「ジュンイチ!」
 イルファングの攻撃は床をも砕き、猛烈な土煙が巻き起こる。その土煙に隠れてその姿を確認できないが――おそらく、ヤツの攻撃はジュンイチを直撃したはずだ。
 名を呼んでも返事が返ってこない。キリトは絶望的な予感を抱きながら、土煙の中を凝視して――



「…………なるほどな」



 淡々としたつぶやきが、その土煙の中から聞こえてきた。
「ようやくわかってきたぜ……この身体アバターの扱い方が」 
 晴れていく土煙の中、その姿が少しずつ見えてくる――自分のすぐ目の前の床に叩きつけられた刀の峰を踏みつけ、ジュンイチはイルファングをにらみつけていた。
「外した、のか……?」
「かわしたんだよ」
 思わずつぶやくキリトに告げ――ジュンイチはイルファングへと向き直る。
 右の人さし指でイルファングを指さす――親指も立て、右手を銃に見立ててイルファングを指しながら、告げる。
「反撃……開始っ」

 

 


 

Quest.2

ふたりはビーター

 


 

 

「ったく、こんな簡単なことに、どうして手間取ってたんだろうな、オレは……
 さっさとこの身体を扱えるようになっていれば、ディアベルを死なせずに済んだかもしれないのに……」
「……グォアァァァァァッ!」
 自分の存在をまるで意にも介していないかのようにつぶやくジュンイチの姿に、イルファングが咆哮した。刀を再び振り上げ、ジュンイチに向けて振り下ろし――
「気づけば、こんな簡単な動きでしかないっていうのにな」
 言って――ジュンイチはわずかに身体を傾けただけでイルファングの攻撃をかわす。
「リアルでのあの力がなきゃ、オレなんてこんなもんってことか……
 つくづく自分の弱さがイヤになる」
 さらに繰り出される、そのすべてが必殺の一撃を、ジュンイチはことごとくかわしていく――その動きは、ついさっきまで取り巻きのセンチネルにすら苦戦していた人物とはとても思えない。
「な、何や……あの動き……
 アイツ、レベル1桁なんと違うんか!?」
「レベル1桁はブラフか!?」
 一転してイルファングを翻弄するジュンイチの姿に、キバオウや他のプレイヤーが思わず声を上げる――と、ついにジュンイチが反撃に転じた。
 大振りの斬撃をかわして懐に飛び込むと、その顔面に跳び、拳を叩き込み――



 ぺちんっ。

 情けないSEと共に――体力ゲージが1ドットだけ減った。



『………………
 …………
 ……
 ……弱いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?』
 しばし呆然。そして絶叫。その動きからは考えられないほどに非力なジュンイチの攻撃に、その場の一同が驚きの声を上げる――むしろギャグにすら思えてくるような非力ぶりに、全員の背後に「ガビーンッ!」などという擬音を幻視したような気さえしてくる。
「や、やっぱ弱いぞアイツ!?」
「ムチャクチャ攻撃力ないじゃないか!」
「ハッタリじゃねぇ! やっぱりアイツ、レベル1桁だ!」
「待てよ! じゃあ、レベル1桁のアイツがなんであんな動きができるんだよ!?」
 ジュンイチが素手での超近距離戦を挑んでいて、しかも後退の気配も見せないため、周りの面々はうかつに援護もできず、見守るしかない――周りのプレイヤー達から次々に声が上がるが、キリトだけはその疑問の答えに思い当たっていた。
(きっかけは、ディアベルの最期のアドバイス……
 「自然に動けばいい」……その言葉で、ジュンイチはあれだけ動けるようになった……)
「…………リアルだ……」
「え…………?」
「たぶん、リアルでムチャクチャ動けるんだ、アイツ……
 きっと、今のあの動きだって、問題にならないくらい……」
 自分のつぶやきを聞きとがめたアスナに、キリトはそう答えた。
「きっと、今まではゲームだっていうことや、自分の低いレベルのことを意識しすぎてたんだ。
 パラメータ値の低い身体をうまく使おうと、ガチガチに意識しすぎて……それが逆に動きのぎこちなさを生んでいたんだ。
 けど、ディアベルのアドバイスでその力みが取れた……」
「でも、あくまでゲームの中の身体だっていうことも、事実でしょう?
 決してパラメータ以上の動きはできない……それであの動きはおかしくない?」
「おかしくないさ」
 聞き返すアスナに、確信を得たキリトはスラスラと答える。
「たぶん、純粋なスピード自体は、素早さのパラメータの範囲内のものでしかない。
 でも……よく見て」
「え………………?」
 キリトの言葉に、アスナはイルファングの攻撃をかわしているジュンイチへと視線を向けた。
 本当に見事な回避だ。まるで“相手の攻撃が放たれる前からすでに動き始めている”ような――
「――って、相手が攻撃するよりも、回避の動きの方が先!?」
「そう。
 最小限の動きと、相手の攻撃の先読みで速さの不利を補ってる……動きのムダを徹底的に削ぎ落とすことで、スピードの足りてない部分を補ってるんだ」
 そして、イルファングの攻撃がもはやかすりもしないジュンイチを見つめる。
「今のレベルでアレなんだ。
 レベルが上がってきたら……ステ振り次第でとんでもなく化けるぞ、アイツ……!」
 キリトがつぶやくが――ジュンイチはキリトがそんな話をしているとは露知らず、再びイルファングの攻撃をかわし、腹に拳を叩き込む。
 が――ほとんど効いていない。HPゲージの減少はわずか2ドット。かまうことなくジュンイチへと反撃してくる。
(クリティカル判定でもゲージ減少2ドットかよ! 命中ボーナス分のダメージしか通ってねぇ!
 向こうの攻撃はかわせる! こっちの攻撃は通る! だけど減らねぇっ!
 くそったれがっ! せっかく動きが改善されても、結局低パラメータに泣かされてんじゃねぇかっ!)
 イルファングの攻撃をかわし、毒づきながら次の反撃のタイミングを探る――あと何発入れれば倒せるのかと考えると、正直苛立ちを隠せないが、
(バカ野郎がっ! 敵を倒す手間なんか気にしてんじゃねぇっ!
 当たれば効くんだ! 喰らわず立ち回れるんだ! 勝てない戦いじゃねぇじゃねぇかっ!)
 イルファングが大振りの攻撃を放ち、それを紙一重で回避――スキが、できた。
(――ここっ!)
 一撃を入れるべく、力を込める。
 イルファングに向け、渾身の一撃を放ち――



 ………………何も、起きなかった。



 ジュンイチが、まるで五指で引っかくように振るった右手は、イルファングのはるか手前を虚しく薙いだ。
 これは――
(しまった!
 ここにきてリアルでのクセが――リアルで“焼く”時の要領で!)
 自分が仮想空間の、仮初の身体で戦っていることを失念していた。自分の身体に宿る特殊能力が、ここでは使えないことを忘れていた。スキができたのは――自分の方だった。
 システムに設定された技ソードスキルを使ったワケではないために、技の発動後のシステム的な硬直はない――だが、そんなことは無関係にこのスキは致命的だった。すでにイルファングは次の攻撃の態勢に入っている。
 元の身体と比べて致命的に“のろい”この身体でかわせるタイミングではない。そして耐えられる攻撃でもない。この一撃は確実に自分を捉え、あっという間に自分のHPをゼロにするだろう――先ほどの、ディアベルのように。
 自分はゲームオーバー。アバターはこの世界から永久に消え去り、リアルの自分もナーヴギアによって脳を焼かれて死亡するだろう。
 もっとも――自分に限ってだけは“死ねない”リアルの身体の特異性が生かしてしまうだろうが。すぐに“生体核バイオ・コア”が脳の代替器官として働き、脳の方も自己再生を始めるだろう。脳のような複雑な器官の再生には時間がかかるが、一週間もあれば修復できるはずだ。
 再挑戦の意志があるなら、その時にでも再び新たなアバターでログインすればいい――そんな考えが頭をよぎるが、
(それで……いいワケないだろうがっ!)
 絶望的な危機感が一瞬を何十秒にも錯覚させる――疑似的な加速感の中で、ジュンイチは自らを叱り飛ばした。
(オレがここからいなくなったら、キリトは……アスナはどうなる!?
 この場に集った攻略パーティーの、他のヤツらは!?)
 決して倒せない敵ではない。ここまでHPが削られれば、程なくしてイルファングは倒されるだろう。
 だが――犠牲をこれ以上出さずに終われる保証はどこにもないのだ。攻略パーティーの誰かが殺られる可能性はゼロではない。
 そして、その“誰か”がキリトやアスナになる可能性は十分にあるのだ。レベルやパラメータの高低が勝敗とイコールではないこのゲームでは特に。
(離脱なんぞしてたまるか! 戻ってくるまでの間に脱落者なんぞ出られたら後味悪すぎるわっ!
 動けっ! オレの身体ぁぁぁぁぁっ!)
 一縷の希望に賭けて身をひねる――イルファングの刃が自分を狙って振り下ろされるのをしっかりと視界に捉えながら。
 まだかわしきれていない。やはりダメか――あきらめの感情ではなく、冷静な状況観測の結果としてそう確信して――



「でやぁぁぁぁぁっ!」



 閃光が走った。
 金属がぶつかり合う音と共に、イルファングの刀が弾かれる――ムリな回避がたたり、たたらを踏んでひっくり返ったジュンイチの前には、ソードスキル発動時特有の硬直状態に陥ったキリトの姿があった。
 ソードスキルの発動と、相手のそれとの激突。二重の硬直判定によるスキは致命的だ――ただし、先のジュンイチのように、ソロで挑んでいたのなら。
「スイッチ!」
 そう。キリトはひとりではない。彼の指示でアスナが飛び込む。刺突系のソードスキルを発動しながら突っ込んで――
「マズイ! 向こうのソードスキル!」
 気づいたジュンイチが声を上げる――イルファングがいち早く硬直から脱出。発動時間の短い速攻系ソードスキルを発動し、アスナに向けて斬りかかる。
「アスナ!」
 キリトの叫びに、アスナもまた相手のソードスキル発動に気づいた。とっさに頭を下げて、イルファングの斬撃を紙一重でかわす。
 だが、ソードスキルの発動中では完全にはかわせなかった。フードが斬撃に巻き込まれ、耐久力が一瞬でゼロに――防具破壊効果が発動し、フードが光となって消滅する。
 瞬間、きれいな“何か”が視界に広がる――それが防具消滅のエフェクト光に照らされたアスナの髪だと理解するのに、ジュンイチもキリトも数瞬の時を要した。
 というか……それ以前に驚かされたことがあった。
(……女の、子……!?)
 そう。アスナが性別:女であったことだ――ジュンイチが事前に確認したリアルでの情報によれば、女性のプレイヤーはそれほど多くはいなかったはずだ。男女比的な意味で会える確率はさほど高くない女性プレイヤーに、まさか最初のクエスト参加で出くわすとは思っていなかった。
 もちろん、“アスナ”という名前が女の子の名前であることもわかっていたが、ネットでよくいる“ネカマ”の類だと自己完結していたのだが――
 キリトもまた、アスナが女性だと知って驚いている様子だが、そんなことは当のアスナにはどうでもいいに違いない。かまわずイルファングの懐に潜り込み、手にした細剣で一撃を叩き込む。
 そこに再びキリトが肉薄し、アスナがスイッチで飛び込む――連携の繰り返しによって、イルファングのHPがますます削られていく。
 が――
「――しまっ!?」
 何度も繰り返せば、当然その中にミスが生じるトライも生まれてくる――足がもつれ、アスナの後退が遅れてしまったのだ。
「アスナ!」
 そんなアスナにイルファングが狙いを定める。とっさにカバーに入ったキリトが剣で一撃を受け止めるが、パワー負けして吹っ飛ばされる。
 背後のアスナにぶつかり、二人で地面に倒れ込む――すぐにアスナが身を起こし、キリトの具合を確かめる。
 ……HPが半分を大きく割り込んだが、死亡には至っていない。キリトの無事に、アスナは思わず安堵する。
 だが、危機が去ったワケではない。そんな二人に、イルファングが襲いかかり――
「でぇやぁっ!」
 声が響き、一撃――キリトでもアスナでもジュンイチでもない、第三者の振るった一撃が、イルファングを捉え、後退させる。
 愛用のバトルアックスをかまえたエギルだ。さらに何人ものプレイヤーが、次々にイルファングに立ち向かっていく。
「早く回復しろ!
 それまでは、オレ達が支えてやる!」
 倒れたキリトにエギルが告げて、彼らはイルファングに立ち向かう――が、相手もフロアボスの意地か、かなりしぶとい。周囲に放った薙ぎ払いが、距離を詰めていた他のプレイヤーを吹っ飛ばす!
「ヤバイ!」
 しかも、吹っ飛ばされた者達の中、何人かのプレイヤーが、イルファングの追撃可能範囲に取り残された――そのことに気づいたジュンイチの背筋を寒気が走る。
 あのままではまともにくらう――このパーティーの頭を張り、相応のレベルを誇っていたはずのディアベルですら瞬殺した、イルファング必殺のソードスキルを。
(どうする……!?
 オレが飛び込んでまた相手をすれば――いや、ダメだ。オレの攻撃力じゃ姿勢までは崩せない! そのままアイツらの誰かがブッ飛ばされる!
 何か、アイツの攻撃モーションが止まるほどの有効打じゃなきゃ――)
 このままじゃ犠牲者が出る。ディアベルの無念を思うと、それだけは容認できない。懸命に打開策を探り――
(あれ……?)
 気づいた。
 脳裏に、一撃を受けたディアベルを自分がフォローした時のことが思い出される。
(そういえば、アイツ……オレが投げたディアベルの盾でダメージ受けてたような……?
 あの時、盾が命中したのは、確か……)
 その時の光景を思い出したジュンイチの脳裏を、“ある可能性”がよぎる。
 その可能性が当たりだとしたら――
(――いける!)
 確信した時には、すでにジュンイチは駆け出していた。
 プレイヤーのひとりを狙ったイルファングの眼前に飛び出して――



 ずぶりっ。



 肉を抉る、イヤな音がした。
 同時、響き渡る獣の絶叫――顔面を押さえ、後ずさりするイルファングの前で、ジュンイチは右手を軽く振り払った。
 右手に、“自分がつぶしたイルファングの左目”のなれの果てがこびりついているような気がしたから――
「目を……つぶした……!?
 そうか――急所攻撃ボーナスと、部位破壊ボーナス!」
「あぁ……思った通りだ」
 呆然とつぶやくキリトに答え、ジュンイチは改めて先の攻防を思い出した。
「さっき、ディアベルをオレがフォローした時、アイツはオレの投げたディアベルの盾を眉間に受けてひるんでいた。
 眉間は顔面の急所のひとつ。そこに当たったことで、より大きなダメージを与えられていたんだとしたら……そう思ったんだが、ビンゴだったぜ」
 言って、ジュンイチはダメージから立ち直り、こちらをにらみつけてくるイルファングと改めて対峙した。
「今この時だけは、茅場晶彦に感謝しなくちゃな」
 言いながら、一歩を踏み出す。
「今ので確信した――リアルさを徹底追求してくれたせいだろうな。モンスター達の基本的な身体構造の設定は元になった動物と大して変わらないらしい。
 おかげで――」
 告げるジュンイチに向け、イルファングが突っ込んで――



現実リアルと同じように、命を“壊せ”る」



 何かが砕ける音――その正体は、イルファングの落とした刀が教えてくれた。
 ジュンイチによって、一瞬で両の手首を砕かれたのだ。
「逃がすか――よっ!」
 たたらを踏むイルファングに言い放ち、踏みつけるようなヤクザキック――右のヒザを蹴り砕かれ、イルファングがその場に崩れる。
 さらに、その次の瞬間――ジュンイチは迷うことなく、咆哮するイルファングの口の中へと手刀を叩き込む。
「ガァッ!? フガッ!?」
「どうしたよ。
 オレの手はお前の口の中だぜ。かみちぎってみせろよ――もっとも、のどちんこをつかまれた状態でそんな余裕があれば、な」
 息苦しそうにもがくイルファングに言い放ち、左手で一撃――残っていたイルファングの右目がつぶされた。
「キリト、アスナ!
 ラストアタック、決めるぞ!」
「あ、あぁ!」
「うん!」
 右手を敵の口の中から引き抜き、後ろに跳ぶジュンイチの声に、我に返ったキリトとアスナが動く――ジュンイチとスイッチする形で、二人の連続斬りが動けなくなったイルファングの身体を深々と斬り裂いた。
 もはや自分の身体を支えることもできず、イルファングの身体がのけぞり――
「これでしまいだ――ブタ野郎っ!」
 “ブタ野郎”の悪態が示す通り大きく出ている腹を足場に、ジュンイチがイルファングの眼前に飛び込む。
 頭をつかんで、顔面――ではなく、ノドにヒザ蹴り。何か硬いものがつぶれるような音が、首の部位破壊の成功、つまり首の骨をへし折ったことを教えてくれる。
 最後に、支えを失い、ガクンと上を向いた顔面に振り下ろしたジュンイチの拳と同時、キリトの斬撃が腹部へ――残っていたHP、その最後の一片を削り取られ、イルファングは動きを止めると、ポリゴンの塊と化して四散した。
 まるで、先ほどのディアベルの最期のように――



   ◇



「……やっ、た……!?」
 しばし、誰もが言葉を発せられなかった。
 だが、誰かのもらしたつぶやきが、少しずつその場の全員に実感させていく――勝った、と。
『……やったぁぁぁぁぁっ!』
 歓声が上がる。誰もが手を取り合い、この場の勝利を喜び合う。
 もっとも、騒ぐだけの力も残っていない者達もいたが――ジュンイチとキリト、とどめを刺した二人はその場にへたり込み、苦笑まじりに視線を交わすのが精一杯だった。
 そんな二人の目の前にはメッセージウィンドウが展開されている――“You Get a Last Attack Bonus”“You Get a Semilast Attack Bonus”。
 どうやらキリトがラストアタックボーナスを、ジュンイチが準ラストアタックボーナスを獲得したらしい。ジュンイチの一撃の方がわずかにタイミングが早かったということか。
「見事な戦いぶりだったぞ。Comglaturation」
「お疲れさま」
 と、二人に声をかけてくるのはエギルとアスナだ。二人がやってきたのを見て、ジュンイチはその場に立ち上がり、キリトに手を貸してやる。
「まったく……拳闘士スタイルならともかく、剣士スタイルの装備で、ボスを素手で倒してしまうとはな。
 それに、レベル一桁であの動き……ひょっとしたら、リアルじゃよほど名の通ったファイターなんじゃないか?
 ……っと、ゲーム内でリアルのことを聞くのは、マナー違反かな?」
「あぁ、かまわないぜ。どーせ本名プレイだし。
 オレは……」
 立ち上がったキリトの手を離し、ジュンイチがエギルに答えかけた、その時だった。



「なんでや!」



 悔しげな咆哮が、その場の空気を停止させたのは。
 全員の視線が、発言者に――キバオウに集中する。そんな中、当のキバオウはキリトをにらみつけ、言い放った。
「なんで……なんで、ディアベルはんを見殺しにしたんや!?」
「……『見殺し』……!?」
「そうやろが!
 自分は、ボスの使う技、知っとったやないか!」
 キリトに言い返すキバオウの言葉に、ジュンイチはキバオウが何を指しているのかに思い至った。

『ダメだぁっ!
 全力で、後ろに跳べぇっ!』

 ボスの攻撃パターンが切り替わった時――事前の情報とは違う形に切り替わったことを警告した、キリトのあの言葉だ。
「最初からあの情報伝えとったら、ディアベルはんは死なずに済んだんや!」
「ちょっと待てよ!
 事前の情報じゃタルワールで来るって話だっただろうが! それが刀持ち出してくれば、警告するのは当たり前だろ!」
「せやったら、どうして『後ろに跳べ』とまで言えたんや!
 しかも『全力で』って……『後退して様子見』っちゅう意味やったら、『全力で』はないやろが!
 次の動きまでわかっとったから、動きまでツッコんで指示できたんと違うんか!?」
 とっさに弁護しようとするジュンイチだったが、キバオウの反論には押し黙るしかない――まさに彼の言っていることが根拠になって、自分はキリトがベータテスターであることを見抜いたのだから。
「きっとアイツ、元ベータテスターなんだ!」
「そうか……だから、ボスの攻撃パターンとかも全部知ってたんだ!」
「おいおい……知ってて隠してたのか!?」
「そうに違いないぜ!
 ちゃっかりトドメを刺してレアアイテムをゲットしやがった――最初からそれが狙いだったんだ!」
「じゃあ、まさか、もうひとりの方も……!?」
「あり得るんじゃないか?
 本当の初心者があんな動きなんかできるワケがない。ログインしてきたのが一昨日だっていうのは本当だとしても、その前にベータテストを経験していたとしたら……!」
「他にもいるんじゃないのか!? 出てこいよ、ベータテスターども!」
 キバオウが振りまいた疑惑の種は、見る見るうちに一同の間に広がっていく――疑惑が疑惑を呼び、ついにはジュンイチすらもベータテスター呼ばわりし始める始末だ。
(……このままじゃ、マズイ……)
 不穏なものに変わり始めたその場の空気に、キリトの頬を冷や汗が伝う。
 自分がベータテスターであることがバレるだけならまだいい。自分自身、そのことに後ろめたいものを感じているのだから、今さらそれが表面化したところで大した違いはない。
 だが――ジュンイチのことまで同類のように見られるのはマズイ。
 ジュンイチが本当に素人だったのは、ここまでパーティーとして共に戦ってきた自分が一番よくわかっている。
 そう――ジュンイチは素人だ。他のゲームはどうだか知らないが、このSAOにおいては、間違いなく。その彼が、ベータテスター扱いされて孤立するのは、今後の彼のプレイに致命的な支障をきたしかねない。
 そして何より――この場の空気をこのまま放置すれば、この場にいない他のベータテスター達までもが敵視されかねない。
 ベータテスターと言っても、すべてのベータテスターがこのゲームを有利に進められているワケではない。中にはベータ版とこの製品版との違いに対応できず、命を散らした、またはこの先散らしかねない者もいるだろう――“今日この場で死んだ、ディアベルのように”
 そんなベータテスター達まで、この場で自分が敵視されたことで同様に敵視され、迫害されるようなことになったら――
 なんとかしなければ。だがどうすれば……懸命に思考をめぐらせ、キリトは顔を上げ――
(………………っ!)
 気づいた。
 先ほどのボーナス獲得メッセージ――そのメッセージが切り替わり、獲得ボーナスの内容を報せるものになっている。
 その内容を見て――ひとつだけ、思いついた。
 この場の不穏な空気を、“最小限に”抑える方法を――



「…………ふふふ……
 ……ふははははっ!」



 天井を見上げ、高笑いを上げる――となりのジュンイチが訝しげな視線を向けてくるが、意図的に視界の外に追い出し、キバオウを見返す。
「……『元ベータテスター』だって?
 オレをあんな“素人連中”と一緒にしないでもらいたいな」
「な、何やと!?」
「SAOのベータテストに当選した1000人の内のほとんどは、初めてのフルダイブプレイに慣れるのがやっとで、レベル上げレベリングもままならない初心者だったよ。
 事前の話題性がすごかったせいで、ネトゲ初心者やミーハー達が大量に応募、当選したのがその原因だ――正直、“今のアンタらの方がまだマシ”さ」
 慎重に言葉を選びながら、キバオウに向けて歩を進める――聞く者が“ベータテスターが実は大した連中ではない”と思えてくるように。
「でもオレはあんなヤツらとは違う。
 オレはベータテスト中に、他の誰も到達できなかった層まで上った。
 ボスのカタナスキルを知っていたのは、ずっと上の層で刀を使うモンスターとさんざん戦ったからだ。
 他にもいろいろ知っているぜ。“情報屋なんか、問題にならないくらいに”な」
 そして――“自分が他の連中よりもよほど上にいる”と思わせられるように。
「な、何やそれ……
 そんなん、もうベータ上がりどころの騒ぎやないやないか……もう反則チートや! 反則者チーターやないか!」
「そうだ……チーターだ!」
「ベータのチーター……ビーターだ!」
「『ビーター』……いい呼び名だな、それ」
 周りから上がった声を拾い、キリトが笑う――キバオウを始め、周りが気圧されている中、キリトは自分のメニューを操作して、
「そうだ……オレはビーターだ。
 これからは元テスター“ごとき”と一緒にしないでくれ」
 言って、装備を変更。手に入れたばかりの装備アイテム、《コートオブミッドナイト》を選択し、身につけている服装に漆黒のコートが追加される。
 見せつけるように入手したレアアイテムを身につけると、キリトはキバオウを一瞥。第二階層への扉へと向かい――
「待って!」
 そんなキリトを、アスナが呼び止めた。
「………………何?」
「あなた……戦闘中に私の名前、呼んだでしょ?」
「……ごめん、呼び捨てにして。
 それとも、読み方違った?」
「そうじゃなくて……どこで知ったの? 私の名前」
「…………え?」
 その言葉に、キリトは思わず呆けて――
「阿呆」
 追いついてきたジュンイチが、アスナの後頭部を軽くはたいた。
「パーティー組んだ時から、追加のHPゲージが自分のヤツの下に表示されてるだろ。
 よく見ろ――そこに名前が書いてある」
「………………?」
 ジュンイチに説明され、アスナは目を細めて空間の一点を凝視する。
 おそらく、彼女の眼には自分のパラメータ画面が、そしてそこに追加表示されているパーティーメンバー、すなわちジュンイチとキリトのHPゲージが映っているのだろう。
「……キリトに、ジュンイチ……?
 これが、あなた達の名前?」
「そう。オレがキリトで、そっちがジュンイチ」
 キリトが答えて――納得したように息をついたアスナの相好が崩れた。
「なんだ。こんなところにずっと書いてあったのね」
 言って、アスナがクスリと笑う――整った顔立ちの、なかなかの美少女なだけに、その姿は妙に絵になっている。
 そんなアスナと「マジで今まで気づいてなかったのか」と呆れるジュンイチ。二人を交互に見つめると、キリトは静かに二人に告げた。
「二人とも、間違いなくもっと強くなれる。
 だから……もしいつか、誰か信頼できる人にギルドに誘われたら、断るなよ。
 ソロプレイには、絶対的な限界があるから……」
「なら……あなたは?」
 尋ねるアスナだったが、答えは返ってこなかった。キリトは無言でメニューを操作。パーティーの解散を選択すると、そのまま第二階層への扉の向こうへと消えていった。
「……だとさ。
 お前さんはどうする?」
「どうしようかな……?
 そう言うあなたは?」
「とりあえず……せっかくだし、第二階層でしばらくレベル上げに勤しませてもらおうかな。
 もっとも……」
 アスナにそう答えると、ジュンイチはクルリと振り向き、
「その前に……あのバカの尻拭いをしておかないといけないけどな」
「え………………?」



   ◇



「ビーター……ベータのチーター……
 なんちゅういけすかんヤツや!」
 キリトが自分達から離れて、場の空気が弛緩する――最初に聞こえたのは、キバオウによる悪態だった。
「あんなヤツのせいでディアベルはんが死んだんやと思うと、腹立ってしゃあないわっ!
 今度会ったらタダじゃおかんからnぶっ!?」
 だが、最後までそのセリフを言い切ることは叶わなかった――ジュンイチの投げつけた何かが、顔面を直撃したからだ。
「やめとけ。お前じゃムリだ」
「何やと!?」
 キリトと別れたその場所、すなわち次の階層への扉の前からホールの中央のキバオウまで一直線に投げつけるという強肩ぶりを見せつけたジュンイチがキバオウに言い放つ――ゲームのシステムの補助のおかげで、離れていても声は問題なく届いている。
「もう一度言う。お前らじゃアイツには勝てねぇよ。
 お前らじゃ、あまりにザコすぎる」
「ふざけんな!
 レベル1桁のぶんざいで偉そうにっ!」
「……やれやれ……」
 言い返してくるキバオウに対し、ジュンイチは静かに息をつき――



「全員この場でぶちのめされなきゃわからんか?」



『………………っ!?』
 にらみつけ、言い放つジュンイチの言葉に、キバオウ達の間に戦慄が走る。
 それほどまでにすさまじいプレッシャーが、ジュンイチから放たれている――中にはそれだけで腰を抜かし、へたり込んでしまう者まで現れる始末だ。
「三度目だ――お前らじゃ、キリトには勝てねぇ。それどころか、オレにすら届かねぇよ。
 “ディアベルの正体すら見抜けなかった”お前らじゃ……な」
「な……し、正体やて?」
「オレが投げつけたもの、よく見てみろ」
 ジュンイチに言われて、キバオウはジュンイチが投げてよこしたものを拾い上げる――再三話題になっている、道具屋で配られているガイドブックだ。
 アイテム共有設定がオープンになっている。キバオウに「見ろ」とでも言わんばかりに。
「日付を見てみろ。
 取得日時、12月2日、18:00……つまり昨日の会議、その後にもらってきたものだ」
「それがどないしたっちゅうんや……」
 言って、キバオウはガイドブックに目を通し――その顔色が変わった。
「な、なんや、これ……!?」
「見ての通りだ。
 そのガイドブックには、“イルファングのことも、センチネルのことも書かれていない”」
 答えるジュンイチの言葉に、場がにわかにざわつき始める。
「ど、どういうこっちゃ……
 ほんなら、ディアベルはんはボスの情報をどっから……」
「そんなの決まってる。
 自分の記憶から……だよ」
 あっさりとジュンイチは告げた。
「変だと思うべきだったんだよ。
 昨日の会議の時、ディアベルは『自分のパーティーがボスの部屋を見つけた』と言っていた。
 その時、ボスのことは見ていたはずだ――なのに、ボスの情報について、ガイドブックを情報元として紹介していた。
 どうしてわざわざガイドブックから引用した? ボスの頭上にはその名前が表示されていた――戦闘パターンについては、戦ってみなければわからないけれど、少なくとも名前だけは、ボスの部屋を確認したその時に確認できたはずだ。
 そしてその場合、確認されたボスのデータは自身の攻略情報の中に記録される――忘れてしまう心配もないんだ。ガイドブックに依らずとも語れなければおかしいんだよ。
 なら、どうしてそんなごまかしをしたのか……理由は簡単だ。
 ガイドブックからの引用だと強調することで、自分が自力で仕入れた情報だということを隠しておきたい理由が、ディアベルにはあったんだ。
 たとえば……“ゲーム開始前から知っていた情報だったから”とかな」
 ジュンイチの言葉に、場のざわめきはますます大きくなっていく。
「ボスの終盤の攻撃パターンが情報と違ったのも、これで説明がつく。
 ま、当然だよな。何しろ“前に攻略した時の”情報だったんだから。実際に今回のヤツと戦って得た情報じゃないから、食い違いが出てもおかしくない」
「ま、まさか……」
「『まさか』? もうとっくに確信してるんだろう?
 そう――ベータテスターだったんだよ、ディアベルも。
 どうだ? さんざん毛嫌いしていたベータテスターに、ここまで導いてもらっていたんだとわかった感想は」
 うめくキバオウに対して、ジュンイチは不敵な笑みと共に言い放った。
「だが、これでわかったろう。
 ベータテスターであるディアベルでさえ、第1層を突破するのにお前らの力を必要として、それでも生き残ることができなかった――ベータテスターですら、ひとりではこの戦いを生き抜いていくことはできない。
 オレ達が身を置いているのは……そういう戦いなんだ」
「せやったら……あのビーターのガキはどうなんや!?
 アイツ、ベータテスターなんかとは比べ物にならん言うとったやないか!」
「ンなの、ブラフに決まってんだろ」
 あっさりとジュンイチは言い切った。
「この中に、ログインする前、ゲームのオフィシャルサイトに掲載されていた茅場晶彦のコメントを見たヤツはいないか?
 そこにはこうあったはずだ――『ベータテストの時は第6層くらいまで攻略されました。それを踏まえて、製品版では難易度を調整して……』ってな」
「じゃあ、まさかキリトくんは……」
「そう。
 ゲーマーとしての腕前はまだ未知数としても……経験や知識は、他のベータテスター達と大して変わらないはずだ。
 『誰も行けなかった上層まで行った』? ヘタなウソだぜ。他にもベータテスターが……他にもオレが見たのと同じ記事を見たヤツがいた可能性はゼロじゃなかった。ツッコまれたらどうするつもりだったんだか」
 つぶやくアスナに対し、ジュンイチはそう答えて肩をすくめる――が、
「なんでや……
 なんでアイツ、そんなウソ……」
「………………あ゛?」
 未だに呑み込めていないヤツバカがいた。うめくキバオウに対し、ジュンイチは多分に怒気を込めた視線を向ける――気圧されたキバオウが後ずさりするが、逃がすことなくにらみ続ける。
「このバカが……まだわからないのか。
 そんなの、お前らがベータテスター全体を敵視し始めたからに決まってるだろうが」
 ジュンイチの言葉に、場がシンと静まり返る。
「お前ら、何も知らないクセにベータテスターが全員人間のクズみたいに言い始めただろ。
 だがな……もう、状況はベータテスターのスタートダッシュもほとんど意味がなくなってきてる。そんな中で孤立すれば、ベータテスターであろうが脱落は免れない。
 キリトはそうなることを……むざむざベータテスター達が死んでいく状況になることを避けたかった。
 そして……ディアベルがベータテスターだとわかった時、立派に戦ったアイツの評価がそれだけのことで地に堕ちてしまうことを恐れた。
 だから、アイツはあんな憎まれ口を叩いたんだ。
 自分以外のすべてのベータテスターを孤立させないために、そしてディアベルの名誉を守るために……お前らの怒りを、全部自分に向けることにしたんだよ。
 お前らに、それができるのかよ――自分以外の、顔も知らない、その上何人残ってるかもわからないヤツらのために、みんなの憎悪を一身に受けるようなマネが。
 ベータテスターのハンデを自分てめぇらの弱さの言い訳にしてるザコどもが……偉そうな口を叩いてんじゃねぇ!」
 言い放つジュンイチに対し、その場の誰も言葉を発せず、沈黙して――
「……どうしろっちゅうんや……」
 そう口を開いたのはキバオウだった。
「ディアベルはんがベータテスターやった……?
 あの小僧は、そんなディアベルはんや他のベータテスター達をかばった……?
 そんなん知らされて、どうすればえぇんや! オレらにどないせぇっちゅうんや!
 ディアベルはんの正体バラして、小僧の思惑ぶち壊して……お前は一体何がしたいんや!」
「『何が』……?
 そんなの、お前らが今のオレに向けている感情が答えさ」
 あっさりとジュンイチは答えた。
「ケンカ売ってるんだよ……お前らに。
 自分達の弱さを棚に上げて、導いてくれるヤツらの尻馬に乗って、いざとなれば誰かに責任をなすりつけたがる……そんな、てめぇらザコに、ケンカ売ってんだよ」
 言って、ジュンイチはクルリと背を向け、
「悔しかったら……“オレ達”ビーターに負けない力を身につけろ。
 誰かにすがるんじゃねぇ。自分で道を切り拓く力を身につけろ。
 その力を束ねたパーティーで、オレ達ビーターに対抗してみせろ」
「『オレ“達”』……!?
 お前も……ビーターだっていうのか……!?」
「あぁ、そうだ。
 キリトがビーターなら、オレだってビーターだ――もっとも、“ベータのチーター”なキリトと違って、オレは“ビギナーのチーター”だけどな」
 プレイヤーの誰かが発したつぶやきに、振り向くことなくそう答える。
「オレが明かした真実を……そして、オレ達ビーターからの挑戦状を、どう扱うかはお前らの好きにしろ。
 すべてを明かすなり、ウソだと否定してオレ達ビーターを目の敵にするなり……それはすべて、お前らの自由だ」
 そう言い放ち――ジュンイチもまた、キリトに続いて第2層への扉をくぐっていった。
「…………やられたな」
 そして、扉の前にはアスナだけが残される――そんな彼女に、エギルが声をかけた。
「ひとりですべての怒りを引き受けようとしたキリトと、その思惑をぶち壊して、キリトの重荷を少しでも引き受けようとしたジュンイチ……
 アイツらは、自分達で厳しい道を選んだ――ビーターであることを選んだアイツらは、これからソロでの戦いを強いられるんだろうな。
 願わくば、無事に生き残ってもらいたいが……」
「うん……」
 エギルに答えて、アスナはキリトが、ジュンイチが消えていった扉の向こうへと視線を向けた。
 しばし考えて――決断した。
「……よし」
「行くのか?」
 一歩を踏み出したアスナに、エギルが尋ねる――うなずき、アスナは軽く微笑んで、
「だって……責任、持ってもらわなきゃね」
「責任……?」
「キリトくん、言ってたもの。
 『誰か信頼できる人に誘われたら、ギルドに入った方がいい』って……
 じゃあ、その“信頼できる人”に会うまではどうすればいいの?」
「あー……」
 どこか意地悪そうに笑うアスナに、エギルも彼女の意図を察して苦笑する。
「それまでは、言い出しっぺに責任持ってもらうことにします。
 それじゃあ……また」
「あぁ、気をつけてな」
 うなずくエギルに軽く手を振って、アスナは駆け出した。
 キリトの言葉に従って――



 “今一番信頼できる人物”に、追いつくために。


NEXT QUEST......

 

 第2層に上がったオレと、それを追ってくるジュンイチとアスナ。

 なし崩しに行動を共にすることになったオレ達は、今後のために自分達の今の力を確認する。

 そんな中、ソードスキルを試すジュンイチは、そのソードスキルの欠点を発見する。

 ジュンイチの見つけた欠点、それは……

 

次回、ソードアート・ブレイカー、
「初見殺し」


 

(初版:2012/09/13)