「ようこそ、高町なのはさん――GGG本部基地へ」
 クロノに連れられ、司令室『メインオーダールーム』へと通されたなのはを迎えたのは、リンディからのあいさつだった。
「あなただったのね、ガオガイガーでEI-02、03を倒してくれたのは」
「は、はい……
 勝手に使っちゃって、ごめんなさい……」
 リンディの言葉になのはがそう謝罪すると、
「なのは!」
「なのちゃん!」
「え――?
 アリサちゃん、晶ちゃん……?」
 突然投げかけられた、ここにいるとは夢にも思っていなかった人物の声に、なのはは驚きながら振り向いて――さらに眼を丸くした。
「すずかちゃん、レンちゃんも!
 それに――」
「はぁい♪ なのはちゃん」
「忍さんまで!?」

 

 


 

第3話
「みんなを守る左腕なの」

 


 

 

「とりあえず、初めまして。
 私がこのGGGの長官をしている、リンディ・ハラオウンです」
「は、はい……
 高町、なのはです……」
 自己紹介するリンディに、なのはは恐縮しつつ一礼し、名乗る。
「とりあえず、事情を聞きたいんだけど……いいかしら?」
「あ、はい……」
 リンディの言葉に、なのははチラリと肩の上のユーノへと視線を向け――ユーノはコクリ、とうなずいた。

「なるほど……そういうことですか。
 あのロストロギア――『ジュエルシード』を発掘したのは、あなただったの」
 ユーノからなのは達が受けたのと同じ説明を受け、リンディは納得してうなずいた。
「は、はい……
 それで、ボクが回収しようと……
 けど、この世界に現れる時にトラブルが起きて、ギャレオンとも離れ離れになって……けど、あきらめるワケにもいかなかったから……」
「立派だわ」
「だけど、同時に無謀でもある」
 素直に告げるリンディに対して、現実的な問題を告げるのはクロノだ。
 と――なのはが手を挙げ、尋ねた。
「あの……『ロストロギア』っていうのは、何なんですか?」
「まぁ、『遺失世界の遺産』って言っても……わからないわね」
 そうつぶやくと、リンディは苦笑まじりにアリサやすずか、晶達にも視線を向け、その上で説明を始めた。
「次元空間の中には、いくつもの世界があるの。それぞれに生まれて、育っていく世界――
 その中に、ごく稀に進化しすぎる世界があるの。
 技術や科学――進化しすぎたそれらが、自分達の世界をも滅ぼしてしまって、その後に取り残された、失われた世界の危険な技術の遺産――」
「それらを総称して、ロストロギアと呼ぶ」
 そう付け加えると、クロノが説明を引き継いだ。
「使用方法は不明だが、使いようによっては世界どころか、次元空間すらも滅ぼすほどの力を持つこともある、危険な技術――」
「然るべき手続きを経て、然るべき場所に保管されていなければならない品物――
 あなた達が探しているロストロギア――『ジュエルシード』は、次元干渉型のエネルギーの結晶体。いくつか集めて特定の方法で起動させれば、空間内に次元震を引き起こし、最悪の場合次元断層さえも巻き起こすことのある、危険物――」
 再び説明はリンディに戻り、彼女は深刻な事実を告げる。
 と、そんな彼女にユーノが口を開いた。
「聞いたことがあります――旧暦の462年、次元断層が起きた時のこと……」
「前にもあったの?」
「その時は、『ジュエルシード』のせいではなかったんだけどね」
 そう晶に答えるクロノの表情は暗いものだった。
「あれは、ひどいものだった……」
「隣接する平行世界がいくつも崩壊した……歴史に残る悲劇――
 繰り返してはいけないわ」
 そう言うと、リンディは手元の抹茶に――角砂糖を放り込んだ。
 家が喫茶店ななのは達が絶句する中、平然と飲み干す――そんな彼女に、いち早く我に返った晶が尋ねた。
「そういえば……さっき、なのちゃんが倒したロボットのことを『EI-02』と『EI-03』って呼んでましたよね?」
「えぇ。
 『EI』とはExtra-Intelligenceの略で――」
「あ、いや、そこじゃなくて……
 『02』と『03』ってことは……『01』は……?」
 その言葉に、リンディの表情が曇った。湯呑みに視線を落とし、つぶやくように答える。
「EI-01は……行方がわからないわ。
 2年前――ジュエルシードが飛来した少し後に、この地球に彼らは現れたわ。時空間にまで歪みを生じるほどに強力なワープゲートを通って……
 そしてその際、突如飛来したギャレオンに迎撃されたそれは、いずこかへと姿を消した……」
「に、2年前ですか!?」
 そのリンディの言葉に、驚きの声を上げたのはユーノだった。
「リンディ長官、ジュエルシードとギャレオンは本当に2年前に現れたんですか!?」
「えぇ」
 うなずくリンディだが、ユーノの戸惑いは晴れない。
「だ、だって……ボクがこの世界に現れたのは、ついこの間のことなんですよ!」
「どういうことなん?」
 疑問の声を上げるレンに、リンディは少し考え、つぶやいた。
「おそらくは、あなた達を襲った『トラブル』の結果、あなたとギャレオンの出現した時間にもズレが生じたんでしょうね……その結果、あなたは時間を超えて、2年後の地球、つまり現在の地球に姿を現した……
 ともかく、EI-01によって地球外知性体の存在を知った国連は、その存在が自分達に敵意を持っていた場合を含めたあらゆる事態を想定し、異文明とのコンタクトを目的とした専門機関を設立したの――ジュエルシードに対処するためにこの世界に現れた我々時空管理局と接触したのも、その一環よ。
 そして、悪意ある異文明に対する防衛組織として、日本政府を主導とした防衛組織『GGG』を設立し、私達をその任につかせたの。
 本当は自分達の政府の中からスタッフを選びたかったようだけど……そうなると政治的な駆け引きが先行して思うように動けなくなる可能性があったのでしょうね」
「同時に、異文明との接触のエキスパートであるボクら時空管理局がもっとも適任だという声も上がったらしい。
 こっちにしてみれば、体よく厄介事を押し付けられたようなものだけどね」
「まぁ……そういう思惑があったのも、たぶん事実でしょうけどね。
 どちらにせよ、私達としても時空に影響を与えるほどのワープゲートを使用する彼らを放ってはおけないわ。ジュエルシードの飛来と時期が重なったことでその関連も考えられたし……
 だから、これはむしろ渡りに船だったわ。結局その話を受け、私達はジュエルシードの回収とEIナンバーへの対応を行うことにしたの」
 ムッとしながら付け加えるクロノに、リンディは笑顔でそう答える。
 そして――すぐに表情を引き締めると、リンディはなのは達に告げた。
「これより、ロストロギア『ジュエルシード』の回収とEIナンバーへの対応については、私達GGGと時空管理局が全権を持ちます」
「キミ達は、今回のことを忘れて、それぞれの世界に戻って、元通りに暮らすといい」
「え?
 で、でも……」
 リンディとクロノの言葉に思わず反論しようとするなのはだったが、そんな彼女にクロノは向き直り、告げた。
「次元干渉に関わる事件だ。民間人に介入してもらうレベルの話じゃない」
「そ、そんな……けど……」
「まぁ、急にそんなことを言われても、気持ちの整理がつかないでしょう」
 戸惑うなのはに告げ、リンディは一同を見渡し、
「ゆっくり考えて、みんなでよく話し合って、それから改めてお話をしましょう」
「は、はい……」

「また失敗、だね……」
「申し訳ございません。
 あの黒いロボット、まさかあそこまで強いとは……」
 告げる少女に、ペンチノンは静かに頭を垂れた。
「ですが、次は必ず――」
「私めにひとつ策がございます」
 言いかけたペンチノンの言葉をさえぎり、一歩前に歩み出たのはポロネズだった。
「いくらジュエルシードを発見しようと、あの黒いロボットに奪われては元も子もありません。
 そこで、まずはあの黒いロボットの排除を優先すべきかと」
「……具体的には?」
 少女の問いに、ポロネズは自信に満ちた口調で答えた。
「人口密集地でゾンダーロボを暴れさせるのです。
 あの黒いロボットは当然街を守るために動きを止めざるを得ません。そうなればゾンダーロボのいい的でございます。
 無論、黒いロボットが守ってくれる以上、ヤツが健在な限り街の安全は保証されます。後はヤツが倒れた後に我らがゾンダーロボを使い、ジュエルシードを回収すれば……」
 その言葉に、少女はしばし考え――答えた。
「……街への被害は最小限に留めること。これが絶対条件だよ」

「よかったの? クロノ……」
「正直、ギャレオンとのシンクロはインテリジェントデバイスを持っている彼女の方が適していると思うけど……」
 なのは達を帰した後、尋ねるリンディにクロノはそう答え、視線を落とした。
 EI-02の中で出会った時から、さっきまで――なのはの数々の表情が思い返される。
「けど……あの子は、関わらせたくない。
 あの子は、こんな戦いの中にいていい子じゃないから……」
「そうだよねー」
 その言葉に、エイミィはコンソールに向かいながら答えた。
「あの子、クロノくんの好みっぽいカワイイ子だったもんね」
「え、エイミィ!」
「あ、クロノくんってなのはちゃんみたいな子が好みなの?」
「忍さんまで!」
 忍にまでからかわれ、クロノは真っ赤になってそっぽを向き、
「そ、それより、ガオーマシンの修理と、合体プログラムの方はどうなってるんですか!?」
「あぁ、そっち?
 修理の方はほぼ完了。プログラムの方は……ノエル待ちかな?」
「そう……できるだけ急いでくださいね」
 答える忍に告げ、リンディは手元にそのデータを表示した。
 先の2戦における、ガオガイガーの機体ダメージの報告とその画像データである。
 戦闘によるダメージではない――合体によるダメージである。
 合体プログラムがまだ完全なものではなかったため、機体に対衝撃システムの限界を超えた衝撃が加わってしまっていたのだ。
「いつまでも合体が不完全なままでもいられないものね。
 今後どうなるかはわからないけど……あのギャレオンにフュージョンする人を、いつまでも危険にはさらせないもの」

「ずいぶんと気の利いた作戦だな」
 解散し、さっそく実行に移そうと出発するところだったポロネズに、突然現れたピッツァは静かに声をかけた。
「人間達の被害など、我らにとっては瑣末なこと」
「しかし、あの小娘にとっては重要なこと。
 あぁでも言わねば、この作戦に許可は出してはくれまいよ」
 そう言うと、ポロネズは床に溶け込み、姿を消した。
 そして、ひとり残されたピッツァはポツリとつぶやいた。
「……確かに、我らの『真の主』の望みが叶えば……
 彼女は、知らないままでいることが何よりの幸せかもしれんな……」

 結局あの後はそのまま解散となり、なのは達は休日に改めて集合、今後のことを話し合うことにした。
「それで……なのちゃん、どうする?」
 さっそく切り出した晶の問いになのはは少し考え、告げた。
 あの日から、自分なりに考えてきた、その答えを。
「わたしは……やっぱり、放っておけないよ……
 やっぱり、事情を知っちゃったし、もう関わっちゃったし……『民間人』ではあるけど、『無関係』じゃないよ」
「けど、それをどうやって納得させるの?」
 そう一番の問題を切り出したのはアリサだ。
「あのリンディさんはともかく、クロノくんって人は頭カタそうだったからねー」
「うーん……」
 アリサの言葉になのはが考え込む。
 だが――答えは出なかった。

 一方、海鳴へと続く線路の上を疾走する者がいた。
 真紅に輝く機関車である。
 そして、その後を追う者もいた。
 クロノの乗る、ライナーガオーである。
 GGGの彼がライナーガオーで追う相手。つまりこの機関車は――
「何のつもりかは知らないが――逃がさないぞ、EI-04!」
 叫び、クロノはライナーガオーで機関車――EI-04へと追いつき、連結器で捕まえるとブレーキをかけ、減速させる。
 だが、機関車は触手で連結器を弾き飛ばすと、自身の身体を変化させ――ロボット形態となってクロノの前に立ちふさがった。

「――――――っ!」
 その気配を感じ取り、なのはは顔を上げた。
「あのロボットの感じだ!」
「EIナンバーか!?」
 声を上げるなのはに晶が声を上げ――なのはは迷わず立ち上がり、部屋を飛び出していく。
「な、なのは!?」
 あわててユーノは窓から飛び出すと屋根伝いに玄関へと先回りし、出てきたなのはの肩へと飛び降りる。
「今キミが行ったって、きっとギャレオンは――」
「わかってる!
 きっとクロノくんが使ってる!」
 声を上げるユーノに答え、なのははそれでも迷わず走り続ける。
「だけど――レイジングハートはまだわたしが持ってる!
 何もできないかもしれないけど……何かできるかもしれない!」

「く………………っ!」
 EI-04が両手から放った石炭状の散弾をかわし、クロノの駆るガイガーは身をひるがえして着地した。
「やっぱり、ガイガーのままじゃ……!
 長官!」

「忍さん!?」
「機体の修理は万全、プログラムも更新済み!」
 尋ねるリンディに、忍はそう答えてサムズアップ。自信のほどをアピールする。
 そして、その言葉にうなずくと、リンディは高らかに宣言した。
「ファイナルフュージョン、承認!」
「了解です。
 ファイナルフュージョン、プログラム起動……どうぞ」
 リンディの言葉に、ノエルはコンソールを操作。ファイナルフュージョン・プログラムを立ち上げるとエイミィに合図を送る。
「OK!」
 そして、エイミィは答えて拳を振り上げ、
「ファイナルフュージョン、プログラム――ドラァイブ!」
 渾身の力で拳を振り下ろし、プログラムのドライブボタンを保護ガラスごと叩き押す!

「ファイナル、フュー、ジョォォォォォンッ!」
 クロノが叫び、ガイガーはその身を翻して高速回転。腰から電磁竜巻『EMトルネード』を噴出してバリアを作る。
 その中にガオーマシンが次々に飛び込んでくるとガイガーの周囲を飛び回り、それぞれが合体のための変形を開始する。
 まず、ドリルガオーのドリルが機体上部に30度ほどの角度まで起き上がり、姿を見せた内部スペースへと下半身を180度回転させたガイガーの両足が差し込まれて固定、左右に別れて両足に変形する。
 続いて、背中に腕が折りたたまれ、腕のあったスペースにライナーガオーが突入して固定される。
 ステルスガオーは背中にドッキングし、胸のライオンの補強パーツを脇の下をくぐらせて固定、ボディ周りの合体が完了する。
 キュイィィィィィィンッ!
 耳障りな音を立て、ステルスガオーのバーニアがスライドし、ライナーガオーから出てきた後腕部とドッキング。拳が回転しながら出てきて前腕部に。
 最後に、頭部にフェイスガードが合体し、額の結晶体『Gストーン』とカメラアイが輝く。
 システムが起動し、合体を遂げたクロノが咆哮した。
「ガオ、ガイ、ガァァァァァッ!」

 合体の完了と同時、EMトルネードが吹き散らされ、ガオガイガーがEI-04の前にその姿を現す。
「いくぞ、EI-04!」
 叫んで、かまえるクロノだが、EI-04は彼に向けて石炭弾を放つ。
「そんなもの!」
 対して、プロテクトシェードで防御しようとするクロノだったが、弾かれた石炭弾は街へと降り注ぎ、火災を巻き起こす!
「しまった!
 プロテクトシェードじゃ……!」
 この防御では弾かれた石炭弾が街に被害を及ぼしてしまう――クロノはとっさにプロテクトシェードを解除し、その身で石炭弾をガードする。
 だが――いかにガオガイガーの装甲が頑強でも、くらい続けていればダメージは蓄積される。それでも、クロノにはこのまま耐え続ける以外に選択肢はなかった。

「あぁっ!」
 現場に到着したなのはも、クロノが置かれている危機を目の当たりにしていた――ガオガイガーが成す術もなく釘づけにされているのを見てなのはが声を上げる。
「どうしたんだ……!?」
「きっと、プロテクトシェードだと、あの弾を弾いて街に落としちゃうから……」
 つぶやくクロノに答え、なのははウェイトモードのレイジングハートへと視線を落とし、
「なんとか、しないと……
 このままじゃ、クロノくんが……!」
「けど、どうやって……?」
 尋ねるクロノに、なのははしばし考え――告げた。
「なんとか、なるかもしれない……」

「くっ、こっちが動けないからって……!」
 どうすることもできないままに敵の攻撃を受けるしかなく、クロノがうめくと、
「クロノくん!」
 そんな彼の元に届いた声は――
「――なのは!?」
 驚きの声を上げ、クロノが見上げたその先に、バリアジャケットを装着し、両足の靴から飛行用の光の翼『フライヤーフィン』を展開したなのはが肩の上にユーノを乗せて飛来した。
「どうして来たんだ!
 もう手を引けと、そう言っただろう!」
「言われたけど……やっぱりほっとけないよ!」
 声を上げるクロノに、なのはは毅然と言い返す。
「わたしにだって、できることはある!
 だから、できることをしたいの!」
 言って、なのははレイジングハートをかまえ、
「レイジングハート、お願い!」
〈All right.
 Dividing-Driver, Set up!〉

 なのはの言葉にレイジングハートが答えると同時――放たれた光がガオガイガーの左手に収束、巨大なマイナスドライバー型のツールが装着される。
「物質形成……!? それも、こんな巨大なものを……!?」
「なんて魔力なんだ……!」
 巨大なガオガイガーのツールを増幅媒体もなしに具現化させた、なのはの持つすさまじい魔力キャパシティを目の当たりにし、クロノやユーノは驚いてつぶやくが、
「クロノくん、それで!」
「あ、あぁ!」
 かまわず叫ぶなのはの言葉に我に返り、クロノは上空へと上昇し、
「ディバイディング、ドライ、バァァァァァッ!」
 咆哮と共に急降下、大地に左手のツールを――ディバイディングドライバーを突き立てる!
 とたん、ディバイディングドライバーの先端から光があふれた。それは街を疾走、EI-04の真下を駆け抜け――消える。
 すると突然、大地が震えた。
 地震ではない――突如大地が割れ始め、その振動で地震が起きているのだ。
 地割れはしだいに広がり、EI-04を中心に巨大なクレーターを作り出した。

「あれは……!?」
 その光景はメインオーダールームにいるリンディ達も目の当たりにしていた。突如として出現した巨大な穴を前に、リンディは思わず声を上げ――我に返ってエイミィに尋ねた。
「街への被害は!?」
「それが……被害は0。一切被害が出ていません……」
 戸惑いを隠せないエイミィの言葉にリンディが眉をひそめるが、その疑問にはノエルが答えた。
「あのクレーターを中心に強力な空間湾曲場を確認。
 クレーター内の空間を広げ、同時に外側の空間を圧縮していると思われます」
「空間湾曲……!?
 そんな高等魔法を、あの子が……!?」
 思わずうめくリンディだが、そんな彼女にエイミィが報告した。
「ガオガイガー、左手のツールを排除。
 戦闘モードに復帰します!」

「なのは、そこは危険だ!
 ガオガイガーの中に!」
「は、はい!」
 クロノにうながされ、なのははガオガイガーの胸のギャレオンの口へと舞い降り、そこからコックピットへと乗り込む。
「さぁ、反撃開始だ!
 来い、EI-04!」
《ゾンダァァァァァッ!》
 宣告するクロノの言葉に、EI-04は咆哮と共に石炭弾を発射、ガオガイガーの周囲に着弾したそれが爆発を巻き起こす。
 だが――
「ブロウクン――」
「マグナァム!」
 クロノの、そしてなのはの叫びが響き――爆煙の中から飛び出してきたブロウクンマグナムがEI-04の顔面を撃ち抜く。
 飛翔し、戻ってきたブロウクンマグナムを回収するガオガイガーだが、そこへ再生の完了も待たずに突っ込んできたEI-04が拳を打ち落としてくる。
 それに対してはクロノの反応が間に合った。右手でブロックするとブロウクンマグナムの要領で右腕を高速回転、EI-04の拳を弾き飛ばす。
 そのままなのはとクロノはガオガイガーでEI-04をめった打ち。再生は止まらないもののそれ以上のペースで着実に蓄積されていくダメージに、EI-04はたまらずヒザをつく。
「とどめだ――なのは!」
「うん!」

「ヘル、アンドぉ……ヘブン!」
 なのはの叫びに従い、ガオガイガーは両腕を左右に広げ――その右手にブロウクンマグナムの攻撃エネルギー、左手にプロテクトシェードの防御エネルギーが収束していく。
 それに伴い、G-Sライドも出力を上げていき、ガオガイガーの全身がGストーンの放つ緑色の輝きに包まれる。
「ゲル、ギル、ガン、ゴォ、グフォ……」
 なのはが呪文を唱え、ガオガイガーは両手を合わせ――相反するエネルギーの反発で新たな、そして莫大なエネルギーが発生、それはEMトルネードとなってEI-04の動きを封じ込める。
「いっけぇぇぇぇぇっ!」
 なのはの咆哮と同時、ガオガイガーは背中のステルスガオーからのバーニア噴射と両足のキャタピラによるローラーダッシュで突撃、EI-04の胸部――中枢核に諸手突きの要領で合わせた両手を叩き込んだ。
 とたん、ガオガイガーの手の中で荒れ狂っていたエネルギーが解放、攻撃エネルギーがEI-04の機体を内部からズタズタに引き裂くと同時、防御エネルギーが中枢核を捕獲する。
 そして、ガオガイガーはそのまま中枢核を抉り出し――
 ――ドガオォォォォォンッ!
 残されたEI-04の残骸が大爆発を起こした。

「――と、いうワケで、わたしにも協力させてください!」
 EI-04にされていた素体の人間を解放した後、なのはは改めてクロノによって案内されたメインオーダールームで力強くそう告げ、リンディへと一礼した。
「ボクからもお願いします」
 そんななのはを援護するのはユーノである。
「なのはの魔力の強さは、もう見ていただいたと思います。
 彼女の才能は、きっとみなさんの助けになります」
 その言葉を聞きながら、クロノはリンディへと視線を向けた。
 クロノだけではない。一同の視線が集まる中、リンディは静かに告げた。
「いいわ。許可しましょう。
 ただし、作戦行動中は最低限こちらの指示にしたがってもらいます。それが条件よ」
「……やっぱり……」
 その答えはすでに予想の範囲内だったらしい。クロノはため息まじりに肩を落とし、
「まったく、母さんはやる気さえあれば相手にはおかまいなしだからなぁ……」
「え………………?」
「へ………………?」
 そのクロノの言葉に、なのはとユーノの目がテンになり――
『お母さん!?』
 二人の驚きの声が、メインオーダールームに響き渡った。


 

(初版:2005/11/05)