プロローグ
<Junichi's View>
それは、ほんのささいなことだった。
『仕事』の関係で中国は北京を訪れた。
けっこう簡単に片付き、さぁ帰ろう、という矢先の天候不順。その際近くに落雷。現場に行ってみれば雷に打たれた死体がひとつ。
慣れた手順で死体を救急隊に引き渡し、当事者にとっては重大な、一般人にとっては実感のわかない、そして『普通』の定義から大きく外れたオレにとっては何てことのない(こういう感じ方って人としてどうかとも思うけど、実際そう思えちまうんだからしょうがない……よな、うん)この一件は終わった。
そう――終わったはずだったんだ。
なのに、これが直後に引き受けた依頼に深々と関わってくるなんて、その時は当然ながらカケラも考えちゃいなかったんだ。
あ、そうそう。
今のうちに付け加えておこう――その時には気にも留めていなかった、けどものすごくからんでくる事件がもうひとつ。
すぐそばで行われていた(らしい)フィギュアスケートの大会(グランプリシリーズ・中国杯、だったっけか)で、ひとりの日本人選手(名前? その時は知ったこっちゃなかったよ)が惨敗したそうだ。
……ま、その時はホントにどうでもよかったんだけどね、まぢで。
(初版:2006/01/29)