「いい加減……答えてくれないかしら?」


「何が?」



 夕飯の後、部屋でのんびりしてたらリンディさんがやってきた……んだけど、うん、ホントに何の話?



「とぼけないで。
 どうして敵の首謀者である万蟲姫をここに置いているのか、よ……」

「どうして、って言われてもなぁ……」

「あの子は瘴魔の首魁よ……敵であり、犯罪者なのよ。
 逮捕して、罪を償わせるべきだわ」

「果たして、本当にそうかねぇ?」



 サラリとそう返して……リンディさんの動きが止まった。



「…………どういう意味かしら?」

「オレだって……アイツのしたことはわかってる。償いが必要だってこともね。
 けどね……その償いの道が、逮捕したその先にあるとは思ってない。だから逮捕することに対しては素直にうなずけない」



 そしてそれは……万蟲姫に限った話じゃない。

 過去にあった、フェイトの“PT事件”やはやての“闇の書事件”にも、同じことが言えたはずだとオレは思ってる。



「逮捕して、裁判にもっていったとして……果たしてアイツは正当に裁かれるのか?」

「どういうこと?」

「情状酌量、ってヤツだよ。
 裁判ってヤツにおいて、そいつの生きてきた環境っていうのは重要なファクターになる……たとえば、『こういうひどい状況におかれて、罪を犯さなければにっちもさっちも行かなくなっていた』とか、『こういう環境で育ったから、正しく教育を受けられなかった。だから善悪の判断ができなかった』……とかね」

「えぇ、そうね。
 けど……それがどうかしたの?」

「それを悪いことだとは言わないよ。
 けどね……それに伴う減刑は筋違い……それがオレの考えだ」



 まぁ、オレが勝手にそう思ってるだけなんだけど……納得できないことには違いない。



「要するに……甘すぎる。
 間違ったヤツに対して甘すぎる。『間違ったヤツには間違ったヤツなりの理由がある』……そんな温情的な、確かな“罪”の在り処を定めない、そんな理屈が通り過ぎた。
 その結果が、『ソイツが悪いんじゃなくて、家庭や学校、あるいは社会が悪い』……なんていう、やらかした“罪”の責任を、無限に薄めていくだけの結論だ。
 そして……気がつけば“罪”が消える。確かに刻まれたはずの“罪”が、煙のように姿を消す……」

「そんなこと……」

「『ない』って言えるの?
 フェイトやはやて達の減刑はともかく、オレなんか“JS事件”でのアレコレ、事実上の無罪放免じゃんか」



 反論できないよねー。実例があるワケだし。



「どんなひどい環境に生まれても、真っ当に生きてるヤツはいる。なのに、一方で境遇に負けて、自分で考えることを放棄して、アレコレやらかしておいて『そういう境遇だったんだから仕方ない』? バカも休み休み言えってんだ。
 どんなに悲惨な経歴を持っていようが、それで犯した罪の重さが変わるワケじゃねぇ。“それはそれ、これはこれ”なんだよ」



 けど、今の法廷ではそれがまかり通っちまう……結局、中途半端な減刑によって罪の意識が清算しきれずに残っちまう。

 その結果が、判決によって罰を受けただけじゃ罪の意識が消えなくて、追加で自分達で償う方法を模索していくしかなくなる贖罪最優先の生き方。フェイトやはやて達がいい例だ。

 そんな中途半端な裁きなら、いっそ裁判なんぞやらない方がはるかにマシってもんだ――そう思うから、オレはその考えに基づき、行動する。



「判決下すなら、本人達の罪の意識も考慮しろってんだ。罰を与えるなら、それで本人達がスッキリ納得するような与え方しろってんだ。
 それができねぇようなテキトーなシロモノに、万蟲姫の裁きを委ねるつもりはねぇよ。
 だからオレはアイツを逮捕させない……ナンバーズのみんなやスカリエッティと同じだ。アイツにきっちりと今までのことを償わせるために必要なら、もう一度世界をひっくり返してやる」

「めったなことは言わないで」

「別に適当な覚悟で宣言したつもりはないんだけどね」

「そういう問題でもないんだけど……まぁいいわ。
 けど、だったら誰があの子を裁くというの?
 まさか、あなたが裁く、などと言うつもりじゃないでしょうね?」

「さすがのオレも、そこまで思い上がっちゃいないよ。
 オレだって、アイツを裁くつもりはない。裁くとしたら……アイツ自身だ」

「万蟲姫が……?」



 眉をひそめるリンディさんに、あっさりうなずいて肯定を示す。



「アイツには自分で自分の罪を裁いて、償う道を見つけ出してほしい。
 自分でちゃんと自分の罪と向き合って、受け止めてほしい。
 確かに、そいつの罪はそいつだけのものじゃない。被害を受けたヤツもいれば、そいつが罪を犯したことを悲しむヤツだっている。
 けどな……その罪を背負う覚悟は、そいつだけのものだ。
 その覚悟のあり方は、償い方は、他人がアレコレ口を出して決めていいものじゃない……少なくとも、オレはそう思う」

「だから……」







「ジュンイチくんは、幸せになろうとしないの?」







 ………………はい?







「自分の“罪”を償わなければならないから……幸せになるつもりはないの?」







 リンディさんのいきなりの話題転換は、オレを呆けさせるには十分だった。



 オレが、幸せになろうとしてない……?







「ンなこと……ないと思うけどな?
 別に、今の暮らしに不満はないし」



 そう。不満はない。

 強いて言うなら“JS事件”のせいで巷じゃすっかり英雄扱いだってことぐらいで……







「不満がないからと言って、幸せだとは限らないのよ?
 ジュンイチくん……あなたは恭文くんと同じよ。自分の過去を背負おうとするあまり、幸せになることを放棄してる。
 実際、今の話だって万蟲姫のための行動であって、彼女をかくまうことで自分が受ける不利益を完全に度外視してるじゃない」

「ンなこと言われてもなぁ……」



 リンディさんはそう言うけど……うん。やっぱ実感わかない。

 そんなオレに対して、リンディさんは軽くため息をついて、



「ジュンイチくん……あなたは、あなたが望みさえすればもっと幸せになれる。なる資格がある。
 そして……あなたに幸せになってほしいと願っている人だっている。
 そのことを受け入れることは……できないのかしら?」

「………………よく、わかんね。
 今言った通り、本当に今の生き方に不満なんてなかったからさ……
 ただ……みんなが笑顔でいてくれさえすれば、オレはそれで十分だった……それ以上のことなんて……」

「あなたはそれでいいかもしれない。
 けどね……あなたに幸せになってほしいと願っている側にしてみれば、そうは思えないのよ。
 正直、あなたがそうやって他人の笑顔ばかり優先しているのを見ているのは……なんて言うか、“じれったい”のよ」



 ま、そこは価値観の違いだし、しょうがないよね。



「まったく……恭文くんといいあなたといい、自分を大切にしないにも程があるわ。
 心配するこっちの身にもなってもらいたいわ」

「ハハ……スンマセン」

「そう思うのなら、もっと自分を大事にしてほしいわ。
 あなただって、もう家庭を持ってもいい歳でしょうに」

「相手がいませんから」







 ………………あれ?



 リンディさん、いきなり固まってどーしたの?







「………………そうよね。あなたはそういう子だったわよね。
 まったく、どこまでも相手の気持ちに無頓着というか……」



 失礼な。



 オレだって、少しは人の気持ちを思いやったりするわい。



「ホントに『少しは』じゃないの……
 だから、私達の一番肝心な気持ちに気づいてないじゃない」

「肝心な、気持ち……?
 リンディさん、一体何が言いた





















 ………………え?





















「………………こういうことよ。
 少しは、考えてみることね」



 言って、リンディさんは話は終わりだとばかりに部屋を出て行った……って、ちょっとっ!?



「リンディさんっ!?」



 あわてて廊下に顔を出すけど……ちょうど曲がり角の向こうに緑色の髪が消えていくところだった……逃げられた。



「…………あー、くそっ……」



 最後の最後でしてやられた感じだ……部屋に戻って、ベッドに腰かける。







 つか……何考えてんだ、あの人……さっぱりわからん。



 なんだって、今の話の流れで、あんなマネ……

 

 


 

第34話

とある暴君と疾風の女神の一大事

 


 

 

 ………………あれ?



 隊舎はそろそろ消灯時間。飲み物でも買おうかと思ってレクルームにやってきたんだが……何やってんだ?



「あ、サリエルさん……」



 そう。高町教導官だ……いや、名前でかまわないって言われたから、「なのはちゃん」か。

 オレに気づいて顔を上げるまで、どこか上の空って感じで、手の中のコーヒーが注がれた紙コップをじっと見つめていた……うん、すっかり冷めてるね。



「どうしたんですか? こんな時間に。
 ヴィヴィオちゃんと一緒にいなくてもいいんスか?」

「あぁ、ヴィヴィオはサリちゃんと一緒に寝ちゃいました」



 さようですか。



 で……



「何か悩み事ですか?」

「え?」

「いや、なんか心ここにあらず、って感じだったもんで」

「悩み事……なんでしょうか……?」



 いや、オレに聞かれても困るって。







「実は……ジュンイチさんのことで、ちょっと」







 ………………回れ右して帰りたくなった。



 だって、アイツのことだろ? 悩んでるのなのはちゃんだろ? ぜってー好いた惚れたな話に決まってんだろっ! アイツがぜんぜん気づいてくれなくてー、とかそういう話だろっ!

 何が哀しくて、自分に相手がいないのにそんな相談受けなくちゃならんのだっ!? いくらカウンセラーのスキル持ちだからって受けたい相談もあれば受けたくない相談もあるんだよっ!







「サリエルさんも、気づいてましたよね?
 特別講習の時……ギンガの様子がおかしかったの」







 ………………ん? なんでそこでギンガちゃんが出る? ジュンイチの話だったんじゃないのか?



「スバルから聞いたんです。
 ジュンイチさんとギンガ、恭文くん達にくっついてラトゥーアに行ったって……
 その後、ジュンイチさんに話を聞いたら、何もなかったって言うから安心してたんですけど、ギンガはあの調子で……」



 ……なるほど。そりゃ勘ぐるわな。「ホントは何かあったんじゃないか」って。



 ただな……正直、アイツが“そういうこと”をするとは思えない。



 むしろその逆……出さなかったからこそ、ギンガちゃんは凹んでるんだと思うぞ。

 何しろ、傍から見たらバレバレなくらいジュンイチにほれ込んでるからな……気づいてないのは当のジュンイチだけだ。



 そんな状態で、帰れなくなって一緒に泊まることになって……そりゃ期待もするだろ。



 だからこそ、それが肩透かしに終われば凹むだろう。アイツのことだから、一分のスキもなく完璧に“兄貴として”エスコートしただろうから、余計にな。







「最初は……ちょっと、ジュンイチさんが許せませんでした。『ギンガがあんなに好きなのに、相手にしないなんてかわいそうだ』って……
 でも……ふと思ったんです。なんでそんなに、ギンガの気持ちに気づけないんだろう、って……
 それで……気づいちゃったんです。
 私、ジュンイチさんのこと……実は何にも知らないんだって」

「まぁ……そこまでわかれば後は簡単な話だろ。
 何も知らないなら……知ればいい」

「そう……なんですよね……」



 ………………おい、なんでそこでさらに沈むんだよ?

 まさか、その先にまた何か問題? 勘弁してくれよ。アイツがらみとなるとどこに地雷が埋まってるかちっとも読めないんだからさ。



「なんて言うか……知るのが、怖いんです。
 もし、自分の考えてる通りだとしたら……きっと、ジュンイチさんにとっては私達に知られたくないこともあると思うんです」

「知られたくない、こと……?」

「ジュンイチさん……恭文くんと同じで、自分を大切にしないところが、あるじゃないですか……
 それで……比較っていうワケじゃないんですけど、恭文くんの場合はどうしてそうなんだろう、って考えたら……」



 ………………おいおい、まさか……



「そうしたら……思っちゃったんです。
 ジュンイチさん、ひょっとしたら……」





















「人を殺したことが、あるんじゃないか、って……」





















 ………………予想していた中でも一番最悪の地雷が埋まっていやがった。しかも目の前に。

 その問いに答えることは簡単だ。直接見たことこそないが、アイツは人を殺したことがある。

 実際、最高評議会がそうだ。相手の状態が状態、状況が状況だったから、そういう印象がないだけで……アイツは機動兵器戦の末、最高評議会の三人を殺したことになる。

 そしてジュンイチはそれを、殺しの罪を背負ってる。最高評議会だけじゃない。今まで殺してきたヤツら、すべてに対する罪を。

 アイツのそういうところをやっさんと“同じ”と見たなのはちゃんの目はズバリ正解なワケだ……六課でいろいろやらかしたらしいけど、この人もやっぱり教導官か。見るべきところをちゃんと見てる。



「サリエルさんは……知りませんか? その辺のこと。
 本人に聞くの……正直、怖くて……」



 ………………本来なら、それでも本人に聞くべきだと思う。

 だが……相手がジュンイチの場合、それをやるのはあまりにもリスクがデカイ。







 アイツの場合……あまりにもあっさりと肯定しそうだからだ。







 それは別に、アイツが奪った命のことを軽視しているから、というワケじゃない。アイツにとって、人を殺した罪、そしてそれを背負うことは、殺してしまった者として当然のこと、当たり前のことだからだ……迷いなく受け入れているからこそ、アイツはあっさりと人を殺したことを肯定できてしまう。



 だが、話している相手がそのことに気づけるかどうかは別問題だ。



 たいていの場合は、殺したことを何とも思わない冷淡なヤツだと見られちまう。そう見えちまう……たぶん、それがわかってるからこそ、なのはちゃんもためらってるんだと思う。







 ………………あー、くそっ、ジュンイチ、後でメシおごりだからな。



「直接見たワケじゃないが……たぶん、ある。
 それも、ハッキリと自覚した上に、しかも何回も、だ……刑法に照らし合わせれば、傷害致死じゃなくて殺人罪……いや、大量殺人が適応される殺しだ。
 たぶん……理由さえあれば、アイツは書類にポンとハンコを押すみたいに、文字通り“作業”として人が殺せる」



 話が話だ。ハッキリ伝えなくちゃならない……敬語も取っ払って、真っ向からオレはそう答える。



「やっぱり……そうですか……」



 うつむいたまま、なのはちゃんはそう言う。

 そして……つぶやいた。



「…………どうしたら、いいんでしょうか……」



 いや……それを聞きたいのはこっちなんだが。



「わからないんです……
 私には、人を殺した経験なんかないから、ジュンイチさんがどれだけ重いものを背負ってるか、なんてわからない……
 でも……ジュンイチさんはそれが必要だと思ったら、そうするしかないと思ったら、きっとまた……“敵”を、殺す……
 あの人は、誰かに罪を背負わせないために、自分が代わりにその罪を背負おうとするところがあるから……殺すしかないとなったら……私達に殺させないために……自分が殺して、自分が背負う……何度でも……
 “もう殺さないために背負ってる”恭文くんとは違う。あの人は……“殺し続けるために背負ってる”……そんなの、見てられないんです……
 そう思ったら、記憶の中にあるジュンイチさんの笑顔とかも、とても哀しいものに見えてきて……っ!」



 なんつーか……最後の方はほとんど涙声だった。

 けど……言いたいことはわかった。



 ジュンイチ同様無自覚ではあるんだが、このお嬢ちゃん、本気でジュンイチのことが好きだ。それだけはよくわかった。



 問題は……ジュンイチがそんななのはちゃんの気持ちはもちろん、誰からの好意にもまったく気づけないっていう点だ。

 ただ……他のヤツらの恋愛話に首突っ込んでる時のアイツの言動から察するに、アイツは自分に向けられる好意に対しては致命的に鈍いってだけで、その他の恋愛感情についてはいたってまともなんだよな。普通にそいつらのことをうらやましがったりするし。

 それどころか今時のヤツにしては珍しいくらいに一途で純粋な恋愛観を持ってるような一面がある……そこまでの道のりが果てしなく遠いんだが、一度朴念仁の壁を突破されちまえば、後はジュンイチの方が一途に相手を追い回すと見た。



「まぁ……何だ。
 ぶっちゃけ、アイツが何考えてるか、なんて神様ですら予測不能だろうよ……神様のプライマスをパシらせるような男の思考なんて、一体誰が読めるってんだ。
 だから、アイツがいろいろ背負ってることについてどう思ってるのかも、オレは正直わからない。
 けどな……きっと大丈夫だってオレは思う」

「どうしてですか?」

「んー……どうしてだろうな?」



 オレの答えに、なのはちゃんは思わずずっこけた。まぁ、無責任もいいとこの答えだからな、ずっこけもするか。



「正直、オレにもどうしてかはわからない。
 けど……アイツには、『きっと大丈夫だ』って信じたくなるような……オレ達に信じたくならせるような何かがある。
 なのはちゃんも、そこは感じてると思うんだけど」



 オレの問いかけに、なのはちゃんも思い当たるフシがあったみたいだ。ちょっとためらいはあったけど、うなずいてみせた。



「たぶん、そこがオレ達外野にとっての答えだと思うんだ。
 アイツならきっと大丈夫……そう信じて、それを貫く」

「そんなことで……大丈夫なんでしょうか……?」

「『そんなこと』でいいと思うぜ。
 信じて、見守って……それでもし、アイツがそれでもつぶれそうになったら、その時に初めて支えてやればいい。
 手を貸してやるばっかりが、相手のためにすることじゃないんだ」



 オレの言葉を、なのはちゃんは自分の中でじっくりと消化してるんだろう。うつむくように、しばらく考え込んでいたが、



「………………わかりました。
 ちょっとだけ……信じてみることにします」

「『ちょっとだけ』か」

「きっと……何かあったら、動いちゃいますから、私」



 あー、だろうな。

 ウワサで聞いてはいたし、実際対面して実感もした。このお嬢ちゃん、基本的にじっと事態の推移を見守るようなタイプじゃないし。



 まぁ、なのはちゃんなりギンガちゃんなりライカちゃんなりジーナちゃんなり……あと特別講習で来てたチンクちゃんやウェンディちゃんもか。あの暴れ馬の手綱を握るにはそのくらいアクティブな方がちょうどいいんだろう……











 ………………あ。











「なぁ、なのはちゃん。
 納得したみたいだから話を戻すけど……ギンガちゃんはどうするんだ?」

「はい?」

「いや……なのはちゃんがジュンイチのことで悩んでたのって、ギンガちゃんがジュンイチのアレコレが原因で凹んでたことについていろいろ考えてたのが発端なんだろ?
 実質、今の話じゃなのはちゃんの悩みは解決しても、ギンガちゃんの悩みはまったく解決してないだろ」

「あぁ、そういえばそうですね」



 ……これは本気で見落としてたな。もし忘れてなかったとしたら、ジュンイチのアレコレについていろいろ見抜けるような“目”を持ってる彼女のことだ。絶対にこうはならない。



「そっか……何か考えてあげないとダメですよね。
 ジュンイチさんにとってもギンガにとっても、今のままじゃ絶対ダメですし」



 やれやれ……いつもだと嫉妬に狂って魔王化するところなんだろうが、本当に相手が困ってるとなるとそれも鳴りをひそめるか。

 器がデカイというかなんつーか……おいジュンイチ。この子、魔王化にさえ目をつむればかなりの優良物件だぞ、この果報者が。



「サリエルさん、もうちょっと相談に乗ってもらえますか?
 ギンガのためにも、なんとかしてあげないと……」

「はいはい。もうこうなったら毒皿だ。
 お付き合いしますよ、お嬢さん」



 やれやれ、やっさんといいジュンイチといい、次から次にトラブルの種を持ち込んでくれるもんだな。



 まぁ、そういうところが退屈しなくていいから、つるんでるんだけどな。







 さて、それじゃ、手間のかかる後輩のため、とことん付き合ってやるとしようかね。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ……朝日も昇り始めた中で、音が響く。







 木と木が小気味良くぶつかり合う音。







 その瞬間、手から伝わるのはいい感じの手応え。







 ……いや、楽しいわこれっ!







 僕は、距離を取るために後ろに飛ぶ。

 だけど、追撃は当然のようにくる。なので、それを迎え撃つ。







 相手が両手に持った小太刀を模した木刀は、空気を斬り裂きながら僕へと迫る。

 それを、手にしている木刀で受ける……いや、流すようにして弾く。



 だけど、それは一度じゃすまない。相手は二刀流。嵐のような連撃が襲ってくる。

 それを、木刀で防御。もしくはステップで軸をずらして、斬撃を弾きながら避ける。攻撃のスキ……ないな。ま、いいか。







 相手は僕より格上だ。この場合最優先は……防御と回避っ!







 何度目かの斬撃が来る。右手からの斬り上げるような攻撃。持ち方は逆手。



 胴を抉るかと思うような深い斬撃。それを、なんとか防ぐ。

 だけど、重い。その衝撃に圧された……瞬間だった。







 相手の姿が消えた。そう、消えたのだ。そして、僕は考えるよりも速く、木刀を背後に向かって、左から横一文字に打ち込んでいた。







 身体全体を使い、周囲を360度斬り裂くような一撃は……何も捕らえなかった。

 そして、上を見る……跳んでた。そして、攻撃体勢を取ってる。だから、こっちもそうする。

 刃を返す。そして、上空からの襲撃者に対して、右から一閃っ!







 次の瞬間、落下する勢いを乗せた一撃と、僕の斬撃がぶつかり合った。




















 ……勝負は、そこで決まった。





 空からの一撃は食らわなかった。だけど、衝撃に耐えきれず、そこで体制が崩れてしまった。

 そこは相手も……同じじゃない。僕がちょっとよろめいている間に、距離を詰められて、詰みだ。

 首に木刀の刃の部分があてられる。なので……











「それまでっ!」











 立会いをしてくれた青木さんの声が響いた。







「……ここまでにしとこうか」

「……はい、ありがとうございました」



 首から木の刃を引いて、ニッコリと相手が……美由希さんが笑う。



 ……早朝、朝稽古つけてもらってました。でも、また負けた。



 直前の青木さんとの組み手も負けたし、悔しいー!



「あはは……そんな落ち込まなくていいよ。うん、成長してるしてるっ!」

「そう……ですか?」



 僕がそう聞くと、美由希さんがポンポンと背中を叩いてくれた



「オレは、前にやり合ったのがずいぶん前だから参考になるようなことは言えないけどさ……少なくとも、オレ達から見てもじゅーぶん『強い』って言い切れるレベルだよ」



 まぁ、青木さんと僕とはそれほど接点あるワケじゃないですからねー。基本、ジュンイチさんが間に立つから。



「そうだよ。だから、自信持って」

「……はい」



 まぁ、御神の剣士とマスター・ランクのブレイカーのお墨付きだし、自信持っていいかも。







「……楽しそうだな、やっさん」

「あれ、サリエルさん。つか……ヒロさんも」

「お二人とも、どうしたんですか?」

「とーぜん、美由希ちゃんや青木さんとの楽しい組み手♪
 つかやっさん、アンタ……抜け駆けとは汚ないね」

「失礼なこと言わないでくださいよっ!」

「ま、そこはいいさ……二人とも、頼める?」

「……はいっ!」

「もちろんっ!」











 早朝の隊舎の中庭は、こうしてすごいことになった。いや、本気の美由希さん、青木さんがすさまじいのがよくわかった……ヒロさんとサリエルさんもね。





















 ……これが、この日の始まりだった。そう、ちょこっと大変な一日の始まりである。













◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「………………うん。
 じゃあ……今日の訓練はここまでにしようか」



 ………………え?



 いきなりそんなことを言い出したなのはさんに、あたしは思わずティアと顔を見合わせた。

 だって……



「あの……高町教導官。
 まだ、訓練の時間はだいぶ残っているが……」



 そう。ティアの後ろに控えていたジェットガンナーがツッコんだ通り、まだ時刻は午前10時半。今日の訓練は午前だけだけど……それでもまだだいぶ時間が残ってる。模擬戦だって一戦くらいなら余裕でできるくらいの……



「うん。
 実は、ジュンイチさんからちょっと頼まれてね……」

「せっかく青木ちゃんが来てることだしな。
 お前ら、ほとんどのメンツがマスター・ランクのブレイカー同士の戦闘は見たことないだろ」



 お兄ちゃんの言葉に、ティア達がコクコクとうなずく……お兄ちゃんとイクトさんとで戦ってもよかったけど、大火力同士の二人がぶつかれば……うん、訓練場の方がもたないから。



「だよねー。
 ………………ライカやジーナがもーちょっとアレなら、まだ代役とか頼めたんだけど」

「悪かったわね! アンタとやるとワンサイドゲームでっ!」



 お兄ちゃんの言葉に、ライ姉が力いっぱい言い返す……うん、ジー姉と二人していい感じに焦げてるのは、まぁ、察してください。



「とにかく、だ。
 そんなワケだから、青木ちゃんのいるうちに、マスター・ランク同士の戦いを参考までに見学させてやろうかな、と。
 青木ちゃんのスキルだったら、オレと思いっきりぶつかっても訓練場壊す心配少ないし」



 啓兄、打撃力がハンパない代わりに火力ないもんねー。



「どうせなら青木さんよりも鷲悟さんを呼んでほしかったんですけど……」

「大火力同士がぶつかったら訓練場を壊すからやらないって話を今したばかりだろうがライラっ!
 だいたい、青木ちゃんが来たのは完全キャンセル対策の講習のためだろうがっ! ガチ砲撃系の鷲悟兄を呼んでどーすんだっ! “何もできなくなる人”の代表格だぞっ!?」

「えっ!? 砲撃系ですかっ!?」

「はいっ! なのはもそこで目を輝かせないっ!
 とにかく、鷲悟兄はここにいないワケだし、いない者ねだりしてもしょうがねぇだろ。
 とりあえずは青木ちゃんでガマンしとけ。それが今のオレ達にできる精一杯の妥協点だ」

「お前もお前で、そうとう失礼なこと言ってる自覚はしとけよコラ」



 ライラやなのはさんに答えるお兄ちゃんだけど……うん、啓兄が怒るのもしょうがないよね。



 とりあえず……これから対戦みたいだし、そこでその怒りをぶつけちゃえば?



「あぁ、そうだな……そうさせてもらおうか」



 答えて、啓兄は一足先に模擬戦のスタート位置に向かう――ちょっと、ううん、かなり据わった目つきで。











 ――けど。











 その模擬戦は……あたし達の、お兄ちゃんですらも予想できなかった展開を見せることになったんだ。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 一撃を受け、吹っ飛ばされたその身体は一直線に虚空を貫き、廃ビルを数軒貫いた上でその先の廃ビルに叩き込まれた。



 だが……吹っ飛ばされた人物は、オレ達の当初の予想とは正反対だった。

 つまり……







 吹っ飛ばされたのは青木啓二ではなく、柾木ジュンイチの方だ。さすがにその一撃で沈むことはなかったものの、舌打ちをもらしながらガレキの中からその身を起こす。







 正直に言えば、この展開は予想外だった。



 青木啓二には悪いが、オレはこの模擬戦、柾木ジュンイチが優勢と予測していた……格闘戦一辺倒の青木啓二のスタイルでは、万能型、変幻自在の柾木ジュンイチのスタイルには対応しきれないと踏んだからだ。

 柾木ジュンイチの“制約”のことについては、恭文から聞いている――身内に対しては決して本気になれないとのことだが、それを抜きにしても、こうまでやられるとは……



 そんなことを考えている間に、再び青木啓二が突撃。対応しようとする柾木ジュンイチだったが、ガードが間に合わず、まともに顔面を殴り飛ばされ、またしても吹っ飛ばされる。



 ………………しかし……



「………………おかしいな」

「マスターコンボイさんもそう思いますか?」



 となりのスバルがオレのつぶやきを聞きつけ、尋ねる……そうだ。あの柾木ジュンイチの動き、どこかおかしい。

 恭文はどう思う?



「うん……僕もらしくないと思う。
 ジュンイチさん、明らかに本気だ。もうフルパワーに近い飛ばし方なのに……」

「で、でも、ジュンイチさん、身内相手には全力出せないんでしょ?」

「『その“対身内”の時のフルパワーだ』っていう話。
 それなのに……あのザマは、ちょっといつものジュンイチさんらしくない」



 エアラザーの問いにも、恭文はそう答える。



「お姉ちゃん……?」

「あたしは、能力者としてのジュンイチくんと戦ったことはないけど……少なくとも、ジュンイチくんが本気だっていうのはわかるよ。
 だって、ジュンイチくんのあんな真剣な顔、実戦以外で見たことないもの」



 なのはに答える高町美由希の答えも芳しくない。そして……



「ライカさん……」

「えぇ。
 確かに、能力的な相性で言うなら、ジュンイチの方がぶっちぎりで不利だけど……それにしたって、いつもならむしろ毎度のノリで青木さんを振り回すってのに……」



 ジーナ・ハイングラムやライカ・グラン・光凰院……付き合いの長いメンツの目から見ても、今の柾木ジュンイチの状態は異常ということか……



 そうしている間に、柾木ジュンイチは再び青木啓二へと突撃し……繰り出した拳をかわされ、カウンターの一撃で近くの廃ビルに叩き込まれていた。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「おいおい、どうした?
 本気でいつものお前らしくないぞ?」

「そんなの……自分でもわかってらぁっ!」



 尋ねる青木ちゃんに答えて、オレは自分の上のガレキを押しのけて立ち上がる……くそっ、なんだってんだ。







 今朝から妙に集中できねぇ。しようとしても、まるでノイズが走るみたいに思考がどこかで処理落ちする。



 実はさっきライカ達をこんがり焼いてる時もそんな感じだった。まぁ、それでもボコれるくらいにはスキルに差があるせいで、なんとかなってたんだけど……さすがに、同じマスター・ランクが相手となると響いてくるか。







 ………………とにかく、だ。



 今は原因のわからない不調を気にする時じゃない。模擬戦の真っ最中だ。







 不調だっていうなら……その不調も戦いの前提に組み込むまで。



 調子の出ないこの状態でできること、できなくなってることを洗い出す……その上で、できることを使ってどうにかする方法を組み立てる。







 いつもやってることだ。これができれば調子が出なくてもなんとかなる……んだけどっ!



「やめる気はない、か……ま、そういうところはお前らしいままか。
 そんじゃ……オレも続けさせてもらうっ!」



 向こうはそれまで待ってくれないかっ! 全速力で突っ込んできやがったっ!



 とっさに背中のゴッドウィングを広げ、跳躍――直後、翼のすき間に“造り出された”スラスターから推進ガスが噴射。加速したオレは青木ちゃんの突撃、そのすぐ上を飛んでやりすごす。



 そのまま反撃の炎……って、いないっ!?











「百獣憑依――チーター・in・両足レッグ











 ――――――ヤバイっ!?







「アンド――」











「グリズリー・in・右腕ライトアーム!」

「ウィングエッジ!」







 瞬間、刃同士がぶつかる音が響く。

 グリズリーの怪力を右腕に宿した青木ちゃんが繰り出した右腕の巨大手甲――左右一対の専用ツール“スティンガーファング”の一撃を、翼の縁を刃のごとく研ぎ澄ませたゴッドウィングで受け止めたのだ。







 青木ちゃんが繰り出したのは、“獣”のブレイカーの能力のひとつ。自分の身体や装備の任意の部位に任意の動物の、同じ部位に備わった能力を再現する力……“百獣”の力が“憑依”したみたいに見えることから、ついた名前が“百獣憑依”。

 今の流れで言うと、チーターの俊足を両足に宿してオレの背後に回り込んで、グリズリーの腕力でオレをブッ飛ばそうとした、と……







 対するオレは、背中の専用ツール“ゴッドウィング”の持つ形状変化能力で対抗。

 “形状変化”と言っても、なのは達のデバイスみたいなモードチェンジじゃない。ゴッドウィングの翼は流体多結晶合金、つまり液体金属でできている。

 それを翼の付け根、基部の部分に仕込んだサポートAIで制御している……その結果、ゴッドウィングはオレの思いつく限りのシステムや武器に変形することが可能になっている。

 今みたいに翼を刃みたいに研ぎ澄ませるなんて序の口。トマホークにしたりブーメランにしたり……オレの主砲、ゼロブラックに使う反応エネルギー砲“ウィングディバイダー”もその変形パターンの一環だ。



 もっとも、飛行ユニットも兼ねてるから、翼の形状を逸脱した変形をさせるとその間飛行手段を失っちまうのが、まぁ、欠点といえば欠点か。







 ともあれ、ゴッドウィングでなんとか青木ちゃんの一撃を受け止めたワケだけど……グリズリーの腕力が相手じゃそれで精一杯だった。力任せに振り抜かれて、そのまま地上に叩き落とされる。



 地面に激突した衝撃で、肺から空気が叩き出される――けど、止まっているワケにはいかない。なぜかって?







「オォォォォォッ!」

「っとぉっ!」



 青木ちゃんが、すでに追撃の体勢に入っているからだ。両足を振り上げ、バック転の要領で突き落としてきた青木ちゃんの一撃を回避する。

 結果、狙いを外した青木ちゃんの一撃は、訓練スペースの地面を豪快に粉砕する……おいおい、擬似地面ぶち抜いて土台まで壊してないか? 後で訓練場直せって言われたら青木ちゃんが直せよ?



「にゃろうっ!」



 とにかく、今は反撃だ――バック転の過程、上下逆さまに宙を舞いながら右手を振るい、青木ちゃんに向けて炎をぶちまける。

 さらにフェザーファンネルを作り出し、青木ちゃんに向けて飛ばす。四方八方から放たれるビームをかわして、青木ちゃんはフェザーファンネルの包囲網をかわして上空へ――けど、それがオレの狙いだっ!



「だぁだだだだだだだだだだぁっ!」



 狙いもつけず、“炎弾丸フレア・ブリッド”のマシンガンシフト――放たれた火炎弾は、上空の青木ちゃんに向けて、その周りも巻き込む勢いで襲いかかる。



「く………………っ!」



 対して、回避は難しいと判断したのか青木ちゃんは防御を固める。直撃弾が次々に命中し、その姿が爆煙の向こうに消えていく。



 けど、オレだって攻撃の手を緩めたりはしない。そのまま“炎弾丸フレア・ブリッド”を撃ちまくる……







「………………こん、のぉっ!」







 …………しのがれた。気合と共に精霊力を解き放って、さらに命中しようとしていた直撃コースの“炎弾丸フレア・ブリッド”を吹き飛ばす。



 遠距離戦のできない青木ちゃんでも、この程度のことはできるからな……もちろん、オレもそれがわかった上で撃ちまくってたんだけど。







「やってくれるじゃないのさ。
 オレに飛び道具がほとんどないからって、調子に乗りすぎだぞ、お前」



「そいつぁどうかな?
 調子に乗るのは……まだまだこれからだぜ?」



 そう……まだまだこれからだ。







 そして……そのための仕込みは、すでに終わってる。







「何を……――――――っ!?」



 言いかけて――青木ちゃんも気づいた。



 さっきまでオレが撃ちまくっていた“炎弾丸フレア・ブリッド”――直撃弾じゃなかった、流れ弾と思われていたそれが、空中に留まって青木ちゃんの上下前後左右、360度全方位をグルリと包囲しているのに。







 青木ちゃんもこの技は知ってる。オレと同じく“元ネタ”のファンだし……けど、オレがマスターしているっていうのは知らなかったはず。



 加えて、“炎弾丸フレア・ブリッド”の直撃弾によって巻き起こった爆発と爆煙が、視界と“装重甲メタル・ブレスト”のセンサーに対する目隠しとして作用した……いろいろな要素を重ねた結果、気づかれることなく準備を整えられた。



 確かに、美由希ちゃんに全弾回避されたことぁあるけどな……青木ちゃんのスピードでこいつをかわすのは不可能だっ!







「くらいさらせっ!
 見様見真似……」





















「魔空包囲弾っ!」





















 咆哮と同時、炎弾を制御するために広げていた両腕を思い切り閉じる――信号を受け、ばらまかれた炎の弾丸は一斉に青木ちゃんへと襲いかかり――直撃するっ!



 上空で大規模な爆発が起こり、爆風が地上まで届いてくるけど――











 ――――――来たっ!











 察知し、反応する――渾身の力で振るった爆天剣が、爆煙の中からすさまじいスピードで飛び出してきた青木ちゃんが放った右のスティンガーファングの激突する。



 けど――パワー負けしてブッ飛ばされた。くそっ、またグリズリーを百獣憑依させてやがったな?



「さすがに、今のは危なかったぜ……
 つか、模擬戦で撃つ技かよ?」

「どーゆーワケか調子が出ねぇんだ。出し惜しみなんかしてられっかい」



 苦笑する青木ちゃんに答えて、爆天剣を杖に立ち上がる。



 つか、今のでケリをつけられなかったのは正直痛い……たぶん、カメなりアルマジロなりを“装重甲メタル・ブレスト”に百獣憑依させたんだろうけど。







 とにかく……だ。青木ちゃんは知らないと踏んだ魔空包囲弾まで使っても仕留めきれなかった……くそっ、冗談抜きで調子出てないな、オイ。







 ………………しょうがねぇ。こうなったら腹括るか。







 覚悟を決めて、オレは重心を落として、右半身を引いてかまえる。

 同時に、精霊力を高めて、周囲で燃焼させる。炎はオレの“力”に導かれて、背中のゴッドウィングに収束していく――







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ………………ギガフレアか。



 ジュンイチのかまえ、高められた精霊力、そして燃焼するゴッドウィング……それらの情報から、オレはジュンイチの次の手をそう読んだ。



 たぶん、一撃で墜ちるとはジュンイチだって思ってないだろう。来るのはおそらく、三種のギガフレアによるコンビネーション、“ギガフレア三連”……







 ………………つか、そこまでやるか。



 さっきの魔空包囲弾も驚いたけど、三連まで使ってくるとは、ホントに余裕がないんだな。







 けど、それでも勝つ気はマンマンと……











「………………オーケイ。
 付き合ってやるよ」



 言って、オレが腰のツールボックスから取り出したのは、フィルムケースくらいの大きさの弾丸。



 “エナジー・ブリッド”……精霊力を蓄え、解放することのできる弾丸。

 使うのはオレのスティンガーファングに搭載されている、このエナジー・ブリッドによって“力”を上乗せすることができる“ブリッドシステム”……確か、魔導師のみんなのデバイスにも、似たようなのが組み込まれてるんだっけ。あちらさんは魔力を使ってるらしいけど。



 スティンガーファングに備えられたスリットに弾丸を装填そうてん。そこからさらに2発装填そうてんして計3発。







 まずは一発目のブリッドを撃発。解放された精霊力がスティンガーファングを通じて流れ込んでくる。







 それを体内で束ね、高め、またスティンガーファングに戻す……さて、やるか。







 もはや盾と言ってもいい大きさのスティンガーファング、その先端のクロー部分に精霊力を集中させて、ジュンイチの動きからスキを探る。



 ………………っても、相手はあのジュンイチだ。そう簡単にスキなんか見せてくれるはずもないか。



 もちろん、オレだってそう簡単にスキを見せてやるつもりはない。上空のオレと地上のジュンイチ。お互いに仕掛けられないまま、ただ静かににらみ合う。



 そのまま十秒、二十秒……







 ………………1分経過……











 …………3分経過……





















 …………………………5分経





















「“龍翼の轟炎ウィング・ギガフレア!」

「スティンガー、インパクト!」







 沈黙からの変化はまさに一瞬――それぞれが一瞬で最高速度まで加速して突撃。オレのスティンガーファングとジュンイチの炎をまとった拳とが激突する。



 互いの解放した力が互いに喰い合い、荒れ狂う――直後、衝撃と共に、お互いの獲物が弾き飛ばされる。







「“號拳龍炎ストライク・ギガフレア”!」

「スティンガーインパクト――2ndっ!」







 だが、お互い狙っているのはコンビネーションだ。すかさず追撃を放ち合い、再び獲物が激突する。



 そして、すぐにまた獲物が弾かれる――解放されたエネルギーがさらに荒れ狂う中、お互い三発目っ!











「“螺旋龍炎スパイラル・ギガフレア”っ!」

「スティンガーインパクト――Final!」











 これがどちらにとっても本命の一撃――さっきまでとは段違いのエネルギーが、オレ達の間で荒れ狂い――





















 弾けた。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 夕日に照らされた六課の本部庁舎を前にして、私はここまで送ってくれた部隊の車から降りた。



 えっと、この時間だとみんなはまだオフィスかな……?







 ………………とはいえ、みんなと会うのはちょっと気まずいんだけど。



 だって、ジュンイチさんも一緒にいるだろうし……正直、顔を合わせづらい。



 それに、昨日の訓練も調子が出ずにみんなに心配をかけてるだろうし……







 ………………よし。用件だけを済ませて早く帰ろう。







「………………あれ? ギン姉……?」

「ギンガさん?」

「………………あ」



 決意したその矢先に、妹と友達に見つかった。



「今日はどうしたの? ギン姉」

「えっと、サリエルさんとヒロリスさんに相談が、ね……
 昨日の完全キャンセル下での訓練、うちの部隊でもやってもらえないか、って……」



 特に隠す理由もないから、スバルの疑問に素直に答える。



「だから……二人のいるところを知ってたら、教えてほしいんだけど」

「そうなんだ……
 てっきり、お兄ちゃんのことを聞いてお見舞いに来たのかと思っちゃったよ」











 ………………え?







「なぎくん……今、スバルは何て言ったの?
 ジュンイチさんが……どうしたの?」

「あー、えっと……
 ひょっとして……知らなかった?」



 尋ねるなぎくんに、私はうなずく……うん。本当に何も知らない。



「このバカスバルっ! 何余計なこと言ってんのっ!?
 ギンガさんだって調子悪いのに、心配の種を増やしてどーすんのさっ!?」

「だ、だってぇっ!」

《マスター、こうなったら素直に話すのが一番だと思いますよ》

「…………だよね。
 あのね、ギンガさん……ちょっと、落ち着いて聞いてくれるかな?」



 えっと……なぎくんまでどうしたの?

 ジュンイチさんに……何があったの?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ………………っ。



 目を開けた瞬間……ちょっとだけがっかりした。







 くそっ、知ってる天井じゃ、「知らない天井」ネタが使えないじゃねぇか。







「目が覚めて、最初に考えることがそれ……?」



 聞こえてきたのはよく知ってる声……まだ付き合いそんなに長くないけど。



 とりあえず……顔だけ向けて、声をかける。



「とりあえず……意外な人物がとなりにいたことに驚いた方がいいのか? オレは」

「『意外』ってナニっ!?
 あたしがいるのはそんなに変!?」



 オレの言葉にどこか芝居がかった様子で驚いて見せるのはサリちゃん……サムダックさんちの方ね。

 つか……そりゃ意外でしょ。見舞いに来てくれるような仲になるほど接点なかったんだから。



「それに、普通に考えて、ここに――医務室にいるべきはシャマルだろ。
 で、お約束のパターンとしては、何やら怪しい注射を片手に、怖〜い笑顔と共に近づいてきたところで、ちょうどオレが目覚める、と……」

「あー、あるある。
 なんかそういうのが似合いそうなキャラだもんね、シャマルさん」



 うむ。よくわかってらっしゃる。



「で……その似非マッドは?」

「倉庫。
 ジュンイチさんの手当てで使い捨ての包帯のストックが切れちゃったから、新しいのを取ってくるって」

「………………なんかつまんねーオチだな」

「薬物投与の用意されてるよりマシなんじゃない?」

「そっちの方がネタ的にオイシイだろ。
 オレへの害はいつもみたいにブッ飛ばせば排除できるんだし」



 あっさり答えると、サリちゃんはロコツにため息をついてくれた。失礼な。







 ………………あ、そうだ。



「なぁ、オレが担ぎ込まれた原因……だと思う模擬戦、結果とか聞いてる?
 負けず嫌いのオレとしては『ラストの一撃で奇跡の逆転勝利!』とかいうのを期待するんだけど」

「あー、えっと……」







「残念ながら、そういう熱い展開はなかったわよ」







 ………………改造実験帝国SHAシャマルの主がそこにいた。







「その呼び方やめてくれない!?」

「ヤ」



 とりあえず却下しておく……その方がおもしろいから。



「で、模擬戦の話だけど」

「さっきも言ったとおり、逆転はなかったわ。
 とりあえず模擬戦自体はドロー。相打ちだけど……青木さんの方がダメージは軽かったもの。
 差し詰め、試合に負けずに勝負に負けた……といったところかしら」

「勝負については“生きてりゃ勝ち”だよ」



 あっさり答えて、改めてベッドに身を預ける……んだけど……まだ何か言いたそうだね?



「えぇ、まぁね。
 ジュンイチくん……何かあった?」







 ………………ま、やっぱツッコんでくるよねー、そこは。







「それはそうよ。
 私は映像でしか見てないけど……今日のジュンイチくん、明らかに動きのキレが悪かったもの。
 昨日はぜんぜん平気だったんだもの。今日までの間に何かがあったと考えるのは当然でしょ?」

「別に、何もないよ」

「ウソ」

「ホントに」

「ウソ」

「ホント」

「ウソ」

「マヂだって」



 ………………うん。



「ウソでしょっ!?」

「ホントだっつってんだろっ!」

「まったく、強情ねっ!
 素直に吐かないとクラールヴィントで“ぶちまける”わよっ!」

「上等だっ! やれるもんならやってみやがれっ!
 誰にケンカを売ったか教えてやるぜっ!」



「ストップストップっ!
 医者と患者のやり取りじゃないよねソレっ!」



「そだね」

「話を戻しましょうか」



 オレ達のノリについてこれずに、ずでーんっ、とサリちゃんがひっくり返る……まだまだだね。この程度のテンションの切り替えについてこれないようじゃ、この先六課でやっていけないよ?



「ほら、サリちゃんをからかうのはそのくらいで。
 それで……本当に、何もなかったの?」

「って言われても……」







 ………………ん?







「どうしたの? ジュンイチくん」

「いや……」



 ……こっちに、猛スピードで向かってくる“力”を感じる。

 この“力”は……











「ジュンイチさんっ!」











 ……ギンガ!?



「大丈夫なんですか!?
 スバルから医務室に運び込まれたって聞いて……っ!」



 …………よし、あのバカには後でカラシ入りアイスをくれてやろう。
  オレが作るまでもなく、トルコアイスならそーゆーのデフォであるし。



「それで……ケガは?」

「自己診断プログラム、まだ走らせてないからケガの具合はわかんねぇけど……大丈夫なんじゃね?
 そもそもそれほどひどいケガしてねぇし」

「そうね……ひどいケガはしてなかったわね。
 全身あちこち傷を作ってたのと……全身くまなく打撲してたくらいね。もう平気みたいだけど」



 シャマルもシャマルでギンガを不安にさせるようなこと言うなよっ!



「何言ってるの。
 患者の家族に正しく症状を報告するのは医者としての義務よ――ジュンイチくんもわかってるでしょ?」







 ………………そうでした。







「ちょうどいいわ。ギンガにも聞いていってもらいましょうか。
 ジュンイチくん……調子を落とすようなことは、本当に何もなかったの?」

「だから、ホントに……」











 ………………あ。











「何かあるの?」



 いや、これが原因かどうかは、わかんないけどさ……



「なぁ、お前ら……」











「オレ……幸せ、放棄してるように見える?」



『………………は?』







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ジュンイチさんの言ってることがよくわからずに、ちょっと間の抜けた声を上げちゃった。



 それで……どうしたんですか? いきなりそんなこと聞いて……



「いや……昨夜、リンディさんに言われたんだよ。
 オレ、どうも自分の過去を気にして幸せになるっていうのを放棄してる……らしい」



 いや、『らしい』って……本人がそれでどうするんですか。



「仕方ないだろ。本気で自覚ないんだからさ」

「というか、どうしてそういう話に……?」

「いやな……最初は、うちに転がり込んできた万蟲姫の話だったんだけどさ……」



 ま、万蟲姫がジュンイチさんのところに!?



 どういうことなんですか!? 聞いてませんよ!?



「あれ…………?
 なぁ、シャマル。オレ、ギンガに万蟲姫のこと説明してなかったっけ?」

「私に聞かれても……
 ただ、昨日私が見ていた範囲では、話してなかったと思うけど……」

「まったく聞いてませんっ!」



 まったく、この人はどうしてこういう大事なことばかり適当に……っ!



「まぁ……いいや。とにかくいるのよ、あのバカ姫が。
 で、その処遇がリンディさんはちょっと不満だったみたいでさ」

「それで……ジュンイチくんは何て?」

「いや、捕まえて罪を償わせるにしても、今の局じゃ本当に万蟲姫のためになる裁きはちょっとムリだろう、って。
 で、どう償うかはアイツの判断に任せたい、って言ったら……いきなり『自分もそうやって自分の罪を償ってるから幸せになろうとしないのか』って……」



 ………………私も、そう思うことがたまにある。

 ジュンイチさん、自分の幸せには基本的に執着を見せないから……



「それで……他には? 何かないの?」

「うーん……」



 サリちゃんの質問に、ジュンイチさんは少し考えて、



「それにからんで、『もう家庭を持ってもいい歳なんだからしっかりしろ』って」







 ………………その言葉に、ジュンイチさんと一緒にバージンロードを歩く自分の姿を幻視しちゃったのは……まぁ、仕方ないよね?





「けどさ……マジでオレ自覚ないんだぜ? どうにかしろって言われてもどうしようもないっての。
 おかげでけっこう言いたい放題言われちゃってさ。しまいには……」





















「キスまでされたし」





















 ………………え?











 今、ジュンイチさん……











「えっと……ジュンイチくん。
 今、とてもじゃないけれど信じられない言葉が出てきたような気がするんだけど……リンディ提督が、あなたに何をしたって?」

「いや、だから、けっこうオレをボロクソに言ってくれて……」





















「キスまでされた」





















「………………ジュンイチくん。確認するわね。
 それは……ジュンイチくんから?」

「いや、リンディさんから」

「頬に?」

「唇に」



 シャマル先生の質問に、ジュンイチさんはあっさりと答えていく――その一言一言が、私の胸に突き刺さる。











 だって、ジュンイチさんと、リンディ提督が……











「本気でワケわかんねぇや。
 さんざん好き勝手言ってくれた後にアレだぜ? おかげでちっとも反応できなかった」

「いや、そういう問題じゃないわよっ!
 ジュンイチくん、ギンガの前でなんてことをっ!」

「え? ギンガ……って!?
 おい、ギンガ!? どーして泣いてんのさ、お前っ!?」







 ………………え?







 私……泣いて……?







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ………………完全に、裏目だった。



 ギンガが一緒なら、ジュンイチくんも素直に答えると踏んだのだけど……それが逆に最悪の展開を招くなんて……



 というか……リンディ提督、何してるんですかっ!?

 いや、まさかとは思うけど……ジュンイチくんにフラグ立てられた!? 確かに、ジュンイチくんのところにいるんだし、立てられる機会なんていくらでもあっただろうけど……







 とにかく、ジュンイチくんの明かした事実がギンガにとって最悪の爆弾だったことは間違いない。



 実際、ものすごくショックを受けてる。さすがのジュンイチくんも、今のギンガの様子に大あわてで……





「おい、どうしたんだよ、ギンガ!? ……あぁ、もうっ、泣くなっ!
 安心しろって……」





















「別に、オレとお前がキスしたワケじゃないんだからさっ!」





















 ………………あ。











 どう考えてもアウトな発言がジュンイチくんの口から飛び出した。







 やっぱり……この子、ギンガがどうして泣いてるのかわかってないっ!



 あああああ、うつむいたギンガが拳を握りしめて……







「……ジュンイチ……」

「ん?」











「…………さんの……」

「はい?」





















「……バカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

「ぶぎゃあっ!?」











 まったくの自然体から放たれた渾身の左アッパーが、ジュンイチくんのアゴ、その真芯を撃ち抜く――天井に激突、落下ではなく跳ね返って、ジュンイチくんの身体は医務室の床に叩きつけられた。



 その脇を、ギンガが飛び出していく――私達は、目の前で繰り広げられた惨劇に、身動きひとつできなかった。











 あー……えっと……





















 ………………どうしたらいいの? コレ。





















(第35話へ続く)


次回予告っ!

フェイト 「ジュンイチさん……最低ですね」
ジュンイチ 「ち、ちょっと待て!
 この状況、悪いのはオレか!?」
フェイト 「どう考えてもそうじゃないですかっ!
 ギンガがどう思ってるかも知らないで!」
ジュンイチ 「そいつぁ誤解だっ!
 そりゃ、今までにおそろいのストラップもらったりカップル同士で割引サービスしてもらえるケータイプランに入らされたりデートスポットに連れて行かれたりジュースにストロー2本差ししたりはしたぜ。
 だけど、だからってそれがイコール恋愛感情だとは――」
 

 
  間。
 

 
フェイト 「同情の余地なしDETHです
ジュンイチ 「てめ……タメなしでファランクス撃ちやがったな……!」(←黒コゲ)

第35話「とある暴君と疾風の女神のひとつの節目」


あとがき

マスターコンボイ 「……と、いうワケで、柾木ジュンイチがとうとうやらかしてくれた第34話だ」
オメガ 《やらかしてくれましたねー》
マスターコンボイ 「まぁ、タイミングが悪かった、というのもあるんだがな」
オメガ 《何言ってるんですか。
 フィクションにおける人間関係の話というのはタイミングが悪いのがむしろ当たり前。タイミングの良し悪しは理由にはなりませんよ》
マスターコンボイ 「そ、そうなのか……?」
オメガ 《そうですよ。
 それにしても、ミス・リンディからキスされたことがきっかけでここまで事態がこんがらがるとは……》
マスターコンボイ 「まったくだ。
 あの女も、一体何を考えてあんなマネを……」
オメガ 《そんなの決まってますよ。
 彼女もミスタ・ジュンイチにフラグを立てられたひとりですからね……つまり、そういうことです》
マスターコンボイ 「他の女どもに先駆け、動いたということか……?」
オメガ 《さすがは結婚経験者。恋愛については一日の長あり、といったところですね。
 ヘタしたら彼女、ミスタ・クロノとの一件が片づいても居座り続けるかもしれませんね》
マスターコンボイ 「柾木ジュンイチを本格的に狙うつもりということか」
オメガ 《そういうことです。
 一応、万蟲姫がミスタ・ジュンイチのところにいるということで、彼女の監視、ないしは自首を説得するため、ということにすれば居残る理由は成り立ちますし》
マスターコンボイ 「…………今の騒ぎが収まっても、気が休まる予感がまったくしないんだが」
オメガ 《でしょうねー。
 この一件が次回で片づけば、いよいよ現クールもラスト一月。そろそろ節目のエピソードへと話が動き出す頃合いですし》
マスターコンボイ 「そうか……もうそんな時期か」
オメガ 《そうですね。
 ……すなわち、それは“彼ら”のリタイアまで残り一月という意味でもあるんですけど
マスターコンボイ 「………………おい。
 何か今、小声で聞き捨てならないことを言わなかったか?」
オメガ 《いえいえ、お気になさらず。
 ここでこれ以上この話題に突っ込むとネタバレフィルター作動しますし》
マスターコンボイ 「むぅ……しかたあるまい。
 では、今回はこれにて閉幕だ。また次回も見るがいい」
オメガ 《お疲れさまでした》

(おわり)


 

(初版:2011/02/19)