「……いいのかい?」
 機界四天王が去った後、少女に尋ねる声があった。
「どこの馬の骨とも知れない、あんなヤツらをアテにして……」
「けど、母さんが私の助けに、って預けてくれた人達だし……」
「だけどねぇ……」
「大丈夫だよ」
 そう断言し、少女は告げた。
「私にも、マジカルメカノイドはあるんだから」

「小宝山金造。東京都庁出入りの建設業者ですが、不正入札で取引停止になっています。
 そのため会社は倒産、一家離散。どうもその頃から東京を離れ、あの海鳴のゴミの島に住み着いたようです」
 入手した、EI-02に取り込まれていた男のプロフィールデータに目を通し、ノエルはよく通る声でそう報告した。
「逆恨みで都庁を破壊しようとしたのね……
 それで、EI-02との関係は?」
「あ、それはボクが逆行催眠で彼の記憶をたどってみました。
 エイミィ、映像を」
「はいはい♪」
 リンディに答え、クロノはエイミィにその時の映像をメインスクリーンに投影してもらった。
〈4人の、機械人間が……オレに、『復讐するなら力を与えてやる、代わりに我らの探し物を手伝ってもらう』と……
 ――そ、それは何だ!? ぅわぁぁぁぁぁっ!〉
「……以上です。
 最後に、ボクの魔法で記憶の映像を引き出してみたところ、問題の機械人間の姿はありませんでしたが、これが……」
 言って、クロノが表示したのは、とある競馬レースの映像だった。
「これは?」
「おそらく、彼が倒産を回避しようと最後の賭けに出て、大負けした時の競馬の馬だと思われます。
 彼が賭けていたとされる馬と、映像の馬の特徴が84%一致します」
 答えるノエルの言葉に、リンディは思わず考え込んだ。
「あのEI-02の頭部は馬の形を模していた……
 素体とされる人間の感情や経験に、影響される、ということね……」

「ボクは故郷で、遺跡発掘を仕事にしているんだ。
 そしてある日、古い遺跡の中でそれを見つけて……調査団に依頼して、時空管理局に保管を要請したんだけど、運んでいた時空間船が、事故か、何らかの人為的災害にあってしまって……
 結果、21個のジュエルシードが、この世界に散らばってしまった……」
「え?
 ちょっと待ちなさいよ」
 ユーノの説明に首をかしげ、待ったをかけたのはアリサだった。
「その話だと、別にアンタは何ひとつ悪くないんじゃない?」
「けど……アレを見つけてしまったのはボクだし、何とか回収して、あるべき場所へ戻さないと……」
 アリサの問いにユーノはうつむき、つぶやくように答える。
 そんな彼の様子を見かね、なんとか元気づけようとレンが口を開――くよりも早く、なのはが告げた。
「なんとなく、だけど……ユーノくんの気持ち、わかるかな……
 マジメなんだよね、ユーノくんは」
「え………………?」
 なのはの言葉に、思わず声を上げるユーノだったが、気を取り直して説明を続けた。
「え、えっと……だから、ボクはギャレオンと一緒にこの世界に来たんだけど、時空間から出ようとした瞬間、転移魔法にトラブルが起きて……気がついたら、ギャレオンとは離れ離れになって、この世界に……」
「あ、そうだ。
 ギャレオンって……あのライオンのロボット、だよね……? あれはそもそも何なの?」
 ユーノの話に、ギャレオンのことを思い出したすずかが興味を抱いて尋ねる。
「ギャレオンは、レイジングハートと同じように、ボクの一族に代々受け継がれてきたものなんだ。
 ジュエルシードと同じ、ボクらの世界の古代遺産だったらしいけど……詳しいことは、長いスクライアの歴史の中でわからなくなっちゃったみたい」
 すずかの問いにユーノが答えると、そんな彼に晶が尋ねた。
「それで? この後ユーノはどうするんだ?」
「え? えっと……」
 突然の問いに、ユーノはしばし考え、
「……昨日は巻き込んでしまって、助けてもらっちゃって、本当に申し訳なかったけど……この後、ボクの魔力が戻るまでの間、ほんの少し、休ませてもらいたいけど……
 一週間、いや、5日もあれば力は戻るから……」
「戻ったら、どないするんや?」
「またひとりで、ジュエルシードを探しに出るよ。
 ギャレオンもこの世界に無事到着しているのもわかったし、なんとかなると思う」
 レンにそう答えるユーノだが――
「それはダメ」
 優しく、だがキッパリと告げたのはなのはだった。
「だ、ダメって……」
「私、学校と塾の時間はムリだけど、それ以外の時間なら手伝えるから」
「だけど……昨日みたいに、危ないことだってあるんだよ?」
 尋ねるユーノだったが、なのははかまわず答えた。
「だって、もう知り合っちゃったし、話も聞いちゃったもん。ほっとけないよ。
 それに、昨日みたいなことがご近所で度々あったりしたら、みなさんのご迷惑になっちゃうし、ね?
 ユーノくん、ひとりぼっちで、助けてくれる人、いないんでしょ?――ひとりぼっちは寂しいもん。私達にも、お手伝いさせて」
 そう言うと、なのはは笑って、
「『困ってる人がいて、助けてあげられる力が自分にあるなら、その時は迷っちゃいけない』――って、これ、うちのお父さんの教え。
 ユーノくんは困ってて、私は……」
 そこで一度言葉を切り――なのはは訂正した。
「私達は、ユーノくんを助けてあげられるんだよね? 私は魔法の力で、みんなも、それぞれの力で……
 私、ちゃんとした魔法使いになれるかどうか、ちょっと、自信ないんだけど……とりあえず、いろいろ教えてくれればがんばれるから」
 その言葉に、ユーノはなのはだけでなく、アリサやすずか、レンに晶――他の面々にも視線を向ける。
 みんな、自信タップリにうなずいてみせる。どうやらなのはと気持ちは同じらしい。
 だから――ユーノは頭を垂れ、一同に告げた。
「………………ありがとう」

〈只今より、『デスマッチ王座決定戦・時間無制限1本勝負・地上100m時限爆弾ノーロープ有刺鉄線電流爆破マッチ』を行います!〉
「………………試合名、長……」
 会場に響いた実況のアナウンスに、相川真一郎は思わずつぶやいた。
 視線を動かし、となりでなんとなくワクワクしている保護者に尋ねる。
「真雪さん、なんでこんなののチケット持ってたんですか?」
「いや、知り合いから何の気なしにもらっちゃってさぁ。
 なんかおもしろそーだから、ね」
「で……なんでオレを?」
「耕介は寮の仕事で来れないって言うし、愛はこーゆーの好きじゃないし、寮の子達にこんな血なまぐさいものは見せられないし」
「オレならいいんですか?」
「あの忍者とオトモダチやってるんだ。血には慣れてるだろ?」
「うーん……」
 その説明に、なんとなく釈然としないものはあったが――ヘタに反論しようものなら我が身が危ない。真一郎はため息をつくしかなかった。

 だが、その試合を興味深そうに見ているのは彼らだけではなかった。
 水兵の姿に変身した、ペンチノンである。

「――――――っ!」
 突然その違和感を感じ、夕食を終えて部屋で休んでいたなのはは思わず飛び起きた。
「ユーノくん!」
「ジュエルシード――?
 ……ううん、この感じはジュエルシードじゃ……魔力ですらない。何なんだ……?」

 ペンチノンは試合中、仕掛けられた爆弾が爆発したのに紛れて行動を起こした。
 彼が言っていた『凶暴な人間』とは、この試合に出ていた悪役レスラーだったのだ。
 そして――彼の手によって、レスラーは機械人間と化し、会場設営のために置かれていたクレーン車と融合した。

「なのは、レイジングハートは!?」
「大丈夫!」
 ユーノに答え、なのはは懐からレイジングハートを取り出す。
 夜の街を走り、彼女達はレン、晶と共にレスラーが変化した巨大ロボット――EI-03の暴れ回る現場を目指していた。
 そして、彼女達は現場へと到着し、崩れ落ちたビル街を前に絶句した。
「またロボットになっとる……!」
「けど、やっぱりジュエルシードの力は感じない……
 昨日のヤツは、ジュエルシードだけが原因じゃなかったのか……?」
 声を上げるレンにユーノがつぶやくと、EI-03は粉砕したビルのひとつへと近づく。
 そして、しばしその場を見回していたが――やがて、ガレキの山の一角へとコードを伸ばした。
 そのコードに絡め取られ、ガレキの下から取り出されたのは――
「あれは……ジュエルシード!」
「アイツ、ジュエルシードを探してたのか!?」
 ユーノの言葉に晶が声を上げると、EI-03がこちらへと向き直る。
「なのは、レイジングハートの起動を!」
「え?」
「『我は使命を』から始まる、起動パスワードを!」
「えぇっ!?」
 ユーノの言葉に、なのはは思わず声を上げた。というのも――
「あんな長いの、覚えてないよぉっ!」
「もう一回言うから、繰り返して!」
 だが、そんなことをしている間にも、EI-03は彼女達の頭上のビルへと狙いを定め――鉄球を放つ!
 ジュエルシードを取り込み、先ほどまでとは段違いにパワーアップした鉄球を受け、ビルがなのはに向けて崩れ落ち――

 その瞬間、レイジングハートが光を放った。
 瞬時にバリアジャケットが装着され、デバイスモードとなったレイジングハートがプロテクションを展開、頭上に降り注ぐガレキを弾き飛ばす!
「き、起動パスワードもなしに、レイジングハートの起動を……!?」
 驚き、つぶやくユーノだが、なのははかまわずユーノを肩の上に乗せ、
「晶ちゃんとレンちゃんは、周りの人達と避難してて!」
 そう言うと、なのはは周りに降り注いだガレキの上へと登っていく。
 そして――彼女はレイジングハートをかざし、叫んだ。
「ギャレオン!」

 その叫びは、すでにEI-03の出現に反応し発進していたギャレオンへと届いた。一際高く咆哮し、現場に向けて加速する。
 そして――なのはの頭上に、ギャレオンが降り立った。

「フュー、ジョォォォォォンッ!」
 叫んで、ユーノを肩に乗せたなのはは大きく跳躍、それを追ったギャレオンが彼女を飲み込むようにその口の中に収めると、ギャレオンはそのまま変形を開始した。
 ギャレオンの頭部が動き、人の姿をした顔が現れ、前足の爪が収納されて手首が現れ、腰が回転し、立ち上がる。
 そして、額のGストーンが輝き、ギャレオンと一体になったなのはが名乗りを上げた。
「ガイ、ガー!」

「えぇいっ!」
 フュージョンを完了し、なのははガイガーをEI-03へと突っ込ませた。そのまま蹴りを打ち込むが、バリアシステムに阻まれ、弾かれる。
 続けてガイガークローでさらなる攻撃を加えるが、やはりバリアシステムを打ち破れず、逆に鉄球の一撃を受けて弾き飛ばされる!
「こ、このままじゃ……!
 ユーノくん!」
「うん!」
 うめくなのはに答え、ユーノはガイガーに――ギャレオンに告げた。
「ギャレオン、ファイナルフュージョンの要請を!」

「ガイガーから、ファイナルフュージョン要請シグナルです!」
「ノエルさん、現時点での、ファイナルフュージョンの成功率は!?」
 エイミィからの報告にノエルへと尋ねるリンディだったが、
「合体プログラムの修正が不完全のため、30%程にとどまっています。
 もし失敗すれば、ガイガーも中に乗っている方も危険です」
 ノエルの言葉に、リンディはしばし迷っていたが――
〈長官、承認を!〉
 そう告げたのは――
「クロノ!?」

「いっ、けぇぇぇぇぇっ!」
 咆哮と同時、クロノは『S2U』から閃光を立て続けに放ち、ガイガーへと追撃を加えようとしたEI-03を狙う。
 無論、生身のクロノの攻撃などEI-03には通じない――だが、牽制には十分だった。EI-03はクロノへと狙いを変更し、鉄球を放つ。
 それをかわし、クロノはリンディに告げた。
「ガイガーに乗ってる子は、0%に近い成功率の中でファイナルフュージョンを成功させたんです!
 だから……いけます!」

「……長官?」
 クロノの言葉に、忍はリンディの反応を待って視線を向ける。
 彼女だけでなく、エイミィやノエルからも視線を受け――リンディはつぶやいた。
「30%の成功率を100%に補う――それができてこそ、初めて勇者と言えるのかもしれないわね……」
 そして、リンディは宣言する。
「ファイナルフュージョン、承認!」
「了解です。
 ファイナルフュージョン、プログラム起動……どうぞ」
 リンディの言葉に、ノエルはコンソールを操作。ファイナルフュージョン・プログラムを立ち上げるとエイミィに合図を送る。
「OK!」
 そして、エイミィは答えて拳を振り上げ、
「ファイナルフュージョン、プログラム――ドラァイブ!」
 渾身の力で拳を振り下ろし、プログラムのドライブボタンを保護ガラスごと叩き押す!

「ファイナル、フュー、ジョォォォォォンッ!」
 なのはが叫び、ガイガーはその身を翻して高速回転。腰から電磁竜巻『EMトルネード』を噴出してバリアを作る。
 その中にガオーマシンが次々に飛び込んでくるとガイガーの周囲を飛び回り、それぞれが合体のための変形を開始する。
 まず、ドリルガオーのドリルが機体上部に30度ほどの角度まで起き上がり、姿を見せた内部スペースへと下半身を180度回転させたガイガーの両足が差し込まれ――
 ――ガキィッ!
 音を立て、ガイガーの足とドリルガオーが接触、弾かれる!
「なのは!」
 ユーノが思わず声を上げ――
「ゾンダァァァァァッ!」
 EI-03がEMトルネード内に突入してくる!
 そして、ガイガーに向けて鉄球を放ち――
「ジャマをするなぁっ!」
 クロノが叫び、立て続けに放たれた閃光『スティンガーレイ』が鉄球を迎撃、勢いの殺された鉄球をなんとかラウンドシールドで跳ね返す。
 そして、弾かれた鉄球はEI-03を直撃、バランスを崩したEI-03はEMトルネードに巻き込まれ、外へとはね飛ばされる。
「なのは! 続けるよ!」
「うん!」
 ユーノの言葉に答え、なのははガイガーのファイナルフュージョンを続行する。
 そして、再び合体形態となったドリルガオーが迫り、無事ガイガーの足に合体させる。
 そして、ドリルガオー内部でガイガーの足が固定され、左右に別れて両足に変形する。
 続いて、背中に腕が折りたたまれ、腕のあったスペースにライナーガオーが突入して固定される。
 ステルスガオーは背中にドッキングし、胸のライオンの補強パーツを脇の下をくぐらせて固定、ボディ周りの合体が完了する。
 キュイィィィィィィンッ!
 耳障りな音を立て、ステルスガオーのバーニアがスライドし、ライナーガオーから出てきた後腕部とドッキング。拳が回転しながら出てきて前腕部に。
 最後に、頭部にフェイスガードが合体し、額のGストーンとカメラアイが輝く。
 システムが起動し、合体を遂げたなのはが咆哮した。
「ガオ、ガイ、ガァァァァァッ!」

 合体を完了したなのは――ガオガイガーに向け、EI-03は鉄球を放つが、
「プロテクト、シェード!」
〈Protect-Shead〉
 なのはの言葉に、レイジングハートがプロテクトシェードを発動、叩きつけられた鉄球を受け止め、
〈Plasma-Hold〉
 さらに、その鉄球をプロテクトシェードのエネルギーでつかまえる。
(あ、あの衝撃をノーダメージで……!?)
 予想以上のなのはの“力”に、ユーノは呆然とするしかない。
「いたた……って言うほど痛くないけど……
 えっと……これでアイツは捕まえたから、次は……」
 敵の唯一の攻撃手段を捕獲し、なのははなんとなく落ち着いてきた頭で次の手を考え、
「……よぅし!」
 方針決定。ガオガイガーのパワーでEI-03を勢いよく引き寄せる。
 完全にパワー負けし、EI-03は宙を舞うようにガオガイガーの方へと飛ばされ――
「えぇいっ!」
 そのまま、なのははEI-03を力任せに振り回し、大地に叩きつける!
 続けて、なのははレイジングハートをかざし、ガオガイガーも同様に右手を頭上へかざし――その右腕が、側面の噴射口から噴出された推進ガスによって高速回転を始める。
 そして、なのははレイジングハートをEI-03に向けてかまえ、狙いを定める。
 そして――
「ブロウクン――!」
〈――Magnum〉
 放たれたブロウクンマグナムは、プラズマホールドで捕獲されていた鉄球を粉々に粉砕、そのままEI-03本体へと襲いかかるとその顔面を撃ち抜く!
(な、なんてパワーだ……
 やっぱりこの子、すごい才能を持ってる……)
 胸中でつぶやくユーノだったが、そうしている間にもEI-03は平然と立ち上がると破損した部分を再生させる。
「なのは!」
「うん!」
 ヤツを倒すには中枢核を抉り出すしかない――声を上げるユーノに答え、なのははガオガイガーをかまえさせた。

「ヘル、アンドぉ……ヘブン!」
 なのはの叫びに従い、ガオガイガーは両腕を左右に広げ――その右手にブロウクンマグナムの攻撃エネルギー、左手にプロテクトシェードの防御エネルギーが収束していく。
 それに伴い、G-Sライドも出力を上げていき、ガオガイガーの全身がGストーンの放つ緑色の輝きに包まれる。
「ゲル、ギル、ガン、ゴォ、グフォ……」
 なのはが呪文を唱え、ガオガイガーは両手を合わせ――相反するエネルギーの反発で新たな、そして莫大なエネルギーが発生、それはEMトルネードとなってEI-03の動きを封じ込める。
「いっけぇぇぇぇぇっ!」
 なのはの咆哮と同時、ガオガイガーは背中のステルスガオーからのバーニア噴射と両足のキャタピラによるローラーダッシュで突撃、EI-03の胸部――中枢核に諸手突きの要領で合わせた両手を叩き込んだ。
 とたん、ガオガイガーの手の中で荒れ狂っていたエネルギーが解放、攻撃エネルギーがEI-03の機体を内部からズタズタに引き裂くと同時、防御エネルギーが中枢核を捕獲する。
 そして、ガオガイガーはそのまま中枢核を抉り出し――
 ――ドガオォォォォォンッ!
 残されたEI-03の残骸が大爆発を起こした。

「えっと……封印っていうのをすればいいんだよね……?」
 抉り出した中枢核を前に、ガオガイガーから降りたなのははレイジングハートへと視線を向け、
「レイジングハート、お願いね」
〈All Right.
 Sealing-Mode, Set Up〉

 なのはの言葉に、レイジングハートはそう答えてシーリングモードへと移行する。
〈Stand by Ready〉
 準備が完了したことを告げるレイジングハートの言葉に、なのははレイジングハートをかざし、
「リリカル、マジカル!
 ジュエルシード、シリアルXVI――封印!」
〈Sealing〉
 なのはの呪文にレイジングハートが応え――放たれた波動が中枢核を包み込み、その力を鎮めていく。
 そして中枢核は形を変え――それが収まった後には、ペンチノンによって機械人間にされたレスラーの姿があった。
「ジュエルシード以外の力で、この人達は機械人間にされていたらしいね……」
「うん……
 どうなってるんだろうね、ユーノくん……」
 ユーノの言葉になのはがつぶやいた、その時――ふと、彼女を照らす月明かりが何かにさえぎられた。
 思わずなのはは顔を上げ――
「き、キミは……!?」
 彼女の頭上で月を背にして、クロノは呆然となのはを見下ろしていた。


 

(初版:2005/09/18)